説明

変性水添ブロック重合体および同重合体を含む組成物

【目的】他の熱可塑性樹脂との混和性に優れたブタジエン系の水添ブロック共重合体を開発すること。
【構成】「(A) 1,2−ビニル結合含量が20%以下であるポリブタジエンブロックセグメント、(B) ポリブタジエンあるいはビニル芳香族化合物/ブタジエン共重合体であって、ブタジエン部分の1,2−ビニル結合含量が30〜95%であるブロックセグメントからなり、かつブロック構造がA−(B−A)または(A−B)《ただし、nは1以上、mは2以上》で表される直鎖状あるいは分岐状のブロック重合体のブタジエン部分を90%以上水素添加してなるポリスチレン換算重量平均分子量が3万〜60万の水添ブロック重合体に、ポリラクトン化合物が0.01〜10モル%付加されたことを特徴とする変性水添ブロック共重合体」および「上記変性水添ブロック共重合体と他の熱可塑性樹脂とブレンドされた熱可塑性重合体組成物」
【効果】ラクトンユニットを導入することにより他の熱可塑性樹脂との混和性に優れたブタジエン系の水添ブロック共重合体を開発することができた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車の内・外装品、各種工業部品などに有用な変性水添ブロック重合体およびその組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、射出成形が可能なエラストマ−として、熱可塑性エラストマ−が注目されており、ポリオレフィンとエチレン/プロピレンゴムからなる組成物、ポリオレフィンとアクリロニトリル/ブタジエン共重合ゴムからなる組成物などが知られている。しかしながら、これらの組成物は、圧縮永久歪が大きいという欠点を有しており、エラストマ−としての性能が不充分であった。
【0003】一方、スチレンとブタジエンからなるトリブロック共重合体のブタジエンブロックをほぼ完全に水素添加した水添スチレン/ブタジエントリブロック共重合体(SEBS)は、優れたエラストマ−性能を有する熱可塑性エラストマ−として知られており、他の樹脂成分と組み合わせることにより特徴ある熱可塑性エラストマ−組成物を得る試みがなされている。
【0004】しかしながら、SEBSは、ポリスチレンをブロック成分として有することから、硬度が高く、耐薬品性に劣るという欠点を有している。また、1,2−ビニル構造の少ないポリブタジエンセグメントと1,2−ビニル構造の多いポリブタジエンセグメントからなるステレオブロック重合体のブタジエン成分を水素添加して得られる水添ステレオブロック重合体は、室温で優れたエラストマ−弾性を有する熱可塑性エラストマ−であることが知られている。
【0005】この水添ステレオブロック重合体は、構造的にはポリエチレン(PE)、エチレンブテン共重合ゴム(EB)からなるものとみなされる熱可塑性エラストマ−であるため、柔軟で耐薬品性に優れたものである(以下「E−EB系TPE」という)。
【0006】しかしながら、このE−EB系TPEは、単品では高温での力学的強度の低下などの問題があり、他の重合体成分との組み合わせにより、総合的にバランスの取れた組成物を得る試みがなされている。たとえば、特開昭56−30455号公報には、1,2−ビニル構造の少ないポリブタジエンセグメントと1,2−ビニル構造の多いポリブタジエンセグメントからなるジブロック重合体のブタジエン成分を水素添加して得られるE−EB系TPEと、ポリプロピレン、ポリエチレンなどとからなる組成物が開示されており、この組成物は高温での引き裂き強度は改善されているが、耐熱性が不充分であった。
【0007】すなわち、前記E−EB系TPEは、本質的に飽和のオレフィン系重合体であるため、ポリオレフィン系樹脂以外の重合体との混和性に乏しく、配合可能な重合体が限定されるため、充分な改良ができなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来の技術的課題を背景になされたもので、E−EB系TPEに特定の官能基を導入することにより、アロイ化の相手となる重合体の選択を広げ、工業的に有用な材料を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、(A) 1,2−ビニル結合含量が20%以下であるポリブタジエンブロックセグメント(以下「ブロックA」という)、(B) ポリブタジエンあるいはビニル芳香族化合物−ブタジエン共重合体であって、ブタジエン部分の1,2−ビニル結合含量が30〜95%であるブロックセグメント(以下「ブロックB」という)からなり、かつブロック構造がA−(B−A)または(A−B)《ただし、nは1以上、mは2以上》で表される直鎖状あるいは分岐状のブロック重合体(以下「ブロック重合体」という)のブタジエン部分を90%以上水素添加してなるポリスチレン換算重量平均分子量が3万〜60万の水添ブロック重合体(以下「水添ブロック重合体」という)に、ポリラクトン化合物が0.01〜10モル付加されたことを特徴とする変性水添ブロック共重合体(以下「変性ブロック共重合体」という)を提供するものである。
【0010】また、本発明は、(イ)前記変性水添ブロック重合体99〜1重量%、ならびに(ロ)熱可塑性樹脂および/またはゴム質重合体1〜99重量%、を含有する熱可塑性重合体組成物(以下「熱可塑性重合体組成物(I) 」ということがある)を提供するものである。
【0011】本発明に使用される水添ジエン系重合体は、1,2−ビニル結合含量が20%以下であるポリブタジエンブロックセグメント(A) と、ポリブタジエンあるいはビニル芳香族化合物−ブタジエン共重合体であって、ブタジエン部分の1,2−ビニル結合含量が30〜95%であるブロックセグメント(B) からなり、かつブロック構造がA−(B−A)または(A−B)《ただし、nは1以上、mは2以上》で表される直鎖状あるいは分岐状のブロック重合体のブタジエン部分を90%以上水素添加することによって得られるものである。
【0012】前記ブロックAは、水素添加により通常の低密度ポリエチレン(LDPE)に類似の構造を示す結晶性のブロックセグメントとなる。
【0013】ブロックA中の1,2−ビニル構造は、通常、20%以下であるが、好ましくは18%以下、さらに好ましくは15%以下であることが望ましい。
【0014】ブロックAの1,2−ビニル構造は、通常、20%以下であるが、好ましくは18%以下、さらに好ましくは15%以下であることが望ましい。
【0015】ブロックAの1,2−ビニル構造が20%を超えた場合には、水素添加後の結晶融点の降下が著しく、得られる変性水添ブロック重合体の力学的性質が劣るために好ましくない。
【0016】また、ブロックBは、ポリブタジエンあるいはビニル芳香族化合物−ブタジエン共重合体であり、水素添加によりゴム状のエチレン−ブテン共重合体あるいはビニル芳香族化合物−エチレン−ブテン共重合体と類似の構造を示すブロックセグメント−1連鎖に由来する結晶構造を示し、樹脂状の性状となり、得られる変性水添ブロック重合体の力学的性質が劣るために好ましくない。
【0017】なお、前記ブロックAおよびブロックBの比率は、ブロックAが10〜90重量%、好ましくは15〜85重量%、ブロックBが90〜10重量%、好ましくは85〜15重量%である。
【0018】ブロックAが10重量%未満、ブロックBが90重量%を超えた場合には、結晶性のブロックセグメントが不足し、変性水添ブロック重合体の力学的性質が劣るために好ましくない。
【0019】また、ブロックAが90重量%を超え、ブロックBが10重量%未満の場合には、変性水添ブロック重合体の硬度が上昇し、熱可塑性エラストマ−として不適当になるので好ましくない。
【0020】また、ブロックAおよびブロックBの重量平均分子量は、通常、5,000以上、好ましくは10,000以上、さらに好ましくは15,000以上であることが望ましく、5,000未満では変性水添ブロック重合体の力学的性質が劣るために好ましくない。
【0021】ブロック重合体全体のポリスチレン換算重量平均分子量は、30,000〜600,000、好ましくは50,000〜550,000、さらに好ましくは70,000〜500,000であり、30,000未満では力学的性質が不足し、一方600,000を超えると水素添加反応が困難となるので、好ましくない。本発明における水添ブロック重合体は、ブロックAおよびブロックBのブタジエン部分の二重結合の少なくとも90%、好ましくは95〜100%が水添されて飽和されていることが必要であり、90%未満では耐熱性、耐候性、耐オゾン性に劣るものとなる。
【0022】本発明における水添ブロック重合体は、ブロックA、ブロックBを有機溶媒中でリビングアニオン重合し、ブロック重合体を得たのち、さらにこのブロック重合体を水素添加することによって得られる。
【0023】前記有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレンなどの炭化水素溶媒が用いられる。重合開始剤である有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物が好ましい。
【0024】この有機リチウム化合物としては、有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、、有機ポリリチウム化合物が用いられる。これらの具体例としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルリチウム、イソプレニルジリチウムなどが挙げられ、単量体100重量部当たり0.02〜0.2重量部の量で用いられる。
【0025】また、この際、ミクロ構造、すなわち共役ジエン部分のビニル結合含量の調節剤としてルイス塩基、例えばエ−テル、アミンなど、具体的にはジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン、プロピルエ−テル、ブチルエ−テル、高級エ−テル、またエチレングリコ−ルジブチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルジブチルエ−テル、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テルなどのポリエチレングリコ−ルのエ−テル誘導体、アミンとしてはテトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、トリブチルアミンなどの第3級アミンなどが挙げられ、前記有機溶媒とともに用いられる。
【0026】さらに、重合反応は、通常、−30℃〜150℃で実施される。
【0027】また、重合は、一定温度にコントロ−ルして実施しても、また熱除去をしないで上昇温度下にて実施してもよい。
【0028】ブロック重合体にする方法は、いかなる方法でもよいが、一般に前記有機溶媒中で、前記アルカリ金属化合物などの重合開始剤を用いて、まずブロックAを重合し、続いてブロックBを重合する。
【0029】このようにして得られるブロック重合体は、カップリング剤を添加することにより下記一般式A−(B−A) または(A−B)《式中、nは1以上、好ましくは2〜4の整数を、またmは2以上、好ましくは2〜4の整数を示す》で表されるような、重合体分子鎖が延長または分岐されたブロック共重合体であってもよい。
【0030】この際のカップリング剤としては、例えばアジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、テトラクロロケイ素、ブチルトリクロロケイ素、テトラクロロスズ、ブチルトリクロロスズ、ジメチルクロロケイ素、テトラクロロゲルマニクム、1,2−ジブロムエタン、1,4−クロルメチルベンゼン、ビス(トリクロルシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネ−ト、1,2,4−ベンゼントリイソシアネ−トなどが挙げられる。
【0031】このブロック重合体中のビニル芳香族化合物の結合含量は、各段階における重合時のモノマ−の供給量で調節され、共役ジエンのビニル結合含量は、前記ミクロ調節剤の成分を変量することにより調節される。さらに、重量数平均分子量は、重合開始剤、例えばn−ブチルリチウムの添加量で調節される。
【0032】本発明で使用されるブロック重合体の製造方法について、さらに具体的に説明すると、まずブロック重合体を得るには、例えばsec−ブチルリチウムなどの有機リチウム化合物を開始剤とし真空下あるいは高純度窒素気流下、第1段目にベンゼンあるいはシクロヘキサンなどの有機溶媒を重合溶媒として1,3−ブタジエンを重合することにより、ブロックAとなる低ビニルポリブタジエンブロックを重合し、続いてテトラヒドロフランあるいはジエチルエ−テルなどのミクロ調整剤および第2段目用の1,3−ブタジエンを添加し、重合完結後、ジメチルジクロロシランなどのカップリング剤を計算量添加し、A−Bジブロック重合体をカップリングすることにより、A−B−Aからなるトリブロック重合体が得られる。
【0033】また、多官能性のカップリング剤を使用することにより、複数のA−Bブロックを枝状に持つ分岐状マルチブロック重合体が得られる。
【0034】ここで、第1段目終了時に適当量の重合液をサンプルし、ゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−(GPC)によって測定することにより、ブロックAの分子量が求められる。同様に、第2段目の終了時のサンプルのGPC測定により得られる分子量値から、第1段目の分子量を差し引くことにより、第2段目の分子量が求められる。
【0035】したがって、A−B−Aトリブロック重合体の場合のブロックBの分子量は、GPC測定から求められた第2段目の分子量の2倍となる。
【0036】以上のようにして重合されたブロック重合体を水素添加することにより、本発明で使用される水添ブロック重合体が得られる。
【0037】本発明における水添ブロック重合体は、このようにして得られるブロック重合体を、不活性溶媒中に溶解し、20〜150℃、1〜100kg/cm2 の加圧水素下で水素化触媒の存在下で行われる。
【0038】水素化に使用される不活性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ヘチルベンゼンなどの炭化水素溶媒、またはメチルエチルケトン、酢酸エチル、エチルエ−テル、テトラヒドロフランなどの極性溶媒が挙げられる。
【0039】また、水素化触媒としては、ジシクロペンタジエニルチタンハライド、有機カルボン酸ニッケル、有機カルボン酸ニッケルと周期律表第I〜III 族の有機金属化合物からなる水素化触媒、カ−ボン、シリカ、ケイソウ土などで担持されたニッケル、白金、パラジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム金属触媒やコバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム錯体、あるいはリチウムアルミニウムハイドライド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、さらにはZr−Ti−Fe−V−Cr合金、Zr−Ti−Nb−Fe−V−Cr合金、LaNi5 合金などの水素貯蔵合金などが挙げられる。
【0040】これらの水素化触媒のうちでも、有機リチウムとコバルトの有機カルボン酸塩からなる触媒、例えば、n−ブチルリチウムとコバルトオクテ−トからなる触媒が好ましい。この場合、Li/Co比(モル比)=2.0〜2.5/lが適当である。
【0041】本発明における水添ブロック重合体のブタジエン部分の2重結合の水添率は、水素化触媒、水素化化合物の添加量、または水素添加反応時における水素圧力、反応時間を変えることにより調節される。
【0042】水素化されたブロック重合体溶液からは、触媒の残渣を除去し、フェノ−ル系またはアミン系の老化防止剤を添加し、重合体溶液から水添ブロック重合体を容易に単離することができる。
【0043】水添ブロック重合体の単離は、例えば重合体溶液に、アセトンまたはアルコ−ルなどを加えて沈殿させる方法、重合体溶液を熱湯中に攪拌下、投入し溶媒を蒸留除去する方法などで行うことができる。
【0044】本発明の変性水添ブロック重合体は、前述のようにして製造された水添ブロック重合体にポリラクトンを0.01〜10モル%付加してなるものである。
【0045】本発明の変性水添ブロック重合体を得るには、具体的にはラジカル発生剤、例えば有機過酸化物の存在下に水添ブロック重合体とポリラクトンを含有するラジカル重合性単量体とを加熱溶融混合することによって、適当量のポリラクトンを付加させることが可能である。
【0046】この変性水添ブロック重合体中のポリラクトンの量は、通常水添ブロック重合体を構成する分子に対して0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜8モル%、さらに好ましくは0.15〜5モル%である。
【0047】0.01モル%未満では相溶性が改善されず相分離が起こり、機械的強度に劣り、一方10モル%を超えて付加させても、期待される効果、相溶性などに及ぼすより以上の効果は期待し難く、特にゲル化などの副反応をポリラクトン付加反応(グラフト反応)中に起こしやくなるので好ましくない。
【0048】水添ブロック重合体にポリラクトンを付加する単量体としては、たとえば、下記一般式(I) 、(II)で表されるポリラクトン化合物が挙げられる。
【0049】




《Rは水素またはメチル基、nは1〜20の整数》次に、本発明の熱可塑性重合体組成物は、(イ)前記変性水添ブロック重合体99〜1重量%、ならびに(ロ)熱可塑性樹脂および/またはゴム質重合体1〜99重量%を含有するものである。
【0050】本発明に使用される(ロ)成分中の熱可塑性樹脂は、加熱により溶融し、任意の形状に成形し得るものを総称する。この熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン樹脂、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−トなどのポリエステル樹脂、あるいはポリアミドエラストマ−、ポリエステルエラストマ−などの結晶性熱可塑性重合体、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、MBS樹脂などのゴム変性重合体、アニオン−スチレン共重合体、スチレン−メチルメタクリレ−ト共重合体、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレ−ト、ポリカ−ボネ−ト、ポリフェニレンオキサイドなどの非晶性熱可塑性重合体、あるいは炭素数2〜8のα−モノオレフィンを主たる繰り返し構造単位とする重合単位に他の重合体がグラフト重合したグラフト重合体、例えばエチレン−プロピレン共重合体にアクリロニトリル−スチレン共重合体がグラフト重合したグラフト重合体、エチレン−ブテン共重合体にアクリロニトリル−スチレン共重合体がグラフト重合したグラフト重合体、エチレン−ブテン共重合体にブチルアクリレ−ト−メチルメタクリレ−ト共重合体がグラフト重合したグラフト重合体、エチレン−ブテン共重合体にメチルメタクリレ−ト共重合体がグラフト重合したグラフト重合体などが挙げられ、特にポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカ−ボネ−ト、ポリアミドエラストマ−、ポリエステルエラストマ−などは、組成物の耐熱性を向上させる成分として好ましい。
【0051】これらの熱可塑性樹脂のなかでも、好ましくは結晶性熱可塑性重合体および炭素数2〜8のα−モノオレフィンを主たる繰り返し構造単位とする重合単位に他の重合体がグラフト重合したグラフト重合体が挙げられる。
【0052】また、(ロ)成分を構成する他方の成分であるゴム質重合体とは、天然ゴムおよび合成ゴムを総称するものである。このゴム質重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエンゴムおよびその水素添加物、イソプレンゴム、ニトリルゴムおよびその水素添加物、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/プロピレンジエンゴム、エチレン/ブテンゴム、エチレン/ブテンジエンゴム、アクリルゴム、α,β−不飽和ニトリル/アクリル酸エステル共役ジエン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム、シリコ−ンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、スチレン/ブタジエンブロック重合体およびその水素添加物などが代表的なものとして挙げられる。
【0053】これらのゴム質重合体のなかでも、好ましくはスチレン/ブタジエンゴムの水素添加物、ニトリルゴムの水素添加物、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンゴム、エチレン/ブテンゴム、エチレン/ブテンジエンゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム、シリコ−ンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、スチレン/ブタジエンブロック重合体の水素添加物、α,β−不飽和ニトリル/アクリル酸エステル共役ジエン共重合ゴムなどの、本質的に飽和あるいは不飽和度の小さいゴム、およびこれらに官能基を付与した変性ゴムである。
【0054】本発明の熱可塑性重合体組成物は、前記(イ)変性水添ブロック重合体と、(ロ)熱可塑性樹脂および/またはゴム質重合体とを主成分とするが、その配合割合は、(イ)成分99〜1重量%、好ましくは95〜5重量%、さらに好ましくは90〜10重量%、(ロ)成分1〜99重量%、好ましくは5〜95重量%、さらに好ましくは10〜90重量%である。
【0055】ここで、(イ)成分が99重量%を超えた場合には、物性の改良効果が不充分であり、一方1重量%未満ではエラストマ−としての種々の物性が劣るので好ましくない。また、(ロ)成分が1重量%未満では(ロ)成分の添加による物性の改善効果が認められず、一方99重量%を超えて使用すると熱可塑性エラストマ−としての特徴を失うことになるので好ましくない。
【0056】本発明に使用される(ロ)成分は、非常に幅広い範囲のものであるが、その理由は(イ)成分である変性水添ブロック重合体(E−EB系TPE)がゴム状の極めた柔軟な形態から、樹脂の硬い形態まで幅広く変化するためである。
【0057】従って、(ロ)成分として、熱可塑性樹脂を用いるか、ゴム質重合体を用いるか、あるいは両者を混合して用いるかは、主として(イ)成分の性状と得ようとする組成物の目的によるものである。
【0058】より具体的には、通常、(イ)成分中のブロックAが40重量%以下であれば、(イ)成分はゴム状の柔軟な性状を示すため、(ロ)成分として熱可塑性樹脂を配合し、バランスのとれた熱可塑性重合体組成物を得るように設計を行うことが望ましい。
【0059】一方、(イ)成分中のブロックAが60重量%以上であれば、(イ)成分は比較的樹脂の性質を示すため、(ロ)成分としてゴム質重合体を配合し、熱可塑性エラストマ−としての設計を行うことが望ましい。(イ)成分中のブロックAの含量が40重量%を超え、60重量%未満であれば、(ロ)成分として熱可塑性樹脂およびゴム質重合体を併用して総合的にバランスのとれた熱可塑性エラストマ−として設計することが望ましい。
【0060】以上の(イ)成分と(ロ)成分の組み合わせの内容については、(イ)成分の性状と(ロ)成分である使用される重合体の関係を一般化して述べたものであって、本発明の組成物は前記の内容に限定されるものではなく、目的に応じて(ロ)成分の内容を選択することができる。
【0061】また、(ロ)成分で用いられる重合体は、複数の熱可塑性樹脂および/または複数のゴム質重合体を混合して使用してもよい。
【0062】さらに、(ロ)成分として熱可塑性樹脂およびゴム質重合体を併用して用いる場合には、それぞれを任意の割合で目的とする最終組成物の性能に応じて使用することができる。
【0063】さらに、本発明では、(イ)成分である水添ジエン系重合体の固有の性質、すなわち異種高分子間の相溶化剤として働くという性質を生かして、組成物の設計を行うこともできる。一般に、ブロック重合体を相溶化剤として使用する場合には、その添加量は数重量%程度で充分であることが知られている。
【0064】本発明の(イ)成分の最低使用量が1重量%であるのは、(イ)成分を相溶化剤として使用することを考慮しているためである。
【0065】すなわち、(イ)成分を相溶化剤として用いる場合には、(ロ)成分として熱可塑性樹脂およびゴム質重合体を併用する。
【0066】ここで、(イ)成分が相溶化剤として効果的に作用するのは、特定の熱可塑性樹脂と特定のゴム質重合体の組み合わせからなるものが挙げられる。
【0067】この場合、例えば熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1などのポリオレフィン系樹脂、炭素数2〜8のα−モノオレフィンを主たる構成物質とする重合体に他の重合体がグラフト重合したグラフト重合体などが挙げられる。
【0068】また、この場合のゴム質重合体としては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴムなどのモノオレフィン系共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムの水素添加物、ニトリルゴムの水素添加物、スチレン−ブタジエンブロック重合体の水素添加物などを挙げることができる。
【0069】前述の熱可塑性樹脂とゴム質重合体の組み合わせは、本発明の変性ブロック重合体の基本構造であるポリオレフィン構造と類似の構造を有する重合体からなる組み合わせである。 しかしながら、本発明の変性ブロック重合体は、官能基を有することから、官能基間の化学反応を通じて、通常、ポリオレフィン構造を有する重合体とは、非相溶であった重合体との相溶化剤として働くものである。本発明の変性ブロック重合体が、相溶化剤として効果的に働くポリオレフィン系樹脂と非相溶性の熱可塑性樹脂としては、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−トなどのポリエステル樹脂、ポリカ−ボネ−ト、ポリアミドエラストマ−、ポリエステルエラストマ−などが挙げられる。
【0070】また、ポリオレフィン系樹脂と非相溶性のゴム質重合体としては、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、α,β−不飽和ニトリル/アクリル酸エステル不飽和ジエン共重合ゴム、ウレタンゴムなどを挙げることができる。
【0071】(イ)成分を相溶化剤として使用する場合でも、前記以外の熱可塑性樹脂および/またはゴム質重合体が配合されていてもよい。
【0072】本発明の熱可塑性重合体組成物は、前記(イ)成分と(ロ)成分とを単純に混練りすることによって優れた性能を発揮する熱可塑性エラストマ−を得ることができるが、特に(ロ)成分としてゴム質重合体を必須の成分とする場合、あるいは(イ)成分をゴム成分とし(ロ)成分として熱可塑性樹脂を配合する場合には、(イ)成分であるゴム成分および/または(ロ)成分であるゴム質重合体を架橋する成分の存在下に、構成される(イ)〜(ロ)成分を剪断変形を与えながら混練り(加熱溶融混練り)することによって、さらに優れた性能の組成物(以下「組成物(II)」ということがある)を得ることができる。
【0073】ここで、使用される架橋剤としては、通常のゴムの架橋に使用されるもの、例えば「架橋剤ハンドブック」(山下晋三、金子東助著、大成社刊)などに記載のものが使用できる。
【0074】この好ましい架橋剤としては、イオウ、イオウ化合物、p−ベンゾキノンジオキシム、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシム、4,4´−ジチオ−ビス−ジモルホリン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、テトラクロロベンゾキノン、アルキルフェノ−ル−ホルムアルデヒド樹脂、臭素化アルキルフェノ−ル−ホルムアルデヒド樹脂などの樹脂加硫剤、アンモニウムベンゾエ−ト、ビスマレイミド化合物、ジエポキシ化合物、ジカルボン酸化合物、ジオ−ル化合物、ジアミン化合物、アミノ樹脂、有機金属塩、金属アルコキシド、有機金属化合物、有機過酸化物などが挙げられる。
【0075】これらの架橋剤は、単独であるいは混合して使用することができる。また、架橋剤の種類によっては、他の化合物と組み合わせて使用することによりさらに効率よく架橋が進行する場合がある。
【0076】特に、イオウあるいはイオウ化合物を架橋剤として使用する場合には、イオウの架橋反応を促進する加硫促進剤、加硫促進助剤、活性剤を併用することが望ましく、適切な組み合わせ、使用量などは、例えば前述の文献を活用して決定することができる。
【0077】また、有機過酸化物を架橋剤として用いる場合には、架橋助剤を併用する方法が好ましい。
【0078】この架橋助剤としては、イオウ、ジペンタメチレンチウラムペンタスルフィド、メルカプトベンゾシアゾ−ルなどのイオウ化合物、オキシムニトロソ化合物、エチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、アリ−ルメタクリレ−ト、トリアリ−ルシアヌレ−ト、ジアリ−ルフタレ−ト、ポリエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジビニルアジペ−ト、無水マレイン酸、ビスマレイミド化合物、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレ−ト、ジビニルベンゼンなどの単量体類、液状ポリブタジエン、液状スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ1,2−ブタジエンなどのポリマ−類が挙げられる。
【0079】使用する架橋剤は、(ロ)成分中のゴム質重合体の性状を充分に考慮して決定することが望ましいが、以下の点を留意して決定する必要がある。
【0080】すなわち、本発明で使用される(イ)変性水添ブロック重合体は、本質的にα−モノオレフィンからなるほぼ飽和の重合体であるとみなせる。
【0081】したがって、(ロ)成分中のゴム質重合体が不飽和度の高いものであるならば、架橋剤として高不飽和ゴムに有効なもの、例えば通常のイオウ加硫系、樹脂加硫系などを選択することにより、ゴム質重合体を優先的に架橋させることができる。 しかしながら、(ロ)成分中のゴム質重合体が本質的に飽和の重合体、特にα−モノオレフィンからなる共重合ゴム、あるいは不飽和度の少ないものである場合には、架橋剤種類および使用量によっては、ゴム質重合体の架橋のみならず、(イ)変性水添ブロックをも架橋し不溶化してしまう可能性がある。例えば、有機過酸化物を架橋剤として、多量に使用した場合には、(イ)成分をも架橋し、得られる組成物が不溶化してしまう恐れがある。
【0082】このような場合には、使用する架橋剤の量を充分に検討することにより解決可能であるが、ゴム質重合体の架橋度を充分に高くできないという限界がある。この根本的な解決方法としては、使用するゴム質重合体として、官能基、例えばカルボキシ基、酸無水物基、ヒドロキシ基、エポキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、イソシアネ−ト基、スルホニル基またはスルホネ−ト基などを含有するものを使用し、該官能基と反応する成分を架橋剤として使用する方法が挙げられる。この官能基を含有するゴム質重合体としては、例えば官能基を有する単量体を共重合する方法、あるいは既知のグラフト反応によってゴム質重合体に導入する方法などが挙げられる。この際、架橋剤として使用される成分は、ゴム質重合体中の官能基と置換反応を行う多官能性の物質であり、低分子物質あるいは高分子量物質であってもよい。
【0083】具体的には、カルボキシ基を含有するゴム質重合体は、ジアミノ化合物、ビスオキサゾリン、ジエポキシ化合物、ジオ−ル化合物などによって容易に架橋することができる。
【0084】また、無水マレイン酸を官能基として持つゴム質重合体は、ジアミノ化合物が架橋剤として有効である。
【0085】さらに、ゴム質重合体が、不飽和結合部分を含む場合には、ジチ−ル化合物、ビスマレイミドが、架橋剤として使用できる。
【0086】さらに、ゴム質重合体として、アクリルゴムあるいはアクリル酸エステルを主たる構成成分とするものを使用する場合には、ジアミノ化合物が有効である。
【0087】さらに、塩素化ポリエチレンなどの塩素化された重合体をゴム質重合体として使用する場合には、ジチオ−ル化合物が架橋剤として効果的である。
【0088】なお、ゴム質重合体に付与される官能基は、(イ)成分に導入される官能基と同じものでもよい。この場合、架橋剤として使用される多官能性物質により、(イ)成分の架橋も起こり得る。
【0089】しかしながら、この場合、(イ)成分中のの官能基を減少させたり、変性水添ブロック重合体のベ−スとなる水添ブロック重合体を適当量混合するなどの方法を用いることによって解決できる。
【0090】このようにして得られる重合体組成物(II)は、架橋されたゴム質重合体に、適当量の(イ)成分がグラフトした構造を与える。このような構造物は、しばしば最も優れた力学的性質を示すものであり、本発明の組成物としては好ましいものの一つである。
【0091】これらの架橋剤の使用量は、目的とする最終組成物に要求される性能によって適宜定めることができる。適切な架橋系の選択および使用量は、前述の文献などを参考として決定することが望ましい。通常は、ゴム質重合体100重量部に対して架橋剤0.1〜8重量部、加硫促進剤0.1〜10重量部、加硫促進助剤0.5〜10重量部、活性剤0.5〜10重量部、架橋助剤0.1〜10重量部の範囲で適宜使用される。
【0092】一方、(イ)成分をゴム成分(分散相)として使用し、架橋可能な成分として(イ)成分のみ、あるいはこれとゴム質重合体が併用される場合には、架橋剤としては有機過酸化物と架橋助剤からなる系が好ましい。
【0093】この有機過酸化物としては、その1分間半減期温度が150℃以上であるものがこのましく、例えば2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−ベンゾイル−パ−オキシヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ−t−ブチルパ−オキシバレレ−ト、ジクミルパ−オキサイド、t−ブチルパ−オキシベンゾエ−ト、ジ−t−ブチルパ−オキシ−ジ−イソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパ−オキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−t−ブチルパ−オキシヘキサン、ジ−t−ブチルパ−オキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−t−ブチルパ−オキシヘキシン−3などが好ましい例である。
【0094】また、使用する架橋助剤は、ラジカル重合性の単量体、あるいはラジカル架橋性の重合体が好ましい。この架橋助剤としては、ジビニルベンゼン、ビスマレイミド、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパンメタクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルトリアクリレ−ト、アルミニウムアクリレ−ト、アルミニウムメタクリレ−ト、亜鉛メタクリレ−ト、亜鉛アクリレ−ト、マグネシウムアクリレ−ト、アグネシウムメタクリレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト、トリアリルトリメリテ−ト、ジアリルフタレ−ト、ジアリルクロレンデ−ト、液状ポリブタジエン、液状ポリ1,2−ブタジエンなどが好ましい例である。
【0095】有機過酸化物および架橋助剤の使用量は、組成物中の(イ)成分あるいは(イ)成分と他のゴム質重合体の合計100重量部に対して、有機過酸化物の酸素量が0.001〜0.1モルになるように算出して添加することが好ましく、0.001モル未満では充分な架橋がかからないので好ましくなく、一方0.1モルを超えて使用してもより以上の架橋は期待できず、経済的でないうえ、他の好ましくない副反応、例えば重合体の分解などを起こしやすいので好ましくない。
【0096】また、使用する架橋助剤の使用量は、架橋助剤中の不飽和二重結合量が、添加した有機過酸化物中の活性酸素量の1/4〜40倍当量になるように選択して使用することが望ましい。1/4倍当量未満では、架橋助剤を添加したことによる架橋効率の向上という点からあまり期待できず、充分な架橋がかからないので好ましくなく、一方40倍当量を超えて使用してもより以上の架橋は期待できず、経済的でない。
【0097】以上の本発明の(イ)成分および(ロ)成分を含有する熱可塑性重合体組成物は、通常の混練り装置、例えばラバ−ミル、ブラベンダ−ミキサ−、バンバリ−ミキサ−、加圧ニ−ダ−、二軸押し出し機などが使用できるが、密閉式あるいは開放式であっても、不活性ガスによって置換できるタイプが好ましい。
【0098】なお、混練り温度は、混合する成分がすべて溶融する温度であり、通常、140〜300℃、好ましくは160〜280℃の範囲であることが望ましい。また、混練り時間は、構成成分の種類、量および混練り装置に依存するため一概に論じられないが、加圧ニ−ダ−、バンバリ−ミキサ−などを混練り装置として使用する場合には、通常、約5〜40分程度である。
【0099】さらに、混練りするにあたり、各成分を一括混練りしてもよく、また任意の成分を混練りしたのち、残りの成分を添加し混練りする多段分割混練り法をとることもできる。
【0100】本発明の熱可塑性重合体組成物には、必要に応じて各種添加剤、例えば老化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、シリカ、タルク、カ−ボンなどの無機物充填剤、可塑剤、オイルなどの軟化剤を配合して使用することができる。
【0101】[実施例]以下、実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の主旨を越えない限り、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
【0102】なお、実施例中において、部および%は、特に断らない限り重量基準である。
実施例1〜3(変性水添ブロック重合体の調整)
表に示す配合処方に従い、200℃に温度調整されたブラベンダ−に水添ブロック重合体を投入し、溶融後、ポリラクトン化合物と有機過酸化物とを添加し、80r.p.m.で約10分間混合し、ポリラクトン化合物が付加した変性水添ブロック重合体を得た。
【0103】この混合物を排出し、熱ロ−ルでシ−ト化したのち、プレス成形して、一辺10cmの正方形の板とし、ダンベルカッタ−で切り抜いて測定用の試験片とした。 なお、物性の評価試験は、JIS K6301に準じて行った。
【0104】実施例4〜10および比較例1〜8(変性水添ブロック重合体または熱可塑性重合体組成物の調整)表−4に示す配合処方に従い、200℃に温度調整されたブラベンダ−に、変性水添ブロック重合体単独、(イ)変性水添ブロック重合体ならびに(ロ)熱可塑性樹脂および/またはゴム質重合体、あるいは水添ブロック重合体単独を添加し、80r.p.m.で約15分間混合した。この混合物を排出し、熱ロ−ルでシ−ト化したのち、プレス成形して、一辺10cmの正方形の板とし、ダンベルカッタ−で切り抜いて測定用の試験片とした。
【0105】なお、架橋剤を添加する場合には、(イ)成分および(ロ)成分が完全に溶融したのを確認したのち、添加した。架橋剤は、添加後、80r.p.m.で混合を続行し、約15分間おこなった。
【0106】なお、物性の評価試験はJIS K6301に準じて行った。実施例1〜10および比較例1〜8における配合処方および物性測定結果を表−1〜表−5に示す。 実施例1〜3は変性水添ブロック重合体の製造例、実施例4〜10は本発明の熱可塑性重合体組成物の製造例であり、いずれも物性値が優れている。
【0107】
表−1 実施例 1 2 3 (イ)成分調整時の 仕込み組成(部) 水添ブロック重合体 種類 B−1 B−2 B−1 量 100 100 100 ポリラクトン化合物 種類 FM-2 FM-2 FA-2 量 3 3 3 有機過酸化合物 種類 t-BPO t-BPO t-BPO 量 0.2 0.2 0.2 表−2 実施例 4 5 6 7 8 9 10 組成物配合処方(部)
(イ)成分 実1 実1 実2 実3 実1 実1 実1 種類 60 30 60 60 60 60 60 (ロ)成 分 熱可塑性樹脂 種類 PA6 PA6 PA6 PA6 PBT TPAE TPEE 量 40 30 40 40 40 40 40 ゴム質重合体 EPDM 種類 40上記表中(イ)成分における記載たとえば、「実1」というのは実施例1において得られたラクトン化合物変性水添ブロック重合体のことである。
【0108】
表−3 実施例 1 2 3 4 5 物性 引張強度(Kg/cm2 ) 170 150 170 250 200 破断伸び(%) 980 970 980 460 450 100%伸長時 8 8 8 17 25 永久伸び(%)
硬さ(JIS A) 76 75 76 93 87 80℃での引張強度保持率 36 35 36 70 65 (%) 実施例 6 7 8 9 10 物性 引張強度 240 250 310 180 150 (Kg/cm2 ) 破断伸び 450 460 450 760 800 (%)
100%伸長時 16 17 28 17 13 永久伸び (%)
硬さ 90 91 100 87 82 (JIS A)
80℃での引張強度 65 65 70 70 70 保持率 (%) 表−4 比較例 1 2 3 4 5 6 7 8 (イ)成分調整時の仕込み組成(部) 水添ブロック重合体 種類 B−1 B−1 B−3 − B−1 B−2 B−3 SEBS 量 60 70 5 − 100 100 100 100 組成物配合処方(部)
(イ)成分 SEBS 種類 60 (ロ)成分 熱可塑性樹脂 種類 PA6 PBT PA6 PA6 量 40 30 50 40 ゴム質重合体 種類 EPDM 量 45 表−5 比較例 1 2 3 4 5 6 7 8 物性 ■ 245 250 185 310 225 160 60 310 ■ 40 35 30 430 1110 1100 1120 460 ■ 測 定 で き ず 22 10 8 6 7 ■ 94 100 90 100 85 74 65 84 ■ 12 10 10 64 38 28 18 37 上記表中の■〜■は以下の各物性を示す。
【0109】■引張強度(Kg/cm2
■破断伸び(%)
■100%伸長時永久伸び(%)
■硬さ(JIS A)
■80℃での引張強度保持率(%)これに対し、比較例1〜3は、(イ)成分として未変性の水添ブロック重合体を用いた組成物例であり、破断伸びが悪く、実用に適したものではない。
【0110】また、比較例4は、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック重合体に無水マレイン酸を3%付加したものを使用した例であり、力学的性質はほぼ同等であったが、溶融粘度が高く、加工性に劣るものであった。
【0111】さらに、比較例5〜7は、変性前の水添ブロック重合体そのものの例である。力学的強度などの物性は、変性されたものを使用した実施例とほとんど同じであるが、ポリオレフィンを除く重合体との相溶性に劣り、有用な組成物がえられないことは、比較例1〜3に示したとおりである。
【0112】さらに、比較例8は、比較例4で使用した無水マレイン酸で変性したSEBSそのものの例である。この比較例8は物性的には本発明の変性水添ブロック重合体とほぼ同等であるが、SEBS系の欠点として、溶融粘度が高く、加工性に劣ることは比較例4に示したとおりである。
【0113】
ブロックA中の ブロックB中の 1,2−ビニル 1,2−ビニル 数平均分子量 水添率 結合含量(%) 結合含量(%) A/B/A(×103 ) (%) B−1 11 46 30/140/30 98B−2 13 79 60/120/60 98 なお、前記表1に記載されているラクトン化合物は以下の構造を有するものである。
【0114】


《上記式中のnは約2である》 なお、表中の略号は以下の通りである。
【0115】t−BPO ジ−t−ブチルパ−オキサイドPA6 ナイロン6(宇部興産製)
PBT ポリブチレンテレフタレ−ト(東レPBT 1401−X06)
TPEE ポリエステルエラストマ−(PIBIFLEX 46CM、Dutral社)
TPAE ポリアミドエラストマ−(グリラックスA−250、大日本インキ製)
樹脂加硫剤 アルキルフェノ−ル=ホルムアルデヒド樹脂TAC トリアリ−ルイソシアネ−トBMI ビスマレイミドEPDM エチレン−プロピレン系ゴム(JSR EP57P、日本合成ゴム製)
SEBS 無水マレイン酸を3%グラフトした変性SEBS(クレイトンG1650、シェル製)
【0116】
【発明の効果】本発明の変性水添ブロック重合体は、オレフィン構造でありながら、ポリアミド、ポリエステルなどとの相溶性に極めて優れている。
【0117】特に、この変性水添ブロック重合体の熱可塑性エラストマ−としての性能を活用した本発明の熱可塑性重合体組成物は、従来にない組成物であり、その具体的用途として、自動車車両部品としては内装表皮材、ラックアンドピニオンブ−ツ、ベロ−ズ、バキュ−ムコネクタ−、チュ−ブ、サイドモ−ル、ヘッドレスト、レギュレ−タ−、ア−ムレスト、シフトレバ−ブ−ツ、ウェザ−ストリップ、エアスポイラ−、サスペンションブ−ツ、ベルトカバ−、ホイルカバ−、ノブ類、バンパ−、サイトシ−ルド、バンパ−モ−ルなど、工業部品としては、油圧ホ−ス、エアチュ−ブ、ゴムホ−ス、アウトカバ−、各種ガスケット、コンテナ、O−リング、パッキング材など、また各種カラ−タイル、床材、家具、家電表皮材、電動防止材、スポ−ツ用品、特にグリップ表皮材などに使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】(A) 1,2−ビニル結合含量が20%以下であるポリブタジエンブロックセグメント、(B) ポリブタジエンあるいはビニル芳香族化合物/ブタジエン共重合体であって、ブタジエン部分の1,2−ビニル結合含量が30〜95%であるブロックセグメントからなり、かつブロック構造がA−(B−A)または(A−B)《ただし、nは1以上、mは2以上》で表される直鎖状あるいは分岐状のブロック重合体のブタジエン部分を90%以上水素添加してなるポリスチレン換算重量平均分子量が3万〜60万の水添ブロック重合体に、ポリラクトン化合物が0.01〜10モル%付加されたことを特徴とする変性水添ブロック共重合体。
【請求項2】 ポリラクトンがポリカプロラクトンである請求項1に記載れた変性水添ブロック共重合体。
【請求項3】(イ)(A) 1,2−ビニル結合含量が20%以下であるポリブタジエンブロックセグメント、(B) ポリブタジエンあるいはビニル芳香族化合物−ブタジエン共重合体であって、ブタジエン部分の1,2−ビニル結合含量が30〜95%であるブロックセグメントからなり、かつブロック構造がA−(B−A)または(A−B)《ただし、nは1以上、mは2以上》で表される直鎖状あるいは分岐状のブロック重合体のブタジエン部分を90%以上水素添加してなるポリスチレン換算重量平均分子量が3万〜60万の水添ブロック重合体に、ポリラクトン化合物が0.01〜10モル%付加された変性水添ブロック共重合体99〜1重量%および(ロ)熱可塑性樹脂および/またはゴム質量合体1〜99重量%を含有することを特徴とする熱可塑性重合体組成物。
【請求項4】 ポリラクトンがポリカプロラクトンである請求項3に記載れた熱可塑性重合体組成物。