説明

壁面の改修方法

【課題】既設の壁紙を剥がす際にその一部が壁面に残存したとしても、壁面の仕上がりを良好なものとすることができる壁面の改修方法を提供する。
【解決手段】既設壁面10は、ボード1と、このボード1の前面に貼着された壁紙2とから構成されている。既設壁面10を改修する際には、先ず、壁紙2を壁面から剥がし取る。このとき、該裏打ち紙2aの一部(裏打ち紙2a’)がボード1の前面に残存する。この裏打ち紙2a’の前面に下塗り材3を塗布し、その前面に仕上げ材4を施工する。本発明では、下塗り材が非水系反応硬化型樹脂であり、水分を含まないため、残存した壁紙がこの非水系反応硬化型樹脂からの水分で膨潤することが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙が貼られた既設の壁面を改修する方法に係り、特に既設の壁紙を剥がして壁面を改修する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リフォーム等の際に、既設の壁紙が貼着された壁面を改修する方法として、壁紙を残したまま、壁紙の上に直接塗り材を塗布する方法が行われている。
【0003】
また、既設の壁紙の汚れや傷みがひどい場合には、壁紙を剥がしてから塗り材を塗布することも行われている。
【0004】
例えば、特開平2004−285650号の第0002段落には、石膏ボード等の内装下地材と壁紙等の内装仕上げ材とによって構成される内装をリフォームする際に、既存の内装仕上げ材を剥がし、内装下地材の不陸をシーラー等で平滑化した後、内装下地材の表面に新たな内装仕上げ材を貼り付ける方法が記載されている。
【特許文献1】特開平2004−285650号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、既設の壁紙を剥がしてからシーラー等の下塗り材を塗布し、その上に仕上げ材を施工する場合、壁紙を完全に剥ぎ取ることは困難であり、壁紙の一部が壁面に残存することがある。特に下地の板間処理や不陸調整のため、石膏パテなどの下地調整材が施工されている箇所で壁紙の一部が残存した場合、下塗り材や仕上げ材が水溶性であれば、残存した壁紙が、これら下塗り材や仕上げ材に含まれる水分のために膨潤し、その結果、新設した壁面が仕上がり不良になることが多く認められる。
【0006】
本発明は、既設の壁紙を剥がす際にその一部が壁面に残存したとしても、壁面の仕上がりを良好なものとすることができる壁面の改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(請求項1)の壁面の改修方法は、既設の壁紙を剥がし、その上に下塗り材を塗布し、さらにその上に仕上げ材を形成させる壁面の改修方法において、該下塗り材が非水系反応硬化型樹脂であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の壁面の改修方法は、請求項1において、前記非水系反応硬化型樹脂が非水系湿気硬化型の樹脂であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明(請求項1)では、既設の壁紙を剥がし、その上に下塗り材として非水系反応硬化樹脂を塗布するため、仕上がりが良好なものとなる。
【0010】
即ち、壁紙を剥がす際、該壁紙の一部に剥がし残りが生じることがある。しかしながら、その上に塗布する下塗り材が非水系反応硬化型樹脂であり、水分を含まないため、残存した壁紙がこの非水系反応硬化型樹脂からの水分で膨潤することが防止される。その結果、改修後の壁面に膨れが生じることがなく、仕上がりが良好なものとなる。
【0011】
この非水系反応硬化樹脂としては、請求項2のように、非水系湿気硬化型の樹脂を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
第1図は実施の形態に係る壁面の改修方法を説明する断面図である。
【0014】
第1図(a)に示す通り、既設壁面10は、ボード1と、このボード1の前面に貼着された壁紙2とから構成されている。この壁紙2は、裏打ち紙2aと、この裏打ち紙2aの前面に位置する化粧紙2bとからなっており、この裏打ち紙2aが該ボード1の前面に貼着されている。
【0015】
ボード1の材質としては、石膏ボード、珪酸カルシウム板、スラグ石膏板、コンクリート、モルタル、普通合板、構造用合板、繊維混入セメント板等が用いられる。
【0016】
裏打ち紙2aとしては、セルロース繊維等が用いられる。また、このセルロース繊維に対して、必要に応じて合成繊維、無機繊維、合成パルプ等が適宜配合されたものや、さらに自己消火性填料、乾燥紙力増強剤、防カビ剤、着色剤等が適宜配合されたもの等も用いられる。
【0017】
この裏打ち紙2aの前面には、装飾性や柔軟性の付与等のために、化粧紙2bが形成されている。
【0018】
化粧紙2bとしては、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、オレフィン系樹脂等が用いられる。
【0019】
この壁紙2は、糊材等によってボード1に貼着されている。ここで、糊材としては、例えばデンプン系接着剤、セルロース系接着剤等が適宜選択して用いられる。
【0020】
このように構成された既設壁面10を改修する際には、先ず、壁紙2を壁面から剥がし取る。このとき、第1図(b)の通り、該裏打ち紙2aの一部(裏打ち紙2a’)がボード1の前面に残存する。
【0021】
次いで、第1図(c)の通り、この裏打ち紙2a’の前面に下塗り材3を塗布する。この下塗り材3が乾燥した後、下塗り材3の前面に仕上げ材4を施工する。
【0022】
本発明においては、下塗り材3として、非水系反応硬化型樹脂が用いられる。この非水系反応硬化型樹脂は水分を含まないため、残存した壁紙2がこの非水系反応硬化型樹脂からの水分で膨潤することが防止される。その結果、改修後の壁面に膨れが生じることがなく、仕上がりが良好なものとなる。
【0023】
この非水系反応硬化型樹脂としては、一液又はニ液からなる非水系湿気硬化型の変成シリコーン樹脂やシリコン樹脂やウレタン樹脂等が用いられる。
【0024】
この下塗り材3の厚みは、好ましくは0.1〜2mm、特に0.3〜1.5mmである。0.1mm厚以下では、下地の不陸調整が不十分なため仕上がり外観に悪影響を及ぼしたり、板間部分に十分な下地追従性が得られずクラックを引き起こし易い等の懸念がある。一方2mm厚以上では、硬化に時間がかかり過ぎその後の作業工程に悪影響を及ぼしたり、コストを引き上げる要因となる。
【0025】
仕上げ材4は、上塗り材を塗布して乾燥させたものであってもよく、新たな壁紙を貼着したものであってもよい。
【0026】
仕上げ材4として上塗り材を用いる場合、上塗り材の材質には特に限定はなく、例えば水溶性の上塗り材を用いることもできる。この場合、この水溶性の上塗り材と裏打ち紙2a’との間に非水系反応硬化型樹脂(下塗り材3)が介在しているため、該水溶性上塗り材に含まれる水分が裏打ち紙2a’まで浸入することが防止される。その結果、裏打ち紙2a’が下塗り材3からの水分のために膨潤することが防止され、改修した壁面の仕上がりが不良になることが防止される。
【0027】
仕上げ材4として壁紙を用いる場合、壁紙としては上記の壁紙2と同様のものを用いることができる。また、糊材としても上記のものを用いることができる。
【0028】
なお、下塗り材3と仕上げ材4との間に、不陸調整のための塗り材や、仕上げ材4を壁面に均一に塗布するための石膏プラスターなどの塗り材を、必要に応じて塗布してもよい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0030】
なお、第2図は実施例及び比較例の実験方法を説明する断面図、第3図は第2図(a)の状態における試料の平面図、第4図は第2図(c)の状態における試料の平面図である。即ち、第3図のA−A線に沿う断面図が第2図(a)であり、第4図のC−C線に沿う断面図が第2図(c)である。
【0031】
比較例1
4枚の石膏ボード11を、縦に2枚の列が横に2列に配列するように配置した。このとき、隣接する石膏ボード11の対向する側面同士を突き合わせるようにして配置した。次いで、これら石膏ボード11の前面に、突き合せ部及びその近傍を覆うようにしてジョイントテープ15を貼り付けた。その後、このジョイントテープ15を覆うようにして石膏パテ材16を塗布し、ボード11とパテ材16との不陸を調整した(第2図(a)及び第3図)。
【0032】
このパテ材16が塗布されたボード11の前面全面に、専用糊材を用いて壁紙12を貼り合わせた(第2図(b))。ここで、この壁紙12は、裏打ち紙12a及び化粧紙12bからなり、裏打ち紙12aがボード11前面と対面するようにして貼り合わせた。なお、専用糊材及び壁紙12としては以下のものを用いた。
【0033】
専用糊材:(株)アサヒペン製「スタンダード壁のり」
壁紙12:(株)サンゲツ製「リザーブRE2726」
(裏打ち紙12aの材質:一般紙として用いられている繊維質基材)
(化粧紙12bの材質:塩化ビニル樹脂)
【0034】
24時間経過後、壁紙12をボード11から剥がした。このとき、第2図(c)及び第4図の通り、裏打ち紙12aの一部(裏打ち紙12a’)がボード11の前面に残存した。
【0035】
次いで、残存した裏打ち紙12a’の前面に、下塗り材13として、建築内装下地材のアクやシミを止めるために市販されている一液型の水系アクリルEm系シーラーを塗布し、乾燥させた。
【0036】
ここで、該水系アクリルEm系シーラーを塗布してから30分後(シーラー未乾燥)及び24時間後(シーラー乾燥後)において、裏打ち紙12a’の膨れの状態を目視で確認した。その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例1
下塗り材13として非水系変成シリコーン樹脂Aを用いたこと以外は比較例1と同様にして実験を行った。その結果を表1に示す。
【0039】
なお、この非水系変成シリコーン樹脂Aは、非水系一液湿気硬化型である。同様に、後述する実施例2,3の非水系変成シリコーン樹脂A,Bと、実施例4のウレタン樹脂も、非水系一液湿気硬化型である。
【0040】
実施例2
下塗り材13として非水系変成シリコーン樹脂Bを用いたこと以外は比較例1と同様にして実験を行った。その結果を表1に示す。
【0041】
実施例3
下塗り材13として非水系変成シリコーン樹脂Cを用いたこと以外は比較例1と同様にして実験を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
実施例4
下塗り材13としてウレタン樹脂を用いたこと以外は比較例1と同様にして実験を行った。その結果を表1に示す。
【0043】
比較例2
下塗り材13として水系エポキシ樹脂(二液型)を用いたこと以外は比較例1と同様にして実験を行った。その結果を表1に示す。
【0044】
表1から明らかな通り、シーラーとして非水系反応硬化型樹脂を用いることにより、残存する裏打ち紙12a’の上からシーラーを塗布しても、該裏打ち紙12a’の膨れを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態に係る壁面の改修方法を説明する断面図である。
【図2】実施例及び比較例の実験方法を説明する断面図である。
【図3】第2図(a)の状態における試料の平面図である。
【図4】第2図(c)の状態における試料の平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1,11 ボード
2,12 壁紙
2a,12a 裏打ち紙
2a’,12a’ 裏打ち紙
2b,12b 化粧紙
3,13 下塗り材
4 仕上げ材
10 既設壁面
15 ジョイントテープ
16 パテ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の壁紙を剥がし、その上に下塗り材を塗布し、さらにその上に仕上げ材を形成させる壁面の改修方法において、
該下塗り材が非水系反応硬化型樹脂であることを特徴とする壁面の改修方法。
【請求項2】
請求項1において、前記非水系反応硬化型樹脂が非水系湿気硬化型の樹脂であることを特徴とする壁面の改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−248498(P2008−248498A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88246(P2007−88246)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】