説明

変更された花部を有する植物

本発明は、花部変更を伴う遺伝子工学処理植物に関する。スプレーカーネーションのような植物は、非内在性フラボノイド3’,5’ヒドロキシラーゼ(F3’5’H)およびジヒドロフラボノール−4レダクターゼ(DFR)を内在性DFRの抑圧遺伝子とともに用いて形質転換される。好ましくは、内在性DFRの基質特異性は、花部の色を増強するために、非内在性DFRと異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許仮出願第61/139,354号(2008年12月19日出願、表題「A Plant」)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に関連し、それからの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般的に植物の遺伝子改変の分野に関する。さらに詳細には、本発明は、所望の色表現型を発現する遺伝子改変植物に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書で著者に言及される出版物の文献目録詳細は、本説明の末尾に集められている。
【0004】
本明細書中での任意の従来技術に対する参照は、この従来技術が任意の国における共通の一般的知識の一部を構成するということの承認ではないし、承認であると解釈されるべきでなく、あるいはそれを如何なる形態でも示唆するものでなく、示唆するものであると解釈されるべきでない。
【0005】
花あるいは観賞用または園芸用植物産業は、花および/または植物の新しい且つ異なる品種を開発しようと努力している。このような新規の品種を作り出すための有効な方法は、花色の操作によるものである。古典的品種改良技法は、今日入手可能な花および/または植物の商業的品種のほとんど全てに関する広範囲の色を出すためにかなりの成功を伴って用いられてきた。しかしながら、このアプローチは、特定の種の遺伝子プールという制約により限定されおり、そしてこの理由のために、単一種が全範囲の色の品種を有することは稀である。例えば、植物または植物の一部、例えば花、葉、果実および茎の新規の色の品種の開発は、切花、観賞植物および園芸市場においてともに、有意の機会を提供する。花あるいは観賞または園芸植物産業において、カーネーションの新色品種の開発は特に重要である。これは、異なる色の花だけでなく、葯および花柱も含む。
【0006】
花色は、主に三種類の色素:すなわちフラボノイド、カロテノイドおよびベタレインが元になっている。3つのうち、フラボノイドは最も一般的で、黄色〜赤色〜青色までの一連の色に寄与する。花色の主因をなすフラボノイド分子はアントシアニンであり、これは、シアニジンのグリコシル化誘導体およびそのメチル化誘導ペオニジン、デルフィニジンおよびそのメチル化誘導ペチュニジンならびにマルビジンおよびペラルゴニジンである。アントシアニンは、花弁の表皮細胞の液胞中、または葉の表皮下細胞の液胞中に局在化される。
【0007】
フラボノイド色素は、フェニルプロパノイド経路の二次代謝産物である。フラボノイド色素のための生合成経路(フラボノイド経路)は、十分に確立されており(Holton and Cornish, Plant Cell 7: 1071-1083, 1995;Mol et al, Trends Plant Sci. 3: 212-217, 1998;Winkel-Shirley, Plant Physiol. 126: 485-493, 2001a;およびWinkel-Shirley, Plant Physiol. 127: 1399-1404, 2001b;Tanaka and Mason, In Plant Genetic Engineering, Singh and Jaiwal (eds) SciTech Publishing Llc., USA, 1: 361-385, 2003;Tanaka et al, Plant Cell, Tissue and Organ Culture 80: 1-24, 2005;Tanaka and Brugliera, In Flowering and Its Manipulation, Annual Plant Reviews Ainsworth (ed), Blackwell Publishing, UK, 20: 201-239, 2006)、図1に示されている。3つの反応および酵素は、フラボノイド経路における最初の重要な基質の1つであるp−クマロイル−CoAへのフェニルアラニンの変換に関与する。酵素は、フェニルアラニンアンモニア−リアーゼ(PAL)、シンナメート4−ヒドロキシラーゼ(C4H)および4−クマレート:CoAリガーゼ(4CL)である。当該経路における初発段階は、3分子のマロニル−CoA(アセチルCoAおよびCO2に及ぼすアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)の作用により提供される)と1分子のp−クマロイル−CoAの縮合反応を含む。この反応は、酵素カルコンシンターゼ(CHS)により触媒される。この反応の生成物である2’,4,4’,6’−テトラヒドロキシ−カルコンは、常態では、酵素カルコンフラバノンイソメラーゼ(CHI)により異性化されて、ナリンゲニンを生成する。ナリンゲニンは、その後、フラバノン3−ヒドロキシラーゼ(F3H)により中心環の3位でヒドロキシル化されて、ジヒドロケンフェロール(DHK)を生じる。
【0008】
DHKのB環の水酸化のパターンは、花弁の色を決定するのに重要な役割を果たす。B環は、3’位または3’および5’位で水酸化されて、それぞれジヒドロクエルセチン(DHQ)またはジヒドロミリセチン(DHM)を生じ得る。当該経路のこの部分に関与する2つの重要な酵素は、ともにシトクロムP450クラスの酵素の成員であるフラボノイド3’ヒドロキシラーゼ(F3’H)およびフラボノイド3’,5’ヒドロキシラーゼ(F3’5’H)である。
【0009】
F3’Hは、多数の植物種において赤およびピンク色の花色に寄与するシアニジン由来の色素をもたらすフラボノイド経路における重要酵素である。F3’5’Hは、多くの種において紫色、菫色および青色の花色に寄与するデルフィニジン由来のアントシアニンの産生をもたらす。
【0010】
F3’5’Hをコードするヌクレオチド配列は、クローン化されている(国際特許出願PCT/AU92/00334(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)ならびにHolton et al, Nature, 366: 276-279, 1993および国際特許出願PCT/AU03/01111(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)参照)。これらの配列は、ペチュニア(国際特許出願PCT/AU92/00334およびHolton et al, 1993(上記)参照)、タバコ(国際特許出願PCT/AU92/00334参照)、カーネーション(国際特許出願PCT/AU96/00296(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)参照)およびバラ(国際特許出願PCT/AU03/01111参照)におけるフラボノイドの3’,5’の水酸化による改変をもたらすのに効率的であった。
【0011】
ジヒドロフラボノール(DHK、DHQ、DHM)からの有色アントシアニンの産生にはジヒドロフラボノール−4−レダクターゼ(DFR)が関与し、ロイコアントシアニジンの産生をもたらす。ロイコアントシアニジンはその後、アントシアニジン、ペラルゴニジン、シアニジンおよびデルフィニジンに変換される。これらのフラボノイド分子は、正常生理学的条件下では不安定で、グリコシルトランスフェラーゼの作用による3位でのグリコシル化がアントシアニン分子を安定化し、したがって、アントシアニンの蓄積を可能にする。概して、グリコシルトランスフェラーゼは、糖部分をUDP糖からフラボノイド分子に移して、グリコシル化の位置に対する高特異性ならびに受容体基質に対する相対的に低い特異性を示す(Seitz and Hinderer, Anthocyanins. In: Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants. Constabel and Vasil (eds.), Academic Press, New York, USA, 5: 49-76, 1988)。アントシアニンは、3−モノシド、3−ビオシドおよび3−トリオシド、ならびに3,5−ジグリコシドおよび3,7−ジグリコシド(糖グルコース、ガラクトース、ラムノース、アラビノースおよびキシロースと関連)として生じ得る(Strack and Wray, In: The Flavonoids - Advances in Research since 1986、Harborne, J.B. (ed), Chapman and Hall, London, UK, 1-22, 1993)。
【0012】
アントシアニン分子の安定化に関与するグリコシルトランスフェラーゼとしては、UDPグルコース:フラボノイド3−グルコシルトランスフェラーゼ(3GT)(これは、UDPグルコースからのグルコース部分をアントシアニジン分子の3−O−位に移してアントシアニジン3−O−グルコシドを生じる)が挙げられる。
【0013】
多くのアントシアニジングルコシドが、アシル化誘導体の形態で存在する。アントシアニジングルコシドを改変するアシル基は、それらの構造に基づいて2つの主なクラスに分けられ得る。脂肪族アシル基はマロン酸またはコハク酸を包含し、芳香族クラスはヒドロキシ桂皮酸、例えばp−クマリン酸、カフェイン酸およびフェルラ酸、ならびに安息香酸、例えばp−ヒドロキシ安息香酸を包含する。例えば、カーネーションでは、アントシアニジンはマリル化アントシアニンとして存在する(Nakayama et al, Phytochemistry, 55, 937-939, 2000;Fukui et al, Phytochemistry, 63(1): 15-23, 2003)。
【0014】
上記の改変のほかに、液胞または色素が局在する区画のpH、ならびにフラボノイド、例えばフラボノールおよびフラボンとの共色素形成は、花弁の色に影響を及ぼし得る。フラボノールおよびフラボンは、芳香族アシル化もされ得る(Brouillard and Dangles, In: The Flavonoids- Advances in Research since 1986;Harborne, J.B. (ed), Chapman and Hall, London, UK, 1-22, 1993)。
【0015】
カーネーションの花は、それらの遺伝子型によって、2種類のアントシアニジン、すなわちペラルゴニジンとシアニジンを生じ得る。F3’H活性の非存在下では、ペラルゴニジン由来のアントシアニンが生成され、そうでない場合は、シアニジン由来のものが生成される。ペラルゴニジン由来色素は、通常は、無色フラボノールであるケンフェロールを伴う。シアニジン由来色素は、通常は、ケンフェロールおよびクエルセチンの両方を伴う。ペラルゴニジンおよびケンフェロールはともに、DHKに由来する;シアニジンおよびクエルセチンはともに、DHQに由来する(図1)。
【0016】
DFRにより示される基質特異性は、植物が蓄積するアントシアニンを調節する。ペチュニアおよびシンビジウムDFRはDHKを低減せず、したがってそれらはペラルゴニジンベースの色素を蓄積しない(Forkmann and Ruhnau, Z Naturforsch C. 42c, 1146-1148, 1987;Johnson et al, Plant Journal, 19, 81-85, 1999)。多数の重要な栽培花卉種、例えばアイリス、デルフィニウム、シクラメン、ゲンチアン、リンドウ、シンビジウム、ニーレンベルギアは、それらの内在性DFRの基質特異性のために、ペラルゴニジン由来色素を蓄積しないと推測される(Tanaka and Brugliera, 2006、上記)。
【0017】
カーネーションでは、DFR酵素は、DHKを、ペラルゴニジン由来の色素への前駆体であるロイコペラルゴニジンに代謝して、杏色〜赤レンガ色のカーネーションを生じ、DHQを、シアニジン由来の色素への前駆体であるロイコシアニジンに代謝して、桃色〜赤色カーネーションを産生し得る。カーネーションDFRは、DHMを、デルフィニジン由来の色素への前駆体であるロイコデルフィニジンに変換し得る(Forkmann and Ruhnau, 1987、上記)。野生型または古典的由来カーネーション系統はF3’5’H酵素を含有せず、したがってDHMを合成しない。
【0018】
ペチュニアDFR酵素は、カーネーションDFRとは異なる特異性を有する。それは、DHQをロイコシアニジンに変換し得るが、しかしそれはDHKをロイコペラルゴニジンに変換できない(Forkmann and Ruhnau, 1987、上記)。F3’5’H酵素を含有するペチュニア系統において、ペチュニアDFR酵素は、この酵素により産生されるDHMをロイコデルフィニジンに変換し得るし、これはさらに改変されて、青色花に主に関与するデルフィニジン由来の色素を生じる、ということも知られている(図1参照)。ペチュニアDFRはDHQおよびDHMの両方を変換し得るとしても、それは、DHMをより効率的に変換し得るので、したがってデルフィニジンの産生に好都合である(Forkmann and Ruhnau, 1987、上記)。
【0019】
カーネーションは世界中で最も広範に栽培されている切花の1つである。
【0020】
栽培カーネーションの現在および過去の切花品種は、数千を数える。これらは、植物の形態、花の大きさおよび花の型に基づいて、3つの一般的な群に分けられる。3つの花型は、スタンダード、スプレーおよびミディである。販売されているカーネーションの大半は、2つの主要群、すなわちスタンダードとスプレーに入る。スタンダードカーネーションは、1本の茎に単一の大型の花が必要とされる条件下での栽培を意図される。脇芽および蕾は除去されて(摘芽と呼ばれる工程)、最終的な花のサイズを大きくする。スプレーおよび/またはミニチュアは、1本の茎に多数の小型の花を生じる栽培を意図される。側生芽が「扇」型の茎を形成し得るよう、中央の花だけが除去される。
【0021】
一本の茎に多数の花蕾があることは種々の種類のフラワーアレンジメントによく適合し、花産業の大量販売市場部門で用いられる花束に嵩を提供するので、スプレーカーネーション品種は花業界で人気がある。
【0022】
スタンダードおよびスプレー栽培品種はカーネーション切花産業のほとんどを占めていて、米国では各々がほぼ同数販売されている。日本では、スプレー型の品種は販売されているカーネーション花の総数の70%を占めるが、一方、欧州では、スプレー型カーネーションは、オランダのオークションを通して売買されるカーネーション花の約50%を占める。競り下げ競売取引は、欧州全体の消費の良好な目安である。
【0023】
スタンダードおよびミディ型カーネーションは新しい色を導入するために成功裏に遺伝子操作されてきた(Tanaka and Brugliera, 2006、上記;国際特許出願PCT/AU96/00296も参照)が、しかしこれは、スプレーカーネーションには適用されていない。カーネーションの色の取り合わせに青色は存在しておらず、近年、遺伝子改変スタンダード型カーネーション品種の導入によりその空白が埋められたに過ぎない。しかしながら、スタンダード型品種は、ある種の目的、例えば、多数の小型カーネーションが必要とされる花束およびフラワーアレンジメント、例えば手で持てる大きさのアレンジメントおよび小卓セッティングには用いられ得ない。
【0024】
特に商業的に人気のある1つの特定のスプレーカーネーションは、セリースウエストパール系統のカーネーション(ダイアンサス・カリオフィルスDianthus caryophyllus cv. Cerise Westpearl)である。この品種は優れた栽培特性、ならびにフザリウム属のような真菌病原体に対する中等度〜良好な抵抗性を有する。セリースウエストパールは、ウエストパールの枝変わりである。しかしながら、本発明の出現前には、紫/青色スプレーカーネーションは入手可能ではなかった。
【0025】
ホワイトユネスコは、ミディ型の古典的由来カーネーションである。それは白色であり、そして主に花弁がカーネーションDFR転写物を蓄積しないため、普通はアントシアニンを産生せず、したがって、ホワイトユネスコがビオラF3’5’HおよびペチュニアDFRで形質転換された場合、産生されるアントシアニンの80%以上がデルフィニジンベースであった(国際特許出願PCT/AU96/00296参照)。このプロセスは紫色/菫色花弁を有するカーネーション系統を得るのに有用であったが、しかし、それは、花弁中に花弁カーネーションDFRmRNAまたは機能性DFR酵素を蓄積する能力においては突然変異体であるが、しかし産生されるDHMが安定な有色アントシアニンに変換され得るよう正常な残りのアントシアン経路を有する白色系統の同定に限定される。分析された13系統のうち(国際特許出願PCT/AU96/00296参照)、2つだけがカーネーションDFRを欠くがしかしアントシアニンを産生する能力は正常である。2つのうち、1つだけ(ホワイトユネスコ)が、F3’5’HおよびペチュニアDFRの導入時に紫色/菫色花弁を生じた。
【0026】
セリースウエストパールのような有色系統に形質転換されるビオラF3’5’HおよびペチュニアDFRを用いる同様のアプローチの適用は、有意の新規の有色生成物を生じていない。
【0027】
したがって、セリースウエストパールのような有色系統を用いて新規の有色紫/藤色花を産生する代替的手段を見つけ出す必要がある。
【発明の概要】
【0028】
この明細書全体を通して、文脈が別の状況を必要としない限り、「〜を含む」あるいはその変形である「〜を含む(単数)」または「〜を含んでいる」という語は、記述される素子または整数あるいは複数の素子または整数の群を包含するが、しかし任意の他の素子または整数あるいは複数の素子または整数の群を除外することを意味する、と理解されるであろう。
【0029】
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列識別番号(配列番号)により示される。配列番号は、配列識別子<400>1(配列番号1)、<400>2(配列番号2)等と数的に対応する。
【0030】
本明細書全体を通して用いられる配列識別子の要約を、表1に示す。
【0031】
本発明は、花部変更を示す遺伝子改変植物を提供する。さらに具体的には、本発明は、遺伝子改変カーネーション、さらに具体的には、花部変更を示す遺伝子改変カーネーションスプレーを提供する。変更された花部は、組織または細胞小器官、例えば花、花弁、葯および花柱中の赤色−紫色〜青色、例えば紫および藤色〜青色の範囲の色である。一実施形態では、完全飽和色の順に整列され、低飽和および低明色が横に並べられる英国王立園芸協会(RHS)カラーチャートを用いて、色が決定される。色群は観察可能なスペクトルを通して進行し、本明細書中で言及される色は、一般的に、Fan2に含入される赤紫(RHSCC58−74)、紫(RHSCC75−79)、紫−菫(RHSCC81−82)、菫(RHSCC83−88)、菫−青(89−98)、青(RHSCC99−110)群中に存在する。色は、61A、64A、71A、71C、72A、81A、86Aおよび87Aを含めた範囲、ならびにその間のまたはそれに近い色から選択される。
【0032】
それゆえ、本発明は、花びらにおいて機能を有する非内在性のF3’5’H、機能性DFRならびに植物の内在性のDFR遺伝子の発現を抑制する遺伝物質中を含む色の紫/菫色の色調を有するその子孫を含めた遺伝子改変植物に関する。
【0033】
一実施形態では、遺伝物質は、植物の内在性のDFR配列(ds plantDFR)に対応するセンスおよびアンチセンスヌクレオチド配列を含む。これは、ヘアピンRNAi(hpRNAi)を介した主に転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)によるサイレンシングを誘導する。「内在性の」とは、酵素または遺伝子が植物中で進化した、すなわち常態でその植物中に存在することを意味する。「非内在性」酵素または遺伝子は、遺伝子または他の遺伝物質が、遺伝的angering改変(engineeringのミススペルと思われます)または育種実行により植物または植物の親に導入されたということを意味する。
【0034】
一実施形態では、植物は、カーネーション、例えばスプレーカーネーションであり、内在性DFRはカーネーションDFRである。遺伝物質は、ds carnDFRと呼ばれるキメラ構築物である。
【0035】
一実施形態では、植物およびその子孫は、非内在性Sアデノシルメチオニン:アントシアニン3’5’メチルトランスフェラーゼ(3’5’AMT)および/または非内在性フラボンシンターゼ(FNS)をコードする遺伝物質をさらに含む。
【0036】
さらなる一実施形態では、3’5’AMTはトレニア(ThMT)からであり、FNSはトレニア(ThFNS)からである。
【0037】
改変植物、特に遺伝子改変スプレーカーネーションは、少なくとも1つのF3’5’H酵素および少なくとも1つのDFR酵素をコードする遺伝子配列を含み、少なくとも1つのds plantDFR分子を発現する。本発明がカーネーションに関する限りでは、ds plantDFRはds carnDFRであり、カーネーションスプレーはウエストパールのようなセリースウエストパールの原種を含めたセリースウエストパール遺伝的背景であるのが好都合である。本発明に含まれる他のカーネーション栽培品種は、有色品種、例えばシンデレラ、コルチナチャネル、ベガ、アーティザン、ミレディ、バーバラ、ダークランデブーである。本明細書中で意図される他の植物としては、キク、バラ、ガーベラ、トルコギキョウ、チューリップ、ユリ、フウロソウ、ペチュニア、アイリス、トレニア、ベゴニア、シクラメン、ニーレンベルギア、ニチニチソウ、テンジクアオイ、ラン、ブドウ、リンゴ、トウダイグサ、フクシアおよびその他の観賞または園芸植物が挙げられる。
【0038】
本発明の一態様は、選択組織における花部変更を示す遺伝子改変植物であって、少なくとも1つのF3’,5’H酵素および少なくとも1つのDFR酵素をコードする発現遺伝物質を含み、DFR遺伝子を抑制する遺伝物質を発現する遺伝子改変植物に関する。さらに具体的には、本発明は、花部変更を示す遺伝子改変植物であって、植物またはその子孫が、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝物質を含み、植物の内在性のDFR遺伝子の発現を抑制する遺伝物質を発現する遺伝子改変植物を提供する。一実施形態では、植物およびその子孫は、非内在性ThMTをコードする遺伝物質をさらに含む。特定の一実施形態では、内在性DFR遺伝子を抑制する遺伝物質は、内在性DFR遺伝子またはそのmRNA(「ds plantDFR」)に対応するセンスおよびアンチセンスヌクレオチド配列を含む。「変更された花部」という用語は、この文脈中では、遺伝子操作前の植物(例えば、親植物または同一種の植物)の花部と比較した場合を意味する。「コードする」という用語は、機能性F3’5’HおよびDFR酵素を産生するための遺伝物質の発現を包含する。
【0039】
「ds plantDFR分子」は、植物のセンスおよびアンチセンス断片の両方を含む遺伝物質であって、内在性DFRゲノムまたはcDNA配列または対応するmRNAである。ds plantDFRは、内在性DFR遺伝子のhpRNAi媒介性遺伝子サイレンシングを誘導するよう発現される。特定の一実施形態では、植物はカーネーションであり、ds plantDFR分子はds carnDFRである。
【0040】
特定の一実施形態では、植物はスプレーカーネーションである。
【0041】
したがって、本発明の別の態様は、選択組織における花部変更を示すスプレーカーネーション植物であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝物質を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds carnDFR分子を発現するスプレーカーネーションに関する。
【0042】
本発明のさらに別の態様は、紫色〜青色の組織を示す遺伝子改変セリースウエストパール・スプレーカーネーション植物またはその枝変わりであって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds carnDFR分子を発現するカーネーションに関する。
【0043】
本発明の別の態様は、紫色〜青色の組織を示す遺伝子改変キク植物であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds chrysDFR分子を発現するキクに関する。
【0044】
本発明のさらに別の態様は、紫色〜青色の組織を示す遺伝子改変バラ植物であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds roseDFR分子を発現するバラに関する。
【0045】
本発明のさらに別の態様は、紫色〜青色の組織を示す遺伝子改変ガーベラ植物であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds gerbDFR分子を発現するガーベラに関する。
【0046】
本発明のさらに別の態様は、紫色〜青色の組織を示す遺伝子改変観賞または園芸植物であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds plantDFR分子を組み入れる鑑賞または園芸植物に関する。
【0047】
一実施形態では、植物およびその子孫は、非内在性ThMTおよび/または非内在性ThFNSをコードする遺伝物質をさらに含む。「紫〜青色」への言及は、藤色を包含する。
【0048】
特定の一実施形態では、本発明は、セリースウエストパール(CW)/pCGP3366として本明細書中で同定される遺伝子改変スプレーカーネーションおよびその子孫ならびに枝変わりを提供する。別の実施形態では、本発明は、セリースウエストパール(CW)/pCGP3601として本明細書中で同定される遺伝子改変スプレーカーネーションおよびその子孫ならびに枝変わりを提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、セリースウエストパール(CW)/pCGP3605として本明細書中で同定される遺伝子改変スプレーカーネーションおよびその子孫ならびに枝変わりを提供する。さらに、別の実施形態では、本発明は、セリースウエストパール(CW)/pCGP3616として本明細書中で同定される遺伝子改変スプレーカーネーションおよびその子孫ならびに枝変わりを提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、セリースウエストパール(CW)/pCGP3607として本明細書中で同定される遺伝子改変スプレーカーネーションおよびその子孫ならびに枝変わりを提供する。
【0049】
遺伝子改変植物からの子孫、生殖物質、切花、組織培養可能細胞および再生可能細胞も、本発明の一部を構成する。
【0050】
本発明はさらに、紫色〜菫色〜青色を有する組織を含めた花部変更を示すカーネーションまたはその枝変わりの製造における、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする遺伝子配列ならびに植物の内在性DFR遺伝子を抑制する遺伝物質の使用を提供する。
【0051】
さらに具体的には、本発明は、紫〜青色を有する組織を含む改変された花序を示す遺伝子改変植物、例えばスプレーカーネーション、例えばセリースウエストパールカーネーションまたはその枝変わりの製造における、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードし、少なくとも1つのds carnDFR分子を組み入れる遺伝子配列の使用に関する。
【0052】
F3’5’H酵素は、任意の供給源からであり得る。ビオラ種からのF3’5’H酵素は、特に有用である(表1参照)。同様に、DFR酵素をコードするヌクレオチド配列は、任意の種、例えばペチュニア種(例えば表1参照)、アイリス、シクラメン、デルフィニウム、リンドウ、シンビジウム、ニーレンベルギアに由来し得るが、これらに限定されない。ds carnDFRのヘアピンループを形成するセンスおよびアンチセンス断片は、カーネーションから得られる。ds carnDFR中のイントロンは、ペチュニアDFR−Aイントロン1に由来する(Beld et al, Plant Mol. Biol. 13: 491-502, 1989)が、しかしながら、カーネーションにおいてプロセシングされ得る任意のイントロンが用いられ得る。別の実施形態では、イントロンは用いられない。
【0053】
ビオラ種からのF3’5’H、ペチュニア種からのDFRおよびダイアンサス種からのDFRに関する適切なヌクレオチド配列を、表1に記載する。
表1:配列識別子の要約
【0054】
【表1】

【0055】
BP、ブラックパンジー;nt、ヌクレオチド;aa、アミノ酸;pet、ペチュニア;carn、カーネーション;ThMT、トレニアからのS−アデノシルメチオニン:アントシアニン3’5’メチルトランスフェラーゼ;ANS、アントシアニンシンターゼ;CHS、カルコンシンターゼ;3’5’AMT、S−アデノシルメチオニン:アントシアニン3’5’メチルトランスフェラーゼ;FNS、フラボンシンターゼ;ThFNS、トレニアからのフラボンシンターゼ。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】アントシアニンを産生するほとんどの植物中で起こるアントシアニジン3−グルコシドの産生を示すフラボノイド色素に関する生合成経路のスキームである。この経路に関与する酵素を以下に示す:PAL=フェニルアラニンアンモニアリアーゼ;C4H=シンナメート4−ヒドロキシラーゼ;4CL=4−クマレート:CoAリガーゼ;CHS=カルコンシンターゼ;CHI=カルコンフラバノンイソメラーゼ;F3H=フラバノン3−ヒドロキシラーゼ;DFR=ジヒドロフラボノール−4−レダクターゼ;ANS=アントシアニジンシンターゼ、3GT=UDP−グルコース:フラボノイド3−O−グルコシルトランスフェラーゼ;その他の略語:DHK=ジヒドロケンフェロール、DHQ=ジヒドロクエルセチン、DHM=ジヒドロミリセチン。
【0057】
【図2】バイナリープラスミドpCGP3360キメラの略図である。pCGP3360の構築は、実施例1に記載される。選択された制限酵素部位に印を付けてある。略語としては、以下のものが挙げられる:LB=アグロバクテリウム・ツメファシエンスTiプラスミドからの左側境界、RB=アグロバクテリウム・ツメファシエンスTiプラスミドからの右側境界領域、TetR=抗生物質テトラサイクリン耐性遺伝子複合体。遺伝子構成要素の説明に関しては表2を参照されたい。
【0058】
【図3】バイナリープラスミドpCGP3366キメラの略図である。pCGP3366の構築は、実施例1に記載される。選択された制限酵素部位に印を付けてある。略語としては、以下のものが挙げられる:LB=アグロバクテリウム・ツメファシエンスTiプラスミドからの左側境界、RB=アグロバクテリウム・ツメファシエンスTiプラスミドからの右側境界領域、TetR=抗生物質テトラサイクリン耐性遺伝子複合体。この図において、「ds carnDFR」=CaMV 35S:ds carnDFR:35S 3’発現カセット。遺伝子構成要素の説明に関しては表2を参照されたい。
【0059】
【図4】バイナリープラスミドpCGP3601キメラの略図である。pCGP3601の構築は、実施例1に記載される。略語としては、以下のものが挙げられる:LB=アグロバクテリウム・ツメファシエンスTiプラスミドからの左側境界、RB=アグロバクテリウム・ツメファシエンスTiプラスミドからの右側境界領域、TetR=抗生物質テトラサイクリン耐性遺伝子複合体。この図において、「ds carnDFR」=CaMV 35S:ds carnDFR:35S 3’発現カセット。遺伝子構成要素の説明に関しては表2を参照されたい。
【0060】
【図5】バイナリープラスミドpCGP3605キメラの略図である。pCGP3605の構築は、実施例1に記載される。略語としては、以下のものが挙げられる:LB=アグロバクテリウム・ツメファシエンスTiプラスミドからの左側境界、RB=アグロバクテリウム・ツメファシエンスTiプラスミドからの右側境界領域、TetR=抗生物質テトラサイクリン耐性遺伝子複合体。この図において、「ds carnDFR」=CaMV 35S:ds carnDFR:35S 3’発現カセットおよび「ThMT」=CaMV 35S:ThMT:35S 3’発現カセット。遺伝子構成要素の説明に関しては表2を参照されたい。
【0061】
【図6】バイナリープラスミドpCGP3616キメラの略図である。pCGP3616の構築は、実施例1に記載される。略語としては、以下のものが挙げられる:LB=アグロバクテリウム・ツメファシエンスTiプラスミドからの左側境界、RB=アグロバクテリウム・ツメファシエンスTiプラスミドからの右側境界領域、TetR=抗生物質テトラサイクリン耐性遺伝子複合体。この図において、「ds carnDFR」=CaMV 35S:ds carnDFR:35S 3’発現カセット。遺伝子構成要素の説明に関しては表2を参照されたい。
【0062】
【図7】バイナリープラスミドpCGP3607キメラの略図である。pCGP3607の構築は、実施例1に記載される。略語としては、以下のものが挙げられる:LB=アグロバクテリウム・ツメファシエンスTiプラスミドからの左側境界、RB=アグロバクテリウム・ツメファシエンスTiプラスミドからの右側境界領域、TetR=抗生物質テトラサイクリン耐性遺伝子複合体。この図において、「ds carnDFR」=CaMV 35S:ds carnDFR:35S 3’発現カセットおよび「ThFNS」=e35S 5’:ThFNS:petD8 3’発現カセット。遺伝子構成要素の説明に関しては表2を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本明細書中で用いる場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、その文脈がそうでないことを明らかに指図しない限り、複数態様を含む。したがって、例えば「ある植物(a plant)」への言及は、単数の植物、ならびに2つ以上の植物を包含する;「ある葯(an anther)」への言及は、単数の葯、ならびに2つ以上の葯を包含する;「本発明(the invention)」への言及は、本発明の単数の態様または複数の態様を包含する;などである。
【0064】
本発明は、遺伝子改変植物、例えば花部変更を示すカーネーション植物、特にスプレーカーネーションを意図する。花部変更は、任意の組織または細胞小器官、例えば花、花弁、葯および花柱においてであり得る。本明細書中で意図される特定の花部は、赤紫色〜青色、例えば藤色を含めた紫〜青色の範囲の色を包含する。色の決定は、英国王立園芸協会(RHS)カラーチャート(RHSCC)に対して測定されるのが便利であり、色77A、77B、N80B、81A、81B、82A、82B、88D、ならびに上記の範囲のいずれかの末端の間のまたはそれに近い色を包含する。「花部」という用語は、狭義に解釈されるものではなく、任意の有色細胞、組織、細胞小器官またはその部分、ならびに花および花弁に関する。
【0065】
それゆえ、本発明の一態様は、選択組織における花部変更を示す遺伝子改変植物であって、少なくとも1つのF3’,5’H酵素および少なくとも1つのDFR酵素をコードする発現遺伝物質を含み、植物の内在性DFR遺伝子を抑制する遺伝物質を発現する遺伝子改変植物に関する。「植物」は、遺伝子改変を継続する親植物およびその子孫を包含する。特に本発明は、花部変更を示す遺伝子改変植物であって、植物またはその子孫が、少なくとも1つの非内在性フラボノイド3’5’ヒドロキシラーゼ(F3’5’H)酵素および少なくとも1つの非内在性ジヒドロフラボノール4−レダクターゼ(DFR)酵素をコードする発現遺伝物質を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する遺伝物質を発現する遺伝子改変植物を提供する。
【0066】
一実施形態では、植物およびその子孫は、非内在性S−アデノシルメチオニン:アントシアニン3’5’メチルトランスフェラーゼ(ThMT)および/またはフラボンシンターゼ(ThFNS)をコードする遺伝物質をさらに含む。植物の内在性DFR遺伝子を抑制する遺伝物質は、一実施形態では、植物の内在性DFR遺伝子またはmRNA(「ds plantDFR」)に対応するセンスおよびアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0067】
ds plantDFR分子は、宿主植物における内在性DFR遺伝子またはそのmRNAに対応するDFRゲノムDNAまたはcDNAからのセンスおよびアンチセンス遺伝物質のキメラ構築物である。「内在性」DFRは、常態では遺伝子操作前に宿主植物中に存在するDFRである。非内在性酵素または遺伝子は、遺伝子工学処理または植物育種実行により植物または植物の親に導入された遺伝子または他の遺伝物質を包含する。
【0068】
ds plantDFR分子は、発現される場合、宿主植物中のDFR遺伝子をPTGSにより抑制する。ds plantDFR分子は、カーネーション(ds carnDFR)、キク(ds chrysDFR)、バラ(ds roseDFR)、ガーベラ(ds gerbDFR)、ダイアンサス(ds dianDFR)、ペチュニア(ds petDFR)から、または観賞または園芸植物(ds plantDFR)からであり得る。他のds plantDFRは、トルコギキョウ、チューリップ、ユリ、フウロソウ、ペチュニア、アイリス、トレニア、ベゴニア、シクラメン、ニーレンベルギア、ニチニチソウ、テンジクアオイ、ラン、ブドウ、リンゴ、トウダイグサまたはフクシアからであり得る。
【0069】
特定の一実施形態では、植物はスプレーカーネーションである。したがって、本発明の別の態様は、選択組織における花部変更を示すスプレーカーネーション植物であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝物質を含み、少なくとも1つのds carnDFR分子を発現するスプレーカーネーションに関する。ds carnDFRは、発現される場合、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する。
【0070】
一実施形態では、植物およびその子孫は、非内在性ThMTおよび/またはThFNSをコードする遺伝物質をさらに含む。
【0071】
それゆえ、本発明のさらなる態様は、選択組織における花部変更を示すスプレーカーネーションであって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素、少なくとも1つの非内在性DFR酵素および少なくとも1つの比内在性ThMTおよび/またはThFNSをコードする発現遺伝物質を含み、少なくとも1つのds carnDFR分子を発現するスプレーカーネーションに関する。
【0072】
本発明は任意のスプレーカーネーションを包含するが、しかしセリースウエストパール系統のカーネーションはその枝変わりを含めて特に有用である。セリースウエストパールの有用な枝変わりはウエストパールを含む。
【0073】
したがって、本発明の別の態様は、紫色〜青色の組織を示す遺伝子改変セリースウエストパール・スプレーカーネーション植物またはその枝変わりであって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds carnDFR分子を発現するカーネーションに関する。
【0074】
さらに具体的には、本発明は、花部変更を示す遺伝子改変セリースウエストパール植物(CW)/pCGP3366(CW/3366またはセリースウエストパール/3366としても言及される)系統であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds carnDFR分子を発現する系統を提供する。
【0075】
さらに具体的には、本発明は、花部変更を示す遺伝子改変セリースウエストパール植物(CW)/pCGP3601(CW/3601またはセリースウエストパール/3601としても言及される)系統であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds carnDFR分子を発現する系統を提供する。
【0076】
さらに具体的には、本発明は、花部変更を示す遺伝子改変セリースウエストパール植物(CW)/pCGP3605(CW/3605またはセリースウエストパール/3605としても言及される)系統であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds carnDFR分子を発現する系統を提供する。
【0077】
さらに具体的には、本発明は、花部変更を示す遺伝子改変セリースウエストパール植物(CW)/pCGP3616(CW/3616またはセリースウエストパール/3616としても言及される)系統であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds carnDFR分子を発現する系統を提供する。
【0078】
さらに具体的には、本発明は、花部変更を示す遺伝子改変セリースウエストパール植物(CW)/pCGP3607(CW/3607またはセリースウエストパール/3607としても言及される)系統であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds carnDFR分子を発現する系統を提供する。
【0079】
上記の態様の各々において、植物およびその子孫は、非内在性ThMTおよび/またはThFNSをコードする遺伝物質をさらに含み得る。
【0080】
セリースウエストパール・トランスジェニック系統の例としては、#25958(FLORIGENE Moonberry(商標))および系統#25947(FLORIGENE Moonpearl(商標))が挙げられる。
【0081】
本明細書中で意図される付加的遺伝子改変カーネーションとしては、スプレーカーネーションのウエストパール、コルチナチャネル、ベガ、バーバラおよびアーティザン、ならびにスタンダードカーネーションのシンデレラ、ダークランデブー、ミレディが挙げられる。
【0082】
本明細書中で意図される他の遺伝子改変植物としては、キク、バラ、ガーベラ、トルコギキョウ、チューリップ、ユリ、フウロソウ、ペチュニア、アイリス、トレニア、ベゴニア、シクラメン、ニーレンベルギア、ニチニチソウ、テンジクアオイ、ラン、ブドウ、リンゴ、トウダイグサまたはフクシアおよびその他の観賞または園芸植物が挙げられる。
【0083】
本発明の別の態様は、紫色〜青色の組織を示す遺伝子改変キク植物であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds chrysDFR分子を発現するキクに関する。
【0084】
本発明のさらに別の態様は、紫色〜青色の組織を示す遺伝子改変バラ植物であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds roseDFR分子を発現するバラに関する。
【0085】
本発明のさらに別の態様は、紫色〜青色の組織を示す遺伝子改変ガーベラ植物であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds gerbDFR分子を発現するガーベラに関する。
【0086】
本発明のさらに別の態様は、紫色〜青色の組織を示す遺伝子改変観賞または園芸植物であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現遺伝子配列を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds plantDFR分子を発現する鑑賞または園芸植物に関する。
【0087】
一実施形態では、植物およびその子孫は、非内在性ThMTおよび/または非内在性ThFNSをコードする遺伝物質をさらに含む。「紫〜青色」という用語は、藤色を包含する。
【0088】
ds plantDFR、ds chrysDFR、ds roseDFR、ds gerbDFR、ds petDFRおよびds dianDFRは、宿主植物のDFRをコードする遺伝子のセンスおよびアンチセンスゲノムまたはcDNA断片を含む。この分子の発現は、宿主植物における内在性DFR遺伝子の抑制を生じる。同様の注釈は、他の宿主植物からのds plantDFRに関して当てはまる。
【0089】
遺伝子配列は、F3’5’H酵素およびDFR酵素をコードするヌクレオチド配列を保有する単一構築物であり得るし、あるいは多重遺伝子構築物が用いられ得る。さらに、遺伝子配列は植物細胞のゲノム中に組込まれ得るし、あるいはそれは染色体外人工染色体として保持され得る。さらに、少なくとも1つのF3’5’H酵素および少なくとも1つのDFR酵素を発現し、少なくとも1つのds carnDFR分子を発現するスプレーカーネーションの生成は、組換え手段単独により、または従来の育種および組換えDNA操作の組合せにより生成され得る。遺伝子配列は、プロモーターおよびその他の調節配列と操作可能的に連結されるという意味で「発現され」て、転写および翻訳を生じて、F3’5’HおよびDFR酵素を産生する。
【0090】
それゆえ、本発明の別の態様は、花部変更を示すスプレーカーネーションのような遺伝子改変植物の生産方法であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現可能な遺伝物質をスプレーカーネーション植物のような植物の再生可能細胞中に導入すること、ならびに植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds carnDFR分子を組み入れること、そしてそれから植物を再生するかまたは再生植物からの子孫を得ることを包含する方法を意図する。
【0091】
一実施形態では、植物およびその子孫は、非内在性ThMTおよび/またはThFNSをコードする遺伝物質をさらに含む。
【0092】
キク、バラ、ガーベラおよび観賞植物からの同様の方法が、本明細書中で意図される。
【0093】
植物は次に、種々の世代の成長または栽培を受け得る。それゆえ、遺伝子改変スプレーカーネーションへの言及は、その子孫およびその姉妹系統、ならびにその枝変わり を包含する。
【0094】
本発明の別の態様は、花部変更を示すスプレーカーネーションのような遺伝子改変植物の生産方法であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つのDFR酵素をコードする発現可能遺伝物質を含み、ならびに植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds carnDFR分子を組み入れたスプレーカーネーションのような植物を選択すること、そしてこの植物体を、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素を有する他のものをコードする遺伝物質を含み、ならびに少なくとも1つのds carnDFR分子を組み入れた別の植物、例えばスプレーカーネーションと交雑すること、そして次に当該遺伝物質を発現するF1またはその後の世代の植物体を選択することを包含する方法を提供する。
【0095】
一実施形態では、植物およびその子孫は、非内在性ThMTおよび/またはThFNSをコードする遺伝物質をさらに含む。
【0096】
宿主植物に関する非内在性F3’5’HおよびDFR酵素をコードするヌクレオチド配列は、任意の供給源、例えばビオラ種、ペチュニア種、サルビア種、トルコギキョウ種、キキョウ種、ソリア種、チョウマメ種、ケンネディア種、ホタルブクロ種、ラベンダー種、バーベナ種、トレニア種、デルフィニウム種、ナス種、サイネリア種、ブドウ種、バビアナ・ストリクタ、マツ種、トウヒ種、カラマツ種、インゲンマメ種、ブルーベリー種、シクラメン種、アイリス種、テンジクアオイ種、リパリエ種、フウロソウ種、エンドウマメ種、スイートピー種、ニチニチソウ種、ゼニアオイ種、トビカズラ種、ソラマメ種、セントポーリア種、サルスベリ種、ノボタン種、ルリマツリ種、ヒポカリプツス種、ツツジ種、アマ種、ファジービーン種、ハイビスカス種、アジサイ種、シンビジウム種、ナツフジ種、イワオウギ種、ハギ種、アスパラガス種、アサヒカズラ種、エンドウマメ種、フリージア種、ウツボグサ種またはサンジソウ種などからであり得る。例えば、一実施形態では、F3’5’H酵素はビオラ種からである。
【0097】
DFRは、同一のまたは異なる植物種からも得られる。例えば、一実施形態では、DFR酵素は、ペチュニアからである。別の実施形態では、DFRはアイリスからである。
【0098】
ds carnDFRのヘアピンループを形成するセンスおよびアンチセンス断片は、カーネーションから得られる(EMBL寄託番号Z67983、GenBank寄託番号 gi:1067126)か、あるいはキク、バラ、ガーベラまたは観賞植物からの機能性等価物である。ds carnDFRの目的はRNAi媒介性サイレンシングにより内在性カーネーションDFR遺伝子を抑制することであるため、内在性カーネーションDFR配列の種々の断片が用いられ得る(国際特許出願PCT/IB99/00606、Wesley et al, Plant J., 27, 581-590, 2001、Ossowski et al, Plant J., 53, 674-690, 2008参照)。例えば、一実施形態では、300 bp断片がセンスおよびアンチセンス方向で用いられる。ds carnDFR中のイントロンはペチュニアDFR−Aイントロン1から得られる(Beld et al, Plant Mol. Biol. 13: 491-502, 1989)が、しかしながらカーネーションにおいてプロセシングされ得る任意のイントロンが用いられ得る。別の実施形態では、イントロンは用いられない。さらにまた、同一の注釈は、包括的にds plantDFR分子に当てはまる。
【0099】
本発明は、紫色〜菫色〜青色を有する組織を含めた花部変更を示すカーネーションまたはその枝変わりの製造における、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードし、ならびに植物の内在性DFR遺伝子を抑制する遺伝物質の組み入れる遺伝子配列の使用を提供する。
【0100】
本発明は、紫色〜青色を有する組織を含めた花部変更を示すスプレーカーネーション、例えばセリースウエストパール・カーネーションまたはその枝変わりの製造における、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードし、ならびに少なくとも1つのds carnDFR分子を組み入れる遺伝子配列の使用も意図する。
【0101】
別の実施形態では、本発明は、紫色〜青色を有する組織を含めた花部変更を示す、バラ、キク、ガーベラ、チューリップ、ユリ、ラン、トルコギキョウ、ベゴニア、トレニア、フウロソウ、ペチュニア、ニーレンベルギア、テンジクアオイ、アイリス、インパチェンス、シクラメン、ブドウ、リンゴ、トウダイグサまたはフクシアあるいはその他の観賞または園芸植物から選択される遺伝子改変植物またはその枝変わりの製造における、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードし、ならびに少なくとも1つのds DFR(内在性DFR遺伝子のサイレンシングに向けられる)分子を組み入れる遺伝子配列の使用を意図する。
【0102】
一実施形態では、植物およびその子孫は、非内在性ThMTおよび/またはThFNSをコードする遺伝物質をさらに含む。植物細胞は、各々が種々の遺伝子のうちの1つ以上を保有する2つ以上の遺伝子構築物で形質転換されることを必要とし得る。
【0103】
切花、組織培養可能細胞、再生可能細胞、植物の一部、種子、生殖物質(花粉を含む)は、全て本発明に包含される。
【0104】
上記のように、F3’5’HおよびDFR酵素をコードするヌクレオチド配列は、全て、同一種の植物から、あるいは2つ以上の異なる種から得られる。ビオラ種からのF3’5’Hヌクレオチド配列、ならびにペチュニア種およびカーネーションからのF3’5’Hヌクレオチド配列は、本発明の実行に特に有用である。F3’5’H酵素およびDFR酵素をコードするヌクレオチド配列、ならびにそれぞれのアミノ酸配列は、表1に明示されている。
【0105】
F3’5’Hをコードする核酸分子は、国際特許出願PCT/AU92/00334およびHolton et al, 1993(上記)でも提供される。これらの配列は、ペチュニア(国際特許出願PCT/AU92/00334およびHolton et al, 1993(上記)参照)、タバコ(国際特許出願PCT/AU92/00334参照)およびカーネーション(国際特許出願PCT/AU96/00296参照)におけるフラボノイドの3’5’ヒドロキシル化を調整するために用いられてきた。他の種、例えばビオラ、サルビアおよびソリアからのF3’5’Hのヌクレオチド配列がクローン化されている(国際特許出願PCT/AU03/01111参照)。これらの配列のうちの何れも、プロモーターおよび/またはターミネーターと組合せて用いられ得る。本発明は、配列番号1によりコードされるF3’5’Hおよび配列番号3によりコードされるDFR、ならびにカーネーションDFR(Z67983, gi: 1067126)(配列番号9)、もしくは低または高緊縮(ストリンジェント)条件下で配列番号1または3または9のいずれかあるいはその相補形態とハイブリダイズし得るか、あるいは最適アラインメント後に配列番号1または3または9と少なくとも約70%の同一性を有するヌクレオチド配列を特に意図する。
【0106】
緊縮(ストリンジェンシー)のレベルを決定して、配列番号1、配列番号3、配列番号9またはそれらの相補形態とハイブリダイズし得る核酸分子を限定する目的のために、低緊縮は、ハイブリダイゼーションのために少なくとも約0%から少なくとも約15%v/vまでのホルムアミド、および少なくとも約1 M〜少なくとも約2 Mの塩を、ならびに洗浄条件のために少なくとも約1 M〜少なくとも約2 Mの塩を含み、包含する。一般的に、低緊縮性は約25〜30℃から約42℃までである。温度は変更され、ホルムアミドの含入を取り替えるため、および/または代替的緊縮条件を生じるために、より高い温度が用いられ得る。必要な場合、代替的緊縮性条件、例えば中程度の緊縮性(これは、少なくとも約16%v/v〜少なくとも約30%v/vのホルムアミド、および少なくとも約0.5 M〜少なくとも約0.9 Mの塩をハイブリダイゼーションのために、そして少なくとも約0.5 M〜少なくとも約0.9 Mの塩を洗浄条件のために含み、包含する)、あるいは高緊縮性(これは、少なくとも約31%v/v〜少なくとも約50%v/vのホルムアミド、および少なくとも約0.01 M〜少なくとも約0.15 Mの塩をハイブリダイゼーションのために、そして少なくとも約0.01 M〜少なくとも約0.15 Mの塩を洗浄条件のために含み、包含する)が適用され得る。概して、洗浄は、Tm=69.3+0.41(G+C)%で実行される(Marmur and Doty, J. Mol. Biol. 5: 109, 1962)。しかしながら、二重鎖DNAのTmは不適性塩基対の数が1%増す毎に1℃減少する(Bonner and Laskey, Eur. J. Biochem. 46: 83, 1974)。ホルムアミドは、これらのハイブリダイゼーション条件においては随意である。特定レベルの洗浄緊縮性を以下に示す:低緊縮性は、6×SSC緩衝液、1.0%w/vSDS(25〜42℃);中等度緊縮性は、2×SSC緩衝液、1.0%w/vSDS(20〜65℃の範囲の温度で);高緊縮性は、2×SSC緩衝液、0.1%〜1.0%w/vSDS(65℃の温度で)。
少なくとも70%の同一性への言及は、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99および100%の同一性を包含する。配列番号2、4または10のアミノ酸配列の類似性のレベルでの比較もなされ得る。それゆえ、配列番号2または4または10で記述されるアミノ酸配列と少なくとも70%の類似性を有するF3’5’H酵素またはDFRをコードする核酸分子が本明細書中で意図される。さらにまた、少なくとも70%の類似性は、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99および100%の類似性または同一性を包含する。
【0107】
F3’5’HおよびDFR酵素をコードする核酸分子、ならびにdscarnDFR分子の発現は、1つ以上のプロモーターおよび/またはターミネーターを包含する。一実施形態では、より高いpHを有する組織中のF3’5’Hおよび/またはDFRヌクレオチド配列の発現を指図するプロモーターが選択される。
【0108】
一実施形態では、プロモーター配列は、形質転換されるべき宿主カーネーション植物に本来備わっているか、あるいはその領域が宿主植物中で機能的である代替的供給源に由来し得る。他の供給源としては、アグロバクテリウムT−DNA遺伝子、例えばノパリン、オクタピン、マンノピンまたは他のオピンの生合成のための酵素をコードする遺伝子のためのプロモーター;植物からのプロモーター、例えばユビキチンをコードする遺伝子からのプロモーター;組織特異的プロモーター(米国特許第5,459,252号(Conkling等);WO 91/13992(Advanced Technologies)参照);植物ウイルス(例えば、宿主特異的ウイルス)からのプロモーター、あるいは部分的または全体的合成プロモーターが挙げられる。カーネーション植物において潜在的に機能性である多数のプロモーター(例えば、Greve, J. Mol. Appl. Genet. 1: 499-511, 1983;Salomon et al, EMBO, J. 3: 141-146, 1984;Garfinkel et al, Cell 27: 143-153, 1983;Barker et al, Plan Mol. Biol. 2: 235-350, 1983参照);例えば、植物から単離される種々のプロモーター(例えば、トウモロコシobi−1遺伝子からのUbiプロモーター、例えば米国特許第4,962,028号参照)ならびにウイルス(例えば、カリフラワーモザイクウイルスプロモーター、CaMV 35S)。他の実施形態では、プロモーターは、AmCHS 5’、RoseCHS 5’、carnANS 5’およびpetDFR 5’(Pet gen DFRから)であり、それぞれ、対応するターミネーターpetD8 3’、nos3’、carnANS 3’およびpetDFR 3’(Pet genDFRから)を伴う。
【0109】
プロモーター配列は、転写を調節するシス作用配列を含み得るが、この場合、調節は、例えば化学的または物理的抑圧または誘導(例えば、代謝産物、光または他の物理化学的因子に基づいた調節;例えば、線虫応答性プロモーターを開示するWO 93/06710参照)、あるいは細胞分化に基づいた調節(例えば、植物における葉、根、種子等;例えば、根特異的プロモーターを開示する米国特許第5,459,252号参照)を包含する。
【0110】
用いられ得る他のシス作用配列としては、転写および/または翻訳エンハンサーが挙げられる。これらのエンハンサー領域は当業者に周知であり、ATG開始コドンおよび隣接配列を含み得る。
【0111】
少なくとも1つのF3’5’H酵素および少なくとも1つのDFR酵素をコードし、少なくとも1つのds carnDFR分子を、適切なプロモーターおよび/またはターミネーターと組合せて組み入れる核酸分子(単数または複数)は、スプレーカーネーションにおけるフラボノイド分子の活性を調整するために用いられる。デルフィニジンベースの分子のレベルを調整することについての本明細書中での言及は、30%まで、またはそれ以上、特に30〜50%、さらに詳しくは50〜75%、さらに特定的には75%以上、あるいは常態の内在性または現存レベルより低い活性のレベルの上昇または低減に関する。
【0112】
「花部」という用語は、本明細書中で用いる場合、植物の花をつける部分、あるいは節間伸長により栄養部分から通常は分離され、常態では個々の花、苞葉および花柄、ならびに小花柄を含む1つより多い花の任意の花系を指す。上記のように、「トランスジェニック植物」への言及は「遺伝子改変植物」としても読み取られ得るし、第一世代トランスジェニック植物に最終的には由来する子孫またはハイブリッド系統を包含する。
【0113】
本発明は、紫色〜青色を有する組織を含めた花部変更を示すスプレーカーネーション、例えばセリースウエストパール・カーネーションまたはその枝変わりの製造における、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードし、ならびに内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds carnDFR分子を組み入れる遺伝子配列の使用も意図する。
【0114】
本発明は、紫色〜青色を有する組織を含めた花部変更を示すキク植物またはその枝変わりの製造における、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードし、ならびに内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds chrysDFR分子を組み入れる遺伝子配列の使用も意図する。
【0115】
本発明は、紫色〜青色を有する組織を含めた花部変更を示すバラ植物またはその枝変わりの製造における、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードし、ならびに内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds roseDFR分子を組み入れる遺伝子配列の使用も意図する。
【0116】
本発明は、紫色〜青色を有する組織を含めた花部変更を示すガーベラ植物またはその枝変わりの製造における、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードし、ならびに内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds gerbDFR分子を組み入れる遺伝子配列の使用も意図する。
【0117】
本発明は、紫色〜青色を有する組織を含めた花部変更を示す植物の製造における、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードし、ならびに内在性DFR遺伝子の発現を抑制する少なくとも1つのds plantDFR分子を組み入れる遺伝子配列の使用も意図する。
【0118】
一実施形態では、植物およびその子孫は、非内在性ThMTおよび/または非内在性ThFNSをコードする遺伝物質をさらに含む。遺伝物質は、単一または多重構築物を含み得る。「紫〜青色」は、藤色を包含する。
【0119】
同様の使用実施形態は、上記のような他の植物に当てはまる。
【0120】
栽培ビジネスモデルも提供され、そのモデルは、本明細書中に記載されるような遺伝子改変スプレーカーネーション植物を生成すること、苗木、種子、再生可能細胞、組織培養可能細胞または他の物質を栽培者に提供すること、植物の商業的販売数の植物を作り出すこと、ならびに切花を小売人または卸売り人に提供することを包含する。
【0121】
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はそれらに限定されない。これらの実施例において、以下に略述するような材料および方法を用いた。
【0122】
以下の方法は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, Cold Spring Harbor, NY, USA, 1989またはSambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratories, Cold Spring Harbor, NY, USA, 2001またはPlant Molecular Biology Manual (2nd edition), Gelvin and Schilperoot (eds), Kluwer Academic Publisher, The Netherlands, 1994またはPlant Molecular Biology Labfax, Croy (ed), Bios scientific Publishers, Oxford, UK, 1993に記載された方法と同様であった。
【0123】
クローニングベクターpBluescriptおよびPCRスクリプトは、Stratagene(米国)から入手した。pCR7 2.1は、Invitrogen(米国)から入手した。
【0124】
大腸菌形質転換
用いた大腸菌株を以下に示す:
DH5α
supE44、Δ(lacZYA−ArgF)U169、(φ80lacZΔM15)、hsdR17(rk-,mk+)、recA1、endA1、gyrA96、thi−1、relA1、deoR(Hanahan, J. Mol. Biol. 166: 557, 1983)。
XL1−Blue
supE44、hsdR17(rk-,mk+)、recA1、endA1、gyrA96、thi−1、relA1、lac-、[F’proAB、lacIq、lacZΔM15、Tn10(tetR)](Bullock et al, Biotechniques 5: 376, 1987)。
BL21−CodonPlus−RIL菌株
ompT hsdS(Rb−mB−)dcm+ Tetr gal endA Hte[argU ileY leuW Camr
M15大腸菌は大腸菌K12に由来し、表現型Nals、Strs、Thi-、Ara+、Gal+、Mtl-、F-、RecA+、Uvr+、Lon+を有する。
【0125】
Inoue et al, Gene 96: 23-28, 1990の方法に従って、大腸菌株の形質転換を実施した。
【0126】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス菌株および形質転換
用いた無害化アグロバクテリウム・ツメファシエンス菌株は、AGL0であった(Lazo et al, Bio/technology 9: 963-967, 1991)。
【0127】
5 gのプラスミドDNAを、50 mLのLB培養(Sambrook et al, 1989、上記)を接種し、28℃で振盪しながら16時間インキュベートすることにより調製した100μLのコンピーテントAGL0細胞に付加することにより、プラスミドDNAをアグロバクテリウム・ツメファシエンス菌株AGL0に導入した。次に、細胞をペレット化して、0.5 mLの85%(v/v)の100 mM CaCl2/15%(v/v)のグリセロール中に再懸濁した。液体N2中で2分間インキュベートすることにより、DNA−アグロバクテリウム混合物を凍結し、次いで、37℃で5分間のインキュベーションにより解凍させた。次に、DNA/細菌混合物を、さらに10分間、氷上に載せた。次いで細胞を1 mLのLB(Sambrook et al, 1989、上記)培地と混合し、28℃で16時間、振盪しながらインキュベートした。適切な抗生物質、例えば50 μg/mLのテトラサイクリンまたは100μg/mLゲンタマイシンを含入するLB寒天プレート上に、当該プラスミドを保有するアグロバクテリウム・ツメファシエンスの細胞を選択した。抗生物質耐性形質転換体から単離されたDNAの制限酵素マッピングにより、アグロバクテリウム・ツメファシエンス中のプラスミドの確認を実行した。

DNA連結
【0128】
メーカーにより推奨された手順に従って、Amersham連結キットまたはPromega連結キットを用いて、DNA連結を実行した。
【0129】
DNA断片の単離および精製
断片を、概して、メーカー推奨手順に従って、1%(w/v)アガロースゲル上で単離し、QIAEX IIゲル抽出キット(Qiagen)またはBresacleanキット(Bresatec, Australia)を用いて精製した。

制限酵素消化後のオーバーハング末端の修復
【0130】
標準プロトコール(Sambrook et al, 1989、上記)に従って、DNAポリメラーゼIクレノウ断片を用いて、オーバーハング5’末端を修復した。標準プロトコール(Sambrook et al, 1989、上記)に従って、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼを用いて、オーバーハング3’末端を修復した。

核酸からのホスホリル基の除去
【0131】
メーカーの推奨に従って、クローニングベクターからホスホリル基を除去して再環化を防止するために、典型的には、小エビアルカリ性ホスファターゼ(SAP)[USB]を用いた。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
【0132】
別記しない限り、鋳型としてプラスミドDNAを用いるPCR条件は、総容積50μL中に2 ngのプラスミドDNA、100 ngの各プライマー、2 μLの10 mMdNTPミックス、5μLの10×TaqDNAポリメラーゼ緩衝液、0.5μLのTaqDNAポリメラーゼを用いることを包含した。サイクル条件は、94℃で5分間の初期変性ステップ、その後、94℃で20分間、50℃で30分間および72℃で1分間の35サイクルを含み、最後に、72℃で10分間処理した後、4℃で保存した。
【0133】
Perkin Elmer GeneAmpPCRシステム9600で、PCRを実施した。

DNAプローブの32P標識
【0134】
Gigaprimeキット(Geneworks)を用いて、50 μCiの[α−32P]−dCTPで放射能標識した。Sephadex G−50(Fine)カラムまたはMicrobiospin P−30 トリス・クロマトグラフィーカラム(BioRad)上でのクロマトグラフィー処理により、取り込まれていない[α−32P]−dCTPを除去した。

プラスミド単離
【0135】
適切に選択した抗生物質(例えば、100 μg/mLアンピシリンまたは10〜50μg/mLテトラサイクリン等)を含有するLBブロス(Sambrook et al, 1989、上記)を接種し、振盪しながら37℃(大腸菌)または29℃(アグロバクテリウム・ツメファシエンス)で〜16時間、液体培養をインキュベートすることにより、挿入物に関して単一コロニーを分析した。アルカリ溶解法(Sambrook et al, 1989、上記)を用いて、あるいはWizardPlus SVミニプレプDNA精製システム(Promega)またはQiagen, Valencia, CAプラスミド・ミニキット(Qiagen)を用いて、プラスミドDNAを精製した。一旦、挿入物の存在が確定されたら、アルカリ溶解法(Sambrook et al, 1989、上記)を用いて、あるいはQIAフィルター・プラスミド・ミディキット(Qiagen)を用いて、メーカーが推奨する条件に従って、50 mLの一晩培養から大量のプラスミドDNAを調製した。

DNA配列解析
【0136】
PRISM(商標)即時型反応ダイプライマーサイクルシーケンシングキット(Applied Biosystems)を用いて、DNAシーケンシングを実施した。Perkin ElmerPCR機(GeneAmpPCRシステム9600)を用いて、サイクルシーケンシング反応を実施した。一般的に、クイーンズランド大学(St Lucia, Brisbane, Australia)のオーストラリアゲノム研究機関で、ならびにウォルター・エリザホール医学研究所(Melbourne, Australia)で、シーケンシング作業を実施した。
【0137】
MacVector(商標)アプリケーション(バージョン9.5.2およびそれ以前のもの)[MacVector Inc, Cary, North Carolina, USA]を用いて、配列を解析した。
【0138】
FASTAおよびTFASTAプログラム(Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85(8), 2444-2448, 1988)またはBLASTプログラム(Altschul et al. J. Mol. Biol. 215(3): 403-410, 1990)を用いて、GenBank、SWISS-PROTおよびEMBLデータベースに対する相同性検索を実施した。デフォルト設定を用いるMacVector(商標)アプリケーション(MacVector Inc, USA)内で、LALIGNプログラム(Huang and Miller, Adv. Appl. Math. 12: 373-381, 1991)またはClustalWプログラム(Thompson et al, Nucleic Acids Research 22: 4673-4680, 1994)を用いて、配列類似性パーセンテージを得た。
【0139】
デフォルト設定を用いるClustalW(Thompson et al, 1994、上記)を用いて、多重配列アラインメントを生成した。
【0140】
植物形質転換
植物形質転換は、国際特許出願PCT/US92/02612(参照により本明細書中に組み入れられる)または国際特許出願PCT/AU96/00296またはLu et al, Bio/Technology 9: 864-868, 1991に記載されたものと同様である。他の方法も用いられ得る。
【0141】
Propagation Australia(Queensland, Australia)から、ダイアンサス カリオフィルス(Dianthus caryophyllus)cv.セリースウエストパールの切り枝を得た。

トランスジェニック分析
色コード化
【0142】
英国王立園芸協会(RHS)カラーチャート、第三および/または第四版(London, UK)1995および/または2007を用いて、観察された色の記述を提供した。それらは、観察された色表現型を記述する代替的手段を提供する。しかしながら、指定された数字は、感知された色に対する指針としてのみ解釈されるべきであり、得られると考えられる色を限定するとみなされるべきでない。
【0143】
カーネーションの花弁は、爪部、副花冠および舷部の3つの帯域からなる(Glimn-Lacy and Kaufman, Botany Illustrated, Introduction to Plants, Major Groups, Flowering Plant Families, 2nd ed, Springer, USA, 2006)。概して、花弁舷部のみが有色で、爪部は緑色であり、副花冠は白色の色合いである(図4参照)。カーネーションの花弁/花/花部の色への言及は、一般的に、カーネーションの花弁舷部の色に関する。

クロマトグラフィー分析
【0144】
薄層クロマトグラフィー(TLC)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を、一般的にはBrugliera et al, Plant J. 5: 81-92, 1994に記載されたとおりに実施した。
【0145】
概して、花弁舷部から単離した抽出物に関して、TLCおよびHPLC分析を実施した。

アントシアニジンの抽出
【0146】
HPLC分析の前に、花弁舷部抽出物中に存在するアントシアニンおよびフラボノール分子を酸加水分解して、アントシアニジンまたはフラボノール・コアからグリコシル部分を除去した。アントシアニジンおよびフラボノール標準を用いて、花抽出物中に存在する化合物を同定する助けとした。
【0147】
本質的にはFukui et al, 2003(上記)に記載されたとおりに、花弁抽出物を調製した。花弁を、6 N HCl(0.2 mL)に付加し、100℃で20分間煮沸した。加水分解アントシアニジンを0.2 mLの1−ペンタノールで抽出した。ODS−A312(15 cm×6 mm、YMC Co., Ltd, Kyoto, Japan)カラム、1 mL/分の溶媒流量、およびSPD−M20Aフォトダイオードアレイ検出器(Shimadzu Co., Ltd)を用いてアントシアニジンのHPLC分析を実施した。用いた溶媒系を以下に示す:酢酸:メタノール:水=15:20:65。これらのHPLC条件下で、デルフィニジンの保持時間およびλmaxはそれぞれ4.0分および534 nmであり、これらの値を、真正塩化デルフィニジン(Funakoshi Co., Ltd, Tokyo, Japan)の値と比較した。
【0148】
既知の標準、すなわちデルフィニジン、ペチュニジン、マルビジン、シアニジンおよびペオニジンを参照することにより、アントシアニジン・ピークを同定した。

花器発育段階
【0149】
以下のように定義される発育段階で、カーネーション花を採取した:
段階1: 閉じた蕾、花弁は見えない。
段階2: 開きつつある花蕾:花弁の先端が見える。
段階3: ほぼ全ての花弁の先端が露出。「絵筆段階」
段階4: 茎に対して外側花弁が45°の角度。
段階5: 花全開。
【0150】
TLCまたはHPLC分析のために、最大色素蓄積の段階で、段階4の花から花弁舷部を収集した。
【0151】
ノーザンブロット分析のために、フラボノイド経路遺伝子の最大発現の段階で、段階3の花から花弁を収集した。

実施例1:キメラF3’5’H遺伝子構築物の調製
【0152】
構築物の調製に用いられるプロモーター、ターミネーターおよびコード断片の要約ならびにそれぞれの略語を、表2に列挙する。
【0153】
表2:構築物調製に用いられる略語
【0154】
【表2】

【0155】
【表3】

【0156】
【表4】

【0157】
セリースウエストパールは、セリース有色カーネーション(RHSCC 57D)である。それは、典型的には、ペラルゴニジン由来の色素を蓄積し(1.0 mg/gの花弁新鮮重量の総アントシアニン含量の〜99%)、したがってF3’H活性を欠き、そこで、それはF3’H遺伝子における突然変異体と考えられる。2つの花に関するHPLC分析結果は、セリースウエストパールの花弁中に蓄積している1.08 mg/gアントシアニン(99%ペラルゴニジン)、2.9〜4.6 mg/gフラボノイドおよび0.3〜0.6 mg/gジヒドロフラボノールを明示した。セリースウエストパールは、ピンク花ウエストパールの枝変わりである。
【0158】
セリースウエストパールのスプレーカーネーション背景で新規の紫色/青色花を生産するために、パンジーF3’5’H cDNAクローンおよびペチュニアゲノムDFR遺伝子を利用して、ds carnDFR発現カセットを用いてまたは用いずに、2つのバイナリーベクター構築物を調製した。
【0159】
表3は、セリースウエストパールの形質転換に用いられるバイナリーベクター構築物中に含入されるキメラF3’5’HおよびDFR遺伝子発現カセットの要約を提供する(略語の説明に関しては表2を参照)。
【0160】
表3:キメラ構築物の要約
【0161】
【表5】

注:全て、ALS選択可能マーカー遺伝子(35S 5’:SuRB)を有する。
略語および遺伝構成要素の説明に関しては、表2を参照されたい。
【0162】
構築物pCGP3601、3605、3607、3616はすべてpCGP3366を基礎にしており、トレニアからのアントシアニン3’5’メチルトランスフェラーゼcDNAクローンの花特異的または構成的発現(デルフィニジンのメチル化を標的化)[pCGP3601および3605]またはトレニアからのフラボンシンターゼcDNAクローンの花特異的または構成的発現(共色素フラボンの産生を標的化)[pCGP3616および3607]であるエキストラ発現カセットを有する。

構築物の調製
形質転換ベクターpCGP3360(AmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’;Pet gen DFR;35S 5’:SuRB)
【0163】
形質転換ベクターpCGP3360は、AmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’発現カセットおよびペチュニアゲノムDFR−A遺伝子を、35S 5’:SuRB選択可能マーカー遺伝子と一緒に含有する。
【0164】
中間プラスミドpCGP3356(AmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’)の構築
プラスミドpCGP3356は、pBluescript主鎖中のAmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’からなるキメラ遺伝子を含有する。
【0165】
制限酵素EcoRIおよびKpnIによる消化時に、プラスミドpCGP1961(国際特許出願PCT/AU03/01111参照)から、BPF3’5’H#40cDNAクローンを保有する〜1.6 kb断片を切り離した。オーバーハング末端を修復し、断片を精製した。pBluescript中にAmCHS 5’:petHf1:petD8 3’を含有するプラスミドpCGP725(国際特許出願PCT/AU03/01111に記載)を、制限酵素XbaIおよびBamHIで消化して、AmCHS 5’およびpetD8 3’領域を保有する主鎖ベクターを切り離した。オーバーハング末端を修復し、〜4.9 kb断片を単離し、精製し、pCGP1961(上記)からの平滑末端化BPF3’5’H#40断片と連結した。アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、AmCHS5’プロモーターおよびpetD8 3’ターミネーター間のセンス配向でのBPF3’5’H#40 cDNAクローンの正しい挿入を確認した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3356と名づけた。
【0166】
中間プラスミドpCGP3357(pCGP1988中のAmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’)の構築
プラスミドpCGP3357は、pCGP1988ベクター中にAmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’からなるキメラ遺伝子を、35S 5’:SuRB選択可能マーカー遺伝子と一緒に含有する(国際特許出願PCT/AU03/01111参照)。
【0167】
プラスミドpCGP3356(上記)を制限酵素PstIで消化して、AmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’発現カセットを保有する3.5 kb断片を切り離した。その結果生じた5’−オーバーハングを、標準プロトコール(Sambrook et al, 1989、上記)に従って、DNAポリメラーゼI(クレノウ断片)を用いて修復した。断片を精製し、プラスミドpCGP1988のSmaI末端と連結した(国際特許出願PCT/AU03/01111参照)。テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、35S 5’:SuRB選択可能マーカー遺伝子カセットに関してタンデム配向でのAmCHS5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’遺伝子の正しい挿入を確認した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3357と名づけた。

中間プラスミドpCGP1472(ペチュニアDFR−Aゲノムクローン)の構築
【0168】
ベクターλ2001中のペチュニア・ハイブリダ cv.Old Glory BlueDNAから、ゲノムライブラリーを作製した(Holton, 1992、上記)。約200,000 pfuをNZYプレート上に沈着させて、収量をNENフィルター上に取り、フィルターを400,000 cpm/mLの32P標識ペチュニアDFR−A cDNA断片とハイブリダイズさせた(Brugliera et al, 1994(上記)に記載)。ハイブリダイズクローンを精製し、DNAを各々から単離して、制限酵素消化によりマッピングした。これらのクローンのうちの1つの13 kbSacI断片を単離し、pBluescriptIIのSacI末端と結紮して、プラスミドpCGP1472を作製した。より微細なマッピングは、〜5.3 kbBglII断片が完全ペチュニアDFR−A遺伝子を含有することを示した(Beld et al, 1989、上記)。
【0169】
形質転換ベクターpCGP3360の構築
制限酵素BglIIによる消化時に、プラスミドpCGP1472から、pet genDFR遺伝子を保有する5.3 kb断片を切り離した。オーバーハング末端を修復し、断片を精製して、プラスミドpCGP3357(上記)の修復AscI末端と結紮した。テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、AmCHS5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’および35S 5’:SuRB遺伝子に関してタンデム配向でのpet genDFR遺伝子の正しい挿入を確認した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3360と名づけた。
【0170】
形質転換ベクターpCGP3366(CaMV35S:ds carnDFR:35S 3’;Pet gen DFR;AmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’;35S 5’:SuRB)
形質転換ベクターpCGP3366は、AmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’発現カセットおよびペチュニアゲノムDFR−A(pet genDFR)遺伝子を、CaMV35S:ds carnDFR:35S 3’発現カセットおよび35S5’:SuRB選択可能マーカー遺伝子と一緒に含有する。
【0171】
中間プラスミドpCGP3359の構築
プラスミドpCGP1472(上記)を鋳型として、ならびに以下のプライマーを用いて、PCRにより、180 bpのペチュニアDFR−Aイントロン1を保有する断片を増幅した:
DFRint35S F GCAT CTCGAG GGATCC TCG TGA TCC
XhoI BamHI
TGG TAT GTT TTG(配列番号5)
DFRint35S R GCAT TCTAGA AGATCT CTT CTT GTT
BglII BamHI
CTC TAC AAA ATC(配列番号6)
【0172】
5’末端に制限酵素認識部位XhoIおよびBamHIを組み入れるよう、順方向プライマー(DFRint35S F)を意図した。逆方向プライマー(DFRint35S R)は、増幅された180 bp産物の3’末端にXbaIおよびBglII制限酵素認識部位を組み入れるよう意図した。その結果生じた180 bpPCR産物を、次に、制限酵素XhoIおよびXbaIで消化して、プラスミドRTppoptcAFP(CaMV35Sプロモーターおよびターミネーター断片の供給源)のXhoI/XbaI末端と結紮した(Wnendt et al., Curr Genet 25: 510-523, 1994)。アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、pRTppoptcAFPのCaMV35Sおよび35S 3’断片間のペチュニアDFR−Aイントロン1断片の正しい挿入を確証した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3359と名づけた。

全長カーネーションDFR cDNAクローンの単離
【0173】
部分的カーネーションDFR cDNAクローンの単離は、国際特許出願PCT/AU96/00296に記載されている。
約120,000 pfusのカーネーション・コルチナチャネル花弁cDNAライブラリー(その構築は、国際特許出願PCT/AU97/000124に記載されている)を、高緊縮性ハイブリダイゼーション洗浄条件下でプローブとしてEcoRI/XhoI部分カーネーションDFR断片の32P標識断片(国際特許出願PCT/AU96/00296参照)を用いて、スクリーニングした。約20の強ハイブリダイズプラークを選択し、さらに精製した。これらのうち、1つ(KCDFR#17)は、1.3 kb挿入物を含有し、そして51 bpの5’非翻訳配列を有する全長カーネーションDFR cDNAクローンを示した。プラスミドを、pCGP1547と名づけた。
【0174】
中間プラスミドpCGP3363(CaMV35S:センス部分カーネーションDFR:ペチュニアDFRイントロン1:35S 3’)の構築
プラスミドpCGP1547(上記)を鋳型として、ならびに以下のプライマーを用いて、PCRにより、〜300 bpのカーネーションDFR cDNAクローンを保有する断片を増幅した:
ds carnDFR F GCAT TCTAGA CTCGAG CGA GAA
XbaI XhoI
TGA GAT GAT AAA ACC(配列番号7)
dscarnDFR R GCAT AGATCT GGATCC GAG ATT GTT
BglII BamHI
TTC TGC G(配列番号8)
【0175】
5’末端に制限酵素認識部位XbaIおよびXhoIを組み入れるよう、順方向プライマー(ds carnDFR F)を意図した。逆方向プライマー(ds carnDFR R)は、増幅された〜300 bp産物の3’末端にBglIIおよびBamHI制限酵素認識部位を組み入れるよう意図した。その結果生じた〜300 bpPCR産物を、次に、制限酵素XhoIおよびBamHIで消化して、プラスミドpCGP3359(上記)のXhoI/BamHI末端と結紮した。アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、プラスミドpCGP3359のCaMV35SおよびペチュニアDFRイントロン1断片間のセンス方向での部分カーネーションDFR断片の正しい挿入を確認した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3363と名づけた。

中間プラスミドpCGP3364(CaMV35S:ds CarnDFR:35S 3’)の構築
【0176】
上記の増幅部分カーネーションDFR断片を制限酵素BglIIおよびXbaIで消化し、プラスミドpCGP3363(上記)のBglII/XbaI末端と結紮した。アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、プラスミドpCGP3363のペチュニアDFRイントロン1および35S 3’断片間のアンチセンス方向での部分カーネーションDFR断片の正しい挿入を確認した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3364と名づけた。

形質転換ベクターpCGP3366の構築
【0177】
制限酵素PstIによる消化時に、プラスミドpCGP3364から、CaMV35S:ds carnDFR:35S 3’発現カセットを保有する〜1.4 kb断片を切り離した。断片を精製して、プラスミドpCGP3360(上記)のPstI末端と結紮した(図2)。テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、AmCHS5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’、pet genDFRおよび35S 5’:SuRB遺伝子に関してタンデム配向でのCaMV35S:ds carnDFR:35S 3’発現カセットの正しい挿入を確認した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3366と名づけた(図3)。
【0178】
形質転換ベクターpCGP3360およびpCGP3366のT−DNAを、アグロバクテリウム媒介性形質転換により、スプレーカーネーション系統セリースウエストパール中に導入した。除草剤クロルスルフロンを含有する培地上で成育し、根を生じるそれらの能力に基づいて、トランスジェニック細胞を選択した。根を有するトランスジェニック苗を培地から取り出して、土壌に移し、Bundoora(Victoria, Australia)の温度制御温室中で成育させ、開花させた。
【0179】
RHSCCを用いて眼で、トランスジェニック植物の花弁舷部の色を記録し、HPLC分析を用いて加水分解花弁リム抽出物中のアントシアニジンを確定した。結果を表4に要約する。
【0180】
表4:F3’5’HおよびDFR遺伝子発現カセットを含有するT−DNAで形質転換されたセリースウエストパールカーネーションからの花弁のトランスジェニック分析の結果
【0181】
【表6】

【0182】
導入遺伝子= T−DNA上に含入されるキメラF3’5’HおよびDFRヌクレオチド配列
pCGP= 形質転換実験に用いられた形質転換ベクターのプラスミドpCGP識別番号(詳細に関しては表3を参照)
#tg= 産生されたトランスジェニックカーネーションの総数
%CC= 紫色範囲方向への花弁色のシフトを有した産生系統の総数のパーセンテージ
#HPLC= HPLCにより加水分解花弁舷部抽出物のアントシアニジンを分析した個々の系統の数。桃色から紫色範囲への花弁の色の眼に見えるシフトに基づいて、分析用花弁を選択した
%del(範囲)=トランスジェニック系統の集団に関して花弁の加水分解抽出物中に検出されたデルフィニジンの範囲(%)
Av del= トランスジェニック系統の集団に関して花弁の加水分解抽出物中に検出されたデルフィニジンの平均(%)
Delmg/gFW= トランスジェニック系統の集団に関して花弁の加水分解抽出物中に検出されたデルフィニジンの量の範囲(mg/新鮮重量1g)
【0183】
結果は、試験した2つの構築物(pCGP3360およびpCGP3366)のうち、pCGP3366は、紫色範囲への色のシフトを有する花を生じた系統のパーセンテージがより高かった、ということを示唆している。さらに、花弁の加水分解抽出物中で検出された平均デルフィニジンは、pCGP3360系統と比較して、pCGP3366系統ではより高かったこれは、おそらくは、DHK基質に関する内在性DFRおよび導入F3’5’H間の競合低減をもたらすRNAi媒介性サイレンシングを介したds carnDFRカセットによる内在性カーネーションDFRの抑制のためであると思われた。導入ペチュニアDFR(DHKを利用できない)は、その後、DHM(DHK上でのF3’5’H反応の生成物)をロイコデルフィニジンに変換させ、内在性アントシアニン経路酵素による活性が花弁組織中に蓄積するデルフィニジン由来色素を生じた。新規の色の花弁を生じるスプレーカーネーション系統を同定するために、花弁舷部の色を、既に市場に出ている藤色/紫色カーネーション系統と比較した。これらは、ミディカーネーション系統FLORIGENE Moonshadow(商標)[82A、82B]およびFLORIGENE Moondust(76A)、ならびにスタンダードカーネーション系統FLORIGENE Moonvista(商標)[81A+]、FLORIGENE Moonshade(商標)[81A、82A]、FLORIGENE Moonlite(商標)[77D/82D、77C、N80B]およびFLORIGENE Moonaqua(商標)[84A/B]を包含した。22のCW/3366系統を、新規のスプレーカーネーションであるとして最初に選択したが、一方、新規のスプレーカーネーション系統であるとして選択したCW/3360系統は1つだけであった。花弁色の一貫性および花弁数に関してさらに試験した結果、新製品系統の可能性を有する新規のスプレーカーネーションであるとされたものはCW/3366では11と減少し、CW/3360では全くなかった(表5)。
【0184】
表5:選択セリースウエストパール/3366系統で検出された花弁舷部のRHS色コードおよびデルフィニジンレベル
【0185】
【表7】

【0186】
受託番号= 個々のトランスジェニック系統に与えられる独自の番号
RHSCC番号= トランスジェニックカーネーション系統の花からの花弁舷部の色コード。RHSCC番号の傍らの「+」は、その色が選択コードのより濃いまたはより強い色調である、ということを強調する
デルフィニジンレベル=総案とシアニジンのパーセンテージおよび花弁組織の新鮮重量1g当たりのmgで示されるHPLCにより確定されるような花弁舷部組織の加水分解抽出物中で検出されるデルフィニジンレベル
nd= 実行せず
【0187】
コロンビアにおけるさらなる野外試験評価は、系統#25958、#25947、#25973、#25965および#25976は、一貫した且つ安定した色ならびに良好な植物成育特性を有する新規のスプレーカーネーション花を生じる、ということを明示した。2つの系統(#25958および#25947)を、商業化のために選択した。その後、系統#25958をFLORIGENE Moonberry(商標)、系統#25947をFLORIGENE Moonpearl(商標)と名づけた。ともに、世界中の市場に出すための切花の生産のために、コロンビアで栽培されている。

他のカーネーション品種中への形質転換ベクターpCGP3366の導入
【0188】
構築物pCGP3366(少なくとも1つのF3’5’H酵素および少なくとも1つのDFR酵素を含有し、少なくとも1つのds carnDFR分子を組み入れた)を用いてカーネーション品種セリースウエストパール中の高デルフィニジンレベルを首尾よく得るために、同一遺伝子を、他の有色カーネーション栽培変種、例えばシンデレラ、ウエストパール、ベガ、アーティザン、バーバラ、ダークランデブー、ミレディ、コルチナチャネル(これらに限定されない)中に導入する。
【0189】
トランスジェニック植物を上記のような花色に関して評価し、(対照と比較して)新規の花色を有する系統を商業化のために選択する。

他の発現カセットの主鎖付加としてのバイナリーベクターpCGP3366の使用
【0190】
さらに青色/紫色範囲の方向に花弁色をシフトするために、アントシアニンまたはフラボノイド組成を調整する他の遺伝子をpCGP3366バイナリーベクターに付加した。これらは、カーネーションにおけるメチル化アントシアニンの産生、例えばマルビジンおよびペツニジン色素の産生を調製するためのS−アデノシルメチオニン:アントシアニン3’5’メチルトランスフェラーゼ(AMT)活性をコードする遺伝子、ならびにフラボンの産生を調整するためのフラボンシンターゼ(FNS)活性をコードする遺伝子を包含した。
pCGP3366バイナリーベクターへのAMT発現カセットの付加
【0191】
マルビジン(メチル化形態のデルフィニジン)を基礎にしたアントシアニンを産生しようとして、形質転換ベクターpCGP3366(図3)にAMT発現カセットを付加することにより、2つの新規の形質転換ベクターpCGP3601およびpCGP3605を調製した。トレニアからのAMT配列(国際特許出願PCT/AU03/00079)を、カーネーションのANS遺伝子からの花特異的プロモーター断片(carnANS5’)およびカリフラワーモザイクウイルス35S遺伝子からの構成的プロモーター断片(CaMV35S)の制御下で用いた。
形質転換ベクターpCGP3601(carnANS 5’:ThMT:carnANS 3’;AmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’;Pet gen DFR;CaMV35S 5’:ds carnDFR:35S 3’;35S 5’:SuRB)
【0192】
バイナリー構築物pCGP3601は、pCGP3366バイナリー構築物主鎖(上記)(図3)中にcarnANS 5’:ThMT:carnANS 3’発現カセットを含有する。

中間プラスミドpCGP3431(carnANS 5’:ThMT:carnANS 3’)の構築
【0193】
制限酵素EcoRIおよびAsp718による消化時に、プラスミドpTMT5(国際特許出願PCT/JP00/00490に記載)から、トレニアAMTcDNAクローンを保有する〜1.0 kb断片(Th]MT)(配列番号11)を切り離した。オーバーハング末端を修復し、精製断片を、プラスミドpCGP1275(国際特許出願PCT/AU2008/01700(参照により本明細書中に組み入れられる)に記載)のXbaI/PstI修復末端と結紮した。アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、カーネーションANS遺伝子のプロモーター断片(carnANS 5’)およびカーネーションANS遺伝子のターミネーター断片(carnANS 3’)間のThMT断片の正しい挿入を確立した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3431と名づけた。

形質転換ベクターpCGP3601の構築
【0194】
制限酵素ClaIによる消化時に、プラスミドpCGP3431から、carnANS 5’:ThMT:carnANS 3’発現カセットを保有する4.4 kb断片を単離した。オーバーハング末端を修復し、精製断片を、プラスミドpCGP3366(上記)(図3)のPmeI末端と結紮した。テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、AmCHS5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’、pet genDFR;CaMV35S 5’:ds carnDFR:35S 3’および35S 5’:SuRB遺伝子に関してタンデム配向でのcarnANS 5’:ThMT:carnANS 3’発現カセットの正しい挿入を確立した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3601と名づけた(図4)。

形質転換ベクターpCGP3605(CaMV35S:ds carnDFR:35S 3’;CaMV35S:ThMT:35S 3’;Pet gen DFR;AmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’;35S 5’:SuRB)
【0195】
バイナリー構築物pCGP3605は、pCGP3366バイナリー構築物主鎖(上記)(図3)中にCaMV35S:ThMT:35S 3’発現カセットを含有する。

中間プラスミドpCGP3097(CaMV35S:ThMT:35S 3’)の構築
【0196】
制限酵素Asp718による消化時に、プラスミドpTMT5(国際特許出願PCT/JP00/00490に記載)を先ず線状化した。オーバーハング末端を修復し、次いで、トレニアAMT cDNAクローンを保有する〜1.0 kb断片(ThMT)(配列番号11)を、制限酵素EcoRIによる消化時に、線状化プラスミドから切り離した。断片を精製し、プラスミドpRTppoptcAFP(CaMV35Sプロモーターおよびターミネーター断片の供給源)のXbaI(修復末端)/EcoRI末端と結紮した(Wnendt et al., 1994、上記)。アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、カリフラワーモザイクウイルス35S遺伝子のプロモーターおよびターミネーター断片(それぞれ、CaMV35Sおよび35S 3’)間のセンス配向でのThMT断片の正しい挿入を確立した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3097と名づけた。

形質転換ベクターpCGP3605の構築
【0197】
制限酵素PstIによる消化時に、プラスミドpCGP3097(上記)から、CaMV35S:ThMT:35S 3’発現カセットを保有する〜1.6 kb断片を単離した。オーバーハング末端を修復し、精製断片を、プラスミドpCGP3366(上記)(図3)のPmeI末端と連結した。テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、AmCHS5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’、pet genDFR;CaMV35S:ds carnDFR:35S 3’および35S 5’:SuRB遺伝子に関してタンデム配向でのCaMV35S:ThMT:35S 3’発現カセットの正しい挿入を確立した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3605と名づけた(図5)。
pCGP3366バイナリー構築物へのFNS発現カセットの付加
【0198】
セリースウエストパール背景でフラボン(共色素として作用するため)および高レベルのデルフィニジンを産生しようとして、形質転換ベクターpCGP3366(図3)にFNS発現カセットを付加することにより、さらに2つの形質転換ベクターpCGP3616およびpCGP3607を調製した。トレニアからのFNS配列(国際特許出願PCT/JP00/00490)(配列番号13)を、バラのCHS遺伝子からの花特異的プロモーター断片(RoseCHS 5’)およびカリフラワーモザイクウイルス35S遺伝子からの構成的プロモーター断片(CaMV35S)の制御下で用いた。
形質転換ベクターpCGP3616(CaMV35S:ds carnDFR:35S 3’;RoseCHS 5’:ThFNS:nos 3’;Pet gen DFR;AmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’;35S 5’:SuRB)
【0199】
バイナリー構築物pCGP3616は、pCGP3366バイナリー構築物主鎖(上記)(図3)中にRoseCHS 5’:ThFNS:nos 3’発現カセットを含有する。

中間プラスミドpCGP3123(RoseCHS 5’:ThFNS:nos 3’)の構築
【0200】
制限酵素AscIによる消化時に、バイナリーベクタープラスミドpSFL535(国際特許出願WO2008/156206に記載)から、e35S 5’:ThFNS:petD8 3’発現カセットを保有する3.2 kb断片を切り離した。断片を精製し、2.9 kbプラスミドpUCAP+AscIのAscI末端と結紮した(プラスミドpUCAP/AscIは、マルチクローニング部位のいずれかの末端にエクストラクローニング部位、具体的にはAscI認識部位を有するpUC19ベースのクローニングベクターである)。アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、pUCベースのクローニングベクター中のe35S 5’:ThFNS:petD8 3’発現カセットの正しい挿入を確立した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3123と名づけた。

中間プラスミドpCGP3612(RoseCHS 5’:ThFNS:nos 3’)の構築
【0201】
このプラスミドpCGP3123(上記)を、制限酵素BamHIでの消化時に、線状化した。オーバーハング末端を修復し、次に、線状化プラスミドをその制限酵素XhoIで部分消化後に、ThFNS cDNAを保有する断片を切り離した。1.7 kb断片を精製し、国際特許出願PCT/AU2008/001694に記載されたプラスミドpCGP2203(pBluescript主鎖中のRoseCHS 5’:BPF3’5’H#18:nos 3’)のSmaI/XhoI末端と結紮した。アンピシリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、RoseCHSプロモーターおよびnosターミネーター間のThFNS断片の正しい挿入を確立した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3612と名づけた。

形質転換ベクターpCGP3616の構築
【0202】
制限酵素BglIIおよびNotIによる消化時に、プラスミドpCGP3612(上記)から、RoseCHS 5’:ThFNS:nos 3’発現カセットを保有する4.9 kb断片を単離した。オーバーハング末端を修復し、精製断片を、プラスミドpCGP3366(上記)(図3)のPmeI末端と連結した。テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、AmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’、pet genDFR;CaMV35S:ds carnDFR:35S 3’および35S 5’:SuRB遺伝子に関してタンデム配向でのRoseCHS 5’:ThFNS:nos 3’発現カセットの正しい挿入を確立した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3616と名づけた(図6)。

形質転換ベクターpCGP3607(CaMV35S’:ds carnDFR:35S 3’;e35S 5’:ThFNS:petD8 3’;Pet gen DFR;AmCHS 5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’;35S 5’:SuRB)
【0203】
バイナリー構築物pCGP3607は、pCGP3366バイナリー構築物主鎖(上記)(図3)中にe35S 5’:ThFNS:petoD8 3’発現カセットを含有する。
形質転換ベクターpCGP3607の構築
【0204】
制限酵素AscIによる消化時に、プラスミドpCGP3123(上記)から、e35S 5’:ThFNS:petoD8 3’発現カセットを保有する3.2 kb断片を切り離した。断片を精製し、プラスミドpCGP3366(上記)(図3)のPmeI末端と結紮した。テトラサイクリン耐性形質転換体から単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、AmCHS5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’、pet genDFR;CaMV35S:ds carnDFR:35S 3’および35S 5’:SuRB遺伝子に関してタンデム配向でのe35S 5’:ThFNS:petoD8 3’発現カセット正しい挿入を確立した。その結果生じたプラスミドを、pCGP3607と名づけた(図7)。
【0205】
形質転換ベクターpCGP3601(図4)、pCGP3605(図5)、pCGP3607(図7)およびpCGP3616(図6)のT−DNAを、アグロバクテリウム媒介性形質転換により、スプレーカーネーション系統セリースウエストパール中に導入した。除草剤クロルスルフロンを含有する培地上で成育し、根を生じるそれらの能力に基づいて、トランスジェニック細胞を選択した。根を有するトランスジェニック苗を培地から取り出して、土壌に移し、Bundoora(Victoria, Australia)の温度制御温室中で成育させ、開花させた。結果を、表6に要約する。
【0206】
表6:紫色/菫色範囲方向への花弁色の有意のシフトを生じたトランスジェニックセリースウエストパールの数の要約
【0207】
【表8】

【0208】
構築物= 形質転換実験に用いた形質転換ベクターのプラスミドpCGP識別番号
pCGP3366への付加=AmCHS5’:BPF3’5’H#40:petD8 3’;Pet genDFR;CaMV35S:ds carnDFR:35S 3’導入遺伝子を含有するpCGP3366(図3)主鎖に付加されるエキストラ発現カセット
#Tg= 産生されたトランスジェニックカーネーション系統の総数
CC= 「色変化」−紫色範囲方向への花弁色のシフトを有した産生系統の数
【0209】
上記のような花色に関してトランスジェニック植物を評価し、(対照と比較して)新規の花色を有する系統を商業化のために選択される。
【0210】
本明細書中に記載される本発明は、具体的に記載されたもの以外の変更および修正を受け入れることができる、と当業者は理解するであろう。本発明はこのような変更および修正の全てを包含する、と理解されるべきである。本発明は、本明細書中で個別にまたは集合的に言及されるかまたは示される全てのステップ、特徴、組成物および化合物、ならびに上記のステップまたは特徴のうちの任意の2つ以上の任意のおよび全ての組合せも包含する。
【0211】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
花序の改変を示す遺伝子改変植物であって、前記植物またはその子孫が少なくとも1つの非内在性フラボノイド3’,5’ヒドロキシラーゼ(F3’5’H)酵素および少なくとも1つの非内在性ジヒドロフラボノール4−レダクターゼ(DFR)酵素をコードする発現遺伝物質を含み、植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する遺伝物質を発現する遺伝子改変植物。
【請求項2】
前記植物またはその子孫が、非内在性S−アデノシルメチオニン:アントシアニン、3’5’メチルトランスフェラーゼ(ThMT)および/またはフラボンシンターゼ(ThFNS)をコードする発現遺伝物質をさらに含む遺伝子改変植物。
【請求項3】
前記内在性DFR遺伝子を抑制する遺伝物質が、前記植物の内在性DFR遺伝子(ds植物DFR)に対応するセンスおよびアンチセンスヌクレオチド配列である請求項1または2記載の遺伝子改変植物。
【請求項4】
前記植物がカーネーションであり、前記ds植物DFRがds carnDFRである請求項3記載の遺伝子改変植物。
【請求項5】
前記カーネーションがセリースウエストパール栽培品種という背景で存在する請求項4記載の遺伝子改変植物。
【請求項6】
前記花部変更が紫色(パープル)〜青藤色(バイオレット・モーヴ)の範囲の色である請求項1〜5のいずれか一項に記載の遺伝子改変植物。
【請求項7】
前記花部変更が藤色である請求項6記載の遺伝子改変植物。
【請求項8】
前記カーネーションがスプレーカーネーション ダイアンサス カリオフィルス(Dianthus caryophyllus)cv.セリースウエストパール品種という遺伝的背景で存在するか、またはその枝変わりである請求項5記載の遺伝子改変植物。
【請求項9】
前記カーネーションが、ベガ、アーティザン、シンデレラ、ウエストパール、バーバラ、ミレディ、ダークランデブー、コルチナチャネルの遺伝的背景を有する請求項5記載の遺伝子改変植物。
【請求項10】
前記F3’5’H酵素がスミレ種(Viola sp)からである請求項1〜9のいずれか一項に記載の遺伝子改変植物。
【請求項11】
前記F3’5’H酵素が、中程度の緊縮条件下で配列番号1または配列番号1の相補型とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列によりコードされる請求項10記載の遺伝子改変植物。
【請求項12】
前記F3’5’H酵素が配列番号1によりコードされる請求項10または11記載の遺伝子改変植物。
【請求項13】
前記DFRがペチュニア種からである請求項1記載の遺伝子改変植物。
【請求項14】
前記DFRが、中程度の緊縮条件下で配列番号3または配列番号3の相補型とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列によりコードされる請求項13記載の遺伝子改変植物。
【請求項15】
前記DFRが配列番号3によりコードされる請求項14記載の遺伝子改変植物。
【請求項16】
前記ds plantDFRがダイアンサス種(ds dianDFR)からである請求項3または請求項10〜15のいずれか一項に記載の遺伝子改変植物。
【請求項17】
前記ds plantDFRが、高緊縮条件下で配列番号9からの単数または複数の断片あるいは配列番号9の相補型とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を組み入れる請求項16記載の遺伝子改変植物。
【請求項18】
前記ds plantDFRが、配列番号9からの単数または複数の断片を組み入れる請求項17記載の遺伝子改変植物。
【請求項19】
前記植物がセリースウエストパール/3366である請求項5記載の遺伝子改変植物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の遺伝子改変植物からの子孫、生殖物質、切花、組織培養可能細胞および再生可能細胞。
【請求項21】
紫色(パープル)〜菫色(バイオレット)〜青色を有する組織を含めた花部変更を示すカーネーションまたはその枝変わりの製造における、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする遺伝子配列の使用、ならびに植物の内在性DFR遺伝子を抑制する遺伝物質の組み入れ。
【請求項22】
非内在性ThMTおよび/またはThNSをコードする遺伝物質の使用をさらに包含する請求項21記載の使用。
【請求項23】
カーネーション植物がセリースウエストパール・カーネーションである請求項21または22記載の使用。
【請求項24】
前記植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する遺伝物質が、前記植物の内在性DFR遺伝子に対応するセンスおよびアンチセンスヌクレオチド配列を含む請求項23記載の使用。
【請求項25】
花部変更を示すカーネーションの生産方法であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素および少なくとも1つの非内在性DFR酵素をコードする発現可能な遺伝物質をカーネーション植物体の再生可能細胞中に導入すること、ならびに植物の内在性DFR遺伝子の発現を抑制する遺伝物質を組み入れること、そしてそれから植物を再生するかまたは再生植物の子孫を得ることを包含する方法。
【請求項26】
花部変更を示すカーネーション系統の生産方法であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素または少なくとも1つの非内在性DFR酵素のうちの一方をコードする遺伝物質を含むかもしくは少なくとも1つのds carnDFR分子の組み入れたスプレーカーネーションを選択し、この植物体を、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素または少なくとも1つの非内在性DFR酵素の他方をコードする遺伝物質を含むかもしくは少なくとも1つのds CarnDFR分子を取り入れた別のカーネーションと交雑し、次いで当該遺伝物質を発現するF1またはその後の世代の植物を選択することを包含する方法。
【請求項27】
花部変更を示すカーネーションの生産方法であって、少なくとも1つの非内在性F3’5’H酵素または少なくとも1つの非内在性DFR酵素のうちの一方をコードする遺伝物質を含むかあるいは少なくとも1つのds carnDFR分子を組み入れたスプレーカーネーションを選択し、そしてこの植物体を別のカーネーションと交雑すること、そして次に当該遺伝物質を発現するF1またはその後の世代の植物体を選択することを包含する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−511916(P2012−511916A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541027(P2011−541027)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001659
【国際公開番号】WO2010/069004
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(599093731)インターナショナル フラワー ディベロプメンツ プロプライアタリー リミティド (5)
【Fターム(参考)】