変圧器
【課題】性能の向上を図ると共に、軽量化および製造コストの削減を図ることができる変圧器を提供する。
【解決手段】一次コイル10および二次コイル20と、一次コイル10または二次コイル20の少なくとも一方に配置された板状に形成されたコア30とを有し、コア30には、コイルが内部に収納される凹形状の導電体収納部31と、環状に形成された導電体収納部31の中央領域に配置された平板状の中央部32とが形成されている。導電体収納部31は、一次コイル10および二次コイル20のうちのコア30が配置された一方のコイルから、他方のコイルに向かって凹形状の開口が開いたものである。中央部32は、導電体収納部31における他方のコイル側の端部から、導電体収納部31における中央領域に向かって延びている。このような構成を採用することで、他方のコイルと、コアとの間の距離を縮めることができる。さらに、コアの体積を減らすことができる。
【解決手段】一次コイル10および二次コイル20と、一次コイル10または二次コイル20の少なくとも一方に配置された板状に形成されたコア30とを有し、コア30には、コイルが内部に収納される凹形状の導電体収納部31と、環状に形成された導電体収納部31の中央領域に配置された平板状の中央部32とが形成されている。導電体収納部31は、一次コイル10および二次コイル20のうちのコア30が配置された一方のコイルから、他方のコイルに向かって凹形状の開口が開いたものである。中央部32は、導電体収納部31における他方のコイル側の端部から、導電体収納部31における中央領域に向かって延びている。このような構成を採用することで、他方のコイルと、コアとの間の距離を縮めることができる。さらに、コアの体積を減らすことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器、特に、一次コイルおよび二次コイルの間に空隙を有する変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
一次コイル10および二次コイル20の間に空隙を有する変圧器では、図19に示すように、断面形状がE字状に形成されたE型コア30e(鉄芯または磁芯)に、例えば二次コイル20が巻かれ、一次コイル10に、二次コイル20が巻かれたE型コア30eを対向して配置している構成が知られている。しかし、E型コア30eを一体に形成しようとすると、製造が難しく、製造できたとしても製造コストが高くなるという問題があった。
【0003】
このような問題を解決する方法として、板状のコアを積層してE型コアを形成することにより、E型コアの製造を容易にすると共に、製造コストの低減を図る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
さらに、上述の特許文献1には、一体に形成されたE型コアと比較して小さな電力に対応したE型コアの態様として、コアをストライプ状に部分的に間引いた構成を有する変圧器も提案されている。このようにすることで、コアに用いられる材料を減らすことができ、変圧器の重量軽減を図ることができるという利点が得られる。
【0005】
また、E型コアは重量が嵩むという問題があるため、変圧器の重量を軽減することを目的として、平板状のコアを用いる構成が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。平板状のコア30pは、図20に示すように、二次コイル20に隣接する位置であって、一次コイル10との間で二次コイル20を挟む位置に配置されている。あるいは、一次コイルに隣接する位置であって、二次コイルとの間で一次コイルを挟む位置に配置されている(図示せず。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−120239号公報
【特許文献2】特開2008−87733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に記載されているようなE型コアでは、コアの体積が大きく磁気飽和現象が発生しにくいため、体積が小さく磁気飽和現象が発生するコアを備えた変圧器と比較して、E型コアを備えた変圧器の性能は良くなるという利点がある。しかしながら、E型コアは、コアの体積が大きいことから、コアの重量が重くなり、変圧器としての重量も重くなるという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献1に記載されているように、板状のコアを積層してE型コアを形成すると、板状のコア同士の接触面に空隙が形成されやすい。この空隙は磁気抵抗となるため、変圧器の性能が低下するおそれがある。
【0009】
その他に、特許文献1に記載されているように、コアをストライプ状に部分的に間引いた構成を採用した場合、コアを間引かない構成のコアと比較して、コアを間引いた割合に応じて変圧器の効率が低下する問題がある。コアの間引き率に応じて、使用(伝送)される電力が制限される場合には問題は発生しないが、使用される電力の制限を実施しない場合には、変圧器における損失が大きくなり、効率が低下する問題がある。
【0010】
その一方で、特許文献2に記載されているような平板状のコアを用いると、E型コアと比較して、コアの体積が小さく軽量化できるという利点がある。しかしながら、E型コアを用いた場合と比較して、対向して配置された平板状のコア同士の間隔である電磁ギャップが大きくなるため、変圧器の効率が低下する問題がある。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、性能の向上を図ると共に、軽量化および製造コストの削減を図ることができる変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の変圧器は、長尺、例えば線状に形成された導電体を巻いて形成された一次コイルおよび二次コイルと、一次コイルまたは二次コイルの少なくとも一方に配置された板状に形成されたコアとを有するものである。コアは、巻かれた導電体の束が内部に収納される凹形状の導電体収納部と、環状に形成された導電体収納部の中央領域に配置された平板状の中央部とが形成されたものである。
【0013】
導電体収納部は、一次コイルおよび二次コイルのうちのコアが配置された一方のコイルから、前述のコアが配置されていない他方のコイルに向かって凹形状の開口が開いたものである。導電体収納部における他方のコイル側の端部から、環状に延びる導電体収納部における中央領域に向かって平板状の中央部が延びている。
【0014】
このような構成を採用することで、本発明の変圧器に係るコアは、特許文献2に記載されているような平板状のコアと比較して、上述の他方のコイルと、コア(特に中央部)との間の距離である電磁ギャップを縮めることができる。さらに、本発明に係るコアは、板部材から形成された導電体収納部と中央部とから形成されているため、磁路に寄与しないコアの部分が削減され、特許文献1に記載されているようなE型コアと比較してコアの体積を減らすことができる。なお、本発明に係るコアを構成する板部材の板厚は、コアが磁気飽和しない範囲の厚さであって、磁束分布が均一になる厚さであることが望ましい。
【0015】
更に、導電体収納部における他方のコイル側の端部から外側に向かって、平板状に延びる鍔部が設けられていてもよい。このような構成を採用することで、本発明に係るコアは、鍔部が設けられていない場合と比較して、一次コイルおよび二次コイルの間に延びる磁束を効率よく集めることができ、本発明の変圧器における性能の向上を図ることができる。
【0016】
また、導電体収納部は、中央部と比較して、板厚が厚い板部材から構成されていてもよい。このように構成することで、本発明に係るコアは、電流が流れる導電体に近い位置に配置される導電体収納部において磁気飽和が発生することを防止できる。その一方で、導電体収納部と比較して磁気飽和しにくい中央部の板厚を薄くすることで、本発明に係るコアの軽量化を図ることができる。
【0017】
中央部には、これを構成する板状の部材を貫通する空隙部が設けられていてもよい。空隙部は、中央部に形成された貫通孔であってもよいし、本発明に係るコアを二分割するスリット状に形成されたものであってもよい。このように、中央部に空隙部を形成することで、本発明に係るコアの軽量化を図ることができる。さらに、中央部は、導電体収納部と比較して一次コイルおよび二次コイルの間に存在する磁束を集める効率が低いため、中央部に空隙部を形成しても、本発明に係るコアにおける誘起電圧の低下を抑制することができる。
【0018】
本発明に係るコアは、複数の板部材を板厚方向に積み重ねたものであり、複数の板部材のそれぞれには、板部材を分割するスリットが設けられ、スリットが異なる位置に配置されるように複数の板部材が積み重ねられていてもよい。このような構成を採用することで、コアの温度変化による伸び縮みした場合であっても、スリットの間隔により前述の伸び縮みが吸収される。そのため、コアを構成する板部材に働く圧縮応力や引張応力などを軽減することができ、コアの割れなどの発生を防止することができる。
【0019】
少なくとも対向する二辺を有する形状に導電体が巻かれた一次コイルおよび二次コイルを有し、かつ、対向する前述の対向する二辺が延びる方向において、二次コイルよりも一次コイルの寸法が長い場合には、二次コイル側に配置されたコアは、前述の対向する二辺に対して交差する方向に延びる複数のコア分割体を、前述の対向する二辺が延びる方向に間隔をあけて並んで配置したものであってもよい。
【0020】
このような構成を採用することで、コアを一体に構成する場合と比較して、比較的小さな複数のコア分割体からコアを構成するため、コアの製造に用いられる材料である板部材も比較的小さなものを用いることができる。大きな板部材を手配する場合と比較して、小さな板部材は手配が容易であり、かつ、価格も安いため、本発明の変圧器の製造にかかるコストを削減できる。
【0021】
なお、コア分割体を構成する板部材は、一体に形成されたコアを構成する板部材と比較して、コア分割体の配置間隔に応じて板厚が厚くされていることが望ましい。つまり、 間隔をあけて配置されたコア分割体によってコアを構成しても、一体に形成されたコアと比較して、同等の体積を有するように構成することが望ましい。例えば、前述の対向する二辺が延びる方向において、コア分割体の幅寸法と、配置間隔の寸法の比が1対1の場合には、コア分割体は、一体に形成されたコアと比較して、2倍の板厚に形成されていることが望ましい。このようにすることで、間隔をあけて配置されたコア分割体によってコアを構成しても、コアの性能低下を抑制することができる。
【0022】
同じく、少なくとも対向する二辺を有する形状に導電体が巻かれた一次コイルおよび二次コイルを有し、かつ、対向する前述の対向する二辺が延びる方向において、二次コイルよりも一次コイルの寸法が長い場合には、二次コイル側に配置されたコアにおける、前述の対向する二辺に対して交差する方向に延びる導電体収納部が、少なくとも中央部側の一部を残して外側を切り欠いた形状とされてもよい。
【0023】
このように、導電体収納部は、二次コイルよりも外側の部分を切欠いているため、本発明に係るコアの軽量化を図ることができる。さらに、二次コイルよりも外側の部分は、他の部分と比較して一次コイルおよび二次コイルの間に存在する磁束を集める効率が低いため、二次コイルよりも外側の部分を切欠いて導電体収納部を形成しても、二次コイルにおける誘起電圧の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の変圧器によれば、特許文献2に記載されているような平板状のコアと比較して、上述の他方のコイルと、コア(特に中央部)との間の距離である電磁ギャップを縮めることができる。さらに、本発明に係るコアは、板部材から形成された導電体収納部と中央部とから形成されているため、磁路に寄与しないコアの部分が削減され、特許文献1に記載されているようなE型コアと比較してコアの体積を減らすことができる。そのため、本発明の変圧器における性能の向上を図ると共に、変圧器の軽量化および製造コストの削減を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る変圧器の構成を説明する断面視図である。
【図2】図1の変圧器の全体構成を説明する平面視図である。
【図3】図1のコアの構成を説明する一次コイル側から見た図である。
【図4】図3のコアにおける他の実施例の構成を説明する一次コイル側から見た図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る変圧器の構成を説明する断面視図である。
【図6】図5のコアの構成を説明するコアを一次コイル側から見た図である。
【図7】鍔部のオーバーハング長Fと誘起電圧との関係を説明するグラフである。
【図8】図6のコアにおける他の実施例の構成を説明する一次コイル側から見た図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る変圧器の構成を説明する断面視図である。
【図10】本発明の第4の実施形態の変圧器の構成を説明する断面視図である。
【図11】図10の変圧器の全体構成を説明する平面視図である。
【図12】中央部の幅W2を基準とした空隙部の幅W4の割合と、二次コイルにおける誘起電圧との関係を説明するグラフである。
【図13】図11の空隙部が設けられたコアの他の実施例における全体構成を説明する平面視図である。
【図14】本発明の第5の実施形態の変圧器の構成を説明する断面視図である。
【図15】本発明の第6の実施形態の変圧器の全体構成を説明する平面視図である。
【図16】図15のコア分割体の間隔と、誘起電圧比との関係を説明するグラフである。
【図17】図15の変圧器の他の実施例の全体構成を説明する平面視図である。
【図18】本発明の第6の実施形態の変圧器の全体構成を説明する平面視図である。
【図19】従来のE型コアを有する変圧器の構成を説明する模式図である。
【図20】従来の平板状のコアを有する変圧器の構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る変圧器1ついて図1から図4を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る変圧器1の構成を説明する断面視図であり、図2は、図1の変圧器1の全体構成を説明する平面視図である。
【0027】
本実施形態の変圧器1は、図1および図2に示すように、一次コイル10に交流電力を供給し、二次コイル20から前述の供給された交流電力であって、変圧された交流電力を取り出すものである。言い換えると、一次コイル10に印可された電圧に対して異なる電圧が二次コイル20に誘起されるものである。なお、本実施形態では、二次コイル20にのみコア30が配置されている例に適用して説明するが、一次コイル10にもコアが配置されていてもよく、特に限定するものではない。
【0028】
変圧器1は、外部から交流電力が供給される一次コイル10と、前述の供給された交流電力を取り出す二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア30と、から主に構成されている。一次コイル10および二次コイル20は、銅などの導電性を有する材料からなる長尺な線状に形成された巻き線(導電体)を環状に巻いて形成されたものである。なお、一次コイル10および二次コイル20を構成する巻き線は、同じ組成を有する材料から形成されていてもよいし、異なる組成を有する材料から形成されていてもよく、特に限定するものではない。
【0029】
一次コイル10を構成する巻き線は、その両端が外部の電源(図示せず。)に交流電力の供給が可能につながれている。その一方で、二次コイル20を構成する巻き線は、その両端が、交流電力の供給を受ける外部機器に電力の供給が可能に接続されている。一次コイル10における巻き線の巻き数と、二次コイル20における巻き線の巻き数との比は、一次コイル10に供給される交流電力の電圧と、二次コイル20から供給される交流電力の電圧との比により定められるものである。
【0030】
一次コイル10と二次コイル20とは、巻き線が巻かれたコイルにおける軸線が延びる方向(図1の上下方向)に隣接して並んで配置され、かつ、両者は所定の間隔をあけて配置されている。ここで、所定の間隔としては、一次コイル10と二次コイル20とが、上述のコイルの軸線と直交する方向(図1の左右方向)へ相対移動しても、両者が物理的に接触しない間隔であって、二次コイル20およびコア30が、一次コイル10によって形成される磁束を受け取ることができる間隔であることが望ましい。
【0031】
図3は、図1のコア30の構成を説明するコア30を一次コイル10側から見た図である。
コア30は概ね矩形状に形成された板状の鉄芯または磁芯であり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア30は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。コア30を構成する板状の部材は、コア30が磁気飽和しない範囲の厚さであって、コア30の内部の磁束分布が均一になる厚さで形成されているとよい。コア30には、図1から図3に示すように、二次コイル20が収納される導電体収納部31と、コア30の中央領域を構成する中央部32と、が主に設けられている。本実施形態では、導電体収納部31および中央部32が一体に構成された例に適用して説明する。
【0032】
導電体収納部31は、内部に二次コイル20を形成する巻き線の束が収納されるものである。導電体収納部31は、板部材を断面が凹形状に形成すると共に、この凹形状が環状に延びて形成されたものである。さらに、導電体収納部31は、二次コイル20の側から一次コイル10の側に向かって、凹形状の開口が開くように配置されているものである。
【0033】
中央部32は、導電体収納部31における一次コイル10側の端部であって、巻き線が巻かれたコイルにおける軸線が含まれる領域(以下、「中央領域」と表記する。)の側の端部から、中央領域に向かって延びる平板状の部材である。本実施形態では、中央部32は、中央領域に全てにわたって延びる平板状の部材である例に適用して説明する。
【0034】
次に、上記の構成からなる変圧器1における働きについて説明する。
図1に示すように、外部に配置された電源から交流電力が一次コイル10に供給されると、一次コイル10を流れる交流電流により、一次コイル10の周囲には、図1の細線の矢印で示すように、時間的に強度が変動する磁束が形成される。磁束が形成された範囲には、二次コイル20およびコア30が配置されている。コア30は一次コイル10により形成された磁束を集める。
【0035】
ここで、本実施形態の変圧器1におけるコア30は、一次コイル10から中央部32までの距離Gが、図20に記載されているような平板状のコアが用いられた場合における一次コイル10からコアまでの距離gと比較して近いため、一次コイル10により形成された磁束をより効果的に集めることができる。
【0036】
そして、二次コイル20は、磁束強度の時間的な変動に伴い、電流値が時間的に変動する交流電流が誘起される。さらに、二次コイル20には、一次コイル10および二次コイル20における巻き線の巻き数比に応じて変圧された電圧が誘起される。
【0037】
上記の構成によれば、本実施形態の変圧器1に係るコア30は、図20に示す平板状のコアと比較して、一次コイル10と、コア30、特に中央部32との間の距離である電磁ギャップを縮めることができる。そのため、コア30は一次コイル10により形成された磁束を効果的に集めることができ、変圧器1の性能向上を図ることができる。例えば、図20に示す平板状のコアを備えた変圧器と比較して、本実施形態の変圧器1は、起電圧を約11%増加させることができる。
【0038】
さらに、本実施形態に係るコア30は、板部材から形成された導電体収納部31と中央部32とから形成されているため、磁路に寄与しないコアの部分が削減され、図19に記載されているようなE型コアと比較してコア30の体積を減らすことができる。そのため、コア30の軽量化を図ることができ、ひいては変圧器1の軽量化を図ることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、二次コイル20が概ね矩形状に巻かれ、コア30が概ね矩形状に形成された例に適用して説明したが、二次コイル20およびコア30の形状は、矩形状に限定することなく、円状、楕円状であってもよく、特に限定するものではない。
【0040】
図4は、図3のコア30における他の実施例の構成を説明する一次コイル10側から見た図である。
なお、コア30は、上述の実施形態のように、断面が凹形状に形成された導電体収納部31が環状に形成されたものであってもよいし、図4に示すように、導電体収納部31における対向する一対の辺に相当する部分(図4における左右方向の端辺に相当する部分)が、凹形状の外側の壁を省略したL形状に形成されたものであってもよい。
【0041】
特に、一次コイル10および二次コイル20が概ね矩形状に形成され、一次コイル10における矩形状の長辺の長さ(図4の左右方向の長さ)が、二次コイル20における対応する辺の長さ(図4の左右方向の長さ)よりも長い場合には、上述のように、コア30における図4の左右の端辺に相当する部分である短辺の断面形状を、概ねL字状に形成することが好ましい。
【0042】
このようにすることで、コア30における磁束を集める効率の低下を抑制しつつ、コア30の軽量化を図ることができる。つまり、上述のような構成において、磁束を集める効率が他の場所と比較して低いコア30の短辺は、断面形状を凹形状から断面積が小さな概ねL字状に変更しても、磁束を集める効率の低下量が小さく、コア30の全体における磁束を集める効率の低下は抑制される。その一方で、コア30の体積を小さくすることができるため、コア30の軽量化を図ることができる。
【0043】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図5から図8を参照して説明する。本実施形態の変圧器の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、コアの形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図5から図8を用いてコアの形状等について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0044】
図5は、本実施形態の変圧器101の構成を説明する断面視図である。
本実施形態の変圧器101は、一次コイル10と、二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア130と、から主に構成されている。
【0045】
コア130は、第1の実施形態のコア30と同様に、概ね矩形状に形成された板状の鉄芯または磁芯であり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア130は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。コア130を構成する板状の部材は、コア130が磁気飽和しない範囲の厚さであって、コア130の内部の磁束分布が均一になる厚さで形成されているとよい。
【0046】
図6は、図5のコア130の構成を説明するコア130を一次コイル10側から見た図である。
コア130には、図5および図6に示すように、導電体収納部31と、中央部32と、コア130の周囲に配置された鍔部133と、が主に設けられている。鍔部133は、環状に延びる導電体収納部31における一次コイル10側の端部であって、コア130の外側の端部から、外側に向かって延びる平板状の部材である。本実施形態では、導電体収納部31、中央部32、および、鍔部133が一体に構成された例に適用して説明する。
【0047】
上記の構成からなる変圧器101における働きについては、第1の実施形態と概ね同様であるため、その説明を省略する。
ここで、鍔部133における導電体収納部31から外側へ突出する寸法であるオーバーハング長Fと、変圧器101における誘起電圧の向上との関係を解析結果に基づいて説明する。
【0048】
図7は、鍔部133のオーバーハング長Fと誘起電圧との関係を説明するグラフである。
図7における横軸は、二次コイル20のコイル幅Wを基準として、鍔部133における導電体収納部31から外側へ突出する寸法であるオーバーハング長Fを百分率で表したものであり、縦軸は、オーバーハング長Fが0%、つまり、鍔部133が設けられていない第1の実施形態のコア30を備えた変圧器1における誘起電圧を基準とした、誘起電圧の割合を表したものである。
【0049】
図7のグラフでは、鍔部133のオーバーハング長Fが増加すると、変圧器101における誘起電圧の割合も増加する傾向が示されている。誘起電圧を増加させることを目的として、オーバーハング長Fを増加させる方法が考えられるが、鍔部133のオーバーハング長Fは、鍔部133も含めたコア130全体の幅寸法TWによって制約される。
【0050】
例えば、鍔部133における導電体収納部31から外側へ突出する寸法であるオーバーハング長Fが、二次コイル20のコイル寸法Wに対して30%程度である場合には、本実施形態のコア130を備える変圧器101は、誘起電圧において、第1の実施形態のコア30を備える変圧器1と比較して17%程度の向上を図ることができ、さらに、図20に示す平板状のコアを備える変圧器と比較して30%程度の向上を図ることができる。
【0051】
上記の構成によれば、本実施形態に係るコア130は、鍔部133が設けられていない第1の実施形態のコア30場合と比較して、一次コイル10および二次コイル20の間に延びる磁束を効率よく集めることができ、本実施形態の変圧器101における性能の向上を図ることができる。
【0052】
言い換えると、鍔部133を設けることにより、一次コイル10により形成された磁束における磁気抵抗を小さくすることができ、漏れ磁束を低減することができる。その結果、本実施形態の変圧器101における性能の向上を図ることができる。
【0053】
図8は、図6のコア130における他の実施例の構成を説明する一次コイル10側から見た図である。
なお、コア130は、上述の実施形態のように、鍔部133がコア130の周囲に形成されたものであってもよいし、図8に示すように、コア130における対向する一対の端辺にのみ鍔部133を設けてもよい。
【0054】
特に、一次コイル10および二次コイル20が概ね矩形状に形成され、一次コイル10における矩形状の長辺の長さ(図8の左右方向の長さ)が、二次コイル20における対応する辺の長さ(図8の左右方向の長さ)よりも長い場合には、上述のように、コア130における図8の上下の端辺に相当する部分である長辺にのみ鍔部133を設けることが好ましい。
【0055】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図9を参照して説明する。本実施形態の変圧器の基本構成は、第2の実施形態と同様であるが、第2の実施形態とは、コアの形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図9を用いてコアの形状等について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0056】
図9は、本実施形態の変圧器201の構成を説明する断面視図である。本実施形態の変圧器201は、一次コイル10と、二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア230と、から主に構成されている。
【0057】
コア230は、第1の実施形態のコア30と同様に、概ね矩形状に形成された板状の鉄芯または磁芯であり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア230は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。
【0058】
コア230には、図9に示すように、二次コイル20が収納される導電体収納部231と、コア230の中央領域を構成する中央部232と、コア230の周囲に配置された鍔部233と、が主に設けられている。
【0059】
導電体収納部231は、第1の実施形態の導電体収納部31と同様に、内部に二次コイル20を形成する巻き線の束が収納されるものである。中央部232は、第1の実施形態の中央部32と同様に、導電体収納部231における一次コイル10側の端部であって、中央領域側の端部から、中央領域に向かって延びる平板状の部材である。鍔部233は、第2の実施形態の鍔部133と同様に、環状に延びる導電体収納部231における一次コイル10側の端部であって、コア230の外側の端部から、外側に向かって延びる平板状の部材である。
【0060】
本実施形態のコア230では、導電体収納部231を構成する板部材の板厚t1が、中央部232を構成する板部材の板厚t2、および、鍔部233を構成する板部材の板厚t3よりも厚く形成されている点が、第1の実施形態および第2の実施形態のコアと異なっている。
【0061】
なお、中央部232を構成する板部材の板厚t2と、鍔部233を構成する板部材の板厚t3とは、コア230における磁束分布が均一になればよく、例えば両者が同じ厚さであってもよいし、異なる厚さであってもよい。さらに、中央部232を構成する板部材の板厚t2は、第1の実施形態および第2の実施形態の中央部32と同じ厚さに形成されていてもよいし、薄く形成されていてもよい。同様に、鍔部233を構成する板部材の板厚t3も、第2の実施形態の鍔部133と同じ厚さに形成されていてもよいし、薄く形成されていてもよい。
【0062】
上記の構成によれば、本実施形態に係るコア230は、電流が流れる巻き線に近い位置に配置される導電体収納部231において磁気飽和が発生することを防止できる。
例えば、第2の実施形態に係る変圧器101のコア130では、コア130の厚み当たりの電流(2次電流)を350Aターンrms/mmで通電した場合、コア130は磁気飽和する。コア130の透磁率が低下することによる誘起電圧の低下が発生した場合や、二次コイル20に繋がれる回路(2次側回路)として共振回路が構成された場合、インダクタンスの変動により、二次コイル20および二次側回路を流れる2次電流が安定しないなどの問題が生じる。
【0063】
これに対して本実施形態に係るコア230は、二次コイル20に流れる2次電流による磁束が集中するコイル周辺に配置される導電体収納部231のみ、コア230の板厚を厚くしている。そのため、コア230において磁気飽和の発生が抑制され、かつ、コア230における磁束分布が均一化される。さらに、磁束が集中する部分のみコア230の板厚を厚くしているため、コア230の全体の板厚を厚くする場合と比較して、コア230の重量増加を抑制することができる。
【0064】
また、コア230における磁束分布の均一化が図られると、コア230におけるヒステリシス損が主要因となる発熱が抑制される。磁束分布の均一化が図られると、コア230における磁束が部分的に集中する箇所の発生が抑制され、磁束の集中場所におけるヒステリシス損による発熱が抑制される。そのため、コア230における(局所的な)温度上昇が抑制され、温度上昇によるコイルにおける通電電流の制約が生じにくくなり、変圧器201の効率低下を抑制することができる。
【0065】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図10から図13を参照して説明する。本実施形態の変圧器の基本構成は、第3の実施形態と同様であるが、第3の実施形態とは、コアの形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図10から図13を用いてコアの形状等について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0066】
図10は、本実施形態の変圧器301の構成を説明する断面視図であり、図11は、図10の変圧器301の全体構成を説明する平面視図である。本実施形態の変圧器301は、図10および図11に示すように、一次コイル10と、二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア330と、から主に構成されている。
【0067】
コア330は、第3の実施形態のコア230と同様に、概ね矩形状に形成された板状の鉄芯または磁芯であり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア330は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。
【0068】
コア330には、二次コイル20が収納される導電体収納部231と、コア330の中央領域を構成する中央部232と、コア330の周囲に配置された鍔部233と、中央部232に形成された空隙部334と、が主に設けられている。
【0069】
空隙部334は、中央部232に形成された貫通孔であって、コア330の軽量化を目的として形成されるものである。本実施形態では、コア330の全体形状と同様に1つの矩形状の貫通孔として形成された例に適用して説明するが、空隙部334の形状は、矩形状に限られることなく、円状や楕円状に形成されていてもよい。さらに、中央部232に形成される空隙部334の数は、1つに限られることなく、複数であってもよい。
【0070】
ここで、空隙部334によるコア330の体積削減量と、二次コイル20における誘起電圧との関係を解析結果に基づいて説明する。具体的には、図11に示す中央部232の幅W2を基準とした空隙部334の幅W4の割合と、二次コイル20における誘起電圧との関係について説明する。
【0071】
図12は、中央部232の幅W2を基準とした空隙部334の幅W4の割合と、二次コイル20における誘起電圧との関係を説明するグラフである。
図12における横軸は、中央部232の幅W2を基準とした空隙部334の幅W4の割合を示したものであり、縦軸は、空隙部334の割合が0、つまり空隙部334が設けられていない第3の実施形態の二次コイル20における誘起電圧を基準とした、誘起電圧の割合を表したものである。
【0072】
図12のグラフでは、空隙部334の割合が0から1に向かって増加すると、二次コイル20における誘起電圧の割合が徐々に低下する傾向が示されている。例えば、空隙部334の割合を0.3、つまり、中央部232におけるコア330の体積を30%程度削減した場合、二次コイル20における誘起電圧は1%程度減少する。
【0073】
上記の構成によれば、中央部232に空隙部334を形成することで、本実施形態に係るコア330の軽量化を図ることができる。さらに、中央部232は、導電体収納部231と比較して一次コイル10および二次コイル20の間に存在する磁束を集める効率が低いため、中央部232に空隙部334を形成しても、二次コイル20における誘起電圧の低下を抑制することができる。
【0074】
図13は、図11の空隙部334が設けられたコア330の他の実施例における全体構成を説明する平面視図である。なお、上述の実施形態では、空隙部334は、中央部232にのみ設けられた例に適用して説明したが、図13に示すように、一次コイル10および二次コイル20が概ね矩形状に形成され、一次コイル10における矩形状の長辺の長さ(図13の左右方向の長さ)が、二次コイル20における対応する辺の長さ(図13の左右方向の長さ)よりも長い場合には、コア330を二分割するように空隙部334Aを設けて、コア330を図13の上下に二分割してもよい。
【0075】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について図14を参照して説明する。本実施形態の変圧器の基本構成は、第2の実施形態と同様であるが、第2の実施形態とは、コアの形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図14を用いてコアの形状等について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0076】
図14は、本実施形態の変圧器の構成を説明する断面視図である。
本実施形態の変圧器401は、図14に示すように、一次コイル10と、二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア430と、から主に構成されている。
【0077】
コア430は、第1の実施形態のコア30と同様に、概ね矩形状に形成された板状の鉄芯または磁芯であり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア430は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。
【0078】
コア430には、二次コイル20が収納される導電体収納部431と、中央部32と、鍔部133と、が主に設けられている。
導電体収納部431は、第1の実施形態の導電体収納部31と同様に、内部に二次コイル20を形成する巻き線の束が収納されるものである。導電体収納部431は、板部材を断面が凹形状に形成すると共に、この凹形状が環状に延びて形成されたものである。さらに、導電体収納部431は、二次コイル20の側から一次コイル10の側に向かって、凹形状の開口が開くように配置されているものである。
【0079】
本実施形態の導電体収納部431では、更に、凹形状における側板に挟まれた底板部432(図14の上側の部分)が、2枚の板部材を重ねて構成されている。底板部432を構成する板部材には、当該板部材を複数に分割する溝状のスリット433が形成されている。底板部432を構成する2枚の板部材は、それぞれに形成されたスリット433が異なる位置に配置されるように重ねられ、底板部432を構成している。
【0080】
本実施形態では、二次コイル20側(図14の下側)の板部材に、2本のスリット433が等間隔に形成され、外側(図14の上側)の板部材に、3本のスリット433が等間隔に形成されている。さらに、これらの板部材を重ねて、二次コイル20側の板部材に形成されたスリット433と、外側の板部材に形成されたスリット433が、交互に並んで配置されている例に適用して説明する。
【0081】
次に、本実施形態の変圧器401における特徴である、コア430の導電体収納部431における働きについて説明する。なお、変圧器401における他の働きについては、第1および第2の実施形態における働きと同様であるため、その説明を省略する。
【0082】
例えば、二次コイル20に大きな電流が流れる場合、コア430の鉄損による発熱が大きいため、コア430は熱膨張する。その後、二次コイル20における電流の流れが止まると、コア430における発熱が止まり、コア430は収縮する。このようなコア430における熱膨張や収縮は、導電体収納部431におけるスリット433の幅の拡大や縮小により吸収される。
【0083】
その一方で、二次コイル20側の板部材に形成されたスリット433と、外側の板部材に形成されたスリット433を交互に並んで配置されているため、導電体収納部431における磁界の磁路は、スリット433の空隙を通ることなく、言い換えるとスリット433を迂回して構成される。
【0084】
具体的には、磁界の磁路は、外側の板部材を通ることにより、二次コイル20側の板部材に形成されたスリット433を迂回し、二次コイル20側の板部材を通ることにより、外側の板部材に形成されたスリット433を迂回することができる。
【0085】
上記の構成によれば、コア430の温度変化による伸び縮みした場合であっても、スリット433の間隔によりコア430の伸び縮みが吸収される。そのため、コア430を構成する板部材に働く圧縮応力や引張応力などを軽減することができる。特に、コア430や二次コイル20などが、変圧器401を構成する筺体であるケース(図示せず。)に固定されている場合には、コア430に温度変化による圧縮応力や引張応力が強く働くが、本実施形態のコア430によれば、これらの応力を軽減することができる。そのため、本実施形態のコア430は、温度変化などによるコア430の割れなどの不具合発生を防止することができる。
【0086】
さらに、導電体収納部431における磁界の磁路は、スリット433を迂回して構成されるため、スリット433の空間が大きな磁気抵抗となることが防止される。そのため、本実施形態の変圧器401における効率の低下を抑制することができる。
【0087】
〔第6の実施形態〕
次に、本発明の第6の実施形態について図15および図16を参照して説明する。本実施形態の変圧器の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、コアの形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図15および図16を用いてコアの形状等について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0088】
図15は、本実施形態の変圧器501の全体構成を説明する平面視図である。
本実施形態の変圧器501は、図15に示すように、一次コイル10と、二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア530と、から主に構成されている。
【0089】
コア530は、概ね帯状に形成された板状の鉄芯または磁芯である複数のコア分割体530Aが間隔をあけて並んで配置されたものであり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア530は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。
【0090】
コア分割体530Aのそれぞれには、コア530全体として導電体収納部31および中央部32が設けられるように、導電体収納部31や中央部32の部分が設けられている。
本実施形態では、二次コイル20に対して一次コイル10は、長辺方向(図15における左右方向)の寸法が長く形成され、コア分割体530Aは、一次コイル10における前述の長辺方向に延びる一対の二辺(図15における上下の二辺)に対して、交差する方向、より好ましくは直交する方向に延びて配置されている。更に複数のコア分割体530Aは、上述の長辺方向(一対の二辺が延びる方向)に沿って、所定の間隔をあけて並んで配置されている。
【0091】
複数のコア分割体530Aが配置される所定の間隔と、コア分割体530Aを構成する板部材の板厚とは、磁気抵抗の増加を抑制するために、概ね比例するように設定されることが望ましい。言い換えると、上述の長辺方向(一対の二辺が延びる方向)に対して平行な面であり二次コイル20を通過する面(図15のA−A線)で切断した場合の断面視において、コア530の断面積が、第1の実施形態のコア30などと概ね等しくなるように、所定の間隔、および、板部材の板厚が設定されることが望ましい。さらには、上述の長辺方向に対して平行な面であり二次コイル20の間を通過する面(図15のB−B線)で切断した場合の断面視において、コア530の断面積が、第1の実施形態のコア30などと概ね等しくなるように、所定の間隔、および、板部材の板厚が設定されてもよい。
【0092】
本実施形態では、上述の長辺方向(一対の二辺が延びる方向)におけるコア分割体530Aの幅寸法と、同程度の間隔とされ、コア分割体530Aは、第1の実施形態のコア30と比較して、コア分割体530Aを構成する板部材の板厚が概ね2倍とされている例に適用して説明する。
【0093】
コア530を上述のように構成することで、コアを構成する板部材の板厚を増すことなく分割し、分割体の幅寸法と同程度の間隔をあけて配置した場合と比較して、変圧器501における誘起電圧等の性能低下を抑制することができる。しかしながら、後述するように、コア分割体530Aの配置間隔を増していくと、コア分割体530Aを構成する板部材の板厚を厚くしても、コア530における漏れ磁束が増加して誘起電圧低下する。
【0094】
図16は、図15のコア分割体530Aの間隔と、誘起電圧比との関係を説明するグラフである。
図16における横軸は、コア分割体530Aが配置されている間隔を示すものであり、縦軸は配置されている間隔が0mmである場合の誘起電圧を基準とした、誘起電圧比を示すものである。図16においては、配置されている間隔が0mmの時にコアを構成する板部材の板厚が3mmであり、間隔がその他の場合には板部材の板厚は6mmである。また、板部材の幅と、配置されている間隔とは同じであり、例えば、間隔が10mmの場合には板部材の幅も10mm、間隔が30mmの場合には板部材の幅も30mmである。言い換えると、間隔と板部材の幅との比率が1:1であり、間引き率は50%となっている。
【0095】
図16には、コア分割体530Aが配置されている間隔が増加すると、漏れ磁束が増加するため、誘起電圧が少しずつ低下する傾向が示されている。例えば、配置されている間隔が30mmの時には、誘起電圧の低下は1.5%程度となり、変圧器501において問題となる性能低下とはならない。
【0096】
なお、コア分割体530Aが配置されている間隔が増えるに比例して、コア530を構成する板部材の板厚を増加させ、コア530を構成する材料の体積が一定になるようにしてもよく、特に限定するものではない。
【0097】
上記の構成によれば、第1の実施形態のコア30のようにコアを一体に構成する場合と比較して、比較的小さな複数のコア分割体530Aからコア530を構成できるため、コア530の製造に用いられる材料である板部材も比較的小さなものを用いることができる。大きな板部材を手配する場合と比較して、小さな板部材は手配が容易であり、かつ、価格も安いため、本実施形態の変圧器501の製造にかかるコスト削減を図ることができる。
【0098】
また、第1の実施形態のコア30と比較して、コアを構成する板部材として板厚が厚いものを用いることができる。つまり、コアを一体に構成する場合に求められる板部材の板厚が、市場に流通している板部材における最小の板厚よりも薄い場合、市場から入手した板部材を研磨して、板厚を上述の求められる板厚まで薄くする必要があり、コアの製造に要するコストが高くなる問題がある。
【0099】
その一方で、本実施形態のコア530のように、コア分割体530Aを所定の間隔をあけて配置する構成では、コアを一体に構成する場合と比較して、板部材に求められる板厚を厚くすることができる。つまり、コア分割体530Aを構成する板部材の板厚を、市場に流通する板部材の板厚を概ね一致させることができ、上述の板部材を研磨する製造工程を省略または簡素化することができる。その結果、本実施形態の変圧器501の製造にかかるコスト削減を図ることができる。
【0100】
例えば、二次コイル20の巻き線に、800Aターンrms程度の電流を通電させる場合、一体に形成されたコアを構成する板部材の板厚が2mmでは磁気飽和するため、導電体収納部31の周囲で少なくとも3mmの板厚を確保する必要がある。その一方で、一体に形成されたコアの軽量化を図るために、板部材の板厚を薄くする必要があるため、最低限必要な板厚である3mmの板部材が選択される。しかしながら、コアを構成する部材であるフェライトの標準的な製作厚さが3mmよりも厚い場合、例えば5mm以上の場合に、3mmの板部材でコアを製作しようとすると、3mmよりも厚い材料、例えば5mmより厚い材料を研磨して3mm厚にする必要があった。
【0101】
その一方で、本実施形態のコア530のように、コア分割体530Aを所定の間隔をあけて配置する場合、コア分割体530Aを構成する部材の板厚を6mmと設定することが可能であり、上述のように、入手した部材を研磨して所望の板厚に加工する工程を省略、または、簡素化することができる。
【0102】
また、研磨工程を用いることなくコアの厚さを調整する方法として、特許文献1に記載されているように、方形の板部材を重ね合わせてコアを形成する方法も知られている。しかしながら、板部材を重ね合わせて張り合わせる場合、張り合わせ面の僅かな空隙によって、変圧器の性能が低下するという問題がある。それに対して、本実施形態のコア530は、板部材を張り合わせることなく形成されたコア分割体530Aから構成されているため、張り合わせ面の空隙によって、変圧器501の性能が低下することが防止される。
【0103】
さらに、コア分割体530Aを帯状(長方形状)に形成することにより、正方形状に形成する場合と比較して、コア530の大型化への対応が容易になる。コアの製作可能な大きさは、例えば、コアの形を整える整形台の形状や面積によって定まる。整形台の面の形状が丸型の場合、矩形に形成されるコアは、コアの対角線寸法が基準となって製作可能な大きさが定まる。この場合、コア分割体530Aを帯状に形成した場合、正方形状に形成した場合と比較して、長いコア分割体530Aを形成することができる。
【0104】
そのため、一次コイル10における一対の二辺(図15の上下の辺)の間隔の拡大に対して、帯状に形成したコア分割体530Aは、正方形状に形成されたコア分割体よりも対応が容易となる。また、コア分割体530Aの形状は同一であるため、一つの成型用の型を用いてコア分割体530Aを製作することができるため、コア分割体530Aを、容易に大量に製作することができ、コア530の製作コストの低減を図ることができる。
【0105】
図17は、図15の変圧器の他の実施例の全体構成を説明する平面視図である。
なお、上述の実施形態のように複数のコア分割体530Aが間隔をあけて並んで配置したコア530を用いてもよいし、図17に示すように、さらに、コア分割体530Aを二分割するように空隙部334Aを設けてコア530を二分割してもよい。
【0106】
〔第7の実施形態〕
次に、本発明の第7の実施形態について図18を参照して説明する。本実施形態の変圧器の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、コイルの形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図18を用いてコイルの形状等に説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0107】
図18は、本実施形態の変圧器601の全体構成を説明する平面視図である。
本実施形態の変圧器601は、図18に示すように、一次コイル10と、二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア630と、から主に構成されている。本実施形態では、二次コイル20に対して一次コイル10は、長辺方向(図18における左右方向)の寸法が長く(例えば半無限に)形成されている。
【0108】
コア630は、第1の実施形態のコア30と同様に、概ね矩形状に形成された板状の鉄芯または磁芯であり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア630は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。
【0109】
コア630には、二次コイル20が収納される導電体収納部631Aおよび導電体収納部631Bと、中央部32と、が主に設けられている。
導電体収納部631Aは、第1の実施形態の導電体収納部31と同様に、内部に二次コイル20を形成する巻き線の束が収納されるものである。導電体収納部631Aは、断面が凹形状に形成されていると共に、一次コイル10における前述の長辺方向に延びる一対の二辺(図18における上下の二辺)に沿って延びて配置されている。さらに、導電体収納部631Aは、二次コイル20の側から一次コイル10の側に向かって、凹形状の開口が開くように配置されているものである。
【0110】
導電体収納部631Bは、断面がL形状に形成されていると共に、前述の一対の二辺に対して交差する方向、より好ましくは直交する方向に延びて配置されている。言い換えると、導電体収納部631Bは、断面が凹形状に形成されていると共に、少なくとも中央部32側の一部を残し、外側を切り欠いた形状に形成されている。本実施形態では、コア630を平面視した場合において、導電体収納部631Bが二次コイル20を構成するコイル幅の概ね半分を覆う例に適用して説明する。なお、導電体収納部631Bが二次コイル20を覆う割合は、上述のように二次コイル20を構成するコイル幅の概ね半分であってもよいし、少なくとも二次コイル20を構成するコイル束の一部を覆えばよく、特に限定するものではない。
【0111】
次に、本実施形態の変圧器601における特徴であるコア630の働きについて説明する。なお、変圧器601における他の働きについては、第1の実施形態における働きと同様であるため、その説明を省略する。
【0112】
コア630における導電体収納部631Bの部分は、二次コイル20を横切る鎖交磁束M1の増加に寄与しないため、第1の実施形態のコア30ように、この部分にも断面が凹形状の導電体収納部31を形成しても、変圧器1の性能向上に寄与しない。さらに、二次コイル20の短辺(図18の上下方向に延びる辺)の外側のコア30が二次コイル20を鎖交しない磁路を構成するため、変圧器1の性能向上に寄与しない。
【0113】
その一方で、コア630における導電体収納部631Bの部分を完全になくした場合、二次コイル20を鎖交しない磁束が増加するため、二次コイル20に誘起される電圧が低くなり、変圧器601における性能が低下する。
【0114】
そこで、本実施形態のコア630のように、導電体収納部631Bによって二次コイル20のコイル束の概ね半分を覆うことにより、一次コイル10で発生する磁束のうち、導電体収納部631Bの近傍の磁束を、コア630に引き寄せて、二次コイル20を鎖交する磁束とすることができる。その結果、本実施形態の変圧器601は、第1の実施形態の変圧器1と比較して、誘起電圧を若干増加させることができる。
【0115】
上記の構成によれば、導電体収納部631Bは、二次コイル20よりも外側の部分を切欠いているため、本実施形態のコア630の軽量化を図ることができる。さらに、二次コイル20よりも外側の部分は、他の部分と比較して一次コイル10および二次コイル20の間に存在する磁束を集める効率が低いため、二次コイル20よりも外側の部分を切欠いて導電体収納部631Bを形成しても、二次コイル20における誘起電圧の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0116】
1,101,201,301,401,501,601…変圧器、10…一次コイル、20…二次コイル、30,130,230,330,430,530,630…コア、31,231,431,631A,631B…導電体収納部、32,232…中央部、133,233…鍔部、334…空隙部、530A…コア分割体
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器、特に、一次コイルおよび二次コイルの間に空隙を有する変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
一次コイル10および二次コイル20の間に空隙を有する変圧器では、図19に示すように、断面形状がE字状に形成されたE型コア30e(鉄芯または磁芯)に、例えば二次コイル20が巻かれ、一次コイル10に、二次コイル20が巻かれたE型コア30eを対向して配置している構成が知られている。しかし、E型コア30eを一体に形成しようとすると、製造が難しく、製造できたとしても製造コストが高くなるという問題があった。
【0003】
このような問題を解決する方法として、板状のコアを積層してE型コアを形成することにより、E型コアの製造を容易にすると共に、製造コストの低減を図る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
さらに、上述の特許文献1には、一体に形成されたE型コアと比較して小さな電力に対応したE型コアの態様として、コアをストライプ状に部分的に間引いた構成を有する変圧器も提案されている。このようにすることで、コアに用いられる材料を減らすことができ、変圧器の重量軽減を図ることができるという利点が得られる。
【0005】
また、E型コアは重量が嵩むという問題があるため、変圧器の重量を軽減することを目的として、平板状のコアを用いる構成が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。平板状のコア30pは、図20に示すように、二次コイル20に隣接する位置であって、一次コイル10との間で二次コイル20を挟む位置に配置されている。あるいは、一次コイルに隣接する位置であって、二次コイルとの間で一次コイルを挟む位置に配置されている(図示せず。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−120239号公報
【特許文献2】特開2008−87733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に記載されているようなE型コアでは、コアの体積が大きく磁気飽和現象が発生しにくいため、体積が小さく磁気飽和現象が発生するコアを備えた変圧器と比較して、E型コアを備えた変圧器の性能は良くなるという利点がある。しかしながら、E型コアは、コアの体積が大きいことから、コアの重量が重くなり、変圧器としての重量も重くなるという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献1に記載されているように、板状のコアを積層してE型コアを形成すると、板状のコア同士の接触面に空隙が形成されやすい。この空隙は磁気抵抗となるため、変圧器の性能が低下するおそれがある。
【0009】
その他に、特許文献1に記載されているように、コアをストライプ状に部分的に間引いた構成を採用した場合、コアを間引かない構成のコアと比較して、コアを間引いた割合に応じて変圧器の効率が低下する問題がある。コアの間引き率に応じて、使用(伝送)される電力が制限される場合には問題は発生しないが、使用される電力の制限を実施しない場合には、変圧器における損失が大きくなり、効率が低下する問題がある。
【0010】
その一方で、特許文献2に記載されているような平板状のコアを用いると、E型コアと比較して、コアの体積が小さく軽量化できるという利点がある。しかしながら、E型コアを用いた場合と比較して、対向して配置された平板状のコア同士の間隔である電磁ギャップが大きくなるため、変圧器の効率が低下する問題がある。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、性能の向上を図ると共に、軽量化および製造コストの削減を図ることができる変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の変圧器は、長尺、例えば線状に形成された導電体を巻いて形成された一次コイルおよび二次コイルと、一次コイルまたは二次コイルの少なくとも一方に配置された板状に形成されたコアとを有するものである。コアは、巻かれた導電体の束が内部に収納される凹形状の導電体収納部と、環状に形成された導電体収納部の中央領域に配置された平板状の中央部とが形成されたものである。
【0013】
導電体収納部は、一次コイルおよび二次コイルのうちのコアが配置された一方のコイルから、前述のコアが配置されていない他方のコイルに向かって凹形状の開口が開いたものである。導電体収納部における他方のコイル側の端部から、環状に延びる導電体収納部における中央領域に向かって平板状の中央部が延びている。
【0014】
このような構成を採用することで、本発明の変圧器に係るコアは、特許文献2に記載されているような平板状のコアと比較して、上述の他方のコイルと、コア(特に中央部)との間の距離である電磁ギャップを縮めることができる。さらに、本発明に係るコアは、板部材から形成された導電体収納部と中央部とから形成されているため、磁路に寄与しないコアの部分が削減され、特許文献1に記載されているようなE型コアと比較してコアの体積を減らすことができる。なお、本発明に係るコアを構成する板部材の板厚は、コアが磁気飽和しない範囲の厚さであって、磁束分布が均一になる厚さであることが望ましい。
【0015】
更に、導電体収納部における他方のコイル側の端部から外側に向かって、平板状に延びる鍔部が設けられていてもよい。このような構成を採用することで、本発明に係るコアは、鍔部が設けられていない場合と比較して、一次コイルおよび二次コイルの間に延びる磁束を効率よく集めることができ、本発明の変圧器における性能の向上を図ることができる。
【0016】
また、導電体収納部は、中央部と比較して、板厚が厚い板部材から構成されていてもよい。このように構成することで、本発明に係るコアは、電流が流れる導電体に近い位置に配置される導電体収納部において磁気飽和が発生することを防止できる。その一方で、導電体収納部と比較して磁気飽和しにくい中央部の板厚を薄くすることで、本発明に係るコアの軽量化を図ることができる。
【0017】
中央部には、これを構成する板状の部材を貫通する空隙部が設けられていてもよい。空隙部は、中央部に形成された貫通孔であってもよいし、本発明に係るコアを二分割するスリット状に形成されたものであってもよい。このように、中央部に空隙部を形成することで、本発明に係るコアの軽量化を図ることができる。さらに、中央部は、導電体収納部と比較して一次コイルおよび二次コイルの間に存在する磁束を集める効率が低いため、中央部に空隙部を形成しても、本発明に係るコアにおける誘起電圧の低下を抑制することができる。
【0018】
本発明に係るコアは、複数の板部材を板厚方向に積み重ねたものであり、複数の板部材のそれぞれには、板部材を分割するスリットが設けられ、スリットが異なる位置に配置されるように複数の板部材が積み重ねられていてもよい。このような構成を採用することで、コアの温度変化による伸び縮みした場合であっても、スリットの間隔により前述の伸び縮みが吸収される。そのため、コアを構成する板部材に働く圧縮応力や引張応力などを軽減することができ、コアの割れなどの発生を防止することができる。
【0019】
少なくとも対向する二辺を有する形状に導電体が巻かれた一次コイルおよび二次コイルを有し、かつ、対向する前述の対向する二辺が延びる方向において、二次コイルよりも一次コイルの寸法が長い場合には、二次コイル側に配置されたコアは、前述の対向する二辺に対して交差する方向に延びる複数のコア分割体を、前述の対向する二辺が延びる方向に間隔をあけて並んで配置したものであってもよい。
【0020】
このような構成を採用することで、コアを一体に構成する場合と比較して、比較的小さな複数のコア分割体からコアを構成するため、コアの製造に用いられる材料である板部材も比較的小さなものを用いることができる。大きな板部材を手配する場合と比較して、小さな板部材は手配が容易であり、かつ、価格も安いため、本発明の変圧器の製造にかかるコストを削減できる。
【0021】
なお、コア分割体を構成する板部材は、一体に形成されたコアを構成する板部材と比較して、コア分割体の配置間隔に応じて板厚が厚くされていることが望ましい。つまり、 間隔をあけて配置されたコア分割体によってコアを構成しても、一体に形成されたコアと比較して、同等の体積を有するように構成することが望ましい。例えば、前述の対向する二辺が延びる方向において、コア分割体の幅寸法と、配置間隔の寸法の比が1対1の場合には、コア分割体は、一体に形成されたコアと比較して、2倍の板厚に形成されていることが望ましい。このようにすることで、間隔をあけて配置されたコア分割体によってコアを構成しても、コアの性能低下を抑制することができる。
【0022】
同じく、少なくとも対向する二辺を有する形状に導電体が巻かれた一次コイルおよび二次コイルを有し、かつ、対向する前述の対向する二辺が延びる方向において、二次コイルよりも一次コイルの寸法が長い場合には、二次コイル側に配置されたコアにおける、前述の対向する二辺に対して交差する方向に延びる導電体収納部が、少なくとも中央部側の一部を残して外側を切り欠いた形状とされてもよい。
【0023】
このように、導電体収納部は、二次コイルよりも外側の部分を切欠いているため、本発明に係るコアの軽量化を図ることができる。さらに、二次コイルよりも外側の部分は、他の部分と比較して一次コイルおよび二次コイルの間に存在する磁束を集める効率が低いため、二次コイルよりも外側の部分を切欠いて導電体収納部を形成しても、二次コイルにおける誘起電圧の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の変圧器によれば、特許文献2に記載されているような平板状のコアと比較して、上述の他方のコイルと、コア(特に中央部)との間の距離である電磁ギャップを縮めることができる。さらに、本発明に係るコアは、板部材から形成された導電体収納部と中央部とから形成されているため、磁路に寄与しないコアの部分が削減され、特許文献1に記載されているようなE型コアと比較してコアの体積を減らすことができる。そのため、本発明の変圧器における性能の向上を図ると共に、変圧器の軽量化および製造コストの削減を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る変圧器の構成を説明する断面視図である。
【図2】図1の変圧器の全体構成を説明する平面視図である。
【図3】図1のコアの構成を説明する一次コイル側から見た図である。
【図4】図3のコアにおける他の実施例の構成を説明する一次コイル側から見た図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る変圧器の構成を説明する断面視図である。
【図6】図5のコアの構成を説明するコアを一次コイル側から見た図である。
【図7】鍔部のオーバーハング長Fと誘起電圧との関係を説明するグラフである。
【図8】図6のコアにおける他の実施例の構成を説明する一次コイル側から見た図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る変圧器の構成を説明する断面視図である。
【図10】本発明の第4の実施形態の変圧器の構成を説明する断面視図である。
【図11】図10の変圧器の全体構成を説明する平面視図である。
【図12】中央部の幅W2を基準とした空隙部の幅W4の割合と、二次コイルにおける誘起電圧との関係を説明するグラフである。
【図13】図11の空隙部が設けられたコアの他の実施例における全体構成を説明する平面視図である。
【図14】本発明の第5の実施形態の変圧器の構成を説明する断面視図である。
【図15】本発明の第6の実施形態の変圧器の全体構成を説明する平面視図である。
【図16】図15のコア分割体の間隔と、誘起電圧比との関係を説明するグラフである。
【図17】図15の変圧器の他の実施例の全体構成を説明する平面視図である。
【図18】本発明の第6の実施形態の変圧器の全体構成を説明する平面視図である。
【図19】従来のE型コアを有する変圧器の構成を説明する模式図である。
【図20】従来の平板状のコアを有する変圧器の構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る変圧器1ついて図1から図4を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る変圧器1の構成を説明する断面視図であり、図2は、図1の変圧器1の全体構成を説明する平面視図である。
【0027】
本実施形態の変圧器1は、図1および図2に示すように、一次コイル10に交流電力を供給し、二次コイル20から前述の供給された交流電力であって、変圧された交流電力を取り出すものである。言い換えると、一次コイル10に印可された電圧に対して異なる電圧が二次コイル20に誘起されるものである。なお、本実施形態では、二次コイル20にのみコア30が配置されている例に適用して説明するが、一次コイル10にもコアが配置されていてもよく、特に限定するものではない。
【0028】
変圧器1は、外部から交流電力が供給される一次コイル10と、前述の供給された交流電力を取り出す二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア30と、から主に構成されている。一次コイル10および二次コイル20は、銅などの導電性を有する材料からなる長尺な線状に形成された巻き線(導電体)を環状に巻いて形成されたものである。なお、一次コイル10および二次コイル20を構成する巻き線は、同じ組成を有する材料から形成されていてもよいし、異なる組成を有する材料から形成されていてもよく、特に限定するものではない。
【0029】
一次コイル10を構成する巻き線は、その両端が外部の電源(図示せず。)に交流電力の供給が可能につながれている。その一方で、二次コイル20を構成する巻き線は、その両端が、交流電力の供給を受ける外部機器に電力の供給が可能に接続されている。一次コイル10における巻き線の巻き数と、二次コイル20における巻き線の巻き数との比は、一次コイル10に供給される交流電力の電圧と、二次コイル20から供給される交流電力の電圧との比により定められるものである。
【0030】
一次コイル10と二次コイル20とは、巻き線が巻かれたコイルにおける軸線が延びる方向(図1の上下方向)に隣接して並んで配置され、かつ、両者は所定の間隔をあけて配置されている。ここで、所定の間隔としては、一次コイル10と二次コイル20とが、上述のコイルの軸線と直交する方向(図1の左右方向)へ相対移動しても、両者が物理的に接触しない間隔であって、二次コイル20およびコア30が、一次コイル10によって形成される磁束を受け取ることができる間隔であることが望ましい。
【0031】
図3は、図1のコア30の構成を説明するコア30を一次コイル10側から見た図である。
コア30は概ね矩形状に形成された板状の鉄芯または磁芯であり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア30は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。コア30を構成する板状の部材は、コア30が磁気飽和しない範囲の厚さであって、コア30の内部の磁束分布が均一になる厚さで形成されているとよい。コア30には、図1から図3に示すように、二次コイル20が収納される導電体収納部31と、コア30の中央領域を構成する中央部32と、が主に設けられている。本実施形態では、導電体収納部31および中央部32が一体に構成された例に適用して説明する。
【0032】
導電体収納部31は、内部に二次コイル20を形成する巻き線の束が収納されるものである。導電体収納部31は、板部材を断面が凹形状に形成すると共に、この凹形状が環状に延びて形成されたものである。さらに、導電体収納部31は、二次コイル20の側から一次コイル10の側に向かって、凹形状の開口が開くように配置されているものである。
【0033】
中央部32は、導電体収納部31における一次コイル10側の端部であって、巻き線が巻かれたコイルにおける軸線が含まれる領域(以下、「中央領域」と表記する。)の側の端部から、中央領域に向かって延びる平板状の部材である。本実施形態では、中央部32は、中央領域に全てにわたって延びる平板状の部材である例に適用して説明する。
【0034】
次に、上記の構成からなる変圧器1における働きについて説明する。
図1に示すように、外部に配置された電源から交流電力が一次コイル10に供給されると、一次コイル10を流れる交流電流により、一次コイル10の周囲には、図1の細線の矢印で示すように、時間的に強度が変動する磁束が形成される。磁束が形成された範囲には、二次コイル20およびコア30が配置されている。コア30は一次コイル10により形成された磁束を集める。
【0035】
ここで、本実施形態の変圧器1におけるコア30は、一次コイル10から中央部32までの距離Gが、図20に記載されているような平板状のコアが用いられた場合における一次コイル10からコアまでの距離gと比較して近いため、一次コイル10により形成された磁束をより効果的に集めることができる。
【0036】
そして、二次コイル20は、磁束強度の時間的な変動に伴い、電流値が時間的に変動する交流電流が誘起される。さらに、二次コイル20には、一次コイル10および二次コイル20における巻き線の巻き数比に応じて変圧された電圧が誘起される。
【0037】
上記の構成によれば、本実施形態の変圧器1に係るコア30は、図20に示す平板状のコアと比較して、一次コイル10と、コア30、特に中央部32との間の距離である電磁ギャップを縮めることができる。そのため、コア30は一次コイル10により形成された磁束を効果的に集めることができ、変圧器1の性能向上を図ることができる。例えば、図20に示す平板状のコアを備えた変圧器と比較して、本実施形態の変圧器1は、起電圧を約11%増加させることができる。
【0038】
さらに、本実施形態に係るコア30は、板部材から形成された導電体収納部31と中央部32とから形成されているため、磁路に寄与しないコアの部分が削減され、図19に記載されているようなE型コアと比較してコア30の体積を減らすことができる。そのため、コア30の軽量化を図ることができ、ひいては変圧器1の軽量化を図ることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、二次コイル20が概ね矩形状に巻かれ、コア30が概ね矩形状に形成された例に適用して説明したが、二次コイル20およびコア30の形状は、矩形状に限定することなく、円状、楕円状であってもよく、特に限定するものではない。
【0040】
図4は、図3のコア30における他の実施例の構成を説明する一次コイル10側から見た図である。
なお、コア30は、上述の実施形態のように、断面が凹形状に形成された導電体収納部31が環状に形成されたものであってもよいし、図4に示すように、導電体収納部31における対向する一対の辺に相当する部分(図4における左右方向の端辺に相当する部分)が、凹形状の外側の壁を省略したL形状に形成されたものであってもよい。
【0041】
特に、一次コイル10および二次コイル20が概ね矩形状に形成され、一次コイル10における矩形状の長辺の長さ(図4の左右方向の長さ)が、二次コイル20における対応する辺の長さ(図4の左右方向の長さ)よりも長い場合には、上述のように、コア30における図4の左右の端辺に相当する部分である短辺の断面形状を、概ねL字状に形成することが好ましい。
【0042】
このようにすることで、コア30における磁束を集める効率の低下を抑制しつつ、コア30の軽量化を図ることができる。つまり、上述のような構成において、磁束を集める効率が他の場所と比較して低いコア30の短辺は、断面形状を凹形状から断面積が小さな概ねL字状に変更しても、磁束を集める効率の低下量が小さく、コア30の全体における磁束を集める効率の低下は抑制される。その一方で、コア30の体積を小さくすることができるため、コア30の軽量化を図ることができる。
【0043】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図5から図8を参照して説明する。本実施形態の変圧器の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、コアの形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図5から図8を用いてコアの形状等について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0044】
図5は、本実施形態の変圧器101の構成を説明する断面視図である。
本実施形態の変圧器101は、一次コイル10と、二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア130と、から主に構成されている。
【0045】
コア130は、第1の実施形態のコア30と同様に、概ね矩形状に形成された板状の鉄芯または磁芯であり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア130は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。コア130を構成する板状の部材は、コア130が磁気飽和しない範囲の厚さであって、コア130の内部の磁束分布が均一になる厚さで形成されているとよい。
【0046】
図6は、図5のコア130の構成を説明するコア130を一次コイル10側から見た図である。
コア130には、図5および図6に示すように、導電体収納部31と、中央部32と、コア130の周囲に配置された鍔部133と、が主に設けられている。鍔部133は、環状に延びる導電体収納部31における一次コイル10側の端部であって、コア130の外側の端部から、外側に向かって延びる平板状の部材である。本実施形態では、導電体収納部31、中央部32、および、鍔部133が一体に構成された例に適用して説明する。
【0047】
上記の構成からなる変圧器101における働きについては、第1の実施形態と概ね同様であるため、その説明を省略する。
ここで、鍔部133における導電体収納部31から外側へ突出する寸法であるオーバーハング長Fと、変圧器101における誘起電圧の向上との関係を解析結果に基づいて説明する。
【0048】
図7は、鍔部133のオーバーハング長Fと誘起電圧との関係を説明するグラフである。
図7における横軸は、二次コイル20のコイル幅Wを基準として、鍔部133における導電体収納部31から外側へ突出する寸法であるオーバーハング長Fを百分率で表したものであり、縦軸は、オーバーハング長Fが0%、つまり、鍔部133が設けられていない第1の実施形態のコア30を備えた変圧器1における誘起電圧を基準とした、誘起電圧の割合を表したものである。
【0049】
図7のグラフでは、鍔部133のオーバーハング長Fが増加すると、変圧器101における誘起電圧の割合も増加する傾向が示されている。誘起電圧を増加させることを目的として、オーバーハング長Fを増加させる方法が考えられるが、鍔部133のオーバーハング長Fは、鍔部133も含めたコア130全体の幅寸法TWによって制約される。
【0050】
例えば、鍔部133における導電体収納部31から外側へ突出する寸法であるオーバーハング長Fが、二次コイル20のコイル寸法Wに対して30%程度である場合には、本実施形態のコア130を備える変圧器101は、誘起電圧において、第1の実施形態のコア30を備える変圧器1と比較して17%程度の向上を図ることができ、さらに、図20に示す平板状のコアを備える変圧器と比較して30%程度の向上を図ることができる。
【0051】
上記の構成によれば、本実施形態に係るコア130は、鍔部133が設けられていない第1の実施形態のコア30場合と比較して、一次コイル10および二次コイル20の間に延びる磁束を効率よく集めることができ、本実施形態の変圧器101における性能の向上を図ることができる。
【0052】
言い換えると、鍔部133を設けることにより、一次コイル10により形成された磁束における磁気抵抗を小さくすることができ、漏れ磁束を低減することができる。その結果、本実施形態の変圧器101における性能の向上を図ることができる。
【0053】
図8は、図6のコア130における他の実施例の構成を説明する一次コイル10側から見た図である。
なお、コア130は、上述の実施形態のように、鍔部133がコア130の周囲に形成されたものであってもよいし、図8に示すように、コア130における対向する一対の端辺にのみ鍔部133を設けてもよい。
【0054】
特に、一次コイル10および二次コイル20が概ね矩形状に形成され、一次コイル10における矩形状の長辺の長さ(図8の左右方向の長さ)が、二次コイル20における対応する辺の長さ(図8の左右方向の長さ)よりも長い場合には、上述のように、コア130における図8の上下の端辺に相当する部分である長辺にのみ鍔部133を設けることが好ましい。
【0055】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図9を参照して説明する。本実施形態の変圧器の基本構成は、第2の実施形態と同様であるが、第2の実施形態とは、コアの形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図9を用いてコアの形状等について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0056】
図9は、本実施形態の変圧器201の構成を説明する断面視図である。本実施形態の変圧器201は、一次コイル10と、二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア230と、から主に構成されている。
【0057】
コア230は、第1の実施形態のコア30と同様に、概ね矩形状に形成された板状の鉄芯または磁芯であり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア230は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。
【0058】
コア230には、図9に示すように、二次コイル20が収納される導電体収納部231と、コア230の中央領域を構成する中央部232と、コア230の周囲に配置された鍔部233と、が主に設けられている。
【0059】
導電体収納部231は、第1の実施形態の導電体収納部31と同様に、内部に二次コイル20を形成する巻き線の束が収納されるものである。中央部232は、第1の実施形態の中央部32と同様に、導電体収納部231における一次コイル10側の端部であって、中央領域側の端部から、中央領域に向かって延びる平板状の部材である。鍔部233は、第2の実施形態の鍔部133と同様に、環状に延びる導電体収納部231における一次コイル10側の端部であって、コア230の外側の端部から、外側に向かって延びる平板状の部材である。
【0060】
本実施形態のコア230では、導電体収納部231を構成する板部材の板厚t1が、中央部232を構成する板部材の板厚t2、および、鍔部233を構成する板部材の板厚t3よりも厚く形成されている点が、第1の実施形態および第2の実施形態のコアと異なっている。
【0061】
なお、中央部232を構成する板部材の板厚t2と、鍔部233を構成する板部材の板厚t3とは、コア230における磁束分布が均一になればよく、例えば両者が同じ厚さであってもよいし、異なる厚さであってもよい。さらに、中央部232を構成する板部材の板厚t2は、第1の実施形態および第2の実施形態の中央部32と同じ厚さに形成されていてもよいし、薄く形成されていてもよい。同様に、鍔部233を構成する板部材の板厚t3も、第2の実施形態の鍔部133と同じ厚さに形成されていてもよいし、薄く形成されていてもよい。
【0062】
上記の構成によれば、本実施形態に係るコア230は、電流が流れる巻き線に近い位置に配置される導電体収納部231において磁気飽和が発生することを防止できる。
例えば、第2の実施形態に係る変圧器101のコア130では、コア130の厚み当たりの電流(2次電流)を350Aターンrms/mmで通電した場合、コア130は磁気飽和する。コア130の透磁率が低下することによる誘起電圧の低下が発生した場合や、二次コイル20に繋がれる回路(2次側回路)として共振回路が構成された場合、インダクタンスの変動により、二次コイル20および二次側回路を流れる2次電流が安定しないなどの問題が生じる。
【0063】
これに対して本実施形態に係るコア230は、二次コイル20に流れる2次電流による磁束が集中するコイル周辺に配置される導電体収納部231のみ、コア230の板厚を厚くしている。そのため、コア230において磁気飽和の発生が抑制され、かつ、コア230における磁束分布が均一化される。さらに、磁束が集中する部分のみコア230の板厚を厚くしているため、コア230の全体の板厚を厚くする場合と比較して、コア230の重量増加を抑制することができる。
【0064】
また、コア230における磁束分布の均一化が図られると、コア230におけるヒステリシス損が主要因となる発熱が抑制される。磁束分布の均一化が図られると、コア230における磁束が部分的に集中する箇所の発生が抑制され、磁束の集中場所におけるヒステリシス損による発熱が抑制される。そのため、コア230における(局所的な)温度上昇が抑制され、温度上昇によるコイルにおける通電電流の制約が生じにくくなり、変圧器201の効率低下を抑制することができる。
【0065】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図10から図13を参照して説明する。本実施形態の変圧器の基本構成は、第3の実施形態と同様であるが、第3の実施形態とは、コアの形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図10から図13を用いてコアの形状等について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0066】
図10は、本実施形態の変圧器301の構成を説明する断面視図であり、図11は、図10の変圧器301の全体構成を説明する平面視図である。本実施形態の変圧器301は、図10および図11に示すように、一次コイル10と、二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア330と、から主に構成されている。
【0067】
コア330は、第3の実施形態のコア230と同様に、概ね矩形状に形成された板状の鉄芯または磁芯であり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア330は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。
【0068】
コア330には、二次コイル20が収納される導電体収納部231と、コア330の中央領域を構成する中央部232と、コア330の周囲に配置された鍔部233と、中央部232に形成された空隙部334と、が主に設けられている。
【0069】
空隙部334は、中央部232に形成された貫通孔であって、コア330の軽量化を目的として形成されるものである。本実施形態では、コア330の全体形状と同様に1つの矩形状の貫通孔として形成された例に適用して説明するが、空隙部334の形状は、矩形状に限られることなく、円状や楕円状に形成されていてもよい。さらに、中央部232に形成される空隙部334の数は、1つに限られることなく、複数であってもよい。
【0070】
ここで、空隙部334によるコア330の体積削減量と、二次コイル20における誘起電圧との関係を解析結果に基づいて説明する。具体的には、図11に示す中央部232の幅W2を基準とした空隙部334の幅W4の割合と、二次コイル20における誘起電圧との関係について説明する。
【0071】
図12は、中央部232の幅W2を基準とした空隙部334の幅W4の割合と、二次コイル20における誘起電圧との関係を説明するグラフである。
図12における横軸は、中央部232の幅W2を基準とした空隙部334の幅W4の割合を示したものであり、縦軸は、空隙部334の割合が0、つまり空隙部334が設けられていない第3の実施形態の二次コイル20における誘起電圧を基準とした、誘起電圧の割合を表したものである。
【0072】
図12のグラフでは、空隙部334の割合が0から1に向かって増加すると、二次コイル20における誘起電圧の割合が徐々に低下する傾向が示されている。例えば、空隙部334の割合を0.3、つまり、中央部232におけるコア330の体積を30%程度削減した場合、二次コイル20における誘起電圧は1%程度減少する。
【0073】
上記の構成によれば、中央部232に空隙部334を形成することで、本実施形態に係るコア330の軽量化を図ることができる。さらに、中央部232は、導電体収納部231と比較して一次コイル10および二次コイル20の間に存在する磁束を集める効率が低いため、中央部232に空隙部334を形成しても、二次コイル20における誘起電圧の低下を抑制することができる。
【0074】
図13は、図11の空隙部334が設けられたコア330の他の実施例における全体構成を説明する平面視図である。なお、上述の実施形態では、空隙部334は、中央部232にのみ設けられた例に適用して説明したが、図13に示すように、一次コイル10および二次コイル20が概ね矩形状に形成され、一次コイル10における矩形状の長辺の長さ(図13の左右方向の長さ)が、二次コイル20における対応する辺の長さ(図13の左右方向の長さ)よりも長い場合には、コア330を二分割するように空隙部334Aを設けて、コア330を図13の上下に二分割してもよい。
【0075】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について図14を参照して説明する。本実施形態の変圧器の基本構成は、第2の実施形態と同様であるが、第2の実施形態とは、コアの形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図14を用いてコアの形状等について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0076】
図14は、本実施形態の変圧器の構成を説明する断面視図である。
本実施形態の変圧器401は、図14に示すように、一次コイル10と、二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア430と、から主に構成されている。
【0077】
コア430は、第1の実施形態のコア30と同様に、概ね矩形状に形成された板状の鉄芯または磁芯であり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア430は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。
【0078】
コア430には、二次コイル20が収納される導電体収納部431と、中央部32と、鍔部133と、が主に設けられている。
導電体収納部431は、第1の実施形態の導電体収納部31と同様に、内部に二次コイル20を形成する巻き線の束が収納されるものである。導電体収納部431は、板部材を断面が凹形状に形成すると共に、この凹形状が環状に延びて形成されたものである。さらに、導電体収納部431は、二次コイル20の側から一次コイル10の側に向かって、凹形状の開口が開くように配置されているものである。
【0079】
本実施形態の導電体収納部431では、更に、凹形状における側板に挟まれた底板部432(図14の上側の部分)が、2枚の板部材を重ねて構成されている。底板部432を構成する板部材には、当該板部材を複数に分割する溝状のスリット433が形成されている。底板部432を構成する2枚の板部材は、それぞれに形成されたスリット433が異なる位置に配置されるように重ねられ、底板部432を構成している。
【0080】
本実施形態では、二次コイル20側(図14の下側)の板部材に、2本のスリット433が等間隔に形成され、外側(図14の上側)の板部材に、3本のスリット433が等間隔に形成されている。さらに、これらの板部材を重ねて、二次コイル20側の板部材に形成されたスリット433と、外側の板部材に形成されたスリット433が、交互に並んで配置されている例に適用して説明する。
【0081】
次に、本実施形態の変圧器401における特徴である、コア430の導電体収納部431における働きについて説明する。なお、変圧器401における他の働きについては、第1および第2の実施形態における働きと同様であるため、その説明を省略する。
【0082】
例えば、二次コイル20に大きな電流が流れる場合、コア430の鉄損による発熱が大きいため、コア430は熱膨張する。その後、二次コイル20における電流の流れが止まると、コア430における発熱が止まり、コア430は収縮する。このようなコア430における熱膨張や収縮は、導電体収納部431におけるスリット433の幅の拡大や縮小により吸収される。
【0083】
その一方で、二次コイル20側の板部材に形成されたスリット433と、外側の板部材に形成されたスリット433を交互に並んで配置されているため、導電体収納部431における磁界の磁路は、スリット433の空隙を通ることなく、言い換えるとスリット433を迂回して構成される。
【0084】
具体的には、磁界の磁路は、外側の板部材を通ることにより、二次コイル20側の板部材に形成されたスリット433を迂回し、二次コイル20側の板部材を通ることにより、外側の板部材に形成されたスリット433を迂回することができる。
【0085】
上記の構成によれば、コア430の温度変化による伸び縮みした場合であっても、スリット433の間隔によりコア430の伸び縮みが吸収される。そのため、コア430を構成する板部材に働く圧縮応力や引張応力などを軽減することができる。特に、コア430や二次コイル20などが、変圧器401を構成する筺体であるケース(図示せず。)に固定されている場合には、コア430に温度変化による圧縮応力や引張応力が強く働くが、本実施形態のコア430によれば、これらの応力を軽減することができる。そのため、本実施形態のコア430は、温度変化などによるコア430の割れなどの不具合発生を防止することができる。
【0086】
さらに、導電体収納部431における磁界の磁路は、スリット433を迂回して構成されるため、スリット433の空間が大きな磁気抵抗となることが防止される。そのため、本実施形態の変圧器401における効率の低下を抑制することができる。
【0087】
〔第6の実施形態〕
次に、本発明の第6の実施形態について図15および図16を参照して説明する。本実施形態の変圧器の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、コアの形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図15および図16を用いてコアの形状等について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0088】
図15は、本実施形態の変圧器501の全体構成を説明する平面視図である。
本実施形態の変圧器501は、図15に示すように、一次コイル10と、二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア530と、から主に構成されている。
【0089】
コア530は、概ね帯状に形成された板状の鉄芯または磁芯である複数のコア分割体530Aが間隔をあけて並んで配置されたものであり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア530は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。
【0090】
コア分割体530Aのそれぞれには、コア530全体として導電体収納部31および中央部32が設けられるように、導電体収納部31や中央部32の部分が設けられている。
本実施形態では、二次コイル20に対して一次コイル10は、長辺方向(図15における左右方向)の寸法が長く形成され、コア分割体530Aは、一次コイル10における前述の長辺方向に延びる一対の二辺(図15における上下の二辺)に対して、交差する方向、より好ましくは直交する方向に延びて配置されている。更に複数のコア分割体530Aは、上述の長辺方向(一対の二辺が延びる方向)に沿って、所定の間隔をあけて並んで配置されている。
【0091】
複数のコア分割体530Aが配置される所定の間隔と、コア分割体530Aを構成する板部材の板厚とは、磁気抵抗の増加を抑制するために、概ね比例するように設定されることが望ましい。言い換えると、上述の長辺方向(一対の二辺が延びる方向)に対して平行な面であり二次コイル20を通過する面(図15のA−A線)で切断した場合の断面視において、コア530の断面積が、第1の実施形態のコア30などと概ね等しくなるように、所定の間隔、および、板部材の板厚が設定されることが望ましい。さらには、上述の長辺方向に対して平行な面であり二次コイル20の間を通過する面(図15のB−B線)で切断した場合の断面視において、コア530の断面積が、第1の実施形態のコア30などと概ね等しくなるように、所定の間隔、および、板部材の板厚が設定されてもよい。
【0092】
本実施形態では、上述の長辺方向(一対の二辺が延びる方向)におけるコア分割体530Aの幅寸法と、同程度の間隔とされ、コア分割体530Aは、第1の実施形態のコア30と比較して、コア分割体530Aを構成する板部材の板厚が概ね2倍とされている例に適用して説明する。
【0093】
コア530を上述のように構成することで、コアを構成する板部材の板厚を増すことなく分割し、分割体の幅寸法と同程度の間隔をあけて配置した場合と比較して、変圧器501における誘起電圧等の性能低下を抑制することができる。しかしながら、後述するように、コア分割体530Aの配置間隔を増していくと、コア分割体530Aを構成する板部材の板厚を厚くしても、コア530における漏れ磁束が増加して誘起電圧低下する。
【0094】
図16は、図15のコア分割体530Aの間隔と、誘起電圧比との関係を説明するグラフである。
図16における横軸は、コア分割体530Aが配置されている間隔を示すものであり、縦軸は配置されている間隔が0mmである場合の誘起電圧を基準とした、誘起電圧比を示すものである。図16においては、配置されている間隔が0mmの時にコアを構成する板部材の板厚が3mmであり、間隔がその他の場合には板部材の板厚は6mmである。また、板部材の幅と、配置されている間隔とは同じであり、例えば、間隔が10mmの場合には板部材の幅も10mm、間隔が30mmの場合には板部材の幅も30mmである。言い換えると、間隔と板部材の幅との比率が1:1であり、間引き率は50%となっている。
【0095】
図16には、コア分割体530Aが配置されている間隔が増加すると、漏れ磁束が増加するため、誘起電圧が少しずつ低下する傾向が示されている。例えば、配置されている間隔が30mmの時には、誘起電圧の低下は1.5%程度となり、変圧器501において問題となる性能低下とはならない。
【0096】
なお、コア分割体530Aが配置されている間隔が増えるに比例して、コア530を構成する板部材の板厚を増加させ、コア530を構成する材料の体積が一定になるようにしてもよく、特に限定するものではない。
【0097】
上記の構成によれば、第1の実施形態のコア30のようにコアを一体に構成する場合と比較して、比較的小さな複数のコア分割体530Aからコア530を構成できるため、コア530の製造に用いられる材料である板部材も比較的小さなものを用いることができる。大きな板部材を手配する場合と比較して、小さな板部材は手配が容易であり、かつ、価格も安いため、本実施形態の変圧器501の製造にかかるコスト削減を図ることができる。
【0098】
また、第1の実施形態のコア30と比較して、コアを構成する板部材として板厚が厚いものを用いることができる。つまり、コアを一体に構成する場合に求められる板部材の板厚が、市場に流通している板部材における最小の板厚よりも薄い場合、市場から入手した板部材を研磨して、板厚を上述の求められる板厚まで薄くする必要があり、コアの製造に要するコストが高くなる問題がある。
【0099】
その一方で、本実施形態のコア530のように、コア分割体530Aを所定の間隔をあけて配置する構成では、コアを一体に構成する場合と比較して、板部材に求められる板厚を厚くすることができる。つまり、コア分割体530Aを構成する板部材の板厚を、市場に流通する板部材の板厚を概ね一致させることができ、上述の板部材を研磨する製造工程を省略または簡素化することができる。その結果、本実施形態の変圧器501の製造にかかるコスト削減を図ることができる。
【0100】
例えば、二次コイル20の巻き線に、800Aターンrms程度の電流を通電させる場合、一体に形成されたコアを構成する板部材の板厚が2mmでは磁気飽和するため、導電体収納部31の周囲で少なくとも3mmの板厚を確保する必要がある。その一方で、一体に形成されたコアの軽量化を図るために、板部材の板厚を薄くする必要があるため、最低限必要な板厚である3mmの板部材が選択される。しかしながら、コアを構成する部材であるフェライトの標準的な製作厚さが3mmよりも厚い場合、例えば5mm以上の場合に、3mmの板部材でコアを製作しようとすると、3mmよりも厚い材料、例えば5mmより厚い材料を研磨して3mm厚にする必要があった。
【0101】
その一方で、本実施形態のコア530のように、コア分割体530Aを所定の間隔をあけて配置する場合、コア分割体530Aを構成する部材の板厚を6mmと設定することが可能であり、上述のように、入手した部材を研磨して所望の板厚に加工する工程を省略、または、簡素化することができる。
【0102】
また、研磨工程を用いることなくコアの厚さを調整する方法として、特許文献1に記載されているように、方形の板部材を重ね合わせてコアを形成する方法も知られている。しかしながら、板部材を重ね合わせて張り合わせる場合、張り合わせ面の僅かな空隙によって、変圧器の性能が低下するという問題がある。それに対して、本実施形態のコア530は、板部材を張り合わせることなく形成されたコア分割体530Aから構成されているため、張り合わせ面の空隙によって、変圧器501の性能が低下することが防止される。
【0103】
さらに、コア分割体530Aを帯状(長方形状)に形成することにより、正方形状に形成する場合と比較して、コア530の大型化への対応が容易になる。コアの製作可能な大きさは、例えば、コアの形を整える整形台の形状や面積によって定まる。整形台の面の形状が丸型の場合、矩形に形成されるコアは、コアの対角線寸法が基準となって製作可能な大きさが定まる。この場合、コア分割体530Aを帯状に形成した場合、正方形状に形成した場合と比較して、長いコア分割体530Aを形成することができる。
【0104】
そのため、一次コイル10における一対の二辺(図15の上下の辺)の間隔の拡大に対して、帯状に形成したコア分割体530Aは、正方形状に形成されたコア分割体よりも対応が容易となる。また、コア分割体530Aの形状は同一であるため、一つの成型用の型を用いてコア分割体530Aを製作することができるため、コア分割体530Aを、容易に大量に製作することができ、コア530の製作コストの低減を図ることができる。
【0105】
図17は、図15の変圧器の他の実施例の全体構成を説明する平面視図である。
なお、上述の実施形態のように複数のコア分割体530Aが間隔をあけて並んで配置したコア530を用いてもよいし、図17に示すように、さらに、コア分割体530Aを二分割するように空隙部334Aを設けてコア530を二分割してもよい。
【0106】
〔第7の実施形態〕
次に、本発明の第7の実施形態について図18を参照して説明する。本実施形態の変圧器の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、コイルの形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図18を用いてコイルの形状等に説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0107】
図18は、本実施形態の変圧器601の全体構成を説明する平面視図である。
本実施形態の変圧器601は、図18に示すように、一次コイル10と、二次コイル20と、二次コイル20の近傍に配置されたコア630と、から主に構成されている。本実施形態では、二次コイル20に対して一次コイル10は、長辺方向(図18における左右方向)の寸法が長く(例えば半無限に)形成されている。
【0108】
コア630は、第1の実施形態のコア30と同様に、概ね矩形状に形成された板状の鉄芯または磁芯であり、一次コイル10により形成された磁束を集めるものである。コア630は、二次コイル20に隣接して配置され、かつ、一次コイル10とともに二次コイル20を間に挟む位置に配置されたものである。
【0109】
コア630には、二次コイル20が収納される導電体収納部631Aおよび導電体収納部631Bと、中央部32と、が主に設けられている。
導電体収納部631Aは、第1の実施形態の導電体収納部31と同様に、内部に二次コイル20を形成する巻き線の束が収納されるものである。導電体収納部631Aは、断面が凹形状に形成されていると共に、一次コイル10における前述の長辺方向に延びる一対の二辺(図18における上下の二辺)に沿って延びて配置されている。さらに、導電体収納部631Aは、二次コイル20の側から一次コイル10の側に向かって、凹形状の開口が開くように配置されているものである。
【0110】
導電体収納部631Bは、断面がL形状に形成されていると共に、前述の一対の二辺に対して交差する方向、より好ましくは直交する方向に延びて配置されている。言い換えると、導電体収納部631Bは、断面が凹形状に形成されていると共に、少なくとも中央部32側の一部を残し、外側を切り欠いた形状に形成されている。本実施形態では、コア630を平面視した場合において、導電体収納部631Bが二次コイル20を構成するコイル幅の概ね半分を覆う例に適用して説明する。なお、導電体収納部631Bが二次コイル20を覆う割合は、上述のように二次コイル20を構成するコイル幅の概ね半分であってもよいし、少なくとも二次コイル20を構成するコイル束の一部を覆えばよく、特に限定するものではない。
【0111】
次に、本実施形態の変圧器601における特徴であるコア630の働きについて説明する。なお、変圧器601における他の働きについては、第1の実施形態における働きと同様であるため、その説明を省略する。
【0112】
コア630における導電体収納部631Bの部分は、二次コイル20を横切る鎖交磁束M1の増加に寄与しないため、第1の実施形態のコア30ように、この部分にも断面が凹形状の導電体収納部31を形成しても、変圧器1の性能向上に寄与しない。さらに、二次コイル20の短辺(図18の上下方向に延びる辺)の外側のコア30が二次コイル20を鎖交しない磁路を構成するため、変圧器1の性能向上に寄与しない。
【0113】
その一方で、コア630における導電体収納部631Bの部分を完全になくした場合、二次コイル20を鎖交しない磁束が増加するため、二次コイル20に誘起される電圧が低くなり、変圧器601における性能が低下する。
【0114】
そこで、本実施形態のコア630のように、導電体収納部631Bによって二次コイル20のコイル束の概ね半分を覆うことにより、一次コイル10で発生する磁束のうち、導電体収納部631Bの近傍の磁束を、コア630に引き寄せて、二次コイル20を鎖交する磁束とすることができる。その結果、本実施形態の変圧器601は、第1の実施形態の変圧器1と比較して、誘起電圧を若干増加させることができる。
【0115】
上記の構成によれば、導電体収納部631Bは、二次コイル20よりも外側の部分を切欠いているため、本実施形態のコア630の軽量化を図ることができる。さらに、二次コイル20よりも外側の部分は、他の部分と比較して一次コイル10および二次コイル20の間に存在する磁束を集める効率が低いため、二次コイル20よりも外側の部分を切欠いて導電体収納部631Bを形成しても、二次コイル20における誘起電圧の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0116】
1,101,201,301,401,501,601…変圧器、10…一次コイル、20…二次コイル、30,130,230,330,430,530,630…コア、31,231,431,631A,631B…導電体収納部、32,232…中央部、133,233…鍔部、334…空隙部、530A…コア分割体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の導電体を巻いて形成された一次コイルと、
長尺の前記導電体を巻いて形成され、前記一次コイルと間隔をあけて配置される二次コイルと、
前記一次コイルおよび前記二次コイルの少なくとも一方に配置された板状のコアと、
が設けられ、
前記コアには、
環状に延びるとともに断面が凹形状に形成され、前記一次コイルおよび前記二次コイルのうちの前記コアが配置された一方のコイルから、前記コアが配置されていない他方のコイルに向かって前記凹形状の開口が開き、前記一方のコイルの巻かれた前記導電体の束が前記凹形状の内部に配置される導電体収納部と、
前記導電体収納部における前記他方のコイル側の端部から、環状に延びる前記導電体収納部における中央領域に延びる平板状の中央部と、
が設けられていること特徴とする変圧器。
【請求項2】
前記コアには、更に、
環状に延びる前記導電体収納部における前記他方のコイル側の端部から外側に向かって平板状に延びる鍔部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の変圧器。
【請求項3】
前記導電体収納部における板厚は、前記中央部における板厚よりも厚いことを特徴とする請求項1または2に記載の変圧器。
【請求項4】
前記中央部には、前記中央部を構成する板状の部材を貫通する空隙部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の変圧器。
【請求項5】
前記コアは、複数の板部材を板厚方向に積み重ねたものであり、
前記複数の板部材のそれぞれには、前記板部材を分割する溝状のスリットが設けられ、
前記複数の板部材は、前記スリットが前記板部材の面に沿う方向において異なる位置に配置されて積み重ねられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の変圧器。
【請求項6】
前記一次コイルおよび前記二次コイルにおいて、前記導電体が、少なくとも対向する二辺を有する形状に巻かれ、
前記対向する二辺が延びる方向において、前記一次コイルの寸法が、前記二次コイルの寸法よりも長く形成され、
前記二次コイルの側に配置された前記コアは、前記対向する二辺に対して交差する方向に延びる複数のコア分割体から構成され、
該コア分割体は、前記対向する二辺が延びる方向に間隔をあけて並んで配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の変圧器。
【請求項7】
前記一次コイルおよび前記二次コイルにおいて、前記導電体が、少なくとも対向する二辺を有する形状に巻かれ、
前記対向する二辺が延びる方向において、前記一次コイルの寸法が、前記二次コイルの寸法よりも長く形成され、
前記二次コイルの側に配置された前記コアにおける、前記対向する二辺に対して交差する方向に延びる前記導電体収納部は、
少なくとも前記中央部側の一部を残し、外側を切り欠いた形状に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の変圧器。
【請求項1】
長尺の導電体を巻いて形成された一次コイルと、
長尺の前記導電体を巻いて形成され、前記一次コイルと間隔をあけて配置される二次コイルと、
前記一次コイルおよび前記二次コイルの少なくとも一方に配置された板状のコアと、
が設けられ、
前記コアには、
環状に延びるとともに断面が凹形状に形成され、前記一次コイルおよび前記二次コイルのうちの前記コアが配置された一方のコイルから、前記コアが配置されていない他方のコイルに向かって前記凹形状の開口が開き、前記一方のコイルの巻かれた前記導電体の束が前記凹形状の内部に配置される導電体収納部と、
前記導電体収納部における前記他方のコイル側の端部から、環状に延びる前記導電体収納部における中央領域に延びる平板状の中央部と、
が設けられていること特徴とする変圧器。
【請求項2】
前記コアには、更に、
環状に延びる前記導電体収納部における前記他方のコイル側の端部から外側に向かって平板状に延びる鍔部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の変圧器。
【請求項3】
前記導電体収納部における板厚は、前記中央部における板厚よりも厚いことを特徴とする請求項1または2に記載の変圧器。
【請求項4】
前記中央部には、前記中央部を構成する板状の部材を貫通する空隙部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の変圧器。
【請求項5】
前記コアは、複数の板部材を板厚方向に積み重ねたものであり、
前記複数の板部材のそれぞれには、前記板部材を分割する溝状のスリットが設けられ、
前記複数の板部材は、前記スリットが前記板部材の面に沿う方向において異なる位置に配置されて積み重ねられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の変圧器。
【請求項6】
前記一次コイルおよび前記二次コイルにおいて、前記導電体が、少なくとも対向する二辺を有する形状に巻かれ、
前記対向する二辺が延びる方向において、前記一次コイルの寸法が、前記二次コイルの寸法よりも長く形成され、
前記二次コイルの側に配置された前記コアは、前記対向する二辺に対して交差する方向に延びる複数のコア分割体から構成され、
該コア分割体は、前記対向する二辺が延びる方向に間隔をあけて並んで配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の変圧器。
【請求項7】
前記一次コイルおよび前記二次コイルにおいて、前記導電体が、少なくとも対向する二辺を有する形状に巻かれ、
前記対向する二辺が延びる方向において、前記一次コイルの寸法が、前記二次コイルの寸法よりも長く形成され、
前記二次コイルの側に配置された前記コアにおける、前記対向する二辺に対して交差する方向に延びる前記導電体収納部は、
少なくとも前記中央部側の一部を残し、外側を切り欠いた形状に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の変圧器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−134307(P2012−134307A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284803(P2010−284803)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
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