説明

変圧器

【課題】変圧器の冷却効率を低減することなくコイル導線の使用量を低減すると共に、変圧器の組立手間を低減することができるようにすること。
【解決手段】一次コイル3a1と二次コイル3a2とを混触防止板11を介して巻回した断面円形状の脚鉄心1aを三角状に配置し、各脚鉄心1aの上面と下面を継鉄心2a、2bで衝合連結してなる三相衝合型変圧器において、混触防止板11を、肉厚内に中空を形成した円筒体または絶縁処理した細い中空導体管を螺旋巻回した円筒体で形成し、その円筒体の中空に冷却用の流体を通流してコイル部を冷却し、冷却風を通流するためのコイル層間のスペーサを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器、詳細には変圧器の冷却に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一次コイルと二次コイルを巻回した断面円形状の脚鉄心をたとえば三角状に配置し、各脚鉄心の上面と下面を継鉄心で衝合連結してなる三相衝合型変圧器は周知である。図4〜図6は、このような三相衝合型変圧器の一例を示すもので、図5および図6において、1a、1b、1cは断面円形または擬似円形をなし、円形の中心にボルト挿通用の貫通孔を形成した脚鉄心、2aは外形三角形状の上部継鉄心、2bは外形三角形状の下部継鉄心、3aは脚鉄心1aに巻装した導線コイル部、3bは脚鉄心1bに巻装した導線コイル部、3cは脚鉄心1cに巻装した導線コイル部、4は容器、5は風洞板、6は排気扇、7は通風孔である。
【0003】
変圧器本体は、図6に示すように導線コイルを巻装した脚鉄心1a、1b、1cを三角状に配置し、三角状に配置された各脚鉄心1a、1b、1cの上下端面のそれぞれに、外形三角状の環状継鉄2a、2bが、各脚鉄心1a、1b、1cを貫通する図示しないボルトにより衝合固定されて構成されている。
【特許文献1】実開昭62−30317号公報
【特許文献2】特開昭48−57161号公報
【0004】
変圧器は、図5に示すように、この変圧器本体を容器4内に収納して構成されている。その容器内には変圧器本体を囲む穴を形成した風洞板5が配置され、容器4の上面には排気扇6が設けられている。容器4内に収納した変圧器本体は、排気扇6の駆動により容器4の下部側壁に設けた通風孔7から空気を導入し、その空気を風洞板5で案内して変圧器本体内を通流させ、その通流で変圧器本体は冷却される。
【0005】
図4は、この変圧器の脚鉄心1a、1b、1cに巻回した導線コイル部3a、3b、3cの構成を、脚鉄心1aを代表して示すもので、3a1は一次コイル、3a2は二次コイルで、一次コイル3a1および二次コイル3a2をそれぞれ2層巻とした場合を示している。8は絶縁紙、9は絶縁スペーサ、10は一次コイル3a1と二次コイル3a2との間を電気的に隔離する円筒状の銅板からなる混触防止板である。絶縁スペーサ9は脚鉄心1aの周方向に所定の間隔を隔てて複数は位置されており、隣接の絶縁スペーサ9間の、脚鉄心1aと平行して延びる間隙を冷却風の通路とし、この通路に通風孔7から導入した冷却風を通流させ、その通流で変圧器本体を冷却するようにされている。
【0006】
このように隣接の絶縁スペーサ9間の空隙に冷却風を通流する構成では、絶縁スペーサ9を脚鉄心1aと一次コイル3a1間、一次コイル3a1の層間、一次コイル3a1と二次コイル3a2間、二次コイル3a2の層間に配置しなければ冷却能力を高めることができず、必然的にコイル径が大きくなり、そのために導線の使用量が多く変圧器が大型化し、また、変圧器の組立においても多くの手間を要するといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題は、変圧器の冷却効率を低減することなくコイル導線の使用量を低減すると共に、変圧器の組立手間を低減することができるようにし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、断面円形状の脚鉄心に一次コイルと二次コイルとを混触防止板を介して巻回してなる変圧器において、前記混触防止板の肉厚内に冷却用の流体を通流する冷却媒体通流路を設けたことを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、一次コイルと二次コイルとの間に配置する混触防止板に冷却媒体通流路を形成し、その冷却媒体通流路に水や油などの冷却流体を通流するので、冷却能力が高められコイル層間に配置するスペーサを大幅に省くことができる。これにより、コイルの径を小さくすることができ、導線の使用量が低減され、また、変圧器を小型化すると共に、スペーサを省く分組立手間を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
変圧器の冷却効率を低減することなくコイル導線の使用量を低減すると共に、変圧器の組立手間を低減することができるようにする目的を、一次コイルと二次コイルとの間に配置する混触防止板に冷却媒体通流路を形成し、その冷却媒体通流孔に水や油などの冷却流体を通流することにより実現した。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明に係る変圧器の脚鉄心に巻回した導線コイル部の構成を示す断面図である。なお、図4に示す導線コイル部の構成と同一または対応する部分には同一の符号を付し、また、この実施例に示す変圧器の全体構成は図5および図6に示す三相衝合型変圧器と同様であり、変圧器の全体の構成の説明はここでは省略する。
【0012】
図1において、11は一次コイル3a1と二次コイル3a2との間に配置した混触防止板である。混触防止板11は、図2に示すように肉厚内部を中空とし、円周方向を分断する(誘導電流の発生を防止)が開口11bを形成した円筒体11aをなし、脚鉄心の1aの中心軸と平行する方向の上下端面に中空内と連通する開孔11c、11dが形成されている。このような円筒体11aは、たとえば周囲端部縁に低い凸部を形成した矩形状の銅板に、他の矩形状の銅板を凸部の上に貼り重ねて一体化し、一辺の凸部と、この凸部と対向する他辺の凸部のそれぞれにドリルなどで開孔11c、11dを形成し、これを円筒状に変形して作成される。なお、円筒体11aの肉厚内にドリルなどで複数の貫通孔を形成するようにしてもよい。
【0013】
この混触防止板を有する変圧器の運転時には、円筒体11aの下端面の開孔11dから水または油などの冷却された流体を円筒体11aの中空内部に注入し、また、中空内部に注入された流体は円筒体11aの上端面の開孔11cから排出する。この冷却流体の通流により円筒体11aは冷却され、その冷却により一次コイル3a1および二次コイル3aを冷却する。なお、図示しないが円筒体11aの上端面の開孔11cから排出された流体は冷却機を循環し、円筒体11aの下端面の開孔11dから注入するようにしている。
【0014】
図3は、他の実施例に係る混触防止板11の構成を示すもので、この実施例の混触防止板11は、絶縁処理した細い中空導体管11eを螺旋状に巻回して円筒体に形成されている。この場合、円筒体の上下端部で電位差が発生するため、螺旋状に巻回した中空導体管11eを上側円筒体11fと下側円筒体11gの巻数を同一にして二つに分け、上側円筒体11fに位置する中空導体管11eの巻き方向と下側円筒体11gに位置する巻き方向を逆方向に巻回し、中央部で電気的に接続している。これにより中空導体管11eを螺旋状に巻回して形成した円筒体の上下端部は同電位となり、混触防止板11として使用できる。
【0015】
なお、この実施例では、螺旋状に巻回した中空導体管11eを上側円筒体11fと下側円筒体11gの巻数を同一にして二つに分けているが、より多く分けるようにしてもよく、この場合、偶数個に分けると中空導体管11eを螺旋状に巻回して形成した円筒体の上下端部を同電位とすることができる。
【0016】
以上の説明は、一次コイルと二次コイルとを混触防止板を介して巻回した断面円形状の脚鉄心を三角状に配置し、各脚鉄心の上面と下面を継鉄心で衝合連結してなる三相衝合型変圧器における一脚の脚鉄心に巻回したコイル部の構成についての説明ものであるが、他の二脚の脚鉄心に巻回したコイル部も同様に構成される。また、本発明は、三相衝合型変圧器に限らず衝合型変圧器でない変圧器あるいは単相変圧器においても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る変圧器の脚鉄心に巻回した導線コイル部の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る変圧器の混触防止板の斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係る変圧器の他の混触防止板の側面図である。
【図4】従来の三相衝合型変圧器の脚鉄心に巻回した導線コイル部の構成を示す断面図である。
【図5】三相衝合型変圧器の説明図である。
【図6】三相衝合型変圧器の鉄心の配置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0018】
1a、1b、1c 脚鉄心
2a 2b 継鉄心
3a、3b、3c コイル
3a1 一次コイル
3a2 二次コイル
8 絶縁紙
9 絶縁スペーサ
11 混触防止板
11a 円筒体
11b 開口
11c、11d 開孔
11e 中空導体管
11f 上側円筒体
11g 下側円筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形状の脚鉄心に一次コイルと二次コイルとを混触防止板を介して巻回してなる変圧器において、前記混触防止板の肉厚内に冷却用の流体を通流する冷却媒体通流路を設けたことを特徴とする変圧器。
【請求項2】
混触防止板が、脚鉄心の中心軸と平行する方向の上下端面に内部の冷却媒体通流路に連通する通流開孔を有し、円周方向を分断する開口を形成した円筒体であることを特徴とする請求項1に記載の変圧器。
【請求項3】
混触防止板が、絶縁処理した細い中空導体管を螺旋巻回した円筒体であることを特徴とする請求項1に記載の変圧器。
【請求項4】
絶縁処理した細い中空導体管を螺旋巻回した円筒体が、巻数同数で互いに逆巻きに螺旋巻回した円筒体の偶数個からなり、隣接の該円筒体の端部を電気的に接続してなることを特徴とする請求項3に記載の変圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−206255(P2009−206255A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46064(P2008−46064)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】