説明

外部電極型希ガス放電ランプ

【課題】始動性が優れるとともに、その後の定常点灯においても、場所的に均一な発光ができるとともに、かつ、高い発光効率を有する外部電極型希ガス放電ランプを提供することである。
【解決手段】希ガスが封入されたガラス管(1)の外面に一対の電極(2a,2b)が配設されるとともに、このガラス管(1)内面の一部に導電性物質(4)を配置する。そして、電極(2a)は当該電極を構成する材料の抵抗値よりも高い抵抗値を有する高抵抗物質(6)が、当該電極と電気的接続を図るようにガラス管の外面に配置することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は外部電極型希ガス放電ランプに関する。特に、液晶ディスプレイ装置のバックライトに使われる外部電極型希ガス蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ装置のバックライトに使われる蛍光ランプは、例えば、特開平8−109109号に記載されるように、内部に希ガスが封入されたガラス管の外面に、一対の帯状電極がガラス管の伸びる方向に伸びるとともに、かつ、ガラス管の内面に蛍光物質が塗布された構造が知られている。
【0003】
また、特開平8−329903号には、ガラス管内部に、アルミニウムなどのペースト状導電性物質を塗布する技術が記載される。導電性物質を設ける理由はランプの始動性を高めるためである。
【0004】
図9は、外部電極型希ガス放電ランプの始動時の原理を説明するための模式図であって、ランプの断面形状を示す。(a)は放電ランプの点灯前の状態を示し、(b)は放電ランプを点灯させるときの状態を示す。
(a)において、ガラス管1の内部には、発光物質であるキセノンガスが封入され、ガラス管1の内面には蛍光物質3が塗布される。また、ガラス管1の外面には、高電圧側電極2aと低電圧側電極2bが対になって配設される。なお、電極2(2a,2b)には交流電力が印加されるため、高圧側と低圧側が交互に反転するが、ここでは説明の便宜上、一時点における高電圧側と低電圧側という意味で表している。さらに、ガラス管1の内部であって、高電圧側電極2aと低電圧側電極2bの間に相当する位置には、アルミニウムなどのペースト状の導電性物質4が配置される。
【0005】
(b)において、高電圧側電極2aに正電圧が印加されると、ガラス管1は誘電分極を起こし、高電圧側電極2aに対応するガラス管1の内面に負電荷が形成される。同様に、低圧側電極2bに負電圧が印加されるとガラス管1の内面であって低圧側電極2bに対応する位置に正電荷が形成され、導電性物質4との間で微小放電D1が発生する。この微小放電D1が種となり、続いて正規の放電D2が発生する。
つまり、導電性物質4が存在することで、きわめて容易に、かつ、きわめて迅速に、正規の放電D2を発生できる。
【0006】
このように、導電性物質4は、ランプの点灯始動時にはきわめて有効に作用する。しかし、この微小放電D1の放電空間は正規の放電D2より放電空間が極端に微小なため、この放電空間での発光に対する寄与はほとんどない。また、定常点灯時においても、始動時と同様に放電が生じやすい部位となってしまい、定常点灯時においても放電空間が非常に狭いため当該部分は光変換効率が低い放電が発生してしまう。
そして、導電性物質が設けられた領域を有効発光領域としている場合は、ランプ全体の中で、当該領域だけが暗くなるという問題を発生させ、当該領域における発光がロスになってしまい、結果として、発光効率が悪くなる。
【特許文献1】特開平8−109109号
【特許文献2】特開平8−329903号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、始動性が優れるとともに、その後の定常点灯においても、場所的に均一な発光ができるとともに、かつ、高い発光効率を有する外部電極型希ガス放電ランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明に係る外部電極型希ガス放電ランプは、希ガスが封入されたガラス管の外面に一対の電極が配設されるとともに、このガラス管内面の一部に導電性物質を配置している。そして、前記電極の少なくとも一方には、当該電極を構成する材料の抵抗値よりも高い抵抗値を有する高抵抗物質が、当該電極と繋がってガラス管の外面に配置し、前記導電性物質は前記高抵抗物質が配置した位置に相当するガラス管の内部に位置することを特徴とする。
【0009】
さらに、前記高抵抗物質は、略線状に伸びる電極の一方の先端に形成されたことを特徴とする。
さらに、前記高抵抗物質は、略線状に伸びる電極の両方の端部に形成されたことを特徴とする。
さらに、前記高抵抗物質は、略線状に伸びる電極の長手方向の中央に形成されたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明に係る外部電極型希ガス放電ランプは、希ガスが封入されたガラス管の外面に一対の電極が配設されるとともに、このガラス管内面の一部に導電性物質を配置している。そして、前記電極の少なくとも一方には、当該電極を構成する材料の抵抗値よりも高い抵抗値を有する高抵抗物質が当該電極と繋がってガラス管の外面に配置し、さらに、当該高抵抗物質を構成する材料の抵抗値よりも低い抵抗値を有する低抵抗物質が、当該高抵抗物質に繋がるとともに前記電極とは物理的に離れた位置に配置し、前記導電性物質は、前記低抵抗物質が配置した位置に相当するガラス管の内部に位置することを特徴とする。
【0011】
さらに、前記高抵抗物質は略線状に伸びる電極の一方の先端に形成されて、前記低抵抗物質は当該高抵抗物質よりも先端側に形成されたことを特徴とする。
さらに、前記高抵抗物質は略線状に伸びる電極の両方の端部にそれぞれ形成されて、前記低抵抗物質は当該高抵抗物質よりも端部側にそれぞれ形成されたことを特徴とする。
さらに、前記高抵抗物質は略線状に伸びる電極の長手方向の中央に形成されて、前記低抵抗物質は当該高抵抗物質の長手方向中央に形成されたことを特徴とする。
【0012】
また、前記ガラス管の内部に蛍光体が塗布されたことを特徴とする。
また、前記電極は、外縁部の包絡線によって形成される形態が略帯状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の外部電極型希ガス放電ランプは、上記構成を有することにより、ランプの始動時は、外部の給電手段から供給される電流が、高抵抗物質を経由して導電性物質に電流が流れ、導電性物質と高抵抗物質が塗布されている硝子管内面において生じる微小放電を種として放電を開始できる。
また、定常点灯時は、高抵抗物質に電流が流れることなく、電極間で放電が生じるため、すなわち、導電性物質に電流が流れることがなく、結果として、発光ロスを小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1はこの発明に係る外部電極型希ガス放電ランプ(以下、単に「ランプ」ともいう)を示す。(a)は全体の外観構造を示し、(b)は(a)のX−Xの断面構造を示す。
ガラス管1の外壁には、例えば、銀やアルミテープからなる一対の直線状かつ帯状の電極2(2a,2b)が、ガラス管1の長手方向に沿って伸びるよう配設される。この電極2には図示略の交流電源が接続されており、それぞれの電極に交流電力が供給されると、ガラス管1を構成する材料、例えば、バリウムガラスを介在させてガラス管1の内部に誘電体バリア放電が発生する。ガラス管1の内壁には蛍光物質3が層状に設けられており、誘電体バリア放電によって発生した紫外線が蛍光物質3を刺激することで可視光がランプの外部に放射される。ガラス管1の内部には、誘電体バリア放電によってエキシマ分子を生成するためのガス、例えば、キセノンガスが充填される。
【0015】
ガラス管1の一端11にはキャップ状のランプホルダLHが装着される。そして、ランプホルダLHの内部で電極2と給電リード5が接続する。具体的には、給電リード5aと電極2aが接続し、給電リード5bと電極2bが接続する。なお、ガラス管1の一端11において電極2と給電リード5が接続された場合は、ガラス管1の他端12には給電手段を施す必要はない。
【0016】
電極2の先端、すなわち、ガラス管1の他端12側には高抵抗物質6が設けられる。この高抵抗物質6は、電極2を構成する材料よりも抵抗値の高い物質が採用される。この実施例で言えば、電極2は材料としてアルミニウムが使用されるため、高抵抗物質6はアルミニウムの抵抗値よりも高い抵抗値を有する物質、例えばITO、酸化ルテチウムが使われる。なお、電極2と高抵抗物質6は、ともに抵抗値が異なるが、何れも導電性の物質ではあるため、電極2の一端11と高抵抗物質6が位置する他端12までは電気的に導通関係にある。なお、この明細書では、高抵抗物質6は、便宜上、電極2とは称しておらず両者を区別している。また、11,12は、棒状のガラス管1の両端部を位置として表す番号であり、ガラス管1の一方の端部を11、他方の端部を12としている。
【0017】
ガラス管1の内部には、例えばカーボンペーストからなる導電性物質4が配置する。この導電性物質4は、例えば、ペースト状のもので、ガラス管1の外部に高抵抗物質6が配置する位置に相当するガラス管内部の位置に設けられる。導電性物質4の役割は、前記したようにガラス管1の内部に放電種としての微小放電D1を生成することである。なお、(b)は(a)のX−X断面図であるため、導電性物質4が示されるが、他の断面位置であれば、導電性物質は存在しない。なお、導電性物質4は、電極2aの先端に位置する高抵抗物質6が存在する位置に相当するガラス管内部に少なくとも配置しており、また、より好ましくは、他方の電極2bが存在する位置に相当するガラス管内部に位置する。
【0018】
図2は、図1に示すランプの断面構造を模式的に表したものである。この図は電流が流れる経路を、高抵抗物質6や導電性物質4との関係で説明するための図面であり、ランプホルダLHや蛍光物質3などは省略している。
一対の電極2a、2bは、ガラス管1の一端11から他端12に向かって伸びるようにガラス管1の外面に配置している。電極2aは、電極2bよりも短くなっており、ガラス管1の他端12において、高抵抗物質6が電極2aに続いて繋がるように、電極2aの先端側に設けられる。なお、この実施例では電極2bには高抵抗物質は設けられない。また、給電リード5と電極2aは接着剤7により接合される。
【0019】
次に、ランプが点灯するための原理を説明する。電極2に交流電力が印加されると、電極2aの一端側11から他端側12に向かって電流I1が流れて、さらに、ガラス管1の内部で放電D1を生じ、電極2b上を図示点線(電流I1)のように流れる。交流電力の極性が反転すると、電流I1の方向は反対となる。なお、微小放電D1が生じる原理は、前記[0004][0005]に記載したとおりである。
【0020】
上記微小放電D1に続いて、電極2aと電極2bの間で正規の放電D2が発生する。そして、この正規の放電D2の発生と同時に微小放電d1は消失する。
これは、点灯始動時は、ガラス管内部のガス圧が高いため、導電性物質4を介在させなければ放電が生じないが、微小放電D1が生じた後は、ガラス管内部が放電しやすい状態となるため、高抵抗物質6に電流が流れる必要はなく、電極2a,電極2b間で正規の放電が発生するからである。
【0021】
本発明について数値例をあげると、ランプの長手方向の長さは360mm、ガラス管の外径はφ9.8mm、ガラス管の肉厚は0.4mmである。電極の長さは360mm、電極の幅は0.4mm、厚さは5μm、材質は銀である。高抵抗物質6の長さは5.0mm、幅は2.0mmである。ランプに封入される発光用ガスはキセノンであり、ガス圧は21.3kPaである。
【0022】
図3は、本発明に係る外部電極型希ガス放電ランプであって、図2に示す構造の変形例を示す。図2に示す構造は電極2aの先端に高抵抗物質6のみを設けたのに対し、図3に示す構造は電極2aの先端に高抵抗物質6を配置して、さらに、その先端側に、低抵抗物質8を設けていることである。つまり、図3に示す構造は、電極2a、高抵抗物質6、低抵抗物質8の順番に配置しており、別の言い方をすれば、高抵抗物質6が電極2aと低抵抗物質8に挟まれた構造となる。導電性物質4は低抵抗物質8が存在する位置に相当するガラス管内部の位置に存在する。
【0023】
低抵抗物質8は、高抵抗物質6を構成する材料の抵抗値よりも小さい抵抗値を有し、好ましくは、電極2aを構成する材料の抵抗値と同じ抵抗値を有することである。つまり、電極2aと低抵抗物質8を同じ材料で構成することがランプ製造上はもっとも簡便となる。
【0024】
高抵抗物質6は、点灯始動時は電流が流れるが、定常点灯時には電流が流れないというスイッチの機能を果たすため、低抵抗物質8には抵抗値に対する要求が必要にならないからである。しかしながら、高抵抗物質の領域(長手方向の長さであって、図における左右方向の長さ)があまりに小さい場合には、電極2aと低抵抗物質8の間で沿面放電が生じかねない。この場合は、低抵抗物質8はその抵抗値が、電極2aを構成する材料の抵抗値よりも大きい材料を選択することが望ましい。
【0025】
低抵抗物質8と電極2が同じ材料から形成される場合の製造方法は、電極2をガラス管1の外面に貼り付けて、その後、電極2の一部分を削り落とし、この削り落とした部分に対して高抵抗物質6を塗布することができる。あるいは、電極が、テープ状の場合は、電極2aに相当する部位に当該電極を貼り付けて、その後、間隔をおいて、同じテープを貼り付けることができる。
【0026】
なお、ランプが点灯するための原理は、図2に示す構造の場合と基本的に同じである。ただし、図2に示す構造に比較して有利な点は、高抵抗物質の面積が小さくなるため、始動がより容易になることである。
【0027】
図4は、本発明に係る外部電極型希ガス放電ランプの他の実施例を示す。
(a)は、高抵抗物質6(61、62)が、電極2aの一端側、および他端側の両端に設けられる。具体的には、電極2aの一端側には高抵抗物質61が設けられ、電極2aの他端側には高抵抗物質62が設けられる。また、両方の高抵抗物質6(61、62)のガラス管1内部の対応部分にそれぞれ導電性物質4(41、42)が配置している。具体的には、高抵抗物質61が配置するガラス管1の内面に導電性物質41が配置して、高抵抗物質62が配置するガラス管1の内面に導電性物質42が配置している。接着剤7には図示略の外部リードが接続される。
【0028】
この実施例では、交流電力が供給されると、それぞれの高抵抗物質61、62を通過して、ガラス管1の一端側および他端側に配置された導電性物質41、42において微小放電D1が発生する。その後、電極2aにおいて正規の放電D2が発生し、それと同時に、放電D1は自然に停止する。
この実施形態は、ランプが長い場合において特に適している。瞬時に、ガラス管の長手方向全体に主放電D2を発生できるからであり、ガラス管の両端部(2ヶ所)に放電種を発生させるからである。
【0029】
(b)は、高抵抗物質6が、ガラス管1の長手方向中心付近に形成される。導電性物質4は高抵抗物質6に相当する位置、すなわち、ガラス管1の内面であって長手方向の中心付近に形成される。電極2a(2a1、2a2)は、高抵抗物質6を挟んで、ガラス管1の一端側および他端側まで伸びるように配置する。具体的には、電極2a1がガラス管1の一端側まで伸びるように配置し、電極2a2がガラス管1の他端側まで伸びるように配置する。外部リードが接続する接着剤7は電極2a1と電極2a2の両方に設けられる。具体的には、接着剤71が電極2a1に接続され、接着剤72が電極2a2に接続される。
この実施例では、まず、交流電力が供給されると、高抵抗物質6において微小放電D1が発生する。その後、主放電D2が発生すると、微小放電D1は自然に消滅する。
【0030】
この実施形態は、ランプの端部から発生する放射光を利用する場合や、あるいは中心付近の光を利用しないような場合に特に有効である。また、この形態の変形例として、ランプの長手方向中心ではなく、その他の特定の位置において、導電性物質6を配置することもできる。特定の位置において、ランプからの放射光を利用しない場合に有効である。
【0031】
図5は、図4に示す構造と、図3に示す構造を組み合わせた構造を示す。
(a)は高抵抗物質6(61,62)が電極2aの両端にそれぞれ設けられるとともに、それぞれの高抵抗物質6(61,62)のさらに端部側に低抵抗物質81、82が配置している。具体的には、電極2aの一端側に高抵抗物質61が設けられ、その端部側に電極81が設けられる。また、電極2aの他端側に高抵抗物質62が設けられ、その端部側に電極82が設けられる。つまり、高抵抗物質61は電極2aと電極81に挟まれた形で配置しており、高抵抗物質62は電極2aと電極82に挟まれた形で配置している。電極2aと電極81は物理的に分離しているが、いずれも高抵抗物質61と繋がるように接触しており、つまり、電極2a、高抵抗物質61、低抵抗物質81は電気的に導通関係にある。同様に、電極2aと低抵抗物質82は物理的に分離しているが、いずれも高抵抗物質62と繋がるように接触しており、つまり、電極2a、高抵抗物質62、低抵抗物質82も電気的に導通関係にある。この実施形態では、給電リード(図示略)は電極2aで接続しなければならず、接着剤7に給電リードが接続する。また、導電性部材4は低抵抗物質81、82に相当する位置に設けられる。具体的には、導電性物質41は低抵抗物質81に相当する位置に配置し、導電性物質42は低抵抗物質82に相当する位置に配置している。
【0032】
(b)は高抵抗物質6が電極2a(2a1、2a2)の長手方向の中心付近に設けられるとともに、高抵抗物質6のランプの長手方向中心位置にさらに低抵抗物質8が設けられる。つまり、ガラス管1の一端側から電極2a1、高抵抗物質6、低抵抗物質8、高抵抗物質6、電極2a2の順番で配置する。導電性部材4は低抵抗物質8に相当するガラス管内部の位置に設けられる。また、給電リードが接続する接着剤7はガラス管1の一端側、他端側にそれぞれ配置する。具体的には、電極2a1の端部に接着剤71が塗布され、電極2a2の他端側に接着剤72が塗布される。
【0033】
高抵抗物質は、例えば、物質例1として、低融点フリットと針状ITOとITOの薄膜からなるもの、あるいは、物質例2として、低融点フリットと酸化ルテチウム(RuO2)からなるもの、あるいは、物質例3として、低融点フリットとルテチウム化合物からなるもの、が採用される。低融点フリットは、珪素、ホウ素、ビスマスからなる硝子であり、ルテニウム化合物は、例えば、酸化ルテニウム(RuO2)、パイロクロア形ルテニウム酸塩(Bi2Ru2O7)、(Pb2Ru2O6.5)が採用される。
【0034】
以上の実施例では、一対の電極のうち電極2aに対しては高抵抗物質を設けるが、電極2bに対しては高抵抗物質を設けないという実施形態を説明してきた。これは何れか一方の電極に対して高抵抗物質を設ければ機能として十分だからである。しかし、電極2aとともに、電極2bにも高抵抗物質を設けることを排除するものではなく、両電極に高抵抗物質を設けても勿論かまわない。
【0035】
なお、電極および高抵抗物質は透光性物質を使うことが好ましい。ガラス管内部の発光を遮光することなく利用できるからである。また、透光性物質を使う場合は、遮光を考慮する必要がなくなるため、面積の大きいものを使うことが可能となり、ガラス管内部でのエキシマ分子の生成量を多くできる。透光性物質は、例えば、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、酸化スズなどを使うことができる。ただし、本発明では電極と高抵抗物質の両方において透光性物質を使う場合は、抵抗値の異なる透光性物質を使わなければならない。また、電極と高抵抗物質のいずれかに透光性物質を使い、もう一方に不透光性物質を使うこともできる。特に、高抵抗物質は電極に比して使用領域が小さいため、高抵抗物質のみ不透光性物質としても発光効率に対する影響は小さい。
【0036】
電極には損傷を防止のために保護膜を被せるように設けてもよい。この場合、保護膜として、電極を構成する材料よりも高い抵抗値を有する物質を採用した場合、全体として保護膜を取り付けることで、容易に本発明の電極構造を作成できる。
【0037】
図6はこのような形態を模式的に表したものである。(a)は図2に示す構造を上方から眺めた状態を示し(図2におけるY方向)、(b)は図3に示す構造を上方から眺めた状態を示し(図3におけるY方向)を表す。なお、図6は保護膜6を設けることを説明するための図面であり、図2および図3は保護膜を設けていない実施形態であるため、厳密に言えば、図6は、図2や図3に示す構造をY方向から直接眺めるものではない。図2および図3に示す構造のものに、仮に保護膜を設けた場合、それぞれY方向から眺めた構造を示すと解釈できる。
【0038】
(a)において、電極2はガラス管1の一端側11まで伸びておらず、他端側12はほぼ管端まで伸びている。また、電極2の他端側には給電リード5が接着剤7によって取り付けられる。保護膜8は、電極2の全体を覆うように、かつ、ガラス管1の一端側は電極2の先端部分を超えて管端部に近い部分まで設けられる。保護膜8は、電極2を構成する材料の抵抗値よりも高い抵抗値をもつ材料が採用され、例えば、電極2aが銀ペーストである場合に、保護膜8はITO膜(インジウム、錫、酸化物)が採用される。
この構造では、保護膜8が高抵抗物質として機能するため、保護膜8を電極2aの上から被せるように貼り付けるだけで、きわめて簡単かつ容易に構成することができる。また、保護膜として透光性部材を採用することで放射光の取出し効率が高くなる。
【0039】
(b)において、電極2のガラス管1の一端側11は、切断領域Sを介して電極21が配置され、電極21と電極2は物理的に分離している。また、ガラス管1の他端側12はほぼ管端まで伸びており、電極2の他端側には給電リード5が接着剤7によって取り付けられる。
この構造では、電極2、切断領域S、電極21を覆うように保護膜8が設けられる。この保護膜8は、電極2および電極21を構成する材料の抵抗値よりも高い抵抗値をもつ材料が採用され、例えば、電極2aが銀ペーストである場合に、保護膜8はITO膜(インジウム、錫、酸化物)が採用される。
【0040】
この構造では、保護膜が高抵抗物質としての機能を果たし、切断領域Sが高抵抗物質のみの領域となる。この構造も保護膜を電極に貼り付けるというきわめて簡単な作業で容易にランプを構成することができる。また、保護膜として透光性部材を採用することで放射光の取出し効率が高くなる。
保護膜について、数値例を示すと、電極の幅が0.5mmの場合に、保護膜の幅は2.0mmとなる。
【0041】
次に、本発明の効果を示す実験について説明する。
ランプの電極と切断領域の位置関係は、図6(a)に示す構造のものを使い、また、ランプ仕様は、段落0022に記載されたものとした。また、各ランプはガラス管の内部に抵抗値8kΩに相当する導電性物質(カーボンペースト)を配置した。
ランプは10本用意し、各ランプは電極の上に高抵抗物質としてITOの保護膜を貼り付けた。そして、この保護膜の長さや幅を調整することで、高抵抗物質の抵抗値を変化させた。具体的には、ランプ1の抵抗値は0Ω、ランプ2の抵抗値は21kΩ、ランプ3の抵抗値は50kΩ、ランプ4の抵抗値は62kΩ、ランプ5の抵抗値は241kΩ、ランプ6の抵抗値は565kΩ、ランプ7の抵抗値は1000kΩ、ランプ8の抵抗値は1500kΩ、ランプ9の抵抗値は2026kΩ、ランプ10の抵抗値は2500kΩとした。ランプ1は抵抗値0Ωであり高抵抗物質を持たないことを意味する。
【0042】
実験は、各ランプについて、点灯3分後の発光効率(lm/W)を測定した。測定は、全光束球により行った。測定回数は、各3回測定して平均値を採用した。
測定結果は、ランプ1が点灯電力10.38(W)、全光束523.2(lm)、発光効率は53.2(lm/W)、ランプ2が点灯電力9.48(W)、全光束485.1(lm)、発光効率は54.0(lm/W)、ランプ3が点灯電力9.34(W)、全光束514.2(lm)、発光効率は55.0(lm/W)、ランプ4が点灯電力9.48(W)、全光束521.1(lm)、発光効率は55.0(lm/W)、ランプ5が点灯電力9.27(W)、全光束513.5(lm)、発光効率は55.4(lm/W)、ランプ6が点灯電力9.29(W)、全光束515.6(lm)、発光効率は55.5(lm/W)、ランプ7が点灯電力9.30(W)、全光束517.6(lm)、発光効率は55.7(lm/W)、ランプ8が点灯電力9.30(W)、全光束519.1(lm)、発光効率は55.8(lm/W)、ランプ9が点灯電力9.17(W)、全光束513.5(lm)、発光効率は56.0(lm/W)、ランプ10が点灯電力9.18(W)、全光束514.8(lm)、発光効率は56.1(lm/W)であった。
【0043】
図7は実験結果のグラフを示す。横軸は高抵抗物質(ITOの保護膜)の抵抗値(kΩ)、縦軸は発光効率の相対値を示す。発光効率の相対値は、ランプ1の発光効率を1.0とした時の相対値で表す。発光効率の相対値は、ランプ1が「1.0」、ランプ2が「1.02」、ランプ3が「1.03」、ランプ4が「1.03」、ランプ5が「1.04」、ランプ6が「1.043」、ランプ7が「1.046」、ランプ8が「1.049」、ランプ9が「1.053」、ランプ10が「1.054」となる。
【0044】
図7より、高抵抗物質の抵抗値が50kΩ以上の場合に、それ以下の場合と比較して、発光効率が大きく改善されていることがわかる。また、ランプ9とランプ10、すなわち、抵抗値が2026kΩの場合と2500kΩの場合は、ランプが点灯しないケースも発生した。従って、抵抗値が50kΩ以上において、発光効率の改善効果が大きく見られ、また、抵抗値が1500kΩ以下において高い始動性特性が得られた。この数値を、導電性物質の抵抗値(8kΩ)との関係で規定すると、導電性物質の抵抗値の6.25倍〜188倍となり、誤差等を考慮しても、導電性物質の7倍〜23倍の抵抗値において有効であることがわかる。
【0045】
ここで、ランプは、ガラス管の内部に蛍光物質を塗布した場合は、可視光を放射する蛍光ランプとなるが、蛍光物質を塗布しない場合は、ガラス管の内部で発生した紫外光をそのまま放射する紫外線ランプとなる。
特に、この種のランプは誘電体材料(石英ガラス)を介在させた放電により紫外線を発生させるため、誘電体バリア放電ランプあるいはエキシマランプと称することもある。エキシマランプは、蛍光ランプと異なり、単一波長の真空紫外光を強く放射するという、従来の低圧水銀放電ランプや高圧アーク放電ランプにはない優れた特徴を有している。この単一波長の光は、ガラス管の内部に封入されたガス種によって決まり、キセノンガス(Xe)の場合は波長172nmの光、アルゴンガス(Ar)と塩素ガス(CL)の場合は波長175nmの光、クリプトン(Kr)と沃素(I)の場合は波長191nmの光、アルゴン(Ar)とフッ素(F)の場合は波長193nmの光、クリプトン(Kr)と臭素(I)の場合は波長207nmの光、クリプトン(Kr)と塩素(CL)の場合は波長122nmの光を放射する。さらに、必要に応じて瞬時(1秒以内)に点滅点灯できるという特徴も有する。エキシマランプは、石英ガラスなどの物質のUV洗浄や、その他の物質の表面改質に利用できる。
【0046】
図8は電極の実施形態を示す。帯状電極の「帯」とは、電極外縁部の包絡線によって形成される形態を意味し、図(a)〜(e)に示すように、線状、網目状、蛇行した線状などを含む。また、図(f)に示すように、帯状電極の「帯」の幅は、必ずしも一様というわけでもない。
【0047】
以上の構成により、本発明に係る外部電極型希ガス放電ランプは、ランプの始動時は、外部の給電手段から供給される電流が、帯状電極の切断部分における抵抗値の高い物質を経由して導電性物質に電流が流れ、導電性物質において生じる微笑放電を種として放電を容易に開始できる。また、定常点灯時は、高抵抗物質に電流が経由することなく、放電を発生させるため、すなわち、導電性物質に電流が流れることはなくなり、結果として、発光ロスを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の外部電極型希ガス放電ランプを示す。
【図2】本発明の外部電極型希ガス放電ランプの一実施形態の模式図を示す。
【図3】本発明の外部電極型希ガス放電ランプの一実施形態の模式図を示す。
【図4】本発明の外部電極型希ガス放電ランプの他の実施形態を示す。
【図5】本発明の外部電極型希ガス放電ランプの他の実施形態を示す。
【図6】本発明の外部電極型希ガス放電ランプの電極の実施形態を示す。
【図7】本発明の外部電極型希ガス放電ランプの実験を示す。
【図8】本発明の外部電極型希ガス放電ランプの電極のパターンを示す。
【図9】従来の外部電極型希ガス放電ランプの電極の実施形態を示す。
【符号の説明】
【0049】
1 ガラス管
2a 電極
2b 電極
3 蛍光物質
4 導電性物質
5 給電リード
6 高抵抗物質
7 接着剤
8 低抵抗物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希ガスが封入されたガラス管の外面に一対の電極が配設されるとともに、このガラス管内面の一部に導電性物質を配置した外部電極型希ガス放電ランプにおいて、
前記電極の少なくとも一方には、当該電極を構成する材料の抵抗値よりも高い抵抗値を有する高抵抗物質が、当該電極と繋がってガラス管の外面に配置し、
前記導電性物質は前記高抵抗物質が配置した位置に相当するガラス管の内部に位置することを特徴とする外部電極型希ガス放電ランプ。
【請求項2】
前記高抵抗物質は、略線状に伸びる電極の一方の先端に形成されたことを特徴とする請求項1の外部電極型希ガス放電ランプ。
【請求項3】
前記高抵抗物質は、略線状に伸びる電極の両方の端部に形成されたことを特徴とする請求項1の外部電極型希ガス放電ランプ。
【請求項4】
前記高抵抗物質は、略線状に伸びる電極の長手方向の中央に形成されたことを特徴とする請求項1の外部電極型希ガス放電ランプ。
【請求項5】
希ガスが封入されたガラス管の外面に一対の電極が配設されるとともに、このガラス管内面の一部に導電性物質を配置した外部電極型希ガス放電ランプにおいて、
前記電極の少なくとも一方には、当該電極を構成する材料の抵抗値よりも高い抵抗値を有する高抵抗物質が当該電極と繋がってガラス管の外面に配置し、
さらに、当該高抵抗物質を構成する材料の抵抗値よりも低い抵抗値を有する低抵抗物質が、当該高抵抗物質に繋がるとともに前記電極とは物理的に離れた位置に配置し、
前記導電性物質は、前記低抵抗物質が配置した位置に相当するガラス管の内部に位置することを特徴とする外部電極型放電ランプ。
【請求項6】
前記高抵抗物質は略線状に伸びる電極の一方の先端に形成されて、前記低抵抗物質は当該高抵抗物質よりも先端側に形成されたことを特徴とする請求項5の外部電極型希ガス放電ランプ。
【請求項7】
前記高抵抗物質は略線状に伸びる電極の両方の端部にそれぞれ形成されて、前記低抵抗物質は当該高抵抗物質よりも端部側にそれぞれ形成されたことを特徴とする請求項5の外部電極型希ガス放電ランプ。
【請求項8】
前記高抵抗物質は略線状に伸びる電極の長手方向の中央に形成されて、前記低抵抗物質は当該高抵抗物質の長手方向中央に形成されたことを特徴とする請求項5の外部電極型希ガス放電ランプ。
【請求項9】
前記ガラス管の内部に蛍光体が塗布されたことを特徴とする請求項1又は請求項5の外部電極型希ガス放電ランプ。
【請求項10】
前記電極は、外縁部の包絡線によって形成される形態が略帯状であることを特徴とする請求項1又は請求項5の外部電極型希ガス放電ランプ。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−34272(P2008−34272A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207405(P2006−207405)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)