説明

変圧器管理装置、その方法及びそのプログラム

【課題】コンピュータの処理負担を小さく抑えつつ変圧器の交換の要否を精度良く判定する。
【解決手段】変圧器管理装置10は、変圧器の交換の要否を判定するにあたり、まず、その変圧器に接続された需要家の総契約容量に基づいて、総契約容量と変圧器の想定電灯負荷との相関関係(第1相関関係)から第1想定値を導出する。次に、その第1想定値が第1許容範囲を超えていたならば、その変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量に基づいて、所定期間内の総使用電力量と変圧器の想定電灯負荷との相関関係(第2相関関係)から想定電灯負荷を導出する。そして、その想定電灯負荷に、変更された契約容量に対応する想定電灯負荷を第1相関関係から導出して加算し、該加算した後の合計値を第2想定値とする。そして、その第2想定値が第2許容範囲を超えていたならば、その変圧器を交換する必要がある旨を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器管理装置、その方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の需要家に電力を供給する変圧器の管理として、変圧器の最大負荷を想定し、その想定した最大負荷に基づいて変圧器を交換するか否かを決定することが行われている。そして、変圧器の最大負荷を想定する手法としては、変圧器に接続された需要家の総契約容量と変圧器の最大負荷との相関関係に基づいて想定する方法(以下、kW法という)や、変圧器に接続された需要家の総使用電力量と変圧器の最大負荷との相関関係に基づいて想定する方法(以下、kWh法という)が知られている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日原良造著「近代 配電工学」電気書院出版 p223〜p224
【非特許文献2】中部電気協会編「新訂 配電工学 現場の手引」コロナ社出版 p359〜p363
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、kW法では、コンピュータの処理負担は小さいものの、電灯及び動力の総契約容量と変圧器の最大負荷との相関関係にバラツキが多いため、本来変圧器を容量の大きなものに交換する必要がないにもかかわらず、交換が必要であると判断してしまうことがあった。一方、kWh法では、電灯負荷においてはkW法に比べて精度良く最大電灯負荷を想定できるものの、変圧器に接続された需要家の総使用電力量を算出する必要があるため、コンピュータの処理負担が大きいという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、コンピュータの処理負担を小さく抑えつつ変圧器の交換の要否を精度良く判定することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
すなわち、本発明の変圧器管理装置は、
変圧器に接続された需要家の総契約容量と前記変圧器の想定電灯負荷との相関関係を第1相関関係として記憶する第1相関関係記憶手段と、
変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と前記変圧器の想定電灯負荷との相関関係を第2相関関係として記憶する第2相関関係記憶手段と、
変圧器を交換する必要がある旨を報知する報知手段と、
総契約容量が変更された変圧器を判定対象変圧器とし、該判定対象変圧器の総契約容量に基づいて、前記第1相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷である第1想定値を導出する第1想定値導出手段と、
該第1想定値が予め定められた第1許容範囲を超えているか否かを判定する第1判定手段と、
前記第1想定値が第1許容範囲を超えていたならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量に基づいて前記第2相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、該導出した想定電灯負荷に、前記判定対象変圧器の総契約容量の増加分に対応する想定電灯負荷を前記第1相関関係から導出して加算し、該加算した後の合計値を第2想定値とする第2想定値導出手段と、
該第2想定値が予め定められた第2許容範囲を超えているか否かを判定する第2判定手段と、
前記第2想定値が第2許容範囲を超えていたならば、前記判定対象変圧器を交換する必要がある旨が報知されるよう前記報知手段を制御する制御手段と、
を備えたものである。
【0008】
この変圧器管理装置では、まず、総契約容量に基づいて第1想定値を導出するが、契約容量は需要家ごとに決まっているため、その総和である総契約容量は簡単に算出することができる。そして、第1想定値が第1許容範囲を超えた場合にのみ、所定期間内の総使用電力量を利用して第2想定値を導出する。ところで、所定期間内の総使用電力量は、所定期間内における需要家ごとの実際の使用電力量の総和であるため、総契約容量を求める場合に比べて手間がかる。しかし、本発明の変圧器管理装置では、第1想定値が第1許容範囲を超えた変圧器のみ、所定期間内の総使用電力量を利用して第2想定値を導出する。このため、すべての変圧器について所定期間内の総使用電力量を利用して第2想定値を導出する場合に比べて、こうした総使用電力量を求める手間が軽減される。したがって、コンピュータの処理負担を小さく抑えることができる。また、判定対象変圧器の第1想定値が第1許容範囲を超えた場合にその変圧器の交換が必要である旨を報知するとすれば、第1想定値は総契約容量に基づいて導出された想定電灯負荷から導出されるため精度が必ずしも高くなく、本来交換が不要なものまで交換が必要であると誤って報知してしまい、変圧器の交換作業が無駄に発生するおそれがある。しかし、本発明の変圧器管理装置では、判定対象変圧器の第1想定値が第1許容範囲を超え、且つ、第2想定値が第2許容範囲を超えた場合にその変圧器を交換する必要がある旨を報知する。第2想定値は所定期間内の総使用電力量に基づいて導出された想定電灯負荷を用いているため精度が高く、本来交換が不要なものまで交換が必要であると誤って報知してしまうおそれがほとんどない。以上のことから、本発明の変圧器管理装置によれば、コンピュータの処理負担を小さく抑えつつ変圧器の交換の要否を精度良く判定することができる。
【0009】
本発明の変圧器管理装置において、前記制御手段は、前記第1想定値が第1許容範囲を超え、更に該第1許容範囲よりも大きな値に設定された上限値も超えていたならば、直ちに、前記判定対象変圧器を交換する必要がある旨が報知されるよう前記報知手段を制御してもよい。第1想定値が上限値を超える場合には、第2想定値を導出したとしてもその第2想定値は第2許容範囲を超えることがほとんどであるため、第2想定値を導出する手間をかけることなく、直ちに変圧器を交換する必要がある旨を報知する。これにより、コンピュータの処理負担が一層軽減される。
【0010】
本発明の変圧器管理装置において、前記所定期間は、年間を通じて最も電力消費の多い1ヶ月間に設定されていてもよい。例えば、日本の中部地方では所定期間を8月(エアコンによる電力消費がピークになる月)に設定してもよいし、東北地方や北海道地方では所定期間を2月(暖房による電力消費がピークになる月)に設定してもよい。
【0011】
本発明の変圧器管理装置において、前記第2相関関係記憶手段は、需要家の分散型電源が連系されていない無連系変圧器について、該無連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と該無連系変圧器の想定電灯負荷との相関関係を前記第2相関関係として記憶する手段であり、前記第2想定値導出手段は、前記第1想定値が第1許容範囲を超えていた場合に、前記判定対象変圧器が前記無連系変圧器であるならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量に基づいて前記第2相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、前記判定対象変圧器が需要家の分散型電源が連系されている有連系変圧器であるならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量を補正した補正後総使用電力量を導出し、該補正後総使用電力量に基づいて前記第2相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、該導出した想定電灯負荷に、前記判定対象変圧器の総契約容量の増加分に対応する想定電灯負荷を前記第1相関関係から導出して加算し、該加算した後の合計値を前記第2想定値とする手段であり、前記第2想定値導出手段は、前記補正後総使用電力量を導出するに際して、前記判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量が、該判定対象変圧器に連系された需要家の総自己消費電力量を該総使用電力量に加えた値に近づくように補正を行う手段としてもよい。こうすれば、判定対象変圧器が有連系変圧器の場合には、補正後総使用電力量に基づいて想定電灯負荷を導出するため、補正せずに総使用電力量に基づいて想定電灯負荷を導出するものと比較して、導出される第2想定値が大きい値となる。これにより、補正をしない場合と比較して、第2想定値に基づく判定では変圧器を交換する必要がないと判定されたにも関わらず実際は交換が必要であるという状態になることをより防止できる。言い換えると、変圧器の交換要否の判定の安全性をより高めることができる。なお、有連系変圧器では、分散型電源を設置している需要家が分散型電源から出力された電力を直接消費した電力量である自己消費電力量が存在する。この自己消費電力量は変圧器を介さず使用された電力量であるため総使用電力量には反映されない。そこで、総使用電力量に自己消費電力を加えた値に近づくように補正した補正後総使用電力量に基づいて想定電灯負荷を導出することで、判定の安全性を高めているのである。ここで、分散型電源とは、電力の需要地又はその近くに置かれる電源装置を意味し、例えば、太陽光発電設備,燃料電池,風力発電設備,ガスタービン(マイクロガスタービン)などであってもよい。
【0012】
本発明の変圧器管理装置において、前記第2相関関係記憶手段は、需要家の分散型電源が連系されていない無連系変圧器について、該無連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と該無連系変圧器の想定電灯負荷との相関関係を前記第2相関関係として記憶する手段であり、前記第2想定値導出手段は、前記第1想定値が第1許容範囲を超えていた場合に、前記判定対象変圧器が前記無連系変圧器であるならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量に基づいて前記第2相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、前記判定対象変圧器が需要家の分散型電源が連系されている有連系変圧器であるならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量を補正した補正後総使用電力量を導出し、該補正後総使用電力量に基づいて前記第2相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、該導出した想定電灯負荷に、前記判定対象変圧器の総契約容量の増加分に対応する想定電灯負荷を前記第1相関関係から導出して加算し、該加算した後の合計値を前記第2想定値とする手段であり、前記第2想定値導出手段は、前記補正後総使用電力量を導出するに際して、有連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と該有連系変圧器の想定電灯負荷との相関関係が、前記第2相関関係に近づくように、前記判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量の補正を行う手段としてもよい。こうすれば、有連系変圧器について補正を行わず総使用電力量から第2相関関係を用いて想定電灯負荷を導出する場合と比較して、想定電灯負荷の予測精度が高まる。
【0013】
上述した補正後総使用電力量を導出する形態の本発明の変圧器管理装置において、前記第2想定値導出手段は、前記補正後総使用電力量を導出するに際して、前記判定対象変圧器に連系された分散型電源の連系容量が所定の第1容量範囲に含まれないときには、該連系容量が該第1容量範囲に含まれるときとは異なる方法で前記総使用電力量の補正を行う手段としてもよい。こうすれば、より適切に第2想定値を導出することができる。なお、異なる方法で総使用電力量の補正を行うとは、例えば補正後総使用電力量の導出に用いる式は同じで係数を異なる値として補正を行うことであってもよいし、補正後総使用電力量の導出に用いる補正式自体を異ならせて補正を行うことであってもよい。この場合、分散型電源の連系容量が所定の第1許容範囲に含まれる有連系変圧器と、第1許容範囲に含まれない有連系変圧器とで、適切な係数を別々に求めておくものとしたり、複数の補正式のうちいずれの式を用いることが適切であるかを調べて定めておくものとしたりしてもよい。なお、前記第2想定値導出手段は、判定対象変圧器に連系された分散型電源の連系容量が所定の複数の容量範囲のうちいずれに含まれるかによって、異なる方法で総使用電力量の補正を行う手段としてもよい。
【0014】
本発明の変圧器管理装置において、前記第2相関関係記憶手段は、需要家の分散型電源が連系されていない無連系変圧器について、該無連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と該無連系変圧器の想定電灯負荷との相関関係を前記第2相関関係として記憶する手段であり、需要家の分散型電源が接続されている有連系変圧器について、該有連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と該有連系変圧器の想定電灯負荷との相関関係を第3相関関係として記憶する第3相関関係記憶手段、を備え、前記第2想定値導出手段は、前記第1想定値が第1許容範囲を超えていた場合に、前記判定対象変圧器が前記無連系変圧器であるならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量に基づいて前記第2相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、前記判定対象変圧器が前記有連系変圧器であるならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量に基づいて前記第3相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、該導出した想定電灯負荷に、前記判定対象変圧器の総契約容量の増加分に対応する想定電灯負荷を前記第1相関関係から導出して加算し、該加算した後の合計値を前記第2想定値とする手段であり、前記第2判定手段は、前記補正後総使用電力量を導出するに際して、前記第2想定値が前記第2許容範囲を超えているか否かを判定し、前記判定対象変圧器が前記有連系変圧器であるならば、前記第2想定値が予め定められた第3許容範囲を超えているか否かを判定する手段であり、前記制御手段は、前記第2判定手段が前記判定により前記第2許容範囲を超えているか又は前記第3許容範囲を超えていると判定をしたならば、前記判定対象変圧器を交換する必要がある旨が報知されるよう前記報知手段を制御する手段としてもよい。こうすれば、有連系変圧器については、有連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と該有連系変圧器の想定電灯負荷との相関関係である第3相関関係を用いて想定電灯負荷を導出するため、有連系変圧器の想定電灯負荷を第2相関係数を用いて導出する場合と比べて、予測精度が向上する。
【0015】
この場合において、前記第3相関関係記憶手段は、前記有連系変圧器について、該有連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量が該有連系変圧器に連系された需要家の総自己消費電力量を該総使用電力量に加えた値に近づくよう補正した補正後総使用電力量と、該有連系変圧器の想定電灯負荷と、の相関関係を前記第3相関関係として記憶する手段であり、前記第2想定値導出手段は、前記補正後総使用電力量を導出するに際して、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量を補正した前記補正後総使用電力量を導出し、該補正後総使用電力量に基づいて前記第3相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出する手段としてもよい。こうすれば、自己消費電力量も考慮して想定電灯負荷を導出することができる。
【0016】
上述した第3相関関係を用いる態様の本発明の変圧器管理装置において、前記第3相関関係記憶手段は、分散型電源の連系容量が所定の第1容量範囲に含まれる有連系変圧器と、分散型電源の連系容量が該第1容量範囲に含まれない有連系変圧器とで別々に求めた複数の前記相関関係を、前記第3相関関係として記憶している手段であり、前記第2想定値導出手段は、前記第3相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出するに際して、該第3相関関係のうち該判定対象変圧器に連系された分散型電源の連系容量に対応する前記相関関係を用いる手段としてもよい。こうすれば、分散型電源の連系容量に応じて異なる相関関係を用いるため、より高い精度で想定電灯負荷を導出することができる。なお、前記第3相関関係記憶手段は、有連系変圧器の分散型電源の連系容量が所定の複数の容量範囲のいずれに含まれるかによって該有連系変圧器を複数のグループに分け、該グループ別に求めた複数の前記相関関係を、前記第3相関関係として記憶している手段としてもよい。
【0017】
本発明の変圧器管理方法は、
(a)総契約容量が変更された変圧器を判定対象変圧器とし、該判定対象変圧器の総契約容量に基づいて、変圧器に接続された需要家の総契約容量と変圧器の想定電灯負荷との相関関係である第1相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷である第1想定値を導出するステップと、
(b)該第1想定値が予め定められた第1許容範囲を超えているか否かを判定するステップと、
(c)前記第1想定値が第1許容範囲を超えていたならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量に基づいて、変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量と変圧器の想定電灯負荷との相関関係である第2相関関係から前記判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、該導出した想定電灯負荷に、前記判定対象変圧器の総契約容量の増加分に対応する想定電灯負荷を前記第1相関関係から導出して加算し、該加算した後の合計値を第2想定値とするステップと、
(d)該第2想定値が予め定められた第2許容範囲を超えているか否かを判定するステップと、
(e)前記第2想定値が第2許容範囲を超えていたならば、前記判定対象変圧器を交換する必要がある旨を報知するステップと、
を含むものである。
【0018】
この変圧器管理方法によれば、上述した変圧器管理装置と同様、コンピュータの処理負担を小さく抑えつつ変圧器の交換の要否を精度良く判定することができる。
【0019】
本発明の変圧器管理方法において、前記ステップ(c)では、前記第1想定値が前記第1許容範囲を超え、更に該第1許容範囲よりも大きな値に設定された上限値も超えていたならば、直ちに、前記判定対象変圧器の交換が必要である旨を報知してもよい。第1想定値が上限値を超える場合には、第2想定値を導出したとしてもその第2想定値は第2許容範囲を超えることがほとんどであるため、第2想定値を導出する手間をかけることなく、直ちに変圧器を交換する必要がある旨を報知する。これにより、コンピュータの処理負担が一層軽減される。
【0020】
本発明のプログラムは、コンピュータに、上述した変圧器管理方法を実行させるためのプログラムである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、RAM、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを一つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、処理負担を小さく抑えつつ変圧器の交換要否を精度良く判定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】変圧器管理装置10の概略構成を表す説明図。
【図2】変圧器に接続された需要家の総契約容量と変圧器の実測最大電灯負荷電流との関係を表す相関図。
【図3】変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と変圧器の実測最大電灯負荷電流との関係を表す相関図。
【図4】変圧器管理ルーチンのフローチャート。
【図5】管理画面の一例を示す説明図。
【図6】第2実施形態の変圧器管理ルーチンのフローチャート。
【図7】補正後総使用電力量と想定最大電灯負荷電流との関係を示す説明図。
【図8】有連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の補正後総使用電力量と変圧器の実測最大電灯負荷電流との関係を表す相関図。
【図9】第3実施形態の変圧器管理ルーチンのフローチャート。
【図10】第3相関関係を求める際に用いた実測データの一例。
【図11】連系容量でグループ分けを行った場合の相関関係の一例。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
次に本発明を具現化した一実施形態について説明する。図1は第1実施形態の変圧器管理装置10の概略構成を示す説明図である。
【0023】
変圧器管理装置10は、柱上変圧器を管理するための装置であり、図1に示すように、各種処理を実行可能なパーソナルコンピュータ(PC)20と、画像を表示可能なディスプレイ26と、ユーザの指示を入力可能なキーボード27とから構成されている。なお、以下の説明では、柱上変圧器を単に変圧器と称するものとする。
【0024】
PC20は、演算処理を実行するCPU21と、各種処理プログラムを記憶したROM22と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM23と、各種データを保存する大容量のHDD24と、インターネット回線を通じて外部のコンピュータとの電子メールのやり取りやデータの送受信を可能とするネットワークボード25とを備えている。
【0025】
このうち、HDD24には、変圧器に接続された需要家の総契約容量(単位:A)と変圧器の想定最大電灯負荷電流(単位:A)との相関関係(第1相関関係という)や、変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量(単位:kWh)と変圧器の想定最大電灯負荷電流(単位:A)との相関関係(第2相関関係という)が保存されている。
【0026】
ここで、第1相関関係の一例を以下に説明する。まず、変圧器に接続された需要家の戸数と、変圧器に接続された需要家の総契約容量x[A]と、変圧器の最大電灯負荷電流y[A]との実測データを多数取得した。そして、戸数の数値範囲別に、変圧器の総契約容量x[A]から最大電灯負荷電流y[A]を求める換算式y=αx(αは電灯管理係数)を求め、これを第1相関関係としてHDD24に保存した。この電灯管理係数αは、行政区分(例えば県、市など)や用途地域(例えば住宅地、工場地など)によって変わるが、その一例を表1に示す。なお、総契約容量と電灯管理係数αとを乗じた値を横軸、実際の最大電灯負荷電流を縦軸にしたときの相関図を図2に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
次に、第2相関関係の一例を以下に説明する。まず、変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量X[kWh]と変圧器の最大電灯負荷電流Y[A]との実測データを多数取得して相関図を作成した(図3参照)。その相関図から最小二乗法によりY=aX+bの式を求め、その式を第2相関関係としてHDD24に保存した。
【0029】
図2及び図3の相関係数をそれぞれ算出したところ、第1相関関係よりも第2相関関係の方が値1に近かったことから、第2相関関係の方が第1相関関係よりも精度よく最大電灯負荷電流を求めることができるといえる。第1実施形態では、最大電灯負荷電流は、電力需要の最も高い月1ヶ月分(日本の中部地方の場合は8月1ヶ月分)の電灯負荷電流を実測し、その期間中の最大値とした。また、深夜電気温水器が接続されている場合にはその温水器が所定の深夜時間帯(例えば23時〜7時)に自動的にオンしてお湯を沸かし終わるまで一定の電流が流れることから、電灯負荷電流は1日のうち深夜時間帯を除く期間中に使用された電流を実測した。なお、最大電灯負荷電流は、需要家に電力を供給するときの電圧が一定であるため、最大電灯負荷電力(単位:VA)とみなすことができる。
【0030】
ディスプレイ26は、PC20から信号を入力して変圧器を管理するための管理画面を表示する。この管理画面には、想定電灯負荷電流の値や変圧器の交換の要否などが表示される。キーボード27は、オペレーターによってタイピングされ、各種指令を入力する。なお、図示しないが、キーボード27のほかにマウスも接続されている。
【0031】
変圧器管理装置10には、ネットワークボード25を介して外部サーバ30が接続されている。外部サーバ30のストレージ32には、管理区域ごとに設置されている変圧器に関する情報が記憶されている。こうした情報としては、例えば、変圧器に接続された各需要家の契約容量(単位:A)や変圧器に接続された各需要家のひと月ごとの使用電力量(単位:kWh)などが含まれる。なお、使用電力量は、ひと月ごとに実施される電力量計の検針結果に基づいて導出される。
【0032】
次に、こうして構成された第1実施形態の変圧器管理装置10の動作について説明する。図4は、CPU21により実行される変圧器管理ルーチンのフローチャートである。このルーチンは、ROM22に記憶され、CPU21により所定タイミングごと(例えば1ヶ月ごと)に実行される。
【0033】
図4の変圧器管理ルーチンが開始されると、CPU21は、まず、要管理変圧器を特定する(ステップS100)。具体的には、CPU21は、外部サーバ30から所定の管轄区域に設置された各変圧器に関するデータ(現在の総契約容量、当初の総契約容量、変圧器に接続されている需要家の戸数、電力需要の最も高い月1ヶ月分の総使用電力量など)を取得し、それらのデータをHDD24に格納し、そのうち当初の総契約容量から現在の総契約容量が増加している変圧器を管理が必要な変圧器すなわち要管理変圧器として特定する。要管理変圧器には、1番目、2番目、……という番号を付して管理するものとする。
【0034】
次に、CPU21は、変数nに値1をセットし(ステップS110)、要管理変圧器のうちn番目の変圧器に関するデータをHDD24からRAM24に読み込む(ステップS120)。読み込むデータとしては、現在の総契約容量、変圧器に接続されている需要家の戸数、電力需要の最も高い月1ヶ月分の総使用電力量、管理手法に関する情報などがある。ここで、管理手法に関する情報とは、変圧器ごとに付される情報であり、後述する表示内容がkW法のみに基づいて作成された場合には「kW法」と記憶され、kW法とkWh法の両方に基づいて作成された場合には「h法」と記憶される。なお、初期状態では「kW法」となっている。
【0035】
次に、CPU21は、n番目の変圧器の管理手法がh法か否かを判定し(ステップS130)、h法ならば、後述するステップS200にスキップする。一方、ステップS130で管理手法がh法でなければ、n番目の変圧器の現在の総契約容量から、第1相関関係の式y=αxを用いて想定最大電灯負荷電流である第1想定値(単位:A)を導出する(ステップS140)。なお、電灯管理係数αは、上述したように戸数ごとに決められている値(表1参照)であるため、変圧器に接続されている需要家の戸数に対応する値を用いる。
【0036】
次に、CPU21は、第1想定値が予め定められた第1基準値T1を超えているか否かを判定する(ステップS150)。第1基準値T1は、n番目の変圧器の上限電灯負荷電流を超えない範囲でその上限電灯負荷電流に近い値に設定されている。そして、第1想定値が第1基準値T1を超えていなければ、n番目の変圧器は電灯負荷が過大になるおそれがないため、CPU21は、n番目の変圧器の管理画面情報として、変圧器の揚替(交換)が必要なことを知らせるアラーム(以下、揚替アラームという)を含まず変圧器の電灯負荷が第1想定値であることを示す情報を作成する(ステップS160)。この管理画面情報は、kW法に基づくものである。なお、この管理画面情報は、単位がアンペアである総契約容量から導出された第1想定値に基づくものであるが、需要家へ供給される電圧が一定であるため総契約容量を電力とみなすことができることから、kW法に基づくものと称する。
【0037】
一方、ステップS150で第1想定値が第1基準値T1を超えていたならば、CPU21は第1想定値が上限値を超えているか否かを判定する(ステップS170)。上限値は、n番目の変圧器の上限電灯負荷電流に設定されている。そして、第1想定値が上限値を超えていたならば、n番目の変圧器は電灯負荷が過大になる可能性が高いため、CPU21は、n番目の変圧器の管理画面情報として、揚替アラームを含み変圧器の電灯負荷が第1想定値であることを示す情報を作成する(ステップS190)。この管理画面情報も、kW法に基づくものである。
【0038】
一方、ステップS170で第1想定値が上限値を超えていなければ、CPU21は、n番目の変圧器に接続された各需要家の所定期間(ここでは直近の8月1ヶ月)の使用電力量のデータが存在するか否かを判定する(ステップS180)。具体的には、CPU21は、ステップS100で外部サーバ30から所定の管轄区域に設置された変圧器に関する情報を取得しているため、n番目の変圧器に関する情報として、その変圧器に接続された各需要家の所定期間の使用電力量の総和(総使用電力量)が含まれているか否かを判定する。
【0039】
そして、ステップS180でn番目の変圧器について所定期間の総使用電力量のデータが存在しなければ、CPU21は、このn番目の変圧器の管理画面情報として、揚替アラームを含み変圧器の電灯負荷が第1想定値であることを示す情報を作成する(ステップS190)。この場合も揚替アラームを表示するのは以下の理由による。すなわち、今回のn番目の変圧器については、総使用電力量を利用した判定を行うことはできないが、総契約容量に基づいて導出した第1想定値は第1基準値T1を超えており、電灯負荷が過大になる可能性がないとはいえないからである。
【0040】
一方、ステップS180でn番目の変圧器について総使用電力量のデータが存在したならば、CPU21は第2想定値を導出する(ステップS200)。具体的には、総使用電力量から第2相関関係の式Y=aX+bを用いて想定最大電灯負荷電流を導出すると共に、判定対象変圧器の契約容量の増加分から第1相関関係の式y=αxを用いてその増加分に相当する想定最大電灯負荷電流を導出し、両方の値の和を第2想定値(単位:A)とする。このため、第2想定値は、kW法とkWh法の両方つまりh法に基づいて導出された値である。なお、ステップS200では、n番目の変圧器に関する情報のうち、管理手法の情報を「kW法」から「h法」に更新する。
【0041】
続いて、CPU21は、第2想定値が予め定められた第2基準値T2を超えているか否かを判定する(ステップS210)。第2基準値T2は、n番目の変圧器の上限電灯負荷電流を超えない範囲でその上限電灯負荷電流に近い値に設定されている。この第2基準値T2は、第1基準値T1と同じ値に設定されていてもよいが、より上限電灯負荷電流に近い値に設定されていてもよい。そして、第2想定値が第2基準値T2を超えていなければ、n番目の変圧器は負荷が過大になるおそれがないため、CPU21は、このn番目の変圧器の管理画面情報として、揚替アラームを含まず変圧器の負荷が第2想定値であることを示す情報を作成する(ステップS220)。この表示内容は、h法に基づくものである。一方、ステップS210で第2想定値が第2基準値T2を超えていたならば、n番目の変圧器は負荷が過大になる可能性が高いため、CPU21は、このn番目の変圧器の管理画面情報として、揚替アラームを含み変圧器の電灯負荷が第2想定値であることを示す情報を作成する(ステップS230)。このときの表示内容も、h法に基づくものである。
【0042】
なお、ステップS150で第1想定値が第1基準値T1を超えていると判定されてもステップS210で第2想定値が第2基準値T2を超えていない判定されることがあるが、これは、kW法に基づく想定電灯負荷電流とh法に基づく想定電灯負荷電流との精度の違いによる。すなわち、後者は前者に比べて想定精度が高いため、ステップS150で肯定判定されて変圧器の揚替が必要と判定される場合であっても、ステップS210で否定判定されて変圧器の揚替が不要と判定される場合がある。この変圧器管理ルーチンでは、精度の高い第2想定値を用いるステップS210の結果を優先して揚替アラームの要否を判定する。
【0043】
そして、ステップS160,S190,S220又はS230のあと、CPU21は、要管理変圧器の中に管理画面情報を作成していない変圧器(未処理の変圧器という)があるか否かを判定し(ステップS240)、そのような未処理の変圧器があるならば、変数nを1インクリメントし(ステップS250)、再びステップS120以降の処理を実行する。一方、ステップS240で未処理の変圧器がなければ、要管理変圧器のすべてについて管理画面情報を作成したことになるから、それらの情報に基づいてディスプレイ26に管理画面を表示し(ステップS260)、このルーチンを終了する。ここで、管理画面の一例を図5に示す。図5は、管轄区域内に変圧器No.1,2,3,…が存在し、そのうちの変圧器No.2の備考欄に揚替アラームが表示されている場合を例示したものである。なお、揚替アラームが表示された変圧器は揚替作業が実施されて容量の大きな変圧器に交換されるが、交換後の変圧器の管理手法に関する情報は初期値である「kW法」となる。
【0044】
以上説明した第1実施形態の変圧器管理装置10によれば、コンピュータの処理負担を小さく抑えつつ変圧器の交換の要否を精度良く判定することができる。すなわち、所定期間内の総使用電力量は、所定期間内における需要家ごとの実際の使用電力量の総和であるため、総契約容量を求める場合に比べて手間がかる。しかし、変圧器管理装置10では、第1想定値が第1基準値T1(第1許容範囲)を超えた変圧器のみ、所定期間内の総使用電力量を利用して第2想定値を導出するため、すべての変圧器について所定期間内の総使用電力量を利用して第2想定値を導出する場合に比べて、総使用電力量を求める手間が軽減される。この結果、コンピュータの処理負担を小さく抑えることができる。また、変圧器管理装置10では、判定対象変圧器の第1想定値が第1基準値T1を超え、且つ、第2想定値が第2基準値T2(第2許容範囲)を超えた場合に揚替アラームを報知する。第2想定値は所定期間内の総使用電力量に基づいて導出された第2想定値を用いているため精度が高く、本来交換が不要なものまで交換が必要であると誤って報知してしまうおそれがほとんどない。
【0045】
また、第1想定値が第1基準値T1を超え、更に該第1基準値T1よりも大きな値に設定された上限値も超えていたならば、直ちに、揚替アラームを報知するため、コンピュータの処理負担が一層軽減される。すなわち、第1想定値が上限値を超える場合には、第2想定値を導出したとしてもその第2想定値は第2基準値T2を超えることがほとんどであるため、第2想定値を導出する手間をかけることなく、直ちに揚替アラームを報知する。これにより、コンピュータの処理負担が一層軽減される。
【0046】
更に、所定期間内の総使用電力量として、年間を通じて最も電力消費の多い1ヶ月間の総使用電力量を用いるため、例えば年間の総使用電力量を用いる場合に比べてデータ量が少なくなり、コンピュータの処理負担が軽減される。
【0047】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の変圧器管理装置10は、HDD24及び外部サーバ30に記憶されているデータが異なる点及び変圧器管理ルーチンの処理内容が異なる点以外は、図1と同様の構成である。そのため、第2実施形態の構成要素は第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略し、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0048】
第2実施形態では、変圧器に需要家の太陽光発電設備が接続(連系ともいう)されているか否かによって、第2想定値の導出方法を変える点が、第1実施形態とは異なる。そのため、外部サーバ30のストレージ32には、管理区域ごとに設置されている変圧器に関する情報として、第1実施形態で説明した情報の他に、変圧器に需要家の太陽光発電設備が連系されているか否かを表す情報が記憶されている。なお、需要家の太陽光発電設備が連系されている変圧器を有連系変圧器と表記し、需要家の太陽光発電設備が連系されていない変圧器を無連系変圧器と表記する場合がある。
【0049】
HDD24には、第1相関関係及び第2相関関係が保存されている。ただし、第2相関関係は、無連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量(単位:kWh)と無連系変圧器の想定最大電灯負荷電流(単位:A)との相関関係となっている。
【0050】
次に、こうして構成された変圧器管理装置10の動作について説明する。図6は、CPU21により実行される変圧器管理ルーチンのフローチャートである。なお、第2実施形態の変圧器ルーチンは、図4に示した第1実施形態の変圧器管理ルーチンと一部を除いて同じである。そのため、図6では、図4と異なる部分についてのみ示している。また、図4の変圧器管理ルーチンと同じ処理については同じステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0051】
この変圧器管理ルーチンでは、ステップS130でn番目の変圧器の管理手法がh法であると判定したとき、又はステップS180でn番目の変圧器について総使用電力量のデータが存在したときには、CPU21は、n番目の変圧器が有連系変圧器であるか否かを判定する(ステップS192)。具体的には、ストレージ32に記憶されたn番目の変圧器に関する情報として、その変圧器に需要家の太陽光発電設備が連系されているか否かを表す情報を取得し、取得した情報に基づいて判定を行う。なお、ステップS120において取得するn番目の変圧器に関する情報として、その変圧器に需要家の太陽光発電設備が連系されているか否かを表す情報を取得しておくものとしてもよい。
【0052】
そして、ステップS192でn番目の変圧器が有連系変圧器でないと判定したときには、ステップS200に進み、図4のステップS200以降の処理を行う。一方、n番目の変圧器が有連系変圧器であると判定したときには、n番目の変圧器に接続された各需要家の所定期間の総使用電力量に基づいて、これを補正した補正後総使用電力量を導出する(ステップS202)。
【0053】
ここで、有連系変圧器の総使用電力量を補正する理由について説明する。無連系変圧器では、ストレージ32に記憶されている所定期間の総使用電力量は需要家が実際に消費した電力量である総消費電力量と等しい。これに対し、有連系変圧器では、太陽光発電設備を設置している需要家における消費電力量は、変圧器を介して供給された電力量に相当する使用電力量と、当該太陽光発電設備から出力された電力を直接消費した電力量である自己消費電力量との和となる。すなわち、ストレージ32に記憶されている所定期間の総使用電力量には、この自己消費電力量が含まれていない。そこで、総使用電力量が需要家における総消費電力量、すなわち総使用電力量と総自己消費電力量との和として、補正後総使用電力量を導出するのである。なお、実際には変圧器の管理者が需要家の自己消費電力量を直接把握していない場合が多いため、第2実施形態では、以下の式(1)〜(3)が補正に用いる式として選択可能に記憶されており、そのいずれかを用いて、総使用電力量から補正後総使用電力量を導出するものとした。
【0054】
X2=X1+太陽光発電設備の総連系容量(単位:kW)×係数k1 (1)
X2=X1+総余剰電力購入量(単位:kWh) (2)
X2=X1+総余剰電力購入量(単位:kWh)×係数k2 (3)
(X2:補正後総使用電力量,X1:総使用電力量)
【0055】
式(1)において、「太陽光発電設備の連系容量」は、n番目の変圧器に連系されている太陽光発電設備の契約容量(発電容量,パネル容量ともいう)の総和である。また、係数k1は、太陽光発電設備の総連系容量から需要家の総自己消費電力量の推定値を算出するための値である。すなわち、「太陽光発電設備の総連系容量(単位:kW)×係数k1」が推定した総自己消費電力量に相当する。このような係数k1は、例えば実測データに基づいて経験的に定めた値を用いることができる。なお、式(1)で補正後総使用電力量を導出する場合には、管理区域ごとに設置されている変圧器に関する情報として、変圧器の太陽光発電設備の総連系容量をストレージ32に記憶しておき、ステップS120でn番目の変圧器における太陽光発電設備の総連系容量を取得する。
【0056】
式(2)において、総余剰電力購入量とは、太陽光発電設備が発電した電力量のうち当該太陽光発電設備を設置している需要家が使用しなかったため買い取った余剰電力量の総和を意味する。言い換えると、太陽光発電設備で発電した電力量の総和から、総自己消費電力量を差し引いた分が総余剰電力購入量に相当する。すなわち、式(2)は、総余剰電力購入量が総自己消費電力量と同程度の値であるとの仮定に基づき、総自己消費電力量の推定を行って補正後総使用電力量を導出するものである。なお、総余剰電力購入量は、ひと月ごとに実施される余剰電力購入量測定用の電力量計の検針結果に基づいて導出される。なお、式(2)で補正後総使用電力量を導出する場合には、管理区域ごとに設置されている変圧器に関する情報として、変圧器の所定期間の総余剰電力購入量をストレージ32に記憶しておき、ステップS120でn番目の変圧器における総余剰電力購入量を取得する。
【0057】
式(3)は、式(2)を修正したものであり、「総余剰電力購入量×係数k2」を総自己消費電力量と推定して、補正後総使用電力量を導出するものである。ここで、係数k2=(自己消費電力量/余剰電力量)である。係数k2は、例えば太陽光発電設備の自己消費電力量及び余剰電力量の実測データを多数取得して、これに基づいて経験的に定めた値を用いることができる。なお、式(3)で補正後総使用電力量を導出する場合には、式(2)の場合と同様に総余剰電力購入量をストレージ32に記憶しておき、ステップS120で取得すればよい。
【0058】
なお、ここでは式(1)を用いて補正を行うことが選択されているものとして以降の説明を行う。ステップS202で式(1)により補正後総使用電力量を導出すると、CPU21は、補正後総使用電力量と総契約容量の増加分とから第2想定値を導出する(ステップS204)。この処理は、総使用電力量の代わりに補正後総使用電力量を用いる点以外は、ステップS200と同様である。すなわち、補正後総使用電力量から第2相関関係の式Y=aX+bを用いて想定最大電灯負荷電流を導出すると共に、判定対象変圧器の契約容量の増加分から第1相関関係の式y=αxを用いてその増加分に相当する想定最大電灯負荷電流を導出し、両方の値の和を第2想定値(単位:A)とする。なお、ステップS204では、ステップS200と同様に、n番目の変圧器に関する情報のうち、管理手法の情報を「kW法」から「h法」に更新する。
【0059】
そして、ステップS206で第2想定値を導出すると、ステップS210に進み、図4のステップS210以降の処理を行う。このように、判定対象の変圧器が有連系変圧器である場合には、総使用電力量を補正した補正後総使用電力量を導出し、この補正後総使用電力量と第2相関関係とを用いて、想定最大電灯負荷電流を導出するのである。
【0060】
なお、補正後総使用電力量は、式(1)からも分かるように必ず総使用電力量よりも大きい値となる。そのため、図7に示すように、第2相関関係の式Y=aX+bを用いて総使用電力量X1から導出した想定最大電灯負荷電流Y1と比べて、補正後総使用電力量X2から導出した想定最大電灯負荷電流Y2は大きい値となる。これにより、補正を行わない場合と比べて第2想定値が大きい値となるため、ステップS210での変圧器の揚替の要否判定をより安全側で行うことができる。これは、式(2)又は式(3)を補正に用いる式として選択した場合でも同様である。
【0061】
以上説明した第2実施形態の変圧器管理装置によれば、判定対象変圧器が有連系変圧器である場合には、総使用電力量を補正して、総使用電力量よりも値の大きい補正後総使用電力量に基づいて想定最大電灯負荷電流を導出するため、補正をしない場合と比較して、第2想定値に基づく判定では変圧器を交換する必要がないと判定されたにも関わらず実際は交換が必要であるという状態になることをより防止できる。言い換えると、変圧器の交換要否の判定の安全性をより高めることができる。
【0062】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の変圧器管理装置10は、HDD24に記憶されているデータが異なる点及び変圧器管理ルーチンの処理内容が異なる点以外は、第2実施形態と同様の構成である。そのため、第3実施形態の構成要素は第2実施形態と同じ符号を付してその説明を省略し、第2実施形態と異なる点について説明する。
【0063】
第3実施形態では、HDD24には、第1相関関係及び第2相関関係の他に、有連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量を補正した補正後総使用電力量(単位:kW)と変圧器の想定最大電灯負荷電流(単位:A)との相関関係(第3相関関係という)が保存されている。
【0064】
ここで、第3相関関係の一例を図8を用いて説明する。まず、有連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量s[kWh]と変圧器の最大電灯負荷電流T[A]との実測データを多数取得した。続いて、その実測データのうち総使用電力量sから、第2実施形態で説明した式(1)〜(3)のいずれかを用いて補正後総使用電力量Sを導出して、補正後総使用電力量Sと最大電灯負荷電流Tとの相関図を作成した。そして、その相関図から最小二乗法により式T=cS+dの式を求め、その式を第3相関関係としてHDD24に保存した。
【0065】
次に、こうして構成された変圧器管理装置10の動作について説明する。図9は、CPU21により実行される変圧器管理ルーチンのフローチャートである。なお、第3実施形態の変圧器ルーチンは、第2実施形態の変圧器管理ルーチンと一部を除いて同じである。そのため、図9では、第2実施形態の変圧器管理ルーチンと異なる部分についてのみ示している。また、図4,6の変圧器管理ルーチンと同じ処理については同じステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0066】
この変圧器管理ルーチンでは、ステップS192でn番目の変圧器が有連系変圧器であると判定したときには、CPU21は、n番目の変圧器に接続された各需要家の所定期間の総使用電力量に基づいて、これを補正した補正後総使用電力量を導出する(ステップS206)。この処理は、HDD24に保存した第3相関関係の導出で用いられている補正後総使用電力量Sと同様の方法で導出する点以外は、上述した第2実施形態のステップS202と同様である。例えば、第3相関関係の補正後総使用電力量Sが総使用電力量sに基づいて式(1)を用いて導出されている場合には、ステップS206でn番目の変圧器に接続された各需要家の所定期間の総使用電力量と式(1)とを用いて補正後総使用電力量を導出する。
【0067】
続いて、CPU21は、補正後総使用電力量と総契約容量の増加分とから第2想定値を導出する(ステップS208)。この処理は、第3相関係数の式を用いる点以外は、図6のステップS204と同様である。すなわち、補正後総使用電力量から第3相関関係の式T=cS+dを用いて想定最大電灯負荷電流を導出すると共に、判定対象変圧器の契約容量の増加分から第1相関関係の式y=αxを用いてその増加分に相当する想定最大電灯負荷電流を導出し、両方の値の和を第2想定値(単位:A)とする。なお、ステップS208では、ステップS204と同様に、n番目の変圧器に関する情報のうち、管理手法の情報を「kW法」から「h法」に更新する。
【0068】
次に、CPU21は、第2想定値が予め定められた第3基準値T3を超えているか否かを判定する(ステップS212)。第3基準値T3は、n番目の変圧器の上限電灯負荷電流を超えない範囲でその上限電灯負荷電流に近い値に設定されている。この第3基準値T3は、第1基準値T1と同じ値に設定されていてもよいが、より上限電灯負荷電流に近い値に設定されていてもよい。また、第2基準値T2と比べてより上限電灯負荷電流に近い値又は遠い値としてもよいし、第2基準値T2と同じ値に設定されていてもよい。例えば、第2相関関係の相関係数が第3相関関係の相関係数より値1に近い場合には、第3基準値T3を第2基準値T2と比べてより上限電灯負荷電流から遠い値に設定するなど、相関係数が値1に近いほど基準値をより上限電灯負荷電流に近い値に設定するものとしてもよい。
【0069】
そして、ステップS212で第2想定値が第3基準値T3を超えていなければ、図4のステップS220以降の処理を行い、第2想定値が第3基準値T3を超えていたならば、図4のステップS230以降の処理を行う。このように、判定対象の変圧器が有連系変圧器である場合には、総使用電力量を補正した補正後総使用電力量を導出し、この補正後総使用電力量と第3相関関係とを用いて、想定最大電灯負荷電流を導出するのである。
【0070】
ここで、判定対象の変圧器が有連系変圧器である場合に第3相関関係を用いる理由について説明する。図10は、上述した第3相関関係を求める際に用いた実測データの一例である。図からわかるように、有連系変圧器についての総使用電力量と最大電灯負荷電流の実測データは、第2相関関係の式Y=aX+bの式(図の破線)とは異なる相関関係(図の実線)となる場合がある。そこで、有連系変圧器については第2相関関係ではなく第3相関関係を用いて想定最大電灯負荷電流を導出して、導出の精度を向上させているのである。なお、第3相関関係は、図10に示した実測データを図8のように補正して求めたものであるため、自己消費電力量も考慮した相関関係となっている。
【0071】
以上説明した第3実施形態の変圧器管理装置10によれば、判定対象変圧器が有連系変圧器である場合には、有連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と有連系変圧器の想定最大電灯負荷電流との相関関係である第3相関関係を用いて想定電灯負荷電流を導出するため、有連系変圧器の想定電灯負荷を第2相関係数を用いて導出する場合と比べて、予測精度が向上する。すなわち、有連系変圧器と無連系変圧器とでは、総使用電力量と想定最大電灯負荷電流との相関関係が異なる可能性があるが、そのような場合でも予測精度を向上させることができる。また、第3相関関係は、総使用電力量を補正した補正後総使用電力量と想定最大電灯負荷電流との相関関係であるため、自己消費電力量も考慮して想定電灯電灯負荷電流を導出することができる。
【0072】
ここで、第1〜第3実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。第1〜第2実施形態のHDD24が本発明の第1及び第2相関関係記憶手段に相当し、第3実施形態のHDD24が本発明の第1〜第3相関関係記憶手段に相当し、第1〜第3実施形態のディスプレイ26が報知手段に相当し、第1〜第3実施形態のCPU21が第1及び第2想定値導出手段、第1及び第2判定手段並びに制御手段に相当する。なお、第1〜第3実施形態では、変圧器管理装置10の動作を説明することにより本発明の変圧器管理方法の一例も明らかにしている。
【0073】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0074】
例えば、上述した第1〜第3実施形態の変圧器管理ルーチン(図4参照)では、ステップS100で管理対象となるすべての変圧器を特定したあと、特定された変圧器につき順次揚替アラームの要否を判定したが、管理対象となる変圧器を1台ずつ特定し、その変圧器につき揚替アラームの要否を判定するようにしてもよい。この場合、1台の変圧器の特定は、例えばオペレーターがキーボード27を介して入力することにより行ってもよい。
【0075】
上述した第1〜第3実施形態の変圧器管理ルーチン(図4参照)では、ステップS150で第1想定値が第1基準値T1を超えた場合にステップS170に進んで第1想定値が上限値を超えるか否かを判定したが、このステップS170を省略してもよい。
【0076】
上述した第2実施形態の変圧器管理ルーチンでは、ステップS202で式(1)により補正後総使用電力量を導出しているが、判定対象変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量が、判定対象変圧器に連系された需要家の総自己消費電力量を該総使用電力量に加えた値に近づくよう補正するものとすれば、どのように補正してもよい。例えば、式(2)又は式(3)により導出してもよい。また、ステップS202で、有連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と有連系変圧器の想定電灯負荷との相関関係が、第2相関関係に近づくように、判定対象変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量の補正を行うものとしてもよい。例えば、第3実施形態で説明した第3相関関係の式T=cS+dを予め求めておき、この式の係数と第2相関関係の式Y=aX+bの係数とを用いて、以下の式(4)や式(5)により補正後総使用電力量を導出してもよい。こうすれば、補整後総使用電力量と想定最大負荷電流との相関関係が第2相関関係に近づくため、有連系変圧器について第2相関関係を用いて想定最大電灯負荷電流を導出した場合の想定最大電灯負荷電流の予測精度が高まる。
【0077】
X2=X1×a/c (4)
X2=X1×a/c+b−d (5)
(X2:補正後総使用電力量,X1:総使用電力量)
【0078】
上述した第3実施形態では、補正後総使用電力量と最大電灯負荷電流との関係を第3相関関係としているが、補正を行わずに総使用電力量と最大電灯負荷電流との関係を第3相関関係としてもよい。その場合には、ステップS206を省略して、ステップS208で総使用電力量と第3相関関係とから想定最大電灯負荷電流を導出すればよい。
【0079】
上述した第2,第3実施形態では、有連系変圧器に連系された太陽光発電設備の連系容量に関わらず、同じ方法で補正後総使用電力量や想定最大電灯負荷電流の導出を行っているが、連系容量により導出方法を変えてもよい。例えば、判定対象変圧器の連系容量が所定の容量範囲(例えば、0kW超過10kW未満)に含まれるか否かによって導出方法を変えてもよい。また、10kW未満,10kW超過20kW未満,20kW超過の3つの容量範囲のいずれに含まれるかによって導出方法を変えるなど、容量範囲が複数定められていてもよい。導出方法を変える具体例としては、例えば、第2実施形態では、判定対象変圧器の連系容量がいずれの容量範囲に含まれるかによって、式(1)〜(3)のうち異なる式を用いたり、同じ式を用いるが係数k1や係数k2を異なる値としたりして、補正後総使用電力量を導出してもよい。また、第3実施形態では、第3相関関係を容量範囲別に複数求めておくものとしてもよい。例えば、連系容量が10kW未満,10kW超過20kW未満,20kW超過のいずれであるかによって有連系変圧器をグループ分けし、各グループについて別々に実測データから補正後総使用電力量と最大電灯負荷電流との相関図を作成して、各グループについて最小二乗法により相関関係を導出しておき、第3相関関係としてHDD24に記憶しておいてもよい。この場合、ステップS208では、第3相関関係のうち判定対象の有連系変圧器の連系容量に対応するグループの相関関係を用いて、想定最大電灯負荷電流を導出すればよい。なお、このようにグループ分けを行って、別々に実測データから導出した補正後総使用電力量と最大電灯負荷電流との相関関係の一例を図11に示す。なお、図11では、図10と同様に破線で第2相関関係の式を示している。また、補正後総使用電力量の導出は式(1)を用いている。図11(a)〜(c)からわかるように、連系容量によって相関関係が異なっており、この例では連系容量が大きいほど相関関係を表す直線の傾きが小さくなっていることがわかる。そのため、このように連系容量でグループ分けを行って別々に相関関係を導出して第3相関関係としておくことで、グループ分けを行わずに1つの相関関係のみ導出する場合と比べて想定最大電灯負荷電流を精度良く導出できる。なお、図11は一例であり、設備の状況,需要家の構成,地域性などの要因によって、例えば有連系変圧器における相関関係の直線が第2相関関係の直線よりも傾きが大きくなるなど、これとは異なる相関関係になる場合もあり得る。
【0080】
上述した第2,第3実施形態では、太陽光発電設備が連系されている変圧器を有連系変圧器とし、太陽光発電設備が連系されていない変圧器を無連系変圧器としたが、太陽光発電設備に限らず、例えば燃料電池,風力発電設備,ガスタービン(マイクロガスタービン)などの分散型電源が連系されている変圧器を有連系変圧器とし、分散型電源が連系されていない変圧器を無連系変圧器としてもよい。
【0081】
上述した第1〜第3実施形態では、変圧器管理装置10を外部サーバ30に接続して使用する場合を例示したが、外部サーバ30を省略し、変圧器管理装置10にストレージ32を直接接続してもよい。
【0082】
上述した第1〜第3実施形態では、揚替アラームをディスプレイ26に表示する場合について例示したが、揚替アラームを図示しないスピーカーを介して音声やブザー音などで出力してもよい。
【0083】
上述した第1〜第3実施形態では、柱上変圧器を管理する場合について例示したが、柱上変圧器以外の他の変圧器(例えば据置型など)も同様にして管理してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、複数の需要家に接続された変圧器を管理するのに利用される。
【符号の説明】
【0085】
10 変圧器管理装置、20 PC、21 CPU、22 ROM、23 RAM、24
HDD、25 ネットワークボード、26 ディスプレイ、27 キーボード、30 外部サーバ、32 ストレージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器に接続された需要家の総契約容量と前記変圧器の想定電灯負荷との相関関係を第1相関関係として記憶する第1相関関係記憶手段と、
変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と前記変圧器の想定電灯負荷との相関関係を第2相関関係として記憶する第2相関関係記憶手段と、
変圧器を交換する必要がある旨を報知する報知手段と、
総契約容量が変更された変圧器を判定対象変圧器とし、該判定対象変圧器の総契約容量に基づいて、前記第1相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷である第1想定値を導出する第1想定値導出手段と、
該第1想定値が予め定められた第1許容範囲を超えているか否かを判定する第1判定手段と、
前記第1想定値が第1許容範囲を超えていたならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量に基づいて前記第2相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、該導出した想定電灯負荷に、前記判定対象変圧器の総契約容量の増加分に対応する想定電灯負荷を前記第1相関関係から導出して加算し、該加算した後の合計値を第2想定値とする第2想定値導出手段と、
該第2想定値が予め定められた第2許容範囲を超えているか否かを判定する第2判定手段と、
前記第2想定値が第2許容範囲を超えていたならば、前記判定対象変圧器を交換する必要がある旨が報知されるよう前記報知手段を制御する制御手段と、
を備えた変圧器管理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1想定値が第1許容範囲を超え、更に該第1許容範囲よりも大きな値に設定された上限値も超えていたならば、直ちに、前記判定対象変圧器を交換する必要がある旨が報知されるよう前記報知手段を制御する、
請求項1に記載の変圧器管理装置。
【請求項3】
前記所定期間は、年間を通じて最も電力消費の多い1ヶ月間に設定されている、
請求項1又は2に記載の変圧器管理装置。
【請求項4】
前記第2相関関係記憶手段は、需要家の分散型電源が連系されていない無連系変圧器について、該無連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と該無連系変圧器の想定電灯負荷との相関関係を前記第2相関関係として記憶する手段であり、
前記第2想定値導出手段は、前記第1想定値が第1許容範囲を超えていた場合に、前記判定対象変圧器が前記無連系変圧器であるならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量に基づいて前記第2相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、前記判定対象変圧器が需要家の分散型電源が連系されている有連系変圧器であるならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量を補正した補正後総使用電力量を導出し、該補正後総使用電力量に基づいて前記第2相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、該導出した想定電灯負荷に、前記判定対象変圧器の総契約容量の増加分に対応する想定電灯負荷を前記第1相関関係から導出して加算し、該加算した後の合計値を前記第2想定値とする手段であり、
前記第2想定値導出手段は、前記補正後総使用電力量を導出するに際して、前記判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量が、該判定対象変圧器に連系された需要家の総自己消費電力量を該総使用電力量に加えた値に近づくように補正を行う手段である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の変圧器管理装置。
【請求項5】
前記第2相関関係記憶手段は、需要家の分散型電源が連系されていない無連系変圧器について、該無連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と該無連系変圧器の想定電灯負荷との相関関係を前記第2相関関係として記憶する手段であり、
前記第2想定値導出手段は、前記第1想定値が第1許容範囲を超えていた場合に、前記判定対象変圧器が前記無連系変圧器であるならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量に基づいて前記第2相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、前記判定対象変圧器が需要家の分散型電源が連系されている有連系変圧器であるならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量を補正した補正後総使用電力量を導出し、該補正後総使用電力量に基づいて前記第2相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、該導出した想定電灯負荷に、前記判定対象変圧器の総契約容量の増加分に対応する想定電灯負荷を前記第1相関関係から導出して加算し、該加算した後の合計値を前記第2想定値とする手段であり、
前記第2想定値導出手段は、前記補正後総使用電力量を導出するに際して、有連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と該有連系変圧器の想定電灯負荷との相関関係が、前記第2相関関係に近づくように、前記判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量の補正を行う手段である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の変圧器管理装置。
【請求項6】
前記第2想定値導出手段は、前記補正後総使用電力量を導出するに際して、前記判定対象変圧器に連系された分散型電源の連系容量が所定の第1容量範囲に含まれないときには、該連系容量が該第1容量範囲に含まれるときとは異なる方法で前記総使用電力量の補正を行う手段である、
請求項4又は5に記載の変圧器管理装置。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の変圧器管理装置であって、
前記第2相関関係記憶手段は、需要家の分散型電源が連系されていない無連系変圧器について、該無連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と該無連系変圧器の想定電灯負荷との相関関係を前記第2相関関係として記憶する手段であり、
需要家の分散型電源が接続されている有連系変圧器について、該有連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量と該有連系変圧器の想定電灯負荷との相関関係を第3相関関係として記憶する第3相関関係記憶手段、
を備え、
前記第2想定値導出手段は、前記第1想定値が第1許容範囲を超えていた場合に、前記判定対象変圧器が前記無連系変圧器であるならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量に基づいて前記第2相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、前記判定対象変圧器が前記有連系変圧器であるならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量に基づいて前記第3相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、該導出した想定電灯負荷に、前記判定対象変圧器の総契約容量の増加分に対応する想定電灯負荷を前記第1相関関係から導出して加算し、該加算した後の合計値を前記第2想定値とする手段であり、
前記第2判定手段は、前記補正後総使用電力量を導出するに際して、前記第2想定値が前記第2許容範囲を超えているか否かを判定し、前記判定対象変圧器が前記有連系変圧器であるならば、前記第2想定値が予め定められた第3許容範囲を超えているか否かを判定する手段であり、
前記制御手段は、前記第2判定手段が前記判定により前記第2許容範囲を超えているか又は前記第3許容範囲を超えていると判定をしたならば、前記判定対象変圧器を交換する必要がある旨が報知されるよう前記報知手段を制御する手段である、
変圧器管理装置。
【請求項8】
前記第3相関関係記憶手段は、前記有連系変圧器について、該有連系変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量が該有連系変圧器に連系された需要家の総自己消費電力量を該総使用電力量に加えた値に近づくよう補正した補正後総使用電力量と、該有連系変圧器の想定電灯負荷と、の相関関係を前記第3相関関係として記憶する手段であり、
前記第2想定値導出手段は、前記補正後総使用電力量を導出するに際して、該判定対象変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量を補正した前記補正後総使用電力量を導出し、該補正後総使用電力量に基づいて前記第3相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出する手段である、
請求項7に記載の変圧器管理装置。
【請求項9】
前記第3相関関係記憶手段は、分散型電源の連系容量が所定の第1容量範囲に含まれる有連系変圧器と、分散型電源の連系容量が該第1容量範囲に含まれない有連系変圧器とで別々に求めた複数の前記相関関係を、前記第3相関関係として記憶している手段であり、
前記第2想定値導出手段は、前記第3相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出するに際して、該第3相関関係のうち該判定対象変圧器に連系された分散型電源の連系容量に対応する前記相関関係を用いる手段である、
請求項7又は8に記載の変圧器管理装置。
【請求項10】
(a)総契約容量が変更された変圧器を判定対象変圧器とし、該判定対象変圧器の総契約容量に基づいて、変圧器に接続された需要家の総契約容量と変圧器の想定電灯負荷との相関関係である第1相関関係から該判定対象変圧器の想定電灯負荷である第1想定値を導出するステップと、
(b)該第1想定値が予め定められた第1許容範囲を超えているか否かを判定するステップと、
(c)前記第1想定値が第1許容範囲を超えていたならば、該判定対象変圧器に接続された需要家の所定期間内の総使用電力量に基づいて、変圧器に接続された需要家の前記所定期間内の総使用電力量と変圧器の想定電灯負荷との相関関係である第2相関関係から前記判定対象変圧器の想定電灯負荷を導出し、該導出した想定電灯負荷に、前記判定対象変圧器の総契約容量の増加分に対応する想定電灯負荷を前記第1相関関係から導出して加算し、該加算した後の合計値を第2想定値とするステップと、
(d)該第2想定値が予め定められた第2許容範囲を超えているか否かを判定するステップと、
(e)前記第2想定値が第2許容範囲を超えていたならば、前記判定対象変圧器を交換する必要がある旨を報知するステップと、
を含む変圧器管理方法。
【請求項11】
前記ステップ(c)では、前記第1想定値が前記第1許容範囲を超え、更に該第1許容範囲よりも大きな値に設定された上限値も超えていたならば、直ちに、前記判定対象変圧器の容量を変更する必要がある旨を報知する、
請求項10に記載の変圧器管理方法。
【請求項12】
コンピュータに、請求項10又は11に記載の変圧器管理方法を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−44858(P2012−44858A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149887(P2011−149887)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】