説明

外来性因子および毒素を減弱するための方法ならびにそれにより産生される細胞培養試薬。

【課題】目的のサンプル中に存在する外来性因子または毒素を減弱、実質的に減弱、不活化または排除するためにサンプルを処理する方法の提供。
【解決手段】目的のサンプルを空気またはガスを含むチャンバーまたは他の容器に、分散または噴霧させ、当該分野で周知の手順により噴霧乾燥または凝集させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、任意のサンプル(液体サンプルまたは乾燥サンプルを含む)において、外来性因子(例えば、ウイルス、細菌、マイコプラズマ、および、急性または慢性の毒性/疾患を生じるタンパク質(すなわち、プリオン)のような非細胞性化合物)を減弱、実質的に減弱または排除するための方法に関する。従って、本発明は、このようなサンプルの滅菌または実質的な滅菌に関する。より詳細には、本発明は、細胞培養において細胞により利用される栄養素または成分を含む液体および粉末の細胞培養試薬、およびこのような方法により産生される栄養培地処方物(特に、細胞のインビトロ培養を容易にする必須栄養因子の全てを含む細胞培養培地処方物)を提供する。このような栄養素または成分は、1つ以上のタンパク質、炭水化物、脂質、アミノ酸、ビタミン、核酸、DNA、RNA、微量金属および緩衝液を、単独かまたは組み合わせて含み得る。本発明はまた、本発明の方法により産生された、液体および粉末培地補充物(例えば、血清(例えば、ウシ胎仔血清または他の動物(すなわち、ブタ、ウマ魚類など)またはヒト起源血清)のような液体または乾燥粉末の血液由来産物)に関する。本発明はまた、本発明の方法により産生された、液体および乾燥粉末の緩衝液処方物ならびに培地サブグループに関する。本発明はまた、本発明により産生されたサンプルを含有するキット、特に栄養素、培地、培地補充物、培地サブグループのような細胞培養試薬、ならびにこれらの細胞培養試薬を用いる原核生物細胞および真核生物細胞の培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
(細胞培養培地)
細胞培養培地は、制御され、人工的なそしてインビトロの環境で、細胞を維持し、そして増殖させるために必要な栄養素を提供する。細胞培養培地の特徴および組成は、特定の細胞要件に依存して変化する。重要なパラメーターとしては浸透圧、pHおよび栄養素の処方が挙げられる。
【0003】
培地処方物が、動物細胞、植物細胞、酵母細胞および原核生物細胞(細菌細胞を含む)を含む多数の細胞型を培養するために用いられてきた。培養培地において培養された細胞は、利用可能な栄養素を異化し、そしてモノクローナル抗体、ホルモン、成長因子、ウイルスなどのような有用な生物学的物質を産生する。このような産物は、治療的適用を有し、そして組換えDNA技術の出現とともに、細胞が、大量のこれらの産物の産生するように操作され得る。従って、インビトロにおいて細胞を培養する能力は、細胞生理学の研究に重要であるだけでなく、そうでなければ、経済的な手段では獲得され得ない有用物質を産生するためにも必要である。
【0004】
細胞培養培地処方物は、文献中において十分に考証されており、そして多数の培地が市販されている。初期の細胞培養の研究において、培地処方物は、血液の化学的組成および物理化学的な特性(例えば、浸透圧、pHなど)に基いており、そして「生理学的溶液」と呼ばれていた(Ringer,S.,J.Physiol.,3:380〜393(1880)(非特許文献1);Waymouth,C.In:Cells and Tissues in Culture,Vol.1,Academic Press,London,99〜142頁(1965)(非特許文献2);Waymouth,C.,In Vitro 6:109〜127(1970)(非特許文献3))。しかし、哺乳動物の身体の異なる組織における細胞は、酸素/二酸化炭素分圧、ならびに栄養素、ビタミン、および微量金属の濃度に関して異なる微小環境に曝露される;従って、異なる細胞型の首尾良いインビトロ培養は、異なる培地処方物の使用を必要とし得る。細胞培養培地の代表的構成要素としては、アミノ酸、有機塩類および無機塩類、ビタミン、微量金属、糖、脂質および核酸が挙げられる。これらの型および量は、所定の細胞または組織型の特定の要件に依存して変化し得る。
【0005】
代表的には、細胞培養培地処方物は、ウシ胎仔血清(FBS)(10〜20% v/v)または動物の胚、器官もしくは腺からの抽出物(0.5〜10% v/v)のような規定されない成分を含むある範囲の添加物で補充される。FBSは、動物細胞培養培地に最も通常に適用される補充物であるが、ウシ、ウマおよびヒトの新生児を含む他の血清供給源がまた、慣用的に用いられる。培養培地の補充のための抽出物を調製するために用いられてきた器官または腺としては、顎下腺(Cohen,S.,J.Biol.Chem.237:1555〜1565(1961)(非特許文献4))、下垂体(Peehl、D.M.,およびHam,R.G.,In Vitro 16:516〜525(1980)(非特許文献5);米国特許第4,673,649号(特許文献1))、視床下部(Maciag,T.,ら.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:5674〜5678(1979)(非特許文献6);Gilchrest,B.A.ら、J.Cell.Physiol.120:377〜383(1984)(非特許文献7))、眼の網膜(Barretault,D.ら、Differentiation 18:29〜42(1981)(非特許文献8))ならびに脳(Maciag,Tら、Science 211:1452〜1454(1981)(非特許文献9))が挙げられる。細胞培養培地はまた、他の動物由来産物を含み得る。これには以下が挙げられるがこれらに限定されない:血液由来産物(例えば、血清、アルブミン、抗体、フィブリノーゲン、第VIII因子など)、組織もしくは器官抽出物、および/または加水分解産物(例えば、ウシ下垂体抽出物(BPE)、ウシ脳抽出物、ニワトリ胚抽出物およびウシ胚抽出物)、および動物由来脂質、脂肪酸、タンパク質、アミノ酸、ペプトン、ExcyteTM、ステロール(例えば、コレステロール)ならびにリポタンパク質(例えば、高密度リポ蛋白質および低密度リポ蛋白質(それぞれ、HDLおよびLDL))。細胞培養培地はまた、例えば、以下のような特異的な精製されたまたは組換えの成長因子を含み得る:インスリン、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフェリン、造血性増殖因子様エリスロポエチン、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11など、コロニー刺激因子様G−CSF、GM−CSF、組織型特異的増殖因子様神経性増殖因子、cAMPまたは他のシグナル伝達経路の特異的調節因子など。これらの型の補充物は、細胞培養培地においていくつかの有用な機能を果たす(Lambert,K.J.ら、Animal Cell Biotechnology、第1巻、Spier、R.E.ら、編、Academic Press New York、85〜122頁(1985)(非特許文献10))。例えば、これらの添加物は、不安定かまたは水に不溶性の栄養素のためのキャリアまたはキレーターを提供し;毒性部分に結合しそして中和し;ホルモンおよび増殖因子、プロテアーゼインヒビターならびに必須のしばしば同定されてないかまたは規定されてない低分子量栄養素を提供し;そして物理的なストレスおよび損傷から細胞を保護する。従って、動物由来産物は、動物細胞の培養のための至適培養培地を提供するための比較的低コストの補充物として一般的に用いられる。
【0006】
不運にも、組織または細胞の培養の適用における、このような動物由来の成分または栄養素の使用は、いくつかの欠点を有する(Lambert,K.J.ら、Animal Cell Biotechnology,第1巻、Spier,R.E.ら編.,Academic Press New York、85〜122頁(1985)(非特許文献10))。まずはじめは、外来性因子または毒素が組織または細胞の培養物に混入する可能性である。実際、動物またはヒト由来の成分での培地の補充は、これらの混入された補充物が細胞培養培地処方物において用いられる場合、培養細胞の健常性を重篤に損ない得る感染性因子(例えば、マイコプラズマおよび/またはウイルス)または毒素を導入し得、そして感染性因子または毒素が混入した生物学的物質(例えば、抗体、ホルモン、成長因子など)の産生を生じ得る。従って、外来性因子または毒素による細胞または組織の培養物の混入は、細胞治療において、および他の臨床適用において健康の危険性を引き起こし得る。主な恐れは、疾患の病原性を有し得る非細胞性可溶性タンパク質、もしくは非細胞性不溶性タンパク質または他のクラスの生物活性成分の存在、および特には、ヒトまたは動物において海綿状脳障害を生じるプリオンの存在である。
【0007】
従って、現在、細胞培養試薬(例えば、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、緩衝液、ならびにタンパク質、炭水化物、脂質、アミノ酸、ビタミン、核酸、DNA、RNA、微量金属、および緩衝液を単独でまたは組み合わせてのいずれかで含有する、細胞培養培地において見出され得る任意の栄養性成分または溶液)からの外来性因子(例えば、感染性因子)および毒素を減弱または排除する必要性が存在する。外来性因子または毒素が減弱または排除されているこのような細胞培養試薬は、製薬学および医業に対して特に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,673,649号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ringer,S.,J.Physiol.,3:380〜393(1880)
【非特許文献2】Waymouth,C.In:Cells and Tissues in Culture,Vol.1,Academic Press,London,99〜142頁(1965)
【非特許文献3】Waymouth,C.,In Vitro 6:109〜127(1970)
【非特許文献4】Cohen,S.,J.Biol.Chem.237:1555〜1565(1961)
【非特許文献5】Peehl、D.M.,およびHam,R.G.,In Vitro 16:516〜525(1980)
【非特許文献6】Maciag,T.,ら.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:5674〜5678(1979)
【非特許文献7】Gilchrest,B.A.ら、J.Cell.Physiol.120:377〜383(1984)
【非特許文献8】Barretault,D.ら、Differentiation 18:29〜42(1981)
【非特許文献9】Maciag,Tら、Science 211:1452〜1454(1981)
【非特許文献10】Lambert,K.J.ら、Animal Cell Biotechnology、第1巻、Spier、R.E.ら、編、Academic Press New York、85〜122頁(1985)
【発明の概要】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、この必要性に取り組む。一般に、本発明は、目的のサンプル中に存在する外来性因子または毒素を、減弱、実質的に減弱、不活化または排除するように任意のサンプルを処置することに関する。より詳細には、本発明は、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝液(またはそれらを作製するために用いられる任意の成分)のような細胞培養試薬に関する。
【0011】
本発明に従って、混入する外来性因子または毒素のこのような減弱、不活化、または排除は、目的のサンプルを乾燥することまたは実質的に乾燥することにより達成される。好ましくは、目的のサンプルは、サンプル中に存在する毒素および/または外来性因子を減弱、実質的に減弱、不活化または排除するのに十分な条件下で、空気または他のガス(またはガスの組み合わせ)に対して曝露される。空気またはガスに曝露されるサンプルは、乾燥(例えば、粉末化)形態または液体形態であり得る。好ましくは、このような条件は、空気もしくはガスまたはガスの組み合わせに対して曝露されたサンプルの表面面積を増加させることを包含する。空気または他のガス(またはガスの組み合わせ)に対して曝露されるサンプルの表面面積を増加させることは、空気またはガス中のサンプル(例えば、液体形態または乾燥形態)の粒子サイズが減少され、そして/または空気もしくはガスに曝露されるサンプルの容積が増加される任意の方法を包含し得る。サンプルの表面面積曝露の増加は、空気またはガス中でのおよび/またはそれを通過する乾燥または液体サンプルのアトマイジング(atomizing)、微粉砕(pulverizing)、粉砕(grinding)、分配(dispensing)、噴霧(spraying)、蒸気化(misting)、点滴(dripping)、注ぎ(pouring)、噴霧(spreading)などによって達成され得る。あるいは、空気またはガスが、乾燥サンプルまたは液体サンプル全体に、注入、バブリング、噴霧などをされ得る。好ましくは、空気/ガスは、均一なまたは同質な分散および/または凝集を促進する、揮発性の激しく渦巻く流れとして導入される。
【0012】
本発明に従って、温度(例えば、加熱または冷却または凍結)、湿度、大気圧、ガスまたは空気含量、曝露時間などのような他の環境条件が、外来性因子および毒素の減弱または除去を促進するように、空気またはガスへのサンプルの曝露中、調節または最適化され得る。好ましくは、冷却温度または凍結温度が、曝露の間に適用され得るが、熱は、空気またはガス(またはガスの組み合わせ)へのサンプルの曝露中、サンプルからの外来性因子または毒素の減弱または除去を促進するようにおよび/またはサンプルの乾燥を促進するように、適用される。別の局面ではガスまたはガスの組み合わせの型、および存在するそれぞれのガスの量(例えば、パーセンテージ)は、外来性因子または毒素の減弱または排除をさらに補助するよう変化または最適化され得る。このようなガス(単数または複数)としては、オゾン、窒素、ヘリウム、空気、二酸化炭素、アルゴン、酸素、水素などが挙げられるがこれらに限定されない。別の局面において、外来性因子または毒素に対して毒性または阻害性である化学的もしくは生物学的な化合物または条件が、このような因子または毒素を中和または不活化するプロセスの間またはその後に添加され得る。添加または変化され得るこのような化合物または条件としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:抗生物質、塩酸、水酸化ナトリウム、抗体(モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体またはそのフラグメント)、ヨウ素、pH処理、オゾン、α−γ線、ソラレンまたは類似の試薬、ポルフィリンもしくはクロリンの誘導体、または他の光活性化試薬もしくは化合物。
【0013】
好ましくは、目的のサンプル(これは、好ましくは、任意の細胞培養試薬、特に培地、培地補充物、培地サブグループまたは緩衝液である)は、空気またはガス(またはガスの組み合わせ)を含むチャンバーまたは他の容器に、分散または噴霧される。そして最も好ましくは、このサンプル(例えば、乾燥形態または液体形態)は、当該分野で周知の手順により噴霧乾燥または凝集に供される。このような手順は、例えば、噴霧乾燥装置および/もしくは流動床装置またはそれらの組み合わせ、あるいは当該分野で利用可能な類似の技術の使用を含み得る。好ましい局面では、液体サンプルは、液体サンプルは、このサンプルを乾燥または実質的に乾燥させるために十分な条件下で熱の存在下で噴霧される。一方、乾燥または実質的に乾燥したサンプル(好ましくは、粉末化形態または顆粒形態である)は、熱の存在下で吹きつけのまたは圧縮された空気またはガスを用いて分散(例えば、チャンバー内で)される。好ましくは、このような分散または噴霧は、サンプル中の外来性因子または毒素を減弱、実質的に減弱、不活化または排除するのに十分な条件下で実施される。このような条件としては、毒素または外来性因子の減弱、不活化または排除を促進するための、例えば、湿度の制御、大気圧、用いるガスの含量および/または型、曝露時間、および化合物の添加が挙げられる。
【0014】
従って、本発明は、サンプル中の外来性因子および/または毒素を減弱、実質的に減弱、不活化、または排除するのに十分な条件下で、空気またはガス(またはガスの組み合わせ)に対してこのサンプルを曝露する工程を包含する。より詳細には、本発明は、以下の工程を包含する:
1つ以上の細胞性または非細胞性の外来性因子および/または1つ以上の毒素を含み得るサンプル(好ましくは、培地、培地サブグループ、培地補充物または緩衝液)を、空気またはガス(またはガスの組み合わせ)に対して、好ましくはこの空気またはガス(またはガスの組み合わせ)中またはこれを通じて噴霧または分散することにより、そして好ましくは熱の存在下で曝露する工程;および
未処理のサンプルに比較して外来性因子および/または毒素を減弱、実質的に減弱、不活化または排除されているサンプルを獲得する工程。生成されたこのようなサンプルは好ましくは乾燥形態(例えば、粉末化)である。
【0015】
目的のサンプル中の外来性因子または毒素の減弱、実質的な減弱、不活化または排除をさらに促進するため、本発明はさらに、本発明の方法により生成されるサンプルを滅菌する工程をさらに含み得る。このような滅菌は、照射または当業者に周知の他の滅菌方法により達成され得る。好ましくは、本発明により(例えば、噴霧乾燥または凝集により)生成されるサンプルは、パッケージングの前または後に滅菌され得る。特に好ましい実施態様では、滅菌は、包装された材料のγ線での照射によりパッケージング後に達成され得る。
【0016】
本発明に従って生成され得る特に好ましい栄養培地としては、細菌培養培地、酵母培養培地、植物培養培地および動物培養培地からなる群より選択される培養培地が挙げられる。好ましい局面では、このような培養培地は、乾燥粉末化形態で生成されるが、それらは、液体形態で生成されてもよい(例えば、1つ以上の溶媒と混合することにより)。
【0017】
本発明の方法により生成され得る特に好ましい培地補充物としては、以下が挙げられる:ウシ血清を含む動物血清のような血液由来産物(例えば、ウシ胎仔血清、新生仔ウシ血清または正常ウシ血清)、ヒト血清、ウマ血清、ブタ血清、サル(monkey)血清、類人猿(ape)血清、ラット血清、マウス血清、ウサギ血清、ヒツジ血清など;サイトカイン(EGF、aFGF、bFGF、HGF、IGF−1、IGF−2、NGFなどのような増殖因子、インターロイキン、コロニー刺激因子およびインターフェロンを含む);付着因子または細胞外基質成分(例えば、コラーゲン、ラミニン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ビトロネクチンなど);脂質(例えば、リン脂質、コレステロール、ウシコレステロール濃縮物、脂肪酸、ExcyteTM、スフィンゴ脂質など);ならびに動物、植物、昆虫、魚類、酵母、細菌または任意の他の原核生物もしくは真核生物供給源由来の組織、細胞、器官または腺の抽出物または加水分解産物(例えば、ウシ下垂体抽出物、ウシ脳抽出物、ニワトリ胚抽出物、酵母抽出物、ウシ胚抽出物、ニワトリ肉抽出物、アキレス腱およびその抽出物など)。本方法により生成され得る他の培地補充物としては、以下が挙げられる:種々のタンパク質(例えば、血清アルブミン、特にウシまたはヒトの血清アルブミン;免疫グロブリンおよびそのフラグメントまたは複合体;アプロチニン;ヘモグロビン;ヘミンまたはヘマチン;酵素(例えば、トリプシン、コラゲナーゼ、パンクレアチニンまたはディスパーゼ(dispase);リポタンパク質;フェリチン;など))(これは、天然または組換えであり得る)ビタミン、アミノ酸およびその改変体(Lグルタミンおよびシスチンを含むがこれに限定されない)であり得る)、酵素補因子、ならびに当業者に精通されたインビトロ化の細胞の培養において有用な他の成分。好ましくは、このような補充物は、乾燥粉末化形態で生成されるが、例えば、1つ以上の溶媒を目的の乾燥粉末化補充物と混合することにより液体形態で生成され得る。
【0018】
本発明により調製される栄養培地および培地補充物はまた、血清(好ましくは、上記に記載の血清)、L−グルタミン、インスリン、トランスフェリン、1つ以上の脂質(好ましくは、1つ以上のリン脂質、スフィンゴ脂質、脂肪酸、またはコレステロール)、1つ以上のサイトカイン(好ましくは、上記のサイトカイン)、1つ以上の神経伝達物質、組織、器官または腺の1つ以上の抽出物または加水分解産物(好ましくは、上記のもの)、1つ以上のタンパク質(好ましくは上記のタンパク質)、または1つ以上の緩衝液(好ましくは炭酸水素ナトリウム)、あるいはそれらの組み合わせのようなサブグループを含み得る。
【0019】
本発明の方法に従う調製に特に適切な緩衝液としては、緩衝化生理食塩水粉末、最も特にリン酸緩衝化生理食塩水またはTris−緩衝化生理食塩水、および臨床または電解溶液において用いられる緩衝液(すなわち、リンゲル、乳酸リンゲル、非経口的な栄養溶液または粉末)が挙げられる。本発明に従って、このような緩衝液は、粉末化形態または液体形態であり得る。
【0020】
本発明はまた、毒素、外来性因子または他の有害な成分のレベルが減弱または排除された、細胞、細胞培養物または細胞調製物を調製する方法に関する。このような細胞としては、原核生物(例えば、細菌)および真核生物(例えば、真菌(特に、酵母)動物(特にヒトを含む哺乳動物)ならびに植物の細胞)が挙げられる。従って、本発明の方法は、1つ以上の細胞を獲得する工程ならびに、1つ以上の毒素および/または1つ以上の外来性因子を減弱、実質的に減弱、不活化または排除するのに十分な条件下で、この細胞を本発明の方法に供する工程を含み得る。本発明のこの局面において、用いられる条件(例えば、温度、湿度、大気圧、ガスの型、ガス流およびガス流パターン(例えば、揮発性または激しく逆巻く流れ)など)は、目的の細胞に有害に影響することを避けるかまたは実質的に避けるように最適化または調節され得る。好ましくは、このような細胞の生存度が減弱されないかまたは実質的に減弱されないな条件が、用いられる。従って、本発明は、サンプルにおける毒素および/または外来性因子を減弱、排除または不活化するために、細胞を含有するサンプルを空気またはガス(またはガスの組み合わせ)に曝露する工程に関する。本発明はまた、これらの方法により産生される細胞(これは、乾燥形態(好ましくは粉末化)または液体形態であってもよい)に関する。
【0021】
本発明はさらに、無菌または実質的に無菌のサンプル(好ましくは、細胞培養試薬および詳細には培養培地、培地補充物、培地サブグループおよび緩衝液)を調製する方法に関する。このような方法の1つは、、サンプルに存在し得る不要な細菌、真菌、胞子、ウイルスなどを複製または増殖が不可能にまたは実質的に不可能にするように、サンプル(例えば、上記の培養培地、培地補充物、培地サブグループおよび緩衝液)を照射(好ましくは、γ照射)に曝露する工程を含む。好ましいこのような方法では、サンプル(例えば、培地、培地補充物、培地サブグループおよび緩衝液を含む細胞培養試薬)は、総線量約10〜100キログレイ(kilogray)(kGy)で、好ましくは総線量約15〜75kGy、15〜50kGy、15〜40kGy、または20〜40kGyで、より好ましくは、総線量約20〜30kGy、そして最も好ましくは、総線量約25kGyで、約1時間〜約7日、好ましくは約1時間〜約5日、より好ましくは約1時間〜約3日、約1時間〜約24時間または約1〜5時間、そして最も好ましくは約1〜3時間γ照射される。好ましくは、培養培地、培地補充物、培地サブグループおよび緩衝液のような粉末化サンプルは、パッケージングの前または後にこのような照射に供される。他の滅菌プロセスはまた、単独でか、または本発明と組み合わせて用いられ得る(例えば、濾過、エチレンオキサイド滅菌、オートクレーブ、および化学的または物理的プロセス(例えば、加熱、pH処理、化学処理、ヨード処理、またはポルフィリン、ソラレンなどのような光活性化化合物))。
【0022】
本発明はさらに、1つ以上の細胞を操作または培養する方法を提供し、この細胞を本発明の細胞培養試薬(特に、栄養培地、培地補充物、培地サブグループまたは緩衝液)に接触させる工程、およびこの細胞(複数または単数)を細胞(複数または単数)の培養または操作に都合の良い条件下でインキュベートする工程、を包含する。任意の細胞(特に細菌細胞、酵母細胞、植物細胞または動物細胞)が本発明に従って培養または操作され得る。好ましい動物細胞としては、昆虫細胞(最も好ましくは、Drosophilia細胞、Spodoptera細胞およびTrichoplusa細胞)、線形動物細胞(最も好ましくは、C.elegans細胞)および哺乳動物細胞(最も好ましくは、CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、AE−1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、ハイブリドーマ細胞またはヒト細胞、胚性幹細胞(ES細胞))、ウイルスまたはベクターの産生に用いられる細胞(すなわち、PerC6)、細胞治療または遺伝子治療に用いられる初代ヒト部位由来の細胞、すなわち、リンパ球、造血細胞、他の白血球(WBC)、マクロファージ、好中球、ならびに樹状細胞が挙げられる。本発明はまた、組織または器官の移植または操作のための細胞および/または組織(すなわち、肝細胞、ランゲルハンス島、骨芽細胞、骨芽細胞/軟骨細胞、皮膚もしくは筋肉または他の結合組織、上皮細胞、組織様ケラチノサイト、神経起源の細胞、角膜、皮膚、器官)、ならびにワクチンとして用いられる細胞(すなわち、血球、造血細胞、他の幹細胞または前駆細胞、および種々の組織型の不活性かまたは改変された腫瘍細胞)の操作または培養に関係する。本発明のこの局面に従って培養または操作される細胞は、正常細胞、疾患細胞、形質転換された細胞、変異細胞、体細胞、生殖細胞、幹細胞、前駆細胞または胎児性細胞であり得る。これらはいずれも樹立された細胞株または天然の供給源から得られた細胞であり得る。
【0023】
本発明はさらに、1つ以上の細胞または組織の培養または操作における使用のためのキットに関する。本発明によるキットは、本発明の1つ以上のサンプル、好ましくは、栄養培地、培地補充物、培地サブグループもしくは緩衝液またはそれらの任意の組み合わせを含む、1つ以上の細胞培養試薬を含む1つ以上の容器を含み得る。このキットはまた、本発明の乾燥された細胞を含む1つ以上の細胞もしくは細胞型または組織を含み得る。
【0024】
本発明の別の局面は、本発明の細胞培養試薬、栄養培地、培地補充物、培地サブグループまたは緩衝液、および1つ以上の細胞または組織を含む組成物に関する。このような組成物は、粉末化形態または液体形態であり得る。
【0025】
本発明の好ましい他の実施態様は、以下の図面および発明の詳細な説明、ならびに特許請求の範囲に照らして、当業者に明白である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の方法(図1A)および従来の液体FBS(図1B)によって粉末化形態で調製された胎仔ウシ血清(FBS)のサンプルのSDS−PAGEのデンシトメータースキャンのヒストグラムである。
【図2】図2は、本発明の凝集法によって粉末化形態で調製された2%(w/v)FBSを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中のSP2/0細胞の増殖(図2A)および継代の成功(図2B)の折れ線グラフの合成である。
【図3A】図3は、本発明の方法に従うスプレー乾燥(図3A)または標準的な液体FBS(図3B)によって調製された粉末化ウシ胎仔血清(FBS)の分光学的スキャン(λ=200〜350nm)のヒストグラムの合成である。
【図3B】図3は、本発明の方法に従うスプレー乾燥(図3A)または標準的な液体FBS(図3B)によって調製された粉末化ウシ胎仔血清(FBS)の分光学的スキャン(λ=200〜350nm)のヒストグラムの合成である。
【図4】図4は、炭酸水素ナトリウムの添加あり、またはなしで、本発明の方法によって、またはボールミルによって調製された種々の乾燥粉末化培地(DPM)の2つの異なる日付(図4Aおよび4B)でのpH滴定(緩衝能力)を示す折れ線グラフの合成である。
【図5】図5は、Opti−MEM ITM(図5A)またはDMEM(図5B)の溶解速度(水中)に対する凝集の効果を示す棒グラフの合成である。培地は、示されたように、水もしくはFBSで凝集した。
【図6】図6は、凝集されたOpti−MEM ITM(図6A)もしくはDMEM(図6B)(いずれも2%FBSを含有する)における、SP2/0細胞の7日間にわたる増殖を示す折れ線グラフの合成である。
【図7】図7は、10%FBSを含有する凝集されたDMEM中でのSP2/0細胞(図7A)、AE−1細胞(図7B)、およびL5.1細胞(図7C)の7日間にわたる増殖を示す折れ線グラフの合成である。
【図8】図8は、2%FBSを補充した水またはFBSのいずれかで凝集させた、Opti−MEM ITM(図8A)またはDMEM(図8B)でのSP2/0細胞の継代の成功を示す折れ線グラフの合成である。
【図9】図9は、FBSおよび炭酸水素ナトリウムで凝集させ、そして10%FBSを補充したDMEM中でSP2/0細胞(図9A)、AE−1細胞(図9B)、およびL5.1細胞(図9C)の継代の成功を示す折れ線グラフの合成である。
【図10】図10は、標準的な水で再構成した粉末化培養培地(コントロール培地)において、または本発明の方法に従って大規模量で調製した凝集した粉末化培養培地において、4回の継代にわたってSP2/0細胞の増殖を示す折れ線グラフである。結果は、コントロール培地(白四角)、本発明の水で凝集した粉末化培養培地(黒菱形)、および本発明の水で凝集させた自己pH粉末化培養培地(炭酸水素ナトリウムを含有する)(黒四角)について示される。
【図11A】図11は、2%(白三角)もしくは10%(黒菱形)の液体ウシ胎仔血清(FBS)、または本発明のスプレー乾燥法によって調製した2%(×)もしくは10%(黒四角)の粉末化FBSを含有する培地において、6または7日にわたって培養させたAE−1細胞の折れ線グラフである。二重の実験を図11Aおよび図11Bに示す。
【図11B】図11は、2%(白三角)もしくは10%(黒菱形)の液体ウシ胎仔血清(FBS)、または本発明のスプレー乾燥法によって調製した2%(×)もしくは10%(黒四角)の粉末化FBSを含有する培地において、6または7日にわたって培養させたAE−1細胞の折れ線グラフである。二重の実験を図11Aおよび図11Bに示す。
【図12A】図12は、2%(白三角)もしくは10%(黒菱形)の液体FBS、または本発明のスプレー乾燥法によって調製した2%(×)もしくは10%(黒四角)の粉末化FBSを含有する培地において7日にわたって培養させたSP2/0細胞の折れ線グラフである。二重の実験を図12Aおよび12Bに示す。
【図12B】図12は、2%(白三角)もしくは10%(黒菱形)の液体FBS、または本発明のスプレー乾燥法によって調製した2%(×)もしくは10%(黒四角)の粉末化FBSを含有する培地において7日にわたって培養させたSP2/0細胞の折れ線グラフである。二重の実験を図12Aおよび12Bに示す。
【図13】図13は、5%の液体FBS(黒菱形)または本発明のスプレー乾燥法によって調製した5%の粉末化FBS(黒四角)を含有する培地において4回の継代にわたるAE−1細胞増殖の折れ線グラフである。
【図14】図14は、5日間にわたるSP2/0細胞の増殖に対するγ照射および凝集の効果を示す折れ線グラフである。
【図15】図15は、凝集した培養培地のγ照射のVERO細胞の増殖に対する効果を示す棒グラフである。
【図16A】図16は、4回の継代にわたって、293細胞の増殖を支持するトランスフェリンの能力に対するγ照射の効果を示す一連の折れ線グラフである。各グラフにおいて、細胞を、標準的な無血清293培地(黒菱形)、トランスフェリンを含まない培地(黒四角)、−70℃(白三角)または室温( )でγ照射されている粉末化トランスフェリンを含有する培地、あるいはγ照射されていないが−70℃(×)もしくは室温(黒丸)で保存されている粉末化トランスフェリンを含有する培地において培養した。各データ点の結果は、二連のフラスコの平均である。図16A:一回継代の細胞。図16B:二回継代の細胞。図16C:3回継代の細胞。図16D:4回継代の細胞。
【図16B】図16は、4回の継代にわたって、293細胞の増殖を支持するトランスフェリンの能力に対するγ照射の効果を示す一連の折れ線グラフである。各グラフにおいて、細胞を、標準的な無血清293培地(黒菱形)、トランスフェリンを含まない培地(黒四角)、−70℃(白三角)または室温( )でγ照射されている粉末化トランスフェリンを含有する培地、あるいはγ照射されていないが−70℃(×)もしくは室温(黒丸)で保存されている粉末化トランスフェリンを含有する培地において培養した。各データ点の結果は、二連のフラスコの平均である。図16A:一回継代の細胞。図16B:二回継代の細胞。図16C:3回継代の細胞。図16D:4回継代の細胞。
【図16C】図16は、4回の継代にわたって、293細胞の増殖を支持するトランスフェリンの能力に対するγ照射の効果を示す一連の折れ線グラフである。各グラフにおいて、細胞を、標準的な無血清293培地(黒菱形)、トランスフェリンを含まない培地(黒四角)、−70℃(白三角)または室温( )でγ照射されている粉末化トランスフェリンを含有する培地、あるいはγ照射されていないが−70℃(×)もしくは室温(黒丸)で保存されている粉末化トランスフェリンを含有する培地において培養した。各データ点の結果は、二連のフラスコの平均である。図16A:一回継代の細胞。図16B:二回継代の細胞。図16C:3回継代の細胞。図16D:4回継代の細胞。
【図16D】図16は、4回の継代にわたって、293細胞の増殖を支持するトランスフェリンの能力に対するγ照射の効果を示す一連の折れ線グラフである。各グラフにおいて、細胞を、標準的な無血清293培地(黒菱形)、トランスフェリンを含まない培地(黒四角)、−70℃(白三角)または室温( )でγ照射されている粉末化トランスフェリンを含有する培地、あるいはγ照射されていないが−70℃(×)もしくは室温(黒丸)で保存されている粉末化トランスフェリンを含有する培地において培養した。各データ点の結果は、二連のフラスコの平均である。図16A:一回継代の細胞。図16B:二回継代の細胞。図16C:3回継代の細胞。図16D:4回継代の細胞。
【図17A】図17は、一回目(P×1)、二回目(P×2)、および3回目(P×3)の継代での足場非依存性細胞(図17Aおよび17B)および足場依存性細胞(図17Cおよび17D)の増殖を支持するFBSの能力に対する、異なる照射条件下でのγ照射の効果を示す一連の棒グラフである。図17A:SP2/0細胞。図17B:AE−1細胞。図17C:VERO細胞。図17D:BHK細胞。
【図17B】図17は、一回目(P×1)、二回目(P×2)、および3回目(P×3)の継代での足場非依存性細胞(図17Aおよび17B)および足場依存性細胞(図17Cおよび17D)の増殖を支持するFBSの能力に対する、異なる照射条件下でのγ照射の効果を示す一連の棒グラフである。図17A:SP2/0細胞。図17B:AE−1細胞。図17C:VERO細胞。図17D:BHK細胞。
【図17C】図17は、一回目(P×1)、二回目(P×2)、および3回目(P×3)の継代での足場非依存性細胞(図17Aおよび17B)および足場依存性細胞(図17Cおよび17D)の増殖を支持するFBSの能力に対する、異なる照射条件下でのγ照射の効果を示す一連の棒グラフである。図17A:SP2/0細胞。図17B:AE−1細胞。図17C:VERO細胞。図17D:BHK細胞。
【図17D】図17は、一回目(P×1)、二回目(P×2)、および3回目(P×3)の継代での足場非依存性細胞(図17Aおよび17B)および足場依存性細胞(図17Cおよび17D)の増殖を支持するFBSの能力に対する、異なる照射条件下でのγ照射の効果を示す一連の棒グラフである。図17A:SP2/0細胞。図17B:AE−1細胞。図17C:VERO細胞。図17D:BHK細胞。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
(定義)
以下の説明において、細胞培養培地の分野において従来的に使用される多くの用語が、広範に利用される。明細書および請求の範囲、ならびにそのような用語に与えられる範囲の明確かつ一貫性のある理解を提供するために、以下の定義が提供される。
【0028】
本明細書で使用される用語「粉末」は、顆粒形態で存在する組成物をいい、その組成物は、水または血清のような溶媒と複合体化されるか、または凝集されていてもいなくてもよい。用語「乾燥粉末」は、用語「粉末」と互換的に使用され得るが、本明細書で使用される「乾燥粉末」は、顆粒化された材料の明らかな(gross)外観を単にいい、そして特に示さない限り、その材料が、完全に複合体化したか、または凝集した溶媒を含まないことを意味することを意図しない。
【0029】
用語「成分」は、化学物質起源であろうと生物学的起源であろうと、細胞の増殖の成長を維持するためか、または促進するために細胞培養培地において使用され得る任意の化合物をいう。用語「成分(component)」、「栄養物質」、および「成分(ingredient)」は、互換的に使用され得、そして全て、このような化合物をいうことが意図される。細胞培養培地において使用される代表的な成分には、アミノ酸、塩、金属、糖、炭水化物、脂質、核酸、ホルモン、ビタミン、脂肪酸、タンパク質などが含まれる。細胞の培養をエキソビボで促進または維持するその他の成分は、特定の必要性に従って、当業者により選択され得る。
【0030】
用語「サイトカイン」は、細胞において生理学的な応答(例えば、増殖、分化、老化、アポトーシス、細胞傷害性、もしくは抗体分泌)を誘導する化合物をいう。成長因子、インターロイキン、コロニー刺激因子、インターフェロン、およびリンホカインは、「サイトカイン」のこの定義に含まれる。
【0031】
「細胞培養」または「培養」により、人工的な(例えば、インビトロの)環境における細胞の維持を意味する。しかし、用語「細胞培養」は総称であり、そして個々の原核生物(例えば、細菌)または真核生物(例えば、動物、植物、および真菌)の細胞だけでなく、組織、器官、器官系、または生物体全体の培養を包含するために使用され得ること、そして、それらについての用語「組織培養」、「器官培養」、「器官系培養」、または「器官型培養」が、ときどき、用語「細胞培養」と互換的に使用され得ることが理解されるべきである。
【0032】
「培養」により、細胞の活性または静止の状態での、増殖、分化、または連続する生存度に有利な条件下での人工的な環境における細胞の維持を意味する。従って、「培養」は、「細胞培養」または上記の任意のその同義語と互換的に使用され得る。
【0033】
「培養容器」により、細胞の培養のための無菌環境を提供し得るガラスの、プラスチックの、または金属の容器を意味する。
【0034】
句「細胞培養培地」、「培養培地」、「栄養培地」、および「培地処方物」(各々の場合において、複数形の「培地」)は、細胞の培養および/または増殖を支持する栄養溶液をいう;これらの句は、互換的に使用され得る。
【0035】
「抽出物」により、物質のサブグループの濃縮調製物を含む組成物を意味し、代表的には、物質(代表的には、生物学起源のサンプル、例えば、組織または細胞)の機械的(例えば、圧力処理)または化学的(例えば、蒸留、沈殿、酵素作用、または高塩処理)のいずれかの処理によって形成される。
【0036】
「酵素消化」により、抽出物の分化した(specialized)型を含む組成物を意味し、すなわち、抽出されるべき(例えば、植物成分または酵母細胞)物質(代表的には、生物学起源のサンプル、例えば、組織または細胞)を、その物質の成分を単純な形態へ(例えば、単糖または二糖類、および/またはモノペプチド、ジペプチド、もしくはトリペプチドを含む調製物へ)と分解し得る少なくとも1つの酵素で処理することによって調製されるものを意味する。この文脈において、かつ本発明の目的のために、用語「加水分解産物」は、用語「酵素消化物」と互換的に使用され得る。
【0037】
「外来性因子(adventitious agent)」により、1つ以上の細菌、1つ以上の病原性微生物、1つ以上の微生物病原体、1つ以上のウイルス、1つ以上のマイコプラズマ、1つ以上の酵母細胞、1つ以上の真菌、急性または慢性の毒性または疾患をもたらす1つ以上の非細胞性化合物などのような任意の因子であって、目的のサンプルを汚染し得る因子を意味する。外来性因子は、細胞培養試薬において使用される任意の数の動物由来の産物または成分に存在し得る。本発明によって減弱、排除、不活化、または死滅させられる好ましい外来性因子は、サイズは無関係に、動物ウイルス、ヒトウイルス、植物ウイルス、魚ウイルス、昆虫ウイルス、哺乳動物ウイルス、DNAウイルス、RNAウイルス、エンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスであり得るウイルスである。このようなウイルスには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、パポバウイルス(popovavirus)、レトロウイルス、オルソミクソウイルス(インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス(パラインフルエンザ、おたふくかぜ、はしか、およびRSウイルス)、ピコルナウイルス(エンテロウイルス、カーディオウイルス、ライノウイルス、およびアフトウイルス)、トガウイルス、アレナウイルス、レオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルス、ラブドウイルス、コロナウイルス、マルブルクウイルス、エボラウイルス、および肝炎ウイルス(「Comparative Diagnosis of Viral Diseases」(E.KurstakおよびC.Kurstak編)、I−IV巻、Academic Press,New Yorkおよび「Medical Microbiology and Infectious Diseases」(A.Samiy,L.Smith,Jr.,J.Wyngaarden編)、II巻、W.B.Saunders Co.,Philadelphia,PA)を参照のこと)が挙げられる。このようなウイルスの例には、以下の表に示されるものが含まれるがこれらに限定されない:
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

細菌の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:グラム陰性およびグラム陽性細菌、好ましくは、Staphylococcus、Streptococcus、Corynebacterium、Bacillus、Neisseria、Shigella、Escherichia、Salmonella、Klebsiella、Proteus、Erwinia、Vibrio、Pseudomonas、Brucella、Bordetella、Haemophilus、Yersiniaの属の細菌、そして特にCorynebacterium diphtheriae、Eschericia coli、Streptococcus pyogenes、Staphylococcus aureus、およびMycobacteria tuberculosis。マイコプラズマの例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:M.bovimasutidis、M.canis、M.hominis、M.hyorhinis、M.urealyticum、M.orale、M.salivarium、M.laidlawi、およびM.pneumoniae。酵母細胞の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:Saccharomyces cerevisiae、Cryptococcus neoformans、Blastomyces dermatitidis、Histoplasma capsulatum、Paracoccidiodes brasiliensis、およびCandida albicaus。真菌の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:Coccidioides immitis、Aspergillus fumigatis、Microsporum audouini、Trichophyton mentagrophytes、およびEpidermophyton floccostum。「Medical Microbiology and Infectious Diseases」(A.Samiy,L.Smith,Jr.,J.Wyngaarden編)、II巻、W.B.Saunders Co.,Philadelphia,PAを参照のこと。
【0040】
「毒素」により、細胞機能または細胞増殖を阻害する任意の生物学的または化学的化合物(タンパク質を含む)またはそれらの組み合わせを意味する。従って、細胞培養における1つ以上の毒素の存在は、細胞増殖または機能の阻害をもたらすか、またはこのような培養物中の全てまたは多数の細胞を死滅させ得る。毒素の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:内毒素、外毒素、ヘビ毒、コレラ毒素、ブドウ球菌性のエンテロトキシン、ロイコチジン、リシンA、動物由来の毒物、神経毒、および発赤毒素。「Medical Microbiology and Infectious Diseases」(A.Samiy,L.Smith,Jr.J.Wyngaarden編)、II巻、W.B.Saunders Co.,Philadelphia,PAを参照のこと。
【0041】
用語「実質的に減弱した」は、サンプル(特に、細胞培養試薬、栄養培地、培地上清、培地サブグループ、および緩衝液)中の外来性因子および/または毒素の量の減少をいう。このような減少は、本発明に従う処理の前のサンプル中の外来性因子および/または毒素のレベルと比較して、好ましくは、50%を超える、より好ましくは、60%を超える、なおより好ましくは、70%を超える、なおより好ましくは、80%を超える、なおより好ましくは、90%を超える、そして最も好ましくは、95%を超える減少である。本発明は、目的のサンプル中の毒素および/または外来性因子のレベルにおける、少なくとも1logの、好ましくは、少なくとも2logの、より好ましくは、少なくとも3logの、なおより好ましくは、少なくとも4logの、なおより好ましくは、少なくとも5logの、そして最も好ましくは、少なくとも6logの減少を提供する。
【0042】
用語「接触させる」は、培養されるべき細胞を、その細胞が培養される培地を有する培養容器中に配置することをいう。用語「接触させる」には、細胞を培地と混合すること、培地を培養容器中の細胞上にピペットで滴下すること、および培養培地中に細胞を浸すことが含まれる。
【0043】
用語「合わせる」は、細胞培養培地処方物中の成分を混合すること(mixing)、または混合すること(admixing)をいう。
【0044】
細胞培養培地は、多くの成分から構成され、そしてこれらの成分は、培養培地によって様々である。「1×処方物」は、作用濃度で細胞培養培地中に見出されるいくつかまたは全ての成分を含有する任意の水溶液をいうことが意図される。「1×処方物」とは、例えば、細胞培養培地またはその培地の成分の任意のサブグループのことをいい得る。1×溶液中の成分の濃度は、細胞をインビトロで維持または培養するために使用される細胞培養処方物中に見出されるその成分の濃度とほぼ同じである。細胞のインビトロ培養に使用される細胞培養培地は、定義上、1×処方物である。多数の成分が存在する場合、1×処方物中の各成分は、細胞培養培地中の成分の濃度にほぼ等しい濃度を有する。例えば、RPMI−1640培養培地は、成分の中でとりわけ、0.2g/L L−アルギニン、0.05g/L L−アスパラギン、および0.02g/L L−アスパラギン酸を含有する。これらのアミノ酸の「1×処方物」は、溶液中にほぼ同じ濃度のこれらの成分を含有する。従って、「1×処方物」をいう場合、溶液中の各成分が、記載される細胞培養培地中に見出されるものと同じか、またはほぼ同じ濃度を有することが意図される。細胞培養培地の1×処方物中の成分の濃度は、当業者に周知である。Methods For Preparation of Media,Supplements and Substrate For Serum−Free Animal Cell Culture Allen R.Liss,N.Y.(1984)(これは、その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。しかし、浸透圧および/またはpHは、培養培地と比較して、特に、1×処方物中に含まれる成分がより少ない場合、1×処方物中で異なり得る。
【0045】
「10×処方物」は、その溶液中の各成分が、細胞培養培地中の同じ成分よりも、約10倍濃縮されている溶液をいうことが意図される。例えば、RPMI−1640培養培地の10×処方物は、成分の中でとりわけ、2.0g/L L−アルギニン、0.5g/L L−アスパラギン、および0.2g/L L−アスパラギン酸(1×処方物、上記と比較)を含有し得る。「10×処方物」は、1×培養培地に見出されるものの約10倍の濃度で多くのさらなる成分を含有し得る。容易に明らかなように、「20×処方物」、「25×処方物」、「50×処方物」、および「100×処方物」は、1×細胞培養培地と比較して、それぞれ、約20、25、50、または100倍濃度の成分を含有する溶液を示す。再び、その培地処方物および濃縮溶液の浸透圧およびpHは、様々であり得る。米国特許第5,474,931号(培養培地濃縮技術に関する)を参照のこと。
【0046】
(概説)
本発明は、外来性因子および/または毒素を減弱したまたは排除したサンプル(好ましくは、生物または動物由来要素または成分を含むサンプル)を生成する方法、およびより詳細には、外来性因子または毒素を減弱した、実質的に減弱した、不活性化した、または除去した細胞培養栄養素、細胞培養試薬、栄養培地、培養補充物、培養サブグループまたは緩衝液に関する。本発明はまた、これらの方法により生成された薬学的または臨床的組成物または溶液にも関する。
【0047】
本発明の方法によって生成される栄養培地、培地補充物、および培地サブグループは、細胞の増殖を操作するまたは支持するために使用され得る任意の培地、培地補充物、または培地サブグループ(無血清または血清含有)である。ここで細胞は、細菌細胞、真菌細胞(特に、酵母細胞)、植物細胞、または動物細胞(特に、昆虫細胞、線虫細胞、または哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞)であり得、そのいずれもが、体細胞、生殖細胞、正常細胞、疾患細胞、形質転換細胞、変異細胞、幹細胞、前駆細胞、または胚細胞であり得る。このような好ましい栄養培地は、細胞培養培地、最も好ましくは細菌細胞培養培地、植物細胞培養培地、または動物細胞培養培地を含むが、これらに限定されない。好ましい培地補充物は、規定されない補充物(例えば、細菌、動物、または植物の細胞、腺、組織または器官の抽出物もしくは加水分解物)(特に、ウシ脳下垂体抽出物、ウシ脳抽出物、およびニワトリ胚抽出物);および生物学的液体または血液由来産物(特に、動物血清、および最も好ましくは、ウシ血清(特に、胎仔ウシ、新生児ウシまたは通常(normal)ウシ血清)、ウマ血清、ブタ血清、ラット血清、マウス血清、ウサギ血清、サル血清、類人猿血清、またはヒト血清、これらのいずれもが胎児血清であり得る)ならびにそれらの抽出物(より好ましくは、血清アルブミンおよび最も好ましくは、ウシ血清アルブミンもしくはヒト血清アルブミン)を包含するが、これらに限定されない。培地補充物はまた、規定の置換物(例えば、LipoMAX(登録商標)、OptiMAb(登録商標)、Knock−OutTMSR、(各々は、Life Technologies、Inc.、Rockville、Marylandより入手可能))などを包含し得、これらは、上記の規定されない培地補充物の代わりとして使用され得る。このような補充物はまた、規定の要素を含み得、この要素としては、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、脂質、付着因子、タンパク質、アミノ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
栄養培地はまた、種々のサブグループに分割され得る(例えば、米国特許第5,474,931号を参照のこと)。これらは、本発明の方法によって調製され得、そしてそれに従って使用され得る。このようなサブグループは、本発明の栄養培地を生成するために組み合わされ得る。本発明の別の局面において、個々の成分(または成分の組み合わせ)、特に動物起源の成分が、本発明において使用され得る。次いで、このような成分またはサンプルは、任意の栄養培地、培地補充物、培地サブグループまたは緩衝液の調製において使用され得る。
【0049】
本発明の方法によって、任意のサンプル、特に薬学的または臨床的組成物および溶液、細胞培養試薬、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝液は、生成され得、そして生物学的活性および生化学的活性の有意な損失を伴うことなく延長された期間にわたって保存され得る。「生物学的活性および生化学的活性の有意な損失を伴うことなく」とは、生成されたばかりのサンプルに比較して、目的のサンプルの生物学的活性または生化学的活性の約30%未満、好ましくは約25%未満、より好ましくは約20%未満、さらにより好ましくは約15%未満、および最も好ましくは約10%未満の減少をいう。従って、薬学的組成物について、この薬学的組成物は、目的の薬学的特性(例えば、薬物効率)について試験され得、一方、培地は、細胞増殖または当業者に周知の他のパラメーターについて試験される。「延長された期間」とは、ボールミリング(ball−milling)のような伝統的な方法によって調製された場合にサンプル(例えば、薬学的組成物、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝液)が保存されるよりも長い期間のことをいう。従って、本明細書中で使用される「延長された期間」とは、約1〜36ヶ月、約2〜30ヶ月、約3〜24ヶ月、約6〜24ヶ月、約9〜18ヶ月、または約4〜12ヶ月、所定の保存条件下にあることをいう。これは、約−70℃〜約25℃、約−20℃〜約25℃、約0℃〜約25℃、約4℃〜約25℃、約10℃〜約25℃、または約20℃〜約25℃の温度での保存であり得る。薬学的組成物または臨床的組成物、細胞培養試薬、栄養素、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝液の生物学的特性または生化学的特性を決定するためのアッセイは、当該分野で周知であり、そして当業者に十分に知られている。
【0050】
(薬学的組成物または臨床的組成物、細胞培養試薬、培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝液の処方)
任意の薬学的組成物または臨床的組成物、細胞培養試薬、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝液(またはこのようなサンプルにおいて使用されるもしくは存在する任意の成分)が、本発明の方法によって調製され得る。本発明に従って調製され得る特に好ましい栄養培地、培地補充物、および培地サブグループは、動物細胞、植物細胞、細菌細胞、または酵母細胞の増殖を支持する細胞培養培地、培地補充物、および培地サブグループを包含する。本発明に従って調製され得る特に好ましい緩衝液は、動物細胞、植物細胞、細菌細胞または酵母細胞に等張性の均衡塩類溶液を包含する。このような溶液は、1×処方物として、または濃縮された(例えば、高張濃度で)(例えば、10×、25×、50×、100×などの)処方物で作製され得る。
【0051】
本発明に従って調製され得る動物細胞培養培地の例としては、DMEM、RPMI−1640、MCDB131、MCDB153、MDEM、IMDM、MEM、M199、McCoy’s 5A、William培地E、Leibovitz’s L−15培地、Grace’s昆虫培地、IPL−41昆虫培地、TC−100昆虫培地、Schneider’s Drosophila培地、Wolf & Quimby’s両生類培養培地、F10栄養混合物、F12栄養混合物、および細胞特異的無血清培地(SFM)(例えば、ケラチノサイト、内皮細胞、肝細胞、メラニン形成細胞、CHO細胞、293細胞、PerC6細胞、ハイブリドーマ、造血細胞、胚細胞、神経細胞などの培養物を支持するように設計された培地)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明による調製に適した他の培地、培地補充物、および培地サブグループは、市販されている(例えば、Life Technologies、Inc.;Rockville、Maryland、およびSigma;St.Louis,Missouriより)。これらの培地、培地補充物、および培地サブグループ、ならびに多くの他の一般的に使用される動物細胞培養培地、培地補充物、および培地サブグループについての処方は、当該分野で周知であり、そして例えば、GIBCO/BRL Catalogue and Reference Guide(Life Technologies、Inc.;Rockville、Maryland)およびSigma Animal Cell Catalogue(Sigma;St.Louis,Missouri)において見出され得る。
【0052】
本発明に従って調製され得る植物細胞培養培地の例としては、Anderson’s植物培養培地、CLC基本培地、Gamborg’s培地、Guillard’s海洋植物培養培地、Provasoli’s海洋培地、Kao and Michayluk’s培地、Murashige and Skoog培地、McCown’s木本植物培地、Knudsonラン培地、Lindemannラン培地、およびVacin and Went培地が挙げられるが、これらに限定されない。これらの培地(これらは、市販されている)ならびに多くの他の一般に使用される植物細胞培養培地についての処方は、当該分野で周知であり、そして例えば、Sigma Plant Cell Culture Catalogue(Sigma;St.Louis,Missouri)において見出され得る。
【0053】
本発明に従って調製され得る細菌細胞培養培地の例としては、トリプティケースソイ培地、ブレインハートインフュージョン培地、酵母抽出物培地、ペプトン−酵母抽出物培地、ウシインフュージョン(BeefInfusion)培地、チオグリコール酸培地、硝酸インドール培地、MR−VP培地、Simmon’sクエン酸培地、CTA培地、胆汁エスクリン培地、Bordet−Gengou培地、炭酵母抽出物(CYE)培地、マンニトール塩培地、MacConkey’s培地、エオシン−メチレンブルー(EMB)培地、Thayer−Martin培地、Salmonella−Shigella培地、およびウレアーゼ培地が挙げられるが、これらに限定されない。これらの培地(これらは、市販されている)ならびに多くの他の一般に使用される細菌細胞培養培地についての処方は、当該分野で周知であり、そして例えば、DIFCO Manual(DIFCO;Norwood、Massachusetts)およびManual of Clinical Microbiology(American Society for Microbiology、Washington、DC)において見出され得る。
【0054】
本発明に従って調製され得る真菌細胞培養培地(特に酵母細胞培養培地)の例としては、Sabouraud培地および酵母形態培地(Yeast Morphology Media)(YMA)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの培地(これらは、市販されている)ならびに多くの他の一般に使用される酵母細胞培養培地についての処方は、当該分野で周知であり、そして例えば、DIFCO Manual(DIFCO;Norwood、Massachusetts)およびManual of Clinical Microbiology(American Society for Microbiology)、Washington、DC)において見出され得る。
【0055】
当業者が理解するように、本発明の上記培地のいずれもまた、1つ以上のさらなる要素を含み得る。このような要素としては、指示剤または選択剤(例えば、色素、抗生物質、アミノ酸、酵素、基質など)、フィルタ(例えば、炭)、塩、多糖類、イオン、界面活性剤、安定剤などが挙げられる。
【0056】
本発明の特に好ましい実施態様では、上記培養培地は、この培養培地について至適な緩衝能を提供するのに十分な濃度で、1つ以上の緩衝塩、好ましくは炭酸水素ナトリウムを含み得る。
【0057】
本発明の方法によって調製され得る培地補充物の例は、限定することなく、動物血清(例えば、ウシ血清(例えば、胎仔ウシ、新生児ウシおよび子ウシ血清)、ヒト血清、ウマ血清、ブタ血清、サル血清、類人猿血清、ラット血清、マウス血清、ウサギ血清、ヒツジ血清など);規定の置換物(例えば、LipoMAX(登録商標)、OptiMAb(登録商標)、Knock−OutTMSR(各々は、Life Technologies、Inc.;Rockville、Marylandから入手可能)、ホルモン(ステロイドホルモン(例えば、コルチコステロイド、エストロゲン、アンドロゲン(例えば、テストステロン))およびペプチドホルモン(例えば、インスリン)を含む)、サイトカイン(増殖因子(例えば、EGF、aFGF、bFGF、HGF、IGF−1、IGF−2、NGFなど)、インターロイキン、コロニー刺激因子、インターフェロンなどを包含する)、神経伝達物質、脂質(リン脂質、スフィンゴ脂質、脂肪酸、ExcyteTM、コレステロールなどを含む)、付着因子(細胞外基質要素(例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンなどのような細胞外基質要素を含む)、および動物、植物、または細菌の組織、細胞、器官、または腺の抽出物または加水分解物(例えば、ウシ脳下垂体抽出物、ウシ脳抽出物、ニワトリ胚抽出物、ウシ胚抽出物、トリ肉抽出物、アキレス腱およびその抽出物)など)を包含する。本発明の方法によって生成され得る他の培地補充物は、種々のタンパク質(例えば、血清アルブミン、特にウシまたはヒト血清アルブミン;免疫グロブリンおよびそれらのフラグメントまたは複合体;アプロチニン;ヘモグロビン;ヘミンもしくはヘマチン;酵素(例えば、トリプシン、コラゲナーゼ、パンクレアチニン(pancreatinin)、またはジスパーゼ(dispase));リポタンパク質;フェチュイン(fetuin);フェリチン;など)、これは、天然または組換えであり得る);ビタミン;アミノ酸およびそれらの改変体(L−グルタミンおよびシスチンを包含するが、これらに限定されない)、酵素補因子;多糖類;塩またはイオン(微量元素(例えば、モリブデン、バナジウム、コバルト、マンガン、セレンなどの塩またはイオン)を包含する);および当業者に十分に知られるインビトロで細胞を培養する際に有用である他の補充物および組成物を包含する。本発明の方法により生成される好ましい培地補充物は、動物または哺乳動物(例えば、ヒト、魚類、ウシ、ブタ、ウマ、サル、類人猿、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、昆虫など)由来補充物、成分または産物を包含する。これらの血清および他の培地補充物は、市販されている(例えば、Life Technologies、Inc.、Rockville、Maryland、およびSigma Cell Culture、St.Louis、Missouriから);あるいは、上記の血清および他の培地補充物は、それらの天然供給源から単離され得るか、または当業者に慣用の当該分野で公知の方法によって組換え生成され得る(例えば、Freshney、R.I.、Culture of Animal Cells、New York:Alan R.Liss、Inc.、74〜78頁(1983)およびその中の引用文献を参照のこと;また、Harlow、E.およびLane、D.、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、New York:Cold Spring Harbor Laboratory、116〜120頁(1988)を参照のこと)。
【0058】
本発明に従って調製され得る緩衝液の例としては、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)処方物、Tris緩衝化生理食塩水(TBS)処方物、HEPES緩衝化生理食塩水(HBS)処方物、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、ダルベッコPBS(DPBS)、アール平衡塩類溶液、Puck’s平衡塩類溶液、Murashige and Skoog植物基本塩類溶液、Keller’s海洋植物基本塩類溶液、Provasoli’s海洋植物基本塩類溶液およびKao and Michayluk’s基本塩類溶液が挙げられるが、これらに限定されない。これらの緩衝液(これらは、市販されている)ならびに多くの他の一般に使用される緩衝液についての処方は、当該分野で周知であり、そして例えば、GIBCO/BRL Catalogue and Reference Guide(Life Technologies,Inc.;Rockville、Maryland)、DIFCO Manual(DIFCO;Norwood、Massachusetts)、およびSigma Cell Culture Catalogues for animal and plant cell culture(Sigma;St.Louis,Missouri)において見出され得る。
【0059】
本発明に従って調製され得る薬学的組成物または溶液の例としては、薬学的特性を有する任意の組成物が挙げられる。このような特性としては、例えば、痛み、感染、熱、神経障害、循環系障害、呼吸障害、栄養障害、代謝障害などを処置、緩和、または減弱する能力が挙げられる。このような薬学的組成物は、1つ以上の薬物、化学物質、タンパク質、抗体またはそのフラグメント、抗生物質など、あるいはそれらの組み合わせを含み得る。このような薬学的組成物はさらに、1つ以上の薬学的キャリアを含み得、これは、脂質、アジュバント、安定剤などを含む。本発明はまた、臨床溶液、特に非経口栄養摂取のために使用される臨床溶液、電解質平衡または静脈内(IV)溶液に関する。このような臨床溶液は、例えば、Baxter catalog(Deerfield、IL)において見出され得、そしてリンゲル溶液、リンゲル乳酸加溶液、5%デキストロース水溶液、通常生理食塩水(0.9% NaCl)、低張生理食塩水(0.45% NaCl)5%デキストロース生理食塩水溶液などを包含し得るが、これらに限定されない。臨床溶液はさらに、上記の1つ以上の薬学的組成物またはそれらの成分を含み得る。
【0060】
(薬学的組成物および臨床的組成物、細胞培養試薬、培地、培地補充物、培地サブグループおよび緩衝液の調製)
本発明の方法は、上記のサンプルを含む任意のサンプルの調製を提供する。好ましくは、このようなサンプルは、粉末化形態で調製される。薬学的組成物および臨床的組成物、細胞培養試薬、培地、補充物、サブグループ、および緩衝液を含むこれらの粉末化サンプルは、好ましくは、流動床技術(すなわち、凝集(agglomeration))を用いておよび/または噴霧乾燥を介して調製されるが、他の技術も、このようなサンプルから外因性因子または毒素を減弱させるために使用され得る。このような他の技術は、当業者によって認識される。
【0061】
本発明の1つの局面において、サンプル(例えば、栄養培地、培地補充物、培地サブグループおよび緩衝液)は、培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝液の溶液を凝集させるために、流動床技術を用いて調製されて、それによりそれらの乾燥粉末化形態が生成される。流動床技術は、出発物質から特徴(特に、例えば、溶解度)が変化した凝集粉末を生成するプロセスである。本発明に従う技術の適用の際、粉末を、空気、気体、または気体の組み合わせの上方に動くカラム中に懸濁する。同時に、必要に応じて、制御されたかつ規定された量の液体を粉末流に注入し、湿った状態の粉末を生成し;次いで、必要に応じて、加熱または穏やかな加熱を用いて、材料を乾燥させ、凝集粉末を生成する。本発明の局面において、注入される液体は、毒素および/または外因性因子の減弱、不活性化、または排除を容易にする気体または化合物(生物学的もしくは化学的)を含み得る。
【0062】
流動床技術によって粒子状材料を生成および/または加工するための装置は、市販されており(例えば、Niro,Inc./Aeromatic−Fielder;Columbia、Maryland)、そして、例えば、米国特許第3,771,237号;同第4,885,848号;同第5,133,137号;同第5,357,688号;および同第5,392,531号;ならびにWO 95/13867に記載されている(前出の特許および特許出願の全ての開示は、それらの全体が、本明細書中に参考として援用されている)。このような装置は、種々の材料の凝集粉末を調製するために使用されている。これら材料には、乳清(米国特許第5,006,204号)、酸味加工(acidulated)肉乳濁液(米国特許第4,511,592号)、プロテアーゼ(米国特許第4,689,297号)および他のタンパク質(DK167090 B1)、ならびに炭酸水素ナトリウム(米国特許第5,325,606号)が含まれる。
【0063】
本発明のこの局面に従って、流動床技術は、バルク凝集サンプル(特に、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝液)を調製するために使用され得る。本発明のこの局面の実施において、乾燥粉末化サンプル(例えば、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝液、あるいはそれらの混合物もしくは組み合わせ)を流動床装置中に配置し、そしてその中で凝集させる。粉末化した栄養培地(特に、粉末化した細胞培養培地)、粉末化した培地補充物(特に、粉末化した動物血清)、および粉末化した緩衝液(特に、粉末化した緩衝化生理食塩水)は、商業供給源(Life Technologies,Inc.;Rockville、Maryland)から予備作製されて得られ得る。あるいは、粉末化したサンプル(栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝液を含む)は、上記の処方物に従って、個々の要素または要素のセットを混合することにより作製され得る。このような処方物は、その不安定性に起因して粉末化した栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝液処方物中に代表的には存在しない要素、例えば、血清、L−グルタミン、シスチン、インスリン、トランスフェリン、脂質(特に、リン脂質、スフィンゴ脂質、ExcyteTM、脂肪酸、およびコレステロール)、特定の炭水化物、サイトカイン(特に、増殖因子、インターロイキン、コロニー刺激因子、およびインターフェロン)、神経伝達物質および緩衝液(特に炭酸水素ナトリウム))を含み得る。L−グルタミンが処方物に添加される場合、二価カチオン(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)との複合体の形態であり得る(米国特許第5,474,931号を参照のこと)。別の例では、2つ以上の粉末化要素が混合され得、次いで凝集されて、複合体混合物(例えば、培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝液)を生成し得る。例えば、粉末化した栄養培地は、約0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、2.5%、5%、7.5%、10%、15%、20%、25%、50%またはそれ以上の血清濃度(粉末化した培地の百分率としてw/w)の粉末化した血清(例えば、以下に記載のように噴霧乾燥することによって生成される)(例えば、FBS)と混合され得る;次いで、得られる粉末化した培地−血清混合物が凝集され、凝集した培地−血清複合体を生成し得る。この複合体は、再構成溶媒中に容易に溶解し、そして従ってさらなる補充を行うことなく使用に即する。
【0064】
一旦、粉末化したサンプル(例えば、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝液)(あるいはそれらの混合物もしくは組み合わせ)を流動床装置中に配置すると、これを、気体、好ましくは、大気または不活性気体(例えば、窒素)の上方に動くカラム中に懸濁させ、そして1つ以上の粒子フィルタに通過させる。あるいは、使用される気体、または気体の組み合わせは、サンプル中に存在する外因性因子または毒素に対して毒性または阻害性であり得る。ほとんどの乾燥粉末、凝集されない栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝液は、比較的小さな粒子サイズであるので、本発明で使用されるべきフィルタは、空気は素通りさせるが粉末を保持するメッシュ篩であるべきである。これは、例えば、約1〜100メッシュ、好ましくは、約2〜50メッシュ、より好ましくは、約2.5〜35メッシュ、なおより好ましくは、約3〜20メッシュまたは約3.5〜15メッシュ、そして最も好ましくは、約4〜6メッシュのフィルタである。他のフィルタは、必要性および用いるサンプルに依存して使用され得、そして当業者によって決定され得る。
【0065】
流動床チャンバー内に配置した後、次いで、栄養培地、培地補充物、培地サブグループまたは緩衝剤(または、これらの混合物もしくは組み合わせ)を含有する乾燥粉末サンプルを、必要に応じて、湿らせた粉末を生成するために、好ましくは流動床装置の噴霧ノズルを用いて、規定されかつ制御された量の溶媒をこの粉末に注射することによって処理する。本発明の用途に好ましい溶媒は、目的のサンプルに適合性である任意の溶媒である。別の局面において、使用される溶媒は、サンプル中の外来性因子または毒素の含有量を減弱させることを補助するための、このような因子または毒素に対して毒性または阻害性の溶媒であり得る。「適合性」とは、この溶媒が、サンプルの物理的特性または性能特性において不可逆性の有害な変化(例えば、栄養培地の栄養成分の分解もしくは凝集化、または緩衝液のイオン特性における変化、または薬学的組成物の薬学的特性における変化)を誘導しないことを意味する。本発明の用途に特に好ましい溶媒は、水(最も詳細には、蒸留水および/または脱イオン水)、血清(詳細には、ウシ血清またはヒト血清、そして最も詳細には、ウシ胎仔血清または子ウシ血清)、有機溶媒(詳細には、ジメチルスルホキシド、アセトン、エタノールなど)、血液由来産物、組織、器官、腺、または細胞の抽出物または加水分解産物、動物由来産物あるいは任意の他の培地補充物または成分、緩衝剤、酸もしくは塩基(pH調整剤)(これらはいずれも、1つ以上のさらなる成分(例えば、塩、ポリサッカリド、イオン、界面活性剤、安定剤など)を含み得る)である。
【0066】
本発明のいくつかの局面において、最終産物において必要とされる成分の濃度に起因して、ボールミリング(ball−milling)のような他の方法によってはこの産物中に最適には組込まれ得ない1つ以上の成分を、溶媒中に含ませることが、所望され得るかまたは有利であり得る。1つのそのような局面において、成分は、粉末化されたサンプル(例えば、培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤)の凝塊形成に溶媒を使用する前に、所望される濃度にて溶媒中に溶解、懸濁、コロイド化、またはさもなけれは導入され得る。本発明の局面に従ってこの溶媒中に有利に組込まれ得る成分としては、1つ以上の上記の血清、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、脂質、炭水化物、接着因子、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、酵素補因子、動物由来産物、血液由来産物、組織、器官、腺、または細胞の抽出物または加水分解産物、ポリサッカリド、塩、イオン、緩衝剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
溶媒は、凝集形成される粉末化サンプルの質量に依存した容量で、乾燥粉末中に導入されるべきである。サンプル(例えば、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤)500グラムあたりの溶媒の好ましい容量は、約5〜100ml、より好ましくは約10〜50ml、さらにより好ましくは約25〜50ml、そして最も好ましくは約35mlである。サンプル(例えば、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤)500グラムあたりの好ましい溶媒導入速度は、約1〜10ml/分、好ましくは約2〜8ml/分、より好ましくは約4〜8ml/分、そして最も好ましくは約6ml/分の速度である。いくつかの場合において、約1分間溶媒を添加する工程と、次いで約1分間溶媒を添加しない工程(装置のチャンバー内の粉末を乾燥させる工程)との間を循環させて、凝集形成の間の粉末の凝集を防ぐことが所望され得る。
【0068】
本来の凝集形成されていない粉末の粒子サイズよりも大きい粒子サイズによって証明されるように、および凝集形成された粉末における微細な粉塵粒子の欠如によって証明されるように、一旦、粉末の凝集形成が完了すると、この粉末は、装置内で実質的に乾燥され、そして好ましくは完全に乾燥される。凝集形成された粉末の乾燥のための好ましい装置温度は、約50〜80℃、より好ましくは約55〜75℃、そして最も好ましくは約60〜65℃であり;粉末は、500グラムの粉末あたり好ましくは約3〜10分間、そして最も好ましくは約5〜7分間、装置内で乾燥される。
【0069】
本発明の別の局面において、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤を含有する粉末化サンプルは、噴霧乾燥によって調製され得る。本発明のこの局面において、その液状形態において目的のサンプルは、噴霧乾燥装置内に配置され;次いで、この液体は、粉末が形成されるまで適切な条件下で(例えば、制御された温度および湿度の下で)装置内のチャンバーにこの溶液を噴霧することによって、対応する粉末に変換される。いくつかの場合、2つ以上の上記のサンプルもしくは成分、またはそれらの組み合わせの複合混合物を噴霧乾燥させることが、所望され得るか、または有利であり得る。例えば、所望の濃度にて動物血清を含有する液体栄養培地、または所望の濃度にて栄養培地成分を含有する液体動物血清を混合し得、次いで、本発明の方法に従って、噴霧乾燥された粉末として調製され得る。
【0070】
代表的な噴霧乾燥アプローチにおいて、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤を含む液体サンプルは、装置内に吸引され、そして回転型噴霧器またはノズル型噴霧器を用いて、スプレーへと噴霧される。次いで、得られる噴霧化された液体スプレーを、気体(例えば、窒素、またはより好ましくは大気)と混合し、そしてエバポレーションおよび粉末化産物の生成を促進するのに十分な条件下にある乾燥チャンバー内に噴霧する。本発明の好ましい局面において、このような条件は、チャンバー内の温度および湿度の電子的制御を含み得、その結果、産物の最終乾燥が促進される。このような条件下で、液体中の溶媒は、制御された様式でエバポレートされ、それによって目的のサンプル(例えば、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤)の自由に流動する(free−flowing)粒子(すなわち、粉末)を形成する。次いで、粉末は、乾燥チャンバーから排出され、サイクロン遠心分離系かまたは1枚以上のフィルター(例えば、流動床調製について上記されたメッシュふるい)を通して通過され、そしてさらなる加工(例えば、包装、滅菌など)のために収集される。いくつかの適用(特に、熱感受性の処方物またはサンプルから粉末を生成する場合)において、噴霧乾燥装置は、乾燥チャンバー内に組み込まれた流動床装置と組み合わされ得る。これは、上記のような凝集形成溶媒を、噴霧乾燥された粉末に導入して、凝集形成された噴霧乾燥粉末サンプルを形成することを可能にする。このようなプロセスの組み合わせは、サンプル中の毒素または外来性因子の除去または不活化を容易にし得る。
【0071】
噴霧乾燥によって液体物質から粒子状物質を生成するための装置(組込まれた流動床技術を有しても、または有さなくとも)は、市販され(例えば、Niro,Inc./Aeromatic−Fielder;Columbia,Marylandから)、そして例えば、Niro,Inc./Aeromatic−Fielderの技術パンフレット「噴霧乾燥(Spray Drying)」、「噴霧乾燥による粉末化された薬品(Powdered Pharmaceuticals by Spray Drying)」、および「乾燥の際の新たな選択(Fresh Options in Drying)」(これらの開示は、その全体において本明細書中で参考として援用される)に記載される。この製造業者に従って、このような装置は、種々の物質(日用品、鎮痛剤、抗生物質、ワクチン、ビタミン、酵母、植物性タンパク質、卵、化学物質、食品調味料等を含む)の粉末を調製するために使用されている。本発明において、噴霧乾燥は、粉末化された培地補充物(例えば、血清、そして詳細には、上記の血清、最も詳細には、ヒト血清およびウシ血清(例えば、ウシ胎仔血清および子ウシ血清))の調製のために、特に有用であることが見い出された。これはまた、粉末化された薬学的または臨床的な組成物または溶液を調製することに特に適している。
【0072】
本発明のこの局面の実施において、液体サンプル(例えば、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、緩衝剤、またはpH調整剤)は、約25〜100g/分の噴霧速度にて、好ましくは、約30〜90g/分、約35〜85g/分、約40〜80g/分、約45〜75g/分、約50〜75g/分、55〜70g/分、または約60〜65g/分の噴霧速度にて、そしてより好ましくは、約65g/分で、噴霧器を通してチャンバー内に噴霧されるべきである。乾燥チャンバー内の入口の大気温度は、好ましくは、約100〜300℃、より好ましくは約150〜250℃、そして最も好ましくは約200℃に設定される。これは、約50〜100℃、より好ましくは約60〜80℃、そして最も好ましくは約70℃の出口温度を伴う。噴霧器内の空気の流れは、好ましくは、約50〜100kg/時間、より好ましくは約75〜90kg/時間、そして最も好ましくは約80.0kg/時間で、約1〜5バール、より好ましくは約2〜3バール、そして最も好ましくは約2.0バールのノズル圧にて設定される。これらの条件および設定は、噴霧乾燥による種々の栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤粉末の生成について、特に、上記の粉末化された血清の生成に好適であることが本発明において見出された。乾燥に続いて、噴霧乾燥された粉末化サンプルは(例えば、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤)は、サイクロン系または1枚以上のフィルターを通して(好ましくは、流動床について上記されたフィルター)、乾燥チャンバー内に収集され得る。
【0073】
この調製後には、上記の流動床方法および/または噴霧乾燥方法(または、それらの組み合わせ)によって調製された本発明の粉末は、出発の粉末または液体から物理的特徴が改変されている。例えば、加工されていない粉末または凍結乾燥された粉末は、しばしば、使用される場合にかなりの粉塵を生成し、そして種々の溶媒中に不十分にかまたは緩徐に溶解する。一方、凝集形成された粉末またはいくつかの噴霧乾燥された粉末は、実質的に粉塵がなく、および/または迅速に溶解する。代表的に、本発明の溶液の粉末化された培地、培地補充物、培地サブグループ、緩衝剤、および薬学的または臨床的組成物は、ボールミリングのような標準的技術によって調製されるそれらの粉末化された対応物よりも、低減された粉塵形成およびより迅速な溶解の両方を示す。実質的に粉塵がないが、増強された溶解を示さないかもしれないいくつかの粉末において、この粉末は、粉末の迅速な機械的溶媒和によって(例えば、機械的インペラーを使用して)、または粉末上に溶媒ミストをまず与えることによって(例えば、噴霧溶媒和によって)、迅速に溶解され得る。さらに、本発明に従って、生成された粉末化サンプルは、外来性因子および/または毒素が低減されているか、実質的に低減されているか、または不活化されているかもしくは除去されている。このような試薬は、産業的プロセスまたは生物医学的プロセスにおいて使用され得る細胞を操作または増殖させるための成分を有利に提供し、そして医学分野に重要な薬学的または臨床的な組成物または溶液を提供する。
【0074】
本発明の別の局面において、上記された噴霧乾燥アプローチおよび凝集形成アプローチは、凝集形成された噴霧乾燥サンプル(例えば、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤粉末)を生成するために、組み合わせられ得る。この局面において、噴霧乾燥によって調製された粉末化サンプルは、噴霧乾燥された後に、次いで、得られる産物(例えば、培地補充物、サブグループ、または緩衝剤)の性能および物理学的特徴をさらに改善するために、溶媒(例えば、上記の溶媒)で凝集形成され得る。例えば、動物血清の粉末が、上記のような液体動物血清を噴霧乾燥することによって調製され得、次いで、この噴霧乾燥された血清粉末は、乾燥粉末の栄養培地(噴霧乾燥またはボールミリングのような標準的技術によって調製される)に混合され得る;次いで、この混合された粉末は、上記のように凝集形成され得る。あるいは、噴霧乾燥された栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤粉末は、上記のように凝集形成されてこの粉末の溶解特性が改善され得る。このアプローチは、少ない(約1〜10%)固体含有量を有する液体(例えば、液体の動物血清)を噴霧乾燥する場合に、特に有利であり得る。当業者が理解するように、これらのアプローチは、所望の濃度であるが、凝集形成という上記の利点が得られる濃度にて、粉末化された培地補充物、サブグループ、または緩衝剤に添加するためのストックとして使用される1つ以上の成分(例えば、血清、または他の培地補充物)の大量回分の調製を容易にする。さらに、このアプローチは、特定の培地補充物(特に動物血清)に伴う問題であり得るロット毎の変動性を低減させ得、そして本発明に従って、毒素および/または外来性因子の減弱を促進する。
【0075】
次いで、凝集形成された粉末化サンプルおよび/または噴霧乾燥された粉末化サンプル(特に、上記のように調製される栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、緩衝剤、または薬学的もしく臨床的な組成物もしくは溶液)は、以下に記載されるような最適な滅菌の前または後に、例えば、バイアル、チューブ、瓶、バッグ、小袋、箱、カートン、ドラムなどのような容器内に包装され得る。本発明の1つのそのような局面において、培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤を含む粉末化サンプルは、コンパクトな真空包装形態(例えば、「ブリック包装(brick−pack)」として当該分野で公知の真空包装形態(ここで、粉末は、排気されながらシールされる可撓性容器(例えば、バッグまたは小袋)内に包装される))に包装され得る。他のそのような包装は、包装内に直接溶媒(例えば、水、血清、培地、または他の水性もしくは有機性の溶媒もしくは溶液)を導入して粉末の迅速な溶解の促進を可能にする1つ以上のアクセスポート(例えば、弁、ルーアーロックポート(luer−lock port)など)を、有利に備え得る。関連する局面において、この包装は、2つ以上の隣接区画を備え得、これらの区画のうちの1つ以上は本発明の乾燥粉末サンプル(例えば、培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤)の1つ以上を含み得、そして他のこれらの区画のうちの1つ以上は、1つ以上の無菌であり得る水性または有機性の溶媒を含み得る。この局面において、次いで乾燥粉末は、理想的には無菌性を損なうことなく、区画間の障壁を単純に除去または破壊し、粉末および溶媒の混合を可能にすることによって溶解され得、その結果、粉末は溶解され、そして所望の濃度で栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤のような滅菌サンプルを生成する。
【0076】
本発明の培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤を含む包装されたサンプルは、好ましくは、長期間そして上述のような温度にて、代表的には約1〜24ヶ月間約30℃未満の温度にて、より好ましくは約20℃〜25℃未満の温度にて、使用まで保存される。伝統的な粉末化された培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤とは異なり、低減された温度(例えば、0〜4℃)での保存は、本発明の方法によって調製された培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤の性能特性を維持するためには必要でないかもしれない。もちろん、包装がまた1つ以上の溶媒を含む分離された区画を備える本発明の局面について、他の保存温度が必要とされ得る;これらの場合、最適な保存条件は、当業者に公知である溶媒の保存必要条件によって指示される。
【0077】
(滅菌および包装)
本発明はまた、本発明の栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤を含むサンプルを、滅菌または実質的に滅菌するためのさらなる方法を提供する。そのようなさらなる方法としては、濾過、熱滅菌、照射、または他の化学的方法もしくは物理的方法が挙げられ得る。好ましくは、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤(好ましくは、噴霧乾燥および/または凝集形成によって上記のように調製された粉末)は、滅菌に好都合な条件下で照射され得る。好ましくは、この照射は、バルクで(すなわち、サンプルの包装の後に)達成され、そして最も好ましくは本発明のバルクの包装されたサンプル(例えば、培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤)を、粉末化サンプル中に存在し得る細菌、真菌、胞子、またはウイルスが不活化される(すなわち、複製が妨害される)ような条件下でγ線源に暴露することによって達成される。あるいは、照射は、包装の前に、サンプル(例えば、培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤)を、γ線源または紫外光源に暴露することによって達成され得る。あるいは、本発明のサンプル(例えば、培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤)は、加熱処理(栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤のようなサンプルのサブグループまたは成分が、熱に安定である場合)によって(例えば、瞬間殺菌またはオートクレーブによって)滅菌され得る。当業者によって理解されるように、滅菌に必要とされる照射線量または加熱の用量、および暴露の時間は、滅菌されるべき物質のかさに依存する。
【0078】
本発明の特に好ましい局面において、バルクサンプル(例えば、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤)(これらは、好ましくは粉末化形態である)は、総線量約10〜100キログレイ(kGy)で、好ましくは総線量約15〜75kGy、約15〜50kGy、約15〜40kGy、約20〜40kGy、または約25〜45kGyで、より好ましくは総線量約20〜30kGyで、そして最も好ましくは総線量約25〜35kGyで、約1時間〜約7日間、より好ましくは約1時間〜約5日間、1時間〜約3日間、約1〜24時間、または約1〜5時間、そして最も好ましくは約1〜3時間、γ照射源に暴露される(「通常線量率」)。あるいは、バルクサンプルは、約1〜5日間の期間にわたり約25〜100kGyの「低線量率」の総累積用量で滅菌され得る。照射の間、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤(これらは、好ましくは粉末化形態にある)を含むサンプルは、好ましくは、約−70℃〜ほぼ室温(約20〜25℃)の温度で、最も好ましくは、約−70℃で保存される。もちろん、当業者は、放射線量および暴露時間は、照射される物質のバルクおよび/または質量に依存して調整され得ることを理解する;照射または加熱処理によるバルクの粉末化物質の滅菌に必要とされる、代表的な最適照射線量、暴露時間、および保存温度は、当該分野において周知である。
【0079】
滅菌後に、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤を含む包装されていないサンプルは、例えば、サンプルを滅菌チューブ、バイアル、瓶、バッグ、小袋、箱、カートン、ドラムなどのような容器内に、または上記のような真空包装もしくは組込み型粉末/溶媒包装に包装することによって、無菌条件下で包装され得る。次いで、滅菌包装されたサンプル(例えば、培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤)は、上記のように、長期間保存され得る。
【0080】
(薬学的組成物および臨床的組成物、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、ならびに緩衝剤の使用)
従って、本発明は、外来性因子および/または毒素が減衰されているか、実質的に減衰されているか、不活化されているかまたは除去されている、薬学的および臨床的な組成物/溶液、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤(これらは、好ましくは粉末化される)を含むサンプルを提供する。粉末化形態において、このようなサンプルは、再水和溶媒中で容易に可溶性であり、そして実質的に粉塵を含まない。使用のためには、本発明によって生成されたサンプルは、溶媒和したサンプル(例えば、培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤)の特定の使用のために必要とされる所望の濃度条件、栄養素条件、電解質条件、イオン条件、およびpH条件を生成するのに十分な溶媒の容量において、水和され得る(すなわち、「再構成され得る」)。この再構成は、本発明において特に促進される。なぜなら、凍結乾燥サンプルまたはボールミリングサンプル(例えば、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤)とは異なり、この粉末化サンプルは迅速に溶液中に入り、そして粉塵も不溶性物質も、あったとしてもほとんど生成しない。
【0081】
本発明の粉末化サンプルを再構成する際の使用について好ましい溶媒としては、例えば、水(最も詳細には、蒸留水および/または脱イオン水)、血清(詳細には、ウシ血清またはヒト血清、そして最も詳細には、ウシ胎仔血清または子ウシ血清)、有機溶媒(詳細には、ジメチルスルホキシド、アセトン、エタノールなど)、またはそれらの任意の組み合わせ(これらのうちのいずれも、1つ以上のさらなる成分(例えば、塩、ポリサッカリド、イオン、界面活性剤、安定剤など)を含み得る)のような上記の溶媒が挙げられる。例えば、粉末化された培地補充物(例えば、動物血清)および緩衝剤は、ストック溶液の調製のためまたは保存のために、好ましくは、1×最終濃度に、または必要に応じてより高い濃度(例えば、2×、2.5×、5×、10×、20×、25×、50×、100×、500×、1000×など)に水中に再構成される。あるいは、粉末化培養培地は、水中の培地補充物(例えば、血清(例えば、FBS))の溶液(例えば、培地補充物が、水中で容量/容量にて0.5%、1%、2%、2.5%、5%、7.5%、10%、15%、20%、25%、50%、またはそれ以上の濃度で存在する溶液)中に再構成され得る。
【0082】
粉末化サンプル(例えば、栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤)の再構成は、再構成されたサンプルの無菌性を維持するために、好ましくは無菌条件下で達成されるが、再構成されたサンプルは、好ましくは、濾過または当該分野で周知の他の滅菌方法によって、再水和の後に、さらに滅菌され得る。それらの再構成後に、培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤、または他のサンプルは、約10℃未満の温度にて、好ましくは約0〜4℃の温度にて、使用まで保存されるべきである。
【0083】
再構成された栄養培地、培地補充物、培地サブグループ、および緩衝剤が使用されて、当業者に周知の標準的な細胞培養技術に従って、細胞を培養または操作し得る。このような技術において、培養されるべき細胞は、細胞の培養または操作に有利な条件(例えば、制御された温度条件、湿度条件、照明条件、および大気条件)下で、再構成された本発明の培地、培地補充物、培地サブグループ、または緩衝剤と接触される。このような方法による培養に特に従順な細胞としては、細菌細胞、魚類細胞、酵母細胞、植物細胞および動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。そのような細菌細胞、酵母細胞、植物細胞および動物細胞は、公知の培養物寄託機関(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(Rockville、Maryland)、Invitrogen(La Jolla、California)および当業者に周知の他の寄託機関から商業的に利用可能である。これらの方法による培養のために好ましい動物細胞としては、昆虫細胞(最も好ましくは、Drosophila細胞、Spodoptera細胞、およびTrichoplusa細胞)、線虫細胞(最も好ましくは、C.elegans細胞)、および哺乳動物細胞(CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、AE−1細胞、SP2/0細胞、L5.1細胞、ハイブリドーマ細胞、および最も好ましくはヒト細胞(例えば、293細胞、PerC6細胞、およびHeLa細胞)が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのうちのいずれも、体細胞、生殖細胞、正常細胞、疾患細胞、形質転換細胞、変異細胞、幹細胞、前駆細胞、または胚細胞であり得、そしてこれらのうちのいずれも、足場依存性細胞または足場非依存性(すなわち、「懸濁」)細胞であり得る。
【0084】
(細胞)
別の局面において、本発明は、1つ以上の細胞を含む乾燥細胞粉末組成物を生成する方法、およびこれらの方法によって生成される乾燥細胞粉末に関する。従って、本発明は、本発明の方法による1つ以上の細胞を含むサンプル由来の外来性因子または毒素を減弱することに関する。従って、これらの方法は、細胞を含む組成物を生成し(ここで、この細胞は保存されている)、そして使用するまでの長期間の間所蔵され得、そしてこのような細胞組成物は、外来性因子および毒素が減弱または排除されている。この場合において、本発明の方法は、細胞保存の伝統的方法(例えば、凍結)のいくつかの欠点(例えば、低温保存装置の必要および細胞に対して毒性であり得る特定の低温保存剤(cryopreservative)の使用)を克服する。
【0085】
本発明のこの局面に従う方法は、1以上の工程を包含し得る。例えば、1つのこのような方法は、目的の1つ以上の細胞を得る工程、水溶液中にこの1つ以上の細胞を懸濁することによって水性細胞懸濁液を形成する工程、および外来性因子または毒素を減弱するかまたは実質的に減弱するために十分な条件下で(このような細胞の生存率に実質的に影響を与えることなく)、好ましくは、乾燥した粉末(好ましくは、噴霧乾燥による)の生成物に有利な条件下でこの細胞懸濁液を実質的に乾燥することにより、本発明に従ってこの細胞を処理する工程を包含し得る。これらの方法は、1つ以上の細胞を、1つ以上の安定化化合物または保存化合物(例えば、ポリサッカライド(トレハロースを含むがこれに限定されない))と接触させる工程をさらに包含し得る。この細胞懸濁液を形成するために使用される水溶液は、好ましくは、1つ以上の成分(例えば、上記の栄養培地、培地補充物、培地部分群、塩または緩衝液の1つ以上)を含む。好ましくは、この細胞懸濁液を形成するために使用される水溶液は、乾燥される細胞型について最適な張度および浸透圧重量モル濃度、または実質的に最適な張度および浸透圧重量モル濃度に調整される。この水溶液は、必要に応じて、1つ以上のさらなる成分(例えば、1つ以上のポリサッカライド、イオン、界面活性剤、安定化化合物または保存化合物(トレハロースを含む)など)を含み得る。1つ以上の細胞が1つ以上の安定化化合物または保存化合物と接触される本発明の局面において、この安定化化合物または保存化合物は、使用される水溶液に組み込まれて水性細胞懸濁液を形成する。あるいは、この安定化化合物または保存化合物は、乾燥細胞粉末の形成後に、この粉末上に噴霧され得るか、または凝集され得る。
【0086】
一旦、乾燥細胞粉末が上記の方法によって形成されると、この粉末は、必要に応じて、乾燥粉末の凝集のための上記の方法に従って溶媒と共に凝集され得る。乾燥される細胞型と適合性の任意の溶媒(水、栄養培地溶液、栄養培地補充物溶液(血清、特にウシ血清(最も好ましくは、ウシ胎仔血清および仔ウシ血清)およびヒト血清を含む)、緩衝液、塩溶液、ならびにそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない)を使用して、乾燥細胞粉末を凝集させ得る。別の局面において、本発明の細胞粉末は、1つ以上の乾燥培地、培地補充物、培地部分群または緩衝液(これらは、本発明の方法によるか、または標準的技術によって生成される)と混合され得、そしてそのような混合物は、必要に応じて、本発明の方法によって溶媒と共に凝集され得る。
【0087】
種々の細胞が、本発明の方法に従って乾燥され得る。この細胞には、原核生物(例えば、細菌)細胞および真核生物(例えば、真菌(特に、酵母)、動物(特に哺乳動物(ヒトを含む))および植物)細胞、特にこれらの細胞、組織、器官、器官系、ならびに上記の生物が挙げられる。一旦、乾燥した細胞が生成されると、これらは、長期間の間(例えば、数ヶ月から数年)、好ましくは使用するまで、約0〜30℃、4〜25℃、10〜25℃、または20〜25℃の温度(すなわち、「室温」)で、無菌的にパッケージングされ得、そして貯蔵され得る。生細胞の培養物を調製する際の使用について、この乾燥細胞粉末は、水性溶媒(例えば、滅菌水、緩衝液、培地補充物、培養培地、またはそれらの組み合わせ)と共に、1つ以上の生存可能な細胞を含む細胞懸濁液へ無菌的に再構成され得、そして当該分野で公知の標準的プロトコルに従って培養され得る。あるいは、この乾燥細胞粉末は、例えば、動物の免疫のために使用される免疫原の調製のために、細胞の生存率が重要でない細胞懸濁液へ再構成され得る。このような場合において、この乾燥細胞粉末は、標準的な免疫プロトコルと適合性である任意の溶媒(例えば、1つ以上の界面活性剤、アジュバントなどを含み得る水溶性溶媒または有機溶媒)を用いて再構成され得る。
【0088】
(キット)
本発明によって提供される薬学的組成物または臨床的組成物、細胞培養試薬、培地、培地補充物、培地部分群、緩衝液および細胞は、理想的には、キットの調製に適切である。このようなキットは、1つ以上の容器(例えば、バイアル、試験管、ビン、パッケージ、小袋、ドラムなど)を含み得る。各々の容器は、上記の1つ以上の本発明の薬学的組成物または臨床的組成物、細胞培養試薬、栄養培地、培地補充物、培地部分群、緩衝液または細胞、あるいはそれらの組み合わせを含み得る。このような薬学的組成物または臨床的組成物、細胞培養試薬、栄養培地、培地補充物、培地部分群、緩衝液または細胞は、水和されてもよいし、あるいは脱水されてもよいが、代表的には、本発明の方法によって生成される調製物は脱水される。このような調製物は、本発明の方法に従って、滅菌され得るか、または実質的に滅菌され得る。
【0089】
第1の容器は、例えば、本発明の栄養培地、培地補充物、培地部分群または緩衝液、あるいはそれらの任意の成分または部分群(例えば、上記の本発明の任意の栄養培地、培地補充物、培地部分群または緩衝液)を含み得る。さらなる栄養培地、緩衝液、抽出物、補充物、成分または部分群が、本発明のキット中のさらなる容器に含まれ得る。このキットはまた、1つ以上のさらなる容器、1つ以上の細胞(例えば、上記の細菌細胞、酵母細胞、植物細胞または動物細胞)を含み得る。このような細胞は、凍結乾燥、乾燥、凍結または別の方法で保存され得るか、あるいは本発明の方法(例えば、噴霧乾燥)によって処理され得る。加えて、本発明のキットはさらに、例えば、必要に応じて1つ以上の二価カチオンと複合体化されるL−グルタミンを含む、1つ以上のさらなる容器を含み得る(米国特許第5、474、931号を参照のこと)。このキットはさらに、1つ以上のさらなる容器を含み得、この容器は、乾燥粉末の薬学的組成物もしくは臨床的組成物、細胞培養試薬、栄養培地、培地補充物、培地部分群および/または緩衝液を再構成する際に使用されるべき溶媒を含む;このような溶媒は、水性(緩衝液、生理食塩水、栄養培地溶液、栄養培地補充物溶液(血清(例えば、ウシ血清(特に、ウシ胎仔血清および仔ウシ血清)またはヒト血清を含む))、またはそれらの組み合わせ)あるいは有機性であり得る。本発明の栄養培地、緩衝液、薬学的組成物、抽出物、補充物、成分、部分群などを有する混合剤に適合性ではない他の成分は、1つ以上のさらなる容器中に含まれて、不適合性の成分の混合を回避し得る。このようなキットはまた、トランスフェクション試薬(例えば、脂質またはカチオン性脂質)を含み得る。
【0090】
所定のキットに含まれる容器の数および型は、調製されるべき薬学的組成物または臨床的組成物、培地、培地補充物、培地部分群または緩衝液の所望の生成物あるいは型に依存して変更され得る。代表的に、このキットは、特定の薬学的組成物または臨床的組成物、培地、培地補充物、培地部分群または緩衝液を作製するために必要な成分または補充物を含む別個の容器を含む。しかし、さらなる容器が本発明のキットに含まれ得、その結果、異なる薬学的組成物または臨床的組成物、培地、培地補充物、培地部分群または緩衝液が、異なる量の種々の成分、補充物、部分群、緩衝液、溶媒などを混合することによって調製されて、異なる薬学的組成物または臨床的組成物、培地、培地補充物、培地部分群または緩衝液の処方物を作製し得る。
【0091】
本明細書中に記載される方法および適用に対する他の適切な改変および適応は自明であり、本発明の範囲またはその任意の実施態様から逸脱することなくなされ得ることは、当業者に容易に明らかである。ここで、本発明は詳細に記載されているので、本発明は、以下の実施例を参照することによってより明確に理解される。以下の実施例は、例示の目的のみのために本明細書に含まれ、そして本発明の限定を意図しない。
【実施例】
【0092】
(実施例1:代表的な乾燥粉末培地(DPM)の凝集)
1.研究室用卓上流動床装置(bench top laboratory fluid bed apparatus)(Strea−1;Niro,Inc./Aeromatic−Fielder;Columbia,Maryland)を用いる;100〜500gのDPMをチャンバ内に配置する。装置を配置し、そしてレバーを使用してユニットを密封する
2.空気流を開始してDPMを流動化(浮揚)させる。伝統的なDPMは、比較的微細な粒子サイズであるので、設定4〜6が必要である。微細DPM粒子を捕獲するために真空デバイスのスイッチを入れ、上部のフィルターを通過させる。下部の篩目および上部のフィルターに関して、流動化した粉末がチャンバ内のおよそ中央にあることを確認する
3.まず、圧縮したエアラインにおけるプラッギングにより、次いで水源に接続されるポンプを開始することによって、圧入(注入)デバイス(噴霧ユニット)を開始する。この目標は、1分間あたり約6mlの水を許容することである(RPMおよび管の直径に基づく所定の任意の流速は、既知でなければならない)。DPMの凝集を防止するために、あるいは、水を約1分間添加し、次いで約1分間停止して、このチャンバで乾燥が生じることを可能にする
4.作動中にフィルターがDPMでコートされ、その結果ブローバックが粉末を移動させない場合、全てのフィルターが明らかに送風されるまでファンの速度を設定2〜3へ落とす。次いで、作動するファンの速度を以前のレベルまで上昇させる
5.約35mlの水を各500gのDPMに添加した場合に、凝集を完了する。この容量は、DPM処方物に依存して変化する。比較的大きな凝集顆粒の下方流動により、チャンバ(底)において作業が終了に向っていることが理解される。目に見えてより大きな粒子および微細塵の非存在は、このプロセスが完了したことを示す
6.凝集したDPMを、5〜7分間、徹底的に乾燥させる
7.作動の終了において、フィルターを4回吹き飛ばす
8.ユニットを止め、水管を止め、そして凝集したDPMを気密容器に回収する。
【0093】
これらのアプローチは、プロセススケールまたは生成物スケールの流体床装置を使用する場合に調整されるべきである。例えば、MP−1(Niro,Inc./Aeromatic−Fielder;Columbia,Maryland)装置を使用して、以下のプロトコルによって満足な結果を生じた。
【0094】
1.ユニットを密封する(ガスケットを膨張させる)
2.予熱するためにファンを開始する
3.吸気温度が設定点と等しい時点でファンを停止する
4.ガスケットを収縮させ、材料を負荷し、ガスケットを膨張させる
工程5〜8は、1分以内に全て達成されるべきである:
5.バッチを開始する
6.ファンを開始し、そしてフィルタークリーニングのスイッチを入れる
7.ノズルの噴霧空気圧の%出力を設定する(真空についてノズルをチェックする)
8.液体供給線を接続する
9.画面上でポンプを開始し、そしてポンプでのポンプを開始する
10.バッチ時間を初期化する
11.設定速度で全液体を噴霧する(26g/分)。2kgの粉末につき約250mlの水を使用する
12.全液体が添加される時点でポンプを停止させ、そして画面上でポンプを停止する
13.乾燥値に対して空気流を減弱する(例えば、100から60へ)
14.生成物が所望の温度(約40℃)に到達した時点で、「初期設定」画面に行き、そして本発明の「バッチ時間」よりも2〜3分間長い「バッチ期間」を設定する
15.バッチを停止する
16.ガスケットを収縮させる。
【0095】
(代表的な器具の設定(ベンチスケール、プロセススケールおよび生成スケール装置について)):
乾燥温度:60〜65℃
排気温度:約33℃
流出圧力:5bar
噴霧圧力:1.5〜2.0bar
空気流:60〜120CMH
ブローバックドウェル:噴霧後は1、噴霧中は2
ファンの能力:作動の開始時は5、凝集が明らかになった後は6
マグナへリックス(magnahelics):フィルター抵抗150〜250、多孔制御プレートの抵抗約50、空気容量:50未満。
【0096】
(実施例2:DPMの構成要素としての炭酸水素ナトリウムの添加)
炭酸水素ナトリウムは、代表的に、ボールミルまたは凍結乾燥による製造の間、DPMに添加されない。これは、乾燥した培地の貯蔵の際に遭遇される潜在的な気体発生(off−gasing)および緩衝能の複雑化に起因する。従って、この標準的な生成プロセスは、この培地の再構成に際して、炭酸水素ナトリウムの添加、およびpHの調整を必要とする。しかし、本発明の方法を用いると、これらのさらなる工程を、製造の間に炭酸水素ナトリウム(または任意の緩衝塩)をこの粉末培地に直接的に添加することによって除去し得る。
【0097】
DPM内に炭酸水素ナトリウム(または任意の緩衝塩)を含ませる2つの方法が存在する:(a)注入デバイスを介して、および(b)DPMの一部として。
【0098】
(a)注入デバイス
代表的な哺乳動物細胞培養培地に添加することが一般的に必要な炭酸水素ナトリウムの可溶性およびその量のために、相当に大容量の液体が、粉末へ注入される必要がある(上述した35mlの水よりも有意に多い)。これは今なお起こり得ることであり、そして実際、例えば血清を用いる場合と同様に、DPMに添加されるために比較的大容量の液体を必要とする別の成分を添加する場合に、好ましくあり得る。この場合において、連続的に液体を添加し、DPMがデバイス内に凝集されるようにならないことを保証するために多数回、乾燥などをさせることに注意をしなければならない。約1分間、1分あたり6mlを使用し、次いでさらに2分間乾燥させることが概して適切である。
【0099】
添加する液体の量を、以下のように決定する:水中で炭酸水素ナトリウムを75g/Lで調製する。例:凝集されるべきチャンバ中で250gのDPM。10.0gのDPMが1Lの1×液体培地に必要であると仮定する。従って、250gは、25Lの1×液体培地に相当する。液体の各Lについて、(例えば)2gの炭酸水素ナトリウムの必要性を仮定する。これは、50gの炭酸水素ナトリウムが必要であることを意味する。ここで、炭酸水疎ナトリウムは75g/Lであるので、0.67Lの炭酸水素ナトリウムを、250gのDPMに添加しなければならない。
【0100】
炭酸水素ナトリウム溶液は、サイクル間のより長い乾燥時間を必要とすることを除いて、上記の「代表的DPMの凝集」のためのプロセスと同様に添加される。なぜなら、炭酸水素ナトリウム溶液のpHは、培地成分を分解し得る約8.00であるからである。非常に迅速であり、サイクル間で十分な時間徹底的に炭酸水素塩粉末を乾燥させることなく、炭酸水素ナトリウム溶液の添加によってこの粉末が決して「浸漬」されないことが、重要である。また、最終的な水分含有量を可能な限り低く有することが重要であるので、より長い流体乾燥時間が必要である。なぜなら、水分は、粉末がフォイルポケットにある場合に緩衝能および「枕状(pillow)」処方物の喪失を生じる二酸化炭素ガスの遊離を生じるからである。
【0101】
(b)DPMの一部として
炭酸水素ナトリウムを、流体床処理の前に他の培地成分について同様の様式でDPMへ粉砕する。しかし、この粉砕プロセスにおいては、炭酸水素塩を最終成分として添加すべきである。他の培地成分は全て従来どおり粉砕すべきであり、次いで、この粉砕を停止し、そして炭酸水素塩を最後に添加し、適切なサイズの粒子に達するまでさらに粉砕する。全ての粉砕後処理(容器への配置など)は、操作的に可能な程度に低い湿度制御環境設定(約20〜40%)においてなされることが、重要である。次いで、流体床処理を、粉砕後可能な限り速やかに実施するべきである(同日に処理しない場合は、DPMを二重包装し、そして密封した容器内に水分吸収剤と共に配置しなければならない)。
【0102】
流体床プロセス自体を、水注入(約6ml/分)後の乾燥時間がさらに延長されるべき(1分間の水の注入および2分間の乾燥サイクル)であることを除いて、上記に与えられた例と同様に(500gのDPMあたり35mlの使用を伴って)行う。DPMの色は、フェノールレッドの存在に起因して深赤色−薄紫色であるが、淡橙色であり得ることに留意する。DPMは本質的に水分を含有しないので、これは、分解条件を表さず、そして流体床処理が必須であることの理由である。
【0103】
(実施例3:緩衝塩(例えば、炭酸水素ナトリウム)を含み、そして処方され、その結果、再構成された(1×)培地のpHは使用者が努力することなく自動的に所望のpHである、DPM)
上記のように、全ての市販されている哺乳動物細胞培養物の粉末培地は、1×液体を調製する場合に、1つ以上の緩衝塩(例えば、炭酸水素ナトリウム)の添加、次いで、pHの調整を必要とする。その結果、この溶液は、適切なpHである。しかし、本発明の方法を使用して、炭酸水素ナトリウムの添加(上記の実施例2のように)およびpH調整の必要性の両方を除去し得る。本発明のこの局面において、流体床技術を使用して、1つ以上の緩衝塩を含む乾燥粉末培地に酸または塩基(その必要性に依存する)を導入する。本発明のこの局面に従って、任意の緩衝塩またはそれらの組み合わせ、および任意の酸または塩基を、最終的な再構成細胞培養培地における所望のpHおよび緩衝能に依存して、使用し得る。
【0104】
炭酸水素ナトリウムを粉末としてDPMに直接添加する場合、末端の使用者は、すでに炭酸水素塩(上記を参照のこと)を含み、そして適切なpHである溶液を得るために、単に水を添加し、そして混合することが可能である。まず、どの程度のpH調整を必要とするかを決定することが必要である。(1)ビーカー中に1Lの水を入れる。DPMをその液体に添加し、そして混合する(1Lあたりの添加量は、その粉末についての特異性によって与えられる。例えば、10g/L、13g/L)。この場合において、炭酸水素ナトリウムの重量もまた、1リットルあたりにどのくらい添加するかを決定する際に考慮し得る。(2)粉末を溶解した後、5N HClを添加して、この溶液を所望のpHに調整する。その量を記録する。(3)この数を1N HClの量に変換する。凝集される全粉末の調節のためにどの程度1N HClの量が必要であるか算出する(例:1Lの1×培地Aを、未調整のpH7.9からpH7.2へ調整するためには、5mlの1N HClが必要である)。この1Lの1×培地は、例えば、13.0gのDPMを表す。従って、13.0gのDPMの各々について、5mlの1N HClが必要である。本発明者らが250gのDPMのpHを調整することを望む場合、250÷13.0=19.2×5mlすなわち96mlの1N HClが、その粉末を自動的にpH調整するために、それに添加される必要がある。
【0105】
ここで、この1N HClは、DPMに添加されなければならない。そのための最良の方法は、注入デバイスを使用し、水に代えて1N HClを添加することである。一般に、このプロトコルは、以下の例外はあるが上記と類似する:(1)1N HClは、炭酸水素ナトリウムを含む培地にゆっくりと添加されなければならない。あまりにもすばやく添加されると、二酸化炭素を追い払って最適以下の緩衝能を生じ得る。一般に必要とされる1N HClの容量のために、数回の1分オン、2分オフのサイクルが必要である。乾燥粉末状態は、各サイクルの終りに得られなければならない、その結果、動的な系は、DPMが流体プロセスの特徴を有するが現実的には乾燥した粉末である場合に、存在する(驚くことに、この系にある頻繁なエバポレーションに起因して、粉末が全ての時間で本質的に乾燥したままであるにもかかわらず、大部分の色は、HClを粉末に添加するので、深赤紫から淡黄−橙色へ変化する)。HClの総量は、本質的に中性pHを生じるように計算されるので、この粉末は、流体床が適切に調整される限り、決して実際に「酸性」条件に曝露されない(上記を参照のこと;操作の間のチャンバ内の粉末粒子の配置)。この粉末の全てがこの系(すなわち、連続的に上昇し、凝集し、そして沈降する)を通じて移動し、そしてこのチャンバ内に不感帯を有しないことを確かめることが、重要である。
【0106】
一旦、この粉末を作動後に収集すると、それを水に添加し得、それが適切な「乾燥」パッケージングおよび位置に保たれる限り何時でも再構成し得る。pHの調整は必要ない。従って、本発明は、自動的にpHを調整する乾燥粉末の培地を提供する。ここで、この乾燥粉末の培地を再構成することによって作製される液体培地のpHは、pHの調整を必要としない。
【0107】
(実施例4:DPM自体内への血清、アルブミン、Hy−Soyなどのような高分子量補充物の包含)
これまでは、血清を含む乾燥粉末培地は商業的に入手可能ではなかった。本発明の方法(流体床および噴霧乾燥技術を介する)を用いることにより、本発明者らは、機能性(細胞培養)が維持される様式で粉末に血清を添加することに成功した。
【0108】
流体床装置の注入デバイスは、血清および濃縮アルブミンで霧を形成し得る。本発明者らは、DPMに添加され、この様式で乾燥された血清が機能するか否かを調べることを試みた。
【0109】
血清を添加する手順:(1)塊状化するべき標準的DPMの重量を決定する。(2)このことから、特定の粉末についてのg/Lに基づいて、そのgの粉末が作製する1×培地の容積を算出する。(3)所定の割合レベルの補充物で必要とされる血清の容積を算出する(例えば、10g/Lで使用される100gの粉末は、10L等量の粉末を生じる)。5%血清補充において、500mlの血清が、注入デバイスにより添加されることが要求される。
【0110】
血清添加のためのプロトコル:血清およびアルブミンは非常に粘稠性である、ノズルスプレーパターンでは、小滴サイズおよびパターンをチェックしなければならない。粉末に添加される溶液中においてサンプルチューブを用いて、カードボードもしくは他の背景幕(backdrop)に対して試験噴霧する。均質性および小さな小滴サイズについてチェックする。「霧」にならなければ、0.5バールだけ噴霧圧を増大させ、再び試験する。十分な圧力により微細な霧状パターンを生じるまで、これを行う。
【0111】
細胞培養適用における使用のために、1×培地の1Lあたり使用される血清−DPMの重量/mlを知ることが必要である。これを行うために、乾燥の間に血清を保持してバイアルまたは試験管の重量を正確に量る。一定(既知)量の血清を各バイアルに入れる。次いで、バイアルをSpeed Vacまたは凍結乾燥器に入れる。乾燥するまで水を取り除く。次いで、凍結乾燥した血清を含有するバイアルの重量を再び量る。血清の重量を計算し、そして本来の容積の1mlあたりとして表す。次いで、1Lあたりで使用するための血清で塊状化したDPMの重量は、所定のレベルでの標準的なDPM「使用」重量+血清重量である。
【0112】
例えば、培地A(DPM)が10g/lで使用されると仮定すると、血清補充物は5% v/vであるべきである。これは、標準的なDPMの重量に加えて、血清重量が培地1Lあたりに添加される5%=50mlに等しいことを意味する。血清粉末が0.06g/mlであると仮定すると、粉末化血清=50×0.06g/L=3gである。従って、1Lの水に添加される血清含有DPMの重量は、1Lあたり、血清粉末の重量(3g)+標準的DPMの重量(10g)=13g/Lである。
【0113】
(実施例5:DPMを製造する場合の製粉技術(ミクロンサイズの粒子にまで構成成分を砕く高エネルギー投入システム)の低減または排除)
上記のように、乾燥粉末化培地は、代表的には、製粉プロセス(これは、骨が折れることであり、かつ多くの問題がある)によって製造される。本発明の方法は、流体床技術を使用する乾燥粉末化培地の生成を提供し、この方法により、これらの労働および技術的な制約を克服する。
【0114】
(A.外部デバイスでの最初のブレンド、次なる流体床処理)
通常に製粉されたDPMを、炭酸水素ナトリウム(供給業者から直接受け取ったとき、さらなるボールミルは必要ない)とブレンドする。[2g/L等量の炭酸水素ナトリウムを含むRPMI 1640]。この混合物を、20分間ブレンドする。次いで、この粉末を流体床チャンバー内に配置し、そして炭酸水素塩含有培地または自動pH制御つきの炭酸水素塩含有培地を流体化させる。
【0115】
(B.流体床チャンバー中への直接ブレンド、次なる塊状化)
炭酸水素ナトリウムを、製粉DPMとともに直接チャンバーに入れ、そして短時間ブレンド(混合)して、次いで塊状化する。これは、別々のユニットでのブレンドを排除する。
【0116】
(C.ボールミルプロセスの完全排除)
DPM化学製品の全てを流体床チャンバーに直接添加し、そして予め混合し、次いで、塊状化するか、むしろ、粗粒子化剤(coarser)、「固着剤(sticker)」などの化学製品のいくつかを、回転式グラインダーにおいて短時間粉砕処理し、次いで、ブレンドおよび最終的な塊状化のために流体床に入れる。
【0117】
(実施例6:この同じDPM内に上記の特性の全てを有するための方法)
本発明者らは、「規格品」の炭酸水素ナトリウムの添加と、製粉DPMおよび自動pH制御とを組み合わせた。本発明者らはまた、血清とDPMとを組み合わせた。
【0118】
血清と、自動pH制御つきの炭酸水素ナトリウム含有DPMとを組み合わせるために、1つのプロトコルは、以下である:
1.炭酸水素ナトリウム(粉末、供給業者から)をDPM(製粉されたか、または粉砕されている)に添加する
2.成分をブレンドする(外部ユニットもしくは流体床のいずれかで混合する)
3.別々の容器中で、1LのDPM(炭酸水素塩含有)を水(1×)で再構成し、溶液のpHを7.5に合わせるために必要な1N HClまたは1N NaOHの量を決定する。リットルベースでは、塊状化される粉末の質量(従ってLの当量)を知ることにより、上記で算出した量で塊状化する総粉末についての1N HClまたは1N NaOHの量を計算する。流体床デバイス(注入ノズル)を介してこの量を添加する(DPMは「流体」ではないが、粉末が中性にできる限り近いことが重要である。しかし血清を添加するときに炭酸水素ナトリウムが遊離するような酸性pHではない。なぜなら、このプロセスには水分が関与しているからである。pH7.6以上では、炭酸水素ナトリウムの濃縮溶液はCO2ガスを放出しないが、低pHでは放出する)
4.塊状化するべき補充物割合およびグラム(g)に基づいて、血清を添加(塊状化の拡大)
5.上記(3)からの同じ1Lの1×液体を使用して、pHを所望のpH(例えば、7.2)に調整するために必要な1N HClまたは1N NaOHの量を決定する。この情報を用いて、血清ととも塊状化させた粉末の重量(g/Lの詳細は知っているとして)について使用される量を計算する。この量を流体デバイス(注入ノズル)により添加する
6.γ線照射を用いて粉末化培地を滅菌する。
【0119】
同様の方法において、血清含有DPMを、特定の量のDPMと特定の量の粉末化血清(例えば、以下の実施例8において記載される噴霧乾燥により調製された)とを合わせることにより生成し得、次いで、混合物を塊状化する。例えば、10%粉末化FBS含有培地の調製のために、55.5gの粉末化FBSを500gの粉末化培養培地に添加し得、そしてこの粉末を攪拌により十分に混合する。次いで、この混合物を上記のように水塊状化し、そして再構成の際に、自動pH調整されうる10%FBS含有培養培地を得る。
【0120】
(実施例7:流体床加工による100%血清粉末の生成(噴霧乾燥をシミュレートするため))
(方法論)
1)本発明者らは、卓上型実験用流体床装置(Strea−1)を使用した。粉末化血清の生成については、チャンバー中に何も入れなかった。レバーを用いてこのユニットを密閉した
2)血清を注入デバイス(噴霧ユニット)により添加した。血清をチャンバーに添加したとき、水が蒸発し、そして血清がチャンバー内で迅速に粉末形成するほど十分に乾燥するように空気流を十分に増大させ、そして血清流を十分遅くした。チャンバー内にどこにも水分または流体コーティングは存在しなかった
3)ポンプ速度を、チャンバーへ約1ml/分になるように設定した
4)空気流の速度を約8〜9の設定に設定した
5)断続的にフィルターを洗浄するために、ファンスピードを約2〜3に減弱させた。これは、5〜10分毎にルーチン的に行った。(8〜9の空気流設定は非常に高いために、フィルターは粉末を吹き飛ばさず、それら自体がきれいにならない)
6)1回のフィルターの吹き飛ばしの後に、ファン速度を前のレベルまで増大させ、そしてポンプのスイッチを入れた。(一旦これらのパラメーターを設定したら、このポンプを、示されたようにフィルターをクリーニングするとき以外は連続運転した)
7)血清液体の全てがアグロメレーター(agglomerator)に添加された後、最後の乾燥を5分にわたり行った
8)次いで、フィルターを吹き飛ばして、可能な限り多くの粉末を採取し、そして機器の電源を切り、そして生成物を取り出した。粉末化血清を密閉容器(air−tight container)に入れ、そし遮光した。
【0121】
(代表的な機器設定)
乾燥温度:60〜65℃
出口空気温度:約33℃
吹き出し圧:5バール
噴霧圧:2.0〜2.5バール
ブローバックドエル(blow back dwell):2(噴霧と噴霧との間)
ファンの能力:運転の間中8〜9
マグナヘリックス(magnahelics):フィルター抵抗(resistance)150〜250、穿孔制御プレートの抵抗約50、空気容積50未満。
【0122】
FBSの塊状化がタンパク質構造または分布に影響を及ぼすか否かを決定するために、塊状化したFBSおよび液体FBSのサンプルをSDS−PAGEで泳動し、タンパク質について染色し、デンシトメトリーでスキャンした。図1に示されるように、本発明の方法に従って調製した塊状化したFBS(図1A)は、液体FBS(図1B)で観察されたプロファイルとほぼ同じタンパク質プロファイルを示した。これらの結果は、本発明の方法により乾燥粉末化されたFBSの制御された生成は、血清の主要成分の構造または分布には実質的に影響を及ぼさないことを示す。
【0123】
FBSの塊状化が細胞増殖および継代を支持する能力に影響を及ぼすか否かを決定するために、SP2/0細胞を、2%塊状化(「乾燥」)FBSまたは2%液体FBSのいずれかを含有するDMEMにプレートし、そして増殖速度および継代回復を試験した。図2Aに示されるように、塊状化FBSを含有する培地にプレートした細胞は、液体FBSを含有する培地にプレートした細胞と同様の増殖速度論を示した。同様に、塊状化FBSを含有する培地中の細胞は、継代から回復し、液体FBSを含有する培地中の細胞と実際的に同じ増殖速度であった(図2B)。まとめると、これらの結果は、培養細胞の増殖および継代を支持するにおいて、本発明の塊状化FBSが液体FBSとほぼ等価に機能することを示す。
【0124】
(実施例8:噴霧乾燥による100%血清粉末の生成)
流体床加工の代替として、噴霧乾燥技術による乾燥粉末化血清の生成実行可能性(feasibility)を試験した。3フィートの直径の実験用噴霧乾燥機(Mobile Minor Spray Dryer;NIRO,Columbia,Maryland)を使用して、粉末化血清を調製した。液体FBSを、噴霧乾燥機に吸引し、そしてエアディスペンサーの中央に配置されたSchlick 940ノズルを通して霧状にした。そして乾燥空気をこの装置の上部のエアディスペンサーを通して噴霧器に導入した。噴霧乾燥を以下の条件で行った:入口空気温度=200℃;出口空気温度=70℃、ノズルの噴霧空気圧=2バール;空気流=80.0kg/時間;噴霧速度=65g/分。これらの方法の開発の間に、60℃という最初の出口空気温度を使用した;しかしこの温度では低すぎることが分かり、そして噴霧速度は、約70℃の出口温度を達成するためのレベルに調製しなおし、これが最適であることが分かった。噴霧乾燥の後に、粉末化血清を、装置のサイクロンで収集し、そして処理空気を、装置内を再循環させる前に、排気フィルターを通して濾過した。
【0125】
製造後、粉末化血清を、同じ供給ロット由来の液体FBSと比較して、その物理学的特性に関して特徴づけた。製造ロット(サンプル「A」および「B」)の異なる段階から採取したサンプルを、エンドトキシンを含まない蒸留水(Life Technologies,Inc.)中に60.44g/Lの濃度で再構成し、そしてエンドトキシンのレベルについてはLimulus Amoebocyte Lysate試験(Life Technologies,Inc.)を使用して試験し、ヘモグロビンレベルについては(525nmでの吸光度を分光光度計で測定することにより)、そしてUV/Vis分光光度計により試験した。結果を表1、図3Aおよび3Bに示す。
【0126】
【表3】

表1に示されるように、粉末化FBSは、粉末化FBSの生成についての供給源物質として働く液体FBSのエンドトキシンレベルおよびヘモグロビンレベルと同様のレベルを示した。さらに、生成プロセスの異なる段階から採取したサンプルは、ほぼ同一のエンドトキシンレベルおよびヘモグロビンレベルを示した。これは、本発明の方法が製品ロットにわたりほぼ均質な、物理学的に一貫性を有する材料の生成を生じることを示す。粉末化FBSおよび液体FBSのサンプルがUV/可視光分光光度計により試験された場合(図3)、粉末化FBSについて観察された微量物質(trace)(図3A)は、供給源液体FBS(図3B)について得られたものとは区別不可能であった。まとめると、これらの結果は、本発明の噴霧乾燥法により調製された血清粉末が、この粉末が調製された液体血清の物理学的特性とほぼ同じ物理学的特性を有することを示す。上記の実施例7の物理学的特性と合わせて考えると(例えば、図1を参照のこと)、これらの結果は、本発明により提供される方法が供給源液体血清の物理学的特性とは変わらない物理学的特性を有する粉末化血清の生成を生じることを実証する。予測外なことに、実施例18に示されるように、血清中のエンドトキシンレベルは噴霧乾燥工程により減弱されることが見出された。ここでこのような減弱が検出されなかったことは、サンプル中に存在するエンドトキシンの低レベルおよび/またはアッセイの感受性が原因であるかもしれない。
【0127】
(実施例9:自動的にpH調整した粉末化培養培地の生成)
炭酸水素ナトリウムが粉末化培地に決して含められない1つの理由は、たとえ空気中にある水分であっても、任意の水分が、パウチ内に酸性状況を生じ得ることであり、これはCO2ガスの遊離を生じる。このパウチは膨らみ、そして「枕」とよばれる状態を生じる。流体床加工により、装置内の湿度は、プロセスの終了前に、本質的に無視できるレベルまで減弱される。本発明者らは、炭酸水素ナトリウム含有RPMI 1640の粉末化培地を作製したが、「枕」形成の証拠は認められなかった。
【0128】
pH調整粉末化培地を作製するために、pH調整化学薬品(通常はHClまたはNaOH)を粉末に添加して、水に添加する際に、pHを約7.0〜7.4にすることが必要である。一旦炭酸水素ナトリウムが粉末に添加されると、多くの粉末化培地は中性の塩基性側にある水で再構成され、そしてHCl添加が必要である。HClを炭酸水素ナトリウム含有培地に添加することは、問題があると予測される。しかし、添加された液体(この場合は5N HCl)は、流体床装置内部で湿らせた状態もしくは「液体」状態を生じないので、炭酸水素ナトリウムはCO2ガスを発生せず、その緩衝化能は十分に残っている。このことを、pH滴定実験により本研究において試験した。2つの別個の実験において(図4Aおよび4B)、等量の酸は、炭酸水素ナトリウムが再構成の時点で液体に添加された場合、塊状化培地および自動pH調整塊状化培地のpHを、標準的な培地のpHと同じ量だけ低減させることが見出された。これらの結果は、塊状化に続くpH調整および塊状化プロセスの間のpH調整を伴う塊状化の両方が等しく十分に機能して、有意な緩衝化能を有する粉末化培養培地を生成することを示す。
【0129】
(実施例10:培養培地の溶解速度に対する塊状化の効果)
培養培地の溶解速度に対するその培地の塊状化の効果を試験するために、Opti−MEMITMまたはDMEMのサンプルを水またはFBSで塊状化させた(Opti−MEM Iについては2%のみ;DMEMについては、2%または10%)。塊状化した培地の水での再構成の際に、その塊状化Opti−MEM Iの時間溶解は、標準的な粉末化Opti−MEM Iの溶解よりはるかに迅速に生じた(図5A);結果は、水塊状化Opti−MEM IおよびFBS塊状化Opti−MEM Iについて同一であった。しかし、興味深いことに、水塊状化DMEMは、標準的な粉末化DMEMよりはるかに迅速に水に溶解したが、FBS塊状化DMEMはそうではなかった(図5B)。
【0130】
塊状化粉末化培地の開放構造(open structure)(伝統的な粉末化培地とは対照的に)に起因して、毛管現象により水が粉末粒子の全てに非常に接近する。これは、粉末「ボール」の出現を妨げる。この粉末ボールは、大部分の標準的な粉末化培地の再構成の際に観察される厄介な問題であり、これにより溶解時間が長くなる。より迅速な溶解に加え、塊状化培地は、粉塵化(dusting)の減弱もまた実証した。これらの結果は、水塊状化培養培地およびいくつかのFBS塊状化培養培地が、伝統的な粉末化培養培地よりはるかに迅速に溶解し、かつあまり粉塵化しないことを示す。
【0131】
(実施例11:再構成された塊状化培養培地における細胞増殖および継代培養)
培養培地の多くの使用には、高分子量タンパク質(例えば、血清またはアルブミン)の添加が必要である。これらの分子は、溶液の形態であり得、アルブミンの場合には粉末でさえあり得る。しかし、粉末化培地を確実に均質性にするために、これらのタンパク質は、通常、粉末としてはではなく、大量の粉末化培地を液体培地へと再構成した後の液体として、添加される。これは、いくらか不便である。なぜなら、例えば、血清は経時的に能力を維持するために冷凍庫中で保存しなければならないからである。このことは、血清を無菌的に培地に添加しなければならずこのことにより夾雑の機会が増大するために、費用および不便さが加わる。血清を添加した後に濾過が行われる場合、別の加工工程が必要とされる。従って、粉末化培地と一体化した一部として血清を提供しうることは有利である。
【0132】
従って、培養培地を水で塊状化するか、または種々の濃度のFBSで塊状化した。FBSを、上記に概説されるように、高蒸発率で空気懸濁した乾燥粉末化培地に注入することにより粉末化培地に添加した。血清補充のレベルはOpti−MEM I培地中2%、およびDMEM中2%または10%であった。次いで、これらの培地における種々の細胞株の増殖および継代の結果を評価した。
【0133】
図6に示されるように、SP2/0細胞は、水またはFBSのいずれかで塊状化したOpti−MEM I中で増殖させた場合(図6A)、従来の培養条件下(液体血清を水で再構成した粉末化培地に添加した)で増殖させた細胞と比較して、同様な増殖速度を示した。2%FBSを補充した水塊状化DMEMおよびFBS塊状化DMEM中で培養したSP2/0細胞で、同様の結果が観察され(図6B)、そして10%FBSを補充した水塊状化DMEMおよびFBS塊状化DMEM中で培養したSP2/0細胞(図7A)、AE−1細胞(図7B)およびL5.1細胞(図7C)でも観察された。さらに、SP2/0細胞は、水塊状化Opti−MEMおよび2%FBSを補充したDMEM中で培養した場合(それぞれ、図8Aおよび8B)、10%FBSを補充した水塊状化DMEMおよびFBS塊状化DMEM中で培養したSP2/0細胞、AE−1細胞およびL5.1細胞で観察されたもの(それぞれ、図9A、9B、および9C)ならびに5%FBSを補充した水塊状化DMEM中で培養したSP2/0細胞(図10)と、ほぼ同様な継代からの回復率を示した。さらに、SP2/0細胞は、5%FBSを補充した標準的液体DMEMにおいて示されたように、大きなバッチで生成された水塊状化培地および炭酸水素ナトリウムを含有する自動的にpH調整する粉末化DMEMにおいて同一な継代特性を示した。
【0134】
まとめて、これらの結果は、培養培地補充物(例えば、動物血清(例えば、FBS))が培養培地へ直接塊状化され得、そしてこのようにして塊状化の間の培養培地の補充物が、種々の培養細胞の増殖および継代の最適な支持を提供する培養培地を生成することを示す。さらに、これらの結果は、炭酸水素ナトリウムを含む、本発明の自動的にpHを調整する培地を含む本発明の培養培地粉末が、大きなバッチで首尾よく生成され得ることを示す。
【0135】
(実施例12:噴霧乾燥した血清粉末を補充した培養培地中での細胞増殖)
実施例7に示される実験に付随するものとして、AE−1細胞およびSP2/0細胞を、実施例8において記載されるように調製した2%もしくは10%のいずれかの噴霧乾燥したFBSを含むか、または2%もしくは10%の液状FBSを含むDMEMにプレートし、そして細胞の増殖速度および継代回収を試験した。細胞を、三連の25cm2フラスコに、10mlの培地中1×105細胞/mlの密度で接種した。生存細胞密度を3〜7日目に決定し、そして各細胞株を2回試験した。結果を図11〜13に示す。
【0136】
図11に示されるように、粉末化FBSを含む培地中で培養したAE−1細胞は、標準的な液状FBSを含む培地中で培養された細胞に対して類似の増殖速度論を示した。予測されるように、これらの細胞は、2%FBSを含む培地中においてよりも、10%FBSを含む培養培地中において、より高い密度にまでのより迅速な増殖を示し、そして約4日でピーク増殖を示した。同様の速度論が、2つの別々の実験について観察され(図11Aおよび11B)、このことは、これらの結果が再現可能であることを示した。類似の結果が、2つの実験(ここで、SP2/0細胞の増殖速度は、粉末化FBSまたは液状FBSを含む培地中で測定された)(図12Aおよび12B)で得られた。さらに、5%の粉末化FBSを含む培地中で培養されたAE−1細胞は、液状FBSを含む培地中の細胞と同じ増殖速度で継代から回収された(図13)。
【0137】
これらの結果は、本発明の噴霧乾燥方法によって調製された粉末化FBSが、培養細胞の増殖および継代を支持する際に、液状FBSとほぼ等価に機能することを示す。実施例7および8とともに、これらの結果は、本発明の方法が、流動床技術または噴霧乾燥技術によって、液状FBSとほぼ同一の物理学的特徴および機能特徴を示す粉末化FBSを生成するために使用され得ることを示す。
【0138】
(実施例13:集塊した培地の機能に対する照射の効果)
近年、バイオプロダクションのため、特にバイオテクノロジー産業において使用される培地および培地成分(補充物を含む)の生物学的純度についての関心が上昇している。γ照射は、代表的には熱または毒性ガスへの曝露による滅菌に耐性ではない特定の液体および粉末に対して良好に作用することが公知である滅菌手順である。従って、水またはFBSで集塊した培養培地のサンプルを、25kGyでのコバルト源を用いて数日間までγ照射し、そして種々の細胞型の増殖速度を試験した。
【0139】
1セットの実験において、SP2/0細胞を、種々の培地に1×105細胞/mlで接種し、そして37℃にて培養した。種々の間隔で、サンプルを滅菌的に得て、そして細胞カウントをCoulterカウンティングによって決定し、そして生存率をトリパンブルー除外法によって決定した。培地を、十分な粉末化培地を溶解し、1Lの水中の1×溶液を作製し、攪拌し、そして0.22μmフィルターを通して濾過することによって調製した。結果を、図14中のグラフに示す。グラフ上で「pwdrFBS」と指定されるグラフ上での条件は、粉末化FBS(上記の実施例7または8中のように調製する)を、標準的な粉末化培地または集塊した培地(照射または非照射)のいずれかから調製した再構成した1×培地に添加することをいう。「Irradia.agglom.DMEM+FBS」と指定されるグラフ上の条件は、流動床を使用して、粉末化培地(標準または集塊)にFBSを噴霧し、FBS集塊培地を作製することによって、集塊した培地を作製することをいう。
【0140】
図14に示されるように、標準的な粉末化基本培地および集塊基本培地のγ照射は、これらの培地がSP2/0細胞増殖を支持する能力に悪影響を及ぼさなかった。さらに、照射は、粉末化FBSを含む粉末化培地、および粉末化FBS自体にネガティブに影響を及ぼしたが、この効果は血清濃度が増加するにつれて減少した。
【0141】
これらのγ照射効果をより広範に試験するために、VERO細胞のサンプルを、上記のように従来的に再構成または集塊したVP−SFMTMに接種した。しかし、集塊の間に、集塊チャンバー中の粉末化培地に、この培地に対する伝統的な補充物である上皮増殖因子(EGF)およびクエン酸第2鉄キレートを、噴霧ノズルを通じて添加した。次いで、培地を直接使用するか、または上記のようにγ照射した。細胞を、T−25フラスコ中に3×105細胞/フラスコで接種し、そして37℃にてインキュベートした。細胞カウントおよび生存率を、上記のように実施した。結果を図15に示す。
【0142】
図15において見られるように、VERO細胞は、γ照射された集塊培地中で培養された場合に、γ照射されていない集塊培地中とほぼ等価な増殖および継代の成功を示した。さらに、培地の照射は、その培地中に存在する低レベルの培養補充物EGFおよびクエン酸第2鉄キレートに対して効果を有さなかった。
【0143】
これらの結果は、γ照射が、本発明の方法による多くの大量の集塊化培養培地(血清、EGFまたは他の補充物を含む培地を含む)の調製における滅菌技術として使用され得ることを示す。
【0144】
(実施例14:粉末化培地補充物の機能に対する照射の効果)
滅菌性の培地補充物を生成することにおける本発明の効力を実証するために、凍結乾燥したヒトホロトランスフェリンを、約3日間、−70℃または室温にて、25kGyでのコバルトγ源に曝露することによって照射した。次いで、293細胞を、照射したトランスフェリン、または照射されていないコントロールのトランスフェリン(−70℃または室温にて保存された)を補充した培地中で培養し、そして細胞増殖を、標準的なトランスフェリン含有培養培地、またはトランスフェリンを含まない培地の細胞増殖と比較した。
【0145】
無血清293培地(293SFM)において増殖している中対数期の293細胞を収集し、そして200×gで5分間1回洗浄し、そしてカウントおよび生存率決定のために無トランスフェリン293SFM中に再懸濁した。細胞を、三連の125ml Ehrlenmeyerフラスコに、293SFM(ポジティブコントロール)、無トランスフェリン293SFM(ネガティブコントロール)中、−70℃もしくは室温にて保存された非照射トランスフェリン含有293SFM中、または上記のように調製された照射トランスフェリン含有293SFM中、20mlの容量で、3×105細胞/mlの密度でプレートした。フラスコを、8%CO2/92%空気の雰囲気で平衡化した37℃インキュベーター中で、約125rpmに設定した回転振盪器に置いた。毎日、細胞カウントをCoulter粒子カウンターを用いて決定し、そして生存率を標準的な手順に従ってトリパンブルー除外法によって決定した。これらの細胞が、1フラスコあたり約1.2〜1.7×106の密度に達する場合、各サンプルのフラスコのうちの1つの内容物を収集し、遠心分離し、新しい培地中に再懸濁し、そして3つの新しいフラスコ中に継代した。次いで、前の継代および次の継代の細胞カウントおよび生存率を、上記のように行った。上記の条件下でインキュベートした細胞の連続する4継代を試験した。
【0146】
図16A〜16Dにおいて示されるように、−70℃または室温のいずれかでγ照射されたトランスフェリンを含む培地において培養された細胞は、第1継代(図16A)、第2継代(図16B)、第3継代(図16C)および第4継代(図16D)において、標準的な293 SFM中またはγ照射されていないトランスフェリンを含有する293 SFM中で培養された細胞とほぼ同一の増殖速度論および生存を示した。しかし、無トランスフェリン培地において培養された細胞は、第1継代間に良好に生存した(図16A)が、増殖を停止し、そして継代培養の際に生存率において有意な欠失を示した(図16B)。
【0147】
これらの結果は、γ照射が、本発明の方法において、大量の粉末化培養培地補充物(例えば、トランスフェリン)の調製における滅菌技術として使用され得ることを示す。さらに、これらのデータは、トランスフェリンのような培養培地補充物が、活性の有意な損失を伴わずに、室温にてγ照射され得ることを示す。
【0148】
(実施例15:粉末化血清の生化学的特徴に対する照射の効果)
さらに、血清に対するγ照射の影響を決定するために、噴霧乾燥した粉末FBSのサンプルを、−70℃または室温(RT)にて25kGyで照射し、そして血清中の種々の生化学的構成成分の濃度について商業的に分析した。コントロールとして、照射していない噴霧乾燥したFBSおよび液状FBSのサンプルもまた分析した。結果を表2に示す。
【0149】
【表4】

これらの結果は、γ照射プロセスが、FBSの生化学的構成成分のほとんどの濃度に有意に影響を及ぼさなかったことを示す。これらの結果はまた、噴霧乾燥の際に、FBSの成分のいくつか(アルカリホスファターゼ、ASTおよびLD、ならびに可能性としてはグルコース)が、出発液状FBS中でのそれらの濃度と比較して、濃度の有意な減少を受けることを示す。
【0150】
(実施例16:粉末化血清の機能に対する照射の効果)
乾燥した粉末血清が細胞増殖を支持する能力に対するγ照射の影響を試験するために、種々の条件下で照射した噴霧乾燥化FBSのサンプルを使用して、培養培地を補充し、そして接着細胞および懸濁細胞を、これらの培地中で3継代までの間増殖させた。モデル懸濁細胞として、ハイブリドーマ株SP2/0およびAE−1を使用し、一方で代表的な接着細胞として、VERO培養物およびBHK培養物を使用した。細胞を、上記の実施例14において概説される一般的な手順に従って、試験血清またはコントロール血清(噴霧乾燥したが、照射しなかった)を含む培地中で、3継代までの間培養した。各継代点で、細胞を収集および継代培養し、一方でアリコートを、生存細胞/mlについて上記のようにカウントした。各点での結果を、液状FBSを補充した培地中で得られた生存細胞カウントのパーセンテージとして示した。これを、図17A、17B、17Cおよび17Dに示す。
【0151】
いくつかの結果が、これらの研究結果から導かれ得る。第1に、FBSのγ照射は、噴霧乾燥化FBSが、懸濁細胞および接着細胞の増殖を支持する能力を(ほとんどの細胞株に関して)低減しないようである(各図における、照射データセットを非照射データセットと比較のこと)。すなわち、ほとんどの細胞株に関して、増殖の促進は、照射された血清および非照射血清について類似する。第2に、−70℃で照射した血清は、室温で照射した血清よりも、(おそらくVERO細胞を除いて)細胞増殖を支持する能力においてより良好に機能するようである(図17C)。最終的に、これらの研究の結果は非常に細胞型特異的であり:懸濁細胞(図17Aおよび17B)は、接着細胞よりも噴霧乾燥化FBS(照射および非照射)においてより良好に増殖した(図17Cおよび17D)。
【0152】
これらの結果は、γ照射が、本発明の方法において大量の粉末化血清(例えば、FBS)の調製における滅菌技術として使用され得ることを示す。さらに、上記の実施例14におけるトランスフェリンについて報告されたデータとは異なり、これらのデータは、血清の照射のための至適温度が、その血清が細胞増殖を支持する能力を維持するために、室温未満であるようであることを示唆する。
【0153】
(実施例17:噴霧乾燥によるウイルス力価の減少)
噴霧乾燥技術によってウイルス力価を低減することの実行可能性を試験した。3フィート直径の実験室用噴霧乾燥器(Mobile Minor Spray Dryer,NIRO,Columbia,Maryland)を使用して、粉末化血清を調製した。液状FBSを、既知の濃度でウイルスに関してスパイクした(IBRウイルス@106.5TCID50/mL、REOウイルス@105TCID50/mL、そしてBVDvを天然に夾雑される@a++検出レベル)。ウイルスをスパイクした液状FBSを、噴霧乾燥器に吸引させ、そして空気分散器の中央部に配置したSchlick940ノズルを通して霧状にし、そして乾燥している空気を、その装置の頂部の空気分散器を通してチャンバーに導入した。噴霧乾燥を、以下の条件下で行った:入口空気温度=148℃〜215℃;出口温度=50℃〜80℃;ノズルについての霧状空気圧=1.6〜2.0バール;空気流=80.0kg/時間;噴霧速度=2kg/時間。噴霧乾燥の後、粉末化血清を、装置のサイクロンに回収し、そして処理空気を排出した。
【0154】
生成の後、粉末化血清を、蒸留水との1×液体に再構成した(60gm粉末化血清=1リットルの液状FBS)。この再構成した1×液状噴霧乾燥処理した血清を、ウイルス力価に関して特徴付け、そして以下のウイルス力価検出手順を用いて公知のウイルス濃度での同じウイルスでスパイクしたロット(lot)由来の非処理液状FBSと比較した。アッセイしたウイルスに対して感受性であることが公知の細胞株を用いて、96ウェルプレートの1ウェルあたり1×104細胞をプレートする。アッセイされるべきサンプルを、一連の10倍希釈物から10-10まで希釈する。各希釈のアリコート(0.1ml)を、細胞株を接種したプレートの複製ウェルに添加した。4〜7日後に、各ウェル中の細胞を、細胞変性効果(CPE)について評価する。結果を、Reed,LJおよびMuench,H.(Am.J.Hyg.1938:27:493)の方法を用いて評価し、そして組織培養感染性用量(TCID50/mL)サンプル物質として表す。BVDvを、3継代にわたる細胞培養方法によって、そして最終抗原検出を直接的蛍光アッセイ(9CFR)によって試験する。
【0155】
粉末化FBSの噴霧乾燥処理によるウイルス力価の減少についての結果を、表3、表4、表5および表6に示す。結果:噴霧乾燥プロセスは、少なくとも10-6の総力価低減でIBRウイルスの不活化、少なくとも10-5の総力価低減でREOウイルスの不活化、および++〜ネガティブの天然に夾雑するウイルスのBVDv不活化の不活化において有効であった。組み合わせて、これらの結果は、本発明の噴霧乾燥方法によって調製される血清粉末が、有意に低減されたウイルス力価を有することを示す。これらの結果は、本発明によって提供される方法が、ウイルス力価が10-6減少した粉末化血清の生成を生じることを示す。
【0156】
【表5】

【0157】
【表6】

【0158】
【表7】

【0159】
【表8】

(実施例18:噴霧乾燥による内毒素の減少)
噴霧乾燥技術によって内毒素濃度を低減することの実行可能性を試験した。3フィート直径の実験室用噴霧乾燥器(Mobile Minor Spray Dryer,NIRO,Columbia,Maryland)を使用して、粉末化血清を調製した。液状FBSのロットを、上昇した内毒素レベルに関して同定した。内毒素含有液状FBSを、噴霧乾燥器に吸引させ、そして空気分散器の中央部に配置したSchlick940ノズルを通して霧状にし、そして乾燥している空気を、その装置の頂部の空気分散器を通してチャンバーに導入した。噴霧乾燥を、以下の条件下で行った:入口空気温度=148℃〜215℃;出口温度=50℃〜80℃;ノズルについての霧状空気圧=1.6〜2.0バール;空気流=80.0kg/時間;噴霧速度=2kg/時間。噴霧乾燥の後、粉末化血清を、装置のサイクロンに回収し、そして処理空気を排出した。
【0160】
生成の後、粉末化血清を、蒸留水を用いて1×液体に再構成した(60gm粉末化血清=1リットルの液状FBS)。この再構成した1×液状噴霧乾燥処理した血清の内毒素濃度を決定し、そしてLimulus Amebocyte Lysate(LAL)試験を用いて同じロット由来の非処理液状FBSの内毒素レベルと比較した。簡潔には、LAL試験は、LAL試薬と試験サンプルとを混合し、そして37℃にて60分後、ゲル化について観察することによって行うゲル凝固試験である。一般に、「Pyrogens,Endotoxins,LAL Testing,Depyrogenation」(J.Robinson編)Marcel Dekker,Inc.,New Yorkを参照のこと。ポジティブ応答(ゲル形成)は、感受性標識した試薬(the reagents labeled sensitivity)に見合うまたはそれを超えるサンプル中の内毒素の量が存在することを示す。結果を、1mLあたり1内毒素単位で報告する。すべての内毒素を、参照標準内毒素との比較によって、単位で測定する。
【0161】
FBSの噴霧乾燥処理による内毒素濃度の減少についての結果を、以下の表に示す。結果:噴霧乾燥プロセスは、内毒素濃度を低減することにおいて有効であった(50%の内毒素濃度減少は、48.0EU/mLから24.0EU/mLである)。これらの結果は、本発明の噴霧乾燥方法によって調製される血清粉末が、有意に低減された内毒素レベルを有することを示す。これらの結果は、本発明によって提供される方法が、内毒素レベルが減少した粉末化血清の生成を生じることを示す。
【0162】
【表9】

ここで、本発明を、理解の明瞭さの目的のために例示および実施例によって幾分詳細に十分に記載したが、これを、本発明の範囲またはその任意の特定の実施態様に影響を及ぼすことなく、広範かつ等価な範囲の条件、処方および他の変数内で本発明を改変または変更することによって実施し得ること、およびこのような改変または変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることは、当業者に明らかである。
【0163】
本明細書中において言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、本発明に関与する当業者のレベルを示し、そして各個々の刊行物、特許または特許出願が、参考として援用されることが具体的かつ個別に示されるのと同じ程度で、本明細書中において参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の外来性因子または毒素を減弱するための方法であって、該方法は以下:
a)該サンプル中の1つ以上の外来性因子、1つ以上の毒素を減弱するのに十分な条件下で、空気もしくはガスまたはガスの組み合わせに対して該サンプルを曝露する工程;および
b)該サンプルを獲得する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記ガスまたはガスの組み合わせが、前記毒素または外来性因子に対して毒性であるかまたは阻害性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記曝露が、前記空気もしくはガスまたはガスの組み合わせに曝露された前記サンプルの表面領域を増大するのに十分な条件下で達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記曝露の前または後の前記サンプルが、乾燥形態または液体形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記曝露が、前記空気もしくはガスまたはガスの組み合わせ中でか、またはこれを通して前記サンプルを噴霧することまたは分散させることにより達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記曝露が、前記サンプルおよび/あるいは空気もしくはガスまたはガスの組み合わせを加熱する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記曝露が、噴霧乾燥または凝集により達成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記外来性因子が動物ウイルス、ヒトウイルス、植物ウイルス、魚類ウイルス、昆虫ウイルス、および哺乳動物ウイルスからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記毒素が内毒素、外毒素、ヘビ毒液もしくは動物の毒液、コレラ毒素、ブドウ球菌性のエンテロトキシン、ロイコチジン、リシンA、動物由来の毒物、神経毒、および発赤毒素からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルが栄養培地、培地補充物、培地のサブグループおよび緩衝液からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記外来性因子がDNAウイルスおよびRNAウイルスからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記外来性因子がエンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記外来性因子が急性または慢性の疾患または毒性を生じ得る非細胞性化合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記外来性因子が微生物性の病原体、細菌および病原性微生物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記獲得されるサンプルが乾燥形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記獲得されるサンプルが粉末化形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記獲得されるサンプルが乾燥粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプルが動物由来産物、細胞培養試薬、1つ以上の栄養素、培地、培地補充物、培地のサブグループおよび緩衝液からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記栄養素が、1つ以上のタンパク質、1つ以上の炭水化物、1つ以上の脂質、1つ以上のアミノ酸、1つ以上のビタミン、1つ以上の核酸、DNA、RNA、1つ以上の微量金属および1つ以上の緩衝化塩からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記培地が、細菌培養培地、酵母培養培地、植物培養培地、および動物培養培地からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記培地補充物が、血清の血液由来産物、および組織、細胞、器官または腺の抽出物または加水分解産物からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記血清がウシ胎仔血清(FBS)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記緩衝液が、リン酸緩衝化生理食塩水およびトリス緩衝化生理食塩水からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記動物由来産物が1つ以上の脂質、1つ以上の脂肪酸、1つ以上のタンパク質、1つ以上のアミノ酸、1つ以上のペプトン、1つ以上のステロール、1つ以上のリポタンパク質、1つ以上の血液由来産物、1つ以上の組織、腺もしくは細胞の加水分解産物もしくは抽出物、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記サンプルが薬学的組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記サンプルが臨床的溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記条件が、前記外来性因子または毒素を実質的に減弱するのに十分である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
サンプル中の外来性因子または1つ以上の毒素を減弱するかまたは実質的に減弱するための方法であって、該方法は、以下:
a)該サンプルを乾燥させるかまたは実質的に乾燥させるのに十分な条件下で該サンプルを処置する工程;および
b)減弱されたかまたは実質的に減弱された1つ以上の外来性因子または1つ以上の毒素を有するサンプルを獲得する工程、
を包含する、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate

【図16C】
image rotate

【図16D】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図17C】
image rotate

【図17D】
image rotate


【公開番号】特開2011−87593(P2011−87593A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271657(P2010−271657)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【分割の表示】特願2000−556810(P2000−556810)の分割
【原出願日】平成11年6月30日(1999.6.30)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】