説明

変圧器

本発明は、平面プライマリワインディングと平面セカンダリワインディングとを備える変圧器12に関する。動作の間の熱拡散をサポートするために、各ワインディングが少なくとも1つの専用PCB30、40における基板に一体化される。PCB30、40は、非強磁性体かつ電気的な絶縁物質50により互いに分離される。物質50は、基板より好適に熱を伝達する。本発明は、斯かる変圧器12を有する装置にも等しく関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変圧器、及び、変圧器を有する装置、特にX線画像化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気負荷の中にはそれに電源を供給するために高電圧を必要とするものがある。医療用途におけるX線管は、マンモグラフィからコンピュータ断層撮影といった用途に関連して、例えば、15kVから160kVまでの加速電圧を通常必要とする。工業用途に対するX線管は、更に400kVまでの電圧を必要とする。供給される電力は、数W(ワット)から100kW以上にまで達することができる。
【0003】
高電圧は、利用可能な低入力電圧から高出力電圧を生成する高電圧変圧器を用いて得られることができる。
【0004】
通常高電圧変圧器は、約50kHzから約400kHzの動作周波数を持ち、通常フェライトコアであるコアを有する。コアにおいて、プライマリ及びセカンダリワインディング(winding:巻き線)が配置され、入力電圧が、プライマリワインディングの端子に与えられ、出力電圧がセカンダリワインディングの端子により与えられる。
【0005】
コアは、通常2つの脚(leg)を持つUコアまたは3つの脚を持つEコアのいずれかである。ワインディングは、コアの1つ又は複数の脚に配置され、更に、脚を接続するコアの接続部分に配置されることができる。
【0006】
従来技術においては、円形断面を持つワイヤが、変圧器のワインディングを実現するのに使用される。例えば、コアの第1の脚の周りにプライマリワインディングとして第1のコイルが配置され、一方、コアの第2の脚の周りにセカンダリワインディングとして第2のコイルが配置されることができるか、又は、両方のコイルがコアの同じ脚の周りにネストして(nested:入れ子状に)配置されることができる。
【0007】
ワイヤで作られるワインディングの代わりに、例えば、箔又は平面ワインディングが使用されることができる。平面ワインディングは、方形断面を持つフラットな帯で作られる1つ又は複数の巻き(turn)を有する。平面ワインディングは、結果として、その構造における低いワインディング容量と高い再使用性(reproducibility)とを生じさせる。
【0008】
変圧器の動作中に生じる磁場は、渦電流損失をもたらす。いずれのタイプのワインディングも、コンダクタに垂直な磁場であって、コンダクタの断面の平面に存在する磁場の要素に対して一層明確に反応する。
【0009】
ワイヤに基づくワインディングの場合、磁場の方向ではなく特に磁場の振幅が損失にとって重要である。平面ワインディングの場合、方形の断面の長いエッジに垂直な磁場の要素のみが、損失にとって重要である。一方、このエッジに平行な磁場の要素はむしろ重要ではない。
【0010】
プライマリ又はセカンダリワインディングが、ワイヤに基づくプライマリ又はセカンダリワインディング用にデザインされる変圧器における平面ワインディングとして実現される場合、平面セカンダリワインディングの巻きにおける長いエッジに垂直な磁場であって、深刻な渦電流損失をもたらす磁場における重要な要素が通常存在することになる。
【0011】
C. Quinn、K. Rinne、T. O'Donnell、M. Duffy及びC.O. Mathunaらによる文書「A Review of Planar Magnetic Techniques and Technologies」、Applied Power Electronics Conference and Exposition、2001、APEC 2001、Sixteenth Annual IEEE 2001、巻2、4-8 March 2001、117-1183頁は、全体的に平面な磁場構造を扱う。平面ワインディングを実現する技術として、プリント回路基板(PCB)、フレックス回路(flex circuit)及びスタンプドカッパ(stamped copper)が説明される。PCBは、平面ワインディングを実現するのにかなり繰り返して生産可能なものとして示される。低プロファイルのEコア及び4層PCBから作られる通常のPCB平面磁気変圧器が与えられ、そこでは、8つのプライマリ巻きが2つのセカンダリ巻きの間にサンドイッチされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
斯かるPCBは、熱放散が弱いという不都合点を持つ。セカンダリワインディングは、セカンダリワインディングの巻きの間にサンドイッチされるプライマリワインディングからの熱除去を妨げる。更に、高電圧変圧器に対して、斯かるPCBは、低電圧プライマリワインディングと高電圧セカンダリワインディングとの間の電気絶縁効果が弱いという不都合点を持つ。
【0013】
本発明の目的は、改善された変圧器及び変圧器を有する改善された装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本目的は、基板上に平面プライマリワインディングを備える少なくとも第1のPCBと、基板上に平面セカンダリワインディングを備える少なくとも第2のPCBとを有する変圧器を用いて実現される。そこでは、第1のPCB及び第2のPCBが、非強磁性体及び電気的な絶縁物質により互いに分離される。その物質は、基板より効率よく熱を伝達する。
【0015】
本目的は、斯かる変圧器を含む装置、特に、斯かる変圧器を含むX線画像化装置で更に実現される。
【0016】
本発明は、PCB技術を用いて実現される変圧器のワインディングが単一のPCBに一体化される必要は必ずしもないというアイデアから生じている。その代わりに、変圧器の平面プライマリ及びセカンダリワインディングが、互いに電気的に接触しない少なくとも2つの分離したPCBを用いて実現されることができる。PCBは、非強磁性かつ電気的に絶縁性のある任意の物質により互いに分離されることができる。更に、その物質は、PCBの基板より好適に熱を伝達するべきである。このため、その物質は、基板の熱伝導率を超える熱伝導率を持つか、又は対流熱伝達を可能にすることができる。
【0017】
本発明の利点は、分離したPCBをプライマリ及びセカンダリワインディングに用いることが、適切に選択された分離物質を介して、改善された熱拡散を可能にする点にある。本発明の更なる利点は、分離したPCBをプライマリ及びセカンダリワインディングに用いることが、それらの間の改善された電気的絶縁性を可能にする点にある。本発明の更なる利点は、分離したPCBをプライマリ及びセカンダリワインディングに用いることが、変圧器の構築を容易かつ柔軟なものにする点にある。プライマリワインディング及びセカンダリワインディングは、分離したPCB上に配置されるので、例えば、プライマリ及びセカンダリワインディングの異なった組み合わせに対して、又は異なる絶縁性物質に対してといった異なるコンステレーション(constellation)で同じPCBが使用されることができる。
【0018】
更に、本発明は、PCBを用いて実現される平面ワインディングの利点を維持する。平面ワインディングを使用することにより、変圧器の構築は、コンパクトで、小さく、軽量なものとすることができる。更に、ワイヤに基づくワインディング配置と比較して、ワインディング容量が減らされることができる。PCBの使用は、電気的な絶縁特性を改善する。なぜなら、高電圧ワインディングは完全にカプセル化される(encapsulated)ことができるからである。更にPCBの使用は、ワインディング配置を特に再使用可能なものにする。プライマリ及びセカンダリワインディングの両方に対してPCBを用いることは、更に変圧器の両方の側面における複雑なワインディング構造を実現することを可能にする。
【0019】
本発明の一つの実施形態において、例え、これは必要条件ではないことに留意しなければならないとしても、少なくとも2つのPCB間の物質は液体を有する。斯かる気体又は液体の物質を用いることは、全体の熱伝達が対流熱伝達により明示的に増加されることができるという利点を持つ。例えば、その液体は、PCB間の隙間における六フッ化硫黄であるか、又は例えば変圧器油を有することができる。
【0020】
変圧器が、高電圧用途に適していることを確実にするために、プライマリ及びセカンダリワインディング間で特定の絶縁距離が保たれなければならない。大きな絶縁距離は、結果として、2つのPCB間の小さな強度の電場を生じさせ、それは、これらのPCB間の絶縁物質にかかる圧力を制限する。変圧器がコアを有する場合、かつ、そのコアが接地されているか又は別の理由でコアとワインディングとの間に電位差が存在する場合、このワインディングとコアとの間にも同様に特定の絶縁距離が保たれなければならない。
【0021】
しかし、大きな絶縁距離は、所与の望ましいワインディングの有効断面に対して、それらが変圧器の全体の大きさを増加させるという不都合点を持つ。
【0022】
ワインディングの1つの末端の電位が例えば接地により減じられる場合、必要な絶縁距離が減少されることができる。こうして、有効ワインディング断面が増加され、ワインディング抵抗が減らされる。
【0023】
本発明の一つの実施形態において、変圧器は、PCBが周りに配置される少なくとも1つのコア脚を備えるコアを有する。少なくとも1つのPCBでのワインディングは、変圧器の動作の間、高電位を備えるワインディング部分とより低位の電位を備えるワインディング部分とを有する。すると、低電位のワインディング部分は、高電位を備えるワインディング部分ではなく、少なくとも1つのコア脚に近いこのPCB内に配置されることができる。
【0024】
ワインディングにおける渦電流損失は、例えば、特殊なワインディング配置により減じられることができる。ワインディングが通過するコア窓の中心を通る水平線及び垂直線に対して、ワインディングが対称的に配置される場合、ワインディング断面の長いエッジに垂直な磁場要素はほとんど存在しないことになり、その結果、渦電流損失は減じられる。
【0025】
少なくとも1つのPCBが複数の層を有する場合、かつ、このPCBのワインディングがその層に分布する複数の巻きを有する場合、これは、PCBが周りに配置されるコア脚に平行な画像化線に対称的に巻きを配置することにより実現されることができる。
【0026】
変圧器は、プライマリワインディングのために1つ以上のPCBを、及び/又はセカンダリワインディングのために1つ以上のPCBを有することもできる。PCBの数を増加させることは、一層好適な熱拡散を可能にする。幾つかのPCBが利用可能であるとき、好ましくは、異なる電位を備えるPCBの側面がPCB間の空間における電場強度をできるだけ小さく生じさせるような態様で、それらは配置される。
【0027】
本発明の一つの実施形態において、変圧器は、プライマリワインディングのための1つ以上のPCBと、セカンダリワインディングのための1つ以上のPCBと、PCBが通過する窓を備えるコアとを有する。するとコア窓は、複数の窓部分に分割されることができ、PCBはコア窓においてだけでなく、各窓部分においても対称的な態様で配置されることができる。幾つかの窓部分内での対称性のため、すべてのプライマリワインディングが並列に接続され、かつすべてのセカンダリワインディングも並列に接続される場合、電流はより均一に配分されることになる。更に、最大磁場強度が減らされ、その結果、渦電流損失が一層少なくなる。
【0028】
本発明は、特に、低入力電圧から高出力電圧を生成する高電圧変圧器といった任意の変圧器で採用されることができる。本発明による変圧器は、更に、変圧器を必要とする任意の用途に対して採用されることができる。例えば、X線管に対する高電圧を生成するのに使用されることができる。例えば心血管及びコンピュータ断層撮影に対して、採用されるX線システムは、限られた大きさ及び重さを持つ強力な高電圧生成器を必要とする。
【0029】
本発明による装置は、例えば、負荷に対する電力を供給することができる電力供給装置とすることができる。また、例えば、負荷及び更にその負荷に対する電力を供給する電源供給部を有する装置とすることができる。本発明による装置は、例えば、マンモグラフィ装置、X線撮影装置、又はコンピュータ断層撮影(CT)装置といったX線画像化装置とすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明のこれら及び他の側面が、以下の実施形態より明らかとなり、及びその実施形態を参照して詳細に説明されることになる。
【0031】
図1は、本発明が実現されることができる装置の概略的なブロック図である。その装置は、負荷とその負荷に対する電力を供給する電力供給部とを含む。その装置は、負荷14としてX線管を持つX線画像化装置とすることができる。
【0032】
電力供給部は、第1の整流器10、インバータ11、高電圧変圧器12及び第2の整流器13を有する。第1の整流器10は、AC電源により供給される線間電圧Vinを整流する。整流された電圧は、整流された電圧を高周波方形波長電圧に変換するインバータ11に与えられる。高電圧変圧器12は、この方形波長電圧をより高い電圧レベルまで上昇させる。第2の整流器13は、高レベル直流電圧Voutを得るため、結果として生じる高レベル交流電圧を整流する。高レベル直流電圧Voutは、例えばX線管といった負荷14に与えられる。
【0033】
図1における高電圧変圧器12の第1の実施形態が図2に与えられる。
【0034】
図2は、Eコア20を備える変圧器12の概略的な断面図である。コア20は、例えばフェライト物質から作られる。第1のPCB30の基板に形成される平面プライマリワインディングは、コア20の中脚の周りに配置される。分離した第2のPCB40の基板に形成される平面セカンダリワインディングも、第1のPCB30の上にあるコア20の中脚の周りに一様に配置される。第1のPCB30及び第2のPCB40は、非強磁性体の電気的に絶縁性のある、熱伝達の良い物質の層50により互いに分離される。層50は、基板の熱伝導率を超える高い熱伝導率を持つことが原因か、又は対流熱伝達を可能にすることが原因で、PCB30、40に採用される基板より好適に熱を伝達する。層50は、例えば、変圧器油を有することができるか、又は六フッ化硫黄で満たされた隙間により実現されることができる。絶縁層50を提供することは、変圧器12が使用状態にあるとき発熱するワインディングを冷やすことを可能にする。プライマリ及びセカンダリワインディングが、基本的に各コア窓の真中を通る垂直線に対して対称的であるならば、図2における点線付きの矢印で示されるように、漏れ磁界は水平で、ワインディングの巻きの長いエッジに対して平行である。結果として、PCB40のセカンダリワインディングにおける渦電流損失は最小化される。
【0035】
変圧器12を構築するために、まず、プライマリワインディングを備えるPCB30がコア20の中脚に取り付けられる。そして、絶縁層50が、PCB30の隣にあるコア20の中脚に取り付けられ、最後に、セカンダリワインディングを備えるPCB40が、絶縁層50の隣にあるコア20の中脚に取り付けられる。
【0036】
単一のプライマリワインディング及び単一のセカンダリワインディングの代わりに、複数のプライマリ及びセカンダリワインディングが採用されることができる。複数のプライマリ及び/又はセカンダリワインディングは、特に、コア窓における水平方向の対称性に加えて垂直方向の対称性を実現するために採用されることができる。
【0037】
図3から図6は、Uコア21及びそのUコア21の窓において水平方向の対称性を持つワインディングを有する変圧器12の概略的な断面図である。
【0038】
図3の変圧器12において、セカンダリワインディングを備えるPCB40は、Uコア21の右脚に取り付けられる。Uコア21の窓において、PCB40は、窓の中心を通る垂直線に対して対称となるように、かつ、窓の中心を通る水平線Hに対して対称となるように取り付けられる。
【0039】
プライマリワインディングを備える第1のPCB31が、セカンダリワインディングを備えるPCB40の上のUコア21の右脚に取り付けられる。一方、プライマリワインディングを備える第2のPCB32は、セカンダリワインディングを備えるPCB40の下のUコア21の右脚に取り付けられる。プライマリワインディングを備えるPCB31、32は、窓の中心を通る垂直線に対して対称的であるように同様に配置される。更に、プライマリワインディングを備えるPCB31、32は、互いに同一であり、セカンダリワインディングを備えるPCB40に対して同じ距離に配置される。セカンダリワインディングを備えるPCB40と、プライマリワインディングを備えるPCB31、32との間の隙間は、絶縁物質としての変圧器油又は六フッ化硫黄で満たされる。
【0040】
第1のPCB31及び第2のPCB32のプライマリワインディングは、並列に接続される。その結果、コア窓におけるその対称性が原因で両方のプライマリワインディングに電流が均等に分割される。漏れ磁界は、図3における点線付きの矢印で示される。最大磁場強度は、図2の場合より小さく、そのことが結果としてセカンダリ側での低い渦電流損失を生じさせる。
【0041】
図4の変圧器12において、5つのPCB33、34、35、36、41、42がUコア21の右脚に取り付けられる。
【0042】
Uコア21の窓は、第1の画像化水平線Hにより、同じサイズの上部及び下部に分割される。
【0043】
セカンダリワインディングを備える第1のPCB41は、コア窓の上部の中央を通る水平線H1に対称的に配置される。プライマリワインディングを備える第1のPCB33が、セカンダリワインディングを備える第1のPCB41の上のコア窓の上部内に配置される。一方、プライマリワインディングを備える第2のPCB34は、セカンダリワインディングを備える第1のPCB41の下のコア窓の上部内に配置される。
【0044】
セカンダリワインディングを備える第2のPCB42は、コア窓の下部の中央を通る水平線H3に対して対称的に配置される。プライマリワインディングを備える第3のPCB35は、セカンダリワインディングを備える第2のPCB42の上のコア窓の下部内に配置される。一方、プライマリワインディングを備える第4のPCB36は、セカンダリワインディングを備える第2のPCB42の下のコア窓の下部内に配置される。
【0045】
すべてのPCB33、34、35、36、41、42は、コア21の窓の中心を通る垂直線に対して対称的であるよう更に配置される。
【0046】
プライマリワインディングを備えるPCB33、34、35、36は、互いに同一であり、セカンダリワインディングを備えるPCB41、42は、互いに同一である。更に、プライマリワインディングを備える各PCB33、34、35、36と、セカンダリワインディングを備える個別に隣接するPCB41、42との距離は、同じである。
【0047】
4つのプライマリワインディングはすべて、並列に接続される。その結果、コア窓における追加的な対称性により、コア窓において電流が均等に分割される。更に、最大磁場強度が一層削減され、結果として、セカンダリ側でより一層少ない渦電流損失を生じさせる。
【0048】
図5の変圧器12は、プライマリワインディングを備える第2及び第3のPCB34、35が、プライマリワインディングを備える単一のPCB37に結合される点を除けば、図4の変圧器に対応する。しかしながら、図4において、第2及び第3のPCB34、35間の隙間のおかげで、プライマリワインディングが媒体によって一層大きな程度冷却されることができる点は留意されなければならない。
【0049】
例えば、図4の変圧器12において、図6及び図7に説明されるように、プライマリ及びセカンダリワインディング間に必要とされる絶縁距離と、セカンダリワインディング及びコア21間に必要とされる絶縁距離とは、部分的に減じられることができる。
【0050】
図6の変圧器12は、基本的に図4の変圧器12と同じ構造をしている。しかしながら非接地のPCB41、42の代わりに、接地されたPCB43、44が、セカンダリワインディングのために与えられる。よりコア窓の中心に近い、PCB43、44のセカンダリワインディングにおける個別の末端45、46は、接地GNDに接続される。結果として、これらの末端45、46は、コア21に対してと同様、PCB34、35の個別の近接するプライマリワインディングに対して、他の末端47、48より短い隔離距離(isolation distance)を持つことができる。隔離距離の部分的な削減は、所与のコア窓サイズを持つPCB43及び44におけるセカンダリワインディングの有効断面を増加させることを可能にする。その結果、PCB33、34、35及び36のプライマリワインディングにおいて電流の不均一な分布が、その不均一分布は高損失をもたらすものだが、増加された断面により補償されることができる。
【0051】
図6において、セカンダリワインディングの有効断面を増加させるため、図4のPCB41及び42と比較して、PCB43及び44は、PCB34及び35の方向にそれぞれ長くされることがわかる。
【0052】
図7は、図6の変圧器12におけるPCB43の詳細を表す。そこでは、セカンダリワインディングの大きい有効断面を得るため、更にコア21のワインディングの距離が最適化される。
【0053】
図7は、PCB43の概略的な断面図である。更に、PCB43が取り付けられるコア21の右脚が示される。全体としてPCB43は、方形断面を持つ。PCB43は、方形断面を満たす絶縁性物質60によりカプセル化される多層ワインディングを有する。そのワインディングは、各層L1、...、L8において1つ又は複数の巻きを有する。巻きの数は、高層L1から低層L8に向けて増加し、その結果、最下層L8が、最高の巻き数を持ち、最上層L1が、最低の巻き数を持つ。各層L1、...、L8における巻きは、コア窓の中央を通る垂直線Vの周りに対称的に配置される。従って、最下層L8等におけるワインディングとコア脚との間の最短距離は、最上層L1等におけるワインディングとコア脚との間の最短距離より短い。全体としてPCB43がコア脚に対する一様な距離を持つとしても、結果として、最上層L1等におけるワインディングとコア脚との間より少ない絶縁性物質が、最下層L8等におけるワインディングとコア脚との間に存在する。そのワインディングは、最上層L1において第1の末端を持ち、最下層L8において第2の末端を持つ。最下のワインディング層L8における末端は、接地される(図示省略)。
【0054】
最下のワインディング層は接地されるので、それは、最上のワインディング層より低い電圧を持つ。結果として、それは、より高層よりもコア脚に対する短い絶縁距離を必要とする。すなわち、それは、コア脚のより近くに配置されることができる。これは、コア窓のより好適な利用及び減じられたワインディング抵抗を可能とする。にもかかわらず、コア窓における垂直方向の対称性は維持される。
【0055】
図6の変圧器12の第2のPCB44は、同一の態様で構築される。それは、水平方向に鏡像化されるだけである。
【0056】
図7に表されるPCBは、他の変圧器コンステレーションにおいても同様に採用されることができる。
【0057】
本発明の上述の実施形態は、本発明の非常に多様な可能な実施形態のいくつかのみを表すに過ぎないことを理解されたい。例えば、図2から図7のいずれかの変圧器において、プライマリワインディングとセカンダリワインディングが交換されることができる。更に、特許請求の範囲における参照符号は、特許請求の範囲を限定することを意図するものではなく、特許請求の範囲の容易な理解を促進するためのものに過ぎない。更に、特許請求の範囲における単語「comprising(有する)」は、他の構成要素又はステップを排除するものではないこと、及び特許請求の範囲における単語「a」又は「an」は、複数性を排除するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明が実現されることができる例示的な装置の概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による変圧器の概略的な断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による変圧器の概略的な断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態による変圧器の概略的な断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態による変圧器の概略的な断面図である。
【図6】本発明の第5の実施形態による変圧器の概略的な断面図である。
【図7】本発明の実施形態による変圧器の細部を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に平面プライマリワインディングを備える少なくとも1つの第1のプリント回路基板と、基板に平面セカンダリワインディングを備える少なくとも1つの第2のプリント回路基板とを有し、前記少なくとも1つの第1のプリント回路基板及び前記少なくとも第2のプリント回路基板が、非強磁性体かつ電気的に絶縁性のある物質により互いに分離され、前記物質は前記基板より好適に熱を伝達する、変圧器。
【請求項2】
前記物質が液体を有する、請求項1に記載の変圧器。
【請求項3】
前記プリント回路基板の少なくとも1つにおけるワインディングの1つの末端が接地される、請求項1に記載の変圧器。
【請求項4】
前記プリント回路基板が周囲に配置される少なくとも1つのコア脚を備えるコアを更に有し、前記プリント回路基板の少なくとも1つのワインディングが、前記変圧器の動作の間、より高電圧を備えるワインディング部分とより低電圧を備えるワインディング部分とを有し、前記低電圧を備えるワインディング部分は、前記高電圧を備えるワインディング部分より前記少なくとも1つのコア脚に近い前記少なくとも1つのプリント回路基板内に配置される、請求項1に記載の変圧器。
【請求項5】
前記プリント回路基板が周囲に配置される少なくとも1つのコア脚を備えるコアを更に有し、前記プリント回路基板の少なくとも1つが複数の層を有し、前記少なくとも1つのプリント回路基板のワインディングは、前記層に対して分布される複数の巻きを有し、前記巻きが、前記プリント回路基板が周囲に配置される前記コア脚に平行な画像化線に対称的に配置される、請求項1に記載の変圧器。
【請求項6】
少なくとも1つのコア窓における2つの側面を制限する少なくとも2つのコア脚を持つコアを更に有し、
− 前記平面プライマリワインディングを備える少なくとも1つの第1のプリント回路基板が、複数の第1のプリント回路基板を有し、
− 前記平面セカンダリワインディングを備える少なくとも1つの第2のプリント回路基板が、複数の第2のプリント回路基板を有し、
− 前記第1のプリント回路基板及び前記第2のプリント回路基板が、前記少なくとも2つのコア脚の第1の脚の周りに配置され、
− 前記少なくとも1つのコア窓が、前記少なくとも2つのコア脚の前記第1の脚に沿って複数の窓部分に分割され、前記第1のプリント回路基板及び前記第2のプリント回路基板は、前記複数の窓部分に分布され、及び、前記第1のプリント回路基板及び前記第2のプリント回路基板が、前記窓部分のそれぞれにおいて、前記少なくとも2つのコア脚の前記第1の脚に沿って配置される、個別の窓部分を半分に分割する個別の画像化線に本質的に対称的に配置される、請求項1に記載の変圧器。
【請求項7】
変圧器を含む装置であって、前記変圧器が、基板上に平面プライマリワインディングを備える少なくとも1つの第1のプリント回路基板と、基板上に平面セカンダリワインディングを備える少なくとも1つの第2のプリント回路基板とを有し、前記少なくとも1つの第1のプリント回路基板及び前記少なくとも1つの第2のプリント回路基板が、非強磁性体かつ電気的に絶縁性のある物質により互いに分離され、前記物質は前記基板より好適に熱を伝達する、装置。
【請求項8】
前記装置が、負荷に電源電圧を供給する電源供給装置である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が、負荷及び前記変圧器を含む電源供給部を有し、前記電源供給部は、前記負荷に電源電圧を供給する、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記装置がX線画像化装置であり、前記負荷はX線管である、請求項9に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2008−515183(P2008−515183A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533025(P2007−533025)
【出願日】平成17年9月19日(2005.9.19)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053064
【国際公開番号】WO2006/033071
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】