説明

変圧器鉄心

【課題】変圧器鉄心は、製品の運搬などの際、できるだけ運搬コスト低減させる検討がなされている。しかし仕様を満足させて、鉄心重量を低減することは容易ではない。また鉄心構造によっては脚と継鉄との接続部に突起部が構成され、そこに著しく電界が集中する可能性がある。この事により絶縁耐力が低下し、その対策の為に課電部との間に十分な絶縁距離を確保しなければならず、機器が大型化する可能性があった。
【解決手段】変圧器鉄心において、脚と継鉄とで構成する少なくとも1箇所の接合部において、巻線が巻きまわされている脚の磁束密度以上にならない範囲に於いて、前記接合部の角部を一部カットしたことを特徴とする変圧器鉄心。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器鉄心の重量低減と電界集中低減に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に変圧器の鉄心は、側脚、中央脚、そして脚同士を磁気的に連結する継鉄で構成されている。そして前記脚に巻き回された巻線を主要素として構成されている。一例として図4に、三相三脚変圧器の巻線と鉄心部分だけを抜き出して示した。巻線10を巻回する中央脚100、側脚400、側脚401、前記の脚同士を磁気的に連結する継鉄200、継鉄300、継鉄201、継鉄301から構成されている。
【0003】
変圧器の鉄心は、例えば特許文献1のように同一方向性珪素鋼板等の鉄板を多数積層して構成されているものが多い。図4に示した側脚400及び側脚401は、鉄板を圧延方向に対して両端を45°に切断したものを積層しており、形状は台形である。中央脚100は、鉄板を圧延方向に対して両端部を45°にそれぞれ2箇所切断したものを積層しており、形状は六角形である。継鉄200、継鉄201は、鉄板を圧延方向に対して両端を45°に切断したものを積層しており、形状は台形である。継鉄300、継鉄301は、鉄板を圧延方向に対して一端を45°に切断し、他端は2箇所を45°に切断したものを積層しており、形状は五角形である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−13608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような鉄心構造では、側脚400と継鉄200との接合部8aには、突起部90が構成され、継鉄300と側脚401との接合部8bには突起部91が構成され、側脚401と継鉄201との接合部8cには突起部92が構成され、継鉄301と側脚400との接合部8dには、突起部93が構成される。
【0006】
そしてこのような鉄心構造を使用した三相三脚変圧器において、側脚400に巻き回された巻線10と、側脚401に巻き回された巻線10に180°位相の異なる電流が流れた場合の、鉄心中を流れる磁束500をシュミレーションしてみた。
【0007】
その結果、鉄心中を流れる磁束500は、前記接合部の内側に集中し、突起部90、突起部91、突起部92、突起部93の突起部先端付近には殆ど流れていないことが分かった。つまりこのような鉄心構造では、磁束の流れに影響しない突起部が存在していて、不必要に鉄心の重量を増加させていることが分かった。これらの突起部は、製品の運搬などの際、規格重量を超過する要因にもなり、運搬コストを増加させる可能性がある。
【0008】
また、このような突起部が形成されることにより、例えば突起部91の近傍に高圧リード600が配置された場合、突起部91に著しく電界が集中して絶縁耐力が低下し、絶縁破壊が生じる可能性がある。よって高圧リード600と突起部91との間は、十分な絶縁距離を確保する必要があり、そのために機器が大型化する可能性がある。
【0009】
以上のようなことから本発明では、変圧器の鉄心の重量を低減し、さらに鉄心の突起部における電界集中を低減して、運搬コスト及び機器の大型化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
複数の脚に巻線を巻回し、前記複数の脚同士を磁気的に接続する複数の継鉄とを有する変圧器鉄心において、前記脚と前記継鉄とで構成する少なくとも1箇所の接合部において、運転時に巻線が巻き回されている脚の磁束密度以上にならない範囲に於いて、前記鉄心の接合部の角部を一部カットしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運転時に巻線が巻き回されている脚の磁束密度以上にならない範囲に於いて、脚と継鉄の接合部の角部をカットするので、磁気損失を増加させずに鉄心の重量が低減できる。この事により、運搬コストの低減が可能となる。
【0012】
また、前記接合部の角部がカットされることにより突起部が無くなるので、仮に近傍に高電位部が配置されても電界が集中しにくく、その対策の為に絶縁距離を大きくとる必要がなくなり、ひいては機器の大型化を抑制することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例である三相三脚変圧器の鉄心構造を示す正面図である。
【図2】本発明で使用する鉄板の製作過程を説明する図である。
【図3】本発明の他の実施例である三相三脚変圧器の鉄心構造を示す正面図である。
【図4】従来の三相三脚変圧器の鉄心構造と鉄心中を流れる磁束の様子を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
本発明の第1の実施例を、図1を使って説明する。この図は、本発明を適用した三相三脚変圧器鉄心構造である。従来と同一部分は同符号で示している。主たる構成は、中央脚100、側脚2a、側脚2b、そして前記脚間を磁気的に結合する継鉄1a、継鉄1b、継鉄201及び継鉄301である。側脚2aは継鉄1aおよび継鉄301に接合され、側脚2bは継鉄1bおよび継鉄201とに接合されている。そして側脚2aと継鉄1aとの接合部8a及び側脚2bと継鉄1bとの接合部8bにおいては、接合部の角部がカットされた形状になっている。
【0015】
次にこのカットされた角部について説明する、まず側脚2aの幅をLとする。そして接合部8aに1辺がLの「仮の4角形」が存在すると考えてみる。すると「仮の4角形」の対角線の長さは、√(L+L)=√(2L)=√2Lとなる。つまり√2≒1.4なので、「仮の4角形」の対角線長は、一片の長さLの略1.4倍となる。
【0016】
ここで運転時の磁束を考えてみると、側脚2aには磁束500が流れている。接合部8aにおいても鉄心中の磁束の流れを妨げないためには、鉄心中の磁束密度が変わらなければ良い。つまり、接合部8aに於ける仮の4角形の対角線長が、巻線が巻き回されている側脚2aの脚幅と同等の長さが確保されていれば、磁束密度は増加しないことになる。つまり前記の「仮の4角形」の対角線長は略1.4Lなので、鉄心幅分のLを残すと、最大で0.4Lの突起部のカットが可能になるのである。
【0017】
図2で具体的に側脚2aを例にとって説明する。その他の側脚2b、継鉄1a、継鉄1bについては、側脚2aと同様の考え方なので詳細な説明は省略する。まず鉄板aの両端を点線で示したように45°に切断し、鉄板bを作成する。更に鉄板bの一端を先端から0.4Lの位置で、45°に切断し鉄板cを作成する。この鉄板cを複数枚製作して積層し、脚鉄2aを構成するのである。
【0018】
他の側脚2b、継鉄1a、継鉄1bも同様の考え方で鉄板を切断して積層し、それぞれを構成する。但し前記の側脚や継鉄はそれぞれ形状が異なるので、適宜切断箇所を調整して鉄板を切断し積層する。
【0019】
以下に簡単に鉄心の製作手順を説明する。まず側脚2a、側脚2b、中央脚100、継鉄301、継鉄201を図示しない鉄心起立台の上に、前記で切断したそれぞれの鉄板を公知の方法で積み上げて構成する。積み上げ完了後、巻線を挿入するために、前記の図示しない起立台を利用して鉄心を起立させる。鉄心を起立させた後、側脚2a、中央脚100、側脚2bに巻線をそれぞれ挿入する。そして、継鉄1a、継鉄1bを、前記起立させた脚の上に取り付けて、鉄心全体が構成される。
【0020】
なお運転時には、それぞれの脚や継鉄との接合部において、磁束移行時に鉄損や励磁電流などが大きくなる欠点がある。したがって、本発明においても特性改善を図る方法として、鉄心の接合部の鉄板を交互にずらして積み重ねて接合する、所謂ステップラップジョイントを採用するとより好ましい。またそれぞれの鉄心は、鉄板が積み上げられた後に、鉄心を起立させる際や運搬時の衝撃で崩れないように、バインド等で締め付けておくと作業が安全で容易となり効率向上が図れより好ましい。
【0021】
このような構成の鉄心では、図1に示したように両側鉄心の角部はカットされるが、運転時に鉄心中の磁束密度に影響を与えないので、磁気損失を発生させずに鉄心重量が低減でき、鉄心の運搬のコストを削減することができる。
【0022】
また接合部8bにおいては、仮に近傍に高圧リード600が配置されても、鉄心側に突起部が構成されないので、電界集中が発生しにくく、絶縁距離を大きく取る必要がなくなる。つまり、機器の大型化も抑制することが可能になる。
【0023】
本発明の第2の実施例を、図3を用いて説明する。実施例1との違いは、鉄心の4角を全てカットした構成としたことである。このような構成にすると、実施例1の効果に加えて更に重量低減が可能となり、更なる運搬コスト低減を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0024】
1a、1b、3a、3b・・・継鉄
2a、2b、4b、4b・・・脚
10・・・巻線
100・・・中央脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の脚に巻線を巻回し、前記複数の脚同士を磁気的に接続する複数の継鉄とを有する変圧器鉄心において、前記脚と前記継鉄とで構成する少なくとも1箇所の接合部において、運転時に巻線が巻きまわされている脚の磁束密度以上にならない範囲に於いて、前記接合部の角部を一部カットしたことを特徴とする変圧器鉄心。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−26532(P2013−26532A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161606(P2011−161606)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)