説明

壁紙運搬具

【課題】
糊付した壁紙を養生装置や養生袋に入れて運搬すると、どうしても1つの養生装置、養生袋に複数枚の壁紙を入れるために、壁紙の重なりが運搬中、又は施工現場に移動する車中において発生し、壁紙に折りジワが発生してしまうことがあった。
【解決手段】
壁紙の幅方向となる板部材一端から中央付近まで設けた複数のスリットを有する板部材を複数枚使用し、上記スリットを設けた側を一致させた状態で板部材を平行に並べ、上記平行に並べた板部材と直交する方向で板部材を平行に並べ、上記スリットを対向させた状態で、対向した上記スリット同士をそれぞれ嵌合させることにより格子状の壁紙収納部を形成する運搬用仕切りを構成し、上記運搬用仕切りを袋体又は箱体の中に収納することによって、糊を塗布した壁紙の運搬中に糊の乾燥を防止することを特徴とする壁紙運搬具を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙養生具に関するものである。さらに詳しくは、糊付した壁紙の乾燥防止や運搬の際に使用する壁紙運搬具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁紙の施工をするために壁紙糊付機を用いて壁紙に糊付けすることが知られている。そして、壁紙糊付機を施工現場に持ち込んで糊付する場合と、壁紙糊付機を施工現場に持ち込まずに事務所等の一角において壁紙に糊付けし、糊付けした壁紙が乾燥しないように養生装置や長方形で1辺がファスナーで開放される養生袋などに入れて、施工現場に壁紙を運搬して施工するということが行われている。
【0003】
壁紙糊付機を施工現場に持ち運ぶには、車への積みおろしや、施工現場までの運搬、特にエレベーターが無い場合のマンションの3階以上の階だと運搬が大変であり、また施工後の壁紙糊付機の洗浄なども大変である。
【0004】
そのために、壁紙糊付機を施工現場に持ち込まずに事務所等で壁紙の糊付けをして、糊付した壁紙だけを現場に持って行き施工するという方法が選択されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−1020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
糊付した壁紙を養生装置や養生袋に入れて運搬すると、どうしても1つの養生装置、養生袋に複数枚の壁紙を入れるために、壁紙の重なりが運搬中、又は施工現場に移動する車中において発生する。壁紙には、糊付けをしているため壁紙自体の重量が重くなっており、重なった部分において、下側に位置する壁紙に折りジワが発生してしまうことがあった。
【0007】
この折りジワは、特に紙壁紙と呼ばれている種類の壁紙、汚れ防止加工や表面強化加工が施されている壁紙、ストライプ柄タイプの壁紙などで発生しやすい状況となっていた。この折りジワは、壁紙を壁面に貼り付けた施工後でもはっきりとそのシワが残ってしまうため、壁紙施工の仕上げ上の課題となっており、その改善が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明は、糊を塗布した壁紙の乾燥を防止し、上記壁紙を収納して運搬する壁紙運搬具であって、壁紙の幅方向となる板部材一端から中央付近まで設けた複数のスリットを有する板部材を複数枚使用し、上記スリットを設けた側を一致させた状態で板部材を平行に並べ、上記平行に並べた板部材と直交する方向で板部材を平行に並べ、上記スリットを対向させた状態で、対向した上記スリット同士をそれぞれ嵌合させることにより格子状の壁紙収納部を形成する運搬用仕切りを構成し、上記運搬用仕切りを袋体又は箱体の中に収納することによって、糊を塗布した壁紙の運搬中に糊の乾燥を防止することを特徴とする。
【0009】
また、運搬用仕切りを収納する袋体又は箱体は、別体の蓋状となる袋体又は箱体をかぶせることによって運搬用仕切りを袋体又は箱内の中に収納することを特徴とする。
【0010】
また、運搬用仕切りを収納する袋体は、少なくとも1つの面が線状のファスナーによって開口可能に設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、複数のスリットを設けることによって分割されている格子形成部の幅寸法が全て同一寸法とされていることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、複数のスリットを設けることによって分割されている格子形成部の両端から中央へ向かう方向に数えて同じ番目に当たる1組の格子形成部の幅寸法が同一寸法とされていることを特徴とする。このように同じ番目に当たる1組の格子形成部の幅寸法が同一寸法とされていることにより、板部材の向きを考慮しなくても運搬用仕切りを組立でき、かつ壁紙を収納する収納部の大きさは種々の実施形態を取ることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、複数枚の板部材を組立して壁紙を収納する収納部を有する運搬用仕切りを構成するために、壁紙同士の重なりによるシワの発生を防止することができる。また、運搬中に、壁紙は運搬用仕切りや袋体又は箱体によって支えられる状態となり、単に養生袋に入れるだけと違って運び易く、また壁紙の損傷自体も抑えることができる。
【0014】
運搬用仕切りは折り畳むことができるため、使用しない場合には折り畳むことによってスペースを取らず、使い勝手のよい壁紙運搬具の提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の1例の板部材を説明する図である。
【図2】板部材を組み合わせた状態を説明する斜視図である。
【図3】壁紙運搬具の1例を説明する斜視図である。
【図4】別の壁紙運搬具の1例を説明する斜視図である。
【図5】運搬用仕切りを畳んだ状態を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を説明する。図1は、運搬用仕切り1を構成するための板部材2である。糊付した壁紙の水分が浸透せず軽量な素材が適しており、例えば樹脂製ダンボールや防水加工をしたダンボールなどで製作することが好ましい。防水性を有し、軽量であれば上記以外の素材を使用してももちろんかまわない。
【0017】
この板部材2には、壁紙の幅方向側の一方の端部から中央に向かって複数のスリット3が設けられている。図1に図示した実施形態は1例であるが、スリット3は3箇所設けた構成としている。
【0018】
上記の板部材2を平行にスリット3が設けられた側を上にした状態で3枚並べ、上記3枚に直交する方向に、板部材2をスリット3が設けられた側を下にした状態でスリット3同士を嵌合するようにして組み合わせて複数の格子状の収納部4を有する運搬用仕切り1とする。
【0019】
図2に複数の格子状の収納部4を有する運搬用仕切り1の斜視図を示す。スリット3を板部材2のちょうど中央又は中央よりも少し深く設けると、図2に示したように、格子状に組み合わせた複数の板部材2の底部と頂部は一致できる構成となる。スリット3を板部材2の中央に届かない状態の深さとすると、スリット3が設けられた側を下にした状態で組み合わせる板部材2は、スリット3が設けられた側を上にした状態で組み合わせる板部材2よりも底部と頂部において板部材2の端部が上方に位置することになり、段差ができることとなるが、その段差は数センチ程度であれば使用上は特に問題とならないため、スリット3の深さは板部材2の中央付近まで到達する深さであればよい。もちろん安定性を考慮すると、組み合わせた状態で、スリット3が設けられた側を上にした板部材2の端部とスリット3が設けられた側を下にした板部材2のそれぞれの底部と頂部が一致するようにした構成の安定性が一番良いのはいうまでもない。
【0020】
図3は、図2のように組合せた運搬用仕切り1を上方が四角形状に開口した袋体5の中に入れ、上から別の蓋状の袋体6をかぶせて糊付き壁紙の乾燥を防ぐようにした実施形態である。
【0021】
そして、図4は袋体の別の実施形態であり、袋体7の上部の1辺に袋体7の蓋の部分となる蓋部7aを設けて、蓋部7aと袋体7の3辺7bとを線状のファスナー(図示省略)で開閉できるようにしたものである。線状のファスナー以外でも糊付き壁紙の端部の乾燥を抑えることができるようなものであれば採用は可能である。
【0022】
壁紙運搬具は、上記のように運搬用仕切り1を袋体5、又は袋体7の中に入れて構成するのである。図3及び図4においては、運搬用仕切り1の高さと袋体6又は袋体7の高さをほぼ同一となった状態にて図示しているが、袋体5と袋体7の高さを高くしてもよい。袋体5と袋体7の高さを高くし、糊付けした壁紙の端部が運搬用仕切り1から少し飛びだすような運搬用仕切り1の高さとしておくと、運搬用仕切り1の収納部4に収納した壁紙を取り出しやすくなる。壁紙の端部が運搬用仕切り1から少し飛びだした状態の実施形態においては、壁紙施工現場へ運搬する際、車中で壁紙の端部を傷めないように注意が必要である。車中においては、現場には壁紙糊付機を運搬する必要がないため、壁紙運搬具を複数使用して必要な分の壁紙を運搬するとよい。横置きに積み重ねて車に積み込んでもいいし、図3や図4のように立てた状態で積み込んでもよい。横置きに積み重ねる場合においては、袋体5や袋体7の開口部側においてスリット3が設けられた板部材2が鉛直方向で、スリット3が設けられていない板部材2が水平方向になるように置くとよい。
【0023】
図1及び図2に示した運搬用仕切り1は、図1で説明したスリット3の幅は板部材2の板厚と同等か、板部材2の板厚より少し大きくしている。もちろん上記に説明した樹脂製ダンボールや防水加工をしたダンボールであれば、素材が柔らかいためにスリット3の幅が少々きつめであっても特に問題になることはない。
【0024】
少しスリット3の幅を板厚よりも大きくしておくと、図5に示すように、運搬用仕切り1を組み立てた状態で、折り畳むことがスムーズに行える。運搬用仕切り1を組み立てた状態で折り畳めるために、使用しない際にスペースを取らずに保管しやすい。もちろん袋体も折り畳んでスペースを取らずに保管できる。
【0025】
図1において板部材2にはスリット3を3箇所設けた実施形態を説明したが、スリット3の数を限定するわけではない。2つ以上のスリットを適宜設ければよいのである。
【0026】
そして、スリットの数が奇数であれば、格子形成部2aは偶数となり収納部の1列の数は偶数となる。スリットの数が偶数であれば、格子形成部2aは奇数となり収納部の1列の数は奇数となる。
【0027】
格子形成部2aの幅は全て同じとしてもよいし、全て違う寸法として、運搬用仕切り1の格子は大きさを変えてもよい。スリット3を奇数設けて格子形成部2aが偶数となる場合は、両端に位置する格子形成部2aの組、そして両端に位置する1組の1つ内側となる格子形成部2aの1組というように1組単位で格子形成部の幅寸法を同じにしておくと板部材2の向きは特に関係なく運搬用仕切り1に組み立てることができる。
【0028】
スリット3を偶数設けて格子形成部2aが奇数となる場合は、真ん中に位置する格子形成部は1つで任意の幅寸法とし、両端の格子形成部の1組、そしてその1つ内側に位置する格子形成部の1組、さらに1つ内側に位置する1組というように順次内側に位置する1組単位で格子形成部の幅寸法を同じにしておくと板部材の向きを考慮しなくても組立ができる構成として実施可能にできるのである。
【0029】
もちろん、スリットの数が偶数でも奇数でも、いくつかの格子形成部2aの組の全てを同じ幅寸法としても良いし、複数の格子形成部の組の1つおきに幅寸法を任意の寸法、別の任意の寸法と交互に設定したり、両端だけ小さい幅寸法としたりと幅寸法の設定は自由かつ任意にしてかまわない。
【0030】
格子形成部の幅寸法を全て異なる寸法にした場合には、向きを考慮して組立しないと、運搬用仕切り1を上から見た状態で、板部材の端部が四角形にならずに凹凸した状態となってしまって、袋体5や袋体7に入らない状態となってしまう。
【0031】
使用者の使い勝手をことを考慮すると、板部材の向きを特に意識しなくても組立できるような格子形成部の寸法としておくことが望ましいが、格子形成部の幅寸法を異なる寸法にすることも採用可能である。
【0032】
もちろん、板部材を複数枚使用しているので、板部材1枚を外すことによって、寸法の大きな収納部を形成するような使用方法を採用してもよいのである。ホールや天井などの場所においては、長い糊付け長さとなる場合(例えば10mを越えるような糊付け長さ)があり、そのような長い糊付した壁紙を収納するに、本発明は大きな収納部を適宜形成することが可能である。
【0033】
また、上記では袋体5、袋体7を使用する実施形態で説明したが、袋体ではなく、折りたたみが可能な箱体としてもよいのである。箱体とする場合においては図4に示した実施形態では、線状のファスナーで開閉するのではなく、蓋部7aには、運搬用仕切り1と3辺7bの間に差し込まれる差し込み片を設けておくと糊の乾燥が確実に防止できる構成となる。
【0034】
袋体とした場合でも、箱体とした場合でも、運搬用仕切り1に組み立てた状態で、運搬用仕切り1と袋体あるいは箱体との間に数センチ程度の間隔が空くように、袋体と箱体を少し大きめの寸法としておくと良い。
【符号の説明】
【0035】
1 運搬用仕切り
2 板部材
2a 格子形成部
3 スリット
4 収納部
5 袋体
6 蓋状の袋体
7 袋体
7a 蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糊を塗布した壁紙の乾燥を防止し、上記壁紙を収納して運搬する壁紙運搬具であって、
壁紙の幅方向となる板部材一端から中央付近まで設けた複数のスリットを有する板部材を複数枚使用し、
上記スリットを設けた側を一致させた状態で板部材を平行に並べ、
上記平行に並べた板部材と直交する方向で板部材を平行に並べ、上記スリットを対向させた状態で、対向した上記スリット同士をそれぞれ嵌合させることにより格子状の壁紙収納部を形成する運搬用仕切りを構成し、
上記運搬用仕切りを袋体又は箱体の中に収納することによって、糊を塗布した壁紙の運搬中に糊の乾燥を防止することを特徴とする壁紙運搬具。
【請求項2】
運搬用仕切りを収納する袋体又は箱体は、別体の蓋状となる袋体又は箱体をかぶせることによって運搬用仕切りを袋体又は箱内の中に収納することを特徴とする請求項1記載の壁紙運搬具。
【請求項3】
運搬用仕切りを収納する袋体は、少なくとも1つの面が線状のファスナーによって開口可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の壁紙運搬具。
【請求項4】
複数のスリットを設けることによって分割されている格子形成部の幅寸法が全て同一寸法とされていることを特徴とする請求項1記載の壁紙運搬具。
【請求項5】
複数のスリットを設けることによって分割されている格子形成部の両端から中央へ向かう方向に数えて同じ番目に当たる1組の格子形成部の幅寸法が同一寸法とされていることを特徴とする請求項1記載の壁紙運搬具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−187755(P2012−187755A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51615(P2011−51615)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000163121)極東産機株式会社 (68)