説明

壁面取付装置

【課題】取り付けが簡単で物品を安定した状態で壁面に取り付けることができ、かつ汎用性を有する壁面取付装置を提供する。
【解決手段】壁面取付装置(1)は、壁面に止着される本体部(11)の前面側に係合部(12)が突設され、この係合部(12)の対向する一対の側面に溝(13)(13)または突起が形成された壁面止着部材(10)と、物品(S)に止着される本体部(21)の端部に、前記壁面止着部材(10)の係合部(12)の溝(13)(13)または突起にスライド嵌合される突起(26)(26)または溝が形成された物品止着部材(20)とを備える。また、前記物品止着部材(20)は、本体部(11)に穿設された孔(23)に、物品(S)を介して鋲(30)を押し込むことにより止着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、壁面に各種物品を取り付けるための壁面取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
壁面にキャビネットや額等の種々の物品を取り付ける手段として、物品に紐やチェーン等の索体を取り付けて壁面に設置したフックに吊り下げたり、物品と壁面とに互いに係合する部材を取り付けて係合させるものがある(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された壁取付用キャビネットは、キャビネットの上部後面にキャビネット幅相当の断面L字形の雄部を設ける一方、壁面に前記雄部を上方からはめ込む雌部を設けたレール状部材を設置するものである。
【特許文献1】特開2005−118432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、物品に索体を取り付けて壁面のフックに吊り下げる方法は、物品が傾き易く不安定である。また、特許文献1の壁取付用キャビネットは、雄部および雌部を有するレール状部材がキャビネット幅とほぼ同等の長さを有するものであり、サイズが大きく汎用性が乏しいものであった。また、部材サイズが大きいために、キャビネットおよび壁面のいずれに対しても取付作業に手数がかかるという問題点があった。また、キャビネットを壁面に掛けてみると、想定していた位置とは違っていることがある。このような場合、雄部またはレール状部材のいずれかの取付位置を変更しなければならないが、部材が大きいために取り外しと再度取り付ける作業に手数がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した背景技術に鑑み、取り付けが簡単で物品を安定した状態で壁面に取り付けることができ、かつ汎用性を有する壁面取付装置の提供を目的とする。
【0006】
即ち、本発明の壁面取付装置は下記〔1〕〔2〕に記載の構成を有する。
【0007】
〔1〕 壁面に止着される本体部の前面側に係合部が突設され、この係合部の対向する一対の側面に溝または突起が形成された壁面止着部材と、物品に止着される本体部の端部に、前記壁面止着部材の係合部の溝または突起にスライド嵌合される突起または溝が形成された物品止着部材とを備えることを特徴とする壁面取付装置。
【0008】
〔2〕 前記物品止着部材の本体部に穿設された孔に物品を介して鋲を押し込むことにより、物品に該物品止着部材を止着する前項1に記載の壁面取付装置。
【発明の効果】
【0009】
〔1〕の壁面取付装置によれば、壁面止着部材と物品止着部材とが溝と突起の嵌合によって係合されるため、物品をしっかりと安定して壁面に取り付けることができ、物品が左右に傾くこともない。また、溝と突起の嵌合構造であるから取り外しも簡単である。また、個々の壁面取付装置は小さく、物品の大きさに応じて1個または複数個の壁面取付装置を用いれば良いので汎用性にも優れている。
【0010】
〔2〕の壁面取付装置によれば、物品への物品止着部材の止着が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜図4に本発明の壁面取付装置の一実施形態を示す。
【0012】
壁面取付装置(1)は、壁面止着部材(10)と物品止着部材(20)と鋲(30)とにより構成され、いずれも合成樹脂成形品である。
【0013】
壁面止着部材(10)において、板状の本体部(11)の下部に、前面側に突出し、物品止着部材(20)と係合するための円形の係合部(12)が設けられている。前記係合部(12)は、外周面の左右が本体部(11)から突出高さの約2/3までの部分が抉られ、上下方向に沿った溝(13)(13)が形成されている。また、前記係合部(12)の中央部には、底部にネジ孔(14)を有し、ネジ(50)の頭の突出を防止するためのすり鉢状の凹部(15)が形成されている。
【0014】
また、前記本体部(11)の上部には3つのピン孔(16a)(16a)(16b)が設けられている。上側の2つのピン孔(16a)(16a)は、斜め下方向30度、下側の1つのピン孔(16b)は、斜め上方向30度の角度の貫通孔からなる。また、各ピン孔(16a)(16a)(16b)の前面側にはピン(51)の頭の突出を防止する凹陥部(17a)(17b)が形成されている。
【0015】
前記壁面止着部材(10)は、係合部(12)のネジ孔(14)にネジ(50)を挿通させて壁面(W)にネジ止めすることができる。また、ネジが効かない石膏ボード等からなる壁面(W)に取り付ける場合には、各ピン孔(16a)(16a)(16b)にピン(51)を挿し込み、3本のピン(51)を交差させるように壁面(W)に打ち込む。また、ネジ(50)とピン(51)を併用することもできる(図4参照)。
【0016】
物品止着部材(20)において、板状の本体部(21)の上部に、前面側に突出し、物品(S)に穿設した孔(47)に挿入するための円形の物品止着用突起(22)が設けられている。前記物品止着用突起(22)の高さは止着する物品(S)の厚さに対応して設定され、中央部に鋲打ち孔(23)が穿設されている。また、図2に示すように、本体部(21)の裏面においては、前記鋲打ち孔(23)のまわりに円形の凹陥部(24)が形成されている。
【0017】
前記本体部(21)の下端部は、前記壁面止着部材(10)の係合部(12)の外周面に対応する半円形の凹部(25)が形成されている。また、この凹部(25)の左右に、該凹部(25)の内側および先端側に突出する薄肉の爪状突起(26)(26)が設けられている。これらの爪状突起(26)は、厚さが前記係合部(12)の溝(13)の幅に対応するように設定され、間隔が左右の溝(13)の間隔に対応するように設定されている。
【0018】
また図2に示すように、前記本体部(21)の上部において、裏面側に突出するスライド止め(27)が設けられている。
【0019】
前記物品止着部材(20)は、押込み鋲(30)を用いて物品(S)に止着される。前記鋲(30)は、物品止着用突起(22)の直径よりも径の大きい円形プレート(31)の一面側に、先端に外向きの突起(32)が形成された2本の脚部(33)(33)が立設されたものである。そして、物品(S)に物品止着用突起(22)に対応する孔(47)を穿設しておき、この孔(47)に物品止着用突起(22)を挿入し、鋲(30)の脚部(33)(33)を鋲打ち孔(23)に圧入する。圧入により、2本の脚部(33)(33)は間隔を狭めながら鋲打ち孔(23)を通過し、通過後は間隔が復元して突起(32)が裏面の凹陥部(24)の底面に引っ掛かって抜け止め状態となる。このようにして、物品(S)は物品止着部材(20)と鋲(30)との間に挟み付けられ、物品止着部材(20)が物品(S)に止着される(図4参照)。また、止着した物品止着部材(20)を物品(S)から外すには、鋲(30)の脚部(33)の間隔を狭めるように撓ませて鋲打ち孔(23)から抜けば良い。
【0020】
次に、物品(S)に止着した物品止着部材(20)を壁面(W)に止着した壁面止着部材(10)に係合させて、物品(S)を壁面に取り付ける。即ち、図3および図4に示すように、物品止着部材(20)の2つの爪状突起(26)(26)を壁面止着部材(10)の係合部(12)の溝(13)(13)の上部に嵌合させ、下方にスライドさせて凹部(25)を係合部(13)の外周面に当接させる。この状態において、物品止着部材(20)のスライド止め(27)は壁面止着部材(10)の本体部(11)の上端面に当接する。これにより、物品止着部材(20)は壁面止着部材(10)にしっかりと係合され、物品(S)は壁面(W)に取付けられる。
【0021】
本発明の壁面取付装置によれば、物品止着部材を止着できる物品であればその形状は限定されない。以下に、図5Aに示す組立式棚(40)を壁面(W)に取り付ける方法について、図5Bを参照しつつ説明する。
【0022】
組立式棚(40)は、左右の側面フレーム(41)(41)、天板(42)、底板(43)、背板(44)、2枚の棚板(45)(45)で構成される。左右の側面フレーム(41)(41)、天板(42)および底板(43)に形成された溝(46a)(46b)(46c)に背板(44)を挿入し、側面フレーム(41)(41)を天板(42)および底板(43)をネジ(48)で止めて枠体を組み立て、側面フレーム(41)(41)の内面ににダボ(49)を差込み、棚板(45)を入れると完成する。また、背板(44)の上部には、前記物品止着部材(20)を取付けるための2つの孔(47)(47)が穿設されている。なお、壁面止着部材(10)の壁面(W)への止着方法、および背板(44)への物品止着部材(10)の止着方法は上述したとおりであり、説明を省略する。
【0023】
(i)前記棚(40)の組立に先だって、背板(44)の後面側に押込み鋲(30)を用いて2つの物品止着部材(20)を止着し、壁面(W)にビス(50)および/またはピン(51)を用いて壁面止着部材(10)を止着する。このとき、壁面(W)に壁面止着部材(10)を止着する前に、背板(44)に止着した物品止着部材(20)を壁面止着部材(10)に係合させ、係合させた壁面止着部材(10)により壁(W)への止着位置を決定しても良いし、背板(44)に孔(47)を穿設する前に、壁面(W)に止着した壁面止着部材(10)に物品止着部材(20)を係合させ、係合された物品止着部材(20)により背板(44)における孔(47)の穿設位置を決定しても良い。
【0024】
(ii)壁面止着部材(10)から物品止着部材(20)を外した状態で、前記背板(44)と、左右の側面フレーム(41)(41)、天板(42)、底板(43)を枠体に組み立てる。
【0025】
(iii)壁面(W)に止着した壁面止着部材(10)と、背板(44)に止着した物品止着部材(20)を係合させ、枠体を壁面(W)に取り付ける。側面フレーム(41)(41)、天板(42)および底板(43)において背板(44)を嵌め込む溝(46a)(46b)(46c)は、それぞれの後端面から若干前面側に寄った位置に形成されているため、壁面(W)と背板(44)との間に隙間が形成され、前記壁面止着部材(10)および物品止着部材(20)はこの隙間の中に隠される。
【0026】
(iv)枠体の側面フレーム(41)にダボ(49)を差し込み、棚板(45)を取り付ける。
【0027】
上述した壁面取付装置(1)は、壁面止着部材(10)と物品止着部材(20)とが溝(13)と突起(26)の嵌合によって係合されるため、物品(S)をしっかりと安定して壁面(W)に取り付けることができ、物品(S)が左右に傾くこともない。また、溝(13)と突起(26)の嵌合構造であるから取り外しも簡単である。また、個々の壁面取付装置(1)は小さく、物品(S)の大きさに応じて複数個の壁面取付装置(1)を用いれば良いので汎用性にも優れている。
【0028】
本発明の壁面取付装置は上記実施形態に限定されるものではなく、細部は適宜変更することができる。
【0029】
壁面止着部材と物品止着部材との係合に際しては、上記実施形態とは逆に、物品止着部材に溝を設け、壁面止着部材の係合部に突起を形成しても良い。さらに、壁面止着部材の係合部の一方の側面に溝を設け、他方の側面に突起を設け、物品止着部材に前記溝および突起に嵌合する突起および溝を設けたものも本発明に含まれる。
【0030】
壁面止着部材の壁面への止着手段は、図示例のピンおよびビスに限定されるものではなく、壁面の材質や形状に応じて任意の手段を採用することができる。その他の止着手段として接着を例示できる。
【0031】
物品止着部材の物品への止着手段も、図示例の押し込み鋲に限定されるものではなく、物品の材質、形状、重量等に応じて任意の止着手段を採用することができる。その他の止着手段としてビス止めや接着を例示できる。図示例の押し込み鋲を用いた場合は、止着と取り外しが容易であり、取り外した物品止着部材および鋲を何度でも再使用できるというメリットがある。また、図示例のように鋲打ち孔(23)のまわりに突起(22)を形成し、この突起(22)を物品(S)に形成した孔(47)に挿入することが好ましい。かかる構造により、突起(22)が物品(S)を支持して鋲(30)の荷重負担が低減され、より重い物品やより厚い物品に対してもしっかりと支持することができる。また、前記孔(47)を突起(22)の外周径よりも横長の長孔に形成しておけば、物品止着部材(20)の止着位置を微調整することができ、壁面(W)に止着した壁面止着部材(10)と物品(S)に穿設した孔(47)の中心位置に若干のずれが生じた場合にも適正位置に調整することができる。なお、本発明においては、本体部に突起を形成することなく鋲打ち孔を穿設する場合も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の壁面取付装置は、物品をしっかりと安定して壁面に取り付けることができ、取り外しも簡単である。また、個々の壁面取付装置は小さく、物品の大きさに応じて任意数の壁面取付装置を用いれば良いので汎用性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の壁面取付装置の全体斜視図である。
【図2】図1の壁面取付装置における物品止着部材の裏面を示す斜視図である。
【図3】図1の壁面取付装置の使用状態を示す正面図である。
【図4】図3の4−4線斜視図である。
【図5A】組立式棚の斜視図である。
【図5B】図5Aの組立式棚を図1の壁面取付装置を用いて壁面に取り付ける方法を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1…壁面取付装置
10…壁面止着部材
11…本体部
12…係合部
13…溝
20…物品止着部材
21…本体部
23…鋲打ち孔(孔)
26…爪状突起(突起)
30…鋲
S…物品
W…壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に止着される本体部の前面側に係合部が突設され、この係合部の対向する一対の側面に溝または突起が形成された壁面止着部材と、
物品に止着される本体部の端部に、前記壁面止着部材の係合部の溝または突起にスライド嵌合される突起または溝が形成された物品止着部材とを備えることを特徴とする壁面取付装置。
【請求項2】
前記物品止着部材の本体部に穿設された孔に物品を介して鋲を押し込むことにより、物品に該物品止着部材を止着する請求項1に記載の壁面取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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