説明

壁紙糊付機

【課題】原反芯棒の係止溝を樹脂製として軽く回転できるように構成しているため、従来品より重量を約40%程度軽量化されている壁紙を糊付けすると、原反芯棒がより軽く回転してしまうために、その結果として壁紙原反ロールの回転がより軽く回転する構成となり、テンションが十分にかからず蛇行やシワの原因となってしまっていた。
【解決手段】原反芯棒を挿通する芯棒取付穴と、上記芯棒取付穴に挿通した原反芯棒が回転しない状態に保持する係止手段と、紙受けブラケットに当接して係止する紙受けブラケット係止部とを有し、上記係止手段で原反芯棒が回転しない状態に保持した状態で、紙受けブラケット係止部が紙受けブラケットに当接して係止することによって、壁紙糊付機が動作しても原反芯棒が回転しない状態を保持する原反芯棒固定具を有することを特徴とする壁紙糊付機を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙糊付機に関するものである。さらに詳しくは、壁紙の原反を保持する原反保持装置の原反芯棒が回転しないように固定する原反芯棒固定具を有する壁紙糊付機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁紙の施工をするために壁紙糊付機を用いて壁紙に糊付けすることが知られている。そして、壁紙糊付機に壁紙をセットする原反支持装置として、壁紙原反ロールに原反芯棒を通し、壁紙原反ロール両側をサイド盤で位置がずれないように固定して壁紙糊付機に設置する方法が一般的に採用されている。
【0003】
原反芯棒については、下記に記す特許文献1に知られているように、壁紙糊付機の両側の脚部に設けられている紙受ブラケットの軸受部に回転可能に嵌合させて軸支するための掛止溝を有し、壁紙の原反ロールを前記壁紙糊付機に取り付けて解反するために前記原反ロールに挿入されて前記原反ロールを回転可能に支持する壁紙糊付機の原反芯棒において、両先端部に衝撃を緩和するための緩衝部を設けたことを特徴とする壁紙糊付機の原反芯棒が知られている。
【0004】
また、本出願人より、原反ロールと壁紙糊付機本体間に設けられ、原反ロールから繰出される壁紙に張力を付与する壁紙糊付機における張力付与装置であって、張力付与装置は、定位置で回動するガイドローラーと、ガイドローラーとの間で、壁紙の経路を屈曲させてガイドし、原反ロールから繰出される壁紙の引出し力の増減に連動して自動的に変位し、ガイドローラーとで壁紙に付与される張力を調整する回動部材であることを特徴とする壁紙糊付機における張力付与装置(特許文献2)の提案をしてもいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−237300号公報
【特許文献2】特開2006−159496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
壁紙に関して、環境に配慮した製品が種々開発され、樹脂が強化されて耐久性が向上し、キズや汚れに強くて重量の軽い(従来品より重量を約40%程度軽量化されている)壁紙が最近になって開発されている。
【0007】
この従来よりも軽量な壁紙を上記特許文献1の原反芯棒を使用して壁紙糊付機にセットすると、原反芯棒を支持する紙受けブラケットの掛止溝の部分は樹脂製であったり、素材はアルミ製で表面が塗装された状態となっているために、紙受ブラケットの軸受部と原反芯棒の接触部は、原反芯棒の回転、すなわち、壁紙原反ロールの回転がより軽く回転する構成となっている。また、原反芯棒が金属製であっても、原反芯棒を支持する紙受けブラケットの掛止溝の部分が樹脂製であったり、素材がアルミ製で表面が塗装された状態の場合でも同様に壁紙原反ロールの回転が軽く回転してしまう。
【0008】
上記の状態で糊付作業を実施すると、壁紙原反ロールと壁紙糊付機又は壁紙糊付機用スリッター間における壁紙にかかるテンションが従来のテンションよりも小さくなってしまい、壁紙糊付機の送り出しローラーと検尺ローラーで壁紙を挟み込んで行う壁紙の搬送において、壁紙原反ロールと壁紙糊付機又は壁紙糊付機用スリッター間では、テンションが小さくなってしまったために壁紙がピンと張った状態にならず、そのために壁紙の搬送が安定せず、蛇行を発生したり、また、壁紙にシワが発生してしまったりするという課題が生じていた。
【0009】
そして、特許文献2の張力付与装置においては、原反ロールから繰出される壁紙の引出し力の増減に連動して自動的に変位するという技術であり、壁紙原反ロールの回転がより軽く回転する構成に対して対応することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明の請求項1は、壁紙原反ロールを脚部の紙受けブラケットに原反支持棒を介して設置する壁紙糊付機において、原反芯棒を挿通する芯棒取付穴と、上記芯棒取付穴に挿通した原反芯棒が回転しない状態に保持する係止手段と、紙受けブラケットに当接して係止する紙受けブラケット係止部とを有し、上記係止手段で原反芯棒が回転しない状態に保持した状態で、紙受けブラケット係止部が紙受けブラケットに当接して係止することによって、壁紙糊付機が動作しても原反芯棒が回転しない状態を保持する原反芯棒固定具を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2は、紙受けブラケット係止部は、紙受けブラケットが位置する方向へ突出し、紙受けブラケットの外形に沿わせることができる形状であって、上記突出部を2つ設けて、その2つの突出部間に紙受けブラケットを位置させて係止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、壁紙糊付機が動作しても原反芯棒が回転しない状態を保持するので、サイド盤で左右を挟み込まれた壁紙原反ロールのみが回転することとなり、サイド盤で左右を挟み込まれて適度なテンションが得られた状態で壁紙の搬送をすることができる。そのためにシワの発生や蛇行を防止することができる。
【0013】
また、本発明で原反芯棒固定具で原反芯棒を固定することは簡単に行えるため、従来よりも軽量である壁紙と従来通り重量のある壁紙を、例えば交互に施工する場合等においても、原反芯棒固定具を原反芯棒に装着したままで、原反芯棒が回転できる状態と、原反芯棒が回転できない状態に保持する状態との切り替えを容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を説明する斜視図である。
【図2】図1の実施形態の図の(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図である。
【図3】紙受けブラケットに芯棒をセットした状態を示す斜視図である。
【図4】図3の紙受けブラケットに芯棒をセットした状態を示す(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図である。
【図5】紙受けブラケットの別の形状を説明する図であり、(a)正面図、(b)凹み部である場合の側面図、(c)穴部である場合の側面図である。
【図6】図5に示す紙受けブラケットに嵌合する原反芯棒固定具の(a)は正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態について説明する。図1は原反芯棒固定具1の斜視図であり、図2(a)は壁紙糊付機の側面方向から見た状態の正面図、図2(b)は左側面図、図2(c)は平面図である。
【0016】
原反芯棒固定具1は、ベース部5にボス部2を設け、ボス部2には原反芯棒10に取り付けるための芯棒取付穴7が設けられている。また、ボス部2には、図2(a)及び図2(b)に示すようにボス部2の側面から芯棒取付穴7まで貫通したネジ用穴3と、図2(a)に示すように図2(a)の正面図側に開放した穴部にナット4が嵌合しており、固定用ネジ9をネジ用穴3に挿通させてナット4に螺合させることで固定用ネジ9の先端を原反芯棒10に当接させることによって、原反芯棒固定具1は原反芯棒10を回転しない状態に係止できるようになっている。図2(b)においてはネジ用穴3を説明するためにネジ用穴3を固定用ネジ9を2点鎖線で図示してネジ用穴3を実線で図示している。
【0017】
そして、ベース部5に紙受けブラケット11側に突出する紙受けブラケット係止部6,6を設け、突出した紙受けブラケット係止部6,6間に紙受けブラケット11を位置させることができるように構成している。8は、原反芯棒固定具1に細いチェーンや紐等を糊付機所有者が適宜取り付けるためのベース部5に設けた穴である。この穴8に適宜チェーンなどを取り付けて、壁紙糊付機の任意の場所に掛けておくなどすることで紛失したりしないようにするために設けているものである。
【0018】
上記においてはナット4は金属製のナットを使用し耐久性を持たせている。また、上記で説明しているナット4でなく、インサートナットを設置してボス部2に雌ネジを設けるようにしても良いのである。そしてまた、原反芯棒固定具1の形状についても、ベース部5の厚みを厚くして、ボス部2とベース部5が一体となった形状としても良いのである。
【0019】
図3及び図4は、壁紙糊付機に原反芯棒固定具1をセットした状態を示す図である。原反芯棒固定具1のセット方法は、まず原反芯棒10に1枚のサイド盤を挿通し、壁紙原反ロールを原反芯棒10にセットする。そして、サイド盤を取付けしていない側の原反芯棒10の端部からサイド盤を挿通し、壁紙の幅方向の中心がほぼ原反芯棒10の幅方向の中心に一致する位置で、壁紙原反ロールを左右のサイド盤で挟み込んで、サイド盤を原反芯棒10に固定する。
【0020】
もちろん、2枚のうちの一方のサイド盤を原反芯棒10に取り付けた際に、続けてすぐに原反芯棒固定具1を原反芯棒10に挿通する手順としてもかまわない。
【0021】
次に、上記のように壁紙原反ロールをセットした後に、紙受けブラケット係止部6,6の先端が壁紙糊付機脚部の紙受けブラケット11側に突出した状態となる原反芯棒固定具1の向きとして、原反芯棒10に原反芯棒固定具1の芯棒取付穴7を挿通し、紙受けブラケット係止部6を原反芯棒10に対して旋回させても紙受けブラケット11に接触しない位置(原反芯棒10の係止溝101よりも原反芯棒10の中心方向側の位置)まで芯棒取付穴7に挿通した状態でスライドさせ、壁紙原反ロールを設置した原反芯棒10の係止溝101を紙受けブラケット11の軸受け部に設置する。(図3及び図4参照)
【0022】
図4(a)では、紙受けブラケット11を2点鎖線で図示し、原反芯棒10の係止溝101の細くなった部分の芯棒を断面で図示した図としている。
【0023】
原反芯棒10の係止溝101を紙受けブラケット11の軸受け部に設置完了させると、紙受けブラケット係止部6,6間に紙受けブラケット11を挟み込む向きに調整し、原反芯棒固定具1を紙受けブラケット11側へスライドさせて図3及び図4に図示するように紙受けブラケット11を紙受けブラケット係止部6,6間に挟み込んだ状態で固定用ネジ9を締めて原反芯棒10に原反芯棒固定具1を固定する。
【0024】
糊付け作業を行うにあたり、壁紙糊付機を動作させても、紙受けブラケット係止部6,6間に紙受けブラケット11を挟み込んだ状態であるため、壁紙原反ロールの巻きが壁紙裏面が表面側になっている巻きであっても、また壁紙表面が表面側になっている巻きにおいても、紙受けブラケット係止部6,6が紙受けブラケット11に係止するために原反芯棒10は回転せず、サイド盤で左右を挟み込まれた壁紙原反ロールのみが回転することとなり、サイド盤で左右を挟み込まれて適度なテンションが得られた状態で壁紙の搬送をすることができる。
【0025】
また、紙受けブラケット係止部6は上記で図示しならが説明したような紙受けブラケット11を挟み込んだ状態とせず、2箇所のうち片側だけ設けておく構成としてもよい。片側だけ紙受けブラケット係止部を設けた場合においては、既に原反芯棒固定具を設置した状態においては原反芯棒10から一度外して、反対側の原反芯棒10の端部に取付け直すことによって壁紙の巻き方による回転方向が変わることへの対応が可能となる。
【0026】
上記においては、原反芯棒固定具1を片側の紙受けブラケット11にだけ適用する状態で説明したが、両方の紙受けブラケット11に適用するようにしても良いのである。本発明の原反芯棒固定具1は、樹脂成形品とすることがコスト的にも好ましい。
【0027】
また、紙受けブラケット係止部は対抗する平行な突出部としているが、紙受けブラケット自体の形状に合わせており、紙受けブラケットの形状が別の形状となっている場合には、その形状に合わせた突出部とするものである。
【0028】
また、例えば図5に示す図は、紙受けブラケット12の形状が別の場合である実施形態で、紙受けブラケット12は、原反芯棒10の中心軸方向に直交する方向の面に凹み部又は穴部13を有している。図5(a)は紙受けブラケット12の凹み部又は穴部13を正面から見た状態で、図5(b)は13が凹み部である場合の図5(a)の側面図であり、図5(c)は13が穴部である場合の図5(a)の側面図であり、図5(b)と図5(c)においては断面でそれぞれ図示している。
【0029】
図6は図5に示した紙受けブラケット12に係止して原反芯棒10が回転しない状態を保持する原反芯棒固定具の実施形態である。ベース15に芯棒取付穴7を有し、固定用ネジ9で原反芯棒を保持する構成は上記した図1から図4の説明と同様となるため、ネジ用穴3やナット4等の説明は省略する。
【0030】
図5(b)に図示するように、紙受けブラケット12の凹み部又は穴部13に嵌合する嵌合部14を突出させており、この嵌合部14を紙受けブラケット12の凹み部又は穴部13に嵌合させて原反芯棒10が回転しない状態を保持する。もちろん、図6に示した原反芯棒固定具を片側だけに設置しても良く、また原反芯棒10の両側に設置して固定するようにしても良い。
【0031】
また、図6で図示した嵌合部14は、ピン状のもので、紙受けブラケット12側にはそのピンが嵌合する穴部が設けられているという構成としてもよい。ピン状のものを採用する場合においては、ピンの断面は円状が設置しやすいが、ピンの先が細くなって穴部に通しやすくしたり、円状ではなく、その他の形状としてもかまわない。紙受けブラケット12部分の意匠的なデザインで何かのマークや記号などとしてもよいのである。

【符号の説明】
【0032】
1 原反芯棒固定具
2 ボス部
3 ネジ用穴
4 ナット
5 ベース部
6 紙受けブラケット係止部
7 芯棒取付穴
8 穴
9 固定用ネジ
10 原反芯棒
11 紙受けブラケット
12 紙受けブラケット
13 凹み部又は穴部
14 嵌合部
15 ベース部
101 係止溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁紙原反ロールを脚部の紙受けブラケットに原反支持棒を介して設置する壁紙糊付機において、
原反芯棒を挿通する芯棒取付穴と、
上記芯棒取付穴に挿通した原反芯棒が回転しない状態に保持する係止手段と、
紙受けブラケットに当接して係止する紙受けブラケット係止部とを有し、
上記係止手段で原反芯棒が回転しない状態に保持した状態で、紙受けブラケット係止部が紙受けブラケットに当接して係止することによって、壁紙糊付機が動作しても原反芯棒が回転しない状態を保持する原反芯棒固定具を有することを特徴とする壁紙糊付機。
【請求項2】
紙受けブラケット係止部は、紙受けブラケットが位置する方向へ突出し、紙受けブラケットの外形に沿わせることができる形状であって、上記突出部を2つ設けて、その2つの突出部間に紙受けブラケットを位置させて係止することを特徴とする請求項1記載の壁紙糊付機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−171223(P2012−171223A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35721(P2011−35721)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000163121)極東産機株式会社 (68)