説明

壁構造

【課題】複数の壁材が側端部を突き合わせた状態で固定され、該壁材の表面は弾性塗材に被覆されて無目地であるにもかかわらず、該壁材の突き合わせ部分の不陸が小さい壁構造を提供する。
【解決手段】壁材は、側端部を別の壁材の側端部と突き合せた状態で固定されており、該壁材の側端部の突き合わせ部分には、弾性目地処理材充填用ポケットが形成されている。弾性目地処理材充填用ポケットは、壁材の表面よりも低く、かつ、該壁材の側端部の突き合わせ部分を中心として、30〜100mmの幅で、該壁材の側端部の突き合わせ部分に沿って延びて形成されている。そして、弾性目地処理材は、弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみ配されており、該弾性目地処理材の表面の高さは、壁材の表面の高さと揃えてあり、該壁材と該弾性目地処理材の表面は、弾性塗料により被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が弾性塗材に被覆されて無目地である壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、窯業系サイディングボード、金属系サイディングボード、ALCボードなどの壁材を、複数枚、住宅に施工して、外壁や内壁などの壁面を形成することが行われている。しかし、壁材同士の突き合わせ部分には目地線が生じ、外観を損ねる。そこで、該目地線を無くし、無目地状に仕上げる施工構造が検討されている。
【0003】
たとえば、非特許文献1には、壁材の突き合わせ部分に弾性目地処理材を展着し、その上に網体を配置し、更にその上を弾性目地処理材を被覆し、更にその上に弾性塗料を塗布して無目地とした外壁構造が記載されている。
【0004】
また、特許文献1には、弾性目地処理材は、有機溶剤の含有量が5重量%未満であり、脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は脂環式ジイソシアネート化合物と活性水素含有化合物と反応させて得た1分子当り2個以上のイソシアネート基を含有するウレタンポリマーと、加水分解により1分子当り2個以上のチオール基を生成する化合物とからなり、イソシアネート基とチオール基が反応しチオウレタン結合を形成する1成分硬化型弾性組成物であることが記載されている。また、該弾性目地処理材を用いた、無目地の外壁構造も記載されている。
【0005】
更に、特許文献2には、壁材の突き合わせ部分に生じる目地線に沿った長径部と、目地線に直交する方向に沿うと共に該長径部よりも短い短径部とからなる開口部分を有し、かつ1cmあたりの開口数が10〜60個である網体を用いた、無目地の外壁構造が記載されている。
【0006】
しかし、従来の無目地の壁構造では、壁材の突き合わせ部分に弾性目地処理材が展着し、その上に網体が配置され、更にその上を弾性目地処理材が被覆した上で、壁材の全体に弾性塗料が塗布されて無目地となっているので、弾性塗料が塗布される前の壁材の突き合わせ部分は、他の部分よりも弾性目地処理材と網体の厚さだけ高くなっている。そのため、弾性塗料が塗布されると、壁材の突き合わせ部分に不陸が発生し、斜光によっては不陸影が発生し、外観の意匠を低下させることがある。
壁材の突き合わせ部分の不陸を解消するには、弾性目地処理材の上の弾性塗料を少なくし、他の部分の弾性塗料を多くする必要がある。しかし、弾性塗料の塗布量を調整して、平滑な表面を形成させることは難しい。特に、弾性塗料を吹き付け塗装する場合には、塗布量の調整が難しく、平滑な表面を形成させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−254498号公報
【特許文献2】特開2002−146990平号公報
【非特許文献1】実用新案登録第2592501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みたものであり、複数の壁材が側端部を突き合わせた状態で固定され、該壁材の表面は弾性塗材に被覆されて無目地であるにもかかわらず、該壁材の突き合わせ部分の不陸が小さい壁構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の壁材が側端部を突き合わせた状態で固定されているとともに、表面が弾性塗材に被覆されて無目地であるにもかかわらず、該壁材の突き合わせ部分の不陸が小さい壁構造を提供するものである。本発明では、壁材の側端部の突き合わせ部分の表面には、弾性目地処理材充填用ポケットが形成されており、該弾性目地処理材充填用ポケットには、弾性目地処理材が充填されている。そして、弾性目地処理材の内部には、該弾性目地処理材が貫通可能な開口を多数有する網目状体が配置されており、壁材と該弾性目地処理材の表面は、弾性塗料により被覆されている。弾性目地処理材充填用ポケットは、壁材の表面よりも低く、かつ、該壁材の側端部の突き合わせ部分を中心として、30〜100mmの幅で、該壁材の側端部の突き合わせ部分に沿って延びて形成されている。弾性目地処理材は、弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみ配されており、弾性目地処理材の表面の高さは、壁材の表面の高さと揃えてある。なお、網目状体を弾性目地処理材の内部に配置することは、壁材の突き合わせ部分に弾性目地処理材を展着し、その上に網目状体を配置し、更にその上を該弾性目地処理材で被覆することなどにより構築される。弾性目地処理材の表面加工は、該弾性目地処理材が配された後に、表面をヘラなどによりならしたり押さえることなどにより形成される。
本発明において、壁材は、木繊維補強セメント板、繊維補強セメント板、繊維補強セメント・ケイ酸カルシウム板などの窯業系サイディングボード、金属系サイディングボード、ALCボードなどである。
網目状体は、無機物あるいは有機物で作製した網や、織物、編み物、シートなどである。ポリエステル、ナイロン、テトロン、天然繊維などの伸縮可能な材料により製造された網目状体であると、壁材の経年による伸縮に対応することができるので、好ましい。
弾性目地処理材は、ポリチオウレタン系、ポリウレタン系、アクリル系、アクリルウレタン系、変成シリコーン系、ポリサルファイド系、変成ポリサルファイド系などの弾力性のある目地処理材である。
弾性塗材は、アクリル系、アクリルシリコーン系、ウレタン系、変成シリコーン系などの耐候性、弾力性、耐水性に優れた塗材である。
本発明においては、壁材は、側端部を別の壁材の側端部と突き合せた状態で固定されているが、該壁材の側端部の突き合わせ部分には弾性目地処理材充填用ポケットが形成されており、該弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみ弾性目地処理材が配されている。そして、弾性目地処理材の表面の高さは、壁材の表面の高さと揃えてあり、該壁材と該弾性目地処理材の表面は、弾性塗料により被覆されているので、壁の表面には、該壁材同士の突き合わせによる目地線が発生せず、無目地であるとともに、該壁材の突き合わせ部分の不陸が小さい壁構造を提供することができる。また、弾性目地処理材の内部には、該弾性目地処理材が貫通可能な開口を多数有した網目状体が配置されているので、該弾性目地処理材は補強され、壁材の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮が抑えられ、該弾性塗材にクラックが生じにくい。
なお、本発明においては、弾性目地処理材充填用ポケットは、壁材の表面よりも低く、かつ、該壁材の側端部の突き合わせ部分を中心として、30〜100mmの幅で、該壁材の側端部の突き合わせ部分に沿って延びて形成されている。弾性目地処理材充填用ポケットの幅が30mmより小さいと、十分な量の弾性目地処理材を配することができず、壁材の突き合わせ部分の経年の伸縮を抑えることができない。一方、弾性目地処理材充填用ポケットの幅が100mmより大きいと、弾性目地処理材の配置面積が多すぎて、表面の高さを揃えることが難しくなり、壁材の突き合わせ部分の不陸を小さくできない懸念が発生する。
【0010】
また、本発明において、弾性目地処理材充填用ポケットの内にある、壁材の側端部の突き合わせ部分は、該弾性目地処理材充填用ポケットの他の部分よりも低く形成されていると、該壁材の側端部の突き合わせ部分により多くの弾性目地処理材が配されることとなり、より該壁材の突き合わせ部分の経年の伸縮を抑えることができるので、好ましい。
【0011】
更に、本発明においては、弾性目地処理材充填用ポケットは、壁材の表面と0.2〜0.7mmの段差を有すると、弾性目地処理材充填用ポケットに弾性目地処理材と網目状体が確実に配されるとともに、弾性目地処理材充填用ポケットを充填している弾性目地処理材の表面の高さを壁材の表面の高さと揃えやすいので、好ましい。又は、弾性目地処理材充填用ポケットは、壁材の表面から該壁材の突き合わせ部分に向かって傾斜する面を有しても良い。この場合にも、弾性目地処理材充填用ポケットを充填している弾性目地処理材の表面の高さは壁材の表面の高さと揃えやすい。
【0012】
更に、本発明においては、網目状体の幅は、弾性目地処理材充填用ポケットの幅よりも小さいと、該弾性目地処理材充填用ポケットに網目状体が確実に配され、壁材の突き合わせ部分の経年の伸縮を抑えるので好ましい。
【0013】
更に、本発明においては、網目状体の表面には、1cmあたり3〜9個の開口を有し、該開口には上記弾性目地処理材が充填されていると、該網目状体の上下に配された該弾性目地処理材が一体化するとともに、該網目状体と該弾性目地処理材の接触面積が多くなり、該網目状体と該弾性目地処理材が剥がれにくくなる。それにより、より壁材の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮が抑えられ、弾性塗材にクラックが生じにくくなるので、好ましい。開口が1cmあたり3個より少ないと、網目状体の上下に配された弾性目地処理材の一体化が十分ではなく、壁材の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮を十分に抑えられず、弾性塗材にクラックが生じる懸念がある。一方、開口が1cmあたり9個より多いと、弾性目地処理材が該開口を十分に貫通することができず、該網目状体が該弾性目地処理材の表面に浮き出し、外観に影響を与える懸念がある。
【0014】
更に、本発明においては、壁材と弾性目地処理材の表面を被覆している弾性塗材の量は、2〜6kg/mであると、壁が耐候性、耐水性に優れ、該壁材の経年の伸縮に対応することができるとともに、該壁材の突き合わせ部分の不陸を小さくすることができるので、好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の壁材が側端部を突き合わせた状態で固定され、該壁材の表面は弾性塗材に被覆されて無目地であるにもかかわらず、該壁材の突き合わせ部分の不陸が小さい壁構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明にかかる壁構造の一実施例における壁材の突き合わせ部分付近の構造を示す斜視説明図である。
【図2】図2は、本発明にかかる壁構造の他の実施例における壁材の突き合わせ部分付近の構造を示す斜視説明図である。
【図3】図3は、本発明にかかる壁構造の更に他の実施例における壁材の突き合わせ部分付近の構造を示す斜視説明図である。
【図4】図4は、本発明にかかる壁構造の更に他の実施例における壁材の突き合わせ部分付近の構造を示す斜視説明図である。
【図5】図5は、本発明にかかる壁構造の更に他の実施例における壁材の突き合わせ部分付近の構造を示す斜視説明図である。
【図6】図6は、本発明にかかる壁構造の更に他の実施例における壁材の突き合わせ部分付近の構造を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明にかかる壁構造の一実施例における壁材の突き合わせ部分付近の構造を示す斜視説明図である。
図1に示す壁構造では、厚さ14mm、幅910mm、長さ3030mmで、右側端部b11に上実部を有し、左側端部b51に下実部を有する木繊維補強セメント板B1を壁材として、ポリチオウレタン系目地処理材C1を弾性目地処理材として、厚さ0.2mm、幅50mmで、表面に貫通した開口d1を1cmあたり5個有するポリエステル製シートD1を網目状体として、アクリル系弾性塗材E1を弾性塗材として用いている。
2枚の木繊維補強セメント板B1、B1は、互いにその側端部を突き合わせた状態で、釘(図示せず)により下地材Aに固定されている。なお、木繊維補強セメント板B1は、右側端部b11に上実部を、左側端部b51に下実部を有するので、側端部を突き合わせた状態とは、互いの実部が合決りしている状態である。そして、木繊維補強セメント板B1は、右側端部の表面には、30mmの幅で、木繊維補強セメント板B1、B1の突き合わせ方向に沿って延びており、木繊維補強セメント板B1の表面よりも0.5mm低い弾性目地処理材充填用凹部b21と、弾性目地処理材充填用凹部b21の内側端部から木繊維補強セメント板B1の表面に向かって垂直をなしている弾性目地処理材充填用垂直部b31を有する。更に、木繊維補強セメント板B1は、左側端部の表面には、30mmの幅で、木繊維補強セメント板B1、B1の突き合わせ方向に沿って延びており、木繊維補強セメント板B1の表面よりも0.5mm低い弾性目地処理材充填用凹部b61と、弾性目地処理材充填用凹部b61の内側端部から木繊維補強セメント板B1の表面に向かって垂直をなしている弾性目地処理材充填用垂直部b71を有する。そのため、木繊維補強セメント板B1、B1の互いの側端部を突き合わせた状態では、突き合わせ部分の表面には、弾性目地処理材充填用凹部b21と、弾性目地処理材充填用垂直部b31と、弾性目地処理材充填用凹部b61と、弾性目地処理材充填用垂直部b71により、60mmの幅で、突き合わせ部分に沿って延びた空間が形成されている。該空間が弾性目地処理材充填用ポケットであり、該弾性目地処理材充填用ポケットには、ポリチオウレタン系目地処理材C1が充填されている。なおポリチオウレタン系目地処理材C1は、該弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみ配されている。
弾性目地処理材充填用ポケットを充填しているポリチオウレタン系目地処理材C1の内部には、該弾性目地処理材充填用ポケットの幅より小さい幅のポリエステル製シートD1が配されており、ポリチオウレタン系目地処理材C1を補強している。なお、ポリエステル製シートD1は、表面に、貫通した開口d1を1cmあたり5個有しているが、開口d1には、ポリチオウレタン系目地処理材C1が充填されている。また、弾性目地処理材充填用ポケットを充填しているポリチオウレタン系目地処理材C1の表面は、突き合わせられた木繊維補強セメント板B1、B1の表面と高さが揃えられている。
そして、木繊維補強セメント板B1、B1とポリチオウレタン系目地処理材C1の表面は、アクリル系弾性塗材E1で全て覆われている。なお、アクリル系弾性塗材E1は、2kg/m以上となるように配されている。そして、木繊維補強セメント板B1の表面を覆うアクリル系弾性塗材E1の表面の高さは、ポリチオウレタン系目地処理材C1の表面を覆うアクリル系弾性塗材E1の表面の高さと揃えてある。
よって、図1に示す壁構造によれば、2枚の木繊維補強セメント板B1、B1は、互いにその側端部を突き合わせた状態で固定されているが、木繊維補強セメント板B1、B1の側端部の突き合わせ部分の表面には、60mmの幅で、突き合わせ部分に沿って延びた、木繊維補強セメント板B1の表面よりも0.5mm低い弾性目地処理材充填用ポケットが形成されており、該弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみポリチオウレタン系目地処理材C1が配されている。そして、ポリチオウレタン系目地処理材C1の表面の高さは、木繊維補強セメント板B1、B1の表面の高さと揃えてあり、木繊維補強セメント板B1、B1とポリチオウレタン系目地処理材C1の表面は、2kg/m以上の量のアクリル系弾性塗材E1により被覆されている。そのため、壁の表面には、木繊維補強セメント板B1、B1同士の突き合わせによる目地線が発生せず、無目地であるとともに、木繊維補強セメント板B1、B1の突き合わせ部分の不陸は小さい。また、木繊維補強セメント板B1、B1の側端部の突き合わせ部分に十分な量のポリチオウレタン系目地処理材C1が配置され、更にその上に十分な量のアクリル系弾性塗材E1が配置されることとなり、木繊維補強セメント板B1、B1の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮は抑えられ、アクリル系弾性塗材E1にはクラックが生じにくい。
更に、ポリチオウレタン系目地処理材C1の内部には、表面に、貫通した開口d1を1cmあたり5個有したポリエステル製シートD1が、開口d1にポリチオウレタン系目地処理材C1が充填された状態で配置されているので、ポリチオウレタン系目地処理材C1とポリエステル製シートD1は一体化し、ポリチオウレタン系目地処理材C1が補強されて、木繊維補強セメント板B1、B1の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮はより抑えられ、アクリル系弾性塗材E1にはクラックが更に生じにくい。
【0019】
図2は、本発明にかかる壁構造の他の実施例における壁材の突き合わせ部分付近の構造を示す斜視説明図である。
図2に示す壁構造では、厚さ14mm、幅910mm、長さ3030mmで、右側端部b12に上実部を有し、左側端部b52に下実部を有する木繊維補強セメント板B2を壁材として、ポリチオウレタン系目地処理材C2を弾性目地処理材として、厚さ0.2mm、幅50mmで、表面に貫通した開口d1を1cmあたり5個有するポリエステル製シートD1を網目状体として、アクリル系弾性塗材E2を弾性塗材として用いており、弾性目地処理材充填用ポケットの形状が図1に示す壁構造と異なる。
具体的には、右側端部b12に上実部を、左側端部b52に下実部を有する2枚の木繊維補強セメント板B2、B2が、互いの実部が合決りしている状態で、釘(図示せず)により下地材Aに固定されている。そして、木繊維補強セメント板B2は、右側端部の表面には、30mmの幅で、木繊維補強セメント板B2、B2の突き合わせ方向に沿って延びており、木繊維補強セメント板B2の表面よりも0.5mm低い弾性目地処理材充填用凹部b22と、4mmの幅で、弾性目地処理材充填用凹部b22の内側端部から木繊維補強セメント板B2の表面に向かって傾斜をなしている弾性目地処理材充填用傾斜部b32を有する。更に、木繊維補強セメント板B2は、左側端部の表面には、30mmの幅で、木繊維補強セメント板B2、B2の突き合わせ方向に沿って延びており、木繊維補強セメント板B2の表面よりも0.5mm低い弾性目地処理材充填用凹部b62と、4mmの幅で、弾性目地処理材充填用凹部b62の内側端部から木繊維補強セメント板B2の表面に向かって傾斜をなしている弾性目地処理材充填用傾斜部b72を有する。そのため、木繊維補強セメント板B2、B2の互いの側端部を突き合わせた状態では、突き合わせ部分の表面には、弾性目地処理材充填用凹部b22と、弾性目地処理材充填用傾斜部b32と、弾性目地処理材充填用凹部b62と、弾性目地処理材充填用傾斜部b72により、68mmの幅で、突き合わせ部分に沿って延びた空間が形成されている。該空間が弾性目地処理材充填用ポケットであり、該弾性目地処理材充填用ポケットには、ポリチオウレタン系目地処理材C2が充填されている。なおポリチオウレタン系目地処理材C2は、該弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみ配されている。
弾性目地処理材充填用ポケットを充填しているポリチオウレタン系目地処理材C2の内部には、該弾性目地処理材充填用ポケットの幅より小さい幅のポリエステル製シートD1が配されており、ポリチオウレタン系目地処理材C2を補強している。なお、ポリエステル製シートD1は、表面に、貫通した開口d1を1cmあたり5個有しているが、開口d1には、ポリチオウレタン系目地処理材C2が充填されている。また、弾性目地処理材充填用ポケットを充填しているポリチオウレタン系目地処理材C2の表面は、突き合わせられた木繊維補強セメント板B2、B2の表面と高さが揃えられている。
そして、木繊維補強セメント板B2、B2とポリチオウレタン系目地処理材C2の表面は、アクリル系弾性塗材E2で全て覆われている。なお、アクリル系弾性塗材E2は、2kg/m以上となるように配されている。そして、木繊維補強セメント板B2の表面を覆うアクリル系弾性塗材E2の表面の高さは、ポリチオウレタン系目地処理材C2の表面を覆うアクリル系弾性塗材E2の表面の高さと揃えてある。
よって、図2に示す壁構造によれば、2枚の木繊維補強セメント板B2、B2は、互いにその側端部を突き合わせた状態で固定されているが、木繊維補強セメント板B2、B2の側端部の突き合わせ部分の表面には、68mmの幅で、突き合わせ部分に沿って延びた、木繊維補強セメント板B2の表面よりも0.5mm低い弾性目地処理材充填用ポケットが形成されており、該弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみポリチオウレタン系目地処理材C2が配されている。そして、ポリチオウレタン系目地処理材C2の表面の高さは、木繊維補強セメント板B2、B2の表面の高さと揃えてあり、木繊維補強セメント板B2、B2とポリチオウレタン系目地処理材C2の表面は、2kg/m以上の量のアクリル系弾性塗材E2により被覆されている。そのため、壁の表面には、木繊維補強セメント板B2、B2同士の突き合わせによる目地線が発生せず、無目地であるとともに、木繊維補強セメント板B2、B2の突き合わせ部分の不陸は小さい。また、木繊維補強セメント板B2、B2の側端部の突き合わせ部分に十分な量のポリチオウレタン系目地処理材C2が配置され、更にその上に十分な量のアクリル系弾性塗材E2が配置されることとなり、木繊維補強セメント板B2、B2の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮は抑えられ、アクリル系弾性塗材E2にはクラックが生じにくい。
更に、ポリチオウレタン系目地処理材C2の内部には、表面に、貫通した開口d1を1cmあたり5個有したポリエステル製シートD1が、開口d1にポリチオウレタン系目地処理材C2が充填された状態で配置されているので、ポリチオウレタン系目地処理材C2とポリエステル製シートD1は一体化し、ポリチオウレタン系目地処理材C2が補強されて、木繊維補強セメント板B2、B2の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮はより抑えられ、アクリル系弾性塗材E2にはクラックが更に生じにくい。
【0020】
図3は、本発明にかかる壁構造の更に他の実施例における壁材の突き合わせ部分付近の構造を示す斜視説明図である。
図3に示す壁構造では、厚さ14mm、幅910mm、長さ3030mmで、右側端部b13と左側端部b53に実部を有さない木繊維補強セメント板B3を壁材として、ポリチオウレタン系目地処理材C3を弾性目地処理材として、厚さ0.2mm、幅50mmで、表面に貫通した開口d2を1cmあたり9個有するポリエステル製シートD2を網目状体として、アクリル系弾性塗材E3を弾性塗材として用いており、弾性目地処理材充填用ポケットの形状と、ポリエステル製シートD2の開口数と、アクリル系弾性塗材E3の量が、図1に示す壁構造と異なる。
具体的には、2枚の木繊維補強セメント板B3、B3が、互いの側端部を突き合わせた状態で、釘(図示せず)により下地材Aに固定されている。そして、木繊維補強セメント板B3は、右側端部b13の表面には、弾性目地処理材充填用傾斜部b23を有し、左側端部b53の表面には、弾性目地処理材充填用傾斜部b63を有する。弾性目地処理材充填用傾斜部b23と弾性目地処理材充填用傾斜部b63は、木繊維補強セメント板B3の表面から木繊維補強セメント板B3、B3の突き合わせ方向に向かって傾斜しており、30mmの幅で、木繊維補強セメント板B3、B3の突き合わせ方向に沿って延びている。そして、木繊維補強セメント板B3の側端部の表面の高さは、木繊維補強セメント板B3の表面よりも1.5mm低い。そのため、木繊維補強セメント板B3、B3の互いの側端部を突き合わせた状態では、突き合わせ部分の表面には、弾性目地処理材充填用傾斜部b23と弾性目地処理材充填用傾斜部b63により、木繊維補強セメント板B3の表面から木繊維補強セメント板B3、B3の突き合わせ方向に向かって傾斜しており、60mmの幅で、突き合わせ部分に沿って延びた空間が形成されている。該空間が弾性目地処理材充填用ポケットであり、該弾性目地処理材充填用ポケットには、ポリチオウレタン系目地処理材C3が充填されている。なおポリチオウレタン系目地処理材C3は、該弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみ配されている。
弾性目地処理材充填用ポケットを充填しているポリチオウレタン系目地処理材C3の内部には、該弾性目地処理材充填用ポケットの幅より小さい幅のポリエステル製シートD2が配されており、ポリチオウレタン系目地処理材C3を補強している。なお、ポリエステル製シートD2は、表面に、貫通した開口d2を1cmあたり9個有しているが、開口d2には、ポリチオウレタン系目地処理材C3が充填されている。また、弾性目地処理材充填用ポケットを充填しているポリチオウレタン系目地処理材C3の表面は、突き合わせられた木繊維補強セメント板B3、B3の表面と高さが揃えられている。
そして、木繊維補強セメント板B3、B3とポリチオウレタン系目地処理材C3の表面は、アクリル系弾性塗材E3で全て覆われている。なお、アクリル系弾性塗材E3は、5kg/m以上となるように配されている。そして、木繊維補強セメント板B3の表面を覆うアクリル系弾性塗材E3の表面の高さは、ポリチオウレタン系目地処理材C3の表面を覆うアクリル系弾性塗材E3の表面の高さと揃えてある。
よって、図3に示す壁構造によれば、2枚の木繊維補強セメント板B3、B3は、互いにその側端部を突き合わせた状態で固定されているが、木繊維補強セメント板B3、B3の側端部の突き合わせ部分の表面には、弾性目地処理材充填用ポケットが形成されている。弾性目地処理材充填用ポケットは、木繊維補強セメント板B3の表面から木繊維補強セメント板B3、B3の突き合わせ方向に向かって傾斜しており、側端部の表面の高さは、木繊維補強セメント板B3の表面よりも1.5mm低く、かつ、60mmの幅で、突き合わせ部分に沿って延びている。そして、弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみポリチオウレタン系目地処理材C3が配されており、ポリチオウレタン系目地処理材C3の表面の高さは、木繊維補強セメント板B3、B3の表面の高さと揃えてある。更に、木繊維補強セメント板B3、B3とポリチオウレタン系目地処理材C3の表面は、5kg/m以上の量のアクリル系弾性塗材E3により被覆されている。そのため、壁の表面には、木繊維補強セメント板B3、B3同士の突き合わせによる目地線が発生せず、無目地であるとともに、木繊維補強セメント板B3、B3の突き合わせ部分の不陸は小さい。また、木繊維補強セメント板B3、B3の側端部の突き合わせ部分に十分な量のポリチオウレタン系目地処理材C3が配置され、更にその上に十分な量のアクリル系弾性塗材E3が配置されることとなり、木繊維補強セメント板B3、B3の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮は抑えられ、アクリル系弾性塗材E3にはクラックが生じにくい。
更に、ポリチオウレタン系目地処理材C3の内部には、表面に、貫通した開口d2を1cmあたり9個有したポリエステル製シートD2が、開口d2にポリチオウレタン系目地処理材C3が充填された状態で配置されているので、ポリチオウレタン系目地処理材C3とポリエステル製シートD2は一体化し、ポリチオウレタン系目地処理材C3が補強されて、木繊維補強セメント板B3、B3の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮はより抑えられ、アクリル系弾性塗材E3にはクラックが更に生じにくい。
【0021】
図4は、本発明にかかる壁構造の更に他の実施例における壁材の突き合わせ部分付近の構造を示す斜視説明図である。
図4に示す壁構造では、厚さ14mm、幅910mm、長さ3030mmで、右側端部b14に上実部を有し、左側端部b54に下実部を有する木繊維補強セメント板B4を壁材として、ポリチオウレタン系目地処理材C4を弾性目地処理材として、厚さ0.2mm、幅50mmで、表面に貫通した開口d1を1cmあたり5個有するポリエステル製シートD1を網目状体として、アクリル系弾性塗材E4を弾性塗材として用いており、弾性目地処理材充填用ポケットの形状が図1に示す壁構造と異なる。
具体的には、右側端部b14に上実部を、左側端部b54に下実部を有する2枚の木繊維補強セメント板B4、B4が、互いの実部が合決りしている状態で、釘(図示せず)により下地材Aに固定されている。そして、木繊維補強セメント板B4は、右側端部の表面には、28mmの幅で、木繊維補強セメント板B4、B4の突き合わせ方向に沿って延びており、木繊維補強セメント板B4の表面よりも0.5mm低い弾性目地処理材充填用凹部b24と、弾性目地処理材充填用凹部b24の内側端部から木繊維補強セメント板B4の表面に向かって垂直をなしている弾性目地処理材充填用垂直部b34と、弾性目地処理材充填用凹部b24の外側端部から木繊維補強セメント板B4の側端部に向かって、2mmの幅で傾斜をなしている弾性目地処理材充填用傾斜部b44を有する。更に、木繊維補強セメント板B4は、左側端部の表面には、28mmの幅で、木繊維補強セメント板B4、B4の突き合わせ方向に沿って延びており、木繊維補強セメント板B4の表面よりも0.5mm低い弾性目地処理材充填用凹部b64と、弾性目地処理材充填用凹部b64の内側端部から木繊維補強セメント板B4の表面に向かって垂直をなしている弾性目地処理材充填用垂直部b74と、弾性目地処理材充填用凹部b64の外側端部から木繊維補強セメント板B4の側端部に向かって、2mmの幅で傾斜をなしている弾性目地処理材充填用傾斜部b84を有する。そのため、木繊維補強セメント板B4、B4の互いの側端部を突き合わせた状態では、突き合わせ部分の表面には、弾性目地処理材充填用凹部b24と、弾性目地処理材充填用垂直部b34と、弾性目地処理材充填用傾斜部b44と、弾性目地処理材充填用凹部b64と、弾性目地処理材充填用垂直部b74と、弾性目地処理材充填用傾斜部b84により、60mmの幅で、突き合わせ部分に沿って延びた空間が形成されている。該空間が弾性目地処理材充填用ポケットであり、該弾性目地処理材充填用ポケットには、ポリチオウレタン系目地処理材C4が充填されている。なお、弾性目地処理材充填用ポケットにおいて、木繊維補強セメント板B4、B4の側端部の突き合わせ部分は、弾性目地処理材充填用傾斜部b44と弾性目地処理材充填用傾斜部b84により、他の部分よりも更に表面が低く形成されているが、ポリチオウレタン系目地処理材C4は、該空間をも含む弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみ配されている。
弾性目地処理材充填用ポケットを充填しているポリチオウレタン系目地処理材C4の内部には、該弾性目地処理材充填用ポケットの幅より小さい幅のポリエステル製シートD1が配されており、ポリチオウレタン系目地処理材C4を補強している。なお、ポリエステル製シートD1は、表面に、貫通した開口d1を1cmあたり5個有しているが、開口d1には、ポリチオウレタン系目地処理材C4が充填されている。また、弾性目地処理材充填用ポケットを充填しているポリチオウレタン系目地処理材C4の表面は、突き合わせられた木繊維補強セメント板B4、B4の表面と高さが揃えられている。
そして、木繊維補強セメント板B4、B4とポリチオウレタン系目地処理材C4の表面は、アクリル系弾性塗材E4で全て覆われている。なお、アクリル系弾性塗材E4は、2kg/m以上となるように配されている。そして、木繊維補強セメント板B4の表面を覆うアクリル系弾性塗材E4の表面の高さは、ポリチオウレタン系目地処理材C4の表面を覆うアクリル系弾性塗材E4の表面の高さと揃えてある。
よって、図4に示す壁構造によれば、2枚の木繊維補強セメント板B4、B4は、互いにその側端部を突き合わせた状態で固定されているが、木繊維補強セメント板B4、B4の側端部の突き合わせ部分の表面には、60mmの幅で、突き合わせ部分に沿って延びた、木繊維補強セメント板B4の表面よりも低い弾性目地処理材充填用ポケットが形成されており、該弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみポリチオウレタン系目地処理材C4が配されている。そして、ポリチオウレタン系目地処理材C4の表面の高さは、木繊維補強セメント板B4、B4の表面の高さと揃えてあり、木繊維補強セメント板B4、B4とポリチオウレタン系目地処理材C4の表面は、2kg/m以上の量のアクリル系弾性塗材E4により被覆されている。そのため、壁の表面には、木繊維補強セメント板B4、B4同士の突き合わせによる目地線が発生せず、無目地であるとともに、木繊維補強セメント板B4、B4の突き合わせ部分の不陸は小さい。また、木繊維補強セメント板B4、B4の側端部の突き合わせ部分に十分な量のポリチオウレタン系目地処理材C4が配置され、更にその上に十分な量のアクリル系弾性塗材E4が配置されることとなり、木繊維補強セメント板B4、B4の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮は抑えられ、アクリル系弾性塗材E4にはクラックが生じにくい。
更に、ポリチオウレタン系目地処理材C4の内部には、表面に、貫通した開口d1を1cmあたり5個有したポリエステル製シートD1が、開口d1にポリチオウレタン系目地処理材C4が充填された状態で配置されているので、ポリチオウレタン系目地処理材C4とポリエステル製シートD1は一体化し、ポリチオウレタン系目地処理材C4が補強されて、木繊維補強セメント板B4、B4の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮はより抑えられ、アクリル系弾性塗材E4にはクラックが更に生じにくい。
更に、弾性目地処理材充填用ポケットの内にある、木繊維補強セメント板B4、B4の側端部の突き合わせ部分は、弾性目地処理材充填用傾斜部b44と弾性目地処理材充填用傾斜部b84により、該弾性目地処理材充填用ポケットの他の部分よりも低く形成されているので、より多くの弾性目地処理材が配されることとなり、木繊維補強セメント板B4、B4の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮はより抑えられ、アクリル系弾性塗材E4にはクラックが更に生じにくい。
【0022】
図5は、本発明にかかる壁構造の更に他の実施例における壁材の突き合わせ部分付近の構造を示す斜視説明図である。
図5に示す壁構造では、厚さ14mm、幅910mm、長さ3030mmで、右側端部b15に上実部を有し、左側端部b55に下実部を有する木繊維補強セメント板B5を壁材として、ポリチオウレタン系目地処理材C5を弾性目地処理材として、厚さ0.2mm、幅50mmで、表面に貫通した開口d1を1cmあたり5個有するポリエステル製シートD1を網目状体として、アクリル系弾性塗材E5を弾性塗材として用いており、弾性目地処理材充填用ポケットの形状が図2に示す壁構造と異なる。
具体的には、右側端部b15に上実部を、左側端部b55に下実部を有する2枚の木繊維補強セメント板B5、B5が、互いの実部が合決りしている状態で、釘(図示せず)により下地材Aに固定されている。そして、木繊維補強セメント板B5は、右側端部の表面には、28mmの幅で、木繊維補強セメント板B5、B5の突き合わせ方向に沿って延びており、木繊維補強セメント板B5の表面よりも0.5mm低い弾性目地処理材充填用凹部b25と、4mmの幅で、弾性目地処理材充填用凹部b25の内側端部から木繊維補強セメント板B5の表面に向かって傾斜をなしている弾性目地処理材充填用傾斜部b35と、弾性目地処理材充填用凹部b25よりも2mm低く、弾性目地処理材充填用凹部b25と木繊維補強セメント板B5の側端部の間に、2mmの幅で形成された弾性目地処理材充填用凹部b45を有する。更に、木繊維補強セメント板B5は、左側端部の表面には、28mmの幅で、木繊維補強セメント板B5、B5の突き合わせ方向に沿って延びており、木繊維補強セメント板B5の表面よりも0.5mm低い弾性目地処理材充填用凹部b65と、4mmの幅で、弾性目地処理材充填用凹部b65の内側端部から木繊維補強セメント板B5の表面に向かって傾斜をなしている弾性目地処理材充填用傾斜部b75と、弾性目地処理材充填用凹部b65よりも2mm低く、弾性目地処理材充填用凹部b65と木繊維補強セメント板B5の側端部との間に、2mmの幅で形成された弾性目地処理材充填用凹部b85を有する。そのため、木繊維補強セメント板B5、B5の互いの側端部を突き合わせた状態では、突き合わせ部分の表面には、弾性目地処理材充填用凹部b25と、弾性目地処理材充填用傾斜部b35と、弾性目地処理材充填用凹部b45と、弾性目地処理材充填用凹部b65と、弾性目地処理材充填用傾斜部b75と、弾性目地処理材充填用凹部b85により、68mmの幅で、突き合わせ部分に沿って延びた空間が形成されている。該空間が弾性目地処理材充填用ポケットであり、該弾性目地処理材充填用ポケットには、ポリチオウレタン系目地処理材C5が充填されている。なお、弾性目地処理材充填用ポケットにおいて、木繊維補強セメント板B5、B5の側端部の突き合わせ部分は、弾性目地処理材充填用凹部b45と弾性目地処理材充填用凹部b85により、他の部分よりも更に低い形成されており、ポリチオウレタン系目地処理材C5は、弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみ配されている。
弾性目地処理材充填用ポケットを充填しているポリチオウレタン系目地処理材C5の内部には、該弾性目地処理材充填用ポケットの幅より小さい幅のポリエステル製シートD1が配されており、ポリチオウレタン系目地処理材C5を補強している。なお、ポリエステル製シートD1は、表面に、貫通した開口d1を1cmあたり5個有しているが、開口d1には、ポリチオウレタン系目地処理材C5が充填されている。また、弾性目地処理材充填用ポケットを充填しているポリチオウレタン系目地処理材C5の表面は、突き合わせられた木繊維補強セメント板B5、B5の表面と高さが揃えられている。
そして、木繊維補強セメント板B5、B5とポリチオウレタン系目地処理材C5の表面は、アクリル系弾性塗材E5で全て覆われている。なお、アクリル系弾性塗材E5は、2kg/m以上となるように配されている。そして、木繊維補強セメント板B5の表面を覆うアクリル系弾性塗材E5の表面の高さは、ポリチオウレタン系目地処理材C5の表面を覆うアクリル系弾性塗材E5の表面の高さと揃えてある。
よって、図5に示す壁構造によれば、2枚の木繊維補強セメント板B5、B5は、互いにその側端部を突き合わせた状態で固定されているが、木繊維補強セメント板B5、B5の側端部の突き合わせ部分の表面には、68mmの幅で、突き合わせ部分に沿って延びた、木繊維補強セメント板B5の表面よりも低い弾性目地処理材充填用ポケットが形成されており、該弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみポリチオウレタン系目地処理材C5が配されている。そして、ポリチオウレタン系目地処理材C5の表面の高さは、木繊維補強セメント板B5、B5の表面の高さと揃えてあり、木繊維補強セメント板B5、B5とポリチオウレタン系目地処理材C5の表面は、2kg/m以上の量のアクリル系弾性塗材E5により被覆されている。そのため、壁の表面には、木繊維補強セメント板B5、B5同士の突き合わせによる目地線が発生せず、無目地であるとともに、木繊維補強セメント板B5、B5の突き合わせ部分の不陸は小さい。また、木繊維補強セメント板B5、B5の側端部の突き合わせ部分に十分な量のポリチオウレタン系目地処理材C5が配置され、更にその上に十分な量のアクリル系弾性塗材E5が配置されることとなり、木繊維補強セメント板B5、B5の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮は抑えられ、アクリル系弾性塗材E5にはクラックが生じにくい。
更に、ポリチオウレタン系目地処理材C5の内部には、表面に、貫通した開口d1を1cmあたり5個有したポリエステル製シートD1が、開口d1にポリチオウレタン系目地処理材C5が充填された状態で配置されているので、ポリチオウレタン系目地処理材C5とポリエステル製シートD1は一体化し、ポリチオウレタン系目地処理材C5が補強されて、木繊維補強セメント板B5、B5の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮はより抑えられ、アクリル系弾性塗材E5にはクラックが更に生じにくい。
更に、弾性目地処理材充填用ポケットの内にある、木繊維補強セメント板B5、B5の側端部の突き合わせ部分は、弾性目地処理材充填用凹部b45と弾性目地処理材充填用凹部b85により、該弾性目地処理材充填用ポケットの他の部分よりも低く形成されているので、より多くの弾性目地処理材が配されることとなり、木繊維補強セメント板B5、B5の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮はより抑えられ、アクリル系弾性塗材E5にはクラックが更に生じにくい。
【0023】
図6は、本発明にかかる壁構造の更に他の実施例における壁材の突き合わせ部分付近の構造を示す斜視説明図である。
図6に示す壁構造では、厚さ14mm、幅910mm、長さ3030mmで、右側端部b16と左側端部b56に実部を有さない木繊維補強セメント板B6を壁材として、ポリチオウレタン系目地処理材C6を弾性目地処理材として、厚さ0.2mm、幅50mmで、表面に貫通した開口d2を1cmあたり9個有するポリエステル製シートD2を網目状体として、アクリル系弾性塗材E6を弾性塗材として用いており、弾性目地処理材充填用ポケットの形状が図3に示す壁構造と異なる。
具体的には、2枚の木繊維補強セメント板B6、B6が、互いの側端部を突き合わせた状態で、釘(図示せず)により下地材Aに固定されている。そして、木繊維補強セメント板B6は、右側端部b16の表面には、弾性目地処理材充填用傾斜部b26と弾性目地処理材充填用傾斜部b46を有し、左側端部b53の表面には、弾性目地処理材充填用傾斜部b66と弾性目地処理材充填用傾斜部b86を有する。弾性目地処理材充填用傾斜部b26と弾性目地処理材充填用傾斜部b66は、木繊維補強セメント板B6の表面から木繊維補強セメント板B6、B6の突き合わせ方向に向かって傾斜しており、側端部の表面の高さは、木繊維補強セメント板B6の表面よりも1.5mm低く、28mmの幅で、木繊維補強セメント板B6の突き合わせ方向に沿って延びている。弾性目地処理材充填用傾斜部b46と弾性目地処理材充填用傾斜部b86は、弾性目地処理材充填用傾斜部b26、弾性目地処理材充填用傾斜部b66の外側端部から木繊維補強セメント板B6の側端部に向かって、2mmの幅で傾斜をなしている。そのため、木繊維補強セメント板B6、B6の互いの側端部を突き合わせた状態では、突き合わせ部分の表面には、弾性目地処理材充填用傾斜部b26と、弾性目地処理材充填用傾斜部b46と、弾性目地処理材充填用傾斜部b66と、弾性目地処理材充填用傾斜部b86により、60mmの幅で、突き合わせ部分に沿って延びた空間が形成されている。該空間が弾性目地処理材充填用ポケットであり、該弾性目地処理材充填用ポケットには、ポリチオウレタン系目地処理材C6が充填されている。なお、弾性目地処理材充填用ポケットにおいて、木繊維補強セメント板B6、B6の側端部の突き合わせ部分は、弾性目地処理材充填用傾斜部b46と弾性目地処理材充填用傾斜部b86により、他の部分よりも更に表面が低く形成されているが、ポリチオウレタン系目地処理材C6は、該空間を含む弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみ配されている。
弾性目地処理材充填用ポケットを充填しているポリチオウレタン系目地処理材C6の内部には、該弾性目地処理材充填用ポケットの幅より小さい幅のポリエステル製シートD2が配されており、ポリチオウレタン系目地処理材C6を補強している。なお、ポリエステル製シートD2は、表面に、貫通した開口d2を1cmあたり9個有しているが、開口d2には、ポリチオウレタン系目地処理材C6が充填されている。また、弾性目地処理材充填用ポケットを充填しているポリチオウレタン系目地処理材C6の表面は、突き合わせられた木繊維補強セメント板B6、B6の表面と高さが揃えられている。
そして、木繊維補強セメント板B6、B6とポリチオウレタン系目地処理材C6の表面は、アクリル系弾性塗材E6で全て覆われている。なお、アクリル系弾性塗材E6は、5kg/m以上となるように配されている。そして、木繊維補強セメント板B6の表面を覆うアクリル系弾性塗材E6の表面の高さは、ポリチオウレタン系目地処理材C6の表面を覆うアクリル系弾性塗材E6の表面の高さと揃えてある。
よって、図6に示す壁構造によれば、2枚の木繊維補強セメント板B6、B6は、互いにその側端部を突き合わせた状態で固定されているが、木繊維補強セメント板B6、B6の側端部の突き合わせ部分の表面には、60mmの幅で、突き合わせ部分に沿って延びた、木繊維補強セメント板B6の表面よりも低い弾性目地処理材充填用ポケットが形成されており、該弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみポリチオウレタン系目地処理材C6が配されている。そして、ポリチオウレタン系目地処理材C6の表面の高さは、木繊維補強セメント板B6、B6の表面の高さと揃えてあり、木繊維補強セメント板B6、B6とポリチオウレタン系目地処理材C6の表面は、5kg/m以上の量のアクリル系弾性塗材E6により被覆されている。そのため、壁の表面には、木繊維補強セメント板B6、B6同士の突き合わせによる目地線が発生せず、無目地であるとともに、木繊維補強セメント板B6、B6の突き合わせ部分の不陸は小さい。また、木繊維補強セメント板B6、B6の側端部の突き合わせ部分に十分な量のポリチオウレタン系目地処理材C6が配置され、更にその上に十分な量のアクリル系弾性塗材E6が配置されることとなり、木繊維補強セメント板B6、B6の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮は抑えられ、アクリル系弾性塗材E6にはクラックが生じにくい。
更に、ポリチオウレタン系目地処理材C6の内部には、表面に、貫通した開口d2を1cmあたり9個有したポリエステル製シートD2が、開口d2にポリチオウレタン系目地処理材C6が充填された状態で配置されているので、ポリチオウレタン系目地処理材C6とポリエステル製シートD2は一体化し、ポリチオウレタン系目地処理材C6が補強されて、木繊維補強セメント板B6、B6の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮はより抑えられ、アクリル系弾性塗材E6にはクラックが更に生じにくい。
更に、弾性目地処理材充填用ポケットの内にある、木繊維補強セメント板B6、B6の側端部の突き合わせ部分は、弾性目地処理材充填用傾斜部b46と弾性目地処理材充填用傾斜部b86により、該弾性目地処理材充填用ポケットの他の部分よりも低く形成されているので、より多くの弾性目地処理材が配されることとなり、木繊維補強セメント板B6、B6の側端部の突き合わせ部分の経年の伸縮はより抑えられ、アクリル系弾性塗材E6にはクラックが更に生じにくい。
【0024】
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載の発明の範囲において種々の変形態を取り得る。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、複数の壁材が側端部を突き合わせた状態で固定され、該壁材の表面は弾性塗材に被覆されて無目地であるにもかかわらず、該壁材の突き合わせ部分の不陸が小さい壁構造を提供することができる。
【符号の説明】
【0026】
A 下地材
B1〜B6 木繊維補強セメント板
C1〜C6 ポリチオウレタン系目地処理材
D1、D2 ポリエステル製シート
E1〜E6 アクリル系弾性塗材
b11〜b16 木繊維補強セメント板の右側端部
b51〜b56 木繊維補強セメント板の左側端部
b21、b22、b24、b25、b61、b62、b64、b65 弾性目地処理材充填用凹部
b45、b85 弾性目地処理材充填用凹部
b31、b34、b71、b74 弾性目地処理材充填用垂直部
b23、b26、b63、b66 弾性目地処理材充填用傾斜部
b32、b35、b72、b75 弾性目地処理材充填用傾斜部
b44、b46、b84、b86 弾性目地処理材充填用傾斜部
d1、d2 ポリエステル製シートの開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の壁材が側端部を突き合わせた状態で固定されているとともに、表面が弾性塗材に被覆されて無目地である壁構造であって、
上記壁材の側端部の突き合わせ部分の表面には、弾性目地処理材充填用ポケットが形成されており、
上記弾性目地処理材充填用ポケットには、弾性目地処理材が充填されており、
上記弾性目地処理材の内部には、該弾性目地処理材が貫通可能な開口を多数有する網目状体が配置されており、
上記壁材と上記弾性目地処理材の表面は、弾性塗料により被覆された構造であり、
上記弾性目地処理材充填用ポケットは、上記壁材の表面よりも低く、かつ、該壁材の側端部の突き合わせ部分を中心として、30〜100mmの幅で、該壁材の側端部の突き合わせ部分に沿って延びており、
上記弾性目地処理材は、上記弾性目地処理材充填用ポケットを充填するようにのみ配されており、
上記弾性目地処理材の表面の高さは、上記壁材の表面の高さと揃えてある
ことを特徴とする壁構造。
【請求項2】
前記弾性目地処理材充填用ポケットにおいて、前記壁材の側端部の突き合わせ部分は、他の部分よりも低く形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の壁構造。
【請求項3】
前記弾性目地処理材充填用ポケットは、前記壁材の表面と0.2〜0.7mmの段差を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁構造。
【請求項4】
前記弾性目地処理材充填用ポケットは、前記壁材の表面から該壁材の突き合わせ部分に向かって傾斜する面を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁構造。
【請求項5】
前記網目状体の幅は、前記弾性目地処理材充填用ポケットの幅よりも小さい
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の壁構造。
【請求項6】
前記網目状体は、表面に1cmあたり3〜9個の前記開口を有し、該開口には前記弾性目地処理材が充填されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の壁構造。
【請求項7】
前記壁材と前記弾性目地処理材の表面を被覆している前記弾性塗材の量は、2〜6kg/mである
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−43000(P2011−43000A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192751(P2009−192751)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)