説明

変動の少ないコーティングされたフロス

デンタルフロスにはコーティングされた繊維状基材が含まれており、このコーティングされた繊維状基材は、繊維状基材に、より一貫した量のコーティングが供給されるためにコーティングが計量されることになる。このデンタルフロスは、計量された量のコーティングが繊維状基材に配置されるように製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より一貫したコーティング重量を備えた、コーティングされたデンタルフロスと、その製造方法を目的とする。
【背景技術】
【0002】
デンタルフロスは、歯の間のくずや歯垢を除去する一助とするために多くの人々が使用しているツールである。フロスは長年にわたって、コーティングされていない単純な絹繊維から、コーティングされていないナイロン繊維、更に、コーティングされた及びコーティングされていないさまざまな種類の繊維へと、開発が進められてきた。デンタルフロスは数多くの理由のためにコーティングすることができ、この理由には、繊維の強化、歯石取り補助のための研磨剤の添加、及び、繊維と歯との間の摩擦を低減することによりフロス使用を容易にすることが挙げられる。コーティングは、フロスに対し数多くの有益な特性を付加するが、フロスに一貫したコーティングを行うのは、これまでのところ実現が困難である。
【0003】
歴史的に、デンタルフロスのコーティングの量は非常に変動的であり、一貫していない。しばしば、デンタルフロスのコーティング重量は、フロスの長さに従って50%を超える変動が生じることがある。この多大な変動により、デンタルフロスのメーカーは、フロス製造のコストが増大することと、フロスの特性が一貫しないことと、をこれまで受け入れてきた。同様に、例えば活性物質の投与において、一貫性又は変動制限を必要とするような材料の送達としては、フロスは不良な賦形方法であることを、メーカーは受け入れてきた。場合によっては、口腔ケアに使用される活性物質は、米国食品医薬品局(FDA)により監視され、また、製品中に特定の活性物質を伴う利点を主張するために、FDAは、送達される活性物質の量が特定範囲内で安全かつ有効であることを要求する可能性がある。フロス上で口腔ケア活性物質を送達するというこれまでの試みでは、製品に、FDAが認める範囲を上回る変動が生じ、これにより治療的効果の主張は低減又は排除されてきた。
【0004】
フロス上のコーティング量が非常に変動的である理由の1つは、現在フロスをコーティングするのに使用されている方法によるものである。例えば、フロスコーティングに使用されている現行の方法の1つは、ディップ法として知られる。このディップ法では、溝付きロールが平容器からコーティングを取得し、コーティングが入った溝にフロス繊維を引いて通す。繊維が溝を通って引っ張られることにより、フロス繊維全体がコーティングに浸り、繊維全体がコーティングに覆われることになる。繊維が浸されるコーティングは大幅に過剰であるため、ディップコーティング後に繊維に移行するコーティングの量を制御することはできない。このように、この方法でコーティングされたフロスの所定の面積におけるコーティング量は非常に変動的であり、フロス上で最大45%〜55%の変動が生じ得る。
【0005】
フロス繊維をコーティングするのに現在使用されている方法のもう1つの例は、ナイフオーバーロール法である。ナイフオーバーロール法では、ロールが平容器からコーティングを取得する。コーティングはロール表面上に付着しており、コーティングロールから特定の距離の位置に設定されたナイフによって過剰な液が除去されて、ロール状のコーティングの望ましい厚さが達成される。フロス繊維にロール表面上を走行させ、ここで、フロスがロール表面からコーティングを取得して、フロスの幅全体に沿ってコーティングされる。この方法ではナイフを利用して、ナイフによって設定される望ましい量を上回る過剰なコーティングを除去しているが、依然として、コーティングロール上には大幅に過剰量のコーティングが残っている。ナイフオーバーロール法はまた、コーティングレベルが、使用される繊維の幅に依存するため、設計通りのレベルに対して過剰なコーティングを有しているフロス繊維が生じる。ナイフオーバーロール法でも、フロスの所定の面積におけるコーティング量は、最終製品上で最大45%〜55%の変動が生じ得る。
【0006】
一貫したコーティング重量を備えたフロスを製造するこれまでの試みが不成功に終わったもう1つの理由は、フロス繊維の幅に大きな変動があることである。フロス繊維は平均わずか約2mmとかなり幅狭であるが、繊維製造の方法により、この製品の幅に大きな変動が生じる。製品の幅の変動は、フロスの長さに沿って最大35%であり得る。その結果、フロスのある部分は比較的かなり幅広で、別の部分は非常に幅狭となる。溝内のコーティング中、又はロールの表面上のコーティング中にフロスの幅広部分を引いて通すと、同じ溝内又は同じロール上にフロスの幅狭部分を引いて通した時に比べ、少なくとも幾分表面積が違うことから、より大量のコーティングを取得することになる。例えば、矩形の断面を有しており、目標幅が1.95mmである単繊維フロスは、製造時公差で許容される実際の幅が1.2mm〜2.7mmの範囲となる。目標幅繊維(1.95mm)の2.54cm(1インチ)の合計面積は、0.516cm(0.08in)となる。乾燥コーティング重量目標値が、繊維1センチメートル当たりの乾燥コーティング重量で177μgであると仮定すると(繊維1インチ当たりの乾燥コーティング重量450μg)、これは繊維18インチ当たり目標重量が0.0081gとなる。繊維の幅が1.2mmの部分については、繊維2.54cm(1インチ)の合計面積は0.323cm(0.05in)となり、コート重量は109μg(micron)/cm(0.0050g/18インチ)、又は目標値からのコート重量の変動が約−38%で、目標値の61%となる。繊維の幅が2.7mmの部分については、繊維2.54cm(1インチ)の面積は0.710cm(0.11in)となり、コート重量は245μg(micron)/cm(0.0112g/18インチ)、又は目標値からのコート重量の変動が+38%で、目標値の138%となる。目標値からの変動を計算するために、変動%=((実際値−目標値)/目標値)100)の式を使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、コーティングの変動の少ないデンタルフロスと、そのようなフロスの製造に関する方法のニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
コーティングされた繊維状基材を含んでいるデンタルフロスが提供され、繊維状基材の第1部分のコーティング乾燥重量と、繊維状基材の第2部分のコーティング乾燥重量との間の差が、30%以下である。
【0009】
第1部分及び第2部分を有している繊維状基材を提供する工程と、その繊維状基材の表面に活性物質を含んでいるコーティングを適用する工程と、を備えており、これにより第1部分のコーティング乾燥重量と、第2部分のコーティング乾燥重量との間の差が30%以下となる、デンタルフロスの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による、コーティングされた繊維の斜視図。
【図2】本発明の別の一実施形態による、コーティングされた繊維の斜視図。
【図3】本発明の別の一実施形態による、コーティングされた繊維の斜視図。
【図4】本発明の別の一実施形態による、コーティングされた繊維の斜視図。
【図5】本発明によるフロスを製造するためのプロセスの概要図。
【図6】本発明によるフロスを製造するためのプロセスの概要図。
【図7】本発明に使用されるノズルの拡大図。
【図8】本発明に使用されるノズルの拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、デンタルフロスを製造するのに使用される繊維状基材に適用されるコーティングの変動を低減させることを目的とし、これにより、大規模生産におけるコーティングの低変動を維持することによって、デンタルフロスについて行われる治療薬の効果主張を可能にするものである。加えて、より一貫性のあるコーティングされたフロスの特性、例えば香味の強度、並びにフロスのコストなどが、より一貫性をもち、予測可能なものになる。本発明のデンタルフロスは、歯から食物及び歯垢を除去するために口腔内で使用することができる特性(強度、寸法、安全性)を有している薄い繊維状基材からなる。このフロスを歯の間に挿入し、歯の側面(特に歯肉の近く)に沿ってこする。本発明のデンタルフロスを構成する繊維状基材は、単繊維の形状であってよく、又は、そのような繊維を複数含んでいる撚り糸(多繊維撚糸)の形状であってもよく、ここにおいて繊維は、分離した単繊維であってよく、部分的又は完全に接着されている繊維であってよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0012】
繊維状基材のコーティング方法、及び繊維状基材を製造する方法が、コーティング重量の変動に寄与する。繊維状基材上に適用されるコーティングの量を制御することによって、より一貫性の高いコーティングされたデンタルフロスが製造されることが、このたび発見された。加えて、繊維状基材に適用されるコーティングの量を制御することによって、繊維状基材上のコーティングの全体的な搭載量は、繊維状基材の幅とは独立している。例えば、幅3mm、長さ2.54mm(1インチ)を有している繊維状基材と、幅1.5mm、長さ2.54mm(1インチ)を有している繊維状基材に、2mgのコーティングを適用した場合、各断片上のコーティングは依然として2mgだけである。コーティングは、より幅広の断片上では多少薄くなり得るが、コーティング量の全体的な送達量は実質的に同じとなる。よって、現行のフロスコーティングにおける変動に寄与する上述の2つの要素:(1)フロスをコーティングで覆うこと、(2)フロスの幅の変動、の両方とも、本発明において最小限となるか又は排除される。
【0013】
計量は、繊維状基材に適用するコーティングの量を制御することによってコーティング変動を低減する方法の一例である。一実施形態において、計量は、容積移送式ポンプの使用により達成される。容積移送式ポンプは、一定量の液体をトラップし、圧力をかけて排出させることによって液体を移送するものである。容積移送式ポンプの例には、ロータリーギヤポンプ、ダイアフラムポンプ、ロータリーローブポンプ、プラネタリーポンプ、ピストンポンプ、スクリューポンプ、ペリスタルティックポンプ、及びこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。容積移送式ポンプは、繊維状基材に使用されるコーティングの速度を設定するのに役立てるのに利用され、これにより、各一定量の繊維状基材が、同じ量のコーティングを受け取る(製造時公差内で)。
【0014】
図1〜3に示すように、コーティングは実質的に間断のない連続した状態で、例えば、1つ以上の部分にわたって、繊維状基材の長さ方向に沿って延在し得、例えば図1に示すように、繊維状基材2は、第1部分Aと第2部分Bを有している。図1に図示されているように、コーティング1は、繊維状基材2の表面全体をコーティングし得る。加えて、コーティング1は、図2に示すように、繊維状基材2の表面の一部だけをコーティングするストライプの形状で配置することができる。一実施形態において、このストライプは実質的に均一な幅を有している。別の一実施形態において、このストライプは繊維状基材表面の中央近くに配置される。コーティング1は、図3に示すように、繊維状基材2上に複数のストライプの形状で配置することもできる。同様に、このコーティングは、水玉状(図4を参照)、短線分状、ジグザグ状など、その他の形状をとることもできる。別の一実施形態において、繊維状基材は1つ以上の表面にコーティングされる。コーティングされる繊維状基材は、本明細書で検討されるコーティングを適用する前に、未コーティング状態であってよく、またコーティング済み状態であってもよい。
【0015】
上記を考慮して、本発明の一実施形態は、コーティングされた繊維状基材を備えたデンタルフロスを目的とし、2つ以上の部分におけるコーティング乾燥重量の相違、例えば、繊維状基材の第1部分のコーティング乾燥重量と、繊維状基材の第2部分のコーティング乾燥重量との相違は、30%以下である。別の実施形態において、第1部分と第2部分のコーティング乾燥重量との相違は、約25%、約20%、約15%、約12%、約10%、約8%、約6%、約4%、約2%、約1%、又はそれ以下であり得る。加えて、このコーティングはさまざまな実施形態において活性物質を含むことができ、繊維状基材の第1部分と繊維状基材の第2部分における活性物質用量の相違は、約30%、約25%、約20%、約15%、約12%、約10%、約8%、約6%、約4%、約2%、約1%、又はそれ以下である。特定の実施形態において、それぞれ実質的に同じ長さを有している1つ以上の部分、例えば特定の実施形態において繊維状基材の第1部分と第2部分は、それぞれ約5cmの長さを有しており、別の特定の実施形態においては、繊維状基材の第1部分と第2部分はそれぞれ約2.5cmの長さを有しており、更に別の実施形態においては、繊維状基材の第1部分と第2部分はそれぞれ約1cmの長さを有している。
【0016】
単繊維の形状での繊維状基材は、任意の好適な断面形状を有し得、例えば円形又は矩形であり得る。加えて、繊維は複数の構成要素からなる繊維であってよく、例えば二成分繊維、三成分繊維等であり得る。図1に戻って参照し、矩形の断面を有している繊維状基材2は、幅(W)にわたる2つの相対する主表面と、高さ(H)にわたる2つの相対する副表面と、を備える。繊維状基材は、デンタルフロスとして使用するのに好適な任意の幅及び高さを有し得る。一般に、繊維状基材の幅は約0.7mm〜約3.5mmである。さまざまな実施形態において、この幅は約1.0mm〜約3.0mm、約1.5mm〜約2.5mm、又は約1.75mm〜約2.25mmである。特定の実施形態において繊維状基材の高さは約0.05mm〜約1mm、及び他の特定の実施形態においては約0.1mm〜約0.5mmである。
【0017】
単繊維又は多繊維撚糸は、口腔内利用に好適な任意の材料から製造することができる。口腔に好適な繊維を製造するのに使用されるいくつかの一般的なポリマーには例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、この繊維は、伸長されたPTFE、及び同様の材料を含み得る。そのような材料の組み合わせも、デンタルフロスに必要な強度及びほつれ耐性(fray resistance)を備えたフロスを提供する限り、許容される。
【0018】
多繊維撚糸を含んでいる個々の繊維は、望ましい場合は、空気交絡され得る。この撚糸が空気交絡される場合、空気交絡結節(air entanglement nodes)は、約1.25cm〜約5.2cm離れていてよく、特定の実施形態においては約2cm〜約3cm離れていてよい。
【0019】
繊維は、同様に、任意の好適なデニールを有し得る。デニールとは、単位長さ当たりの質量の測定値であり、繊維状基材の引張り強度に影響を与える。一般に、デンタルフロスの製造に使用される繊維状基材のデニールは、約800g/9000m〜約2700g/9000mである。別の実施形態において、デニールは、約850g/9000m〜約1600g/9000m、約860g/9000m〜約1200g/9000m、又は約1000g/9000m〜約1200g/9000mである。
【0020】
コーティングは、本発明の後述の方法の1つ以上を使用して、繊維状基材に適用することができる。特定の実施形態において、図5に示すように、繊維状基材をコーティングするためのコーティングシステム5には、テークオフローラー10、コーティング装置20、乾燥装置40、及びテークアップローラー50が含まれる。テークオフローラー10には、コーティングされる繊維状基材2が保持される。このテークオフローラー10は、駆動ローラー(すなわち動力を使用する)又は非駆動ローラーであり得る。テークオフローラー10の目的は、繊維状基材2の大型スプール12を保持し、望ましい速度でスプール12からほどき、ほどいた繊維状基材2をコーティングプロセスへと送り出すことである。テークオフローラー10はまた、繊維状基材2の均一な張力を保持するための張力制御装置をも有し得る。特定の実施形態において、テークオフローラー10は駆動ローラーであり、ブレーキを備え、毎分約100メートル〜約300メートルの速度で繊維状基材を送り出すことができる。テークオフローラー10は、繊維状基材2の最も幅広の部分がコーティングノズルに曝されるように配置することができる。
【0021】
テークオフローラー10はまた、テークアップローラー50と連動させることができ、これにより2つのローラー10、50の間で実質的に一貫した張力が保持される。特定の実施形態において、テークオフローラーとテークアップローラーとの間の最大張力は、コーティングされる繊維状基材の破断強度を超えるべきではない。この最大張力は、テークアップワインダー前の最後の接触点後の点で測定される。一実施形態において、テークオフローラーとテークアップローラーとの間の最大張力は400センチニュートンである。繊維状基材が機器のどの箇所でもたるみ(drag)を生じることのないよう、最大張力に加え、最小張力が維持されるべきである。特定の実施形態において、繊維状基材が機器のどの部分(例えば乾燥装置の底)にも接触することのないよう維持するのに使用される最小張力は、約100センチニュートン〜約350センチニュートンである。特定の他の実施形態において、最小張力は約200センチニュートン〜約300センチニュートンである。繊維状基材の張力値に影響する一要因には、炉の空気流に応じて(振動による)張力を変化させる必要が含まれ、よって、もし例えば、炉の空気流が強くなると、より高い張力が必要になる。
【0022】
図5に示すように、繊維状基材2は、テークオフローラー10からコーティング装置20へと移動する。図6に示すように、コーティング装置20(この実施形態では計量ポンプアセンブリ)は、コーティング液を保持する供給ホッパー35と流体連通している。供給ホッパー35は加熱されていてよく、コーティングを混合/攪拌する機能を含んでいてもよく、又はその両方であってもよい。供給ホッパー35は、計量ポンプアセンブリ20の計量ポンプ30に流体連通するよう接続される。特定の実施形態において、供給ホッパーは300L容器であり得、コーティング液が乳濁液の場合は、乳濁液の均質性を確保するためにコーティング液を混合することができる。混合の程度は、コーティング液によって異なるが、繊維状基材をコーティングするのに使用するため供給ホッパーからコーティング液が排出される時間にわたって、コーティング液の均質性を維持できる程度であるべきである。特定の実施形態において、直径15インチで少なくとも1ピッチのブレードのタービンインペラを、直径58.4cm(23インチ)のタンク内で、48RPM、比率0.64で使用する。コーティングは実質的に一定の温度を維持し、コーティング装置内にポンプで送り込まれる際のコーティング液が一定の粘性を達成するようにする。
【0023】
供給ホッパー35の下で、供給ポンプ36を使用して、供給ホッパー35からのコーティング液を計量ポンプアセンブリ20へと移送する。供給ポンプ36は、コーティング液を計量ポンプアセンブリ20の入口37へと移送させるための任意のサイズ又は形状のものであり得る。特定の実施形態において、供給ポンプ36は、約0.08グラム/分の流量を有し、約200〜300kPa(約2〜3バール)の圧力を維持する。供給ポンプは、供給タンク36から、計量ポンプアセンブリ20内の計量ポンプ30への、コーティングの安定供給を維持する。
【0024】
計量ポンプアセンブリ20は、3つの主な構成要素を含んでいる。第1の構成要素は計量ポンプ30であり、これは容積移送式ポンプであり得る。容積移送式ポンプは、一定かつ連続した流量を提供する。特定の実施形態において、この計量ポンプは、RPM当たり約0.6ccの等量を12個の出口に供給する、12アウトレットプラネタリーポンプであり得る。特定の他の実施形態において、この計量ポンプは、RPM当たり約0.125ccの単独流を供給する単一ギヤポンプであり得る。計量ポンプのサイズは、繊維状基材上に必要なコーティングの量と、繊維状基材の移動するライン速度によって決定され得る。計量ポンプ30は、マニフォールド32に取り付けることができる。特定の実施形態においてマニフォールド32は、計量ポンプ30から出て1つ以上のノズル25へと向かうコーティング液の流れを方向付けるのに使用される。特定の実施形態において、マニフォールドは、単一ギヤポンプ(ノズルの入口に直接取り付けられている)への供給に使用されるコーティング液のリザーバとして機能する。特定の実施形態において、マニフォールド圧力は約50kPa(約0.5バール)〜約150kPa(約1.5バール)で維持される。マニフォールド内の最大圧力は、計量ポンプアセンブリのバイパス圧力未満であるべきであり、これによりこの圧力が、計量ポンプではなく、コーティング液を計量するようになる。
【0025】
計量ポンプ30を使用して、繊維状基材2に適用されるコーティングの量を計量することができる。計量ポンプ30は、所定の時間(すなわちポンプ速度)で、所定の量のコーティングだけを、1つ以上の分与モジュール21へと引き出し、これが1つ以上のノズル25に流体連通していることにより、繊維状基材の各画定部分に配置されるコーティングの量を制御する。これにより、より一貫性のあるコーティングがなされた繊維状基材が製造される。コーティング液は計量ポンプ30を離れ、1つ以上のノズル25を用いて繊維状基材2へと適用される。ノズルは、流量制御バルブ(例えばニードルバルブ)を含んでいてよく、これにより、繊維状基材がノズルの下になくなったときにはコーティング液の適用を停止することが可能になる。
【0026】
計量ポンプアセンブリ20は、同時に1つ又は複数の繊維状基材をコーティングするようセットアップすることができる。複数の繊維状基材が同時にコーティングされる場合、各繊維状基材は、計量ポンプアセンブリ20上のそれぞれの固有のレーン内を通過する。各レーンにそれぞれ固有の計量ポンプ30があってよく、又は複数流の計量ポンプ(例えば、数多くの等量流量を計量するプラネタリーギヤポンプなど)を使用することができる。
【0027】
上述のように、計量ポンプ速度は、計量ポンプが単位時間当たりに移送するコーティングの量の測定である。繊維状基材上のコーティングの量は、コーティングがノズルから押し出される速度、すなわち計量ポンプ速度によって、直接影響を受ける。例えば、毎分300メートルで移動する繊維状基材にコーティングを適用するのに、毎分26.043立方センチメートル(cc)の計量ポンプ速度を使用した場合、コーティング湿潤重量は約885.8μg(micron)/cm(2250μg/インチ)となる。別の一実施例において300m/分で移動する繊維状基材にコーティングを適用するのに、7.9cc/分のポンプ速度を使用した場合、コーティング湿潤重量は約268.5μg(micron)/cm(682μg/インチ)となる。
【0028】
計量ポンプを設定する速度は、いくつかの因子に依存する。この因子には例えば、望ましいコーティング重量、コーティングの粘性、繊維状基材がノズル下を移動する速度、サイクル当たりのポンプ量、コーティングの温度、コーティングが通過するノズルのサイズ、計量ポンプにかかる背圧の量、計量ポンプがコーティングに付与する剪断力の量が挙げられる。
【0029】
コーティング重量は、繊維状基材に適用されたコーティング量の重力測定値である。コーティング重量は、湿潤コーティング(コーティング後、最終処理の前)、又は乾燥コーティング(最終製品−乾燥しているか否かを問わず)の測定値であり得る。繊維状基材上のコーティング重量を測定する方法の1つは、燃焼法である。コーティングされた繊維状基材を、300℃の炉に15分間入れる。繊維状基材のタイプによっては、繊維状基材の燃焼を防ぐためにこの炉の温度を調節する必要があることがあり、あるいは代替の添加物重量法を使用することができる。15分間経過時に、繊維状基材を炉から取り出し、計量する(最終重量)。コーティング重量は、総重量から繊維状基材の最終重量を差し引き、その繊維状基材の重量と長さに対する適切な換算因子を掛ける(正しい測定単位で最終結果を得るため、すなわちg/mからμg/インチなど)ことによって計算される。例えば、総重量が6メートル当たり1.0958gであり、最終重量が6メートル当たり0.7866gの場合を考える。コーティング重量は、(開始時重量−燃焼後の重量)×換算因子という式で計算される。この例では、計算は(1.0958−7.866)×4233=515.29マイクログラム/cm(1308.84マイクログラム/インチ)となる。換算因子4233は、6メートル当たりのグラム数を、インチ当たりのマイクログラムへと変換するものであり、これは、換算因子=1000000/(6×39.37)の式で計算される。
【0030】
コーティング重量を測定する別の方法では、添加物重量試験を用いる。添加物重量試験には、繊維状基材をコーティングする前に繊維状基材のデニールを測定する工程と、次に、製造後に、コーティングされた繊維状基材の合計重量を測定する工程と、が含まれる。この差がコーティングの重量である。添加物重量法は、例えば、ナイロン繊維又はPTFE繊維に使用することができるが、本明細書に記載されているPTFE繊維の数値は、燃焼法に基づいたものである。コーティング重量は全般的に、ポンプ速度に対して直接的に正比例し、ポンプ速度が速いほど、コーティング重量も大きくなる。
【0031】
繊維状基材上のコーティング量に影響を与えるもう1つのパラメータが、ライン速度である。これは、繊維状基材がコーティング装置を通過する際の直線速度である。繊維状基材は、コーティング装置のセットアップ状況に応じて、コーティング装置のコーティング開口部の上、下、又は横を通過し得る。多くの適用例において、繊維状基材はコーティング開口部の下を通過する。ライン速度は一般に、テークオフローラーとテークアップローラーによって制御される。ライン速度は、ポンプ速度と組み合わせて使用し、繊維状基材に適用されるコーティングの量を決定する。
【0032】
計量ポンプ速度とコーティング重量との間の直接的な正比例関係とは異なり、全般的にコーティング重量とライン速度との間には反比例の関係がある。すなわち、ポンプ速度を一定に保ってライン速度を増加させると、繊維状基材上のコーティング重量は減少する。例えば、ライン速度が毎分300メートル(m/分)で計量ポンプ速度が26.04cc/分のとき、コーティング重量885.8μg(micron)/cm(2250μg/インチ)がもたらされる。ライン速度を400m/分に増加させ、計量ポンプ速度を一定の26.04cc/分に保つと、コーティング重量665.4μg(micron)/cm(1690μg/インチ)がもたらされる。逆に、ライン速度を200m/分に減少させ、計量ポンプ速度を一定の26.04cc/分に保つと、コーティング重量1328.3μg(micron)/cm(3374μg/インチ)がもたらされる。
【0033】
加えて、コーティングの粘性が、計量ポンプの動作に影響を及ぼす。コーティングの粘性が増加すると、ポンプ速度一定で押し出されるコーティング液の量が減少するため、望ましいコーティング重量を得るためには計量ポンプ速度を対応して増加させることになる。
【0034】
上述からわかるように、最終製品の製造に影響を及ぼす数多くの因子が存在する。これらの因子は、最終製品の望ましい特性に基づいて、適切なパラメータを選択するよう、フロス製品の現行の製造中に全て考慮されている。
【0035】
図6に示すように、コーティング液は供給ホッパー35から計量ポンプ30を通ってノズル25に送り出され、このノズルが繊維状基材2の上に、計量された量のコーティングを分与する。特定の実施形態において、ノズル25のサイズは、コーティングが繊維状基材2の表面上で流出しないように選択される。ノズル25は、繊維状基材をコーティングするのに許容される任意の種類のものであってよく、例えばスロットノズルであり得る。使用され得るノズルの他の例としては、オフセットノズル、スプレータイプノズル、ジェットノズル、及び押出しノズルが挙げられる。
【0036】
図7及び8に示すように、ノズル25から繊維状基材2に適用されるコーティングの形状は、ノズル25のタイプと、そのノズル25の下を通過する際の繊維状基材の逃げ角22によって異なる。例えば、スロットノズルを使用した場合、逃げ角が0°(すなわち、繊維状基材がノズル下を水平に通過する)の場合、又は0°より大きい(例えば図7を参照)場合には、コーティングは繊維状基材の幅を覆う。一実施形態において、上向きの逃げ角は約0°〜約10°である。しかしながら、逃げ角が0°未満(例えば図8を参照)の場合、スロットノズルはストライプの形状で繊維状基材をコーティングすることになり、スロットノズルの下を通過する繊維状基材表面の一部だけを覆うことになる。特定の実施形態において、下向きの逃げ角は約1°〜約10°である。しかしながらこれとは対照的に、一部のノズルは、逃げ角にかかわらず同じコーティング形状を供給する。例えば、オフセットノズルは、逃げ角にかかわらず、繊維状基材をストライプ形状でコーティングする。
【0037】
図5に戻って参照し、コーティング液が一旦繊維状基材2上に適用された後、コーティングされた繊維状基材2は乾燥装置40に送り込まれ、必要に応じてコーティング液が乾燥される。乾燥装置40は、コーティング液から過剰の溶媒を除去するのに使用することができる。コーティング液に使用される溶媒には、例えば水、アルコールなどが挙げられ得る。使用可能な乾燥システムのいくつかの例としては、熱対流、マイクロ波、高周波、間接加熱、超臨界、自然空気乾燥、又はこれらの組み合わせが挙げられる。乾燥装置の設定は、デンタルフロスの望ましい特性(例えば、デンタルフロス中の望ましい溶媒パーセンテージ)に基づいて変えられる。特定の実施形態において、乾燥装置は、約35℃〜約70℃の温度で、繊維状基材に対して毎分約283.2〜約1132.7リットル(毎分約10〜約40立方フィート(CFM))の空気流量で、約1〜4秒間を設定とした対流炉であり得る。特定の他の実施形態において、この熱対流炉は約45℃〜約65℃に設定するか、又は約50℃〜約60℃に設定することができ、空気流量を毎分約566.3リットル(20CFM)〜毎分約991.1リットル(35CFM)、又は毎分約707.9リットル(25CFM)〜毎分約849.5リットル(30CFM)とし、1〜4秒間に設定することができる。あるいは、コーティングが乾燥の必要がない場合、冷却するか(加熱されたろうの場合)、あるいは何らかの他の方法で固化させることができる。あるいは、一旦乾燥させたコーティングを、コーティングの結晶化点を超える高温にしてから、コーティングを結晶化点より下の温度まで冷やすことができる。本発明の特定の実施形態において、コーティング液を有している繊維状基材は、第1加熱ゾーン及び第2加熱ゾーンを有している炉を備えた乾燥装置内で加熱されており、第1加熱ゾーンは、第2加熱ゾーンよりも高い平均温度を有している。2つの加熱ゾーンを有している炉の特定の実施形態において、コーティング液を有している繊維状基材は、長さ4.5mの第1加熱ゾーンと長さ4.5mの第2加熱ゾーンとを併せて長さ9mの炉の中で加熱される。ここにおいて、約200m/分の速度で移動する繊維状基材は、炉の中の、約140℃〜約155℃の温度を有している第1加熱ゾーンで加熱され、次に約10℃〜約20℃の温度を有している第2加熱ゾーンで冷却され、空気流量は毎分約566.3〜約991.1リットル(約20〜約35CFM)である。
【0038】
更に図5を参照して、乾燥、冷却等の後、コーティングされた繊維状基材2はテークアップローラー50まで移送される。ここで、コーティングされた繊維状基材は、更なる加工のため、大きなクリールに再び巻き取られる。これは例えば、プレシジョンクロスワインディング、パラレルワインディング等で行うことができる。
【0039】
コーティングは、口腔内で使用するのに好適な1つ以上の組成物例えば天然ろう、人工ろう(繊維状基材にグリップ力を付与する)、天然及び人工の香味料(フロスに好ましい味を付与する)、乳化剤(ろう相に対する香味料の相溶性を維持する)、人工甘味料(フロスに甘味を付与する)、その他の賦形剤(口腔ケアコーティング組成物中に存在して、例えば粘性の増減、色若しくは不透明度の付加、冷却若しくは乾燥プロセスの補助といった特定の特性をコーティングに付与する)を含み得る。
【0040】
コーティングは、更に1つ以上の活性物質を含み得、例えば抗齲蝕剤、抗菌剤、抗炎症剤、耐腐食剤、抗着色剤、抗過敏症剤、抗歯石剤、ホワイトニング剤、水和剤、口臭低減剤、漂白剤、及びこれらの組み合わせを含み得る。抗齲蝕剤の一例として、フッ化物イオン源が挙げられる。好適なフッ化物イオン生成物質の例は、米国特許第3,535,421号(Briner et al.)及び同第3,678,154号(Widder et al.)に記載されている。代表的なフッ化物イオン源としては、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化インジウム、及びその他多くが挙げられる。
【0041】
抗菌剤の一例は、四級アンモニウム化合物である。臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルピリジニウム、臭化ドミフェン、N−テトラデシル−4−塩化エチルピリジニウム、ドデシルジメチル(2−フェノキシエチル)臭化アンモニウム、ベンジルジメチルスチレン臭化アンモニウム、塩化セチルピリジニウム、四級化5−アミノ−1,3−ビス(2−エチル−ヘキシル)−5−メチルヘキサジヒドロピリミジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化メチルベンゼトニウムが、典型的な第四級アンモニウム抗菌剤の例示的なものである。また、本発明は、他の抗菌剤を含んでもよく、例えば、ハロゲン化ジフェニルエーテル、フェノール化合物(フェノール及びその同族体を含む)、モノアルキル及びポリアルキル並びに芳香族ハロフェノール、レゾルシノール及びその誘導体、キシリトール、ビスフェノール化合物及びハロゲン化サルチルアニリド、安息香酸エステル、及びハロゲン化カルバニリド等の非カチオン性抗菌剤が挙げられ得る。
【0042】
別の活性剤に、抗歯石剤が挙げられる。抗歯石剤の一例が、ポリホスフェートである。ポリホスフェートは、2つ以上のリン酸単位を有している。ポリホスフェートの一例は、ピロリン酸イオンの供給源としてのピロリン酸塩である。本組成物に有用なピロリン酸塩としては、例えば、ピロリン酸一、二、及び四アルカリ金属塩並びにこれらの組み合わせが挙げられる。無水和物並びに水和物の形態の、二水素ピロリン酸二ナトリウム(Na)、酸性ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム(Na)、及びピロリン酸四カリウム(K)が更なる化学種である。本発明の組成物において、ピロリン酸塩は、大半が溶解したピロリン酸塩、大半が溶けていないピロリン酸塩、又は溶解状態と未溶解状態のピロリン酸塩の組み合わせという3つの状態のうち1つの状態で存在し得る。
【0043】
活性物質の更なる例は、漂白剤である。漂白剤は、一般に、歯を白くする作用剤である。漂白剤の例としては、過酸化物、過ホウ酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸、過硫酸塩及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な過酸化物化合物としては、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過酸化ナトリウム、過酸化亜鉛、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
別の活性物質は、口臭低減剤である。これらの作用剤は、一般に、口の悪臭を低減するように作用する。口臭低減剤の例としては、銅塩及びカルボニル化合物(例えばアスコルビン酸[3−オキソ−L−グロフラノラクトン]、cis−ジャスモン[3−メチル−2−(2−ペンテニル−2−シクロペンテノン]、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノン、バニリン[4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド]、エチルバニリン、アニスアルデヒド[4−メトキシベンズアルデヒド]、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド[3−フェニル−2−プロペナル]、ヘキシルシンナムアルデヒド、α−メチルシンナムアルデヒド、ortho−メトキシシンナムアルデヒド、又はこれらの組み合わせが挙げられる。理論に制限されるものではないが、口臭低減剤は、チオール又は硫化物と反応して、臭いの影響が少ない生成物を形成することにより、「トラップ」として働くと考えられる。
【0045】
追加の活性剤には、口腔を介して全身に送達され得るものが挙げられる。
【実施例】
【0046】
デンタルフロスが試験され、異なるデンタルフロスサンプルに対して、一貫した量のコーティングが適用されたかどうかを判定した。
【0047】
実施例1−スロットダイコーティング法
矩形断面で目標幅1.95mmを有しているPTFE繊維を、スロットダイコーティング装置の下に配置しており、ライン速度300m/分でスロットダイノズルからの下向き逃げ角を3.5°とした。0.6cc/rpmのギヤポンプを、スロットダイシステムの計量ポンプとして使用した。水、アラビアゴム、蜜ろう、人工甘味料、活性剤、及び香味料を含んでいるコーティング液を、スロットダイコーティングの供給ホッパー内に入れた。計量ポンプ速度目標は13.65g/分を使用した。熱対流炉を65.6℃(150°F)、PTFE繊維に対して毎分1132.7リットル(毎分40立方フィート(CFM))の空気流量で2.5秒間に設定し、これにより約5%の残留水を有しているコーティングが得られた。コーティング重量目標は湿潤重量2312μg/分、乾燥重量1850μg/分(乾燥製品を残留水分約5%まで乾燥させた)であった。
【0048】
少なくとも10,000メートル及び少なくとも30日間以上にわたって複数回の稼働で生成された30個のサンプルで、下記のコーティング重量が観察された:
【表1】

Cpkは、次の式:Cpk=min[(USL−μ)/3σ),(μ−LSL)/3σ)](式中、USLは仕様上限、LSLは仕様下限、μは平均値、σは標準偏差である)で算出される。Cpkの目標値は>1.33である。
【0049】
表1の結果は、本発明の方法が、デンタルフロスに一貫した量のコーティングを適用していることを示している。30個のPTFE繊維サンプル(それぞれが別個の製造稼働で、ただし上述の同じ製造方法を用いて製造された)のコーティング重量測定は、サンプル間に偏差がほとんどないことを示した。サンプルは、標準偏差が8.051μg(micron)/cm(20.45μg/インチ)であり、これは平均値の約1%である。これは、製造されたデンタルフロスの99.8%が平均値の+/−5%内にあることを意味する。この結果はまた、728.3μg(micron)/cm(1850μg/インチ)の目標コーティング重量が達成され、全サンプル30個の平均は728.0μg(micron)/cm(1849.03μg/インチ)であったことを示している。この結果は、本発明の方法が、デンタルフロスに対し、望ましい量のコーティングを一貫した様相で適用することを示している。
【0050】
実施例2−ロールコーティング法
矩形断面で目標幅1.95mmを有しているPTFE繊維を、ロールコーティングプロセスにも使用した。ロールコーティングプロセスでは、直径30.5cm(12インチ)のロールコーターを使用し、毎分91.4メートル(毎分300フィート)で動くPTFE繊維の上を29rpmで回転させた。ナイフは、2.54cm(1インチ)の千分の一単位で0.17(.17 thousandths)の位置に設定し、ロール上のコーティング量を調節した。PTFE繊維は、ロールの下側で、角度90°でロールに接触した。PTFE繊維は次にRF炉を通過され、コーティングを乾燥させ、残留水分5%とした。実施例1のサンプルに使用したものと同じコーティング液を使用してロールをコーティングしており、これには水、アラビアゴム、蜜ろう、人工甘味料、活性剤、及び香味料を含んでいた。コーティング重量目標値は、湿潤時202.4μm(micron)/cm(514μg/インチ)、乾燥時163.4μm(micron)/cm(415μg/インチ)であった(ここにおいて乾燥製品は残留水分約5%まで乾燥させた)。
【0051】
少なくとも10,000メートル及び少なくとも30日間以上にわたって複数回の稼働で生成された30個のサンプルで、下記のコーティング重量が観察された:
【表2】

【0052】
表2の結果は、本発明(表1の結果)とは対照的に、PTFE繊維にコーティングを適用するロールコーティング法は、サンプル間でコーティング量に大きな変動を生じたことを示している。サンプルの標準偏差は25.7μm(micron)/cm(65.35μg/インチ)であり、これは、平均の45%である(これに比べ、表1に示す本発明の場合は1%であった)。これはすなわち、個々のサンプル間でコーティング量に有意な偏差があることを意味している。この結果は、本発明が、ロールコーティングなどの従来技術の方法よりも、デンタルフロスに対してより一貫したコーティング量をもたらすことを示している。
【0053】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳しく制限されるものとして理解されるべきでない。それよりむしろ、特に指定されない限り、そのような各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」として開示した寸法は、「約40mm」を意味することを意図したものである。
【0054】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は出願書類を含め、本明細書において引用される全ての文献は、明示的に除外ないしは制限されない限り、その全体を参考として本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。
【0055】
本発明の特定の諸実施形態を図示し、記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には自明である。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を添付の「特許請求の範囲」で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた繊維状基材を備えたデンタルフロスであって、
前記繊維状基材の第1部分のコーティング乾燥重量と、前記繊維状基材の第2部分のコーティング乾燥重量との間の差が30%以下である、デンタルフロス。
【請求項2】
前記コーティングは、前記繊維状基材の表面の一部のみに存在し、
好ましくは、前記コーティングはストライプの形状であり、
より好ましくは、前記ストライプは、前記繊維状基材の前記第1及び第2部分の長さにわたって連続している、請求項1に記載のデンタルフロス。
【請求項3】
前記繊維状基材の前記第1及び第2部分は同じ長さを有している、請求項1又は2に記載のデンタルフロス。
【請求項4】
前記繊維状基材は、前記繊維状基材の幅方向にわたって広がる2つの主表面と、高さ方向にわたって広がる2つの副表面と、を有する矩形の断面形状を有しており、
好ましくは、前記デンタルフロスの幅は約0.7mmから約3.5mmであり、
より好ましくは、前記繊維状基材は複数の表面上にコーティングされており、
選択的には、各主表面はストライプ形状のコーティングを有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載のデンタルフロス。
【請求項5】
前記コーティングは活性物質を含んでいる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のデンタルフロス。
【請求項6】
a.第1部分及び第2部分を有している繊維状基材を提供する工程と、
b.前記繊維状基材の表面に活性物質を含んでいるコーティングを適用する工程と、を備え、これにより前記第1部分のコーティング乾燥重量と、前記第2部分のコーティング乾燥重量との間の差が30%以下となる、デンタルフロスの製造方法。
【請求項7】
前記コーティングは、前記繊維状基材の幅方向にわたって広がる2つの主表面と、高さ方向にわたって広がる2つの副表面と、を有する矩形の断面形状を有している繊維状基材に適用され、
好ましくは、前記コーティングはストライプの形状であり、前記繊維状基材の1つの主表面の中央近くに配置され、
より好ましくは、前記ストライプは実質的に均一な幅を有している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び第2部分は同じ長さを有している、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングは計量された量で適用され、
好ましくは、コーティングの前記計量された量はポンプによって計量され、
より好ましくは、前記コーティングを適用するのにノズルが使用される、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ノズルはスロットノズルであり、
好ましくは、前記繊維状基材は前記ノズルの下を下向き角度で通過され、
前記コーティングは、ストライプの形状で前記繊維状基材に適用される、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−518694(P2013−518694A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552923(P2012−552923)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2011/024046
【国際公開番号】WO2011/097623
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)