変形可能な部分および応力センサを備えるマイクロ電気機械システム
マイクロ電気機械システムは、変形可能な部分に固定して取り付けられる変形可能な部分(1)および少なくとも1つの応力センサ(10)を備える。センサ自体はベース部(2)を備え、変形可能な部分(1)上に分路部分(3)を並置し、接続体(4a―4d)は、ベースおよび分路部分の電流の分布の変化を検出するために配置した。このようなシステムは、多くの応用例に適していて、特に原子間力顕微鏡の一部のアームを形成するため、またはバイオセンサの構成に入れるためにある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部分と応力検出器を有するマイクロ電気機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ電気機械システムまたはMEMSは、可動部分を含む一体化された電子装置である。
マイクロ電気機械システムは、可動部分を製造するための製造技術を含む、集積電子回路用の標準製造技術を使用して製造される。
そのようなシステムは、特に、共振器やマイクロスイッチを形成することができる。
システムの中には、可動部分の位置を検出する検出器を含むものがある。
この検出器により、システムの状態を観測したり、あるいは、例えば、システムが周波数フィルタである場合に、可動部分の変位に対応する電気出力信号を送出したりすることが可能になる。
公知の位置検出器は、その静電容量が可動部分の位置に応じて変わるコンデンサからなるか、または可動部分に担持されたMOSトランジスタのゲート部からなる。
これらの位置検出器の動作は、可動部分を囲んで存在する周囲媒体の誘電性の導電率に依存する。
ここで、幾つかの用途については、特に、液体またはガス状媒体内で、この導電率が変動することがあり、これは、検出結果を不正確にする。
MEMSに組み込まれる他の検出器には、圧電材料の一部からなるものがある。
しかし、この場合、MEMSの可動部品の位置については、交互応力が作用する場合にのみ分かる。
【0003】
さらに、上記の欠点の一部がなくなった、可動部分の位置を検出する高分解能の検出器が開発された。
そのような検出器のうち、可動部分上での光ビーム、通常では、レーザビームの反射に基づく光検出器について言及する。
この場合、一組の光検出器上のビームの衝突点は、移動部品の位置に応じて変わる。
しかし、そのような光検出器は、別の欠点を有する、すなわち、その検出器はかさばり、可動部分が反射性であることを必要とし、前記部品を囲む周囲材料が透過性であることを必要とする。
さらに、正確な光学的配列および校正が必須である。
最後に、ビームは、測定に関する解釈を誤らせがちな寄生光化学反応を引き起こすことがあるので、光ビームの使用は、特定の用途、特に、化学用途に適合しない。
【0004】
互いにきわめて接近した導電性材料の2つの部分間にあるトンネル効果に基づく検出器もある。
これらの検出器では、トンネル効果電流の強度を使用して、2つの部分の間の距離を測定する。
しかし、そのような検出器の特性は、非線形性が高く、MEMS内に現在作られている可動部分の弾性定数に適合しない。
さらに、トンネル電流が典型的な検出信号となるのに十分なだけ安定するように、そのようなトンネルタイプの検出器を高い真空状態で使用することが必要である。
これは、環境に影響を与えるかなりの制約をもたらし、この制約によって、このタイプの検出器の使用が限定される。
【0005】
最後に、特定のMEMSでは、可動部分の位置を検出する検出器の代わりに応力検出器を使用する。
そのような検出器は通常、MEMSの可動部分の圧電的挙動に基づいていて、位置検出器よりも外部摂動の影響を受けにくい。
しかし、検出の感度は、可動部分の構成材料固有のピエゾ抵抗によって制限されるために通常低い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の1つの目的は、システムの状態を検出する検出器を内蔵するが、上記の欠点がないマイクロ電気機械システムを提案することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、多くの用途に使用することができ、特に、様々な周囲媒体内で使用できるマイクロ電気機械システムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、変形可能部分と、変形可能部分に強固に結合された少なくとも1つの応力検出器とを有するマイクロ電気機械システムを提示する。
各応力検出器それ自体は、導電性を有するベース部分および分路部分であって、前記部分のそれぞれの隣接する側面に沿って、互いに電気的に接触するように変形可能部分上に並置され、分路部分がベース部分の電気導電性よりも高い電気導電性を有する、ベース部分および分路部分と、前記ベース部分が分路部分と接触している接触区域から離れて、ベース部分に接続された一組の電気接続体であって、ベース部分および分路部分内の電流分布の変化を、前記接続体を使用して電気的に検出できるように構成された一組の電気接続体とを有する。
【0009】
さらに、ベース部分および分路部分のそれぞれの材料は、前記部分の間の接触抵抗がシステムの変形に応じて変わるように選択される。
【0010】
このため、本発明によれば、変形可能部分と検出器は、同一のマイクロ電気機械システム内で一体とされる。
そのような一体化により、コンパクトなアセンブリを得ることができる。
その結果、異なる用途に対応した多くの装置にシステムを容易に導入することができる。
【0011】
さらに、同一システム内での変形可能部分と検出器のこの一体化により、変形可能部分と検出器の両方を製造するのに、一貫した製造プロセスを使用することが可能になる。
これにより、全体的な製造コストが下がる。
特に、集積電子回路の製造技術を使用して、システムを完全に組み立てることができ、その技術は、現時点で完全に解明されており、システムを小型化し、高い製造歩留まりで大量生産することを可能にする。
これらの製造技術はまた、電子測定回路をマイクロ電気機械システムに組み込むのを可能にして、高い感度と高い測定精度を得ることができるようにする。
【0012】
マイクロ電気機械システムに組み込まれた検出器は、応力検出器タイプとされる。
そのような検出器は、特に、信頼できる検出結果を提供する。
特に、このタイプの検出器が、変形を受けることを意図された部分に直接取り付けられたならば、システムと接触している流体媒体の誘電導電率の変動によって検出結果が乱されることはない。
従って、多数の用途、特に、システムを、液体でも気体でも、流体に浸す用途に本発明によるシステムを使用することができる。
【0013】
さらに、本発明によるシステムで使用される応力検出器の感度は、ベース部分と分路部分の間の接触抵抗の変化だけでなく、2つの部分のそれぞれの材料の電気伝導特性の違いによる効果にも基づいている。
得られた感度は高く、マイクロ電気機械システムのきわめて小さい変形を検出することを可能にする。
【0014】
ベース部分は半導体材料から作られ、分路部分は金属類からなるのが好ましい。
従って、ベース部分と分路部分は電気導電率に大きな差があり、その結果、検出器の感度がいっそう高くなる。
これらの条件下で、可動部分の1オングストローム程度の変位に相当する変形を検出することができる。
例として、ベース部分は、インジウム(In)合金、ならびにアンチモン(Sb)またはガリウム(Ga)と砒素との合金を含むシリコン(Si)で作ることができ、分路部分は、特に、アルミニウム(Al)または金(Au)で作ることができる。
【0015】
ベース部分の材料は、可変の電気導電率を有することができ、この材料に応力がかかったときに、電気導電率の異方性が変化するのが好ましい。
そのような異方性は、ベース部分に応力が加えられたときに出現し、応力の方向に応じて配向され得る。
さらに、ベース部分の材料の、異なる方向に対応する2つの導電率値には、応力の大きさで決まる導電率値間の差があり、この差の符号は、圧縮応力か、または引張り応力かといった応力の種類に依存することがあり、また、ベース部分の材料の電気ドーピングのタイプに依存することもある。
【0016】
ベース部分の材料の電気導電率に関するそのような可変異方性は、この材料が、非晶質材料、多結晶材料、または単結晶材料である場合に出現することができる。
例えば、ベース部分は、実質的に、立方構造の単結晶のシリコンを主成分(ベース)とすることができる。
この場合に、この立方構造の[110]軸が、互いに隣接するベース部分と分路部分のそれぞれの側面に対してほぼ垂直な場合に、特に高い検出感度が得られる。
【0017】
検出器の感度をさらに上げるために、一組の電気接続体は、少なくとも3つの接続体を有し、その接続体のうちの2つは、検出器に電流を供給するように設計され、2つの接続体は、この電流によって生じる電圧を検出するように設計される。
そのような構成により、接続体の接触抵抗により生じる、検出接続体の間の測定される電圧への関与を軽減するかまたはなくすことが可能になる。
オプションとして、接続体の1つは、電流供給用と電圧検出用の両方に使用することができる。
【0018】
あるいは、検出器の一組の電気接続体は、2つの接続体のみを有してもよく、その接続体はそれぞれ、電流供給用と電圧検出用の両方に使用される。
この場合に、検出ノイズに対する検出電圧の比が改良される。
【0019】
応力検出器は、変形可能な部分上で、変形および/または応力が大きいかまたは最大となる区域に置かれるのが好ましい。
より正確には、ベース部分と分路部分の間の境界面またはベース部分の中央部は、変形部分の中の、変形および/または応力が最大となるその区域に配置される。
検出器のそのような位置決めは、検出器に伝わる応力に応じて大きく変わる物理パラメータ、すなわち、ベース部分の材料の導電率異方性またはベース部分と分路部分の間の電気接触抵抗に基づいて行う。
【0020】
マイクロ電気機械システムの好ましい構成によれば、ベース部分および分路部分は、変形可能部分の表面から突出することなく、この部分に組み込むことができる。
この場合に、変形可能部分の表面に応力検出器があることで、その機械特性が変わることはない。
特に、変形可能部分の弾性および質量と、変形可能部分の機械振動の固有振動数とは、検出器があることで変わることはないか、きわめてわずかにしか変わらない。
【0021】
オプションとして、マイクロ電気機械システムは、変形可能部分に堅固に結合された2つの応力検出器を有することができる。
システムの1つの特定の構成によれば、2つの検出器は、変形可能部分の両面に置かれる。
この場合に、変形に関する差動測定を可能にするように2つの検出器を配置することができる。
「変形に関する差動測定」という表現は、本発明の中では、変形可能部分に置かれた2つのそれぞれの応力検出器から送られた検出信号間の減算から得られる測定値を意味すると解釈される。
そのような差動測定用に、本発明はさらに、2つのそれぞれの検出器につながる接続体に接続された少なくとも1つの電気差動測定回路を含むことができる。
この回路はまた、マイクロ電気機械システムに組み込むことができる。
例えば、そのような差動測定回路は、当業者には公知である、二重構造からなる単一のホイートストンブリッジまたはケルビンブリッジタイプ、または他の任意の差動測定ブリッジなどのブリッジを有することができる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、システムの変形可能部分は梁で構成することができる。
そのような梁は、さまざまな方法で、特に、梁の長手方向に対して垂直な曲げによってか、ねじりによってか、または伸長−圧縮によって変形させることができる。
【0023】
少なくとも1つの応力検出器は、梁上で、梁の表面の変形が特に大きい地点に置かれるのが好ましい。
そのような地点は、特に、梁の全長の中央に位置することができる。
有利にも、梁は自由端と、システムの固定部分に強固に連結された端部とを有することができる。
この場合、梁の変形とは、梁の自由端の変位である。
変形可能部分をそのように構成した場合、マイクロ電気機械システムの用途にもよるが、固定部分に連結された梁の端部に近接して、少なくとも1つの応力検出器を配置できるのが好ましい。
【0024】
特に、各検出器のベース部分上に電気接続体を設けることができるので、曲げによるか、ねじりによるか、または伸長−圧縮による梁の変形をこれらの接続体を用いて電気的に検出することができる。
オプションとして、2つの異なるモードの梁の変形を独立して検出できるように、検出器を構成することができる。
特に、1つの方向の曲げとねじりとによる梁の変形か、あるいは2つの特定の方向の曲げ変形を、電気接続体を用いて、独立してかつ同時に検出することができる。
【0025】
そのようなマイクロ電気機械システムは、多くの用途に適している。
本発明はまた、原子間力顕微鏡、流体の組成を分析する分析器、生物探知機、生物剤分析器、加速度計、および流体の特性を検出するセンサを提示することができ、上記のそれぞれは、本発明による少なくとも1つのマイクロ電気機械システムを含む。
【0026】
本発明はまた、そのようなマイクロ電気機械システムを使用して、システムが取り付けられた支持体の変形を検出することを提案する。
そのような支持体は、例えば、変形しやすい機械構造の一部や、相互に変化しやすいそれぞれの内部圧力を有する2つのコンパートメントの間の分離膜とすることができる。
【0027】
最後に、本発明は、上記に説明したようなマイクロ電気機械システムを製造するプロセスを提示する。
システムは、上側層を備えた主要部分を有する基板から製造され、上側層は中間層によって基板の主要部分から分離される。
プロセスは次のステップを有する。
(a)第1の電気伝導材料からなる伝導部分を上側層の表面に形成し、前記伝導部分は少なくともベース部分を有する。
(b)前記第1の材料よりも導電性が高い第2の材料からなる分路部分を、上側層の表面に、ベース部分に接触するように形成する。
(c)ベース部分と分路部分間の接触区域から離れてベース部分につながる一組の電気接続体を形成する。
(d)前記上側層の残留部分の少なくとも両側で上側層をエッチングし、前記残留部分は、ベース部分および分路部分を支持する上側層の区域から突出する。
(e)上側層の残留部分を含む基板の区域において、基板の主要部分および中間層を除去する。
【0028】
その結果、上側層の残留部分がマイクロ電気機械システムの変形可能部分を形成する。
【0029】
基板の主要部分および上側層はそれぞれ、シリコン(Si)をベースとした材料などの半導体材料で作ることができる。
中間層は、シリカ(SiO2)などの電気絶縁材料とすることができる。
この場合に、特に、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)タイプの市販の基板から始めてプロセスを実施できるので、プロセスはとりわけ費用がかからない。
さらに、集積電子回路を製造するのに一般的に使用される製造ツールの幾つかを使用してプロセスを実施できる。
特に、リソグラフィプロセスを使用して、ベースおよび分路という2つの部分の少なくとも一方を形成することができる。
オプションとして、上側層は、実質的に、単結晶、多結晶、または非晶質の層とすることができる。
【0030】
第1の伝導材料からなる伝導部分は、上側層の部分を最初にドープすることによって、ステップ(a)で形成することができる。
【0031】
そのようなプロセスを実施する1つの特定の方法により、ベース部分および分路部分を、変形可能部分の表面から突出することなく、システムの変形可能部分に組み込んだマイクロ電気機械システムを得ることが可能になる。
この場合に、ステップ(b)は、次のサブステップを有する。
(b1)前記上側層の中の分路部分に対応する部分を選択して、上側層に対する第2のドーピングを実施し、前記第2のドーピングは、第1のドーピングの濃度よりも高い濃度を有する。
(b2)上側層上で分路部分の上面を選択して、金属材料の部分を堆積させる。
(b3)基板を加熱して、金属材料を上側層内に拡散させ、分路層に浸透させる。
【0032】
オプションとして、ステップ(b1)で、伝導部分のうちの、ステップ(a)の第1のドーピングによってベース部分に隣接して生成された部分に、第2のドーピングを実施する。
その結果、ベース部分と分路部分の間に、応力検出器の寿命と感度に関して非常に好ましい電気および機械特性をもつ境界面を得ることができる。
【0033】
オプションとして、変形可能部分から突出することなく、分路部分と同時に電気接続体を形成することもできる。
このため、ステップ(b)およびステップ(c)を同時に以下のように行う。
ステップ(a)の第1のドーピングによって上側層に生成された伝導部分が、ベース部分、分路部分、および電気接続体を連結したものに相当する。
伝導部分のうちの、分路部分および電気接続体に相当する部分にステップ(b1)の第2のドーピングを同時にかつ選択的に行う。
ステップ(b2)で、分路部分および電気接続体の上面に金属材料の部分を同時にかつ選択的に堆積させる。
金属材料が分路部分内と電気接続体内に同時に拡散するように、ステップ(b3)の加熱を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
これらの図では、同じ参照符号は、同じ要素か、または同じ機能を有する要素を示す。
さらに、示したマイクロ電気機械システムの各部分の寸法は、実際の寸法または寸法比に合致したものではない。
特に、図を分かりやすくするために、異なる方向に沿った寸法は、必ずしも同じ倍率で再現されていない。
各図では、NおよびLはそれぞれ、示した各マイクロ電気機械システムの上方を向いた方向と長手方向とを表す。
【0035】
図1a〜図1cによれば、マイクロ電気機械システムは、梁1、固定部分110、および少なくとも1つの応力検出器10を有する。
梁1は、固定部分110の片側から始まり、長さDにわたって方向Lに対して平行に延びている。
梁1は、例えば、方向Nに沿った厚さが1μm(ミクロン)、長さDが約100ミクロンにほぼ等しく、幅が約10ミクロンにほぼ等しいプレートとすることができる。
梁は、方向N、Lに対して平行な平面内で曲げることによって、オプションとして、方向Lに対して平行な軸のまわりにねじることによって、変形させることができる。
梁1は、不可逆の塑性変形を受けることのない高い弾性を有するように、実質的に単結晶または非晶質の材料からなるのが好ましい。
このようにして、マイクロ電気機械システムは最大限の寿命を得る。
これを達成するために、ビーム1は、特に、単結晶シリコンまたは非晶質シリコンで作ることができる。
【0036】
固定部分110は、主要部100、シリカ(SiO2)からなる中間層101、およびシリコンからなる上側層102を有する。
説明した特定の実施形態では、梁1は、層102の、固定部分110の側面を超えた延長部からなる。
【0037】
検出器10は、ベース部分2および分路部分3を有する。
ベース部分2は、電荷キャリア密度が1014cm−3から1020cm−3のn型ドープしたまたはp型ドープした半導体から作ることができる。
分路部分3は金属であり、例えば、金で作ることができる。
部分2、3は、例えば、方形であり、隣接するそれぞれの面に沿って互いに接触している。
検出器10は、それに沿って部分2、3が互いに接触しているこれらの部分の面が、そこから梁1が延びる固定部分110のその側面に対して平行になるようにシステムに配置されている。
【0038】
図1aで示した第1の例示的な実施形態では、応力検出器10は、梁1が固定部分110と合流する地点とほぼ同じところで、ビーム1と固定部分110にまたがって配置されている。
さらに、部分2、3の接触面を、そこから梁1が延びる部分110のその側面とともに垂直に整列させて配置することができる。
このように、応力検出器は、例えば、梁1の自由端11に加えられる力が応力によってもたらされる場合に、これらの応力が特に高くなるシステム上の地点に配置される。
あるいは、部分2がそれ自体で梁1と固定部分110にまたがるように配置することもできる。
これらの環境ではともに、梁1の運動に対する検出器10の高い感度が得られる。
【0039】
一連の電気接続体がシステム上に配置されている。
これらの接続体は、ベース部分2と電気的に接触していて、それぞれ参照符号4a、4b、4c、および4dがついている。
接続体は、4電極の電圧検出器を形成するように構成することができる。
この場合、検出器に供給するための2つの接続体、例えば、4aおよび4dを介して、直流または交流の電流を検出器10に供給することができる。
この電流によって生じた電圧が、2つの別の接続体、例えば、4bおよび4cの間で検出される。
【0040】
あるいは、2つのみの電気接続体を使用して、2電極電圧検出器を形成することもできる。
これら2つの接続体は、ベース部分2と電気的に接触している。
この場合、接続体はそれぞれ、直流または交流の電流を検出器10に供給するためと、この電流によって生じた電圧を検出するための両方に使用される。
【0041】
図1bは、検出器10が梁1に沿って中間点に配置された、本発明によるマイクロ電気機械システムの第2の実施形態を示している。
さらに、システムは、ベース部分につながった8つの電気接続体を有する。
接続体4a〜4dは、図1aで示した第1の実施形態と同様に、ベース部分2に配置することができる。
一方で接続体4e、4fが、他方で接続体4g、4hが、ベース部分2の両横の側面に配置されている。
この場合、直流または交流の電気供給電流を接続体4b、4hを介して供給することができ、例えば、接続体4a、4eの間で電圧を検出することができる。
同一の接続体を使用して、電流を供給し、電圧を検出することも可能である。
このように、接続体4g、4hを介して電流を供給することができ、例えば、接続体4g、4cを使用して電圧を検出することができる。
従って、接続体4gは、2つの機能、すなわち、供給および検出機能を有する。
当業者ならば、接続体をこのように対で選択して、供給電流を供給し、電圧を検出して、曲げ、ねじり、および/または伸長−圧縮によってもたらされた、部分2、3内の電流分布の変化を高い感度で検出できると分かるであろう。
【0042】
図1cは、2つの応力検出器10、20がそれぞれ梁1の上と下に配置された、本発明によるマイクロ電気機械システムの第3の実施形態を示している。
さらに高い感度をもたらす差動検出を行うために、2つの検出器は、梁1の長さ方向に沿って同じレベルで配置されて、振幅相関のある検出信号を出力する。
異なる接続体セットが2つの検出器のそれぞれのベース部分2につながっている、すなわち、接続体4a〜hが検出器10につながり、接続体5a〜5hが検出器20につながっている。
接続体5a〜5hは、層102を通って、固定部分110の上面に容易に電気接続できるようにする適切なバイア穴を抜けることができる。
【0043】
例として取り上げた図1aによるマイクロ電気機械システムを製造する第1のプロセスを以下に説明する。
図2aを参照すると、集積電子回路基板は、上面を電気絶縁層101で覆われ、さらに単結晶または非晶質のシリコン層102で覆われた主シリコン部分100を有する。
そのような基板は市販され、SOI技術で電子回路を形成することを意図されている。
例えば、層101、102は、それぞれ厚さが200nmおよび1000nmである。
層102は、未ドープのシリコンで作られる。
【0044】
層102の全ウェハ面のドーピングは、規定された濃度のドープ剤を、層102の上面から開始して、決められた深さに埋め込むことで行われる。
方向Nの深さ方向に制限を受けるそのような埋め込みは、調整した電圧で加速されたドープ剤粒子からなるビームで層102の表面を走査することによって達成される。
こうして、厚さが、例えば、500nmのドープしたシリコンの層103が、層102のドープされていない残留部分の上に得られる(図2b)。
従って、これ以降、参照符号102は、上側シリコン層の未ドープ残留部分を表す。
【0045】
層103上でベース部分2を設ける位置に、第1のリソグラフィレジストマスクM1を形成する(図2c)。
マスクM1を形成するのに使用するリソグラフィプロセスは公知と考えられ、ここで取り上げることはしない。
次に、例えば、加速されたプラズマ粒子のビームFを、方向Nに対して平行であるが反対の方向で、システムの上面に向けることにより、マスクM1のある部分を除いて層103を除去する。
そのような除去方法は、ドライエッチングという用語で表される。
ドライエッチングは、層103をその全厚さにわたってエッチングするのに十分な時間だけ続けられる。
次いで、適切な溶液内でマスクM1を溶解させる。
こうして、検出器10のベース部分2となる第1のメサ構造を得ることができる(図2d)。
【0046】
次いで、分路部分3用の場所を除いた層102全体に第2のリソグラフィレジストマスクM2を形成する(図2e)。
特に、マスクM2はベース部分2を覆い、ベース部分の一方の側面と隣接する開口Oを有する。
次いで、例えば、熱蒸着によって、システム全体に金属層、例えば、金層を堆積させる。
次いで、マスクM2を除去する(図2f)。
マスクM2の開口Oにある金属層からなる残留部分は、分路部分3である第2のメサ構造を形成する。
分路部分はベース部分2に接して配置されている。
オプションとして、金層を形成する前にシステム上にチタン層(図示せず)を形成して、分路部分3のベース部分2に対する付着性を高めることができる。
【0047】
次いで、図2fに全体として参照符号4で示すオームタイプの電気接続体を形成する。
これらの接続体のオーム接触を形成する方法は公知と考えられ、ここで取り上げることはしない。
【0048】
次いで、層102上にリソグラフィレジストマスクM3(図2g)を形成する。
マスクM3の形状は、方向Nに対して垂直な平面内にある梁1の周縁部に対応する。
このマスクは、特に、部分2、3および接続体4を覆う。
次いで、シリカ層101が露出するまで、マスクM3によって保護されていない区域にある層102をエッチングする。
層101のシリコン材料に対して選別性のよいシリコンエッチングプロセスを使用するのが有利である。
こうして、梁1の横縁部および端部を形成する。
次いで、マスクM3を溶解させる(図2h)。
【0049】
最後に、システムの下面から、まず、部分100のシリコンをエッチングするプロセスを使用し、次いで、層101のシリカをエッチングするプロセスを使用して、梁1の下から基板の部分を除去する。
シリコン材料(シリカ)に対して選別性のよいシリカエッチングプロセスを使用することで、このステップ中に、梁1が確実に損傷しないようになる。
結局、システムは図1および図2iに示す構成になり、その構成では、梁1は、システムの部分110に強固に連結された固定端12と、自由端11を有する。
【0050】
端部11は、梁1の様々な変形モードによって変位することができる。
方向N、Lに対して平行な平面内での梁の曲げは、第1の変形モードになる。
梁1を同じ向きで方向Nに継続して曲げ、次いで反対の向きに継続して曲げている間、ベース部分2と分路部分3の間の境界面は圧縮を応力を受け、次いで引張り応力を受ける。
これらの応力はそれぞれ、部分2、3の間の境界面の電気抵抗に変化をもたらす。
この抵抗値が増えると、検出器10に供給される電流はベース部分2により多く配分され、接続体4a〜4hのうちの2つの間で検出される電圧は非常に高くなる。
反対に、ベース部分2と分路部分3の間の境界面の電気抵抗値が減ると、供給電流のより多くの部分が分路部分3を経由して進み、2つの接続体の間で検出される電圧は低くなる。
2つの接続体4c、4bを使用して、例えば、方向N、Lに対して平行な平面内での曲げに対する梁1の変形を検出することができる。
この場合に、測定した電圧はUcbである。
【0051】
方向Lに対して平行な軸のまわりの梁1のねじりと、層102に対して平行な平面内の梁の曲げは、梁1の2つの異なる変形モードになる。
これらの2つの異なるモードは逆対称である、すなわち、方向N、Lに対して平行な梁1の対称平面の両側にある、部分2と部分3の間の境界面の2つの半体は逆の応力を受ける。
これらの2つの異なるモードのそれぞれにおいて、梁1の変形を幾つかの方法で検出することができる。
特に、差分Uba−Udcを算出することが可能であり、ここで、Ubaは、接続体4b、4aの間の電圧であり、Udcは、接続体4d、4cの間の電圧である。
あるいは、ベース部分2が8つの電気接続体によって接続されている場合、差分Uhg−Ufeを算出することが可能であり、ここで、Uhgは、接続体4h、4gの間の電圧であり、Ufeは、接続体4f、4eの間の電圧である。
従って、電圧Uba、Ucb、Udcあるいは電圧Uhg、Ucb、Ufeを同時に測定することによって、梁1のねじりまたは層102の平面内の曲げを、方向Nの曲げから独立してかつ同時に検出することができる。
【0052】
応力を受けたときに異方性が変わる可変電気導電率を有する材料を、ベース部分2に対して選択することにより、曲げまたはねじりで梁1を変形中に、測定電圧を変化させることができるのがより好ましい。
そのような異方性は、応力がベース部分2に作用したときに出現する。
【0053】
マイクロ電気機械システムが、梁1の下に置かれた第2の応力検出器を含む場合(図1c)、システムを裏返し、図2a〜図2fに関連させて上記に説明した応力検出器を形成するステップを繰り返すことで、梁1の下面に第2の検出器を作る。
オプションとして、層102の最初の厚さ以内に2つの検出器のベース部分2を作ることができるように層102、103の厚さを変更する。
第2の検出器用のリソグラフィレジストマスクM1、M2の作成時に、例えば、2つの検出器が方向Nに沿って互いに垂直に並んで配置されるように、位置合わせステップを行う。
【0054】
そのような2検出器システムにより、感度が潜在的に2倍である、可動部分の移動に関する差動測定が可能になる。
特に、自由端11が方向Nに対して平行に、それと同じ向きに移動する梁1の曲げにより、以下の応力が発生する。
上側検出器10(図1c)に圧縮応力σが生じ、それにより、接続体4a〜4hのうちの2つの間で検出される電圧変化ΔUが発生する。
下側検出器20に引張り応力−σが生じ、それにより、セット4a〜4hのうちの上記2つの接続体と梁1に関して対称に配置されたセット5a〜5hのうちの2つの接続体の間で検出される逆の電圧変化−σUが発生する。
【0055】
層102に組み込むことができる、例えば、ホイートストンブリッジやケルビンブリッジタイプなどの公知の電子差動検出回路を使用して、2xΔUに等しい電圧変化を測定することができる。
【0056】
差動測定の実施を可能にする2検出器システム構成の第2の利点は、例えば、温度変化によって引き起こされる梁の伸長−圧縮に測定が感応しないという事実にある。
これは、温度変化によって2つの検出器内に生じる電圧変化が対の形で等しく、差動検出回路で実行される電圧減算で相殺されるからである。
【0057】
上記のマイクロ電気機械システムは、多くの用途、特に、方向Nに沿った曲げによる梁1の変形モードに使用するのに適している。
【0058】
第1の応用例によれば、梁1は、観測面の高さの変化を検出することを意図した原子間力顕微鏡の1つのアームの一部を形成する。
公知のように、そのような顕微鏡は、アームの自由端に配置され、観測面上を移動する先端部を有する。
高さや摩擦の変化などの、面に関する少なくとも1つの構造的特性、物理的特性、および/または化学的特性の変化が、検出される、曲げによるアームの変形を引き起こす。
そのような顕微鏡を操作する標準的な方法によれば、梁の対向する端部を観測面に対して垂直方向に移動させて面を観測し、異なる高さに対応する観測面上の地点間を先端部が移動するときに、梁が一定の変形を受ける。
図3aは、このような原始間力顕微鏡内にある本発明によるマイクロ電気機械システムの実装形態を概略的に示している。
梁1の自由端11には、試料1000の面S上を移動するものとした先端部1001を設けている。
システムの固定部分110は、部分110を面Sに対して平行に移動させるように設計された圧電アクチュエータ1002に取り付けられている。
応力検出器10は、図1aと同様に、梁1が部分110と合流する地点に近接して配置されている。
面Sに対して平行に移動することにより、面Sを走査することができる。
同時に、検出器10は接続体4a、4dの間に電流を供給され、例を用いて説明したこれら2つの接続体と、方向Nに沿った変位とは、CTRLで表した制御ユニット1003によって制御されて、2つの他の端子、例えば、4bおよび4c間で検出される電圧は一定になる。
ユニット1003によって制御される、面Sに対して平行な方向に沿った移動により、面Sの高さの変動が再現され、この移動は記録される。
そのような顕微鏡の操作は完全に電気的であり、これはとりわけ単純で、光学的な校正も位置合わせも必要としない。
さらに、この顕微鏡はコンパクトなので、例えば、真空チャンバや低温チャンバなどの制限された空間内で顕微鏡を使用することができる。
【0059】
特に、原子間力顕微鏡の構築へのこの応用例の場合、梁の上下に配置された2つの検出器を差動検出モードで使用することは有益であろう。
【0060】
第2の応用例によれば、流体の組成を分析する分析器は、マイクロチャネルや大型容器に置かれた、図1bによる少なくとも1つのマイクロ電気機械システムを有する。
決まった化学種の構成要素と選択的に反応できる固体化合物がシステムの梁に付着される。
固体化合物は、例えば、金層とすることができる。
流体をマイクロチャネルまたは容器に注入して、梁上の化合物と接触させる。
該当する種の構成要素を流体が含む場合、構成要素は化合物と反応し、化合物内に応力を発生させる。
これらの応力は、梁の変形を引き起こし、この変形は検出されて、既知の基準変形と比較される。
変形の度合いは、流体内にある化学種の構成要素の濃度によって決まる。
このタイプの幾つかの分析器を同じマイクロチャネル内に置いて、流体の流れに沿った任意の1つの種の構成要素の濃度変化を検出するか、または異なる種の構成要素の存在を同時に検出することができる。
後者の場合、システムの梁に付着させる化合物は、流体内に存在することが望まれる様々な種に応じて選択される。
【0061】
分子マーカを必要としない生物探知機の構築が、本発明のよるマイクロ電気機械システムの第3の応用例になる。
そのような生物探知機は、分析される流体に最初に含まれる分子が、変形可能部分の定めた区域に吸着されたときに、変形可能部分が変形するように設計した本発明によるマイクロ電気機械システムを有することができる。
分子の吸着により、吸着区域にある変形部分の表面エネルギが変化して、応力が発生する。
これは、吸着区域に近接して配置された検出器によって検出される変形をもたらす。
【0062】
そのような生物探知機の第1の動作モードによれば、分析する流体に含まれる分子は変形可能部分に直接吸着される。
例えば、この変形可能部分は、吸着区域内に金層を有し、分子は、分子自体が担持するチオール(−SH2)末端基を介して金層に吸着される。
図3bは、図1bまたは図1cによるマイクロ電気機械システムで構築された生物探知機の上記の動作を概略的に示している。
梁1は金層13で覆われ、分析される流体内にあって最初は拘束されていない分子Mはそれぞれ、文字Sで記号として示したチオール末端基を有する。
公知のように、各チオール官能基は、分子が梁1上に吸着されたときに、対応する分子と層13の間を連結する。
【0063】
第2の動作モードによれば、分析する流体に最初に含まれる分子は、変形可能部分に結合した化学官能基によって変形可能部分に吸着される。
その結果、マイクロ電気機械システムの変形可能部分は、化学官能基によって吸着区域で表面改質される。
これらの化学官能基は、特定の分子を選択的に結合するように選択される。
従って、マイクロ電気機械システムの変形可能部分に結合された化学官能基のみを変えることによって、異なるタイプの分子を検出する検出器を作ることができる。
図3cは、この第2の動作モードにとっての図3bに相当する。
梁1によって形成された変形可能部分は、この場合にも金層13を含む。
例えば、官能基の主要な原子に関連させて−COONHSで表した、活性エステルに変換される酸性タイプの化学官能基14は、文字Sで記号として示したチオール末端基を介して層13に結合される。
官能基14は自己組織化し得る、層13上の永久分子層を形成する。
この場合に、分子14(M)は互いに対して平行に配向される。
こうして、分子Mは梁1に高密度で結合され、それによって、流体内の分子の濃度をより広い濃度範囲で測定することが可能になる。
そのような生物探知機は、アミノ(−NH2)官能基を含むDNAタイプの分子Mに適する。
そのような分子Mを梁1に結合すると、分子のアミノ官能基と層13に結合された官能基14の1つとの間でペプチド結合が確立される。
【0064】
生物剤分析器の構築は、本発明によるマイクロ電気機械システムの第4の応用例になる。
そのような分析器の動作原理は、マイクロシステムの変形可能部分に置かれた細胞堆積物の表面張力の変化に基づいている。
表面張力のためにマイクロシステムが変形し、それを検出する。
特に、そのような生物剤分析器は、医学分析を行うのに適している。
分析器のサイズが小さければ、分析器を患者収容領域に設置することができる。
そのような体制にすることで、患者から採集した細胞標本を遠隔の試験所に送る必要をなくすことが可能になる。
これにより、必要な物流管理が整理され、各患者に結果を送り返すのに必要な時間が短縮される。
【0065】
生物探知および生物剤分析のために流体の組成を分析する用途に、本発明によるマイクロ電気機械システムを使用することの第1の利点は、システムが受ける変形を検出するための光源がないことにある。
これは、そのような光源が、得られた結果を害する光化学反応を誘起することがあるからである。
【0066】
第2の利点は、採用した応力検出器の高い感度からもたらされる。
これは、変形可能部分を有するマイクロ電気機械システムで、感度が限定された検出器を使用すると、変形が十分大きなものとなるように、変形部分が軟性であることが必要になるからである。
このため、システムは大きな時定数を有し、この大きな時定数は、素速い分析の実行を妨げる。
通常、そのようなシステムを使用して観測される現象は、検出を可能にするために10分よりも長く持続しなければならず、それによって、遷移現象の観測が非常にゆっくりと変化するものに限定される。
本発明で使用する応力検出器の感応性により、システムの変形可能部分は、短い遷移現象の観測に適合する高速検出を可能にする高い剛性を有することができる。
さらに、本発明によるシステムを使用して行う検出の高速性は、多数の連続測定の実施に適合する。
この高速性は、多数の標本を、例えば、様々な患者に対応して、連続的に分析しなければならない医学分析用途に特に有益である。
【0067】
第5の応用例によれば、マイクロ電気機械システムは加速度計の構成要素となることができる。
例えば、図1aから図1cによる梁を有するシステムが方向Nに対して平行な加速度を受けると、梁1は、その慣性の作用による曲げによって変形する。
梁の曲率は、加速度の値によって決まる。
検出器が接続体4a、4dから長期的に電流を供給されると、接続体4b、4cの間で検出された電圧は、加速度のリアルタイムの測定値になる。
そのような加速度計は、特に、信頼でき、単純で、かつ安価である。
その加速度計は、特に、エアバッグなどの多くの装置に容易に組み込むことができる。
この場合に、所定のしきい値を超えた検出電圧に相当する加速度になったときに、システムは、エアバッグが膨らむのを可能にする。
【0068】
第6の応用例によれば、マイクロ電気機械システムは、支持体の変形を検出する検出器となる。
例えば、図3dによれば、両端部12a、12bが固定部分110の2つの側面に結合された梁1を有することができる。
梁1は、固定部分の2つの対向する部分110a、110bをそれぞれ結合し、部分110の中間部分110cの上面をまたぐブリッジを形成する。
部分110は、その変形を測定すべき支持体にその下面で取り付けられるようになっている。
部分110cは、部分110a、110bよりも方向Nに沿って薄くなっているので、部分110は、部分110cが曲がることによって、支持体とともに変形することができる。
この変形により、梁1の端部12a、12bに、さらに梁の全長に沿って応力が生じ、応力検出器10を用いてこの応力を測定することができる。
検出器10は、応力が最も大きくなる地点に合わせて、端部12aまたは端部12bの一方か、あるいは端部12a、12bの間の他の場所に配置することができる。
このようにして、特に、航空機の部品、建造物の部品、橋の部品、レール、または掘削ヘッドの部品が受ける変形を調査することが可能である。
このようにして、薄膜の両側に加えられた可変圧力を受ける薄膜の変形を検出し、それから圧力差の大きさを推定することも可能である。
【0069】
本発明はまた、動的モードで機能することもできる。
梁1は、公知の励振方法を使用して、固有振動モードの周波数に近いかまたは等しい周波数で振動するようにセットされる。
この振動は、時間の関数として周期的に変化する測定可能な応力を発生させる。
1つまたは2つの応力検出器を用いた振動の振幅または位相の測定、あるいはそれらの周波数変動の測定は、多くのさらなる用途に有用である。
【0070】
例えば、動的モードで使用するマイクロ電気機械システムは、流体密度解析器の構成要素なることができる。
これは、可動部分の振動の減衰が、可動部分が接触している流体の密度によって決まるからである。
流体が高密度になるほど、振動はより急激に減衰する。
従って、振動の振幅または位相を測定することによって、流体の密度を求めることが可能である。
【0071】
動的モードで使用するマイクロ電気機械システムはまた、質量センサの構成要素となることができる。
f0で表される梁の振動の固有周波数は、調和振動子に対する公知の式f02=k/mに従って、この梁の質量mによって決まり、kは、梁のスティフネス定数である。
分子または他の重量のある種が梁1に吸着すると、梁の見かけの質量が変わり、1つまたは2つの応力検出器で測定できる態様で、その固有周波数が変わる。
【0072】
本発明によるマイクロ電気機械システムを製造する第2のプロセスを図4a〜図4d、図5、および図6を参照して以下に説明する。
この第2のプロセスは、ベース部分および分路部分が変形可能部分から突出することなく、変形可能部分に組み込まれたマイクロ電気機械システムをもたらす(図6)。
【0073】
図2aに示したものと同一のSOI基板にリソグラフィレジストマスクM’1を堆積させ、このマスクは、層102の部分104に相当する開口を除いて上側層102を覆う(図4a)。
次いで、イオン注入ビームI1を使用して、部分104を選択的にドープする。
ビームI1は、方向Nに対して平行であるが、反対の向きで、マスクM’1内の開口を通って層102の上面に向けられる。
ビームI1のイオンの性質とそれらの加速電圧は、部分104に行いたいドーピングのタイプと、部分104の厚さに応じて、それ自体公知の態様で決まる。
このドーピングはn型で、ビームI1は、リン(P)イオンのビームであるのが好ましい。
こうして、第1の濃度のドーピングを部分104に実施し、部分104は導電性になる。
第1の濃度は、層102がシリコンからなる場合に、1014cm−3から1020cm−3とすることができる。
部分104は、例えば、厚さを500nmとすることができる。
【0074】
マスクM’1を除去し、これをリソグラフィマスクM’2と置き換え、このリソグラフィマスクM’2は、部分104のうちの、作られる分路部分3に対応する部分上に配置された開口Oを有する(図4b)。
マスクM’2は、分路部分3以外の層102の上面を覆う。
マスクM’2で覆われた部分104のその部分は、応力検出器のベース部分2に該当する。
【0075】
次いで、第2のイオン注入ビームを用いて、部分104の露出部分に第2のドーピングを実施する。
第2のドーピングは、濃度を、例えば、1021cm−3程度としてより高くした、第1のドーピングと同じタイプのものである。
第2のドーピングは分路部分3を画定する。
前もって第1のドーピングを受け入れた導電性部分104内で、分路部分3に対する第2のドーピングを行うものとしたこの作業手順によって、部分2、3の間の適切な電気接触が確実になる。
さらに、層102の材料は、部分2、3の間で一続きであるので、その後に、部分2、3の間にクラックが出現することは決してあり得ない。
従って、得られた検出器は寿命が非常に長くなる。
【0076】
次いで、例えば、金で作られた金属層30をシステム上に堆積させる(図4c)。
開口Oでは、この層の一部が分路部分2と接触している。
【0077】
層30の、分路部分2(3)上に配置されたその部分だけがシステム上に残るようにマスクM’2を除去する。
【0078】
次いで、基板110を十分高い温度に加熱し、層30の残留部分の金属を分路部分3内に拡散させる(図4d)。
加熱温度は、例えば、400°以上とすることができる。
加熱後、分路部分3は金属類の挙動を呈する。
従って、その電気導電性は、第1のドーピングによってのみ付与されたベース部分2の電気導電性よりもはるかに大きい。
【0079】
次いで、応力検出器を作る。
この場合、梁の形態とすることができるマイクロ電気機械システムの変形可能部分および電気接続体については、図2g〜図2iを参照してすでに説明した態様で形成することができる。
【0080】
得られたシステムを図6に示す。
図1aに示したシステムとは異なり、検出器10は、ここでは、梁の上面から突出することなく、梁1に組み込まれている。
この方法では、梁1の機械特性が損なわれることがない。
【0081】
さらに、図6の検出器10は、参照符号4a、4bの2つの電気接続体によってのみ接続され、これらの接続体は、同時に、検出器に電流を供給し、かつ部分2の電圧を検出する。
【0082】
オプションとして、接続体の数量に係わらず、これらの接続体は、特定のステップを追加する必要なく、分路部分3と同時に形成することができる。
このため、マスクM’2は、図5の平面図に示した開口を有する。
開口Oは別として、マスクM’2は、2つの接続体4a、4bにそれぞれ対応する2つのさらなる開口Oa、Obを有する。
図4b〜図4dを参照して上記に説明したステップは、層102の、部分3に対応するその部分と、電気接続体に対応するそれらの部分で同時に実施される。
第1のドーピングに使用するマスクM’1もまた、マスクM’2の開口Oa、Obと同一の開口を有するのが好ましい。
従って、接続体4a、4bは、自動的に、ベース部分2と機能的電気接触をもつ。
【0083】
最後に、ベース部分2を構成する第1の電気導電性材料は、可変電気導電率を有するように選択されるのが好ましく、可変電気導電率の異方性は、部分2が応力を受けたときに変わる。
検出器10が受ける応力によって変わるそのような異方性は、他の物理的効果に加えて、ベース部分2内の電流の進路を様々に増やすのに寄与する。
このようにして、検出器10の感度を高めることができる。
【0084】
例えば、第1の伝導材料は、実質的に、立方構造の単結晶シリコンをベースとすることができる。
従って、ベース部分2および分路部分3は、第1の伝導材料であるシリコンの[110]軸に対してほぼ垂直な隣接する側面をそれぞれ有するように有利に形成される。
部分2の結晶軸に対して部分2、3の間の境界面をそのような向きにすることで、検出器の感度に関する異方性の効果を最大限にすることができる。
このため、基板110の層102を、最初から単結晶シリコンで作ることができる。
次いで、作られる梁1の長手方向Lが層102の[110]軸に対して平行になるか、またはこの結晶軸と小さい角度をなすように、マイクロ電気機械システムの製造を開始するまでに、基板110をその上面に対して平行なまま回転することができる。
【0085】
当然のことながら、本発明は、図1a〜図1cを参照して詳細に説明したマイクロ電気機械システムに限定されるものではない。
想定される用途に応じて、これらのシステムを適合させることができる。
特に、変形可能部分の形状、材料、および寸法ならびに/または応力検出器の形状、材料、および寸法は、検出器のそれぞれのベース部分につながる電気接続体の数量とともに、各用途の特定の要求に応じて修正することができる。
【0086】
そのような修正の例を示すと、応力検出器は、測定されるべき応力に対して、図で示したものとは異なる向きに合わせることができる。
ベース部分と分路部分の間の境界面は、応力の方向に対して垂直にすることができるが、代替案として、応力の方向に対して平行に向けることもできるし、または、オプションとして、前記方向に対して斜めに向けることもできる。
ベース部分と分路部分の間の境界面の向きについては、特に、測定する応力の方向が最初から分かっている場合に、最大限の検出感度を得るように選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
他の本発明の特徴および効果は、非限定的な例示的な実施例の以下の添付の図面に関して説明および実施の方法において明らかになる。
【図1a】本発明による1つ目のマイクロ電気機械システムの透視図である。
【図1b】本発明による1つ目のマイクロ電気機械システムの透視図である。
【図1c】本発明による1つ目のマイクロ電気機械システムの透視図である。
【図2a】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2b】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2c】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2d】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2e】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2f】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2g】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2h】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2i】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図3a】本発明によってマイクロ電気機械システムの個別の活用法を示す図である。
【図3b】本発明によってマイクロ電気機械システムの個別の活用法を示す図である。
【図3c】本発明によってマイクロ電気機械システムの個別の活用法を示す図である。
【図3d】本発明によってマイクロ電気機械システムの個別の活用法を示す図である。
【図4a】本発明によってマイクロ電気機械システムを提示する第2の方法の連続したステップを示す図である。
【図4b】本発明によってマイクロ電気機械システムを提示する第2の方法の連続したステップを示す図である。
【図4c】本発明によってマイクロ電気機械システムを提示する第2の方法の連続したステップを示す図である。
【図4d】本発明によってマイクロ電気機械システムを提示する第2の方法の連続したステップを示す図である。
【図5】図4a―4dに示す第2の方法の改善を示す図である。
【図6】図4a―4dおよび図5に示す第2の方法によって取得されるマイクロ電気機械システムの透視図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部分と応力検出器を有するマイクロ電気機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ電気機械システムまたはMEMSは、可動部分を含む一体化された電子装置である。
マイクロ電気機械システムは、可動部分を製造するための製造技術を含む、集積電子回路用の標準製造技術を使用して製造される。
そのようなシステムは、特に、共振器やマイクロスイッチを形成することができる。
システムの中には、可動部分の位置を検出する検出器を含むものがある。
この検出器により、システムの状態を観測したり、あるいは、例えば、システムが周波数フィルタである場合に、可動部分の変位に対応する電気出力信号を送出したりすることが可能になる。
公知の位置検出器は、その静電容量が可動部分の位置に応じて変わるコンデンサからなるか、または可動部分に担持されたMOSトランジスタのゲート部からなる。
これらの位置検出器の動作は、可動部分を囲んで存在する周囲媒体の誘電性の導電率に依存する。
ここで、幾つかの用途については、特に、液体またはガス状媒体内で、この導電率が変動することがあり、これは、検出結果を不正確にする。
MEMSに組み込まれる他の検出器には、圧電材料の一部からなるものがある。
しかし、この場合、MEMSの可動部品の位置については、交互応力が作用する場合にのみ分かる。
【0003】
さらに、上記の欠点の一部がなくなった、可動部分の位置を検出する高分解能の検出器が開発された。
そのような検出器のうち、可動部分上での光ビーム、通常では、レーザビームの反射に基づく光検出器について言及する。
この場合、一組の光検出器上のビームの衝突点は、移動部品の位置に応じて変わる。
しかし、そのような光検出器は、別の欠点を有する、すなわち、その検出器はかさばり、可動部分が反射性であることを必要とし、前記部品を囲む周囲材料が透過性であることを必要とする。
さらに、正確な光学的配列および校正が必須である。
最後に、ビームは、測定に関する解釈を誤らせがちな寄生光化学反応を引き起こすことがあるので、光ビームの使用は、特定の用途、特に、化学用途に適合しない。
【0004】
互いにきわめて接近した導電性材料の2つの部分間にあるトンネル効果に基づく検出器もある。
これらの検出器では、トンネル効果電流の強度を使用して、2つの部分の間の距離を測定する。
しかし、そのような検出器の特性は、非線形性が高く、MEMS内に現在作られている可動部分の弾性定数に適合しない。
さらに、トンネル電流が典型的な検出信号となるのに十分なだけ安定するように、そのようなトンネルタイプの検出器を高い真空状態で使用することが必要である。
これは、環境に影響を与えるかなりの制約をもたらし、この制約によって、このタイプの検出器の使用が限定される。
【0005】
最後に、特定のMEMSでは、可動部分の位置を検出する検出器の代わりに応力検出器を使用する。
そのような検出器は通常、MEMSの可動部分の圧電的挙動に基づいていて、位置検出器よりも外部摂動の影響を受けにくい。
しかし、検出の感度は、可動部分の構成材料固有のピエゾ抵抗によって制限されるために通常低い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の1つの目的は、システムの状態を検出する検出器を内蔵するが、上記の欠点がないマイクロ電気機械システムを提案することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、多くの用途に使用することができ、特に、様々な周囲媒体内で使用できるマイクロ電気機械システムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、変形可能部分と、変形可能部分に強固に結合された少なくとも1つの応力検出器とを有するマイクロ電気機械システムを提示する。
各応力検出器それ自体は、導電性を有するベース部分および分路部分であって、前記部分のそれぞれの隣接する側面に沿って、互いに電気的に接触するように変形可能部分上に並置され、分路部分がベース部分の電気導電性よりも高い電気導電性を有する、ベース部分および分路部分と、前記ベース部分が分路部分と接触している接触区域から離れて、ベース部分に接続された一組の電気接続体であって、ベース部分および分路部分内の電流分布の変化を、前記接続体を使用して電気的に検出できるように構成された一組の電気接続体とを有する。
【0009】
さらに、ベース部分および分路部分のそれぞれの材料は、前記部分の間の接触抵抗がシステムの変形に応じて変わるように選択される。
【0010】
このため、本発明によれば、変形可能部分と検出器は、同一のマイクロ電気機械システム内で一体とされる。
そのような一体化により、コンパクトなアセンブリを得ることができる。
その結果、異なる用途に対応した多くの装置にシステムを容易に導入することができる。
【0011】
さらに、同一システム内での変形可能部分と検出器のこの一体化により、変形可能部分と検出器の両方を製造するのに、一貫した製造プロセスを使用することが可能になる。
これにより、全体的な製造コストが下がる。
特に、集積電子回路の製造技術を使用して、システムを完全に組み立てることができ、その技術は、現時点で完全に解明されており、システムを小型化し、高い製造歩留まりで大量生産することを可能にする。
これらの製造技術はまた、電子測定回路をマイクロ電気機械システムに組み込むのを可能にして、高い感度と高い測定精度を得ることができるようにする。
【0012】
マイクロ電気機械システムに組み込まれた検出器は、応力検出器タイプとされる。
そのような検出器は、特に、信頼できる検出結果を提供する。
特に、このタイプの検出器が、変形を受けることを意図された部分に直接取り付けられたならば、システムと接触している流体媒体の誘電導電率の変動によって検出結果が乱されることはない。
従って、多数の用途、特に、システムを、液体でも気体でも、流体に浸す用途に本発明によるシステムを使用することができる。
【0013】
さらに、本発明によるシステムで使用される応力検出器の感度は、ベース部分と分路部分の間の接触抵抗の変化だけでなく、2つの部分のそれぞれの材料の電気伝導特性の違いによる効果にも基づいている。
得られた感度は高く、マイクロ電気機械システムのきわめて小さい変形を検出することを可能にする。
【0014】
ベース部分は半導体材料から作られ、分路部分は金属類からなるのが好ましい。
従って、ベース部分と分路部分は電気導電率に大きな差があり、その結果、検出器の感度がいっそう高くなる。
これらの条件下で、可動部分の1オングストローム程度の変位に相当する変形を検出することができる。
例として、ベース部分は、インジウム(In)合金、ならびにアンチモン(Sb)またはガリウム(Ga)と砒素との合金を含むシリコン(Si)で作ることができ、分路部分は、特に、アルミニウム(Al)または金(Au)で作ることができる。
【0015】
ベース部分の材料は、可変の電気導電率を有することができ、この材料に応力がかかったときに、電気導電率の異方性が変化するのが好ましい。
そのような異方性は、ベース部分に応力が加えられたときに出現し、応力の方向に応じて配向され得る。
さらに、ベース部分の材料の、異なる方向に対応する2つの導電率値には、応力の大きさで決まる導電率値間の差があり、この差の符号は、圧縮応力か、または引張り応力かといった応力の種類に依存することがあり、また、ベース部分の材料の電気ドーピングのタイプに依存することもある。
【0016】
ベース部分の材料の電気導電率に関するそのような可変異方性は、この材料が、非晶質材料、多結晶材料、または単結晶材料である場合に出現することができる。
例えば、ベース部分は、実質的に、立方構造の単結晶のシリコンを主成分(ベース)とすることができる。
この場合に、この立方構造の[110]軸が、互いに隣接するベース部分と分路部分のそれぞれの側面に対してほぼ垂直な場合に、特に高い検出感度が得られる。
【0017】
検出器の感度をさらに上げるために、一組の電気接続体は、少なくとも3つの接続体を有し、その接続体のうちの2つは、検出器に電流を供給するように設計され、2つの接続体は、この電流によって生じる電圧を検出するように設計される。
そのような構成により、接続体の接触抵抗により生じる、検出接続体の間の測定される電圧への関与を軽減するかまたはなくすことが可能になる。
オプションとして、接続体の1つは、電流供給用と電圧検出用の両方に使用することができる。
【0018】
あるいは、検出器の一組の電気接続体は、2つの接続体のみを有してもよく、その接続体はそれぞれ、電流供給用と電圧検出用の両方に使用される。
この場合に、検出ノイズに対する検出電圧の比が改良される。
【0019】
応力検出器は、変形可能な部分上で、変形および/または応力が大きいかまたは最大となる区域に置かれるのが好ましい。
より正確には、ベース部分と分路部分の間の境界面またはベース部分の中央部は、変形部分の中の、変形および/または応力が最大となるその区域に配置される。
検出器のそのような位置決めは、検出器に伝わる応力に応じて大きく変わる物理パラメータ、すなわち、ベース部分の材料の導電率異方性またはベース部分と分路部分の間の電気接触抵抗に基づいて行う。
【0020】
マイクロ電気機械システムの好ましい構成によれば、ベース部分および分路部分は、変形可能部分の表面から突出することなく、この部分に組み込むことができる。
この場合に、変形可能部分の表面に応力検出器があることで、その機械特性が変わることはない。
特に、変形可能部分の弾性および質量と、変形可能部分の機械振動の固有振動数とは、検出器があることで変わることはないか、きわめてわずかにしか変わらない。
【0021】
オプションとして、マイクロ電気機械システムは、変形可能部分に堅固に結合された2つの応力検出器を有することができる。
システムの1つの特定の構成によれば、2つの検出器は、変形可能部分の両面に置かれる。
この場合に、変形に関する差動測定を可能にするように2つの検出器を配置することができる。
「変形に関する差動測定」という表現は、本発明の中では、変形可能部分に置かれた2つのそれぞれの応力検出器から送られた検出信号間の減算から得られる測定値を意味すると解釈される。
そのような差動測定用に、本発明はさらに、2つのそれぞれの検出器につながる接続体に接続された少なくとも1つの電気差動測定回路を含むことができる。
この回路はまた、マイクロ電気機械システムに組み込むことができる。
例えば、そのような差動測定回路は、当業者には公知である、二重構造からなる単一のホイートストンブリッジまたはケルビンブリッジタイプ、または他の任意の差動測定ブリッジなどのブリッジを有することができる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、システムの変形可能部分は梁で構成することができる。
そのような梁は、さまざまな方法で、特に、梁の長手方向に対して垂直な曲げによってか、ねじりによってか、または伸長−圧縮によって変形させることができる。
【0023】
少なくとも1つの応力検出器は、梁上で、梁の表面の変形が特に大きい地点に置かれるのが好ましい。
そのような地点は、特に、梁の全長の中央に位置することができる。
有利にも、梁は自由端と、システムの固定部分に強固に連結された端部とを有することができる。
この場合、梁の変形とは、梁の自由端の変位である。
変形可能部分をそのように構成した場合、マイクロ電気機械システムの用途にもよるが、固定部分に連結された梁の端部に近接して、少なくとも1つの応力検出器を配置できるのが好ましい。
【0024】
特に、各検出器のベース部分上に電気接続体を設けることができるので、曲げによるか、ねじりによるか、または伸長−圧縮による梁の変形をこれらの接続体を用いて電気的に検出することができる。
オプションとして、2つの異なるモードの梁の変形を独立して検出できるように、検出器を構成することができる。
特に、1つの方向の曲げとねじりとによる梁の変形か、あるいは2つの特定の方向の曲げ変形を、電気接続体を用いて、独立してかつ同時に検出することができる。
【0025】
そのようなマイクロ電気機械システムは、多くの用途に適している。
本発明はまた、原子間力顕微鏡、流体の組成を分析する分析器、生物探知機、生物剤分析器、加速度計、および流体の特性を検出するセンサを提示することができ、上記のそれぞれは、本発明による少なくとも1つのマイクロ電気機械システムを含む。
【0026】
本発明はまた、そのようなマイクロ電気機械システムを使用して、システムが取り付けられた支持体の変形を検出することを提案する。
そのような支持体は、例えば、変形しやすい機械構造の一部や、相互に変化しやすいそれぞれの内部圧力を有する2つのコンパートメントの間の分離膜とすることができる。
【0027】
最後に、本発明は、上記に説明したようなマイクロ電気機械システムを製造するプロセスを提示する。
システムは、上側層を備えた主要部分を有する基板から製造され、上側層は中間層によって基板の主要部分から分離される。
プロセスは次のステップを有する。
(a)第1の電気伝導材料からなる伝導部分を上側層の表面に形成し、前記伝導部分は少なくともベース部分を有する。
(b)前記第1の材料よりも導電性が高い第2の材料からなる分路部分を、上側層の表面に、ベース部分に接触するように形成する。
(c)ベース部分と分路部分間の接触区域から離れてベース部分につながる一組の電気接続体を形成する。
(d)前記上側層の残留部分の少なくとも両側で上側層をエッチングし、前記残留部分は、ベース部分および分路部分を支持する上側層の区域から突出する。
(e)上側層の残留部分を含む基板の区域において、基板の主要部分および中間層を除去する。
【0028】
その結果、上側層の残留部分がマイクロ電気機械システムの変形可能部分を形成する。
【0029】
基板の主要部分および上側層はそれぞれ、シリコン(Si)をベースとした材料などの半導体材料で作ることができる。
中間層は、シリカ(SiO2)などの電気絶縁材料とすることができる。
この場合に、特に、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)タイプの市販の基板から始めてプロセスを実施できるので、プロセスはとりわけ費用がかからない。
さらに、集積電子回路を製造するのに一般的に使用される製造ツールの幾つかを使用してプロセスを実施できる。
特に、リソグラフィプロセスを使用して、ベースおよび分路という2つの部分の少なくとも一方を形成することができる。
オプションとして、上側層は、実質的に、単結晶、多結晶、または非晶質の層とすることができる。
【0030】
第1の伝導材料からなる伝導部分は、上側層の部分を最初にドープすることによって、ステップ(a)で形成することができる。
【0031】
そのようなプロセスを実施する1つの特定の方法により、ベース部分および分路部分を、変形可能部分の表面から突出することなく、システムの変形可能部分に組み込んだマイクロ電気機械システムを得ることが可能になる。
この場合に、ステップ(b)は、次のサブステップを有する。
(b1)前記上側層の中の分路部分に対応する部分を選択して、上側層に対する第2のドーピングを実施し、前記第2のドーピングは、第1のドーピングの濃度よりも高い濃度を有する。
(b2)上側層上で分路部分の上面を選択して、金属材料の部分を堆積させる。
(b3)基板を加熱して、金属材料を上側層内に拡散させ、分路層に浸透させる。
【0032】
オプションとして、ステップ(b1)で、伝導部分のうちの、ステップ(a)の第1のドーピングによってベース部分に隣接して生成された部分に、第2のドーピングを実施する。
その結果、ベース部分と分路部分の間に、応力検出器の寿命と感度に関して非常に好ましい電気および機械特性をもつ境界面を得ることができる。
【0033】
オプションとして、変形可能部分から突出することなく、分路部分と同時に電気接続体を形成することもできる。
このため、ステップ(b)およびステップ(c)を同時に以下のように行う。
ステップ(a)の第1のドーピングによって上側層に生成された伝導部分が、ベース部分、分路部分、および電気接続体を連結したものに相当する。
伝導部分のうちの、分路部分および電気接続体に相当する部分にステップ(b1)の第2のドーピングを同時にかつ選択的に行う。
ステップ(b2)で、分路部分および電気接続体の上面に金属材料の部分を同時にかつ選択的に堆積させる。
金属材料が分路部分内と電気接続体内に同時に拡散するように、ステップ(b3)の加熱を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
これらの図では、同じ参照符号は、同じ要素か、または同じ機能を有する要素を示す。
さらに、示したマイクロ電気機械システムの各部分の寸法は、実際の寸法または寸法比に合致したものではない。
特に、図を分かりやすくするために、異なる方向に沿った寸法は、必ずしも同じ倍率で再現されていない。
各図では、NおよびLはそれぞれ、示した各マイクロ電気機械システムの上方を向いた方向と長手方向とを表す。
【0035】
図1a〜図1cによれば、マイクロ電気機械システムは、梁1、固定部分110、および少なくとも1つの応力検出器10を有する。
梁1は、固定部分110の片側から始まり、長さDにわたって方向Lに対して平行に延びている。
梁1は、例えば、方向Nに沿った厚さが1μm(ミクロン)、長さDが約100ミクロンにほぼ等しく、幅が約10ミクロンにほぼ等しいプレートとすることができる。
梁は、方向N、Lに対して平行な平面内で曲げることによって、オプションとして、方向Lに対して平行な軸のまわりにねじることによって、変形させることができる。
梁1は、不可逆の塑性変形を受けることのない高い弾性を有するように、実質的に単結晶または非晶質の材料からなるのが好ましい。
このようにして、マイクロ電気機械システムは最大限の寿命を得る。
これを達成するために、ビーム1は、特に、単結晶シリコンまたは非晶質シリコンで作ることができる。
【0036】
固定部分110は、主要部100、シリカ(SiO2)からなる中間層101、およびシリコンからなる上側層102を有する。
説明した特定の実施形態では、梁1は、層102の、固定部分110の側面を超えた延長部からなる。
【0037】
検出器10は、ベース部分2および分路部分3を有する。
ベース部分2は、電荷キャリア密度が1014cm−3から1020cm−3のn型ドープしたまたはp型ドープした半導体から作ることができる。
分路部分3は金属であり、例えば、金で作ることができる。
部分2、3は、例えば、方形であり、隣接するそれぞれの面に沿って互いに接触している。
検出器10は、それに沿って部分2、3が互いに接触しているこれらの部分の面が、そこから梁1が延びる固定部分110のその側面に対して平行になるようにシステムに配置されている。
【0038】
図1aで示した第1の例示的な実施形態では、応力検出器10は、梁1が固定部分110と合流する地点とほぼ同じところで、ビーム1と固定部分110にまたがって配置されている。
さらに、部分2、3の接触面を、そこから梁1が延びる部分110のその側面とともに垂直に整列させて配置することができる。
このように、応力検出器は、例えば、梁1の自由端11に加えられる力が応力によってもたらされる場合に、これらの応力が特に高くなるシステム上の地点に配置される。
あるいは、部分2がそれ自体で梁1と固定部分110にまたがるように配置することもできる。
これらの環境ではともに、梁1の運動に対する検出器10の高い感度が得られる。
【0039】
一連の電気接続体がシステム上に配置されている。
これらの接続体は、ベース部分2と電気的に接触していて、それぞれ参照符号4a、4b、4c、および4dがついている。
接続体は、4電極の電圧検出器を形成するように構成することができる。
この場合、検出器に供給するための2つの接続体、例えば、4aおよび4dを介して、直流または交流の電流を検出器10に供給することができる。
この電流によって生じた電圧が、2つの別の接続体、例えば、4bおよび4cの間で検出される。
【0040】
あるいは、2つのみの電気接続体を使用して、2電極電圧検出器を形成することもできる。
これら2つの接続体は、ベース部分2と電気的に接触している。
この場合、接続体はそれぞれ、直流または交流の電流を検出器10に供給するためと、この電流によって生じた電圧を検出するための両方に使用される。
【0041】
図1bは、検出器10が梁1に沿って中間点に配置された、本発明によるマイクロ電気機械システムの第2の実施形態を示している。
さらに、システムは、ベース部分につながった8つの電気接続体を有する。
接続体4a〜4dは、図1aで示した第1の実施形態と同様に、ベース部分2に配置することができる。
一方で接続体4e、4fが、他方で接続体4g、4hが、ベース部分2の両横の側面に配置されている。
この場合、直流または交流の電気供給電流を接続体4b、4hを介して供給することができ、例えば、接続体4a、4eの間で電圧を検出することができる。
同一の接続体を使用して、電流を供給し、電圧を検出することも可能である。
このように、接続体4g、4hを介して電流を供給することができ、例えば、接続体4g、4cを使用して電圧を検出することができる。
従って、接続体4gは、2つの機能、すなわち、供給および検出機能を有する。
当業者ならば、接続体をこのように対で選択して、供給電流を供給し、電圧を検出して、曲げ、ねじり、および/または伸長−圧縮によってもたらされた、部分2、3内の電流分布の変化を高い感度で検出できると分かるであろう。
【0042】
図1cは、2つの応力検出器10、20がそれぞれ梁1の上と下に配置された、本発明によるマイクロ電気機械システムの第3の実施形態を示している。
さらに高い感度をもたらす差動検出を行うために、2つの検出器は、梁1の長さ方向に沿って同じレベルで配置されて、振幅相関のある検出信号を出力する。
異なる接続体セットが2つの検出器のそれぞれのベース部分2につながっている、すなわち、接続体4a〜hが検出器10につながり、接続体5a〜5hが検出器20につながっている。
接続体5a〜5hは、層102を通って、固定部分110の上面に容易に電気接続できるようにする適切なバイア穴を抜けることができる。
【0043】
例として取り上げた図1aによるマイクロ電気機械システムを製造する第1のプロセスを以下に説明する。
図2aを参照すると、集積電子回路基板は、上面を電気絶縁層101で覆われ、さらに単結晶または非晶質のシリコン層102で覆われた主シリコン部分100を有する。
そのような基板は市販され、SOI技術で電子回路を形成することを意図されている。
例えば、層101、102は、それぞれ厚さが200nmおよび1000nmである。
層102は、未ドープのシリコンで作られる。
【0044】
層102の全ウェハ面のドーピングは、規定された濃度のドープ剤を、層102の上面から開始して、決められた深さに埋め込むことで行われる。
方向Nの深さ方向に制限を受けるそのような埋め込みは、調整した電圧で加速されたドープ剤粒子からなるビームで層102の表面を走査することによって達成される。
こうして、厚さが、例えば、500nmのドープしたシリコンの層103が、層102のドープされていない残留部分の上に得られる(図2b)。
従って、これ以降、参照符号102は、上側シリコン層の未ドープ残留部分を表す。
【0045】
層103上でベース部分2を設ける位置に、第1のリソグラフィレジストマスクM1を形成する(図2c)。
マスクM1を形成するのに使用するリソグラフィプロセスは公知と考えられ、ここで取り上げることはしない。
次に、例えば、加速されたプラズマ粒子のビームFを、方向Nに対して平行であるが反対の方向で、システムの上面に向けることにより、マスクM1のある部分を除いて層103を除去する。
そのような除去方法は、ドライエッチングという用語で表される。
ドライエッチングは、層103をその全厚さにわたってエッチングするのに十分な時間だけ続けられる。
次いで、適切な溶液内でマスクM1を溶解させる。
こうして、検出器10のベース部分2となる第1のメサ構造を得ることができる(図2d)。
【0046】
次いで、分路部分3用の場所を除いた層102全体に第2のリソグラフィレジストマスクM2を形成する(図2e)。
特に、マスクM2はベース部分2を覆い、ベース部分の一方の側面と隣接する開口Oを有する。
次いで、例えば、熱蒸着によって、システム全体に金属層、例えば、金層を堆積させる。
次いで、マスクM2を除去する(図2f)。
マスクM2の開口Oにある金属層からなる残留部分は、分路部分3である第2のメサ構造を形成する。
分路部分はベース部分2に接して配置されている。
オプションとして、金層を形成する前にシステム上にチタン層(図示せず)を形成して、分路部分3のベース部分2に対する付着性を高めることができる。
【0047】
次いで、図2fに全体として参照符号4で示すオームタイプの電気接続体を形成する。
これらの接続体のオーム接触を形成する方法は公知と考えられ、ここで取り上げることはしない。
【0048】
次いで、層102上にリソグラフィレジストマスクM3(図2g)を形成する。
マスクM3の形状は、方向Nに対して垂直な平面内にある梁1の周縁部に対応する。
このマスクは、特に、部分2、3および接続体4を覆う。
次いで、シリカ層101が露出するまで、マスクM3によって保護されていない区域にある層102をエッチングする。
層101のシリコン材料に対して選別性のよいシリコンエッチングプロセスを使用するのが有利である。
こうして、梁1の横縁部および端部を形成する。
次いで、マスクM3を溶解させる(図2h)。
【0049】
最後に、システムの下面から、まず、部分100のシリコンをエッチングするプロセスを使用し、次いで、層101のシリカをエッチングするプロセスを使用して、梁1の下から基板の部分を除去する。
シリコン材料(シリカ)に対して選別性のよいシリカエッチングプロセスを使用することで、このステップ中に、梁1が確実に損傷しないようになる。
結局、システムは図1および図2iに示す構成になり、その構成では、梁1は、システムの部分110に強固に連結された固定端12と、自由端11を有する。
【0050】
端部11は、梁1の様々な変形モードによって変位することができる。
方向N、Lに対して平行な平面内での梁の曲げは、第1の変形モードになる。
梁1を同じ向きで方向Nに継続して曲げ、次いで反対の向きに継続して曲げている間、ベース部分2と分路部分3の間の境界面は圧縮を応力を受け、次いで引張り応力を受ける。
これらの応力はそれぞれ、部分2、3の間の境界面の電気抵抗に変化をもたらす。
この抵抗値が増えると、検出器10に供給される電流はベース部分2により多く配分され、接続体4a〜4hのうちの2つの間で検出される電圧は非常に高くなる。
反対に、ベース部分2と分路部分3の間の境界面の電気抵抗値が減ると、供給電流のより多くの部分が分路部分3を経由して進み、2つの接続体の間で検出される電圧は低くなる。
2つの接続体4c、4bを使用して、例えば、方向N、Lに対して平行な平面内での曲げに対する梁1の変形を検出することができる。
この場合に、測定した電圧はUcbである。
【0051】
方向Lに対して平行な軸のまわりの梁1のねじりと、層102に対して平行な平面内の梁の曲げは、梁1の2つの異なる変形モードになる。
これらの2つの異なるモードは逆対称である、すなわち、方向N、Lに対して平行な梁1の対称平面の両側にある、部分2と部分3の間の境界面の2つの半体は逆の応力を受ける。
これらの2つの異なるモードのそれぞれにおいて、梁1の変形を幾つかの方法で検出することができる。
特に、差分Uba−Udcを算出することが可能であり、ここで、Ubaは、接続体4b、4aの間の電圧であり、Udcは、接続体4d、4cの間の電圧である。
あるいは、ベース部分2が8つの電気接続体によって接続されている場合、差分Uhg−Ufeを算出することが可能であり、ここで、Uhgは、接続体4h、4gの間の電圧であり、Ufeは、接続体4f、4eの間の電圧である。
従って、電圧Uba、Ucb、Udcあるいは電圧Uhg、Ucb、Ufeを同時に測定することによって、梁1のねじりまたは層102の平面内の曲げを、方向Nの曲げから独立してかつ同時に検出することができる。
【0052】
応力を受けたときに異方性が変わる可変電気導電率を有する材料を、ベース部分2に対して選択することにより、曲げまたはねじりで梁1を変形中に、測定電圧を変化させることができるのがより好ましい。
そのような異方性は、応力がベース部分2に作用したときに出現する。
【0053】
マイクロ電気機械システムが、梁1の下に置かれた第2の応力検出器を含む場合(図1c)、システムを裏返し、図2a〜図2fに関連させて上記に説明した応力検出器を形成するステップを繰り返すことで、梁1の下面に第2の検出器を作る。
オプションとして、層102の最初の厚さ以内に2つの検出器のベース部分2を作ることができるように層102、103の厚さを変更する。
第2の検出器用のリソグラフィレジストマスクM1、M2の作成時に、例えば、2つの検出器が方向Nに沿って互いに垂直に並んで配置されるように、位置合わせステップを行う。
【0054】
そのような2検出器システムにより、感度が潜在的に2倍である、可動部分の移動に関する差動測定が可能になる。
特に、自由端11が方向Nに対して平行に、それと同じ向きに移動する梁1の曲げにより、以下の応力が発生する。
上側検出器10(図1c)に圧縮応力σが生じ、それにより、接続体4a〜4hのうちの2つの間で検出される電圧変化ΔUが発生する。
下側検出器20に引張り応力−σが生じ、それにより、セット4a〜4hのうちの上記2つの接続体と梁1に関して対称に配置されたセット5a〜5hのうちの2つの接続体の間で検出される逆の電圧変化−σUが発生する。
【0055】
層102に組み込むことができる、例えば、ホイートストンブリッジやケルビンブリッジタイプなどの公知の電子差動検出回路を使用して、2xΔUに等しい電圧変化を測定することができる。
【0056】
差動測定の実施を可能にする2検出器システム構成の第2の利点は、例えば、温度変化によって引き起こされる梁の伸長−圧縮に測定が感応しないという事実にある。
これは、温度変化によって2つの検出器内に生じる電圧変化が対の形で等しく、差動検出回路で実行される電圧減算で相殺されるからである。
【0057】
上記のマイクロ電気機械システムは、多くの用途、特に、方向Nに沿った曲げによる梁1の変形モードに使用するのに適している。
【0058】
第1の応用例によれば、梁1は、観測面の高さの変化を検出することを意図した原子間力顕微鏡の1つのアームの一部を形成する。
公知のように、そのような顕微鏡は、アームの自由端に配置され、観測面上を移動する先端部を有する。
高さや摩擦の変化などの、面に関する少なくとも1つの構造的特性、物理的特性、および/または化学的特性の変化が、検出される、曲げによるアームの変形を引き起こす。
そのような顕微鏡を操作する標準的な方法によれば、梁の対向する端部を観測面に対して垂直方向に移動させて面を観測し、異なる高さに対応する観測面上の地点間を先端部が移動するときに、梁が一定の変形を受ける。
図3aは、このような原始間力顕微鏡内にある本発明によるマイクロ電気機械システムの実装形態を概略的に示している。
梁1の自由端11には、試料1000の面S上を移動するものとした先端部1001を設けている。
システムの固定部分110は、部分110を面Sに対して平行に移動させるように設計された圧電アクチュエータ1002に取り付けられている。
応力検出器10は、図1aと同様に、梁1が部分110と合流する地点に近接して配置されている。
面Sに対して平行に移動することにより、面Sを走査することができる。
同時に、検出器10は接続体4a、4dの間に電流を供給され、例を用いて説明したこれら2つの接続体と、方向Nに沿った変位とは、CTRLで表した制御ユニット1003によって制御されて、2つの他の端子、例えば、4bおよび4c間で検出される電圧は一定になる。
ユニット1003によって制御される、面Sに対して平行な方向に沿った移動により、面Sの高さの変動が再現され、この移動は記録される。
そのような顕微鏡の操作は完全に電気的であり、これはとりわけ単純で、光学的な校正も位置合わせも必要としない。
さらに、この顕微鏡はコンパクトなので、例えば、真空チャンバや低温チャンバなどの制限された空間内で顕微鏡を使用することができる。
【0059】
特に、原子間力顕微鏡の構築へのこの応用例の場合、梁の上下に配置された2つの検出器を差動検出モードで使用することは有益であろう。
【0060】
第2の応用例によれば、流体の組成を分析する分析器は、マイクロチャネルや大型容器に置かれた、図1bによる少なくとも1つのマイクロ電気機械システムを有する。
決まった化学種の構成要素と選択的に反応できる固体化合物がシステムの梁に付着される。
固体化合物は、例えば、金層とすることができる。
流体をマイクロチャネルまたは容器に注入して、梁上の化合物と接触させる。
該当する種の構成要素を流体が含む場合、構成要素は化合物と反応し、化合物内に応力を発生させる。
これらの応力は、梁の変形を引き起こし、この変形は検出されて、既知の基準変形と比較される。
変形の度合いは、流体内にある化学種の構成要素の濃度によって決まる。
このタイプの幾つかの分析器を同じマイクロチャネル内に置いて、流体の流れに沿った任意の1つの種の構成要素の濃度変化を検出するか、または異なる種の構成要素の存在を同時に検出することができる。
後者の場合、システムの梁に付着させる化合物は、流体内に存在することが望まれる様々な種に応じて選択される。
【0061】
分子マーカを必要としない生物探知機の構築が、本発明のよるマイクロ電気機械システムの第3の応用例になる。
そのような生物探知機は、分析される流体に最初に含まれる分子が、変形可能部分の定めた区域に吸着されたときに、変形可能部分が変形するように設計した本発明によるマイクロ電気機械システムを有することができる。
分子の吸着により、吸着区域にある変形部分の表面エネルギが変化して、応力が発生する。
これは、吸着区域に近接して配置された検出器によって検出される変形をもたらす。
【0062】
そのような生物探知機の第1の動作モードによれば、分析する流体に含まれる分子は変形可能部分に直接吸着される。
例えば、この変形可能部分は、吸着区域内に金層を有し、分子は、分子自体が担持するチオール(−SH2)末端基を介して金層に吸着される。
図3bは、図1bまたは図1cによるマイクロ電気機械システムで構築された生物探知機の上記の動作を概略的に示している。
梁1は金層13で覆われ、分析される流体内にあって最初は拘束されていない分子Mはそれぞれ、文字Sで記号として示したチオール末端基を有する。
公知のように、各チオール官能基は、分子が梁1上に吸着されたときに、対応する分子と層13の間を連結する。
【0063】
第2の動作モードによれば、分析する流体に最初に含まれる分子は、変形可能部分に結合した化学官能基によって変形可能部分に吸着される。
その結果、マイクロ電気機械システムの変形可能部分は、化学官能基によって吸着区域で表面改質される。
これらの化学官能基は、特定の分子を選択的に結合するように選択される。
従って、マイクロ電気機械システムの変形可能部分に結合された化学官能基のみを変えることによって、異なるタイプの分子を検出する検出器を作ることができる。
図3cは、この第2の動作モードにとっての図3bに相当する。
梁1によって形成された変形可能部分は、この場合にも金層13を含む。
例えば、官能基の主要な原子に関連させて−COONHSで表した、活性エステルに変換される酸性タイプの化学官能基14は、文字Sで記号として示したチオール末端基を介して層13に結合される。
官能基14は自己組織化し得る、層13上の永久分子層を形成する。
この場合に、分子14(M)は互いに対して平行に配向される。
こうして、分子Mは梁1に高密度で結合され、それによって、流体内の分子の濃度をより広い濃度範囲で測定することが可能になる。
そのような生物探知機は、アミノ(−NH2)官能基を含むDNAタイプの分子Mに適する。
そのような分子Mを梁1に結合すると、分子のアミノ官能基と層13に結合された官能基14の1つとの間でペプチド結合が確立される。
【0064】
生物剤分析器の構築は、本発明によるマイクロ電気機械システムの第4の応用例になる。
そのような分析器の動作原理は、マイクロシステムの変形可能部分に置かれた細胞堆積物の表面張力の変化に基づいている。
表面張力のためにマイクロシステムが変形し、それを検出する。
特に、そのような生物剤分析器は、医学分析を行うのに適している。
分析器のサイズが小さければ、分析器を患者収容領域に設置することができる。
そのような体制にすることで、患者から採集した細胞標本を遠隔の試験所に送る必要をなくすことが可能になる。
これにより、必要な物流管理が整理され、各患者に結果を送り返すのに必要な時間が短縮される。
【0065】
生物探知および生物剤分析のために流体の組成を分析する用途に、本発明によるマイクロ電気機械システムを使用することの第1の利点は、システムが受ける変形を検出するための光源がないことにある。
これは、そのような光源が、得られた結果を害する光化学反応を誘起することがあるからである。
【0066】
第2の利点は、採用した応力検出器の高い感度からもたらされる。
これは、変形可能部分を有するマイクロ電気機械システムで、感度が限定された検出器を使用すると、変形が十分大きなものとなるように、変形部分が軟性であることが必要になるからである。
このため、システムは大きな時定数を有し、この大きな時定数は、素速い分析の実行を妨げる。
通常、そのようなシステムを使用して観測される現象は、検出を可能にするために10分よりも長く持続しなければならず、それによって、遷移現象の観測が非常にゆっくりと変化するものに限定される。
本発明で使用する応力検出器の感応性により、システムの変形可能部分は、短い遷移現象の観測に適合する高速検出を可能にする高い剛性を有することができる。
さらに、本発明によるシステムを使用して行う検出の高速性は、多数の連続測定の実施に適合する。
この高速性は、多数の標本を、例えば、様々な患者に対応して、連続的に分析しなければならない医学分析用途に特に有益である。
【0067】
第5の応用例によれば、マイクロ電気機械システムは加速度計の構成要素となることができる。
例えば、図1aから図1cによる梁を有するシステムが方向Nに対して平行な加速度を受けると、梁1は、その慣性の作用による曲げによって変形する。
梁の曲率は、加速度の値によって決まる。
検出器が接続体4a、4dから長期的に電流を供給されると、接続体4b、4cの間で検出された電圧は、加速度のリアルタイムの測定値になる。
そのような加速度計は、特に、信頼でき、単純で、かつ安価である。
その加速度計は、特に、エアバッグなどの多くの装置に容易に組み込むことができる。
この場合に、所定のしきい値を超えた検出電圧に相当する加速度になったときに、システムは、エアバッグが膨らむのを可能にする。
【0068】
第6の応用例によれば、マイクロ電気機械システムは、支持体の変形を検出する検出器となる。
例えば、図3dによれば、両端部12a、12bが固定部分110の2つの側面に結合された梁1を有することができる。
梁1は、固定部分の2つの対向する部分110a、110bをそれぞれ結合し、部分110の中間部分110cの上面をまたぐブリッジを形成する。
部分110は、その変形を測定すべき支持体にその下面で取り付けられるようになっている。
部分110cは、部分110a、110bよりも方向Nに沿って薄くなっているので、部分110は、部分110cが曲がることによって、支持体とともに変形することができる。
この変形により、梁1の端部12a、12bに、さらに梁の全長に沿って応力が生じ、応力検出器10を用いてこの応力を測定することができる。
検出器10は、応力が最も大きくなる地点に合わせて、端部12aまたは端部12bの一方か、あるいは端部12a、12bの間の他の場所に配置することができる。
このようにして、特に、航空機の部品、建造物の部品、橋の部品、レール、または掘削ヘッドの部品が受ける変形を調査することが可能である。
このようにして、薄膜の両側に加えられた可変圧力を受ける薄膜の変形を検出し、それから圧力差の大きさを推定することも可能である。
【0069】
本発明はまた、動的モードで機能することもできる。
梁1は、公知の励振方法を使用して、固有振動モードの周波数に近いかまたは等しい周波数で振動するようにセットされる。
この振動は、時間の関数として周期的に変化する測定可能な応力を発生させる。
1つまたは2つの応力検出器を用いた振動の振幅または位相の測定、あるいはそれらの周波数変動の測定は、多くのさらなる用途に有用である。
【0070】
例えば、動的モードで使用するマイクロ電気機械システムは、流体密度解析器の構成要素なることができる。
これは、可動部分の振動の減衰が、可動部分が接触している流体の密度によって決まるからである。
流体が高密度になるほど、振動はより急激に減衰する。
従って、振動の振幅または位相を測定することによって、流体の密度を求めることが可能である。
【0071】
動的モードで使用するマイクロ電気機械システムはまた、質量センサの構成要素となることができる。
f0で表される梁の振動の固有周波数は、調和振動子に対する公知の式f02=k/mに従って、この梁の質量mによって決まり、kは、梁のスティフネス定数である。
分子または他の重量のある種が梁1に吸着すると、梁の見かけの質量が変わり、1つまたは2つの応力検出器で測定できる態様で、その固有周波数が変わる。
【0072】
本発明によるマイクロ電気機械システムを製造する第2のプロセスを図4a〜図4d、図5、および図6を参照して以下に説明する。
この第2のプロセスは、ベース部分および分路部分が変形可能部分から突出することなく、変形可能部分に組み込まれたマイクロ電気機械システムをもたらす(図6)。
【0073】
図2aに示したものと同一のSOI基板にリソグラフィレジストマスクM’1を堆積させ、このマスクは、層102の部分104に相当する開口を除いて上側層102を覆う(図4a)。
次いで、イオン注入ビームI1を使用して、部分104を選択的にドープする。
ビームI1は、方向Nに対して平行であるが、反対の向きで、マスクM’1内の開口を通って層102の上面に向けられる。
ビームI1のイオンの性質とそれらの加速電圧は、部分104に行いたいドーピングのタイプと、部分104の厚さに応じて、それ自体公知の態様で決まる。
このドーピングはn型で、ビームI1は、リン(P)イオンのビームであるのが好ましい。
こうして、第1の濃度のドーピングを部分104に実施し、部分104は導電性になる。
第1の濃度は、層102がシリコンからなる場合に、1014cm−3から1020cm−3とすることができる。
部分104は、例えば、厚さを500nmとすることができる。
【0074】
マスクM’1を除去し、これをリソグラフィマスクM’2と置き換え、このリソグラフィマスクM’2は、部分104のうちの、作られる分路部分3に対応する部分上に配置された開口Oを有する(図4b)。
マスクM’2は、分路部分3以外の層102の上面を覆う。
マスクM’2で覆われた部分104のその部分は、応力検出器のベース部分2に該当する。
【0075】
次いで、第2のイオン注入ビームを用いて、部分104の露出部分に第2のドーピングを実施する。
第2のドーピングは、濃度を、例えば、1021cm−3程度としてより高くした、第1のドーピングと同じタイプのものである。
第2のドーピングは分路部分3を画定する。
前もって第1のドーピングを受け入れた導電性部分104内で、分路部分3に対する第2のドーピングを行うものとしたこの作業手順によって、部分2、3の間の適切な電気接触が確実になる。
さらに、層102の材料は、部分2、3の間で一続きであるので、その後に、部分2、3の間にクラックが出現することは決してあり得ない。
従って、得られた検出器は寿命が非常に長くなる。
【0076】
次いで、例えば、金で作られた金属層30をシステム上に堆積させる(図4c)。
開口Oでは、この層の一部が分路部分2と接触している。
【0077】
層30の、分路部分2(3)上に配置されたその部分だけがシステム上に残るようにマスクM’2を除去する。
【0078】
次いで、基板110を十分高い温度に加熱し、層30の残留部分の金属を分路部分3内に拡散させる(図4d)。
加熱温度は、例えば、400°以上とすることができる。
加熱後、分路部分3は金属類の挙動を呈する。
従って、その電気導電性は、第1のドーピングによってのみ付与されたベース部分2の電気導電性よりもはるかに大きい。
【0079】
次いで、応力検出器を作る。
この場合、梁の形態とすることができるマイクロ電気機械システムの変形可能部分および電気接続体については、図2g〜図2iを参照してすでに説明した態様で形成することができる。
【0080】
得られたシステムを図6に示す。
図1aに示したシステムとは異なり、検出器10は、ここでは、梁の上面から突出することなく、梁1に組み込まれている。
この方法では、梁1の機械特性が損なわれることがない。
【0081】
さらに、図6の検出器10は、参照符号4a、4bの2つの電気接続体によってのみ接続され、これらの接続体は、同時に、検出器に電流を供給し、かつ部分2の電圧を検出する。
【0082】
オプションとして、接続体の数量に係わらず、これらの接続体は、特定のステップを追加する必要なく、分路部分3と同時に形成することができる。
このため、マスクM’2は、図5の平面図に示した開口を有する。
開口Oは別として、マスクM’2は、2つの接続体4a、4bにそれぞれ対応する2つのさらなる開口Oa、Obを有する。
図4b〜図4dを参照して上記に説明したステップは、層102の、部分3に対応するその部分と、電気接続体に対応するそれらの部分で同時に実施される。
第1のドーピングに使用するマスクM’1もまた、マスクM’2の開口Oa、Obと同一の開口を有するのが好ましい。
従って、接続体4a、4bは、自動的に、ベース部分2と機能的電気接触をもつ。
【0083】
最後に、ベース部分2を構成する第1の電気導電性材料は、可変電気導電率を有するように選択されるのが好ましく、可変電気導電率の異方性は、部分2が応力を受けたときに変わる。
検出器10が受ける応力によって変わるそのような異方性は、他の物理的効果に加えて、ベース部分2内の電流の進路を様々に増やすのに寄与する。
このようにして、検出器10の感度を高めることができる。
【0084】
例えば、第1の伝導材料は、実質的に、立方構造の単結晶シリコンをベースとすることができる。
従って、ベース部分2および分路部分3は、第1の伝導材料であるシリコンの[110]軸に対してほぼ垂直な隣接する側面をそれぞれ有するように有利に形成される。
部分2の結晶軸に対して部分2、3の間の境界面をそのような向きにすることで、検出器の感度に関する異方性の効果を最大限にすることができる。
このため、基板110の層102を、最初から単結晶シリコンで作ることができる。
次いで、作られる梁1の長手方向Lが層102の[110]軸に対して平行になるか、またはこの結晶軸と小さい角度をなすように、マイクロ電気機械システムの製造を開始するまでに、基板110をその上面に対して平行なまま回転することができる。
【0085】
当然のことながら、本発明は、図1a〜図1cを参照して詳細に説明したマイクロ電気機械システムに限定されるものではない。
想定される用途に応じて、これらのシステムを適合させることができる。
特に、変形可能部分の形状、材料、および寸法ならびに/または応力検出器の形状、材料、および寸法は、検出器のそれぞれのベース部分につながる電気接続体の数量とともに、各用途の特定の要求に応じて修正することができる。
【0086】
そのような修正の例を示すと、応力検出器は、測定されるべき応力に対して、図で示したものとは異なる向きに合わせることができる。
ベース部分と分路部分の間の境界面は、応力の方向に対して垂直にすることができるが、代替案として、応力の方向に対して平行に向けることもできるし、または、オプションとして、前記方向に対して斜めに向けることもできる。
ベース部分と分路部分の間の境界面の向きについては、特に、測定する応力の方向が最初から分かっている場合に、最大限の検出感度を得るように選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
他の本発明の特徴および効果は、非限定的な例示的な実施例の以下の添付の図面に関して説明および実施の方法において明らかになる。
【図1a】本発明による1つ目のマイクロ電気機械システムの透視図である。
【図1b】本発明による1つ目のマイクロ電気機械システムの透視図である。
【図1c】本発明による1つ目のマイクロ電気機械システムの透視図である。
【図2a】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2b】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2c】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2d】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2e】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2f】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2g】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2h】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図2i】図1aに従ってシステムを提示する第1方法の連続したステップを示す図である。
【図3a】本発明によってマイクロ電気機械システムの個別の活用法を示す図である。
【図3b】本発明によってマイクロ電気機械システムの個別の活用法を示す図である。
【図3c】本発明によってマイクロ電気機械システムの個別の活用法を示す図である。
【図3d】本発明によってマイクロ電気機械システムの個別の活用法を示す図である。
【図4a】本発明によってマイクロ電気機械システムを提示する第2の方法の連続したステップを示す図である。
【図4b】本発明によってマイクロ電気機械システムを提示する第2の方法の連続したステップを示す図である。
【図4c】本発明によってマイクロ電気機械システムを提示する第2の方法の連続したステップを示す図である。
【図4d】本発明によってマイクロ電気機械システムを提示する第2の方法の連続したステップを示す図である。
【図5】図4a―4dに示す第2の方法の改善を示す図である。
【図6】図4a―4dおよび図5に示す第2の方法によって取得されるマイクロ電気機械システムの透視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形可能部分(1)と、前記変形可能部分に強固に結合された少なくとも1つの応力検出器(10、20)とを有するマイクロ電気機械システムであって、
各検出器は、
電気導電性を有するベース部分(2)および分路部分(3)であって、それぞれの部分の隣接する側面に沿って、互いに電気接触するように前記変形可能部分(1)上に並置され、前記分路部分が前記ベース部分の電気電導率よりも高い電気電導率を有する、ベース部分および分路部分と、
前記ベース部分が前記分路部分と接触している接触区域から離れて、前記ベース部分(2)に接続された一組の電気接続体(4a〜4h、5a〜5h)であって、前記ベース部分および前記分路部分の電流分布の変化を、前記電気接続体を使用して電気的に検出することができるように構成された一組の電気接続体と、を有するシステムにおいて、
前記ベース部分(2)および前記分路部分(3)のそれぞれの材料が、前記それぞれの部分の間の接触抵抗が前記システムの変形に応じて変わるように選択された、ことを特徴とするマイクロ電気機械システム。
【請求項2】
前記ベース部分(2)および分路部分(3)は、前記変形可能部分の表面から突出することのない前記変形可能部分(1)に一体化される、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項3】
前記ベース部分(2)は半導体材料から作られ、前記分路部分(3)は金属類からなる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項4】
前記ベース部分(2)の材料は、可変の導電率を有し、
前記ベース部分の材料が応力を受ける場合に、導電率の異方性が変化する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項5】
前記ベース部分(2)は、立方構造の実質的に単一の結晶のシリコンを主成分とし、
前記ベース部分(2)および分路部分(3)の前記それぞれの隣接するほぼ垂直な[110]軸を有する、ことを特徴とする請求項4に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項6】
前記変形可能部分(1)に取り付けられる2つ応力検出器(10、20)を備え、
前記変形可能部分(1)の変形に関する差動測定を提供するために配置され、例えば、前記変形可能部分(1)の両面上に配置される、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項7】
少なくとも1つの電気差動測定回路を更に備え、
前記電気差動測定回路は電気接続体(4a―4h、5a―5h)に対して接続され、
それぞれ前記2つの検出器(10、20)に接続し、
前記マイクロ電気機械システムに一体化される、ことを特徴とする請求項6に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項8】
前記電気差動測定回路は、ホイートストンブリッジまたはケルビンブリッジのようなブリッジを備える、ことを特徴とする請求項7に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項9】
前記変形可能部分(1)は、梁を備える、ことを特徴とする請求項1乃至8に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項10】
固定された部分(110)を更に備え、
前記梁(1)は、システムにおいて自由端(11)を有し、
端部が一体化して固定部(12)に接続する、ことを特徴とする請求項9に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項11】
少なくとも1つの応力検出器(10)は、前記固定部に接続している前記梁の前記端部の近くに配置される、ことを特徴とする請求項10に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項12】
前記電気接続体(4a―4h、5a―5h)は、各検出器(2)の前記ベース部分に配置され、前記梁(1)の曲げ変形が前記接続によって電気的に検出可能である、ことを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項13】
前記電気接続体(4a―4h、5a―5h)は、各検出器(2)の前記ベース部分に配置され、
2つの異なるモードの前記梁(1)の変形が別に検出可能な接続手段である、ことを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムを備える原子間力顕微鏡であって、
観測表面における高さの変化または表面摩擦の変化のような物理特性および/または化学特性の少なくとも1つの構造における変化を検出することを目的とする前記原子間力顕微鏡の1つアームの梁(1)形成部を備える、ことを特徴とする原子間力顕微鏡。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムを備え、
流体の前記構成を分析する分析器。
【請求項16】
請求項1乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムを備え、
最初に分析流体に含まれる分子が前記変形可能部分の規定されたゾーンにおいて吸着される場合、前記変形可能部分(1)は変形させるために設計されている、ことを特徴とする生物探知器。
【請求項17】
前記変形可能部分(1)は、前記規定された区域に金層(13)を備え、
前記分析流体に含まれる前記分子(M)が、前記分子のチオール末端基を介して金膜上に吸着される、ことを特徴とする請求項16に記載の生物探知器。
【請求項18】
前記変形可能部分(1)は、化学官能基によって前記規定された区域において表面改質であり、変形可能部分(1)上へ移植され、
選択的に前記分析流体に含まれる分子(M)を取り付けるように選択される、ことを特徴とする請求項16に記載の生物探知器。
【請求項19】
前記変形可能部分(1)は、前記規定された区域に金膜(13)を備え、
前記化学官能基が、前記化学官能基のチオール末端基を介して前記金膜に移植される、ことを特徴とする請求項18に記載の生物検出器。
【請求項20】
請求項1乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムを備える生物剤分析器。
【請求項21】
医学分析を実施することに適する、請求項20に記載の生物剤分析器。
【請求項22】
請求項1乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムを備える加速計。
【請求項23】
エアバッグの膨張を誘発するために設計された、請求項22に記載の加速計を備えるエアバッグ。
【請求項24】
飛行機の部品、建造物の部品、橋の部品、レール、掘削ヘッドの部品、またはその他に関して1つを変化させやすいそれぞれの内部圧力を有する2つコンパートメントの間の分離膜のように、前記システムが取付けられている支持体の変形を検出する、請求項1乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムの使用。
【請求項25】
請求項1乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムを備え、流体のパラメータを取得するためのセンサであって、
密度から選択される前記パラメータ、温度または前記流体の流速、または可動部(1)上の前記流体によって堆積される質量、前記流体の前記パラメータにおける変化によって生じる可動部の振動数、または振幅の変化を検出するために設計された前記センサ。
【請求項26】
主要部分(100)と上側層(102)を有し、前記上側層が中間層(101)によって前記主要部分と分離された基板からマイクロ電気機械システムを製造する方法であって、
(a)第1電気導電性材料からなり、少なくとも1つのベース部分(2)を有する伝導部分を前記上側層(102)の表面に形成するステップと、
(b)前記第1電気導電性材料よりも導電性が高い第2材料からなる分路部分(3)を前記上側層(102)の表面に、前記ベース部分(2)と接触させて形成するステップと、
(c)前記ベース部分と前記分路部分の間の接触区域から離れて、前記ベース部分につながる一組の電気接続体(4a〜4h)を形成するステップと、
(d)前記上側層の残留部分(1)の少なくとも両側で前記上側層(102)をエッチングすることにより、前記残留部分は、前記ベース部分(2)および前記分路部分(3)を支持する前記上側層の区域から突出するステップと、
(e)前記上側層(1)の前記残留部分を含む前記基板の区域で、前記基板(100)の前記主要部分と前記中間層(101)とを除去するステップとを有する方法。
【請求項27】
第1導電材料でできている導電部分(104)は、上側層(102)の部分の第1ドーピングによって、ステップ(a)において形成される、ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(b)は、サブステップとして、
(b1)前記上側層(102)の第2ドーピングは、第1ドーピングの濃度より高い集中を有し、前記分路部分(3)に相当する前記上側層の中で、選択的に1つを実施するステップと、
(b2)一部の金属(30)は、選択的に前記分路部分(3)の上で前記上側層(102)に堆積するステップと、
(b3)前記基板を加熱して前記金属が前記上側層(102)に拡散して前記分路部分(3)に侵入させるステップと、を有することを特徴とする請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
第2ドーピングは、前記ベース部分(2)に隣接してステップ(a)の前記第1ドーピングによって発生される導電部分(104)の一部分がステップ(b1)において実施される、ことを特徴とする請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(b)およびステップ(c)は、同時に実行され、
前記上側層(102)におけるステップ(a)の前記第1ドーピングによって発生される前記導電部分(104)は、前記ベース部分(2)、前記分路部分(3)および前記電気接続体(4a、4b)の接合に対応し、
ステップ(b1)の前記第2ドーピングは、前記分路部分(2)および前記電気接続体(4a、4b)に対応する前記導電部分(104)において、同時に選択的に実施され、
一部の金属(30)は、同時かつ選択的に前記分路部分(3)上および前記電気接続体(4a、4b)の中で、ステップ(b2)において堆積し、
ステップ(b3)の加熱を実行し、前記金属(30)を前記分路部分(2)および前記電気接続体(4a、4b)に同時に拡散させる、ことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ベース部分(2)および分路部分(3)の少なくとも1つは、リソグラフィ方法を使用して形成される、ことを特徴とする請求項26乃至30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
前記第1電気導電性材料が選択され、前記ベース部分が応力を受ける場合に、前記第1電気導電性材料が可変の導電率を有して異方性が変化する、ことを特徴とする請求項26乃至31のいずれか1つに記載の方法。
【請求項33】
前記第1電気導電性材料は、立方構造の実質的にシリコンの単一結晶を主成分とし、
前記部分が前記第1電気導電性材料の前記シリコンの前記軸[110]にほぼ垂直にそれぞれの隣接する側面をそれぞれ有するように、前記ベース部分(2)および分路部分(3)が形成される、ことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項1】
変形可能部分(1)と、前記変形可能部分に強固に結合された少なくとも1つの応力検出器(10、20)とを有するマイクロ電気機械システムであって、
各検出器は、
電気導電性を有するベース部分(2)および分路部分(3)であって、それぞれの部分の隣接する側面に沿って、互いに電気接触するように前記変形可能部分(1)上に並置され、前記分路部分が前記ベース部分の電気電導率よりも高い電気電導率を有する、ベース部分および分路部分と、
前記ベース部分が前記分路部分と接触している接触区域から離れて、前記ベース部分(2)に接続された一組の電気接続体(4a〜4h、5a〜5h)であって、前記ベース部分および前記分路部分の電流分布の変化を、前記電気接続体を使用して電気的に検出することができるように構成された一組の電気接続体と、を有するシステムにおいて、
前記ベース部分(2)および前記分路部分(3)のそれぞれの材料が、前記それぞれの部分の間の接触抵抗が前記システムの変形に応じて変わるように選択された、ことを特徴とするマイクロ電気機械システム。
【請求項2】
前記ベース部分(2)および分路部分(3)は、前記変形可能部分の表面から突出することのない前記変形可能部分(1)に一体化される、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項3】
前記ベース部分(2)は半導体材料から作られ、前記分路部分(3)は金属類からなる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項4】
前記ベース部分(2)の材料は、可変の導電率を有し、
前記ベース部分の材料が応力を受ける場合に、導電率の異方性が変化する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項5】
前記ベース部分(2)は、立方構造の実質的に単一の結晶のシリコンを主成分とし、
前記ベース部分(2)および分路部分(3)の前記それぞれの隣接するほぼ垂直な[110]軸を有する、ことを特徴とする請求項4に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項6】
前記変形可能部分(1)に取り付けられる2つ応力検出器(10、20)を備え、
前記変形可能部分(1)の変形に関する差動測定を提供するために配置され、例えば、前記変形可能部分(1)の両面上に配置される、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項7】
少なくとも1つの電気差動測定回路を更に備え、
前記電気差動測定回路は電気接続体(4a―4h、5a―5h)に対して接続され、
それぞれ前記2つの検出器(10、20)に接続し、
前記マイクロ電気機械システムに一体化される、ことを特徴とする請求項6に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項8】
前記電気差動測定回路は、ホイートストンブリッジまたはケルビンブリッジのようなブリッジを備える、ことを特徴とする請求項7に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項9】
前記変形可能部分(1)は、梁を備える、ことを特徴とする請求項1乃至8に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項10】
固定された部分(110)を更に備え、
前記梁(1)は、システムにおいて自由端(11)を有し、
端部が一体化して固定部(12)に接続する、ことを特徴とする請求項9に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項11】
少なくとも1つの応力検出器(10)は、前記固定部に接続している前記梁の前記端部の近くに配置される、ことを特徴とする請求項10に記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項12】
前記電気接続体(4a―4h、5a―5h)は、各検出器(2)の前記ベース部分に配置され、前記梁(1)の曲げ変形が前記接続によって電気的に検出可能である、ことを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項13】
前記電気接続体(4a―4h、5a―5h)は、各検出器(2)の前記ベース部分に配置され、
2つの異なるモードの前記梁(1)の変形が別に検出可能な接続手段である、ことを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システム。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムを備える原子間力顕微鏡であって、
観測表面における高さの変化または表面摩擦の変化のような物理特性および/または化学特性の少なくとも1つの構造における変化を検出することを目的とする前記原子間力顕微鏡の1つアームの梁(1)形成部を備える、ことを特徴とする原子間力顕微鏡。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムを備え、
流体の前記構成を分析する分析器。
【請求項16】
請求項1乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムを備え、
最初に分析流体に含まれる分子が前記変形可能部分の規定されたゾーンにおいて吸着される場合、前記変形可能部分(1)は変形させるために設計されている、ことを特徴とする生物探知器。
【請求項17】
前記変形可能部分(1)は、前記規定された区域に金層(13)を備え、
前記分析流体に含まれる前記分子(M)が、前記分子のチオール末端基を介して金膜上に吸着される、ことを特徴とする請求項16に記載の生物探知器。
【請求項18】
前記変形可能部分(1)は、化学官能基によって前記規定された区域において表面改質であり、変形可能部分(1)上へ移植され、
選択的に前記分析流体に含まれる分子(M)を取り付けるように選択される、ことを特徴とする請求項16に記載の生物探知器。
【請求項19】
前記変形可能部分(1)は、前記規定された区域に金膜(13)を備え、
前記化学官能基が、前記化学官能基のチオール末端基を介して前記金膜に移植される、ことを特徴とする請求項18に記載の生物検出器。
【請求項20】
請求項1乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムを備える生物剤分析器。
【請求項21】
医学分析を実施することに適する、請求項20に記載の生物剤分析器。
【請求項22】
請求項1乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムを備える加速計。
【請求項23】
エアバッグの膨張を誘発するために設計された、請求項22に記載の加速計を備えるエアバッグ。
【請求項24】
飛行機の部品、建造物の部品、橋の部品、レール、掘削ヘッドの部品、またはその他に関して1つを変化させやすいそれぞれの内部圧力を有する2つコンパートメントの間の分離膜のように、前記システムが取付けられている支持体の変形を検出する、請求項1乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムの使用。
【請求項25】
請求項1乃至13のいずれか1つに記載のマイクロ電気機械システムを備え、流体のパラメータを取得するためのセンサであって、
密度から選択される前記パラメータ、温度または前記流体の流速、または可動部(1)上の前記流体によって堆積される質量、前記流体の前記パラメータにおける変化によって生じる可動部の振動数、または振幅の変化を検出するために設計された前記センサ。
【請求項26】
主要部分(100)と上側層(102)を有し、前記上側層が中間層(101)によって前記主要部分と分離された基板からマイクロ電気機械システムを製造する方法であって、
(a)第1電気導電性材料からなり、少なくとも1つのベース部分(2)を有する伝導部分を前記上側層(102)の表面に形成するステップと、
(b)前記第1電気導電性材料よりも導電性が高い第2材料からなる分路部分(3)を前記上側層(102)の表面に、前記ベース部分(2)と接触させて形成するステップと、
(c)前記ベース部分と前記分路部分の間の接触区域から離れて、前記ベース部分につながる一組の電気接続体(4a〜4h)を形成するステップと、
(d)前記上側層の残留部分(1)の少なくとも両側で前記上側層(102)をエッチングすることにより、前記残留部分は、前記ベース部分(2)および前記分路部分(3)を支持する前記上側層の区域から突出するステップと、
(e)前記上側層(1)の前記残留部分を含む前記基板の区域で、前記基板(100)の前記主要部分と前記中間層(101)とを除去するステップとを有する方法。
【請求項27】
第1導電材料でできている導電部分(104)は、上側層(102)の部分の第1ドーピングによって、ステップ(a)において形成される、ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(b)は、サブステップとして、
(b1)前記上側層(102)の第2ドーピングは、第1ドーピングの濃度より高い集中を有し、前記分路部分(3)に相当する前記上側層の中で、選択的に1つを実施するステップと、
(b2)一部の金属(30)は、選択的に前記分路部分(3)の上で前記上側層(102)に堆積するステップと、
(b3)前記基板を加熱して前記金属が前記上側層(102)に拡散して前記分路部分(3)に侵入させるステップと、を有することを特徴とする請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
第2ドーピングは、前記ベース部分(2)に隣接してステップ(a)の前記第1ドーピングによって発生される導電部分(104)の一部分がステップ(b1)において実施される、ことを特徴とする請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(b)およびステップ(c)は、同時に実行され、
前記上側層(102)におけるステップ(a)の前記第1ドーピングによって発生される前記導電部分(104)は、前記ベース部分(2)、前記分路部分(3)および前記電気接続体(4a、4b)の接合に対応し、
ステップ(b1)の前記第2ドーピングは、前記分路部分(2)および前記電気接続体(4a、4b)に対応する前記導電部分(104)において、同時に選択的に実施され、
一部の金属(30)は、同時かつ選択的に前記分路部分(3)上および前記電気接続体(4a、4b)の中で、ステップ(b2)において堆積し、
ステップ(b3)の加熱を実行し、前記金属(30)を前記分路部分(2)および前記電気接続体(4a、4b)に同時に拡散させる、ことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ベース部分(2)および分路部分(3)の少なくとも1つは、リソグラフィ方法を使用して形成される、ことを特徴とする請求項26乃至30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
前記第1電気導電性材料が選択され、前記ベース部分が応力を受ける場合に、前記第1電気導電性材料が可変の導電率を有して異方性が変化する、ことを特徴とする請求項26乃至31のいずれか1つに記載の方法。
【請求項33】
前記第1電気導電性材料は、立方構造の実質的にシリコンの単一結晶を主成分とし、
前記部分が前記第1電気導電性材料の前記シリコンの前記軸[110]にほぼ垂直にそれぞれの隣接する側面をそれぞれ有するように、前記ベース部分(2)および分路部分(3)が形成される、ことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図2g】
【図2h】
【図2i】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5】
【図6】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図2g】
【図2h】
【図2i】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2009−519454(P2009−519454A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545040(P2008−545040)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002713
【国際公開番号】WO2007/080259
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(506124147)エコル ポリテクニーク (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002713
【国際公開番号】WO2007/080259
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(506124147)エコル ポリテクニーク (2)
【Fターム(参考)】
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