説明

変成シリコン系発泡体の製造方法

【課題】変成シリコン系発泡体を製造する方法において、体積収縮の小さい変成シリコン系発泡体を提供すること。
【解決手段】オキシアルキレン系単位からなる重合体、硬化剤、発泡剤、アルケニル基とヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基を有する発泡助剤、ヒドロシリル化触媒、含む発泡材料を、発泡性材料の発泡剤(C)および発泡助剤(D)の添加量を{発泡剤(C)および発泡助剤(D)のヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基のモル数の合計}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}が0.8から1.2になるように調整することを特徴とする変成シリコン系発泡体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体積収縮の小さい変成シリコン系発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液状樹脂を発泡成形してなる軟質発泡体は、柔軟性、緩衝性、軽量性等に優れていることや、製品に対する原料樹脂の使用量を減らすことができるという経済性の高さから、様々な分野で広く使用されている。
【0003】
特に、アスカーFP型硬度計で測定した硬度が10度以下になるような超軟質発泡体は、極めて柔軟で、応力追従性、衝撃や振動の吸収、緩和、分散性に優れることからベッド、マット、枕、クッション、パッドのように人体各部に当てて使用する製品などへの需要が増加している。このような超軟質発泡体の一つとして特許文献1には変成シリコン系発泡体が開示されている。
【0004】
変性シリコン系発泡体は柔軟性が高く、切断や打抜き等の後工程を行う際に発泡体が変形するため安定した寸法での加工が難しい。このことから変性シリコン系発泡体はモールド成形により製造されることが多いが、硬度を低くする目的から、架橋密度が低く抑えられており、そのため成形時の発泡体の体積収縮により寸法安定性が低くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2008/117734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した問題点に注目し、簡便な方法で従来より体積収縮を抑えた変成シリコン系発泡体の製造方法の開発を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題の解決のため鋭意研究を重ねた結果、以下の構成による製法により体積収縮を抑えた変成シリコン系発泡体を得ることが出来る。
【0008】
1). (A)分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体、(B)分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤、(C)ヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基を有する発泡剤、(D)アルケニル基とOH基を有する発泡助剤、(E)ヒドロシリル化触媒、を含んでなる発泡性材料のうち、発泡剤(C)と発泡助剤(D)の添加量を{発泡剤(C)および発泡助剤(D)のヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基のモル数の合計}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}を0.8から1.2の範囲となるように調整することを特徴とする変成シリコン系発泡体の製造方法。
【0009】
2).発泡助剤(D)の添加量を{発泡助剤(D)のヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基のモル数}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}を0.22から0.30の範囲になるように調整することを特徴とする1)に記載の変成シリコン系発泡体の製造方法。
【0010】
3). (A)分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体、(B)分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤、(C)ヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基を有する発泡剤、(D)アルケニル基とOH基を有する発泡助剤、(E)ヒドロシリル化触媒、を含んでなる発泡性材料のうち、発泡剤(C)と発泡助剤(D)の添加量を{発泡剤(C)および発泡助剤(D)のヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基のモル数の合計}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}を0.8から1.2の範囲となるように調整した発泡性材料を発泡した変成シリコン系発泡体。
【0011】
4). 発泡助剤(D)の添加量を{発泡助剤(D)のヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基のモル数}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}を0.22から0.30の範囲になるように調整することを特徴とする3)に記載の変成シリコン系発泡体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば従来より体積収縮を抑えた変成シリコン系発泡体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例および比較例で使用するモールド型の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
変成シリコン系発泡体は分子鎖中に少なくとも平均して1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体(A)(以下、単に、重合体(A)と称す場合がある)に、ヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基を有する発泡剤(C)、片方の末端がアルケニル基、もう一方の末端がヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基を有する発泡助剤(D)、ヒドロシリル化触媒(E)、を添加し攪拌混合を行い、その後に分子鎖中に平均して少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(B)(以下、単に、硬化剤(B)と称す場合がある)を添加し、攪拌混合を行って作製した発泡性材料を発泡、硬化することで製造することができる。
【0015】
本発明では、発泡剤(C)と発泡助剤(D)の添加量を、{発泡剤(C)および発泡助剤(D)のヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基(ヒドロキシル基)のモル数の合計}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}が0.8から1.2の範囲になるように調整することで体積収縮を15%以下まで小さくすることができる。好ましくは、0.9〜1.2の範囲になるように調整することで体積収縮を14%以下まで小さくすることも可能である。
【0016】
好ましくは、さらに発泡助剤(D)の添加量を{発泡助剤(D)のヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基のモル数の合計}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}が0.22から0.30の範囲になるように調整することで、体積収縮を10%以下まで、さらには0.23〜0.29の範囲になるように調整することで、体積収縮を9%以下まで小さくすることができる。なお、体積収縮率の下限値は特に限定はないが、金型と同じ大きさすなわち、ゼロであると収縮率の考慮をしなくても金型と同じ成型体がえられるので好ましいが、実際には難しい面もあり、強いて下限値を例示するなら2%以上、4%以上、5%以上の値を挙げることができる。
【0017】
本発明における重合体(A)は分子鎖中に平均して少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体であれば、特に限定するものではない。
【0018】
重合体(A)は、硬化剤(B)とヒドロシリル化反応して硬化する成分であり、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有するため、ヒドロシリル化反応が起こって高分子状となり、硬化する。重合体(A)に含まれるアルケニル基の数は、硬化剤(B)とヒドロシリル化反応する点から少なくとも平均して1個以上であることが必要である。重合体(A)に該当するものとしては、カネカサイリル(株式会社カネカ製)として販売されているものを用いることが出来る。
【0019】
硬化剤(B)は、重合体(A)の硬化剤として作用する。硬化剤(B)は、ヒドロシリル基を有し、そのため、それぞれのヒドロシリル基が重合体(A)に存在するアルケニル基と反応して硬化する。分子鎖中には平均して少なくとも2個のヒドロシリル基を有するが、ヒドロシリル基の上限は50個以下が好ましい。
【0020】
なお、本発明において、ヒドロシリル基を1個有するとは、SiH結合を1個有することを言い、SiHの場合にはヒドロシリル基を2個有することになるが、1つのSiに結合するHの数は、1つであるほうが硬化性は良くなり、また、柔軟性の点からも好ましい。本発明において「分子鎖中に平均して1個のヒドロシリル基」とは、1gあたりのヒドロシリル基量にその物質の数平均分子量をかけたものである。本発明においては、ヒドロシリル基以外の官能基についても特に断りのない限り同様に、分子鎖中の官能基数を計算したものを示す。
【0021】
前記のごとく硬化剤(B)の構造については分子鎖中には少なくとも2個のヒドロシリル基を有する以外特に制限はないが、例えば、炭化水素硬化剤やポリシロキサン系硬化剤が例示できる。
【0022】
本発明における発泡剤(C)としては、ヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基を含有する化合物である。具体的には1級飽和炭化水素アルコール、カルボン酸または水が挙げられる。
【0023】
本発明における発泡助剤(D)としては、ヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基とアルケニル基を有する化合物であれば特に限定はないが、分子末端にヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基を含有し、もう一方の末端にアルケニル基を有する化合物が好ましい。具体的にはエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールプロピレングリコール共重合体のモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテルなどが挙げられる。
【0024】
本発明のヒドロシリル化触媒(E)としては、ヒドロシリル化触媒として働くものである限り、特に制限はなく、任意のものを使用する。ヒドロシリル化触媒としての具体例としては、白金の担体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体、ジカルボニルジクロロ白金などが挙げられる。
【0025】
その他に本発明の効果をなくさない程度であれば、充填材、貯蔵安定剤、可塑剤、増粘剤など、必要に応じて添加してもよい。
【0026】
本発明の方法により、体積収縮が15%以下まで抑制され、従来より寸法安定性の高い変成シリコン系発泡体を製造することができる。
【0027】
本願発明の方法により得られた変性シリコン系発泡体は軽量であり、柔軟性に優れるため、クッションやパッドに好適に用いられる。
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されたものではない。
【実施例】
【0029】
<モールド型>
図1に示す、表面を厚さ50マイクロメートルのPTFEでコーティングしたアルミ製の金型1(内寸法:520mm×350mm×深さ50mm)に表面を厚さ50マイクロメートルのPTFEでコーティングした鉄製の上蓋2(寸法:550mm×380mm×厚み1.5mm、注入口:内径30mm)を取り付けてモールド型を組み立てた。
実施例および比較例においてはこのモールド型を用いた。
【0030】
<使用化合物>
実施例においては表1に示す化合物を用いた。
【0031】
【表1】

【0032】
(実施例1)
ディスポーザブルカップの中にトータル1200gになるように、100重量部の重合体(A)に対して、発泡剤(C)を9.1重量部、発泡助剤(D)を16.1重量部、触媒(E)を0.13重量部加えて攪拌混合を行い、さらに硬化剤(B)を13重量部添加してすばやく攪拌混合を行って発泡性材料を作製した。
【0033】
次に、前記モールド型に注入口から発泡性材料を1kg注入した。注入完了後、注入口をキャビティー内部ガスの排気口にするために、注入口はそのまま開放状態にした。このモールド型をファンが設けられた加熱炉内に置き、50℃で60分間加熱して発泡性材料を発泡させてキャビティー内に充満させつつ、硬化させた。加熱終了後にモールド型を加熱炉から取り出し、モールド型から脱型して発泡体を得た。
【0034】
(実施例2)
発泡剤(C)を8.5重量部、発泡助剤(D)を21.6重量部とした以外は、全て実施例1と同じ工程で発泡体を作製し、実施例2とした。
【0035】
(比較例)
発泡剤(C)を13.0重量部とした以外は、全て実施例1と同じ工程で発泡体を作製した。
実施例の測定、評価は次の条件・方法により行った。評価結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
<発泡倍率>
発泡倍率については、下記
発泡倍率(倍)=発泡体体積(cm)/同重量の(未発泡の)発泡性材料の体積(cm
の計算式から算出した。
【0038】
<体積収縮率>
体積収縮率については、下記
体積収縮率(%)=100×{1−(発泡体の体積/使用する金型のキャビティー体積)}
の計算式から算出した。
【0039】
表2のように、{発泡剤(C)および発泡助剤(D)のヒドロキシル基のモル数の合計}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}を1.10にした実施例1の発泡体は体積収縮率12.8%となり、{発泡剤(C)および発泡助剤(D)のヒドロキシル基のモル数の合計}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}を1.5にした比較例の発泡体(体積収縮率25.0%)よりも、体積収縮が小さくなった。
【0040】
また、{発泡剤(C)および発泡助剤(D)のヒドロキシル基のモル数の合計}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}を1.10に、{発泡助剤(D)のヒドロキシル基のモル数}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}を0.25にした実施例2の発泡体は体積収縮率8.2%となり、実施例1の発泡体よりも、さらに体積収縮が小さくなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体、(B)分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤、(C)ヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基を有する発泡剤、(D)アルケニル基とOH基を有する発泡助剤、(E)ヒドロシリル化触媒、を含んでなる発泡性材料のうち、発泡剤(C)と発泡助剤(D)の添加量を{発泡剤(C)および発泡助剤(D)のヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基のモル数の合計}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}を0.8から1.2の範囲となるように調整することを特徴とする変成シリコン系発泡体の製造方法。
【請求項2】
発泡助剤(D)の添加量を{発泡助剤(D)のヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基のモル数}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}を0.22から0.30の範囲になるように調整することを特徴とする請求項1に記載の変成シリコン系発泡体の製造方法。
【請求項3】
(A)分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位が飽和炭化水素系単位、または、オキシアルキレン系単位からなる重合体、(B)分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤、(C)ヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基を有する発泡剤、(D)アルケニル基とOH基を有する発泡助剤、(E)ヒドロシリル化触媒、を含んでなる発泡性材料のうち、発泡剤(C)と発泡助剤(D)の添加量を{発泡剤(C)および発泡助剤(D)のヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基のモル数の合計}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}を0.8から1.2の範囲となるように調整した発泡性材料を発泡した変成シリコン系発泡体。
【請求項4】
発泡助剤(D)の添加量を{発泡助剤(D)のヒドロシリル基と反応して水素を発生するOH基のモル数}/{硬化剤(B)のヒドロシリル基のモル数}を0.22から0.30の範囲になるように調整することを特徴とする請求項3に記載の変成シリコン系発泡体。


【図1】
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