説明

変動荷重検出用シート及びこれを用いた変動荷重検出回路

【課題】 人が物を繰り返し押すことにより人が受けるような測定しにくい変動荷重等を容易に測定できる変動荷重検出用シート及びこれを用いた変動荷重検出回路を提供する。
【解決手段】 本発明に係る変動荷重検出用シートは、圧電フィルムと、該圧電フィルムの両面に設けられた一対の電極と、該電極上に設けられた歪増幅部材とからなり、
前記歪増幅部材は前記圧電フィルムのヤング率よりも小さいヤング率を有する弾性体である。また、上記変動荷重検出用シート用いて変動荷重を検出する変動荷重検出回路は、前記圧電フィルムの両面の電極に直列に結線された付加抵抗を通して電圧検知装置と結線され、前記圧電フィルムの静電容量C(F)、前記付加抵抗の抵抗値R1(Ω)、前記電圧検知装置の内部抵抗R2(Ω)が、RC>0.3、R=(R1+R2)なる関係を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電フィルムを利用した変動荷重検出用シート及びこれを用いた変動荷重検出回路に係り、特に圧電フィルムに作用する変動荷重を効果的に伝達することにより変動荷重を高感度で検出することができる変動荷重検出用シート及びこれを用いた変動荷重検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人が指先で物を繰り返し押す動作や足のかかとで蹴る動作等に伴い人が受ける負荷の測定や、乗用車の座席に腰掛けた人が運転中に背や尻に受ける変動荷重や衝撃荷重の測定は、被測定物及びその物を支持する部材が柔軟で種々に変形し、又負荷の作用点が移動する等のため困難であった。
【0003】
このような変動荷重や衝撃荷重を測定するには、例えば、特許文献1又は2に提案されているような圧力測定装置が利用されている。すなわち、圧電素子のピエゾ効果を利用した感圧センサー、感圧ゴムや感圧インクの圧力変化に伴う抵抗変化を利用した感圧センサー、2枚の導電板間の静電容量が圧力変化に伴い変化することを利用した感圧センサー等をアレイ状あるいはマトリクス状に多数配置した変動荷重検出シートを用い、その多数の感圧センサーを一定の時間間隔でスキャンして圧力分布を求めることにより変動荷重を測定する方法が行われている。
【0004】
【特許文献1】特開2002-48658号公報
【特許文献2】特開2004-28883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような測定方法に用いられる測定装置は、センサー回路が複雑になるとともに、スキャン信号の発令と処理に特別な装置を必要としていた。また、スキャンや信号処理に時間を要するため、衝撃荷重や高速な振動荷重を測定することが困難であるという問題があった。さらに、変動荷重を正確に検出するためには変動荷重検出部の構造が複雑になることや、変動荷重検出部を支持するために特別の支持構造を要する等のため、一般に複雑で大がかりな測定装置が必要であるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、人が物に接触し又当たった際に人が受ける負荷や乗用車の座席に腰掛けた人の背や尻にかかる運転中の変動荷重や衝撃荷重のような測定しにくい荷重を、簡単な構造で、高精度かつ容易に測定をすることができる変動荷重検出用シート及びこれを用いた変動荷重検出回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る変動荷重検出用シートは、圧電フィルムと、該圧電フィルムの両面に設けられた一対の電極と、該電極上に設けられた歪増幅部材とからなり、前記歪増幅部材は前記圧電フィルムのヤング率よりも小さいヤング率を有する弾性体からなるものとされる。
【0008】
上記変動荷重検出用シートにおいて弾性体は、ヤング率が1〜10MPaであるものが好ましく、そのようなものとしてはシリコンゴム、天然ゴム又は合成ゴムが好ましい。
【0009】
また、上記変動荷重検出用シートは、歪増幅部材の上に重ねてヤング率が0.2〜0.8MPaの弾性体からなる緩衝部材が設けられたものが好ましく、そのような緩衝部材としてはスポンジゴム、またはセルスポンジが好ましい。また、緩衝部材は、変動荷重が負荷される側の歪増幅部材と接する面に凹凸部が設けられているのが好ましい。
【0010】
緩衝部材は、また、潤滑部材を塗布又はしみ込ませた紙、布帛又はフェルトからなるものとすることができる。また、歪増幅部材に接触する面に潤滑部材を有するフィルムからなるものとすることができ、歪増幅部材に接触する面に設ける潤滑部材は、低粘度の潤滑剤塗膜であるのが好ましい。
【0011】
また、潤滑部材を塗布又はしみ込ませた紙、布帛又はフェルトからなるもの及びその上にヤング率が0.2〜0.8MPaの弾性体からなるものを重ねたもの、あるいは、歪増幅部材に接触する面に潤滑部材を有するフィルムからなるもの及びその上にヤング率が0.2〜0.8MPaの弾性体からなるものを重ねたものとすることができる。
【0012】
さらに、上記変動荷重検出用シートは、可撓性のカバー部材を介して変動荷重等が作用するように可撓性のカバー部材で覆われてなるのが好ましい。
【0013】
また、本変動荷重検出用シートは、上記の変動荷重検出用シートであって、静電容量がC(F)なる圧電フィルムと電気抵抗がR(Ω)なる電極に直列に結線された付加抵抗とを有し、前記静電容量Cと電気抵抗Rの積RCが、RC>0.3なるものとすることができる。
【0014】
上記の変動荷重検出用シートを用いて変動荷重等を測定するには、上記の変動荷重検出用シートを用いて構成され、該変動荷重検出用シート上に作用する変動荷重の垂直方向の大きさに応じて圧電フィルムに帯電された電荷量により発生する、変動荷重に比例した出力電圧を検出する変動荷重検出回路であって、前記圧電フィルムの両面の電極が付加抵抗を介して電圧検知装置と結線され、前記圧電フィルムの静電容量C(F)、前記付加抵抗の抵抗値R1(Ω)、前記電圧検知装置の内部抵抗R2(Ω)が下記の関係を満たすように構成されてなる変動荷重検出回路を使用する。RC>0.3、R=R1+R2
【0015】
また、変動荷重検出用シートの電気回路を以下のように構成することができる。すなわち、変動荷重検出用シートは、静電容量が静電容量C(F)なる圧電フィルムと静電容量がC5(F)なる電極に並列に結線された付加静電容量と、電気抵抗がR(Ω)なる電極に直列に結線された付加抵抗とを有し、前記静電容量の和(C+C5)と電気抵抗Rの積R×(C+C5)が、R×(C+C5)>0.3なるものとすることができる。
【0016】
さらに、変動荷重検出用シートを用いて変動荷重等を測定する変動荷重検出回路を以下のようにすることができる。すなわち、変動荷重検出回路は、変動荷重検出用シートを用いて構成され、該変動荷重検出用シート上に作用する変動荷重の垂直方向の大きさに応じて圧電フィルムに帯電された電荷量により発生する、変動荷重に比例した出力電圧を検出する変動荷重検出回路であって、前記圧電フィルムの電極に並列に結線された付加静電容量、及び前記圧電フィルムの電極に直列に結線された付加抵抗を通して電圧検知装置と結線され、前記圧電フィルムの静電容量C(F)と付加静電容量C5(F)、前記付加抵抗R1(Ω)、前記電圧検知装置の内部抵抗R2(Ω)が下記の関係を満たすように構成されてなるものとすることができる。R×(C+C5)>0.3、R=R1+R2
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る変動荷重検出用シートは、簡単な構造で、人が物に接触し又は当たった際に人が受ける負荷や乗用車の座席に腰掛けた人の背や尻にかかる運転中の変動荷重や衝撃荷重のような測定しにくい荷重でも高感度で測定することができる。また、本変動荷重検出用シートを用いた変動荷重測定検出回路によれば、スキャン信号の発令と処理に特別な測定装置を必要とせず簡単な電圧測定装置によって変動荷重や衝撃荷重を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明に係る変動荷重検出用シートの実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本変動荷重検出用シートの断面を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本変動荷重検出用シート100は、圧電フィルム10と、圧電フィルム10の両面に設けられた一対の電極11(11A、11B)と、電極11A、11B上に設けられた歪増幅部材15(15A、15B)とからなる。
【0019】
圧電フィルム10は公知のものを使用することができる。例えば、フィルムの厚みが40〜100μm、ヤング率が2000〜4000MPa、ポアソン比が0.3〜0.35のPVDF(ポリフッ化ビニリデン、Polyvinylidene fluoride)を使用することができる。
【0020】
圧電フィルム10の両面に設ける一対の電極11は、圧電フィルム10の両面にアルミニウムを蒸着し、導電性塗料を塗布し又は銅のスパッタリングにより構成することができる。銅箔を圧電フィルム10に接着して構成してもよい。この電極11A、11Bは、圧電フィルム10の変形を阻害することなくその変形に追従でき、導電性に優れたものであればよい。また、電極11A、11Bはその周縁部で短絡せず、かつ圧電フィルム10面のほぼ全面にわたっているのがよい。これにより、圧電フィルム10の面積に応じた出力電圧を得ることができる。
【0021】
歪増幅部材15は、圧電フィルム10のヤング率よりも小さいヤング率を有する弾性体を用いる。この歪増幅部材15は、以下に説明するように変動荷重検出用シート100に変動荷重等が作用するとき、圧電フィルム10に生ずる歪みを増大させてその歪みに伴う分極により発生する電荷量を増大させ、変動荷重検出用シート100の測定感度を増大させる機能を有する。このため、歪増幅部材15としては圧電フィルム10のヤング率の1/100程度のヤング率が1〜10Mpaである弾性体を用いるのがよい。そのような弾性体としては、シリコンゴム、天然ゴム又は合成ゴムがよく、特にPVDFからなる圧電フィルムを用いる場合は、弾性体としてシリコンゴムを用いるのがよい。
【0022】
歪増幅部材15は上記のように圧電フィルム10の歪みを増大させるものであるから、歪増幅部材15と圧電フィルム10の接合部分は一体に変形するように接合されていなければならない。この接合手段は特に問わないが、歪増幅部材15と圧電フィルム10の接合は接着によるものでよい。接着剤としては、硬化後の硬度が歪増幅部材15と略同じシリコン樹脂系またはゴム系接着剤がよく、特に圧電フィルム10にPVDFを用いる場合はシリコン樹脂系接着剤がよい。なお、歪増幅部材15として用いるシリコンゴム等は、液体状のシリコンゴム等を圧電フィルム10に一定厚さに塗り、又は圧電フィルムの上面に型枠を取付けて液体状のシリコンゴム等を流し込んで硬化させることにより圧電フィルム10と一体に構成することもできる。
【0023】
歪増幅部材15は、上述のように変動荷重等が圧電フィルム10に効果的に伝達するように機能するものであるから、座屈しない程度の厚さでなければならない。このため、歪増幅部材15の厚さは、0.5mmから2.5mmの範囲にするのが好ましい。
【0024】
なお、変動荷重検出用シート100には、圧電フィルム10に帯電した電荷を取り出すための配線18(18A、18B)が設けられる。配線18A、18Bは、例えば導電性粘着剤付き金属箔テープに配線を半田付けし、金属箔テープの粘着剤面を電極11A、11Bに粘着し、あるいはカシメにより結線して構成される。それらの端部は配線用コネクタ(図示しない)に接続される。
【0025】
上記に説明した変動荷重検出用シート100を用いて、以下に説明するように変動荷重検出用シートに作用する変動荷重や衝撃荷重を測定することができる。図2は変動荷重検出用シート100に圧縮変動荷重Fが作用するときの変動荷重検出用シート100の変形状態を模式的に表した断面図である。図3は、変動荷重検出用シート100を用いて圧縮変動荷重Fを測定する変動荷重検出回路の説明図である。
【0026】
変動荷重検出用シート100が、図2(a)に示すように剛体に支持された状態で周期的に変化する圧縮変動荷重Fを受けるときの変形状態は図2(b)に示すように、歪増幅部材15A、15Bが圧縮変動荷重Fにより厚さ方向に縮むとともにポアソン効果によって平面方向に引き延ばされる。この歪増幅部材15A、15Bは、圧電フィルム10に比べてヤング率が十分小さい弾性体であるから、歪増幅部材15A、15Bの平面方向の延びは圧電フィルム10自身のポアソン効果による平面方向の延びに比べて格段に大きい。この歪増幅部材15A、15Bの平面方向の延びにより圧電フィルム10は平面方向に延び、そのときの引張り歪εは、ε=(Ll-LO)/LOとなる。ここで、LOは圧電フィルム10の変形前の長さで、Llは変形後の長さである。
【0027】
引張り歪εによって圧電フィルム10は分極し、圧電フィルム10の電極11A、11Bには引張り歪εに比例する電荷量Qを生じる。引張り歪εは圧縮変動荷重Fの大きさに比例するので、電荷量Qも圧縮変動荷重の大きさに比例する。すなわち、圧電フィルム10にヤング率が2000〜4000MPa、ポアソン比が0.3〜0.35のPVDFを用い、歪増幅部材15A、15Bにヤング率が1〜10MPaの弾性体を用いると、弾性体のポアソン比は一般に0.3前後の値であるから圧電フィルム10の平面方向の引張り歪εは約100倍に拡大され、引張り歪εに比例する電荷量Qも歪増幅部材15A、15Bがない場合に生ずる電荷量に比較して約100倍になる。これにより変動荷重検出用シート100の測定感度が向上し、小さな荷重変化でも容易に測定することができる。
【0028】
なお、圧電フィルム10が変動荷重等を受けた場合に、圧電フィルム10はその厚さ方向にも縮みその歪に伴い分極が生ずるが、この厚さ方向の歪みは圧電フィルム10のヤング率が大きいから上記引張り歪εに比較して非常に小さく、この分極による電荷量の変化量は無視することができる。
【0029】
また、変動荷重検出用シート100が、例えば乗用車の座席の上等柔軟なものに支持されているような場合は、変動荷重検出用シート100は図2(c)に示すように撓み、圧電フィルムには曲げ歪みを生ずる。しかし、このような撓みによる曲げ歪みも上記圧電フィルム10が変動荷重検出シート100の中立軸位置に配置されているので、引張り歪εに比較して非常に小さくその影響は無視することができる。例えば、変動荷重検出シート100の上下面をひっくり返して同じ変動荷重を負荷すると、圧電フィルム10の曲げ歪みの向きが逆転することになるが、出力信号の大きさはほとんど変わらない。
【0030】
上記圧縮変動荷重により圧電フィルム10に帯電した電荷量Qは、図3(a)に示す変動荷重検出回路により電圧の大きさとして検出され、以下に説明するように検出された出力電圧Voutは圧縮変動荷重の大きさに比例するから、出力電圧Voutを測定することにより圧縮変動荷重の大きさを測定することができる。
【0031】
変動荷重検出回路は、図3(a)に示すように変動荷重検出用シート100、電圧検知装置40及び付加抵抗45から構成される。この変動荷重検出回路により検出される出力電圧Voutと、変動荷重と出力電圧の位相差φはそれぞれ下記の(1)式、(2)式で表される。電流Iは圧電フィルム10に帯電した電荷量Qの時間変化量であり、I=dQ/dtである。Clは、図3(b)に示すように、圧電フィルム10の圧縮変動荷重が負荷される部分(面積Sl)の静電容量であり、C2は圧電フィルム10の圧縮変動荷重が負荷されない部分(面積S2)の静電容量である。また、R1は付加抵抗45、R2は電圧検知装置40の内部抵抗である。Pは圧縮変動荷重の大きさ、ωは圧縮変動荷重の角速度、kは比例定数で、RはR1とR2の合成抵抗(R=R1+R2)である。
【0032】
【数1】

【0033】
【数2】

【0034】
上記(1)式によると、出力電圧Voutの大きさは、静電容量(Cl+C2)、すなわち圧電フィルム10の静電容量C(C=Cl+C2)に左右されるが、ClあるいはC2のみに左右されることはない。従って、出力電圧Voutの大きさは、圧縮変動荷重の負荷面積の大きさや負荷の作用点の位置に左右されず、どのような大きさの被測定物であってもその荷重作用面が圧電フィルムの面内にある限り、被測定物に負荷される変動荷重を測定することができる。
【0035】
また、(1)式によれば、圧電フィルム10の静電容量C、合成抵抗Rを十分大きくとれば角速度ωに関係なく、(1)式は│Vout│=kP/C=k0P(k0=k/C)となり、出力電圧の大きさ│Vout│は圧縮変動荷重Pに比例するようになることが分かる。すなわち、変動荷重は、│Vout│により測定することができる。また、同様にRCωが十分大きい場合は、(2)式の位相差φが0に近づき、圧縮変動荷重と│Vout│の位相差がなくなることが分かる。従ってそのような場合においては、│Vout│の出力変動は圧縮変動荷重の大きさの変化状態をそのまま表していることになる。
【0036】
図4は、上記R、C及びωが│Vout│に与える効果を調べたグラフである。図4(a)は、(1)式において、圧電フィルム10の静電容量Cを3.1×10-7F(面積680cm2の圧電フィルムに相当する)、合成抵抗Rを1MΩ又は10MΩとした場合の圧縮変動荷重の周波数fと出力電圧│Vout│の関係を、横軸を周波数f、縦軸を│Vout│/kP(kは定数)として表したグラフである。図4(b)は、図4(a)の場合の圧電フィルム10の静電容量Cを1/10(面積68cm2の圧電フィルムに相当するC=3.1×10-8F)に小さくした場合のグラフである。なお、周波数fは、圧縮変動荷重の角速度をω、周期をTとすると、f(Hz)=ω(rad/s)/2π=1/T(s)で表される。
【0037】
図4(a)によると、合成抵抗Rが1MΩの場合は3Hz以上で、10MΩの場合は0.3Hz以上で│Vout│/kPが一定となる。すなわち、出力電圧の大きさ│Vout│が圧縮変動荷重の大きさPに比例するようになることが分かる。図4(b)によると、合成抵抗Rが1MΩの場合は30Hz以上で、10MΩの場合は3Hz以上で、出力電圧の大きさ│Vout│が圧縮変動荷重の大きさPに比例するようになることが分かる。
【0038】
このような関係は、周期的に変化する圧縮変動荷重のみならず、衝撃的な荷重についても成立する。すなわち、図5に示すように変動荷重による出力電圧Voutと時間tの曲線において、周期的に変化する変動荷重の周波数f1は、f1=1/T1(T1は周期である)であるから、衝撃荷重の周波数f2を、f2=1/(4T2)(T2は、衝撃荷重の負荷開始から最大荷重に到達するまでの時間)と表すことにより、衝撃荷重に対しても(1)式及び(2)式を適用することができる。このことは、ロードセルの上に載せた変動荷重検出用シートに各種の変動荷重や衝撃荷重を負荷し、変動荷重検出用シート及びロードセルの出力結果を比較するとよく一致していることから確認される。
【0039】
表1は、人が各種の動作を行った場合の変動荷重検出用シートに負荷される変動荷重又は衝撃荷重の周波数を示す。衝撃荷重の周波数は上記関係式より求めた。表1によると、人の指先や手のひらで繰り返し押す動作等人が通常行う動作の周波数は、3〜10Hz程度であり、足のかかとで蹴る動作や手刀で叩く動作など衝撃的な動作の周波数は、50Hz以下、素早い動作でも100Hz程度である。従って、表1及び図4の結果によると、本変動荷重検出用シートを用い人の動作程度の周波数の変動荷重を測定するには、図3(a)に示す変動荷重検出回路の圧電フィルムの静電容量C(F)、合成抵抗R(Ω)についてRC>0.3(FΩ)とすればよいことが分かる。具体的には、電圧測定装置の内部抵抗は一般に1MΩ程度であるから、100cm2程度の圧電フィルム及び10MΩ程度の付加抵抗45を用いた変動荷重検出回路を構成すればよい。なお、付加抵抗45は変動荷重検出用シート100側に設けられるものであっても電圧検知装置40側に設けられるものであってもよい。
【0040】
【表1】

【0041】
以上本発明に係る変動荷重検出用シート及びこれを用いた変動荷重検出回路について説明したが、本変動荷重検出用シートを用いて種々の形状の被測定物についてこれに負荷される種々の変動荷重を測定するには、上述の歪増幅部材15A、15Bの上に重ねて緩衝部材を設けるのがよい。また、さらにその緩衝部材を覆うカバー部材を設けるのがよい。
【0042】
図6は、図1に示した変動荷重検出用シート100に上記に説明した緩衝部材及びカバー部材を設けた変動荷重検出用シート101の平面図及びそのAA断面図を示す。図6に示すように変動荷重検出用シート101は、変動荷重検出用シート100の上、すなわち歪増幅部材15A、15Bの上に重ねて緩衝部材20(20A、20B)が設けられ、さらに、緩衝部材20A、20Bを覆うカバー部材30が設けられている。
【0043】
緩衝部材20は、被測定物がどんな性状や複雑な形状を有するものであっても変動荷重を有効に歪増幅部材15に伝達できるものであればよい。しかし、歪増幅部材15の面内歪みを拘束するような緩衝部材20は好ましくない。すなわち、粘着性を有する被測定物が長時間作用する場合であっても、粘着性のない被測定物が衝撃的に作用する場合であっても、あるいは凸凹の大きな被測定物が作用する場合であっても被測定物の性状や形状が測定結果に影響を与えないようにする機能を有するものであればよい。このためには、歪増幅部材15A、15Bとこれに接触する材料間の摩擦係数は常に同じであるのがよい。また、被測定物の凹凸が歪増幅部材15A、15Bに与える効果を緩和するようなものであるのがよい。
【0044】
そのような機能を有する緩衝部材20としては、歪増幅部材15よりも低弾性率の弾性体、特にヤング率が0.2〜0.8MPaの弾性体、例えば、スポンジゴム、セルスポンジなど各種ゴムの発泡系素材を使用することができる。この場合、緩衝部材20の厚さは3〜30mmとするのが好ましく、凹凸の大きな形状の被測定物ほど厚い緩衝部材20を用いるのがよい。
【0045】
また、緩衝部材20は、変動荷重を効果的に歪増幅部材15に伝達し、かつ歪増幅部材15の面内歪みに影響を与えないよう、歪増幅部材15の上に載置されているのがよい。このため、図7に示すように、変動荷重が負荷される側の緩衝部材20の歪増幅部材15と接する面に凹凸部21を設けるのが好ましい。この凹凸部21は緩衝部材20を加工することによって設けてもよく、凹凸のある物体、例えば市販品の滑り止め網目シート(カーボーイ社製)を緩衝部材20と歪増幅部材15との間に挟み込むようにして設けてもよい。
【0046】
さらに、緩衝部材20として、潤滑部材を塗布又はしみ込ませた紙、布帛、フェルトを使用することができる。この場合は、紙、布帛、フェルトにより上記機能を発揮させることができるので、変動荷重検出用シート101の全体の厚みを薄くできるという効果がある。潤滑部材としては、例えば、機械油、天ぷら油、ブレーキ油、ワセリン又はグリース等を使用することができる。変動荷重検出用シート101の使用環境にもよるが、低粘度の潤滑剤、例えば機械油がよい。
【0047】
図8に変動荷重検出用シート100の上、すなわち歪増幅部材15の上に重ねて機械油をしみ込ませた紙からなる緩衝部材20A、20Bが設けられ、さらに、緩衝部材20A、20Bを覆うカバー部材30が設けられた変動荷重検出用シート101の例を示す。また図9に、機械油をしみ込ませた紙からなる緩衝部材20A、20Bの上にさらに上記に示すスポンジゴム等からなる緩衝部材20C、20Dを重ね、これらを包み込むカバー部材30が設けられた変動荷重検出用シート101の例を示す。
【0048】
また、緩衝部材20として、歪増幅部材15に接触する面に潤滑部材を有するフィルムからなるものを使用することができる。潤滑部材として、例えば、機械油、天ぷら油、ブレーキ油、ワセリン又はグリース等を使用することができ、それらの潤滑部材は、フィルム面に塗膜又は層状に形成されたものであっても、また、歪増幅部材15表面上に形成された塗膜又は層であってもよい。さらに、潤滑部材は、歪増幅部材15とフィルム間に形成されたオイルだめのようなものであっても、負荷を受けたときオイル層が飛び散ってダンパ効果を生じるようなことがないものであればよい。すなわち、歪増幅部材15とフィルム間に低摩擦係数を有し変動荷重を有効に歪増幅部材15に伝達できるような潤滑部材が存在し、その潤滑部材の揮発あるいは漏れ等を防止するフィルムから構成される緩衝部材であればよい。なお、フィルムの材質等の特性は特に限定されないが、歪増幅部材15や潤滑部材との材質関係を考慮して適切なものを選択すればよい。入手の便、経済性等を考慮すれば、例えば、フィルム厚さが20〜60μmのポリエチレンフィルムがよい。
【0049】
図10は、歪増幅部材15に接触する面に潤滑油塗膜を有するフィルムからなる緩衝部材20で変動荷重検出用シート100を覆い、さらにその上からカバー部材30で覆って構成した変動荷重検出用シート101の例を示す。フィルムは図10に示すように密封されているのがよい。この場合は全体厚さの薄い変動荷重検出用シート101を作成することができるばかりでなく、その製造工程を機械化しやすいという効果がある。なお、本例の場合も図9の場合と同様、さらにスポンジゴム等からなる緩衝部材20C、20Dを設けることができる。
【0050】
上記に説明した緩衝部材20の種々の形態は、使用環境や使用目的に合わせ適切なものを選択する必要があるが、このような緩衝部材20を用いることによって、被測定物と歪増幅部材15が直接接する場合に被測定物と歪増幅部材15との間の摩擦力により歪増幅部材15の面内変形が妨げられるような不都合を防止することができる。また、例えば人の5本の指で変動荷重を与えるような複雑な又凹凸の大きな形状の被測定物であっても圧電フィルム10の局部的な変形を防止し、正確な変動荷重を測定することができる。
【0051】
以上説明したように、緩衝部材20は上記に説明した機能が要求されるものであるから、常に一定の効果を発揮させるように緩衝部材20を保護するカバー部材30を設けるのがよい。例えばカバー部材30は、緩衝部材20が変形しやすいものである場合は、緩衝部材20の変形に容易に追従し、かつそれ自身変形しないものであるものがよい。また、カバー部材30は、被測定物が緩衝部材20に接触して損傷を与えるのを防止できるものであるのがよい。
【0052】
そのようなカバー部材30として、天然繊維あるいは人工繊維の織物、動物の皮や人工皮革、樹脂シートまたはゴムシートからなるものを使用することができる。なかでも帆布が好ましい。なお、カバー部材30は例えば袋状に作製して、変動荷重検出用シート100及び緩衝部材20A、20Bをその中に収納して変動荷重検出用シート101を構成するならば、簡単に持ち運びができ容易に変動荷重検出装置を構成することができる。また、必要に応じて効果の異なる緩衝部材20、あるいは変動荷重検出用シート100を取り替えて変動荷重を測定する装置を構成することができる。
【0053】
なお、被測定物、変動荷重の種類及び荷重の大きさの程度等が予め分かっている場合は、変動荷重検出用シートに緩衝部材20を用いないものとすることができるが、そのような場合にも変動荷重検出用シートは上記カバー部材30を用いたものとするのが好ましい。
【実施例1】
【0054】
図6に示す変動荷重検出用シート101を用いて図3(a)の変動荷重検出回路を構成し、変動荷重の大きさ、その変化状態等の測定試験を行った。試験は、図11に示すように、変動荷重検出用シート101をロードセル50の荷重受け台55の上に置いて、変動荷重検出用シート101の上面に種々の変動荷重を負荷して変動荷重検出用シート101による出力電圧Voutを電圧検知装置40により記録するとともに、同時にロードセル50による出力波形を記録することにより行った。なお、荷重受け台55は一辺が30cmの正方形で厚さ3mmのアルミ板に合板を接着したものを用いた。
【0055】
変動荷重検出用シート101の構成は以下の通りである。圧電フィルム10は静電容量Cが3.1×10-7Fである、一辺が26cmの正方形で厚さが40μmのPVDFを用い、両面にアルミの蒸着電極11を設けた。歪増幅部材15は、一辺27cmの正方形で厚さが1mm、ゴム硬度が約50のシリコンゴム板を用いた。シリコンゴム板は、圧電フィルム10の全面にわたるように、圧電フィルム10の両面にシリコン樹脂で接着した。配線18は導電性粘着剤付き金属箔テープに電気配線を半田付けし、金属箔テープの粘着剤面を電極15に粘着で取付けた。配線18の取付部はシリコン樹脂で固定した。
【0056】
緩衝部材20は、一辺が28mの正方形で厚さ10mmのセルスポンジを用いた。さらに、変動荷重を負荷する側の緩衝部材20と歪増幅部材15との間には、厚さ約2.5mmの発泡ゴム系の滑り止め網目シート(カーボーイ社製)を設けた。カバー部材30は帆布を用い、袋形状にした。上記圧電フィルム10等を袋状のカバー部材30に収納し、配線18はカバー部材30から引き出して変動荷重検出用シート101を構成した。その変動荷重検出用シート101は、一辺が約30cmの正方形で厚さが約25mmであった。
【0057】
電圧検知装置40は、電圧記録計(内部抵抗1MΩのNEC三栄製オムニエース)を用いた。なお、本変動荷重検出回路においては、その合成抵抗Rと静電容量Cの乗数RCが0.3(FΩ)以上となるので、付加抵抗45(R1)は使用しなかった。ロードセル50は、容量200kgのものを用いた。
【0058】
図12は、厚さ5mmで表面積が10cm2、25cm2、50cm2、100cm2及び400cm2の矩形の樹脂板をそれぞれ変動荷重検出用シート101の上に置き、さらにその樹脂板の上に手のひらサイズ(10cm×10cm)の樹脂板を重ねて、その上を手のひらで繰返し押す試験(周波数約5Hz)と、拳で叩く試験(周波数約50Hz)を行った結果を示すグラフである。横軸のロードセルの荷重P0は、図13に示すように変動荷重の場合は荷重振幅P01、衝撃荷重の場合はピーク荷重P02を示す。縦軸の出力電圧Voutは、図13に示すように変動荷重の場合は荷重振幅P1、衝撃荷重の場合はピーク荷重P2を示す。なお、周波数とは、上述したように図13に示す変動荷重の場合の周期T1、衝撃荷重の場合の周期T2より求められるf1、f2(f1=1/T1、f2=1/4T2)を示す。
【0059】
図12によると、荷重負荷面積の大小によらず出力電圧Voutはロードセルの荷重P0と比例関係にあることがわかる。また、手のひらで繰返し押す場合と拳で叩く場合の両者の荷重速度(周波数f)は相当異なるにもかかわらず、それぞれ出力電圧Voutとロードセルの荷重P0との間の比例定数はほぼ等しく、これらの動作による変動荷重Pは、P=k0Voutにより表されることが分かる。
【0060】
図13は、図12に説明した100cm2の樹脂板を用いて手のひらで繰返し押す試験と、拳で叩く試験を行ったときの変動荷重検出用シート101による出力電圧Voutの変化状態とロードセル50によるロードセルの荷重P0の変化状態とを対比して表したものである。図13(a)が手のひらで繰り返し押したときの結果、図13(b)が拳で叩いたときの結果を示す。横軸は時間t(ms)、縦軸は出力電圧Vout(V)、又はロードセルの荷重P0(kg)を示す。曲線sは出力電圧Voutを示し、曲線rはロードセルの荷重P0を示す。図13によると、手のひらで繰り返し押したときの出力電圧Voutの波形とロードセルの荷重P0の波形はよく一致している。拳で叩いたときの出力電圧Voutの波形とロードセルの荷重P0の波形もほぼ一致している。なお、ロードセルの荷重P0の波形は、緩衝部材20により衝撃荷重のロードセル50への伝達が圧電フィルム10への伝達より遅れるため、出力電圧Voutの波形よりも少し位相が遅れている。
【0061】
図14は、表1に示す人の各種動作を行った場合(f=3〜125Hz)と、鞭(1mの竹の物差し)で叩いた場合(f=300Hz)の出力電圧Voutをロードセルの荷重P0に対してプロットした結果を示す。図14によると、人の各種動作程度の荷重速度では荷重速度による影響は見られず、人の各種動作による変動荷重Pは、P=k0Vout(k0は定数)により表されることが分かる。しかし、鞭で叩いた場合は荷重速度の影響が見られ、変動荷重Pは、P=k1Vout(k1>k0)により表される。これは、荷重速度が速くなると緩衝部材20のダンパー効果をロードセル50が圧電フィルム10よりもより多く受けるからである。
【0062】
図15は図14の拳で叩いた場合、肘打ちの場合及び鞭で叩いた場合の出力電圧Voutの時間tにおける変化状態を示す。拳で叩いた場合、特に鞭で叩いた場合の減衰曲線はマイナス側に振動する部分がある。これは、高速な衝撃荷重になると変動荷重検出用シートがその厚さ方向に伸び縮みしていることを示している。
【実施例2】
【0063】
変動荷重検出用シート101の緩衝部材20に、図10に示すような歪増幅部材15に接触する面に潤滑部材を有するフィルムからなるものを用いた変動荷重検出用シート101に種々の負荷を与え、図14の場合と同様な方法で変動荷重検出用シート101の出力電圧を測定した。
【0064】
試験結果を図16に示す。図16は、図14と同様に人の各種動作を行った場合の出力電圧Voutをロードセルの荷重P0に対してプロットした結果を示す。なお、この場合は、軟式テニスボールあるいは硬式テニスボール等を介して負荷を与える場合についても同様に試験を行った。また、図17に、図16に示した動作の中で拳で繰返し押した場合の出力電圧の時間変化及びロードセルの荷重の時間変化を示す。実線は変動荷重検出用シート101の出力電圧曲線を示し、破線はロードセルの荷重曲線を示す。この変動荷重検出用シート101によると、図16から分かるように、ロードセルの荷重P0と圧電フィルムの出力電圧Voutの関係に良い比例関係が見られ、また、図17から分かるように、ロードセルの波形と出力電圧の波形がよく一致している。
【0065】
なお、本試験に用いた変動荷重検出用シート101の構成、試験条件等は以下の通りであった。すなわち、一辺が10cmの正方形の厚さ40μmのPVDFからなる圧電フィルム10を用い、その上に厚さ1mmのシリコンゴム板を歪増幅部材15として接着し、全体厚さが2.2〜2.3mm、一辺が10.4cmの正方形の変動荷重検出用シート100を作成した。この変動荷重検出用シート100の両面に低粘度のオイル(市販のミシンオイル)を塗り、これを市販のポリエチレンの袋に入れ、その中の空気を抜き密封して歪増幅部材15を包み込むように緩衝部材20を設けた。さらに、それを厚さ1mmの天然黒ゴムのカバー部材に包み込み、全体厚さが約4.5mmの変動荷重検出用シート101を作成した。
【0066】
この変動荷重検出用シート101を用い、図11に示す方法で試験を行った。変動荷重検出用シート101の出力電圧の測定は、実施例1の場合と同じ電圧検知装置40を用いた。本電圧検知装置40の電気回路は、図18に示すように、1μFのコンデンサを並列に接続し、C5なる付加静電容量46を設けている。この付加静電容量C5を設けることにより、圧電フィルムの表面積を増やしたのと同様な効果を得ることができる。したがって、この付加静電容量C5は、測定環境から変動荷重検出用シート101のサイズを小さくしなければならない場合に有効である。付加静電容量C5を設けることにより、変動荷重検出用シート101の変動荷重検出回路においてR×(C+C5)>0.3、R=R1+R2なる関係が満たされる限り上述の変動荷重検出用シート100と同等の感度で歪みを測定することができる。
【0067】
上記において、静電容量C(F)はC=C1+C2で、圧電フィルム10の静電容量を示す。C1、C2、R2は図3に示すものと同様にそれぞれ、圧電フィルム10の圧縮変動荷重が負荷される部分の静電容量、圧電フィルム10の圧縮変動荷重が負荷されない部分の静電容量、電圧検知装置40の内部抵抗を示す。付加静電容量C5は、変動荷重検出用シート101側の電気回路内に設けてもよく、電圧検知装置40側の電気回路内に設けてもよい。なお、本変動荷重検出回路において、図3に示すものと同様に付加抵抗R1を設けることができるが、上記試験においては付加抵抗を設けなかった。
【実施例3】
【0068】
上記の実施例1の変動荷重検出用シート101を用いた変動荷重検出装置により、図19に示すように乗用車の運転座席の下に座布団のように変動荷重検出用シート101を敷いて、その上に運転者(体重約75kg)が座り、土のでこぼこ道からアスファルト道路に変化する道路を走行したときの変動荷重波形を求める試験を行った。比較のため、運転座席下部の樹脂製の座席構成部材に、上下方向の加速度を検出する加速度センサー110(東京測器株式会社製AFR-50A)を取り付けた加速度測定装置により加速度αを測定した。加速度αは、出力電圧Voutと同じ時間タイミングで測定した。上記測定のための電源は自動車用インバータ電源を使用した。
【0069】
測定結果を図20に示す。図20(a)は、上記変動荷重検出装置により測定した出力電圧Voutの時間tにおける変化状態を示す。図20(b)は、上記加速度測定装置により測定した加速度αの時間tにおける変化状態を示す。図20によると、出力電圧Voutの波形と加速度αの波形は似ており、尻部の変動荷重の大きさや周波数等の変動荷重に関する特性を上記変動荷重検出装置により簡単に測定できることがわかる。すなわち、このような変動荷重測定装置により、例えば、乗用車が追突し乗員がダッシュボードに衝突して受ける衝撃荷重等、種々の変動荷重及び衝撃荷重を容易に測定することができる。また、本変動荷重測定装置を、種々の車の乗り心地解析装置等に応用することができる。なお、図20において、出力電圧Voutの波形と加速度αの波形が少し異なるのは、加速度センサー110が剛性のある樹脂製の座席構成部材に固定されているのに対して、変動荷重検出用シート101がクッションのある座席の上に置かれていること、及び運転者の身体動揺による効果が両者で異なること等が影響しているためである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る変動荷重検出用シートの断面図である。
【図2】図1の変動荷重検出用シートが圧縮変動荷重を受ける場合の変形状態を説明する模式図である。
【図3】本発明に係る変動荷重検出回路の説明図である。
【図4】図3の回路で測定される出力電圧に及ぼす圧電フィルムの静電容量、回路の合成抵抗、変動荷重の周波数の影響を示すグラフである。
【図5】変動荷重又は衝撃荷重の周期を説明する模式図である。
【図6】本発明に係る他の変動荷重検出用シートの平面図及びAA断面図である。
【図7】緩衝部材の他の構造を示す断面図である。
【図8】緩衝部材の他の2の構造を示す断面図である。
【図9】緩衝部材の他の3の構造を示す断面図である。
【図10】緩衝部材の他の4の構造を示す断面図である。
【図11】変動荷重検出用シート及びロードセルを用いて変動荷重、衝撃荷重を測定する測定装置の斜視図である。
【図12】変動荷重検出用シートへの変動荷重作用面積を種々変えて変動荷重を測定した結果を示すグラフである。
【図13】図12の100cm2の樹脂板を用いて手のひらで繰返し押したときと、拳で叩いたときの出力電圧Voutの変化状態とロードセルの荷重P0の変化状態とを示すグラフである。
【図14】変動荷重又は衝撃荷重を、変動荷重検出用シートを用いて測定した結果と、ロードセルを用いて測定した結果を示すグラフである。
【図15】図14の拳で叩いたときと、肘打ちの場合及び鞭で叩いたときの出力電圧Voutの時間tにおける変化状態を示すグラフである。
【図16】変動荷重又は衝撃荷重を、図14の場合と緩衝部材の構造が異なる変動荷重検出用シートを用いて測定した結果と、ロードセルを用いて測定した結果を比較して示すグラフである。
【図17】図16の動作の中で拳で繰返し押した場合の出力電圧の時間変化及びロードセルの荷重の時間変化を示すグラフである。
【図18】図16の試験を行った試験装置の電気回路図である。
【図19】乗用車の運転者が運転中に尻部に受ける変動荷重を、変動荷重検出用シートを用いて測定する場合と、加速度センサーを用いて測定する場合の様子を示す斜視図である。
【図20】図19の試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0071】
10 圧電フィルム
11、11A、11B 電極
13 接着剤
15、15A、15B 歪増幅部材
18、18A、18B 配線
20、20A、20B、20C、20D 緩衝部材
21 凹凸部
30 カバー部材
40 電圧検知装置
45 付加抵抗
46 付加静電容量
50 ロードセル
55 荷重受け台
100、101 変動荷重検出用シート
110 加速度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電フィルムと、該圧電フィルムの両面に設けられた一対の電極と、該電極上に設けられた歪増幅部材とからなり、
前記歪増幅部材は前記圧電フィルムのヤング率よりも小さいヤング率を有する弾性体であることを特徴とする変動荷重検出用シート。
【請求項2】
歪増幅部材としての弾性体は、ヤング率が1〜10MPaであることを特徴とする請求項1に記載の変動荷重検出用シート。
【請求項3】
歪増幅部材としての弾性体は、シリコンゴム、天然ゴム又は合成ゴムのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の変動荷重検出用シート。
【請求項4】
歪増幅部材の上に重ねて緩衝部材が設けられてなる請求項1〜3のいずれかに記載の変動荷重検出用シート。
【請求項5】
緩衝部材は、ヤング率が0.2〜0.8MPaの弾性体からなるものであることを特徴とする請求項4に記載の変動荷重検出用シート。
【請求項6】
緩衝部材は、スポンジゴム、またはセルスポンジであることを特徴とする請求項5に記載の変動荷重検出用シート。
【請求項7】
緩衝部材は、変動荷重が負荷される側の歪増幅部材と接する面に凹凸部が設けられていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の変動荷重検出用シート。
【請求項8】
緩衝部材は、潤滑部材を塗布又はしみ込ませた紙、布帛又はフェルトからなるものであることを特徴とする請求項4に記載の変動荷重検出用シート。
【請求項9】
緩衝部材は、歪増幅部材に接触する面に潤滑部材を有するフィルムからなるものであることを特徴とする請求項4に記載の変動荷重検出用シート。
【請求項10】
潤滑部材を有するフィルムは、歪増幅部材に接触する面に低粘度の潤滑剤塗膜を有するフィルムであることを特徴とする請求項9に記載の変動荷重検出用シート。
【請求項11】
緩衝部材は、潤滑部材を塗布又はしみ込ませた紙、布帛又はフェルトからなるもの及びその上にヤング率が0.2〜0.8MPaの弾性体からなるものを重ねたものであることを特徴とする請求項4に記載の変動荷重検出用シート。
【請求項12】
緩衝部材は、歪増幅部材に接触する面に潤滑部材を有するフィルムからなるもの及びその上にヤング率が0.2〜0.8MPaの弾性体からなるものを重ねたものであることを特徴とする請求項4に記載の変動荷重検出用シート。
【請求項13】
変動荷重検出用シートは可撓性のカバー部材で覆われてなる請求項1〜12のいずれかに記載の変動荷重検出用シート。
【請求項14】
変動荷重検出用シートは、静電容量がC(F)なる圧電フィルムと電気抵抗がR(Ω)なる電極に直列に結線された付加抵抗とを有し、前記静電容量Cと電気抵抗Rの積RCが、RC>0.3なることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の変動荷重検出用シート。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の変動荷重検出用シートを用いて構成され、該変動荷重検出用シート上に作用する変動荷重の垂直方向の大きさに応じて圧電フィルムに帯電された電荷量により発生する、変動荷重に比例した出力電圧を検出する変動荷重検出回路であって、
前記圧電フィルムの電極に直列に結線された付加抵抗を通して電圧検知装置と結線され、
前記圧電フィルムの静電容量C(F)、前記付加抵抗の電気抵抗R1(Ω)、前記電圧検知装置の内部抵抗R2(Ω)が下記の関係を満たすように構成されてなる変動荷重検出回路。
RC>0.3、R=R1+R2
【請求項16】
変動荷重検出用シートは、静電容量が静電容量C(F)なる圧電フィルムと静電容量がC5(F)なる電極に並列に結線された付加静電容量と、電気抵抗がR(Ω)なる電極に直列に結線された付加抵抗とを有し、前記静電容量の和(C+C5)と電気抵抗Rの積R×(C+C5)が、R×(C+C5)>0.3なることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の変動荷重検出用シート。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれかに記載の変動荷重検出用シートを用いて構成され、該変動荷重検出用シート上に作用する変動荷重の垂直方向の大きさに応じて圧電フィルムに帯電された電荷量により発生する、変動荷重に比例した出力電圧を検出する変動荷重検出回路であって、
前記圧電フィルムの電極に並列に結線された付加静電容量、及び前記圧電フィルムの電極に直列に結線された付加抵抗を通して電圧検知装置と結線され、
前記圧電フィルムの静電容量C(F)と付加静電容量C5(F)、前記付加抵抗R1(Ω)、前記電圧検知装置の内部抵抗R2(Ω)が下記の関係を満たすように構成されてなる変動荷重検出回路。
R×(C+C5)>0.3、R=R1+R2

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−153842(P2006−153842A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165257(P2005−165257)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)