説明

壁面の下地構造、壁材処理テープ及び壁面構造

【課題】壁面の端縁部や隅部、壁面開口部の周縁部等における納まりが良く、出隅においても良好な構造を持ち、壁材の基板の一部が露出しない下地の構造を提供する。
【解決手段】基板と介装シートからなる壁材を複数、隣り合わせに配列・固定すると共に、壁面の端縁部、隅部、壁面開口部の周縁部等ではサイズ調整した裁断壁材を配列・固定し、所定の表面処理を行った下地の壁面構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面の下地構造及びその下地構造上に仕上げ塗膜を形成してなる壁面構造に関する。より具体的には、本発明は、パネル板等である基板に介装シートを貼着した壁材を配列・固定して形成する下地構造であって、壁面の端縁部や隅部、壁面の開口部の周縁、壁面が外方向へ張り出した出隅等を簡便、良好に処理した下地構造と、この下地構造の処理に用いる壁材処理テープと、前記下地構造上に仕上げ塗膜を形成した壁面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−217951 上記の特許文献1は、本願の出願人の出願に係るものであって、仕上げ塗膜によって仕上げる壁面施工における下地の形成に関する。特許文献1では、断熱性のパネル板等である基板の表面に、基板における隣接する2辺の端縁から張出した重ね代部を有する介装シートを貼着してなる壁材と、このような壁材を複数隣り合わせに配列・固定して仕上げ塗膜形成用の下地を構成する施工方法とを開示している。
【0004】
【特許文献2】特開2008−169643 上記の特許文献2は出隅の処理方法を開示する。即ち、化粧シートの化粧層に出隅線に合わせた切り込みを入れ、この切り込み部分を折り曲げた化粧シートを出隅部分に合わせて貼り付けたもとで、化粧シートに含まれる接着剤を出隅部分の折り曲げ部に押出して、出隅の折り曲げ部を埋めるという出隅の表面処理を開示する。
【発明の概要】
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般的に、複数の壁材を配列・固定して下地を構成するに当たり、最後に壁材を配列・固定する張り仕舞いの部分では、壁材のサイズと一致しない中途半端な余剰スペースが余ってしまう場合が多く、この部分での下地構造の良好な納まりが要求される。施工すべき壁面に窓枠部や換気扇の設置部のような開口部が設けられている場合にも、その開口部の周縁において同様の要求を生じる。しかし特許文献1では、このような要求に対処する手段や方法を開示していない。
【0007】
次に、施工対象部分に出隅(外方向へ張り出した壁面角部)が含まれる場合、その出隅での良好な下地構造の形成も問題となるが、この点についても特許文献1では開示がない。特許文献2では出隅の処理方法を開示するが、この方法は単に化粧シートの折り曲げによって出隅の表面処理を行うものであって、パネル板等の建材を用いた下地の出隅構造の形成及びその表面処理については、何も述べていない。
【0008】
又、特許文献1では、「基板と介装シートが同じ平面サイズであり、介装シートを基板に対して対角線方向に重ね代部の張出し分だけズラして貼着した」構成の壁材を用いる場合が、好ましい実施形態として開示されている。この場合、壁材における基板表面の露出部分は、基本的には隣接する壁材の介装シートの重ね代部によって過不足なく覆われる。しかし、最初に壁材を固定する貼り始めの部分や、前記の張り仕舞いの部分では、壁材の基板表面の一部が露出したままになる場合がある。施工対象部分に窓枠部等の開口部が存在する場合における開口部の周縁や、上記した出隅においても同様のことが起こり得る。
【0009】
このような基板の露出部分では、仕上げ塗膜に対して親和性を示す塗料を塗布したとしても、仕上げ塗膜の接合性あるいは密着性が不十分となり易い。更に、基板が例えば硬質発泡樹脂素材からなる場合、基板表面の露出部分において上記の親和性塗料の吸い込みを起こし、この点でも仕上げ塗膜の接合性等が不十分となり易い。
【0010】
そこで本発明は、特許文献1に開示された発明を基礎として、壁面の端縁部や隅部、壁面開口部の周縁部等における納まりが良く、出隅においても良好な構造を持ち、かつ壁材の基板の一部が露出しない下地の構造とその施工手段とを提供することを、解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための第1発明の構成は、仕上げ塗膜を形成するための平坦壁面の下地構造であって、壁材として下記の標準壁材Aを複数、隣り合わせに配列・固定すると共に、壁面の上下方向、左右方向の端縁部又は隅部あるいは壁面に設けた開口部の上下方向、左右方向の周縁部又は隅部において標準壁材Aの平面サイズに合致しない余剰スペースを生じる場合には、これらの余剰スペースに壁材として下記の裁断壁材Bを配列・固定した、下地の壁面構造である。
【0012】
標準壁材A:同じ方形の平面サイズである基板と介装シートからなり、介装シ−トを基板に対して対角線方向にズラして接着させることにより、介装シートにおける隣接する2辺を基板から張出させて基板の厚さ以上の幅を有する重ね代部を形成させると共に、基板における隣接する2辺の表面には前記重ね代部に対応する幅の表面露出部を形成している壁材。
【0013】
裁断壁材B:標準壁材Aを前記余剰スペースに合致する平面サイズに裁断してなる壁材。
【0014】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための第2発明の構成は、前記第1発明に係る壁材の介装シ−トの重ね代部が、その張出し方向において隣合う壁材の基板に対して、その表面露出部を覆う状態で接着されている、下地の壁面構造である。
【0015】
(第1発明及び第2発明のより具体的な構成)
上記第1発明及び第2発明において、標準壁材Aと裁断壁材Bのいずれについても、必ずしも限定されないが、好ましくは以下の構成を備える。
【0016】
(1)介装シ−トは網状体、編物、織布又は不織布からなる。
【0017】
(2)介装シ−トの表面には仕上げ塗膜を形成する塗材に対して親和性の塗料を塗布した塗料層が形成されている。
【0018】
(3)介装シ−トと基板とは接着剤によって固定され、介装シ−トの重ね代部の裏面には粘着加工が施されており、この粘着加工部によって、隣合う壁材の基板に対して接着されている。なお、この粘着加工部は、使用前においては剥離シート又は剥離テープを被覆していることが好ましい。
【0019】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る壁面の端縁部又は隅部あるいは壁面に設けた開口部の周縁部又は隅部に配列・固定する壁材において、以下(1)〜(3)の表面処理を伴う、下地の壁面構造である。
【0020】
(1)標準壁材A又は裁断壁材Bの重ね代部が壁面の端縁部あるいは壁面に設けた開口部の周縁部方向に張出す場合には、これらの重ね代部を折曲げて、当該標準壁材A又は裁断壁材Bにおける基板の少なくとも厚み面を覆う状態で接着させる。
【0021】
(2)標準壁材A又は裁断壁材Bの重ね代部が壁面の隅部あるいは壁面に設けた開口部の隅部方向に張出す場合にも、これらの重ね代部を折曲げて、当該標準壁材A又は裁断壁材Bにおける基板の少なくとも厚み面を覆う状態で接着させる。
【0022】
なお、上記の第3発明の(2)において、隅部方向に張出す重ね代部を折曲げる際、後述するように、重ね代部の角部(壁材の基板における隣接する2辺の端縁の延長線で囲まれる部分)は切落としたり、一方の端縁の延長線沿いに切り込みを入れて、壁材の側面で重ね代部を重ね合わせ状に折曲げたり、切り込みを入れることなく重ね折り状に折曲げることができる。
【0023】
(3)標準壁材A又は裁断壁材Bにおける基板の表面露出部が壁面の端縁部又は隅部あるいは壁面に設けた開口部の周縁部又は隅部方向に位置する場合には、帯状の壁材処理テープを、基板の表面露出部から少なくとも厚み面まで至る状態で、折曲げて接着させる。
【0024】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための第4発明の構成は、仕上げ塗膜を形成するための壁面出隅部の下地構造であって、第1発明に記載した標準壁材A又は裁断壁材Bを用いて、あるいは更に、壁材として前記標準壁材A又は裁断壁材Bにおける出隅側の厚み面を任意の傾斜角度を持つテーパ面に加工してなる出隅専用壁材Cを用いて、出隅の各片側の壁部を構成することにより、以下(4)又は(5)の出隅を構成した、下地の壁面構造である。
【0025】
(4)出隅の片側の壁部を構成する標準壁材A又は裁断壁材Bの先端の側面(出隅側の厚み面)に対して、出隅の他の片側の壁部を構成する標準壁材A又は裁断壁材Bの裏面の端縁部を合致させて固定することにより、略直角の張り出し角度を有する出隅を構成する。
【0026】
(5)出隅の片側の壁部を構成する標準壁材A又は裁断壁材Bの先端の側面(出隅側の厚み面)又は裏面先端の端縁部に対して、出隅の他の片側の壁部を構成する出隅専用壁材Cのテーパ面を当接させて固定することにより、あるいは、出隅の両側の壁部を構成する出隅専用壁材Cのテーパ面同士を突き合わせ状に当接させて固定することにより、任意の張り出し角度を有する出隅を構成する。
【0027】
(第4発明のより具体的な構成)
この第4発明のより具体的な構成を、図面に基づいて説明する。第4発明の(4)に係る下地の出隅構造においては、図1の(a)に示すように、出隅の片側の壁面を構成する縦向きに図示した標準壁材A又は裁断壁材B(図示の便宜上、これらの壁材の基板のみを表示する)の先端の側面(厚み面)に対して、出隅の他の片側の壁面を構成する横向きに図示した標準壁材A又は裁断壁材Bの裏面先端の端縁部を合致させて固定し、これによって、略直角の張り出し角度を有する出隅を構成している。
【0028】
第4発明の(5)に係る下地の出隅構造に関して、出隅専用壁材Cは、図1の(b)に示すように、標準壁材A又は裁断壁材Bの先端の側面(厚み面)を任意の傾斜角度を持つテーパ面に加工したものである。図1の(c)〜図1の(e)では、出隅の両側の壁面を構成する出隅専用壁材Cにおける種々の傾斜角度を持つテーパ面同士を突き合せ状に当接させて固定することにより、略直角、鈍角又は鋭角の張り出し角度を有する出隅を構成している。一方、図1の(f)では出隅専用壁材Cのテーパ面を標準壁材A又は裁断壁材Bの先端の側面(厚み面)に合致させて固定することにより鈍角の張り出し角度を有する出隅を構成し、図1の(g)では出隅専用壁材Cのテーパ面を標準壁材A又は裁断壁材Bの裏面先端の端縁部に合致させて固定することにより鋭角の張り出し角度を有する出隅を構成している。
【0029】
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための第5発明の構成は、前記第4発明に係る出隅の壁部を構成する標準壁材A、裁断壁材B又は出隅専用壁材Cにおいて、以下(6)〜(8)の表面処理を伴う、下地の壁面構造である。
【0030】
(6)出隅の片側の壁部を構成する標準壁材A又は裁断壁材Bの先端の側面(出隅側の厚み面)が出隅部に露出する場合に、この露出部分を、出隅の他の片側の壁部を構成する標準壁材A、裁断壁材B又は出隅専用壁材Cから出隅方向へ張出した介装シ−トの重ね代部を接着させて覆う。
【0031】
(7)出隅の片側の壁部を構成する標準壁材A、裁断壁材B又は出隅専用壁材Cにおける基板の表面露出部が出隅部に露出する場合に、この露出部分を、出隅の他の片側の壁部を構成する標準壁材A、裁断壁材B又は出隅専用壁材Cから出隅方向へ張出した介装シ−トの重ね代部を接着させて覆う。
【0032】
(8)出隅の両側の壁部を構成するいずれの壁材からも重ね代部が出隅方向へ張出していない場合には、前記介装シ−トと同一又は類似の材料からなる帯状の壁材処理テープを出隅部に接着させて、前記(6)又は(7)に記載した出隅部の露出部分を覆う。
【0033】
(第6発明の構成)
上記課題を解決するための第6発明の構成は、第1発明に記載の標準壁材Aにおける介装シ−トと同一又は類似の材料からなる帯状シート部材であって、その裏面の幅方向の一端側に沿って位置決め用の接着剤加工部を備える、壁材処理テープである。
【0034】
(第6発明のより具体的な構成)
壁材処理テープとしては、位置決め用の接着剤加工部を備える点で共通し、用途が異なる複数種類のものを準備することができる。壁材処理テープにおける位置決め用の接着剤加工部には、使用前においては剥離シート又は剥離テープを被覆していることが好ましい。壁材処理テープは、少なくとも位置決め用の接着剤加工部の境界線に沿って予め折り目を形成することが好ましい。あるいは更に、後述する基板の厚み面に接着する部分と表面露出部に接着する部分との境界線に沿って予め折り目を形成し、又は、後述する出隅の角部に整合するような折り目を予め形成しておくことが好ましい。
【0035】
壁材処理テープの用途としては、例えば壁部における張り仕舞い部分の建材に用いるものと、壁部における端部や開口部部分の建材に用いるものがある。これらの壁材処理テープは、前記の第3発明に係る表面処理において、位置決め用の接着剤加工部を壁材の裏面に接着することにより位置決めしたもとで、その被覆部(位置決め用の接着剤加工部以外の、必要な幅を有する部分)が基板の厚み面、更には基板の表面露出部を覆うように、例えば接着剤を用いて接着させる。
【0036】
又、壁材処理テープの用途として、前記の第5発明に係る表面処理において、出隅部に露出する基板の厚み面や表面露出部を覆うために用いるものもある。これらの壁材処理テープにおいても、位置決め用の接着剤加工部を建材の所定部に接着させて位置決めしたもとで、その被覆部が基板の露出部を覆うように、例えば接着剤を用いて接着させる。
【0037】
(第7発明の構成)
上記課題を解決するための第7発明の構成は、下記(9)及び/又は(10)に係る下地に対して仕上げ塗膜を形成してなる、壁面構造である。
【0038】
(9)第1発明又は第2発に記載の下地の壁面構造に対して第3発明に記載の表面処理を行った下地であって、その表面を構成する介装シ−ト及び壁材処理テープには、仕上げ塗膜を形成する塗材に対して親和性の塗料を塗布した下地。
【0039】
(10)第4発明に記載の下地の壁面構造に対して第5発明に記載の表面処理を行った下地であって、その表面を構成する介装シ−ト及び壁材処理テープには、仕上げ塗膜を形成する塗材に対して親和性の塗料を塗布した下地。
【発明の効果】
【0040】
第1発明又は第2発明によって、特許文献1に開示された発明を基礎として、壁面の端縁部や隅部、壁面開口部の周縁部等における納まりが良い下地の壁面構造が提供される。なお、壁材の固定に使用される皿ビス等の頭部の出っ張りを介装シートにより吸収することができるため、配列・固定された複数の壁材により構成される表面の均一性を維持することができる。
【0041】
第3発明によって、第1発明又は第2発明に係る下地の壁面構造であって、壁材の基板の一部が露出せず、仕上げ塗膜の接合性あるいは密着性が良好である下地の壁面構造が提供される。
【0042】
第4発明によって、出隅においても良好な構造を持つ下地の壁面構造が提供される。
【0043】
第5発明によって、第4発明に係る下地の壁面構造であって、壁材の基板の一部が露出せず、仕上げ塗膜の接合性あるいは密着性が良好である下地の壁面構造が提供される。
【0044】
第6発明によって、第3発明又は第5発明に係る下地の壁面構造の形成に好適な表面処理手段としての壁材処理テープが提供される。この壁材処理テープは、裏面の幅方向の一端側に沿って位置決め用の接着剤加工部を備える点、壁材の基板の露出部を覆うために用いるものである点等において、従来の目地処理テープとは全く異なるものである。
【0045】
第7発明により、壁面の端縁部や隅部、壁面開口部の周縁部等における納まりが良く出隅においても良好な構造を持ち、壁材の基板の一部が露出しない下地の構造に対して、仕上げ塗膜が良好な接合性あるいは密着性を伴って形成された壁面構造が提供される。なお、壁材処理テープの被覆部の接着に接着剤を用いる場合、その被覆部の端部の段差を接着剤で埋めて、面の連続性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】各種の出隅構造を示す図である。
【図2】壁材の斜視図である。
【図3】図2のX−X線に沿う部分の断面図である。
【図4】壁材同士を隣合わせに配列した場合の、重ね代部と基板の表面露出部の重ね合わせを示した断面図である。
【図5】壁材処理テープの斜視図であって、要部拡大図を伴う。
【図6】壁材処理テープによる表面処理を示す断面図である。
【図7】実施例4に係る壁構造を示した図である。
【図8】壁材の基板の側面と他の壁材の基板の裏面とを合致させて形成した出隅の処理を示す断面図である。
【図9】壁材のテーパ面同士を合致させて形成した出隅の処理を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
次に、本発明の実施形態を、その最良の形態を含めて説明する。
〔標準壁材A〕
本発明で用いる壁材(標準壁材A)は、単一面の仕上げ塗膜を形成して大壁に仕上げるために用いられる壁材であって、基板とその表面に貼着された介装シ−トとからなる。介装シ−トは、基板における隣接する2辺の端縁(基端線)から張出して重ね代部を形成している。
【0048】
基板と介装シ−トとは、一般的には4辺形あるいは方形の平面形状に形成されることが好ましいが、このような形状には限定されない。規則的に配列が可能な3辺形も含まれる。例えば直角三角形の壁材を規則的に配列することにより、上記4辺形あるいは方形の壁材と同じ形を作り出すことができる。
【0049】
基板と介装シ−トとは異なる平面サイズであっても良いが、より好ましくは同じ平面サイズである。基板と介装シ−トが同じ4辺形あるいは方形の平面サイズである場合には、介装シ−トを基板に対して対角線方向に重ね代部の張出し分だけズラして貼着することができる。基板と介装シ−トが異なる平面サイズである場合としては、例えば、介装シ−トが重ね代部の分だけ基板より大きい場合を例示できる。この場合、基板と介装シ−トとは重ね代部が張出した2辺に対向する(対角線方向の)2辺において、端縁部が一致する。
【0050】
介装シ−トは、前記のように、その隣接する2辺が基板から張出して重ね代部を形成する。そして、重ね代部の裏面には粘着加工部が設けられる。壁構造の端縁部又は隅部に使用される壁材であって、隣り合う壁材が存在しないような使用部位においては、その方向へ張出す重ね代部は壁材側面を覆うように折り曲げて接着することができる。このとき、重ね代部の張出し幅が壁材の基板の厚み面(側面の幅と一致すると、壁材厚み面の処理が簡便となる。壁構造の隅部に使用される標準壁材A又は後述する裁断壁材Bでは、重ね代部の角部(重ね代部のうち、壁材の基板における隣接する2辺の端縁の延長線で囲まれる部分)は、重ね代部の壁材厚み面への折り曲げに際して、切り落としたり、一方の端縁の延長線部に切り込みを入れて壁材厚み面で他方の重ね代部と重ね合わせたり、切り込みを入れることなく壁材厚み面に当該角部を折り込んだりすることができる。
【0051】
壁材は、建築物の柱、梁、胴縁等に対して、互いに隣り合う状態に配列・固定され、壁構造を構成する。また、壁材それぞれの厚み面又は裏面同士を合致させて固定することにより、出隅を構成する。その固定には、例えば、釘、ネジ、ボルトや固定用の金物等の固定具が用いられる。又、接着剤により固定される場合もある。このような接着剤に用いられる素材としては、樹脂系の素材ではエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、変性シリコン樹脂が例示され、セメント系の素材では結合剤にポルトランドセメントと合成樹脂エマルション及び骨材としての珪砂を配合したものが例示される。
【0052】
また、これら金物等の固定具と接着剤を併用することもあり、好ましく用いられる。これらを併用することにより、接着剤が十分に接着するまでの間の壁材の剥がれなどを少なくすることができる。
【0053】
〔基板〕
壁材の基板は、限定はされないが、例えば断熱効果が高く、比較的軽量である発泡塩化ビニル、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ウレタン、発泡イソシアヌレート、シラスボード、ALC等が好ましく例示される。他にも、建築物の内外壁に用いられる合板、単板、木質繊維板、石膏ボード、GRC板、スレート板、窯業系サイディング、押出し成形セメント板等も例示される。
【0054】
壁材を柱、梁、胴縁等に対して金物等で固定する場合においては、基板の強度があるALC,合板,単板,木質繊維板,石膏ボード,GRC板,スレート板,窯業系サイディング,押出し成形セメント板等が好ましく用いられる。
【0055】
なぜなら、壁材を金物等で固定するため壁材自体の強度が必要となり、更に胴縁等に直接固定するので、壁構造や出隅の表面に中空部が形成されることが多く、そのため壁材自体の強度が必要となるためである。
【0056】
壁材を既存の壁面に対して接着剤などで固定する場合では、基板の重量が比較的軽く、合成樹脂を主成分とした発泡体が好ましく用いられる。この合成樹脂を主成分とした発泡体は、前記の発泡塩化ビニル、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ウレタン、発泡イソシアヌレート等がある。
【0057】
これらを用いることで、建築物に掛かる重量が少なくなる。又、発泡体を用いることで、仕上げ面を平滑に仕上げることができる。これら発泡体の中でも比較的燃え難い発泡イソシアヌレートが好ましく用いられることがある。
【0058】
〔介装シ−ト〕
介装シ−トの構成材料は限定されないが、好ましくは、網状体(網状に形成されたもの)、編物、織布又は不織布が利用される。網状に形成されたものとしては、糸・縄・針金等を方形・菱形に目を透かして編んで作ったものの他、合成樹脂を成形して作成したものがある。編物・織物は糸を編んだもの・織ったものである。
【0059】
不織布としては、繊維を合成樹脂その他の接着剤で接合したり(ケミカルボンド)、熱によって接合したり(サーマルボンド)、刺のある針で刺し絡めたり(ニードルパンチ)、高圧細水流で繊維を絡めたり(スパンレース)、又は編むような操作を加えたり(ステッチボンド)して布状にしたものが例示される。あるいは、原料樹脂チップを押出機に入れて加熱溶融し、細孔から押出して繊維を形成させながらシートにする(スパンボンド)ものや、湿式不織布のように数ミリメートル程度の長さの繊維を水に懸濁し、金網で抄くことによりシートを作成し、接着剤又は熱を用いて接合したものも例示される。
【0060】
特に不織布は、織布に比べ方向による強度の違いが少ないため、介装シ−トも強度に異方性のない安定した強度を持つ。叉、不織布は型くずれが少なく、糸のほつれが無く、寸法安定性が良いため、介装シ−トの重ね代部による目地部の処理が行い易い。
【0061】
その他にも、不織布はプラスチックフィルム等と異なり、引張り強度があって伸び難く、更に網状のものを含む織布の場合と異なり、穴を空けた場合に、その穴からの糸のほつれがない。更に、厚みに斑が少ないため、より薄く仕上げを行うことができる。
【0062】
この不織布には、ポリエステル、レーヨン、ビニロン、アクリル繊維など一般的な繊維により形成された不織布を用いることができる。これらのうち、ポリエステル繊維により形成された不織布を用いることが好ましい。ポリエステル繊維の不織布は、他の繊維の不織布に比べ、水分に対する影響が少なく、寸法安定性に優れたものであるため、目地処理が行い易く、処理された目地の耐水性を向上させることができる。
【0063】
介装シ−トに用いられる不織布の重量は、単位面積あたり20g/m〜100g/mの範囲のものが好ましい。20g/mより軽いものでは強度が小さく、目地の動きにより亀裂を起こし、仕上げ材にひび割れを起こすことがある。100g/mより重いものは繊維の量が多くなり、目地部に負荷をかけることがある。又、介装シ−トの厚みを増し、これを覆う仕上げ材を多く使うことになる。
【0064】
介装シ−トの表面には、仕上げ塗膜の塗材に対して親和性の塗料が全面に塗布されていることが好ましい。介装シ−トの裏面にも、同様の親和性の塗料を全面に塗布しても良い。
【0065】
上記の親和性塗料としては、その主成分に各種アクリル酸エステル共重合物、スチレン・アクリル酸エステル共重合物、ベオバアクリル酸エステル共重合物、SBRラテックス、ウレタン、エポキシ樹脂等を組成とする一般的に塗料用の樹脂と言われるものが挙げられ、仕上げ用塗料や接着剤,粘着剤などとの付着性の良いものが、選択して用いられる。
【0066】
上記の介装シ−トと基板との接合に用いる接着剤の主成分には、アクリルゴム、非加硫ブチルゴム、シリコ−ンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリイソプレン、ポリビニルエ−テル以外に、ポリエチレン系、ポリエステル系、エチレン酢酸ビニル系、アクリル系の樹脂が好適であり、他にも、エチレン以外のポリオレフィン系(例えば、ポリプロピレン)、ポリアミド系、ポリウレタン系、合成ゴム系の樹脂があり、これらの混合物、共重合物でも良い。
【0067】
上記重ね代部の裏面の粘着加工部は、粘着テープを貼り付けたり,粘着性の塗料を塗布することにより形成される。これに用いる粘着テープ,粘着性塗料には、主成分に再生ゴム、エチレン−酢酸ビニル、酢酸ビニル−アクリル酸エステル、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルを組成とするものが用いられる。粘着テープを使用する場合は、使用時に到るまで剥離テープで被覆しておくことが多い。これは、使用時までの間に粘着加工部に埃や塵の付着を防ぎ、接着力の低下を少なくするためである。
【0068】
叉、介装シ−トに用いられる塗料の色調は、特に制限は無いが、仕上げ塗膜と、同色のもの、同系色のもの、又は仕上げ塗膜の色調より薄い色調のものの場合、仕上げを行った後に介装シ−トが透けることが少なくなる。又、全く異なった色調の場合では、仕上げに用いられる塗料の塗り残しが容易に分かり、均一な仕上げ塗膜を形成することができる。介装シ−トへの塗料の塗布方法としては、スプレーを用いた塗装、ナイフコーター、ロールコーター等を用いた塗装方法など、一般的な塗布方法を行うことができる。
【0069】
介装シ−トに塗料を塗装することにより、介装シ−トの強度が増し、寸法安定性が向上する。
〔裁断壁材B、出隅専用壁材C〕
裁断壁材Bとは、上記した標準壁材Aを前記余剰スペースに合致する平面サイズに裁断してなる壁材であり、出隅専用壁材Cとは、標準壁材A又は裁断壁材Bにおける出隅側の厚み面を任意の傾斜角度を持つテーパ面に加工してなる壁材である。
【0070】
裁断壁材B、出隅専用壁材Cを作るための加工には、一般的な加工方法を用いることができる。例えば、標準壁材Aの一部の切り取り、削除等を例示できる。又、予め裁断壁材B、出隅専用壁材Cとして製造されたものも利用できる。
【0071】
本発明に係る平坦面の下地の壁面構造は、標準壁材A及び裁断壁材Bを複数、隣り合わせに配列・固定して形成した壁面構造である。平坦面の壁面構造の一部には窓等の開口部を設けることもできる。また、壁面構造の端部に使用する裁断壁材Bを一定幅に統一して切りそろえ、当該切断面が並ぶように壁材を加工したものを配列することで壁面構造の幅を任意に規定することができる。また、出隅専用壁材Cにより、あるいは出隅専用壁材Cと標準壁材A又は裁断壁材Bとを組み合わせて、前記図1に示すような鋭角又は鈍角をに張り出した出隅を形成できる。
〔壁材処理テープ〕
本発明に係る壁材処理テープは標準壁材A、裁断壁材B又は出隅専用壁材Cの表面露出部、厚み面、及び出隅の処理に用いる壁材処理テープである。壁材処理テープは、介装シートと同様の材料からなる帯状のシートと、このシート裏面に設けられた両面接着テープ等の接着剤加工部からなる。介装シートの裏面部中、接着剤加工部以外の被覆部は、基本的に、接着剤塗布部となる。あらかじめ設けてある接着剤加工部を利用し、接着剤塗布部にも接着剤を塗布して、壁材処理テープを貼着する。当該壁材処理テープの表面には、予め、又は壁材処理テープを利用した表面処理の後、仕上げ塗膜の塗材に対して親和性の塗料を全面に塗布するのが好ましい。
【0072】
壁材の表面や厚み面の好ましい表面処理例として、例えば、壁材の裏面に壁材処理テープの接着剤加工部を接着させて壁材処理テープを位置決めし、次いで壁材の厚み面から基材表面側の表面露出部まで至るように、あるいは壁材の厚み面から基材表面側の介装シートまで至るように、壁材処理テープを貼着する処理がある。この際、壁材の裏面に貼着する部分、厚み面に貼着する部分、表面露出部に貼着する部分のそれぞれの境界線に折り目をつけておくと処理を簡便に行うことができる。又、壁材処理テープにおける接着剤加工部の他に、壁材の厚み面に接着すべき部分の裏面にも両面接着テープ等を備えさせることで、処理をより簡便にすることができる。
【0073】
壁材処理テープのうち、接着剤加工部以外の部分(被覆部)に両面接着テープ等を備えさせない場合、被覆部を壁材の所定部に貼着する際に接着剤を用いる。壁材処理テープと壁材の介装シートの間にわずかな隙間が残る場合は、適宜な塗装具を用いて、壁材処理テープと介装シートの表面が連続面となるように接着剤をならすことが好ましい。
【0074】
出隅の好ましい表面処理例としては、出隅を構成する一方の壁材の表面と他方の壁材等の表面を跨ぐように壁材処理テープを貼着する処理がある。壁材処理テープによるこのような出隅の表面処理においては、図1に前記したような出隅を構成する壁材の組み合わせ形態によって、壁材処理テープの適切な幅が異なってくる。例えば、1対の壁材の表面から表面を跨ぐことができれば良い場合や、1対の壁材における表面から厚み面を経て表面を跨ぐ必要がある場合等がある。これらの用途に応じ、壁材処理テープの幅は適宜規定することができる。又、出隅の処理に際し、適宜な塗装具を用いて壁材処理テープの表面端縁部と壁材表面が段差のない連続面となるように、その段差部に接着剤を充填し、かつ塗装用ローラー、鏝などの適宜な塗装具を用いてその部分を平坦にならすことが好ましい。
【0075】
上記した壁材処理テープの処理に使用する接着剤として、仕上げ塗膜の塗材に対して親和性のある接着剤を用い、その上に直接に仕上げ塗膜の層を形成することができる。あるいは上記のような接着剤の使用後、その上に介装シートの表面等と同様に前記親和性の塗料の層を設け、更に仕上げ塗膜の層を形成することもできる。
【0076】
〔下地の壁面構造〕
本発明に係る下地の壁面構造は、壁材として標準壁材Aを複数、隣り合わせに配列・固定すると共に、壁面の上下方向、左右方向の端縁部又は隅部あるいは壁面に設けた開口部の上下方向、左右方向の周縁部又は隅部において標準壁材Aの平面サイズに合致しない余剰スペースを生じる場合には、これらの余剰スペースに壁材として裁断壁材Bを配列・固定したものである。
【0077】
より具体的には、壁材の介装シ−トの重ね代部は、その張出し方向において隣合う壁材の基板に対して、その表面露出部を覆う状態で接着されている。
【0078】
これらの下地の壁面構造の上に、即ち、壁材の介装シ−トや必要に応じて使用した壁材処理テープの表面に壁構造の表面として連続面となる親和性の塗料層を形成する。なお、介装シ−トや壁材処理テープの端縁部に段差やわずかに空いた隙間(目地部)が生じた場合は、前記した接着剤の充填及びならし処理によって、それらの段差や隙間を解消することができる。
【0079】
そしてその上に、仕上げ用塗膜が形成される。即ち、仕上げ塗膜の形成に際しては、親和性の塗料からなる塗料層が仕上げ用塗膜に対して接着される。好ましくは仕上げ用塗膜が介装シ−トの厚みよりも厚く、より好ましくは仕上げ用塗膜の厚みが介装シ−トの厚みの1.5倍以上である。
【0080】
これ以上の厚みがあれば、重ね代部の段差も分かりにくく、均一な仕上げ塗膜を形成することができる。又、平均塗膜が介装シ−トの厚みの1.5倍以上であり、凹凸状の塗膜を形成することがより好ましく、この凹凸状により、より重ね代部の段差を分かり難くすることができる。
【0081】
下地の壁面構造において、壁面の端縁部又は隅部あるいは壁面に設けた開口部の周縁部又は隅部に配列・固定する壁材においては、以下(1)〜(3)の表面処理を伴うことが好ましい。
【0082】
(1)標準壁材A又は裁断壁材Bの重ね代部が壁面の端縁部あるいは壁面に設けた開口部の周縁部方向に張出す場合には、これらの重ね代部を折曲げて、当該標準壁材A又は裁断壁材Bにおける基板の少なくとも厚み面を覆う状態で接着させる。このとき、重ね代部の張出し幅が壁材の基板の側面の幅と一致すると、壁材側面の処理が簡便となる。
【0083】
(2)標準壁材A又は裁断壁材Bの重ね代部が壁面の隅部あるいは壁面に設けた開口部の隅部方向に張出す場合にも、これらの重ね代部を折曲げて、当該標準壁材A又は裁断壁材Bにおける基板の少なくとも厚み面を覆う状態で接着させる。
【0084】
(3)標準壁材A又は裁断壁材Bにおける基板の表面露出部が壁面の端縁部又は隅部あるいは壁面に設けた開口部の周縁部又は隅部方向に位置する場合には、前記介装シ−トと同一又は類似の材料からなる帯状の壁材処理テープを、基板の表面露出部から少なくとも厚み面まで至る状態で、折曲げて接着させる。
〔壁面出隅部の下地構造〕
本発明に係る壁面出隅部の下地構造においては、前記した標準壁材A又は裁断壁材Bを用いて、あるいは更に出隅専用壁材Cを用いて出隅の各片側の壁部を構成することにより、以下(4)又は(5)の出隅を構成する。
【0085】
(4)出隅の片側の壁部を構成する標準壁材A又は裁断壁材Bの先端の側面(出隅側の厚み面)に対して、出隅の他の片側の壁部を構成する標準壁材A又は裁断壁材Bの裏面の端縁部を合致させて固定することにより、略直角の張り出し角度を有する出隅を構成する。
【0086】
(5)出隅の片側の壁部を構成する標準壁材A又は裁断壁材Bの先端の側面(出隅側の厚み面)又は裏面先端の端縁部に対して、出隅の他の片側の壁部を構成する出隅専用壁材Cのテーパ面を当接させて固定することにより、あるいは、出隅の両側の壁部を構成する出隅専用壁材Cのテーパ面同士を突き合わせ状に当接させて固定することにより、任意の張り出し角度を有する出隅を構成する。
【0087】
以上の壁面出隅部の下地構造に対しては、以下(6)〜(8)の表面処理を伴うことが好ましい。
【0088】
(6)出隅の片側の壁部を構成する標準壁材A又は裁断壁材Bの先端の側面(出隅側の厚み面)が出隅部に露出する場合に、この露出部分を、出隅の他の片側の壁部を構成する標準壁材A、裁断壁材B又は出隅専用壁材Cから出隅方向へ張出した介装シ−トの重ね代部を接着させて覆う。
【0089】
(7)出隅の片側の壁部を構成する標準壁材A、裁断壁材B又は出隅専用壁材Cにおける基板の表面露出部が出隅部に露出する場合に、この露出部分を、出隅の他の片側の壁部を構成する標準壁材A、裁断壁材B又は出隅専用壁材Cから出隅方向へ張出した介装シ−トの重ね代部を接着させて覆う。
【0090】
(8)出隅の両側の壁部を構成するいずれの壁材からも重ね代部が出隅方向へ張出していない場合には、前記介装シ−トと同一又は類似の材料からなる帯状の壁材処理テープを出隅部に接着させて、前記(6)又は(7)に記載した出隅部の露出部分を覆う。
【0091】
以上のように構成した壁面出隅部の下地構造において、その表面の全体に親和性の塗料層を備えさせたもとで仕上げ用塗膜を形成する点、仕上げ用塗膜の好ましい厚さ、介装シ−トや壁材処理テープの端縁部に段差や隙間が生じた場合の接着剤の充填及びならし処理、等の点は、前記した「下地の壁面構造」の場合と同様である。
【実施例】
【0092】
次に、本願発明の実施例を説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例によって限定されない。以下の実施例においては、図示の便宜上、各部材における厚みが実際とは異なっている。
【0093】
(実施例1)
図2に示すように、壁材1(標準壁材A)は、方形のパネル板である基板2の表面に、基板2と同じ平面寸法の方形の介装シ−ト3を貼着させたものである。この介装シ−ト3を重ね代部4の張出し分だけ対角線方向にズラした状態で、基板2上に貼着させている。従って基板2の表面の内、重ね代部4側の2辺と対向する他の2辺部分である基板の表面露出部5には、介装シ−ト3が貼着されていない。
【0094】
基板2は、断熱性材料であるスチレンフォームからなっている。一方、介装シ−ト3は、図2のX−X線に沿う壁材1の部分断面図である図3より明らかなように、不織布6の表面及び裏面の全面に親和性塗料8を塗布したものである。又、基板2と介装シ−ト3との接合部分は接着剤9によって固定的に接着され、介装シ−ト3における重ね代部4の裏面には粘着性塗料を塗布した粘着加工部7が形成されている。粘着加工部7の粘着性塗料と親和性塗料8とは、いずれもアクリル樹脂エマルションからなる。介装シ−ト3の表面の親和性塗料8と、重ね代部4の裏面の粘着加工部7とは露出しているが、これらは通常、壁材1の使用時に到るまで、剥離テープ即ち容易に剥離できるシート状あるいはテープ状の材料(図示省略)によって被覆されている。
【0095】
(実施例2)
次に、実施例1における壁材1同士を隣合わせに配列した場合の、重ね代部4と基板2の表面露出部5の重ね合わせについて説明する。
【0096】
図4に簡略化して示すように、介装シ−ト3の重ね代部4が、隣合う壁材1において介装シ−ト3が貼着されていない基板2の表面露出部5に(即ち、基板2に対して直接に)接着される。隣合う基板2同士の目地部11(目地部11において、図4では基板2同士が密着しているが、基板2間に少し間隔があっても良い)は重ね代部4によって覆われる。本実施例に示した重ね合わせは、壁材1(標準壁材A)と裁断壁材Bの重ね合わせ、裁断壁材B同士の重ね合わせにおいても同様である。
【0097】
介装シート3の上には仕上げ塗膜(図示省略)が形成される。
【0098】
(実施例3)
図5に壁材処理テープ21の部分斜視図と、その要部(楕円の実線で囲んだ部分)の拡大図を示す。壁材処理テープ21は、前記の介装シ−ト3と同一又は類似の材料からなる帯状シート22と、その片側面(使用時における裏面)の幅方向の一端側に沿って貼着された両面接着テープ23aと、幅方向のほぼ中央部に沿って貼着された両面接着テープ23bとからなる。使用前の状態においては、両面接着テープ23a、23bは図示省略の剥離テープによって覆われている。帯状シート22における両面接着テープ23a、23bの設定部以外の部分が表面貼着部24である。
【0099】
壁材処理テープ21を壁材1に貼り付ける際には、図6に示すように、まず壁材1の基板2の裏面端部に対して壁材処理テープ21の一端側の両面接着テープ23aを接着させることにより、壁材1に対して壁材処理テープ21を位置決めする。続いて壁材処理テープ21のほぼ中央部の両面接着テープ23bを壁材1の厚み面(図の左側の端面)に接着させると共に、表面貼着部24を壁材1の表面側へ折り曲げて、基板2の表面露出部5へ接着する。この接着は、例えば、介装シ−ト3を基板2に接着させるのに用いた前記の接着剤9によって行うことができるが、両面接着テープを用いて接着しても良い。
【0100】
表面露出部5への表面貼着部24の接着に用いる接着剤9は当然ながら容器チューブ等から絞り出される未固化状態のものであるから、接着時において表面貼着部24と壁材1の介装シート3との端縁部間に僅かな隙間(目地部)を生じた際に、この隙間を、図示のように、接着剤9の充填により埋め、かつ、その充填部分を適宜な塗装具を用いて連続した均一な面にならすことができる。
【0101】
(実施例4)
本実施例に係る平坦面の壁構造は、図7に示すように標準壁材Aである壁材1及び裁断壁材Bである壁材31を配列・固定してなる。本実施例においては、壁材処理テープの図示は省略する。
【0102】
隣り合わせに配列された壁材1や壁材31同士は、上記した実施例2の方法により、互いに一方の基板2と他方の介装シート3が重ね合わされて固定されている。
【0103】
又、図7における壁構造の右側端部の余剰スペースには、余剰スペースに合致するように裁断された壁材31を揃えて用いている。これらの壁材31における壁面右端側は、サイズ合わせの裁断のために重ね代部4がカット・オフされているので、裁断部の壁材31の厚み面を前記実施形態に示す要領で、壁材処理テープ21を用いた処理をしている。
【0104】
壁構造中に窓枠のような開口部32が設定され、その周縁部に一定の余剰スペースを生じた場合にも、その余剰スペースに合致するように裁断された裁断壁材Bである壁材31を配列・固定し、かつ、これらの壁材31についても、その壁材31における開口部32周縁側の厚み面(裁断部分の厚み面)について、壁材処理テープ21により同上の処理をしている。
【0105】
更に、壁構造の左端側及び下端側に配列された壁材1における基板2の表面露出部5においては、それらの基板2の厚み面を含めて、壁材処理テープ21により図6に示す前記処理と同様の処理をしている。
【0106】
壁構造の上端側に配列された壁材1(又は壁材31)においては、上側端部から重ね代部4が張出している。この張出した重ね代部4は、壁材1の厚み面方向に折り曲げて接着している。
【0107】
このようにして表面処理された図7の壁構造の表面には、仕上げ塗料に対して親和性を有する親和性塗料層を介して仕上げ塗膜を形成することができる。
(実施例5)
図8には、前記図1の(a)に示す出隅部の下地構造に対する表面処理を示す。図において、縦向きの壁材1の基板2の厚み面に対して図の横向きの壁材1の裏面の端縁部を合致させて固定することにより、下地構造の出隅部41を構成している。
【0108】
このような下地構造の出隅部41に対しては、例えば、壁材処理テープ21の両面接着テープ23を縦向きの壁材1の基板2の表面露出部5及び横向きの壁材1の基板2の厚み面に接着する。続いて、壁材処理テープ21の表面貼着部24を横向きの壁材1の表面側へ折り曲げて接着する。壁材処理テープ21の先端の段部は、接着に用いた接着剤9の充填により埋め、かつ、その充填部分を適宜な塗装具を用いて連続した均一な面にならすことができる。
(実施例6)
図9には、前記図1の(d)に示す出隅部の下地構造に対する表面処理を示す。図において、出隅の両側の壁面を構成する出隅専用壁材Cである壁材51におけるテーパ面52同士を突き合せ状に当接させて固定することにより、鈍角の張り出し角度を有する下地構造の出隅部61を構成している。
【0109】
図9に示す上記以外の点は、実施例5の場合と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明により、壁面の端縁部や隅部、壁面開口部の周縁部等における納まりが良く、出隅においても良好な構造を持ち、かつ壁材の基板の一部が露出しない下地の構造が提供される。
【符号の説明】
【0111】
1 壁材
2 基板
3 介装シート
4 重ね代部
5 表面露出部
8 親和性塗料
9 接着剤
21 壁材処理テープ
23 両面接着テープ
24 表面貼着部
32 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕上げ塗膜を形成するための平坦壁面の下地構造であって、壁材として下記の標準壁材Aを複数、隣り合わせに配列・固定すると共に、壁面の上下方向、左右方向の端縁部又は隅部あるいは壁面に設けた開口部の上下方向、左右方向の周縁部又は隅部において標準壁材Aの平面サイズに合致しない余剰スペースを生じる場合には、これらの余剰スペースに壁材として下記の裁断壁材Bを配列・固定したことを特徴とする下地の壁面構造。
標準壁材A:同じ方形の平面サイズである基板と介装シートからなり、介装シ−トを基板に対して対角線方向にズラして接着させることにより、介装シートにおける隣接する2辺を基板から張出させて基板の厚さ以上の幅を有する重ね代部を形成させると共に、基板における隣接する2辺の表面には前記重ね代部に対応する幅の表面露出部を形成している壁材。
裁断壁材B:標準壁材Aを前記余剰スペースに合致する平面サイズに裁断してなる壁材。
【請求項2】
前記壁材の介装シ−トの重ね代部は、その張出し方向において隣合う壁材の基板に対して、その表面露出部を覆う状態で接着されていることを特徴とする請求項1に記載の下地の壁面構造。
【請求項3】
前記壁面の端縁部又は隅部あるいは壁面に設けた開口部の周縁部又は隅部に配列・固定する壁材において、以下(1)〜(3)の表面処理を伴うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の下地の壁面構造。
(1)標準壁材A又は裁断壁材Bの重ね代部が壁面の端縁部あるいは壁面に設けた開口部の周縁部方向に張出す場合には、これらの重ね代部を折曲げて、当該標準壁材A又は裁断壁材Bにおける基板の少なくとも厚み面を覆う状態で接着させる。
(2)標準壁材A又は裁断壁材Bの重ね代部が壁面の隅部あるいは壁面に設けた開口部の隅部方向に張出す場合にも、これらの重ね代部を折曲げて、当該標準壁材A又は裁断壁材Bにおける基板の少なくとも厚み面を覆う状態で接着させる。
(3)標準壁材A又は裁断壁材Bにおける基板の表面露出部が壁面の端縁部又は隅部あるいは壁面に設けた開口部の周縁部又は隅部方向に位置する場合には、帯状の壁材処理テープを、基板の表面露出部から少なくとも厚み面まで至る状態で、折曲げて接着させる。
【請求項4】
仕上げ塗膜を形成するための壁面出隅部の下地構造であって、請求項1に記載した標準壁材A又は裁断壁材Bを用いて、あるいは更に、壁材として前記標準壁材A又は裁断壁材Bにおける出隅側の厚み面を任意の傾斜角度を持つテーパ面に加工してなる出隅専用壁材Cを用いて、出隅の各片側の壁部を構成することにより、以下(4)又は(5)の出隅を構成したことを特徴とする下地の壁面構造。
(4)出隅の片側の壁部を構成する標準壁材A又は裁断壁材Bの先端の側面(出隅側の厚み面)に対して、出隅の他の片側の壁部を構成する標準壁材A又は裁断壁材Bの裏面の端縁部を合致させて固定することにより、略直角の張り出し角度を有する出隅を構成する。
(5)出隅の片側の壁部を構成する標準壁材A又は裁断壁材Bの先端の側面(出隅側の厚み面)又は裏面先端の端縁部に対して、出隅の他の片側の壁部を構成する出隅専用壁材Cのテーパ面を当接させて固定することにより、あるいは、出隅の両側の壁部を構成する出隅専用壁材Cのテーパ面同士を突き合わせ状に当接させて固定することにより、任意の張り出し角度を有する出隅を構成する。
【請求項5】
前記出隅の壁部を構成する標準壁材A、裁断壁材B又は出隅専用壁材Cにおいて、以下(6)〜(8)の表面処理を伴うことを特徴とする請求項4に記載の下地の壁面構造。
(6)出隅の片側の壁部を構成する標準壁材A又は裁断壁材Bの先端の側面(出隅側の厚み面)が出隅部に露出する場合に、この露出部分を、出隅の他の片側の壁部を構成する標準壁材A、裁断壁材B又は出隅専用壁材Cから出隅方向へ張出した介装シ−トの重ね代部を接着させて覆う。
(7)出隅の片側の壁部を構成する標準壁材A、裁断壁材B又は出隅専用壁材Cにおける基板の表面露出部が出隅部に露出する場合に、この露出部分を、出隅の他の片側の壁部を構成する標準壁材A、裁断壁材B又は出隅専用壁材Cから出隅方向へ張出した介装シ−トの重ね代部を接着させて覆う。
(8)出隅の両側の壁部を構成するいずれの壁材からも重ね代部が出隅方向へ張出していない場合には、前記介装シ−トと同一又は類似の材料からなる帯状の壁材処理テープを出隅部に接着させて、前記(6)又は(7)に記載した出隅部の露出部分を覆う。
【請求項6】
請求項1に記載の標準壁材Aにおける介装シ−トと同一又は類似の材料からなる帯状の部材であって、その裏面の幅方向の一端側に沿って位置決め用の接着剤加工部を備えることを特徴とする壁材処理テープ。
【請求項7】
下記(9)及び/又は(10)に係る下地に対して仕上げ塗膜を形成してなることを特徴とする壁面構造。
(9)請求項1又は請求項2に記載の下地の壁面構造に対して請求項3に記載の表面処理を行った下地であって、その表面を構成する介装シ−ト及び壁材処理テープには、仕上げ塗膜を形成する塗材に対して親和性の塗料を塗布した下地。
(10)請求項4に記載の下地の壁面構造に対して請求項5に記載の表面処理を行った下地であって、その表面を構成する介装シ−ト及び壁材処理テープには、仕上げ塗膜を形成する塗材に対して親和性の塗料を塗布した下地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−255337(P2010−255337A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108109(P2009−108109)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【出願人】(000187194)昭和電工建材株式会社 (36)