説明

変調装置

【課題】低コストの小さな回路規模で実現可能であり、且つ電源電力の利用効率が高い変調装置を提供する。
【解決手段】入力された変調信号の信号レベルに応じたパルス幅のパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調回路2と、パルス幅変調回路2により生成されたパルス幅変調信号に基づき、パルス幅変調信号のパルス周波数と同一周波数の搬送波をパルス幅変調信号のパルス幅に応じて振幅変調した振幅変調信号を生成して負荷である超音波スピーカー4に出力するパルス幅−振幅変換回路3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジオやテレビ送信機、超音波スピーカを用いたパラメトリックスピーカ等に適用される変調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気信号に変換した音声や映像等の情報を遠方に伝えるために、当該電気信号を高周波の搬送波にのせる変調装置が用いられている。変調方式には様々なものがあり、例えば情報を搬送波の強弱で伝達する方式の振幅変調がある。この振幅変調(amplitude modulation,AM)は、搬送波の振幅を信号に応じて変化させるものであり、中短波放送やテレビの映像信号の変調等に広く使用されている。
【0003】
業務用途でないアマチュア無線等の送信機に用いられる変調回路は、回路規模の小さなアナログ変調回路である。例えば、ベース変調回路は、エミッタ−ベース接合部の非直線性を利用してエミッタ−ベース間に搬送波と変調用信号とを直列に入力信号として印加することにより振幅変調信号を得る。ベース変調回路の構成例は、例えば非特許文献1の218ページに記載されている。このようなアナログ変調回路は、部品点数が少なく、簡単な回路構成により実現することができるという利点を有する。
【0004】
また、特許文献1には、従来に比して少ない台数の電力増幅器でディジタル振幅変調を実現する振幅変調回路が記載されている。この振幅変調回路は、12ビットに量子化されたプログラム音声信号を各2ビットずつの6個のビット群に分割し、各ビット群の値に応じて選択した位相シフトキャリアにより対応するスイッチング型電力増幅器を差動的にスイッチングさせるようにしているため、例えば6台といった少ない台数のスイッチング型電力増幅器にて、従来と同様又はそれ以上の性能を有する回路を実現することができ、部品点数の削減、回路構成の縮小及び低価格化を実現することができる。更に、回路構成上、アナログ的に動作する部分が基本的に存在しておらず、従って性能が安定しておりまた調整も容易となるとともに、スイッチング動作により発熱も少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−204456号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】末松安晴(ほか10名)著、「電子回路入門」、実教出版株式会社、1999年4月10日
【非特許文献2】須田健二、土田英一著、「電子回路」、株式会社コロナ社、2003年12月15日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アナログ変調回路は、変調の際の歪みが大きく、また電源効率が最大でも50%までしか上がらないため、大きな出力電力を取り出しにくいという欠点を有する。特に、抵抗負荷のA級増幅回路であれば、非特許文献2の77ページの(3.21)式に記載されているように、電力効率は最大でも25%となってしまう。このような変調回路は、送信電力に比して回路発熱が大きいために、大電力用駆動素子を用いる必要がある。すなわち、従来のアナログ変調回路は、変調の際の歪みが大きいとともに、電源効率が悪く発熱が大きいために放熱板や発熱に強い部品を必要とし、回路の大型化を招くとともにコストがかかるという問題点がある。
【0008】
一方、ディジタル変調回路は、スイッチング素子等の部品点数が多くなり、回路が大型化するとともに、コストも高くなるという欠点を有する。例えば、特許文献1の図4にはスイッチング型電力増幅器の構成を示す回路図が記載されているが、このスイッチング型電力増幅器は、4素子のMOSFETと複数のトランスとから構成されている。しかも、特許文献1に記載の振幅変調回路は、上述したようにビット数に応じた多数ブロックを組み合わせて構成するため、各ビット群に対応した台数(例えば6台)のスイッチング型電力増幅器を必要とし、非常に大規模な回路システムとなってしまう。すなわち、特許文献1の振幅変調回路は、ディジタル信号の各ビット信号を個別に効率の良いスイッチング回路により増幅し、全ビット信号出力を足し合わせることによって信号歪を抑えて出力するという信号品質重視の構成を採用したものであり、多数のスイッチング回路を使用して大規模な回路システムとなることは避けられない構成となっている。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、低コストの小さな回路規模で実現可能であり、且つ電源電力の利用効率が高い変調装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る変調装置は、上記課題を解決するために、入力された変調信号の信号レベルに応じたパルス幅のパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調部と、前記パルス幅変調部により生成されたパルス幅変調信号に基づき、前記パルス幅変調信号のパルス周波数と同一周波数の搬送波を前記パルス幅変調信号のパルス幅に応じて振幅変調した振幅変調信号を生成して負荷に出力するパルス幅−振幅変換部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低コストの小さな回路規模で実現可能であり、且つ電源電力の利用効率が高い変調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1の形態の変調装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の形態の変調装置におけるパルス幅−振幅変換回路の詳細な構成を示す回路図である。
【図3】本発明の実施例1の形態の変調装置におけるパルス幅−振幅変換回路の変形例を示す回路図である。
【図4】本発明の実施例1の形態の変調装置の各部における波形図である。
【図5】本発明の実施例2の形態の変調装置におけるパルス幅−振幅変換回路の詳細な構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の変調装置の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1の変調装置の構成を示すブロック図である。図1を参照して、変調装置の構成を説明する。本実施例の変調装置は、図1に示すように、比較波発生回路1、パルス幅変調回路2、及びパルス幅−振幅変換回路3により構成され、振幅変調信号を負荷である超音波スピーカー4に対して出力する。
【0015】
比較波発生回路1は、本発明の比較波生成部に対応し、所定の周波数の比較波を生成する。この比較波発生回路1は、パルス幅変調回路2の内部に設けられていてもよい。本実施例において比較波発生回路1は、比較波として所定の周波数の鋸歯状波を生成するものとするが、必ずしも鋸歯状波に限定されず、例えば三角波等を生成する比較波発生回路を利用することも可能である。
【0016】
パルス幅変調回路2は、本発明のパルス幅変調部に対応し、入力された変調信号の信号レベルに応じたパルス幅のパルス幅変調信号を生成する。具体的には、パルス幅変調回路2は、比較波発生回路1により生成された比較波(本実施例においては鋸歯状波)と入力された変調信号とを比較してパルス幅変調信号を生成する比較回路を内部に有している。
【0017】
これにより、パルス幅変調回路2は、変調信号の信号レベルが高い場合には長いパルス幅のパルス幅変調信号を生成し、逆に変調信号の信号レベルが低い場合には短いパルス幅のパルス幅変調信号を生成して後述するスイッチング素子34に対するオン時間を調節する。すなわち、パルス幅変調回路2は、パルス幅変調信号によってスイッチング素子34をオン/オフ制御してスイッチング素子34における電力損失を低減する。
【0018】
パルス幅−振幅変換回路3は、本発明のパルス幅−振幅変換部に対応し、パルス幅変調回路2により生成されたパルス幅変調信号に基づき、パルス幅変調信号のパルス周波数と同一周波数の搬送波をパルス幅変調信号のパルス幅に応じて振幅変調した振幅変調信号を生成して負荷である超音波スピーカー4に出力する。
【0019】
図2は、本発明の実施例1の変調装置におけるパルス幅−振幅変換回路3aの詳細な構成を示す回路図である。なお、図2において、比較波発生回路1の記載は省略されている。図2に示すように、パルス幅−振幅変換回路3aは、電源31、トランス32、保護抵抗33、及びスイッチング素子34により構成される。なお、図2のパルス幅−振幅変換回路3aは、図1に示すパルス幅−振幅変換回路3の内部構成の1例を示すものである。
【0020】
電源31は、トランス32内の1次コイル35に対して電力を供給することを目的とした直流電源であり、1次コイル35及び保護抵抗33を介してスイッチング素子34のドレイン端子に接続されている。
【0021】
トランス32は、電源31に接続された1次コイル35と、負荷である超音波スピーカー4に接続された2次コイル36とを有する。このトランス32は、フライバック方式のトランスであり、コアに蓄えた電磁エネルギーを2次側に転送するものである。
【0022】
なお、トランス32の1次コイル35及び2次コイル36の巻数比は、1次側に対する2次側の影響が少なくなるように調節されている。例えば、負荷のインピーダンスが高い場合には、2次側の電圧が大きく揺れることにより1次側に影響を与える可能性が考えられるため、2次コイル36の巻数を増やして1次コイル35の巻数を減らす。逆に、負荷のインピーダンスが低い場合には、2次コイル36の巻数を減らして1次コイル35の巻数を増やす。電源31の電圧が高い場合には1次側に与える影響も小さいと考えられるので、電源31の電圧の高さも考慮に入れてトランス32の巻数比は決定される。
【0023】
保護抵抗33は、1次コイル35とスイッチング素子34との間に直列に接続され、スイッチング素子34やトランス32を保護するための抵抗である。この保護抵抗33は、例えばパルス幅変調回路2により生成されたパルス幅変調信号の周期が過度に長くなった場合等に、スイッチング素子34や1次コイル35に流れる過大電流を抑制する働きがある。さらに、保護抵抗33は、スイッチング素子34がオフされた場合に、1次コイル35に発生する逆起電力からスイッチング素子34及びトランス32自体を保護する効果もある。ただし、この保護抵抗33は必須の構成ではなく、大きな出力を必要としない場合には1次コイル35とスイッチング素子34とを短絡することも可能である。
【0024】
スイッチング素子34は、1次コイル35に直列に接続され、パルス幅変調回路2により生成されたパルス幅変調信号に基づいたオン/オフ動作により、1次コイル35に流れる電流を制御する。すなわち、スイッチング素子34は、パルス幅変調信号のパルス幅に応じてオン動作を継続することでトランス32に電磁エネルギーを蓄えるとともに、オフすることによってトランス32に蓄えられた電磁エネルギーを2次コイル36に転送させる役割を果たす。なお、スイッチング素子34は、例えば市販のMOSFETにより構成されるが、必ずしもMOSFETに限らずトランジスタでもよい。ただし、MOSFETは、高速にオン/オフが可能であるとともに、入力側に電流が流れないという利点を有しており、本発明に適している。本発明における変調装置は、スイッチング素子34を備えることにより従来のアナログ変調回路に比して電力損失を抑制することができる。
【0025】
超音波スピーカー4は、負荷の1例である。図1,2に示すように、本実施例の変調装置は、負荷として超音波スピーカー4を接続して超音波にAM変調を行うことにより、鋭い指向性持たせた音響システムを構築することができる。当然のことながら、変調装置に接続される負荷は、超音波スピーカー4に限らず、アンテナ等を接続してもよい。
【0026】
本実施例において、パルス幅−振幅変換回路3は、容量性インピーダンスを示す負荷に対して振幅変調信号を出力するものとする。これは、トランス32内に2次コイル36が設けられているため、容量性インピーダンスを示す負荷に接続することにより共振が生じ、2次コイル36に供給された電磁エネルギーを効率よく負荷に供給でき、大きな出力を得ることができるからである。本実施例の超音波スピーカー4は、容量性インピーダンスを示す負荷であり、パルス幅−振幅変換回路3に接続されることにより2次コイル36との間で共振が起こる。
【0027】
また、図3は、本実施例の変調装置におけるパルス幅−振幅変換回路の変形例を示す回路図である。図3に示すパルス幅−振幅変換回路3bは、さらに定電圧素子37を備えている点で図2のパルス幅−振幅変換回路3bと異なるが、その他の構成はパルス幅−振幅変換回路3bと同一であり、重複した説明を省略する。
【0028】
定電圧素子37は、例えばツェナーダイオードであり、1次コイル35とスイッチング素子34との接続点の電位を所定値に制限することで、スイッチング素子34に過大な電圧がかかるのを防止する。
【0029】
図3に示す定電圧素子37は、保護抵抗33とスイッチング素子34との接続点にカソード側の端子を接続し、アノード側の端子をグランドに接続しているが、必ずしもアノード側の端子をグランドに接続される必要はなく、例えば電源31のVdd電圧出力側や2次コイル36に接続することも可能である。また、定電圧素子37の代わりに定電圧回路を備えていてもよい。
【0030】
なお、図3に示すように、スイッチング素子34の保護目的に保護抵抗33と定電圧素子37とを併用する場合には、定電圧素子37に過大な電流が流れるのを防止するために、保護抵抗33は、定電圧素子37と1次コイル35との間に接続される構成がよい。このように、本発明の変調装置は、保護抵抗33や定電圧素子37を適用することにより、スイッチング素子34を保護することができ、出力の許容範囲を拡大することが可能である。
【0031】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。図4は、本実施例の変調装置の各部における波形図である。図1乃至図4を参照して、本発明の変調装置の作用を説明する。
【0032】
まず、比較波発生回路1は、図4に示すように、比較波として所定の周波数の鋸歯状波を生成し、パルス幅変調回路2に対して出力する。パルス幅変調回路2は、内部の比較回路において比較波発生回路1により生成された鋸歯状波と入力された変調信号とを比較することにより、入力された変調信号の信号レベルに応じたパルス幅のパルス幅変調信号を生成する。パルス幅変調信号の波形は、図4に「パルス幅変調回路の出力電圧」として描かれている。
【0033】
パルス幅変調信号の周期は、比較波発生回路1により生成された比較波(本実施例においては鋸歯状波)と同一の周期となる。また、パルス幅変調信号のパルス幅は、変調信号のレベルに比例する。
【0034】
図4に示すように、鋸歯状波は、周期Tの終わりに必ず立ち下がるため、パルス幅変調信号も同じタイミングで立ち下がる。一方、比較波として三角波を採用した場合には、変調信号のレベルに応じてパルス幅変調信号の周期がずれるという弊害があり、波形がなまる可能性があるので大きな出力を出すのが困難である。すなわち、本実施例の変調装置は、比較波として鋸歯状波を採用することにより、三角波を採用した場合に比して負荷に対する出力電圧の周期Tを安定させることができ、変調度を最大にすることができるという利点を有する。
【0035】
パルス幅変調回路2は、生成したパルス幅変調信号によりパルス幅−振幅変換回路3内のスイッチング素子34をオン/オフ制御する。スイッチング素子34は、パルス幅変調信号によりオン制御されることにより1次コイル35に電流を流す。その際に、1次コイル35に流れる電流は、図4に示すように、パルス幅変調信号のパルス幅に比例した電流値となる。またトランス32は、1次コイル35に流れた電流の2乗に比例した電磁エネルギーを蓄える。
【0036】
次に、パルス幅変調信号が立ち下がり、スイッチング素子34がオフ制御されると、1次コイル35に流れる電流が零になるため、トランス32は、蓄えた電磁エネルギーに比例するエネルギーを2次コイル36に転送し、2次コイル36において電磁エネルギーの平方根に比例した電圧及び電流を発生させる。したがって、図4に示すように、出力電圧(超音波スピーカー4にかかる電圧)はスイッチング素子34のオフ期間に最大となる。
【0037】
このように、パルス幅−振幅変換回路3は、パルス幅変調回路2により生成されたパルス幅変調信号に基づき、パルス幅変調信号のパルス周波数と同一周波数の搬送波をパルス幅変調信号のパルス幅に応じて振幅変調した振幅変調信号を生成して負荷である超音波スピーカー4に出力する。デューティ比が最も大きい周期において、本実施例の変調装置の出力電圧は最大になる。逆に、デューティ比が最も小さい周期において、本実施例の変調装置の出力電圧は最小になる。
【0038】
2次コイル36における電圧及び電流は、変調信号のレベルに比例しており、パルス幅変調信号の周期でエネルギーが供給されるたびに負荷である超音波スピーカー4(あるいはアンテナ等)において電力消費される。結果として、本実施例の変調装置は、負荷に対して振幅変調出力を加えることになる。
【0039】
特に、設計者が2次コイル36のインダクタンスと負荷のリアクタンス成分(容量・インダクタンス成分)によって定まる共振周波数をパルス幅変調信号の周波数(すなわち比較波の周波数)に近くなるように回路設計することにより、本実施例の変調装置は、2次コイル36に供給された電磁エネルギーを効率よく負荷(超音波スピーカー4)に供給することができ、大きな出力を得ることができる。
【0040】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る変調装置によれば、低コストの小さな回路規模で実現可能であり、且つ電源電力の利用効率が高い変調装置を実現することができる。
【0041】
すなわち、本実施例の変調装置により、例えば市販のMOSFETを1素子用いて数ワットの出力を有するAM変調回路を実現することができる。従来は、この程度の出力電力を有する送信機においてパワーMOSFETを複数用いた上に放熱ファン等の十分な放熱装置が必要とされていた。また業務用送信所においては、駆動素子は特注の水冷素子を多数必要とする。本発明の変調装置は、従来必要としていた放熱装置等を必要とせず、且つ電力損失や発熱の小さなスイッチング素子34を1つ用いるのみであるため、回路の小型化及び電力効率改善に対して多大な効果があるといえる。このスイッチング素子34の適用は、従来のアナログ変調回路に比して本発明の変調装置における出力波形の歪みが小さくなるという利点も有する。
【0042】
また、トランス32を本発明に適用することにより、出力電圧がスイッチング素子34にかかることはなく、大きな出力が可能になるとともに信号品質の向上、回路素子数の削減に伴う小型化に貢献しうる。
【0043】
さらに、超音波スピーカー4を用いたパラメトリックスピーカーに本発明を適用した場合には、超音波スピーカー4のみを2次コイル36に接続するだけで、スピーカー容量と2次コイル36で超音波周波数に共振させることができ、電力効率の高い変調回路を小型に構成することができる。
【0044】
また、本実施例の変調装置は、比較波として鋸歯状波を採用することにより、三角波を採用した場合に比して負荷に対する出力電圧の周期Tを安定させることができ、変調度を最大にすることができるという利点を有する。
【0045】
さらに、保護抵抗33や定電圧素子37を備えることにより、スイッチング素子34を過大な電圧や電流から適切に保護することができる。
【実施例2】
【0046】
図5は、本発明の実施例2の変調装置の構成を示す回路図である。図2に示す実施例1の変調装置と異なる点は、パルス幅−振幅変換回路3cの内部において、トランス32の代わりにコイル38及びダイオード39を備えている点である。その他の構成は実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0047】
コイル38は、一端が電源31に接続されており、他端がダイオード39を介して負荷である超音波スピーカーに接続されているとともに、保護抵抗33を介してスイッチング素子34のドレイン端子に接続されている。
【0048】
スイッチング素子34は、保護抵抗33を介してコイル38に直列に接続され、パルス幅変調回路2により生成されたパルス幅変調信号に基づいたオン/オフ動作により、コイル38に流れる電流を制御する。
【0049】
ダイオード39は、コイル38と負荷(超音波スピーカー4)との間に接続され、エネルギーをコイル38から負荷に対する一方向に伝え、負荷側からエネルギーが逆流するのを防止する。なお、このコイル38と負荷との間に設けられる素子は、必ずしもダイオードである必要はなく、方向性素子であれば何でもよい。また、ダイオード39は、必須の構成要件ではなく、コイル38と超音波スピーカー4との間を短絡して接続することも可能である。
【0050】
さらに、本実施例の変調装置には、負荷である超音波スピーカー4と並列に抵抗5が接続されている。この抵抗5は、ダンパーとしての役割を持ち、共振時において負荷側で毎回エネルギーを消費し、振動を抑制するために入れられるものである。
【0051】
本実施例におけるパルス幅−振幅変換回路3cは、実施例1と異なりトランス32を有していないため、スイッチング素子32をオフした期間において過大な電圧がスイッチング素子34にかかるおそれがある。ダイオード39や抵抗5は、負荷側のエネルギーが逆流してスイッチング素子32等を破壊するのを防止し、変調装置における大きな出力を可能にする役割を果たす。
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。基本的に実施例1と同様である。まず、比較波発生回路1は、比較波として所定の周波数の鋸歯状波を生成し、パルス幅変調回路2に対して出力する。パルス幅変調回路2は、内部の比較回路において比較波発生回路1により生成された鋸歯状波と入力された変調信号とを比較することにより、入力された変調信号の信号レベルに応じたパルス幅のパルス幅変調信号を生成する。
【0052】
パルス幅変調回路2は、生成したパルス幅変調信号によりパルス幅−振幅変換回路3内のスイッチング素子34をオン/オフ制御する。スイッチング素子34は、パルス幅変調信号によりオン制御されることによりコイル38に電流を流す。その際に、コイル38に流れる電流は、実施例1の1次コイル35の場合と同様に、パルス幅変調信号のパルス幅に比例した電流値となる。コイル38は、流れた電流の2乗に比例した電磁エネルギーを蓄える。
【0053】
次に、パルス幅変調信号が立ち下がり、スイッチング素子34がオフ制御されると、コイル38は、ダイオード39を介して蓄えた電磁エネルギーに基づく電力を負荷(超音波スピーカー4)に供給する。出力電圧(超音波スピーカー4にかかる電圧)は、スイッチング素子34のオフ期間に最大となる。
【0054】
このように、パルス幅−振幅変換回路3cは、パルス幅変調回路2により生成されたパルス幅変調信号に基づき、パルス幅変調信号のパルス周波数と同一周波数の搬送波をパルス幅変調信号のパルス幅に応じて振幅変調した振幅変調信号を生成して負荷である超音波スピーカー4に出力する。
【0055】
その他の作用は実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0056】
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係る変調装置によれば、トランス32の代わりに単なるコイル38を備えた場合においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る変調装置は、ラジオやテレビ送信機、超音波スピーカを用いたパラメトリックスピーカ等に適用される変調装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 比較波発生回路
2 パルス幅変調回路
3,3a,3b,3c パルス幅−振幅変換回路
4 超音波スピーカー
5 抵抗
31 電源
32 トランス
33 保護抵抗
34 スイッチング素子
35 1次コイル
36 2次コイル
37 定電圧素子
38 コイル
39 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された変調信号の信号レベルに応じたパルス幅のパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調部と、
前記パルス幅変調部により生成されたパルス幅変調信号に基づき、前記パルス幅変調信号のパルス周波数と同一周波数の搬送波を前記パルス幅変調信号のパルス幅に応じて振幅変調した振幅変調信号を生成して負荷に出力するパルス幅−振幅変換部と、
を備えることを特徴とする変調装置。
【請求項2】
前記パルス幅−振幅変換部は、
電源に接続された1次コイルと前記負荷に接続された2次コイルとを有するトランスと、
前記1次コイルに直列に接続され、前記パルス幅変調部により生成されたパルス幅変調信号に基づいたオン/オフ動作により前記1次コイルに流れる電流を制御するスイッチング素子と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の変調装置。
【請求項3】
前記1次コイルと前記スイッチング素子との間に接続され、前記スイッチング素子を保護するための保護抵抗を備えることを特徴とする請求項2記載の変調装置。
【請求項4】
前記1次コイルと前記スイッチング素子との接続点の電位を所定値に制限する定電圧素子を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の変調装置。
【請求項5】
前記パルス幅−振幅変換部は、
一端が電源に接続され他端が前記負荷に接続されたコイルと、
前記コイルに直列に接続され、前記パルス幅変調部により生成されたパルス幅変調信号に基づいたオン/オフ動作により前記コイルに流れる電流を制御するスイッチング素子と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の変調装置。
【請求項6】
所定の周波数の比較波を生成する比較波生成部を備え、
前記パルス幅変調部は、前記比較波発生部により生成された比較波と入力された変調信号とを比較してパルス幅変調信号を生成する比較回路を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の変調装置。
【請求項7】
前記比較波生成部は、前記比較波として所定の周波数の鋸歯状波を生成することを特徴とする請求項6記載の変調装置。
【請求項8】
前記パルス幅−振幅変換部は、容量性インピーダンスを示す負荷に対して振幅変調信号を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の変調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−246070(P2010−246070A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95685(P2009−95685)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2009年3月4日 社団法人電子情報通信学会発行の「2009年電子情報通信学会総合大会講演論文集 基礎・境界」に発表
【出願人】(501061319)学校法人 東洋大学 (68)
【Fターム(参考)】