壁面設置型リモコン
【課題】筐体と化粧カバーとを有し、筐体の底面部にマイク用孔が開口して設けられた構造を有する壁面設置型リモコンにおいて、マイク用孔が水膜によって塞がれることを、簡易な構成によって適切に防止または抑制する。
【解決手段】マイクMCを内蔵し、底面部11にマイク用孔12が開口している筐体1と、この筐体1の底面部11を覆う下片部21aを有し、かつこの下片部21aには、この下片部21aによってマイク用孔12が覆われることを回避するための孔22が設けられている化粧カバー2と、を備えている、壁面設置型リモコンRであって、前記の孔22は、マイク用孔12の下方領域から後方に延びて下片部21aの後部側の端縁21a'に一部が開口する切欠孔とされている。
【解決手段】マイクMCを内蔵し、底面部11にマイク用孔12が開口している筐体1と、この筐体1の底面部11を覆う下片部21aを有し、かつこの下片部21aには、この下片部21aによってマイク用孔12が覆われることを回避するための孔22が設けられている化粧カバー2と、を備えている、壁面設置型リモコンRであって、前記の孔22は、マイク用孔12の下方領域から後方に延びて下片部21aの後部側の端縁21a'に一部が開口する切欠孔とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室やその他の場所の壁面に取り付けて使用され、給湯器などの所望の機器類の遠隔操作に用いられる壁面設置型リモコンに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、浴室の壁面に設置されて使用される給湯器用のリモコンは、制御回路やその他の電気部品を内部に収容した筐体と、この筐体の前面部や周側面部を覆う化粧カバーとを組み合わせて構成されているのが通例である。このようなリモコンとしては、スピーカやマイクを筐体内に収容し、インターホン機能を具備させたものがある。このようなリモコンでは、スピーカとマイクとの音響結合を防止する必要があり、そのための手段として、マイク用孔(リモコン外部からマイクまで音声を伝達させるための孔)を、筐体の底面部に開口させて設ける手段がある。この場合、化粧カバーには、この化粧カバーによってマイク用孔が覆われないようにするための孔を設ける必要がある。従来においては、そのような孔を化粧カバーに設ける場合、筐体に設けられているマイク用孔と同様のたとえば単なる円形状の開口部とされていたのが実情である。
【0003】
しかしながら、前記した構成では、リモコンに比較的多くの水が掛かり、この水が化粧カバーの前記の孔まで進行した場合に、この部分において水膜が発生し易いものとなっていた。水膜が発生すると、マイクへの音声入力に支障を生じてしまう。
【0004】
なお、特許文献1には、電子機器の筐体の底面に設けられているマイク用孔に水膜が発生することを抑制するための手段として、筐体の底面部に傾斜面を設けるといった手段が記載されている。しかしながら、このような手段のみでは、水膜の発生を効率良く、かつ合理的に防止する上で未だ改善の余地がある。また、特許文献1に記載された手段は、化粧カバーを有しない構造を対象としており、筐体と化粧カバーとを組み合わせて構成されるリモコンにそのまま適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2,538,037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、筐体と化粧カバーとが組み合わされて構成され、かつ前記筐体の底面部にマイク用孔が開口して設けられた構造を有する壁面設置型リモコンにおいて、マイク用孔が水膜によって塞がれることを、簡易な構成によって適切に防止または抑制することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される壁面設置型リモコンは、マイクを内蔵しているとともに、底面部にマイク用孔が開口しており、かつ取り付け対象の壁面に背面部が対面するようにして取り付けられる筐体と、この筐体の底面部を覆う下片部を有し、かつこの下片部には、この下片部によって前記マイク用孔が覆われることを回避するための孔が設けられている化粧カバーと、を備えている、壁面設置型リモコンであって、前記マイク用孔が覆われることを回避するための孔は、前記マイク用孔の下方領域から後方に延びて、前記下片部の後
部側の端縁に一部が開口する切欠孔であることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、リモコンに水が掛かり、化粧カバーの下片部に設けられている切欠孔に比較的多くの水が進入しても、この部分において水膜が発生し難くなる。前記切欠孔は、たとえば単なる円形状の孔とは異なり、その内壁面が狭い面積で閉じた形態にはなく、その形状自体が水膜を発生させ難い形状である。また、前記構成によれば、前記切欠孔内のうち、マイク用孔の下方領域に水が進入しても、この水を後方に進行させてマイク用孔の下方領域に多くの水が滞留しないようにすることによって水膜を発生し難くすることも可能となる。このようなことから、本発明によれば、マイク用孔が水膜によって塞がれる現象を生じ難くし、マイクへの音声入力に支障が生じることを適切に防止または抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記切欠孔の内壁面のうち、前記マイク用孔の下方領域に対面する部分には、この部分を下広がり状とする傾斜面部が設けられている。
【0011】
このような構成によれば、切欠孔のうち、マイク用孔の下方領域に進入した水は、前記傾斜面部に沿って下方に流れ落ち易くなる。その結果、マイク用孔の下方領域に水膜がより生じ難くなり、マイク用孔が水膜によって塞がれる不具合を防止するのに一層好ましいものとなる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記筐体の底面部から下向きに突出し、かつ前記切欠孔内のうち、前記マイク用孔の下方領域よりも後方に位置する凸状部を、さらに備えており、前記化粧カバーの小片部と前記壁面との間にコーキング材が充填された場合に、このコーキング材が前記切欠孔内にその後方から流入することを前記凸状部により抑制可能な構成とされている。
【0013】
このような構成によれば、本発明の壁面設置型リモコンを所望の壁面に取り付ける場合において、このリモコンと壁面との隙間を解消するためのコーキング処理が施されたとしても、コーキング材が前記凸状部によって塞き止められて切欠孔内に流入しないようにすることが可能となる。したがって、マイク用孔がコーキング材によって塞がれるといった不具合を生じないようにすることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記凸状部の下面は、前記化粧カバーの下面と略同一高さの平面状である。
【0015】
このような構成によれば、本発明の壁面設置型リモコンの取り付けに際し、コーキング処理を施すべく化粧カバーの下片部にマスキングテープを貼る場合に、このマスキングテープを凸状部の下面にも適切に貼り付けて、切欠孔の形成箇所において大きな隙間が生じないようにすることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記切欠孔の後部の内壁面と前記凸状部との間には、前記マイク用孔の下方領域に進行した水を内部に引き込むことが可能な水引き込み用の隙間が形成されている。
【0017】
このような構成によれば、切欠孔のうち、マイク用孔の下方領域に進行した水が水引き込み用の隙間に進入する作用を生じ、マイク用孔の下方領域に多くの水が滞留しないようにすることが可能となる。このため、マイク用孔の下方領域に水膜がより生じ難くなる。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記凸状部の前部は、前記切欠孔の内壁面との間に前記水引き込み用の隙間を形成しており、前記凸状部の後部は、前記前部よりも幅広に形成さ
れている。
【0019】
このような構成によれば、凸状部の前部は、水引き込みの隙間を形成するのに有効に利用されている一方、凸状部の後部は、凸状部の前部よりも幅広であるため、コーキング処理が施される場合に、切欠孔にその後方からコーキング材が流れ込むことを確実に防止するのに好ましいものとなる。
【0020】
本発明において、好ましくは、前記凸状部のうち、前記マイク用孔の下方領域に対面する前面は、下方に進むほど後方に位置するように傾斜している。
【0021】
このような構成によれば、マイク用孔の下方領域に水が進行した場合、この水は、凸状部の傾斜した前面を伝って下方に流れ落ち易くなる。このため、水膜がより生じ難くなる効果が得られる。
【0022】
本発明において、好ましくは、前記筐体の底面部のうち、前記マイク用孔の開口周辺部は、後方に進むほど高さが低くなる傾斜面とされている。
【0023】
このような構成によれば、マイク用孔の開口周辺部からその後方に水が進行し易くなって、マイク用孔の下方領域に多くの水が滞留し難くなる結果、その部分に水膜がより発生し難くなる。
【0024】
本発明において、好ましくは、前記切欠孔の周縁には、前記マイク用孔の下方領域に連通する1または複数の切欠き部が設けられている。
【0025】
このような構成によれば、マイク用孔の下方領域に進行した水の一部が前記切欠き部に進入する作用を生じる。その結果、マイク用孔の下方領域に多くの水が滞留しないようにして、水膜の発生を抑制する効果が得られる。
【0026】
本発明において、好ましくは、前記化粧カバーの下片部または前記筐体の底面部には、前記切欠孔に進入してきた水を下方に流れ落ちるようにガイドする下向き状の突出片が、前記切欠孔の左右幅方向両側縁のいずれか一方の側縁のみに設けられている。
【0027】
このような構成によれば、切欠孔内において水膜が発生しようとしても、この水には、前記下向き状の突出片を伝って下方に流れ落ちようとする力が偏った状態で働く。このようなアンバランスな力が発生することに起因して、水膜の発生が抑制される。
【0028】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る壁面設置型リモコンの一例を示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示す壁面設置型リモコンを斜め下方から見た斜視図であり、(b)は、(a)のIIb矢視の要部底面図である。
【図3】図1に示す壁面設置型リモコンの分解斜視図である。
【図4】(a)は、図1のIV−IV断面図であり、(b)は、その要部拡大図である。
【図5】図4(b)に示された構造の要部分解断面図である。
【図6】図4(b)のVI−VI要部断面図である。
【図7】本発明の他の例を示す要部底面図である。
【図8】本発明の他の例を示す要部底面図である。
【図9】本発明の他の例を示す要部底面図である。
【図10】本発明の他の例を示す要部断面図である。
【図11】(a)は、本発明の他の例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)の構造に用いられている化粧カバーの要部斜視図である。
【図12】本発明の他の例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0031】
図1〜図6は、本発明が適用された壁面設置型リモコンの一例を示している。なお、以下において、構成要素どうしの前後方向の関係については、壁面設置型リモコンの正面方向Frを「前方」とし、これとは反対方向を「後方」として説明する。
本実施形態の壁面設置型リモコンR(以下、リモコンRと略称する)は、給湯器用のリモコンであり、図1に示すように、浴室の壁面9に取り付けられて使用される。図3によく表われているように、リモコンRは、筐体1と、化粧カバー2とを具備しており、筐体1の底面部11には、マイク用孔12および凸状部4が設けられている。化粧カバー2の後述する下片部21aには、切欠孔22が設けられている。
【0032】
筐体1は、正面視矩形状であって、略直方体状である。図4に示すように、筐体1は、樹脂製の前側部材10Aおよび後側部材10Bを組み合わせて構成されており、この筐体1の前面部には、液晶表示器などを用いて構成された表示部30や、複数の操作スイッチ31が設けられている。筐体1の内部には、制御回路などを構成する種々の電気・電子部品が実装された回路基板32が収容されている。筐体1に収容された電気部品としては、マイクMCおよびスピーカSP(図1を参照)もあり、このリモコンRは台所などに設置された他の給湯器用リモコンとの間で通話を行なうことが可能なインターホン機能を有している。スピーカSPは、図1に示すように、筐体1の前方を向くように設けられているのに対し、マイクMCは、スピーカSPとの音響結合を防止する観点から、スピーカSPから離間した配置とされ、かつ下向きに設置されている。
【0033】
図4〜図6に示すように、マイクMCは、ホルダ51に支持されて筐体1内に固定されている。マイク用孔12は、リモコンRの外部からマイクMCまで音声を伝達させるための孔であり、その下端が筐体1の底面部11に開口するように設けられている。本実施形態では、筐体1の底面部11に、撥水性シート50が貼付されており、マイク用孔12内への水の進入を極力防止できるようにしている。この撥水性シート50は、通気性を有しており、マイクMCへの音声入力に支障はない。
【0034】
図3によく表われているように、化粧カバー2は、表示部30や操作スイッチ31を露出させるための開口窓20aを有する前板部20と、この前板部20の外周縁から後方に向けて突出した矩形枠状の補助部21とを有している。化粧カバー2は、補助部21を筐体1に外嵌させるようにして筐体1に装着され、筐体1の周側面は補助部21によって覆われる。補助部21は、筐体1の底面部11を覆うための下片部21aを有しており、この下片部21aに、切欠孔22が設けられている。この切欠孔22は、マイク用孔12の下方を下片部21aによって塞がないようにするためのものである。この切欠孔22は、U字状の切欠き開口部であり、マイク用孔12の下方領域に相当する位置から後方に延び、下片部21aの後部側の端縁21a'において一部が開口する構成である。
【0035】
筐体1の底面部11には、下向きに突出した凸状部4が筐体1と一体的に形成されている。この凸状部4は、切欠孔22に嵌入し、かつマイク用孔12よりも後方に位置している。これは、後述するように、コーキング処理が行なわれる際にコーキング材が切欠孔22に進入することを阻止したり、マスキングテープを適切に貼るのに役立つ。凸状部4の下面は、比較的面積が大きく、かつ下片部21aの下面と略同一高さの平面状とされてい
る(図4参照)。
【0036】
図2に示すように、凸状部4は、前部40aおよび後部40bの幅La,Lbが相違する形状であり、La<Lbである。前部40aの側面と切欠孔22の内壁面との間には、幅L1の水引き込み用の隙間61が形成されている。これに対し、後部40bの側面と切欠孔22の内壁面との間には、隙間61よりも狭い幅L2の水引き込み用の隙間62が形成されている。これらの隙間61,62は互いに連通しており、隙間62の後端部62aは開口している。
【0037】
図4に示すように、切欠孔22の内壁面には、この切欠孔22を下広がりの形状とする傾斜面部22aが設けられている。この傾斜面部22aは、図2(b)に示すように、好ましくは、切欠孔22の内壁面のうち、凸状部4よりも前方側に位置する部分の全長域にわたって形成されている。図4によく表われているように、凸状部4の前面41は、下方に進むほど後方寄りに位置するように傾斜している。
【0038】
筐体1の背面部には、シール用パッキン52や突起部13が設けられている。シール用パッキン52は、筐体1を壁面9に取り付けた際に電気配線35およびその周辺部分の防水を図るためのものである。突起部13は、壁面9に当接させることにより筐体1の取り付け状態の安定化を図るための部分である。筐体1の壁面9への取り付けは、たとえばビス(図示略)などを用いて行なわれる。
【0039】
次に、前記したリモコンRの作用について説明する。
【0040】
リモコンRが壁面9に取り付けられた状態において、このリモコンRに比較的多くの水が掛けられると、この水はリモコンRの化粧カバー2の前面や側面部分を伝い、化粧カバー2の下片部21aの下面まで流れる。このような水の一部は、切欠孔22に進入する。ただし、切欠孔22は、単なる円形状の孔とは異なり、その内壁面が狭い面積で閉じた形態にはなく、その形状自体が水膜を発生させ難い。また、本実施形態では、切欠孔22の前部寄りの箇所(マイク用孔12の下方領域)に進入した水の一部は、水引き込み用の隙間61,62に順次引き込まれる。したがって、切欠孔22のうち、マイク用孔12の下方領域に多くの水が滞留したままとなることも防止される。隙間62の後端部62aが開放状態にあれば、前記した水の引き込み量をより多くすることが可能である。
【0041】
一方、切欠孔22は、傾斜面部22aを有する下広がり状であるために、切欠孔22に進入した水は、傾斜面部22aを伝って下方に流れ落ち易くなる作用も得られる。また、凸状部4の前面41も、傾斜面部22aと同様に傾斜しているために、この凸状部4の前面41も、水を下方に流れ落ち易くする作用を発揮する。このようなことから、このリモコンRにおいては、切欠孔22内に比較的多くの水が進入しても、この部分に水膜は発生し難くなり、水膜に起因してマイクMCへの音声入力に不具合を生じることを適切に防止または抑制することが可能となる。
【0042】
リモコンRは、シール用パッキン52の存在により電気配線35やその周辺部の防水を適切に図ることが可能であり、本来的には、リモコンRと壁面9との隙間90(図4を参照)を埋めるためのコーキング処理を施す必要はない。ただし、リモコンRが実際に所望箇所に設置される場合には、様々な事情から、コーキング処理が施される場合がある。このような場合であっても、このリモコンRにおいては、次のように好適に対処することができる。
【0043】
まず、図2に示したように、凸状部4は、切欠孔22の後部側を塞ぐように設けられており、水引き込み用の隙間62の幅L2は、隙間61の幅L1よりも小さい。このため、
凸状部4は、コーキング材が切欠孔22の後方からその内部に進入してくることを適切に抑制する。その結果、マイク用孔12の下端開口やその近傍部分がコーキング材によって覆われ、また隙間61が塞がってしまうといった不具合を生じないようにすることができる。
【0044】
コーキング処理を行なう場合、化粧カバー2の周囲にマスキングテープ(図示略)を貼るが、凸状部4は、切欠孔22における段差を無くす役割も果たすこととなる。すなわち、凸状部4が設けられていない状態でマスキングテープを下片部21aの下面に貼ると、切欠孔22の部分においてマスキンテープが浮いてしまうが、本実施形態によれば、そのようなことが防止できる。凸状部4の下面は、既述したように、下片部21aの下面と略同一高さであって、面積が大きい平面状であるために、マスキングテープをより適切に貼付し易くなる。
【0045】
図7〜図12は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図面において、先の実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0046】
図7に示す実施形態では、凸状部4の後部40bと切欠孔22の内壁面とが接触またはかなり接近しており、これらの間に隙間が形成されておらず、またはその隙間は殆どない。このような構成によれば、コーキング材が切欠孔22内にその後方から流入することは、より確実に防止される。なお、凸状部4の前部40aの両側には、水引き込み用の隙間61が形成されているために、この隙間61を利用し、マイク用孔12の直下領域に多くの水が滞留することを抑制する作用が得られる。
【0047】
図8に示す実施形態では、凸状部4が、底面視矩形の単純な形状とされ、また切欠孔22の前端部から凸状部4までの距離L3が大きくされている。凸状部4の両側には、水引き込み用の隙間63が形成されている。このような構成によれば、前記した距離L3が大きいことに起因し、マイク用孔12の下方領域に水膜を生じ難くする効果が得られる。もちろん、隙間63に水を引き込ませて水膜を発生し難くする効果も得られる。さらに、コーキング処理が行なわれる際には、コーキング材が切欠孔22内にその後方から流入することを凸状部4によって抑制することも可能である。本実施形態から理解されるように、凸状部については種々の構成とすることができる。
【0048】
図9に示す実施形態では、切欠孔22の周縁部に、1または複数の比較的細幅な切欠き部23が形成されている。このような構成によれば、切欠孔22に進入した水が、切欠き部23に引き込まれる作用を生じ、このことにより水膜を生じ難くすることができる。切欠孔の周縁部に水引き込み用の切欠き部を設ける手段は、凸状部4の有無には関係なく採用することが可能である。
【0049】
図10に示す実施形態では、筐体1の底面部11のうち、マイク用孔12の周辺部分が、適当な角度αだけ後ろ下がりに傾斜した傾斜面11aとして形成されている。このような構成によれば、切欠孔22内に進入した水が、傾斜面11aに沿って後方に進行し易くなり、マイク用孔12の下方領域に滞留し難くなる。このため、やはり水膜を生じ難くする効果が得られる。傾斜面11aを設ける手段は、本発明で採用される他の手段と重畳的に採用することが可能である。
【0050】
図11に示す実施形態では、化粧カバー2に下向き状の突出片25が設けられている。ただし、この突出片25は、切欠孔22の幅方向両側縁の双方には設けられておらず、それらのうちの一側縁のみに設けられ、かつこの一側縁に沿ってリモコンの前後方向に延びた形態に設けられている。
【0051】
このような構成によれば、切欠孔22内に進行した水Wが水膜状になろうとしても、この水Wのうち、突出片25に接触している部分には、突出片25に沿って下方に流れ落ちようとする力Fが生じ、他の部分には生じないため、前記水の各部における力のバランスが崩れる。その結果、水膜は発生し難くなり、仮に水膜が発生しても、この水膜は早期に破壊する。
【0052】
図12に示す実施形態では、下向き状の突出片15が、筐体1の底面部11に設けられている。この突出片15も、先の突出片25と同様に、切欠孔22の幅方向両側縁のうち、一側縁のみに沿って設けられ、かつリモコンの前後方向に延びた形態である。このような構成であっても、図11に示した実施形態と同様な作用によって水膜を発生し難くする効果が得られる。図11および図12に示したような手段も、本発明で採用される他の手段と組み合わせて重畳的に採用することが可能である。
【0053】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る壁面設置型リモコンの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0054】
上述の実施形態では、説明がなされていないが、本発明では、マイク用孔が化粧カバーの下片部によって覆われることを回避するための孔を、本発明が意図する所定形状の切欠孔として形成する手段のみを講じ、上述した実施形態で説明したような他の手段(たとえば、凸状部4を設けたり、切欠き部23を設ける手段など)を、なんら講じていない構成とすることも可能である。このような構成であっても、切欠孔に特有の水膜抑制作用が得られるからである。
【0055】
筐体は、内部に所望の電気部品を収容し得る形態であればよく、上述した筐体とは異なる形態とすることができる。化粧カバーは、筐体に装着され、少なくとも筐体の一部を覆うことにより筐体の装飾あるいは保護を図るためのものである。ただし、本発明では、少なくとも筐体の底面部を覆う下片部を有するものであることが要件とされる。本発明に係る壁面設置型リモコンは、水が掛かる可能性が高い浴室内への設置用途に好適であるが、浴室以外のたとえば台所や洗面所などの壁面に設置されるリモコンとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0056】
R リモコン(壁面設置型リモコン)
MC マイク
1 筐体
2 化粧カバー
4 凸状部
9 壁面(取り付け対象の)
11 底面部(筐体の)
12 マイク用孔
15 突出片
21a 下片部(化粧カバーの)
21a' 端縁(下片部の)
22 切欠孔
22a 傾斜面部(切欠孔の内壁面の)
23 切欠き部
25 突出片
40a 前部(凸状部の)
40b 後部(凸状部の)
41 前面(凸状部の)
61〜63 隙間(水引き込み用の)
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室やその他の場所の壁面に取り付けて使用され、給湯器などの所望の機器類の遠隔操作に用いられる壁面設置型リモコンに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、浴室の壁面に設置されて使用される給湯器用のリモコンは、制御回路やその他の電気部品を内部に収容した筐体と、この筐体の前面部や周側面部を覆う化粧カバーとを組み合わせて構成されているのが通例である。このようなリモコンとしては、スピーカやマイクを筐体内に収容し、インターホン機能を具備させたものがある。このようなリモコンでは、スピーカとマイクとの音響結合を防止する必要があり、そのための手段として、マイク用孔(リモコン外部からマイクまで音声を伝達させるための孔)を、筐体の底面部に開口させて設ける手段がある。この場合、化粧カバーには、この化粧カバーによってマイク用孔が覆われないようにするための孔を設ける必要がある。従来においては、そのような孔を化粧カバーに設ける場合、筐体に設けられているマイク用孔と同様のたとえば単なる円形状の開口部とされていたのが実情である。
【0003】
しかしながら、前記した構成では、リモコンに比較的多くの水が掛かり、この水が化粧カバーの前記の孔まで進行した場合に、この部分において水膜が発生し易いものとなっていた。水膜が発生すると、マイクへの音声入力に支障を生じてしまう。
【0004】
なお、特許文献1には、電子機器の筐体の底面に設けられているマイク用孔に水膜が発生することを抑制するための手段として、筐体の底面部に傾斜面を設けるといった手段が記載されている。しかしながら、このような手段のみでは、水膜の発生を効率良く、かつ合理的に防止する上で未だ改善の余地がある。また、特許文献1に記載された手段は、化粧カバーを有しない構造を対象としており、筐体と化粧カバーとを組み合わせて構成されるリモコンにそのまま適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2,538,037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、筐体と化粧カバーとが組み合わされて構成され、かつ前記筐体の底面部にマイク用孔が開口して設けられた構造を有する壁面設置型リモコンにおいて、マイク用孔が水膜によって塞がれることを、簡易な構成によって適切に防止または抑制することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される壁面設置型リモコンは、マイクを内蔵しているとともに、底面部にマイク用孔が開口しており、かつ取り付け対象の壁面に背面部が対面するようにして取り付けられる筐体と、この筐体の底面部を覆う下片部を有し、かつこの下片部には、この下片部によって前記マイク用孔が覆われることを回避するための孔が設けられている化粧カバーと、を備えている、壁面設置型リモコンであって、前記マイク用孔が覆われることを回避するための孔は、前記マイク用孔の下方領域から後方に延びて、前記下片部の後
部側の端縁に一部が開口する切欠孔であることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、リモコンに水が掛かり、化粧カバーの下片部に設けられている切欠孔に比較的多くの水が進入しても、この部分において水膜が発生し難くなる。前記切欠孔は、たとえば単なる円形状の孔とは異なり、その内壁面が狭い面積で閉じた形態にはなく、その形状自体が水膜を発生させ難い形状である。また、前記構成によれば、前記切欠孔内のうち、マイク用孔の下方領域に水が進入しても、この水を後方に進行させてマイク用孔の下方領域に多くの水が滞留しないようにすることによって水膜を発生し難くすることも可能となる。このようなことから、本発明によれば、マイク用孔が水膜によって塞がれる現象を生じ難くし、マイクへの音声入力に支障が生じることを適切に防止または抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記切欠孔の内壁面のうち、前記マイク用孔の下方領域に対面する部分には、この部分を下広がり状とする傾斜面部が設けられている。
【0011】
このような構成によれば、切欠孔のうち、マイク用孔の下方領域に進入した水は、前記傾斜面部に沿って下方に流れ落ち易くなる。その結果、マイク用孔の下方領域に水膜がより生じ難くなり、マイク用孔が水膜によって塞がれる不具合を防止するのに一層好ましいものとなる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記筐体の底面部から下向きに突出し、かつ前記切欠孔内のうち、前記マイク用孔の下方領域よりも後方に位置する凸状部を、さらに備えており、前記化粧カバーの小片部と前記壁面との間にコーキング材が充填された場合に、このコーキング材が前記切欠孔内にその後方から流入することを前記凸状部により抑制可能な構成とされている。
【0013】
このような構成によれば、本発明の壁面設置型リモコンを所望の壁面に取り付ける場合において、このリモコンと壁面との隙間を解消するためのコーキング処理が施されたとしても、コーキング材が前記凸状部によって塞き止められて切欠孔内に流入しないようにすることが可能となる。したがって、マイク用孔がコーキング材によって塞がれるといった不具合を生じないようにすることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記凸状部の下面は、前記化粧カバーの下面と略同一高さの平面状である。
【0015】
このような構成によれば、本発明の壁面設置型リモコンの取り付けに際し、コーキング処理を施すべく化粧カバーの下片部にマスキングテープを貼る場合に、このマスキングテープを凸状部の下面にも適切に貼り付けて、切欠孔の形成箇所において大きな隙間が生じないようにすることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記切欠孔の後部の内壁面と前記凸状部との間には、前記マイク用孔の下方領域に進行した水を内部に引き込むことが可能な水引き込み用の隙間が形成されている。
【0017】
このような構成によれば、切欠孔のうち、マイク用孔の下方領域に進行した水が水引き込み用の隙間に進入する作用を生じ、マイク用孔の下方領域に多くの水が滞留しないようにすることが可能となる。このため、マイク用孔の下方領域に水膜がより生じ難くなる。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記凸状部の前部は、前記切欠孔の内壁面との間に前記水引き込み用の隙間を形成しており、前記凸状部の後部は、前記前部よりも幅広に形成さ
れている。
【0019】
このような構成によれば、凸状部の前部は、水引き込みの隙間を形成するのに有効に利用されている一方、凸状部の後部は、凸状部の前部よりも幅広であるため、コーキング処理が施される場合に、切欠孔にその後方からコーキング材が流れ込むことを確実に防止するのに好ましいものとなる。
【0020】
本発明において、好ましくは、前記凸状部のうち、前記マイク用孔の下方領域に対面する前面は、下方に進むほど後方に位置するように傾斜している。
【0021】
このような構成によれば、マイク用孔の下方領域に水が進行した場合、この水は、凸状部の傾斜した前面を伝って下方に流れ落ち易くなる。このため、水膜がより生じ難くなる効果が得られる。
【0022】
本発明において、好ましくは、前記筐体の底面部のうち、前記マイク用孔の開口周辺部は、後方に進むほど高さが低くなる傾斜面とされている。
【0023】
このような構成によれば、マイク用孔の開口周辺部からその後方に水が進行し易くなって、マイク用孔の下方領域に多くの水が滞留し難くなる結果、その部分に水膜がより発生し難くなる。
【0024】
本発明において、好ましくは、前記切欠孔の周縁には、前記マイク用孔の下方領域に連通する1または複数の切欠き部が設けられている。
【0025】
このような構成によれば、マイク用孔の下方領域に進行した水の一部が前記切欠き部に進入する作用を生じる。その結果、マイク用孔の下方領域に多くの水が滞留しないようにして、水膜の発生を抑制する効果が得られる。
【0026】
本発明において、好ましくは、前記化粧カバーの下片部または前記筐体の底面部には、前記切欠孔に進入してきた水を下方に流れ落ちるようにガイドする下向き状の突出片が、前記切欠孔の左右幅方向両側縁のいずれか一方の側縁のみに設けられている。
【0027】
このような構成によれば、切欠孔内において水膜が発生しようとしても、この水には、前記下向き状の突出片を伝って下方に流れ落ちようとする力が偏った状態で働く。このようなアンバランスな力が発生することに起因して、水膜の発生が抑制される。
【0028】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る壁面設置型リモコンの一例を示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示す壁面設置型リモコンを斜め下方から見た斜視図であり、(b)は、(a)のIIb矢視の要部底面図である。
【図3】図1に示す壁面設置型リモコンの分解斜視図である。
【図4】(a)は、図1のIV−IV断面図であり、(b)は、その要部拡大図である。
【図5】図4(b)に示された構造の要部分解断面図である。
【図6】図4(b)のVI−VI要部断面図である。
【図7】本発明の他の例を示す要部底面図である。
【図8】本発明の他の例を示す要部底面図である。
【図9】本発明の他の例を示す要部底面図である。
【図10】本発明の他の例を示す要部断面図である。
【図11】(a)は、本発明の他の例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)の構造に用いられている化粧カバーの要部斜視図である。
【図12】本発明の他の例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0031】
図1〜図6は、本発明が適用された壁面設置型リモコンの一例を示している。なお、以下において、構成要素どうしの前後方向の関係については、壁面設置型リモコンの正面方向Frを「前方」とし、これとは反対方向を「後方」として説明する。
本実施形態の壁面設置型リモコンR(以下、リモコンRと略称する)は、給湯器用のリモコンであり、図1に示すように、浴室の壁面9に取り付けられて使用される。図3によく表われているように、リモコンRは、筐体1と、化粧カバー2とを具備しており、筐体1の底面部11には、マイク用孔12および凸状部4が設けられている。化粧カバー2の後述する下片部21aには、切欠孔22が設けられている。
【0032】
筐体1は、正面視矩形状であって、略直方体状である。図4に示すように、筐体1は、樹脂製の前側部材10Aおよび後側部材10Bを組み合わせて構成されており、この筐体1の前面部には、液晶表示器などを用いて構成された表示部30や、複数の操作スイッチ31が設けられている。筐体1の内部には、制御回路などを構成する種々の電気・電子部品が実装された回路基板32が収容されている。筐体1に収容された電気部品としては、マイクMCおよびスピーカSP(図1を参照)もあり、このリモコンRは台所などに設置された他の給湯器用リモコンとの間で通話を行なうことが可能なインターホン機能を有している。スピーカSPは、図1に示すように、筐体1の前方を向くように設けられているのに対し、マイクMCは、スピーカSPとの音響結合を防止する観点から、スピーカSPから離間した配置とされ、かつ下向きに設置されている。
【0033】
図4〜図6に示すように、マイクMCは、ホルダ51に支持されて筐体1内に固定されている。マイク用孔12は、リモコンRの外部からマイクMCまで音声を伝達させるための孔であり、その下端が筐体1の底面部11に開口するように設けられている。本実施形態では、筐体1の底面部11に、撥水性シート50が貼付されており、マイク用孔12内への水の進入を極力防止できるようにしている。この撥水性シート50は、通気性を有しており、マイクMCへの音声入力に支障はない。
【0034】
図3によく表われているように、化粧カバー2は、表示部30や操作スイッチ31を露出させるための開口窓20aを有する前板部20と、この前板部20の外周縁から後方に向けて突出した矩形枠状の補助部21とを有している。化粧カバー2は、補助部21を筐体1に外嵌させるようにして筐体1に装着され、筐体1の周側面は補助部21によって覆われる。補助部21は、筐体1の底面部11を覆うための下片部21aを有しており、この下片部21aに、切欠孔22が設けられている。この切欠孔22は、マイク用孔12の下方を下片部21aによって塞がないようにするためのものである。この切欠孔22は、U字状の切欠き開口部であり、マイク用孔12の下方領域に相当する位置から後方に延び、下片部21aの後部側の端縁21a'において一部が開口する構成である。
【0035】
筐体1の底面部11には、下向きに突出した凸状部4が筐体1と一体的に形成されている。この凸状部4は、切欠孔22に嵌入し、かつマイク用孔12よりも後方に位置している。これは、後述するように、コーキング処理が行なわれる際にコーキング材が切欠孔22に進入することを阻止したり、マスキングテープを適切に貼るのに役立つ。凸状部4の下面は、比較的面積が大きく、かつ下片部21aの下面と略同一高さの平面状とされてい
る(図4参照)。
【0036】
図2に示すように、凸状部4は、前部40aおよび後部40bの幅La,Lbが相違する形状であり、La<Lbである。前部40aの側面と切欠孔22の内壁面との間には、幅L1の水引き込み用の隙間61が形成されている。これに対し、後部40bの側面と切欠孔22の内壁面との間には、隙間61よりも狭い幅L2の水引き込み用の隙間62が形成されている。これらの隙間61,62は互いに連通しており、隙間62の後端部62aは開口している。
【0037】
図4に示すように、切欠孔22の内壁面には、この切欠孔22を下広がりの形状とする傾斜面部22aが設けられている。この傾斜面部22aは、図2(b)に示すように、好ましくは、切欠孔22の内壁面のうち、凸状部4よりも前方側に位置する部分の全長域にわたって形成されている。図4によく表われているように、凸状部4の前面41は、下方に進むほど後方寄りに位置するように傾斜している。
【0038】
筐体1の背面部には、シール用パッキン52や突起部13が設けられている。シール用パッキン52は、筐体1を壁面9に取り付けた際に電気配線35およびその周辺部分の防水を図るためのものである。突起部13は、壁面9に当接させることにより筐体1の取り付け状態の安定化を図るための部分である。筐体1の壁面9への取り付けは、たとえばビス(図示略)などを用いて行なわれる。
【0039】
次に、前記したリモコンRの作用について説明する。
【0040】
リモコンRが壁面9に取り付けられた状態において、このリモコンRに比較的多くの水が掛けられると、この水はリモコンRの化粧カバー2の前面や側面部分を伝い、化粧カバー2の下片部21aの下面まで流れる。このような水の一部は、切欠孔22に進入する。ただし、切欠孔22は、単なる円形状の孔とは異なり、その内壁面が狭い面積で閉じた形態にはなく、その形状自体が水膜を発生させ難い。また、本実施形態では、切欠孔22の前部寄りの箇所(マイク用孔12の下方領域)に進入した水の一部は、水引き込み用の隙間61,62に順次引き込まれる。したがって、切欠孔22のうち、マイク用孔12の下方領域に多くの水が滞留したままとなることも防止される。隙間62の後端部62aが開放状態にあれば、前記した水の引き込み量をより多くすることが可能である。
【0041】
一方、切欠孔22は、傾斜面部22aを有する下広がり状であるために、切欠孔22に進入した水は、傾斜面部22aを伝って下方に流れ落ち易くなる作用も得られる。また、凸状部4の前面41も、傾斜面部22aと同様に傾斜しているために、この凸状部4の前面41も、水を下方に流れ落ち易くする作用を発揮する。このようなことから、このリモコンRにおいては、切欠孔22内に比較的多くの水が進入しても、この部分に水膜は発生し難くなり、水膜に起因してマイクMCへの音声入力に不具合を生じることを適切に防止または抑制することが可能となる。
【0042】
リモコンRは、シール用パッキン52の存在により電気配線35やその周辺部の防水を適切に図ることが可能であり、本来的には、リモコンRと壁面9との隙間90(図4を参照)を埋めるためのコーキング処理を施す必要はない。ただし、リモコンRが実際に所望箇所に設置される場合には、様々な事情から、コーキング処理が施される場合がある。このような場合であっても、このリモコンRにおいては、次のように好適に対処することができる。
【0043】
まず、図2に示したように、凸状部4は、切欠孔22の後部側を塞ぐように設けられており、水引き込み用の隙間62の幅L2は、隙間61の幅L1よりも小さい。このため、
凸状部4は、コーキング材が切欠孔22の後方からその内部に進入してくることを適切に抑制する。その結果、マイク用孔12の下端開口やその近傍部分がコーキング材によって覆われ、また隙間61が塞がってしまうといった不具合を生じないようにすることができる。
【0044】
コーキング処理を行なう場合、化粧カバー2の周囲にマスキングテープ(図示略)を貼るが、凸状部4は、切欠孔22における段差を無くす役割も果たすこととなる。すなわち、凸状部4が設けられていない状態でマスキングテープを下片部21aの下面に貼ると、切欠孔22の部分においてマスキンテープが浮いてしまうが、本実施形態によれば、そのようなことが防止できる。凸状部4の下面は、既述したように、下片部21aの下面と略同一高さであって、面積が大きい平面状であるために、マスキングテープをより適切に貼付し易くなる。
【0045】
図7〜図12は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図面において、先の実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0046】
図7に示す実施形態では、凸状部4の後部40bと切欠孔22の内壁面とが接触またはかなり接近しており、これらの間に隙間が形成されておらず、またはその隙間は殆どない。このような構成によれば、コーキング材が切欠孔22内にその後方から流入することは、より確実に防止される。なお、凸状部4の前部40aの両側には、水引き込み用の隙間61が形成されているために、この隙間61を利用し、マイク用孔12の直下領域に多くの水が滞留することを抑制する作用が得られる。
【0047】
図8に示す実施形態では、凸状部4が、底面視矩形の単純な形状とされ、また切欠孔22の前端部から凸状部4までの距離L3が大きくされている。凸状部4の両側には、水引き込み用の隙間63が形成されている。このような構成によれば、前記した距離L3が大きいことに起因し、マイク用孔12の下方領域に水膜を生じ難くする効果が得られる。もちろん、隙間63に水を引き込ませて水膜を発生し難くする効果も得られる。さらに、コーキング処理が行なわれる際には、コーキング材が切欠孔22内にその後方から流入することを凸状部4によって抑制することも可能である。本実施形態から理解されるように、凸状部については種々の構成とすることができる。
【0048】
図9に示す実施形態では、切欠孔22の周縁部に、1または複数の比較的細幅な切欠き部23が形成されている。このような構成によれば、切欠孔22に進入した水が、切欠き部23に引き込まれる作用を生じ、このことにより水膜を生じ難くすることができる。切欠孔の周縁部に水引き込み用の切欠き部を設ける手段は、凸状部4の有無には関係なく採用することが可能である。
【0049】
図10に示す実施形態では、筐体1の底面部11のうち、マイク用孔12の周辺部分が、適当な角度αだけ後ろ下がりに傾斜した傾斜面11aとして形成されている。このような構成によれば、切欠孔22内に進入した水が、傾斜面11aに沿って後方に進行し易くなり、マイク用孔12の下方領域に滞留し難くなる。このため、やはり水膜を生じ難くする効果が得られる。傾斜面11aを設ける手段は、本発明で採用される他の手段と重畳的に採用することが可能である。
【0050】
図11に示す実施形態では、化粧カバー2に下向き状の突出片25が設けられている。ただし、この突出片25は、切欠孔22の幅方向両側縁の双方には設けられておらず、それらのうちの一側縁のみに設けられ、かつこの一側縁に沿ってリモコンの前後方向に延びた形態に設けられている。
【0051】
このような構成によれば、切欠孔22内に進行した水Wが水膜状になろうとしても、この水Wのうち、突出片25に接触している部分には、突出片25に沿って下方に流れ落ちようとする力Fが生じ、他の部分には生じないため、前記水の各部における力のバランスが崩れる。その結果、水膜は発生し難くなり、仮に水膜が発生しても、この水膜は早期に破壊する。
【0052】
図12に示す実施形態では、下向き状の突出片15が、筐体1の底面部11に設けられている。この突出片15も、先の突出片25と同様に、切欠孔22の幅方向両側縁のうち、一側縁のみに沿って設けられ、かつリモコンの前後方向に延びた形態である。このような構成であっても、図11に示した実施形態と同様な作用によって水膜を発生し難くする効果が得られる。図11および図12に示したような手段も、本発明で採用される他の手段と組み合わせて重畳的に採用することが可能である。
【0053】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る壁面設置型リモコンの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0054】
上述の実施形態では、説明がなされていないが、本発明では、マイク用孔が化粧カバーの下片部によって覆われることを回避するための孔を、本発明が意図する所定形状の切欠孔として形成する手段のみを講じ、上述した実施形態で説明したような他の手段(たとえば、凸状部4を設けたり、切欠き部23を設ける手段など)を、なんら講じていない構成とすることも可能である。このような構成であっても、切欠孔に特有の水膜抑制作用が得られるからである。
【0055】
筐体は、内部に所望の電気部品を収容し得る形態であればよく、上述した筐体とは異なる形態とすることができる。化粧カバーは、筐体に装着され、少なくとも筐体の一部を覆うことにより筐体の装飾あるいは保護を図るためのものである。ただし、本発明では、少なくとも筐体の底面部を覆う下片部を有するものであることが要件とされる。本発明に係る壁面設置型リモコンは、水が掛かる可能性が高い浴室内への設置用途に好適であるが、浴室以外のたとえば台所や洗面所などの壁面に設置されるリモコンとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0056】
R リモコン(壁面設置型リモコン)
MC マイク
1 筐体
2 化粧カバー
4 凸状部
9 壁面(取り付け対象の)
11 底面部(筐体の)
12 マイク用孔
15 突出片
21a 下片部(化粧カバーの)
21a' 端縁(下片部の)
22 切欠孔
22a 傾斜面部(切欠孔の内壁面の)
23 切欠き部
25 突出片
40a 前部(凸状部の)
40b 後部(凸状部の)
41 前面(凸状部の)
61〜63 隙間(水引き込み用の)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクを内蔵しているとともに、底面部にマイク用孔が開口しており、かつ取り付け対象の壁面に背面部が対面するようにして取り付けられる筐体と、
この筐体の底面部を覆う下片部を有し、かつこの下片部には、この下片部によって前記マイク用孔が覆われることを回避するための孔が設けられている化粧カバーと、
を備えている、壁面設置型リモコンであって、
前記マイク用孔が覆われることを回避するための孔は、前記マイク用孔の下方領域から後方に延びて、前記下片部の後部側の端縁に一部が開口する切欠孔であることを特徴とする、壁面設置型リモコン。
【請求項2】
請求項1に記載の壁面設置型リモコンであって、
前記切欠孔の内壁面のうち、前記マイク用孔の下方領域に対面する部分には、この部分を下広がり状とする傾斜面部が設けられている、壁面設置型リモコン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の壁面設置型リモコンであって、
前記筐体の底面部から下向きに突出し、かつ前記切欠孔内のうち、前記マイク用孔の下方領域よりも後方に位置する凸状部を、さらに備えており、
前記化粧カバーの小片部と前記壁面との間にコーキング材が充填された場合に、このコーキング材が前記切欠孔内にその後方から流入することを前記凸状部により抑制可能な構成とされている、壁面設置型リモコン。
【請求項4】
請求項3に記載の壁面設置型リモコンであって、
前記凸状部の下面は、前記化粧カバーの下面と略同一高さの平面状である、壁面設置型リモコン。
【請求項5】
請求項3または4に記載の壁面設置型リモコンであって、
前記切欠孔の後部の内壁面と前記凸状部との間には、前記マイク用孔の下方領域に進行した水を内部に引き込むことが可能な水引き込み用の隙間が形成されている、壁面設置型リモコン。
【請求項6】
請求項5に記載の壁面設置型リモコンであって、
前記凸状部の前部は、前記切欠孔の内壁面との間に前記水引き込み用の隙間を形成しており、
前記凸状部の後部は、前記前部よりも幅広に形成されている、壁面設置型リモコン。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれかに記載の壁面設置型リモコンであって、
前記凸状部のうち、前記マイク用孔の下方領域に対面する前面は、下方に進むほど後方に位置するように傾斜している、壁面設置型リモコン。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の壁面設置型リモコンであって、
前記筐体の底面部のうち、前記マイク用孔の開口周辺部は、後方に進むほど高さが低くなる傾斜面とされている、壁面設置型リモコン。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の壁面設置型リモコンであって、
前記切欠孔の周縁には、前記マイク用孔の下方領域に連通する1または複数の切欠き部が設けられている、壁面設置型リモコン。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の壁面設置型リモコンであって、
前記化粧カバーの下片部または前記筐体の底面部には、前記切欠孔に進入してきた水を
下方に流れ落ちるようにガイドする下向き状の突出片が、前記切欠孔の左右幅方向両側縁のいずれか一方の側縁のみに設けられている、壁面設置型リモコン。
【請求項1】
マイクを内蔵しているとともに、底面部にマイク用孔が開口しており、かつ取り付け対象の壁面に背面部が対面するようにして取り付けられる筐体と、
この筐体の底面部を覆う下片部を有し、かつこの下片部には、この下片部によって前記マイク用孔が覆われることを回避するための孔が設けられている化粧カバーと、
を備えている、壁面設置型リモコンであって、
前記マイク用孔が覆われることを回避するための孔は、前記マイク用孔の下方領域から後方に延びて、前記下片部の後部側の端縁に一部が開口する切欠孔であることを特徴とする、壁面設置型リモコン。
【請求項2】
請求項1に記載の壁面設置型リモコンであって、
前記切欠孔の内壁面のうち、前記マイク用孔の下方領域に対面する部分には、この部分を下広がり状とする傾斜面部が設けられている、壁面設置型リモコン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の壁面設置型リモコンであって、
前記筐体の底面部から下向きに突出し、かつ前記切欠孔内のうち、前記マイク用孔の下方領域よりも後方に位置する凸状部を、さらに備えており、
前記化粧カバーの小片部と前記壁面との間にコーキング材が充填された場合に、このコーキング材が前記切欠孔内にその後方から流入することを前記凸状部により抑制可能な構成とされている、壁面設置型リモコン。
【請求項4】
請求項3に記載の壁面設置型リモコンであって、
前記凸状部の下面は、前記化粧カバーの下面と略同一高さの平面状である、壁面設置型リモコン。
【請求項5】
請求項3または4に記載の壁面設置型リモコンであって、
前記切欠孔の後部の内壁面と前記凸状部との間には、前記マイク用孔の下方領域に進行した水を内部に引き込むことが可能な水引き込み用の隙間が形成されている、壁面設置型リモコン。
【請求項6】
請求項5に記載の壁面設置型リモコンであって、
前記凸状部の前部は、前記切欠孔の内壁面との間に前記水引き込み用の隙間を形成しており、
前記凸状部の後部は、前記前部よりも幅広に形成されている、壁面設置型リモコン。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれかに記載の壁面設置型リモコンであって、
前記凸状部のうち、前記マイク用孔の下方領域に対面する前面は、下方に進むほど後方に位置するように傾斜している、壁面設置型リモコン。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の壁面設置型リモコンであって、
前記筐体の底面部のうち、前記マイク用孔の開口周辺部は、後方に進むほど高さが低くなる傾斜面とされている、壁面設置型リモコン。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の壁面設置型リモコンであって、
前記切欠孔の周縁には、前記マイク用孔の下方領域に連通する1または複数の切欠き部が設けられている、壁面設置型リモコン。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の壁面設置型リモコンであって、
前記化粧カバーの下片部または前記筐体の底面部には、前記切欠孔に進入してきた水を
下方に流れ落ちるようにガイドする下向き状の突出片が、前記切欠孔の左右幅方向両側縁のいずれか一方の側縁のみに設けられている、壁面設置型リモコン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−211718(P2012−211718A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76884(P2011−76884)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
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