説明

変速機のシフト動作を制御する方法及び装置

【目的】変速機における歯のぶつかり合い及びトルクロック状態を検出して変速機のシフト動作を制御すること。
【構成】シフトアクチュエータ3048 の力により、クラッチカラーと歯車の連結を行う変速機14のシフトを制御する方法で、クラッチカラーと歯車の不完全な連結状態が発生する時を検出し、この検出時にクラッチカラーと歯車を移動して不完全な連結状態から脱出させるために、シフトアクチュエータ3048 を比較的低い力と比較的高い力との間で脈動させる、各工程を含む。検出工程は、クラッチカラーの軸方向位置またはクラッチカラーに作動連結しているシフトレールの軸方向位置をレール位置センサ43で調べる工程を備え、好ましくは、調整パルス幅で約5〜20ヘルツの周波数の信号をシフトアクチュエータへ送る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車の機械式自動変速機のシフト動作を制御する方法及び装置、特に歯のぶつかり合い及び/またはトルクロック状態を感知して、これらの状態を解消するための処置を取るそのような方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】機械式変速機、及びそれを自動的にシフトするための、一般的に感知入力及び所定の論理規則に従って電子的に制御された制御装置及びアクチュエータを有する機械式自動変速装置が公知である。このような装置の例が、米国特許第4,648,290 号、第4,642,771 号、第4,595,986 号、第4,527,447 号、第4,361,060 号、第4,140,031 号及び第4,081,065 号に記載されており、それらの開示内容は参考として本説明に含まれる。
【0003】このような装置はまた、「機械式自動変速機制御装置」と題するSAE (米国自動車技術者協会)会報第831776号にも記載されており、その内容は参考として本説明に含まれる。自動変速機用の故障許容論理ルーチンも公知であり、例えば米国特許第4,922,425 号、第4,849,899 号及び第4,899,279 号に記載されており、それらの開示内容は参考として本説明に含まれる。
【0004】運転者によるスロットルペダルの設定に無関係に、所望のエンジン速度を与えるようにエンジンへの供給燃料を調節できる電子及び他のエンジン燃料制御装置が公知である。このような装置の例が、米国特許第4,081,065 号、第4,361,060、第4,792,901 号、及びSAE J1922 及びSAE J1936 の電子エンジン制御基準及び関連基準のSAE J1708 、J1587 及びJ1843 に記載されており、これらはすべて参考として本説明に含まれる。
【0005】自動変速装置、特に手動非同期機械式変速機に基づくものでは、例えば車両が停止状態から始動する時、歯のぶつかり合い及び/または歯鳴りの状態が発生することがある。歯車の噛み合いが開始された時に、例えば滑りクラッチ及び歯車の回転速度が等しいか、ほぼ等しい時、ジョークラッチ部材の歯の端部が、軸方向に噛み合わないで当接する時に、歯のぶつかり合いが発生する。最終的に、2つのジョークラッチ部材の速度が変化し、滑りが生じて、その後の連結中に歯車鳴り(チャタリング)が発生する。
【0006】このように、クラッチ部材の一方が回転してぶつかり合いを解消する時、ぶつかり合っているジョークラッチ歯の端部が軸方向に噛み合うのではなく、擦り合わせ状態で相対回転する。このような変速装置では、特にマスター摩擦クラッチまたはトルク切り離しクラッチが厳密に調整されない場合、このような歯のぶつかり合いまたは歯鳴り状態を検出して解消するための論理ルーチンを設けることが望ましい。
【0007】さらに、変速機の歯車シフトシーケンス中に、トルクロックのために滑りクラッチが不完全に連結する可能性がある。伝達中のトルクのため、クラッチを滑らせて完全連結させようとする入力よりも大きい摩擦力が存在する時、トルクロックが発生する。トルクロック中は、突然のトルク低下または逆転によって歯車が完全連結できるようになるが、それが生じるまで、歯車への動力はすべて、部分連結部を介して送られる。通常のトルクロック状態では、トルク逆転が発生するまで、滑りクラッチが連結しない。同じ現象が、歯車ぶつかり合い状態でも発生する。
【0008】歯のぶつかり合い及び歯鳴りから回復する従来方法は、クラッチカラー及び歯車を連結方向へ押し続けるか、ギヤボックスをニュートラルに戻して、完全連結まで何度も連結開始をやり直すものであり、これは米国特許第5,099,711 号に記載されており、これは本発明の譲受人に譲渡されており、その開示内容は参考として本説明に含まれる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このような事情に鑑みて、本発明の目的は、自動車の変速機における歯のぶつかり合い及び/またはトルクロック状態を検出して変速機のシフトを制御する方法及び装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、変速機におけるシフトを制御する方法及び装置であり、そのため、シフトアクチュエータが、クラッチカラーと歯車の連結を行うための力を発生する。本方法は、歯のぶつかり合いまたはトルクロック状態を示す、クラッチカラーと歯車の不完全な連結状態が発生する時点を検出する工程と、不完全な連結状態が検出された時、クラッチカラーと歯車を移動して不完全な連結状態から脱出させるために、シフトアクチュエータを比較的低い力と比較的高い力との間で脈動させる、各工程を有している。検出工程は、クラッチカラーまたはクラッチカラーに作動連結しているシフトレールの軸方向位置を調べる工程を有している。好ましくは、調整パルス幅で約10ヘルツの周波数の信号をシフトアクチュエータに加える。この方法を具現する装置も、滑りクラッチを備えた機械式自動変速機の形式で開示されている。
【0011】本発明の上記及び他の目的及び利点は、添付の図面を参照した好適な実施例についての以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0012】
【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1ないし図3は、トルクコンバータロックアップ及び切り離しクラッチアセンブリ10及びそれを使用した機械式自動変速装置12を概略的に示している。
【0013】ここで使用する「機械式自動変速装置」とは、少なくともスロットル装置制御式ヒートエンジン16と、多速度ジョークラッチ形チェンジギヤ変速機14と、エンジンと変速機との間に設けられた非かみ合い連結装置、例えばマスター摩擦クラッチ及び/または流体継手10/20と、それを自動的に制御する制御ユニット50とを有する装置のことである。もちろん、このような装置には、制御ユニットへの入力信号の送信及び/またはそれからのコマンド出力信号の受信を行うセンサ及び/またはアクチュエータが設けられている。
【0014】本発明は、トルクコンバータ及びトルクコンバータロックアップ/切り離しクラッチを備えた変速装置と組み合わせて用いるのに適しているが、標準形摩擦マスタークラッチをエンジンと変速機との間に介在させて駆動する変速装置にも特に適用できる。
【0015】本発明の機械式自動変速装置12は、重量形トラック等の陸上車両に使用するものであるが、このような用途に制限されない。図示の機械式自動変速装置12には、流体継手またはトルクコンバータアセンブリ20を介して原動機スロットル装置制御形エンジン16(例えばディーゼルエンジン)によって駆動される自動多速度機械式チェンジギヤ変速機14が設けられている。自動変速機14の出力部は、公知のように駆動車軸のディファレンシャル、トランスファーケース等の適当な車両部材に駆動連結される出力軸22である。
【0016】以下の詳細に説明するように、トルクコンバータロックアップ及び切り離しクラッチアセンブリ10には、分離した、2つの独立に連結可能なクラッチ、好ましくは摩擦クラッチのトルクコンバータ切り離しクラッチ24と、トルクコンバータロックアップ用のバイパスクラッチ26が設けられている。
【0017】変速機14には、変速機作動機構28が含まれており、これは、上記の米国特許第4,445,393 号に開示されているタイプの加圧流体作動式シフトアセンブリの形式であることが好ましい。好ましくは変速機にはさらに、パワーシンクロナイザアセンブリ30が設けられ、これは、上記米国特許第3,478,851 号、第4,023,443 号または第4,614,126 号に記載されている形式のものでよい。本発明は、パワーシンクロナイザアセンブリを設けていない機械式自動変速装置にも適用可能である。
【0018】上記の動力連結部品は、幾つかの装置の作用を受け、それによって監視されており、その各々は従来より公知で、以下に詳細に説明する。これらの装置には、運転者が操作する車両スロットルペダルまたは他の燃料スロットル装置の位置を感知するスロットル位置モニターアセンブリ32、エンジンへの燃料供給量を制御するスロットル制御装置34、エンジンの回転速度を感知するエンジン速度センサアセンブリ36、トルクコンバータ切り離し及びロックアップクラッチを作動させるトルクコンバータ切り離しクラッチ及びロックアップクラッチオペレータ40、変速機入力軸速度センサ42、変速機出力軸速度センサ44、変速機シフト機構28の作動を制御する変速機シフト機構オペレータ46、及び/またはパワーシンクロナイザ機構30の作動を制御するパワーシンクロナイザ機構アクチュエータ48が含まれる。
【0019】スロットル制御装置34は、単に運転者によるスロットルペダルの位置決めを無視してエンジンへの燃料供給を設定または可変レベルまで減少(「急降下」)させるオーバライド装置でもよい。あるいは、スロットル制御装置は、上記SAE J1922 、SAE J1939 または同様な基準に従った電子エンジン制御装置の一部にすることもできる。
【0020】上記装置は、電子中央処理装置(ECU)50への情報の送信、及び/またはそれからのコマンドの受信を行う。中央処理装置すなわちコントローラ50は、デジタルマイクロプロセッサに基づいているのが好ましいが、それの特定の形状及び構造は本発明の構成部分ではない。中央処理装置50はまた、運転者が車両の後進(R)、ニュートラル(N)、または幾つかの前進ドライブ(D、DL )の各作動モードを選択することができるようにするシフト制御またはモードセレクタアセンブリ52からも情報を受け取る。一般的に、D作動モードは道路走行用であるのに対して、DL 作動モードはオフロード走行用である。
【0021】本装置はまた一般的に様々なセンサ、回路、及び/または論理ルーチンを備えており、センサとアクチュエータの両方または一方の故障を感知して反応する。公知のように、中央処理装置50は、様々なセンサと作動装置の両方または一方から入力を受け取る。これらの直接的な入力に加えて、中央処理装置50には、入力信号を微分して様々な監視装置の変化率を示す計算信号を発生する回路と論理、入力信号を比較する手段と一定の入力情報、例えば直前のシフトの方向等を記憶するメモリ手段、及び所定の事象の発生時にメモリをクリアする手段を設けることができる。
【0022】上記機能を与える特定回路は公知であり、例えば上記の米国特許第4,361,060号及び第4,595,986 号及び/または輸送電子工学に関する第20回国際会議と題するIEEE/SAE合同会議の議事録公報、IEEEカタログNo.84CH1988-5 の「機械式変速機の自動化」と題する技術論文に記載されており、これらの開示内容は参考として本説明に含まれる。
【0023】電子制御装置、特にマイクロプロセッサベースのECUの作動/機能では公知のように、様々な論理機能が、個別のハードウエア論理ユニットによって、または制御システム論理規則(すなわちソフトウェア)の様々な部分またはサブルーチンに基づいて作動する単一の論理ユニットによって実行することができる。
【0024】図1は、エンジン16と自動チェンジギヤ変速機14との間に駆動的に介在されたトルクコンバータロックアップ及び切り離しまたは中断クラッチアセンブリ10と、トルクコンバータ20とを概略的に示している。
【0025】トルクコンバータアセンブリ20は、シュラウド58を介してエンジン出力またはクランク軸56によって駆動されるインペラ54と、インペラによって油圧駆動されるタービン60と、ハウジング64に接地している軸68によって支持された一方向ローラクラッチ66を介してハウジング64に接地されるステータまたはランナー62とを有するトルクコンバータ形式の流体継手を含む点で、従来形のものである。
【0026】また、シュラウド58は、ポンプ70を駆動して、トルクコンバータの加圧、変速機の潤滑、変速機シフト機構28とパワーシンクロナイザ機構30の選択的加圧、さらに切り離しクラッチ24とバイパスクラッチ26を作動させる。ポンプ70は、公知の構造、例えば公知の三日月型ギヤポンプにすることができる。
【0027】変速機14には、トルクコンバータアセンブリ20とロックアップ及び切り離しクラッチアセンブリ10との両方または一方を介してエンジン16によって駆動される入力軸72が設けられている。変速機入力軸72には、連結部材74がそれと共転可能に固定されている。連結部材74には、トルクコンバータ切り離しクラッチ24に対応した部分76と、入力軸に対応するようにスプラインが付けられた第2ハブ部分78とが設けられている。
【0028】簡単には、以下に詳細に説明するように、トルクコンバータ切り離しクラッチ24は、ロックアップクラッチ26の連結または切り離しから独立して、連結または切り離されることによって、トルクコンバータタービン60とロックアップクラッチ26の部材とに関連した連結部材79を、連結部材74の一部分76を介して変速機入力軸72に摩擦連結させるか、またはそれから切り離す。
【0029】トルクコンバータロックアップクラッチ26は、切り離しクラッチ24の連結または切り離しから独立して、摩擦連結または切り離されることによって、エンジンクランク軸56及びそれによって駆動されるシュラウド58を連結部材79に摩擦連結させる。
【0030】トルクコンバータロックアップクラッチ26の連結によって、トルクコンバータ切り離しクラッチ24が連結状態か切り離し状態かに無関係に、エンジンクランク軸56がシュラウド58を介して直接的に連結部材79と連結し、これによって、切り離しクラッチ24が連結している場合、トルクコンバータ20をロックアップし、変速機14を直接的にエンジン16から駆動するための効果的なロックアップが得られる。また、トルクコンバータロックアップ速度以上の速度では、クラッチ24の切り離しで連結部材79の慣性が入力軸72から切り離されるため、シフト中のロックアップクラッチ26の連結及び切り離しは必要としない。
【0031】トルクコンバータバイパスクラッチすなわちロックアップクラッチ26が切り離され、トルクコンバータ切り離しクラッチ24が連結された場合、公知のように変速機14はエンジン16からトルクコンバータ流体継手を介して駆動される。ロックアップクラッチ26の状態に無関係に、トルクコンバータ切り離しクラッチ24が切り離されている場合、変速機入力軸72は、エンジンによって加えられる駆動トルク、またはトルクコンバータ、エンジン及びクラッチ26によって与えられる慣性ドラグから駆動的に切り離される。
【0032】変速機入力軸72をエンジン、クラッチ26及び/またはトルクコンバータの慣性による影響から切り離すことによって、入力軸72及びそれに駆動連結されたすべての変速機歯車機構の回転速度が、変速機パワーシンクロナイザ機構30によって迅速に加速または減速されるようになり、それによって変速機のダウンシフトまたはアップシフト中に同期をより迅速に達成できるようになり、またパワーシンクロナイザ30が入力軸72をいずれの調整エンジン速度よりも高い回転速度で回転させることができる。
【0033】モードセレクタがドライブまたはオフロードドライブモードにあって、車両が停止している時、切り離しクラッチ24が連結し、ロックアップクラッチ26が切り離され、良く知られた利点を用いてトルクコンバータが始動する。ある車両速度及び/または歯車比以上では、トルクコンバータの作動による利点はもはや必要とされず、駆動エンジンと変速機との間の直結の効率増加が必要となる。
【0034】これらの状態では、切り離しクラッチ24が連結している時、トルクコンバータロックアップクラッチ26が連結状態に維持されて、変速機入力軸72が直接的にエンジンからトルクコンバータシュラウド58及び連結部材79を介して駆動される。
【0035】前述したように、クラッチ24を切り離すことによって、先に連結していた歯車からニュートラルにシフトし、パワーシンクロナイザ30が連結すべき歯車のジョークラッチ部材を同期させ、また連結すべき歯車の同期したジョークラッチを連結させることができる。所望歯車比の選択、及びトルクコンバータ切り離しまたはロックアップクラッチの必要な連結または切り離し状態の選択は、様々なクラッチ及び変速機オペレータへのコマンド信号の発生と共に、公知のようにして、また上記の米国特許第4,361,060 号及び第4,595,986 号に詳細に記載されているようにして、中央処理装置50によって行われる。
【0036】図3は、主部副軸90が補助部副軸92と同軸的に配置されている複式変速機14を示している。変速機14は、比較的標準の構造であり、好ましくは2副軸形で、主部94及び補助部96においてそれらの副軸のうちの一方だけが図示されている。主部及び補助部副軸が同軸的に整合しているこのような変速機の例が、米国特許第3,105,395 号及び第3,138,965 号に記載されており、それらの開示内容は参考として本説明に含まれる。
【0037】変速機14には、入力軸72が設けられており、それに部材78が共転可能に固定されており、さらに入力歯車98が非回転状態でそれに取り付けられている。主部副軸90は、主軸100 にほぼ平行であり、副軸歯車102,104,106,108,110,112 がそれと共転可能に固定されている。複数の主軸または比歯車114,116,118,120 が、主軸100 の周囲に設けられ、公知のように滑り両側かみ合いジョークラッチカラー122,124,126 によって一度に1つが主軸に選択的にクラッチ連結されてそれと共転できるようになっている。また、ジョークラッチカラー122 は、入力歯車98を主軸100 にクラッチ連結して入力軸72と主軸との間を直結することができる一方、クラッチカラー126 は後進主軸歯車128 を主軸にクラッチ連結する。
【0038】主軸歯車114,116,118,120 は主軸100 を取り囲んで設けられ、対応の副軸歯車対104,106,108,110 と継続的に噛み合い係合し、好ましくはそれらによって支持されるようにし、その取り付け手段及びそれから得られる特別な利点は、上記米国特許第3,105,395 号及び第3,335,616 号に詳細に説明されている。
【0039】後進歯車128 は、従来形の中間アイドラ歯車57(図示せず)を介して副軸歯車112 と継続的に噛み合い係合している。最前方位置の副軸歯車102 は、入力歯車98と継続的に噛み合って駆動され、そのため、入力歯車が回転駆動される時はいつも、副軸90が回転する。
【0040】クラッチカラー122 にはかみ合いジョークラッチ歯98b 及び114bが支持されており、これらはそれぞれクラッチ歯98a 及び114aと噛み合って、それぞれかみ合いジョークラッチ98c 及び114cを形成することができる。クラッチカラー124 にはかみ合いジョークラッチ歯116b及び118bが支持されており、これらはそれぞれクラッチ歯116a及び118aと噛み合って、それぞれかみ合いジョークラッチ116c,118c を形成することができる。クラッチカラー126 にはジョークラッチ歯120b,128b が支持されており、これらはそれぞれジョークラッチ歯120a,128a と噛み合って、それぞれかみ合いジョークラッチ120c,128c を形成することができる。
【0041】クラッチカラーの各々は、主軸に直接的または間接的にスプライン連結して、それと共転可能であると共に、それに対して軸方向移動できるようにすることが好ましい。クラッチカラーに対して他の取り付け手段も公知であり、それらは本発明の範囲に含まれるものとする。クラッチカラー122,124,126 の各々には、それぞれシフトフォークまたはシフトヨーク130,132,134 を受け取る手段が設けられており、これによってクラッチカラーは、アクチュエータ28によって図3に示されている位置から一度に1つだけ軸方向に移動することができる。
【0042】位置センサアセンブリ43が、シフトヨークまたはそれに連動したシフトレールの軸方向位置を表す信号を発生する。一般的に、これらの信号は、シフトヨーク及びそれに連動したジョークラッチ部材のニュートラル−非ニュートラル及び/または連結−非連結位置を表している。
【0043】補助変速部96には、好ましくは入力軸72及び主軸100 と同軸的であって、軸受によって変速機ハウジング内に回転可能に支持されている出力軸22が設けられている。また、補助部96には軸受によってハウジング内に回転可能に支持されている補助部副軸92が設けられている。主軸100 と共転可能に補助部駆動歯車136 が固定されている。補助部副軸92には、補助部副軸歯車138,140 がそれと共転可能に固定されている。補助部副軸歯車138 は補助部入力歯車136 と常時噛み合っているのに対して、補助部副軸歯車140 は、出力軸22の周囲に設けられた出力歯車142 と常時噛み合っている。
【0044】従来の個別同期化ジョークラッチ構造である同期クラッチ構造体144 を用いて、主軸と出力軸との間を直接駆動連結するためには主軸100 及び補助部駆動歯車136 を直接的に出力軸22に選択的にクラッチ連結し、また公知のように主軸100から副軸92を介して出力軸22を減速駆動するためには出力歯車142 を出力軸22にクラッチ連結することができる。同期クラッチ構造体144 は、アクチュエータ28によって軸方向に移動されるシフトフォーク146 によって制御される。
【0045】変速機14は、補助部の変速比ステップが、すべてのレンジで現れる主部の変速比の合計比範囲よりも大きいレンジ形である。このような変速機は従来より公知であり、例えば米国特許第4,754,665 号に記載されており、その開示内容は参考として本説明に含まれる。
【0046】パワーシンクロナイザアセンブリ30には、駆動エンジン16の回転速度とは無関係に出力軸22によって駆動される遊星増速歯車組が設けられており、連結すべき歯車比に対応したジョークラッチ部材を同期回転させるため、入力軸72によって駆動される変速機部材の回転速度を加速するように選択的に作動可能である。パワーシンクロナイザアセンブリ30には、入力軸によって駆動される変速機部材を減速させる手段も設けることが好ましい。入力軸によって駆動される変速機部材の減速は、入力軸及び/またはエンジンブレーキ装置によって行うこともでき、これは中央処理装置50によって制御されることが好ましい。
【0047】パワーシンクロナイザアセンブリ30は、直接的または間接的に出力軸22によって駆動される歯車142 を介して車両によって駆動され、このためパワーシンクロナイザは、補助部が連結されていない時には主部副軸90を加速することができない。パワーシンクロナイザアセンブリ30の構造及び作用の詳細は、上記米国特許第4,614,126 号にさらに詳細に記載されている。
【0048】変速機14の単一シフトの場合、例えば第2速から第3速へのシフト(すなわち単一アップシフト)が必要であるとECU50が決定した時、ECUは、スロットルペダル32の位置に無関係に、燃料コントローラ34にエンジンへの燃料供給を減少(「急降下」)させる。
【0049】エンジンへの燃料供給が減少している間、切り離しクラッチ(すなわちマスタークラッチ)24は切り離されて、主部94のニュートラルへのシフトが行われる。エンジンへの燃料供給が減少し、切り離しクラッチが切り離され、主部が切り離されると、パワーシンクロナイザが作動して、主軸の歯車機構(この場合は第3速主部歯車116 )を出力軸速度及び補助部96の変速比で決定された目標速度すなわち主軸100 に対してほぼ同期した速度で回転させる。出力軸速度はセンサ44で感知されるのに対して、様々な主軸歯車の速度は、センサ42で感知される入力軸72の速度の既知倍数である。
【0050】標準形手動制御式摩擦マスタークラッチをエンジンと変速機との間に介在させて駆動する変速装置では、マスタークラッチが自動的に切り離されず、実際に本発明では、シフト中にマスタークラッチが連結したままになる。これの1つの利点は、運転者が、同期を達成しやすくするために入力軸速度を操作できることである。
【0051】自動変速装置では、主部切り離し後はいつでも、レール選択機能を実行でき、またパワーシンクロナイザが連結歯車を目標速度に近づけるので、好時機に主部を新しい変速比に再連結することができる。もちろん、自動変速機におけるアップシフトの場合、パワーシンクロナイザは、通常は入力軸及び対応の歯車機構を減速しなければならない。適当な主部変速比の連結が達成されると、切り離しクラッチが再連結され、エンジンへの燃料供給が再開される。一般的に、単一シフトは、約0.70〜0.80秒で行うことができ、切り離し(すなわちトルク中断)時間は約0.50秒である。
【0052】手動非同期変速機に基づいた自動装置12の変速機14の主部94は、ニュートラルから主部歯車に連結しようとする時、ジョークラッチ歯がぶつかり合うことがある。これは、非同期変速機では普通に発生することであり、従来では運転者が変速機マスタークラッチを部分的に連結して、ぶつかり合ったクラッチ歯をゆっくり滑らせて衝突状態から脱出させ、連結させることが必要である。
【0053】歯のぶつかり合いは、非同期変速機だけに限った問題ではないが、同期変速機で一般的に用いられる比較的尖ったノーズの歯に較べて、非同期変速機では比較的ずんどう形またはまくら形のノーズのクラッチ歯を用いるため、歯のぶつかり合いは非同期変速機の方がはるかに問題になる。自動変速機14のシフトでは、ほとんどすべての非同期手動変速機の場合と同様に、例えば車両が停止しており、ニュートラルから最初の歯車を連結する時等、シフト中にドライブまたは後進歯車を選択することによって歯のぶつかり合いまたはトルクロック状態が発生することがある。
【0054】図4は、ECU50によって実行される本発明の変速機制御装置/方法を示している。本発明の変速機制御装置/方法は、シフト中の歯のぶつかり合いまたはトルクロック状態を検出し、歯を連結位置へ滑らせる処置を取ることができる。連結シフトシーケンス(歯車の連結の要求)の一部として、制御装置/方法は、最初に入力軸を目標歯車速度に同期させてから、歯車の連結を要求する。
【0055】一定時間後、例えば約0.5 秒後、制御装置が、シフトアクチュエータまたは滑りクラッチがニュートラルからうまく移動したが、完全連結を達成できていないことを感知した場合、システムは一時的に、好ましくは約0.5 秒間だけ切り離しクラッチ24の連結を要求する。約1秒後も制御装置が(歯のぶつかり合いを表す)非連結状態または(トルクロックを表す)部分連結状態を感知し続けた場合、滑りクラッチを定位置から移動しまたは駆動して歯車と完全に連結させることができるように、シフトアクチュエータまたは他の連結モータを迅速に比較的低い力及び比較的高い力間で変化すなわち脈動させる信号を送る。好ましくは、アクチュエータは約−20〜150 ポンド(9〜68kg)の間で力を変化させる。
【0056】負の力を加えても滑りクラッチカラーは移動しないが、XYシフタ及びシフトバーハウジングを弛緩させて、機械式リンク機構内の静摩擦を除去することができる。このように、シフトアクチュエータは、この機能を実行するために方向を逆転しないで、滑りクラッチカラーを連結位置の方へ押し続ける。
【0057】シフトアクチュエータへ送られた信号の周波数は、所望の分解能に応じて約5〜20ヘルツで変動できるが、約10ヘルツであることが好ましい。信号のパルス幅も調整することが好ましい。自動変速機では、この作動中に長い時間、好ましくは約1秒間だけ中断クラッチを一時的に連結させることができる。手動マスタークラッチを備えた変速機では、この作動中、マスタークラッチを連結状態にしておくことができる。
【0058】トルクロック状態では、シフトアクチュエータの脈動(パルス)によって、トルク逆転の発生時に噛み合い状態へ押し込むことができる。ぶつかり合い状態では、脈動によってクラッチが迅速に滑り、ジョークラッチ部材の回転速度が同期から外れる前に連結する。
【0059】制御装置は、連結を監視し続ける。このシーケンス中に軸方向のジョークラッチ連結がまだ検出される場合、自動変速装置の切り離しクラッチを連結させて、シフトシーケンスを完了する。自動または非自動変速装置のいずれにおいても、長い一定時間及び/またはアクチュエータの一定回数Nの脈動後に軸方向のジョークラッチ連結が検出されない場合、ニュートラルが要求されて、初期連結シフトシーケンスの最初からサイクルが繰り返される。
【0060】連結するジョークラッチ部材の回転速度を感知するため、入力軸速度センサ42及び出力軸速度センサ44が用いられる。可動ジョークラッチ部材98b,114b,118,120b または128bのニュートラル/非ニュートラル及び連結/非連結(部分連結を含む)の軸方向移動を感知するために、レール位置センサ43が用いられ、これは例えば電位差計でもよい。
【0061】連結試行時の所定時間において、連結中のジョークラッチが、ほぼ同期速度で回転しながら、非ニュートラル及び非連結状態であれば、ジョークラッチがぶつかり合っていることがわかる。速度センサがクラッチ部材の継続的な同期回転を表示する一方で、レール位置センサが非連結状態を表示し続ける場合、本発明のシフトアクチュエータ調整ルーチンが開始される。シフトアクチュエータを所定回数だけ脈動させても、完全連結させることができない場合、及び/または一定時間が経過した場合、歯車連結プロセス全体がやり直される。
【0062】従って、(a) 標準的手動操作形マスタークラッチを備えた形式、または(b) 通常は手動シフトされる非同期変速機14に基づいた機械式自動変速機形式の変速装置で、ジョークラッチのぶつかり合い及び/またはトルクロック状態を検出し、それを解消する処置を取る論理を含む制御装置/方法を備えた変速装置が提供されている。
【0063】以上に好適な実施例について説明してきたが、発明の範囲内において様々な変更が可能であることは理解されるであろう。
【0064】
【発明の効果】本発明によれば、歯のぶつかり合い及び/またはトルクロック状態が最初に現れた時、シフトアクチュエータが再サイクルでニュートラルに戻されないため、シフトが速く得られ、シフトミスが減少する。また、アクチュエータ内での歯車鳴りも解消し、部材に対する応力を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】トルクコンバータを含む本発明の機械式自動変速機の概略図である。
【図2】機械式自動変速機の別の概略図である。
【図3】機械式自動変速機の部分断面図である。
【図4】本発明の制御装置/方法論理の遷移図である。
【符号の説明】
14 変速機
30 パワーシンクロナイザ
48 パワーシンクロナイザアクチュエータ
50 中央処理装置
100 主軸
114116118120 歯車
122124126 クラッチカラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シフトアクチュエータ(3048) の力により、クラッチカラーと歯車の連結を行う変速機(14)のシフト動作を制御する方法であって、クラッチカラーと歯車の不完全な連結状態が発生する時を検出し、不完全な連結状態が検出された時、クラッチカラーと歯車を移動して不完全な連結状態から脱出させるために、シフトアクチュエータ(3048) を比較的低い力と比較的高い力との間で脈動させる、各工程を有していることを特徴とする方法。
【請求項2】 クラッチカラーは、軸(100) に沿って軸方向に摺動可能であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】 検出工程は、クラッチカラーの軸方向位置の軸方向位置を調べることを含んでいる請求項2の方法。
【請求項4】 検出工程は、レール位置センサ(43)によって実施されることを特徴とする請求項2の方法。
【請求項5】 レール位置センサ(43)は電位差計を有していることを特徴とする請求項4の方法。
【請求項6】 脈動工程は、シフトアクチュエータを脈動させる信号を加えることを含んでいる請求項1の方法。
【請求項7】 信号は、調整パルス幅を有していることを特徴とする請求項6の方法。
【請求項8】 信号の周波数は、約5〜20ヘルツであることを特徴とする請求項6の方法。
【請求項9】 不完全な連結状態はトルクロック状態に相当することを特徴とする請求項1の方法。
【請求項10】 検出工程は、クラッチカラー及び歯車の回転速度及び相対軸方向位置を感知し、そして所定時間後、クラッチカラー及び歯車が、ほぼ同期速度で回転し続けながら非連結を示す軸方向位置へ移動した場合、歯のぶつかり合い状態が存在していると判定する、各工程を有していることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項11】 検出工程は、クラッチカラー及び歯車の回転速度及び相対軸方向位置を感知し、そして所定時間後、クラッチカラー及び歯車が、ほぼ同期速度で回転し続けながら部分連結を示す軸方向位置へ移動した場合、トルクロック状態が存在していると判定する、各工程とを有していることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項12】 さらに、連結前に、クラッチカラー及び歯車の回転速度を同期化する工程を有していることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項13】 変速機(14)は摩擦マスタークラッチを備えていることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項14】 変速機(14)は機械式自動変速機であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項15】 クラッチカラーが同期化されることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項16】 クラッチカラーが同期化されないことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項17】 複数の歯車(114116118120) を回転可能に支持している軸(100) と、軸に沿って軸方向に摺動可能であり、歯車を軸に回転可能に連結する複数のクラッチカラー(122124126) と、該クラッチカラーの1つと歯車の1つとを連結させる力を発生するシフトアクチュエータ(3048) と、クラッチカラー及び歯車の不完全な連結状態の発生を検出する手段(50)と、不完全な連結状態が検出された時、クラッチカラー及び歯車を移動して不完全な連結状態から脱出させるために、シフトアクチュエータを比較的低い力と比較的高い力との間で脈動させる手段(50)とを有していることを特徴とする変速機。
【請求項18】 検出手段は、クラッチカラーの軸方向位置を調べるレール位置センサ(43)を有していることを特徴とする請求項17の変速機。
【請求項19】 調整パルス幅を有している信号がシフトアクチュエータへ送られることを特徴とする請求項17の変速機。
【請求項20】 周波数が約5〜20ヘルツである信号がシフトアクチュエータへ送られることを特徴とする請求項17の変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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