説明

多区画ワイパアプリケータパッケージ

第一の製剤を保持する容器と、最初は両端部で密封されるワイパと、有刺器具とを備えた多区画ワイパアプリケータパッケージ。密封されたワイパ内には、容器内の第一の製剤と混合されるある量の二次材料がある。有刺器具は、上部シールを穿刺し、その後、底部シールの位置を変えて、底部シールをワイパから完全に分離させることが可能である。その後、有刺器具は上部シールを完全に取り除き、それによって、残っているものは従来のワイパである。有刺器具は、ワイパ内に規定の深さだけしか挿入することができない。これにより、有刺器具がワイパを容器から取り出すのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品パッケージ、より詳細にはワイパを有する多区画パッケージの分野に属している。
【背景技術】
【0002】
明細書全体を通して、本発明による多区画パッケージ内に包装されるマスカラ剤を説明する。しかし、本発明は、ワイパアプリケータシステムでの使用に適した任意の製品に適用可能である。
【0003】
ワイパ要素を有する容器は、当技術分野でよく知られている。典型的なマスカラパッケージは例えば、ある量のマスカラを保持することが可能なボトル、ボトルのネック内に配置されたワイパ、及びボトルのネックの上にねじ込まれるクロージャアプリケータを備えている。典型的なマスカラパッケージは、単一の区画を有し、一度に一つの製剤だけしか保持することができない。したがって、消費者に到達する調合剤は、充填工場で単一の区画パッケージ内に充填された製剤である。
【0004】
これに対して、本発明は多区画ワイパアプリケータパッケージである。明細書全体を通して、「多区画ワイパアプリケータパッケージ」という表現は、容器と、両端部で密封され、容器の開口部に配置されたワイパと、ワイパからシールを取り除くための器具とを備えたパッケージのことを言う。さらに「多区画ワイパアプリケータパッケージ」に関連しているのは、シールを取り除いた後にワイパを通過することによって、容器の内部にアクセスするアプリケータである。
【0005】
本発明の利点の一つは、パッケージの多区画設計によって与えられる大きな製剤の柔軟性である。この大きな製剤の柔軟性は、製剤設計者、製造者及び消費者に対する利点を有する。
【0006】
従来のマスカラ製剤としては、典型的には1:7から1:3の油相対水比を有する可能性がある水中油型乳剤マスカラが挙げられる。水中油型マスカラは典型的には、乳化剤、ポリマー、ワックス、充填剤、顔料及び保存料からなっている。これらのマスカラは、優れた安定性、湿式塗布及び水での容易な除去の利点を提供し、比較的作るのが安価であり、幅広いポリマーをこれらに使用することができ、ほとんどのプラスチックパッケージに適合可能である。また、その原則的利点が耐水性及び長い着用性である水中油型マスカラがある。これらのマスカラは典型的には、1:2から9:1の油相対水比を有することができる。水中油型マスカラは典型的には、乳化剤、溶剤、ポリマー及び顔料からなっている。
【0007】
しかし普通、マスカラ組成はまた、その有効性又は効能が時間の経過と共に小さくなる材料を含むことができる。したがって、マスカラ容器の充填から消費者による最初の使用までの時間は、有効性又は効能の損失を示している。これを補償するために、製剤設計者は、消費者が実際に必要としているよりも多くの材料を含めている可能性がある。例えば、まつげカール酵素は、マスカラ組成でゆっくり破壊される可能性がある。消費者が製品を使用するときまで有効な量の酵素が確実にあるようにするために、余分な酵素が組成に入れられることがある。酵素は高価である、又は劣化した酵素はさらに化学組成を妨げる可能性があるので、これは明らかな欠点である。したがって、消費者による最初の使用のときまで酵素を劣化から保護することができると、有利である。
【0008】
さらに、製剤設計者は、マスカラ組成内に、いくつかの有利な目的で組成と反応する材料を含めたいと考える可能性がある。しかし、場合によっては、消費者の最初の使用のときまで、その反応を遅らせることが有利であることがある。これは、従来の単区画マスカラ容器では不可能であるが、本発明の「多区画ワイパアプリケータパッケージ」では可能である。また、最初の使用のときまで一つ又は複数の材料をマスカラ主組成と分離させておきたい他の理由がある可能性がある。理由とは無関係に、このようなことは従来の単区画マスカラ容器では不可能であるが、本発明による「多区画ワイパアプリケータパッケージ」では可能である。
【0009】
マスカラ組成の性能特徴を議論するための確立された語彙がある。これらの特徴はそれぞれ、例えば製剤中の比較の目的で、評価し、0から10までのランダムスケールの数を割り当てることができる。マスカラ塗布の結果としての「凝集(Clumping)」とは、太いギザギザの軸内でのいくつかのまつげの凝集である。凝集により、個別のまつげ鮮明度が小さくなり、これは普通望ましくない。「カール(Curl)」とは、マスカラが、処理していないまつげに対してまつげを上向きアーチ状にさせる程度である。カールがしばしば望ましいことがある。「剥離(Flaking)」は、規定の着用時間後にまつげから剥がれるマスカラ片のことを言う。より優れた品質のマスカラは剥離しない。「完全度(Fullness)」は、まつげの量及びその間の空間に左右され、ここで「希薄(sparse)」(又はあまり完全でない)とは、比較的少ないまつげしかなく、まつげの間に比較的大きい分離があることを意味し、「濃密(dense)」(又はより完全である)とは、隣接するまつげの間に測定可能な空間がほとんどない状態でまつげがしっかり密集していることを意味する。「長さ(Length)」は、自由先端から皮膚へのその挿入点までのまつげの寸法である。長さを大きくすることはしばしば、マスカラ塗布の目的である。「分離(Separation)」は、各個別のまつげが十分輪郭が明確になるようなまつげの非凝集である。優れた分離は、マスカラ塗布の望ましい効果の一つである。「染み(Smudging)」は、皮膚又は他の表面に接触している場合に、規定の着用時間後にマスカラが不鮮明になってくる傾向である。皮膚又は環境から水分及び/又は油とマスカラが混合することによって、不鮮明になることが促進される。「スパイキング(Spiking)」は、個別のまつげの先端が溶融して、普通は望ましくない三角形の塊が作り出される傾向である。「厚さ(Thickness)」は、マスカラの塗布によって外観を変更することができる個別のまつげの直径である。「厚さ」を大きくすることは普通、マスカラ塗布の目的である。「磨耗(Wear)」は、塗布の直後と比較した、規定の時間後のまつげへのマスカラの視覚的影響である。「全体的外観(Overall look)」は、上記定義全てにおけるその結果をもたらす一つの全体的得点である。これは、処理した及び未処理のまつげを比較する、又は一つのマスカラの審美的魅力を別のものと比較する主観的判断である。理想的なマスカラは、望ましくないものを避けながら、望ましい性状の全てを有する。典型的なマスカラパッケージと異なり、本発明の「多区画ワイパアプリケータパッケージ」により、理想的なマスカラを得ることがより容易になる。
【0010】
ワイパは、当技術分野でよく知られており、アプリケータが、ローションなどの流動性製剤に浸漬された、又はマスカラなどのペースト状製剤に浸漬された製品で特に見られる。典型的な従来技術のワイパが、図1及び2に示されている。幅広く定義すると、ワイパ(100)は中空シリンダである。典型的なワイパは、一つの保持ビード(101)を有する。ワイパがマスカラ容器に完全に嵌っている場合に、ビードは容器ネックの内壁に配置された相補的保持溝に嵌合する。ビード及びネック溝は、例えば、ブラシがワイパを通過する場合などに、ワイパの任意の移動に対抗することによって容器ネック内でワイパを安定化させる。ワイパの下部(102)は、ワイパの上部(103)より小さい直径を有するようにテーパ状になっている。上部は、上側オリフィス(104)で終端し、下部は下側オリフィス(105)で終端する。普通に実施される場合、下側オリフィス直径は典型的には、3.53mm(0.139インチ)と4.14mm(0.163インチ)の間であるが、他の寸法を使用することもでき、本発明は下側オリフィスの寸法によって制限されるものではない。この範囲のオリフィス直径は、現在使用されているブラシロッドアプリケータアセンブリのほとんどに対応している。上述したよく知られているワイパは、単区画パッケージを二重又は多区画パッケージに変換させることが不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の主な目的は、「多区画ワイパアプリケータパッケージ」を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、単区画パッケージを多区画パッケージに変換させるワイパを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、最初に使用のときにマスカラの性能特性を変更する可能性をユーザに与えるマスカラパッケージを提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、最初の使用のときにマスカラ製剤を完成させる可能性をユーザに与えるマスカラパッケージを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、最初の使用のときに完成されたマスカラ組成を提供することによって、マスカラ性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述の目的及び他の利点は、本明細書に記載したように、「多区画ワイパアプリケータパッケージ」で実現することができる。本発明の他の目的及びその利点は、以下の説明を読めば明らかになるだろう。
【0017】
本発明による「多区画ワイパアプリケータパッケージ」は、第一の製剤を保持することが可能な容器を備えている。容器は、第一の製剤へのアクセスを提供する開口部を有する。開口部は、当技術分野でよく知られているワイパを受けることが可能である。例えば、ワイパは容器のネックと摩擦嵌めされている。開口部は典型的には、ボトルネックの形態をとることができ、ネックはクロージャを受けることが可能な容器のネック仕上げを有することができる。本発明によるワイパは最初、両端部で密封される。密封されたワイパ内にあるのは、容器内の第一の製剤と混合されるべきある量の二次材料である。本発明による「多区画ワイパアプリケータパッケージ」は、有刺器具を含んでいる。最初の使用のときに、有刺器具は上部シールを穿刺し、その後、底部シールの位置を変えて、底部シールをワイパから完全に分離させることが可能である。その後、有刺器具は上部シールを完全に取り除き、それによって、残っているものは従来のワイパである。有刺器具は、ワイパ内に規定の深さだけしか挿入することができない。これにより、有刺器具がワイパを容器から取り出すのを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】典型的な従来技術のワイパを示す図である。
【図2】図1の線A−Aにおける断面図である。
【図3】「多区画ワイパアプリケータパッケージ」の断面図である。
【図4】図4aは、本発明によるワイパの非限定的な一実施形態の平面図である。図4bは、図3の線B−Bにおける断面図である。
【図5】図5aは、本発明によるワイパの上側シールの非限定的な一実施形態の平面図である。図5bは、図5の線C−Cにおける断面図である。
【図6】図6aは、本発明によるワイパの下側シールの非限定的な一実施形態の平面図である。図6bは、図7の線D−Dにおける断面図である。
【図7】図7a〜dは、上側及び下側シールを取り除くための有刺器具の使用を示す図である。
【図8】第一の製剤を保持する容器であって、ワイパが一つ又は複数の二次材料を保持する容器と、クロージャアプリケータとを備えたキットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による「多区画ワイパアプリケータパッケージ」(図3)は、第一の製剤(M)を保持することが可能な容器(1)を備えている。マスカラの場合、容器は普通、ねじ切り仕上げを備えたネック(2)を有する円筒形バイアルである。ネックの上部(3)は、容器の内部へのアクセスを可能にするオリフィスを有する。
【0020】
新規のワイパ(10)は、容器(1)のネック(2)内に配置されている。ワイパは、通常使用中に容易に又は誤って取り除くことができないように、容器のネックに固定されている。普通、ワイパと容器ネックの間の緊密な摩擦嵌めは、これを保証するのに十分である。図4a及び4bを参照すると、ワイパは、容器ネック内のワイパの十分な保持を保証する一つ又は複数の隆起したビード(11)を有することができる。ワイパと容器ネックの間の摩擦嵌めは、この用語が普通、当技術分野で理解されているように気密である。典型的なワイパは、ワイパが容器内に完全に嵌められる場合に、容器ネックの上部(3)に受け止められるフランジ(12)を有することができる。ワイパは、従来のワイパと同様に、上側オリフィス及び下側オリフィスを有する。最初の使用の前に、図4及び4bに示すように、上側及び下側オリフィスはそれぞれ、上側シール(13)及び下側シール(14)によって密封されている。
【0021】
上側シール(13)は、ワイパ(10)の上側オリフィスを閉鎖し、ワイパとの気密及び/又は流体密シールを形成する。上側シールは、気密シールを達成するように、ワイパへの摩擦嵌めであることが好ましい。例えば、上側シールは、気密連結がワイパの外部に対して達成されるように、ワイパフランジ(12)を囲むことができる。しかし(また、図4bに示すように)、上側シールはワイパの上側オリフィス内に挿入され、摩擦嵌めは上側シールの外部とワイパの内部の間で達成されることが好ましい。この配置は、より滑らかで、あまりかさばらなに外観を作り出すことができる。
【0022】
上側シール(13)は、上側シールがワイパ上に完全に嵌められている場合にワイパ(10)のフランジに受け止められるフランジ(15)を備えることができる。しかし、上側シールフランジと下側シールフランジの間の接触は、一次シールではない。上側シールフランジは、上側シールをワイパ内に挿入することができる深さを単に制限する。一次気密シールは、ワイパの内側で、ある距離だけ下に生じる。
【0023】
上側シールはまた、鋭い物体で比較的容易に穿孔又は穿刺することができる脆弱部(16)を有する。図4bでは、脆弱部はある距離だけ下で上側シール内に配置されている。脆弱部は、脆弱部と同じようには容易に穿孔又は穿刺することができない、上側シールのその他の部分と関連している。
【0024】
気密摩擦嵌めは上側シール(13)とワイパ(10)の間に存在するが、この嵌合は、上側シールを引っ張ることによってワイパが容器(1)から取り外されるほどきつくするべきではない。同時に、この嵌合は、消費者が上側シールをワイパから取り除くことが過度に難しいほどきつくするべきではない。当業者は、定期的実験によって、正確な気密嵌合に到達することができる。上側シールが取り外された後に、気密シールがワイパのフランジ(12)と容器クロージャの間で可能であることが不可欠である。
【0025】
下側シール(14)は、ワイパ(10)の下側オリフィスを閉鎖し、ワイパと気密及び/又は流体密シールを形成する。下側シールは、シールを達成するためのワイパへの摩擦嵌めであることが好ましい。例えば、下側シールは、気密連結がワイパの外部に対して達成されるように、ワイパの下部を囲むことができる。しかし(また、図4bに示すように)、下側シールはワイパの下側オリフィス内に挿入され、摩擦嵌めが上側シールの外部とワイパの内部の間で達成されることが好ましい。この配置は、容器開口部に嵌合することができるよりスリムなワイパ輪郭を作り出すことができる。
【0026】
下側シール(14)は、下側シールがワイパに完全に嵌められている場合にワイパ(10)の基部に受け止められるフランジ(17)を備えることができる。下側シールフランジは、下側シールをワイパ内に挿入することができる深さを制限する。上側シールとは異なり、下側シールは、鋭い物体で比較的容易に穿孔又は穿刺することができる脆弱部を有していない。下側シールの脆弱部は、本発明の動作を損なう可能性がある。
【0027】
気密摩擦嵌めは下側シール(14)とワイパ(10)の間に存在するが、この嵌合は、消費者が下側シールをワイパから取り除くことが過度に難しいほどきつくするべきではない。当業者は、定期的実験によって、正確な気密嵌合に到達することができる。
【0028】
容器(1)は、一次区画(1a)を画定する。密封されたワイパ(10)は、ある量の二次材料(I)を保持することができる二次区画(18)を作り出す。構成部品を組み立てる及び充填するいくつかの選択肢がある。
【0029】
例えば、容器(1)は、第一の製剤(M)を普通の方法で充填することができる。下側シール(14)は、ワイパ(10)に取り付けられる(固定される)ことができる。ワイパは、ある量の二次材料(I)で充填することができる。上側シール(13)は、ワイパに取り付けられることができる。その後、密封されたワイパは、容器オリフィス内に取り付けられることができる。
【0030】
別の方法では、容器(1)は、第一の製剤(M)を普通の方法で充填することができる。下側シール(14)は、ワイパ(10)に取り付けられることができる。その後、部分的に密封したワイパは、容器オリフィス内に取り付けられることができる。その後、ワイパはある量の二次材料(I)で充填することができ、上側シールはワイパに取り付けられることができる。
【0031】
パッケージが充填され組み立てられると、容器用クロージャ(22)は任意選択である。クロージャは、完全に嵌め込まれている場合に、クロージャがワイパフランジ(12)ではなく上側シールフランジ(15)を直接押え付けることを除いて、普通の方法で容器上にねじ込まれる。もちろん、このクロージャは、当技術分野で普通に行なわれるように、そこから懸架するアプリケータを有していない。したがって、アプリケータは、上側シール(13)及び下側シール(14)が取り除かれた後に使用するために、別々に供給しなければならない。
【0032】
上側及び下側シールを取り除くために、本発明による「多区画ワイパアプリケータパッケージ」は、密封除去器具を備えている。密封除去器具の一実施形態は、図7a〜dの有刺器具(barbed tool)(19)である。有刺器具は、上側シール(13)の脆弱部(16)を穿孔し、その後、下側シール(14)を取り除き、その後、ワイパから上側シール(13)を持ち上げることが可能である。ワイパに挿入された場合、有刺器具の尖っている端部は、上側シールの脆弱部を通ってこれを破断する(図7b)。尖っている端部は、脆弱部を除いて、上側シールの任意の部分を通してそれほど容易に破断することができない。器具をさらに挿入すると、器具は下側シールを当接する。消費者が手で供給することができる十分な力で、下側シールは取り除かれ、一次区画内に押し込まれ、ワイパから完全に分離される(図7c)。このとき、二次材料は一次区画に落ちる。下側シールの寸法及び形状は、後でワイパの下側オリフィスを通過することができないようになっている。また、一次区画内の取り除かれた下側シールは、アプリケータが挿入された場合に問題を生じない。実際、取り除かれた下側シールは混合要素として働いて、第一の製剤及び二次材料を混合させるのを助けることができる。有刺器具がワイパ内に挿入されすぎるのを防ぐため、有刺器具の部分(20)は、上側シールのフランジ(15)に受け止められる。「ワイパ内に挿入されすぎる」とは、有刺器具は、ワイパを取り除かれないように、ワイパの下面に係止されるべきではないという意味である。有刺器具が上側シールのフランジに受け止められた後で、有刺器具を持ち上げることにより、一つ又は複数の棘(鏃状のかかり(barb))(21)が上側シールの一部に当接することになる。消費者が手で供給することができる十分な力で、上側シールは取り除かれ、ワイパから完全に取り除かれる(図7d)。全ての意図及び目的で、容器はここでワイパを備えた従来のマスカラ容器のように働く。ワイパには損傷がなく、ワイパには異物残渣がない。有刺器具及び上側シールを廃棄することができる。当技術分野でよく知られているタイプのアプリケータを備えたクロージャは、普通の方法で容器内に挿入し、容器を密封するために使用することができる。
【0033】
上側及び下側シールの特性は、ワイパから押したり引いたりすることができ、ワイパから完全に分離させることができることである。この特性は必要であり、それにより上側及び下側シール、又はその任意の部分がワイパの機能に干渉することができない。この理由で、上側及び下側シールは十分に剛性がなくてはならず、それによって下側シールが有刺器具によって押された、又は上側シールが有刺器具によって引かれた場合に、各シールが破断又は引き裂かれることなく完全片として移動する。この理由で、紙、プラスチック、箔などの薄膜シールは普通、本発明の上側及び下側シールとは異なる。
【0034】
また、上側シール(13)及び下側シール(14)が取り除かれた場合に、ワイパの機能が損なわれないことが好ましい。したがって、ワイパはシールを取り除くことによって損傷を受けるべきではなく、異物がワイパに干渉することが可能であるべきではない。例えば、接着剤を使用することなく上側及び下側気密シールを生じさせることが好ましい。ワイパフランジ(12)上の接着剤残渣は、ワイパフランジと容器クロージャの間の気密シールに干渉する可能性がある。完全な気密シールではないものでは、製剤の急速な乾燥につながり、製品が使用不可能になる。さらに、下側シールが取り除かれた後に、ワイパの下部の接着剤残渣は、ワイパの機能に干渉する可能性がある。また、ワイパ上の接着剤残渣は、製剤の安定性に干渉する可能性がある。
【0035】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、ワイパ上に任意の異物を残したままにする、又はそうでなければワイパの機能に干渉する方法では、上側及び下側気密シールを形成しない。理想的には、摩擦嵌めが使用される。
【0036】
二次区画の利用可能性を考慮すると、熟練した製剤設計者が密封されたワイパ内に含めたいと考える任意の数の二次材料がある。このような材料としては、最初の使用で第一の製剤に効果的に混合させることができるもの、及び最初の使用のときまでその混合を遅らせることが有利であるものが挙げられる。普通、このようなものとしては、これに限らないが、着色料、活性剤、保存料、乾燥剤及びレオロジー重合調整剤が挙げられる。機能的には、このようなものとしては、カーラ、補強剤、分離剤、塊除去剤(declumper)、ボリューム剤、断片除去剤(deflaker)、デスパイカ(despiker)、まつげ増強剤、染み除去剤(desmudger)などを挙げることができる。
【0037】
最初の使用まで最初の製剤から離されていることにより利益が得られる可能性がある活性剤に関する一例は、酵素、トランスグルタミナーゼである。トランスグルタミナーゼは、まつげのカールを保持するためにまつげ製品で使用されていた。しかし、トランスグルタミナーゼの活性は、中に置かれる製剤のpH(5から約9が推奨であり、約6から約7が特に好ましい)、熱への露出(防ぐべきである)、特定のタイプの界面活性剤への露出(陰イオン界面活性剤は酵素に悪影響を与える)、及びこれらの要因に曝される時間の長さを含む、いくつかの要因に左右される。したがって、第一の製剤がトランスグルタミナーゼ活性を保存するのに最適でない場合、最初の使用のときまで第一の製剤からトランスグルタミナーゼを分離しておくことが有益である。トランスグルタミナーゼは、製品の保管寿命全体にわたって第一の製剤内の悪条件から保護される。最初の使用の後、トランスグルタミナーゼは保護されないが、失われた活性の量は製品の予期した使用寿命にわたって許容可能である。最初の使用まで第一の製剤から一つ又は複数の二次材料を分離しておくことによって、利益が得られるこのような多くの場合が生じる可能性がある。
【0038】
本発明による「多区画ワイパアプリケータパッケージ」では、ボトル及びクロージャアプリケータは最初の使用の前に物理的に分離されている。したがって、本発明は、本明細書に記載されているようにワイパを有し、第一の製剤を保持する容器であって、ワイパが一つ又は複数の二次材料を保持する容器と、クロージャアプリケータ(23)とを備えたキットを含んでいる(図8参照)。
【0039】
任意選択では、一体型アプリケータを備えていないクロージャ(22)がまた、キットに搭載されている。アプリケータを備えていないクロージャは、より優れた仕上げ外観を与えるように、容器内にねじ込むことができる。しかし、ワイパを備えた容器はクロージャなしで十分気密であることが好ましい。
【0040】
これまで説明した発明の改良は、当技術分野で既に知られている特性を追加することによって達成することができる。例えば、本発明による多区画マスカラパッケージは、さらに有用であり、振動アプリケータと組み合わされた場合に、より幅広い製剤可能性を作り出す。実際、特に第一の製剤に二次材料を混合させるために、振動アプリケータを使用することができる。振動アプリケータの一例が、米国特許出願公開第2006/0032512号に記載されている。
【0041】
別の改良は、本発明による「多区画ワイパアプリケータパッケージ」を加熱されたアプリケータに組み合わせることによって期待される。いくつかの二次材料を活性化させる、又は二次材料をより良く混合することを可能にするように第一の製剤の粘度を低くするために熱は有用である可能性がある。加熱素子を含む化粧品アプリケータの一例が、米国特許出願公開第2007/0286665号に記載されている。したがって、エネルギー(すなわち、熱又は振動など)を容器内に導入することができる場合、最初の使用のときに材料を混合することを可能にすることにより、製剤可能性が何倍にも大きくなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の製剤を保持することが可能である一次区画を画定し、オリフィスを備えたネックを有する容器と、
ある量の二次材料を保持することが可能である二次区画を画定し、前記容器の前記ネック内に配置され、上側及び下側オリフィスを有するワイパと、
前記上側オリフィスを閉鎖する上側シールと、
前記下側オリフィスを閉鎖する下側シールと、
前記二次区画内に置かれたある量の二次材料と、を備える多区画ワイパアプリケータパッケージ。
【請求項2】
前記上側及び下側シールが、それぞれ前記ワイパの上側及び下側オリフィス内に摩擦嵌めされている、請求項1に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージ。
【請求項3】
前記上側シールは、前記上側シールが前記ワイパ内に完全に嵌められている場合に、前記ワイパに受け止められるフランジをさらに備える、請求項2に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージ。
【請求項4】
前記上側シールが脆弱部を有する、請求項1に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージ。
【請求項5】
前記下側シールは、前記下側シールが前記ワイパ内に完全に嵌められている場合に、前記ワイパに受け止められるフランジをさらに備える、請求項2に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージ。
【請求項6】
容器用クロージャをさらに備える、請求項1に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージ。
【請求項7】
シール除去器具をさらに備える、請求項1に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージ。
【請求項8】
前記シール除去器具は有刺器具である、請求項7に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージ。
【請求項9】
前記有刺器具は、前記有刺器具が前記上側シール内に完全に挿入された場合に、前記上側シールのフランジに受け止められる部分を有する、請求項8に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージ。
【請求項10】
前記容器の前記一次区画を充填するステップと、
前記下側シールを前記ワイパに取り付けるステップと、
前記ワイパの前記二次区画を充填するステップと、
前記上側シールを前記ワイパに取り付けるステップと、
前記ワイパを前記容器オリフィス内に取り付けるステップと、を含む、請求項1に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージを充填し組み立てる方法。
【請求項11】
前記容器の前記一次区画を充填するステップと、
前記下側シールを前記ワイパに取り付けるステップと、
前記ワイパを前記容器オリフィス内に取り付けるステップと、
前記ワイパの前記二次区画を充填するステップと、
前記上側シールを前記ワイパに取り付けるステップと、を含む、請求項1に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージを充填し組み立てる方法。
【請求項12】
前記有刺器具で前記上側シールの前記脆弱部を穿刺するステップと、
前記下側シールに対して前記有刺器具を押すことによって、前記下側シールを取り除くステップと、
前記有刺器具で前記ワイパから前記上側シールを持ち上げるステップと、を含む、請求項2に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージを使用する方法。
【請求項13】
クロージャアプリケータをさらに備える、請求項1に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージ。
【請求項14】
前記二次区画は酵素を含んでいる、請求項1に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージ。
【請求項15】
前記酵素はトランスグルタミナーゼである、請求項14に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージ。
【請求項16】
前記クロージャアプリケータ内には振動アプリケータがある、請求項13に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージ。
【請求項17】
前記クロージャアプリケータ内には加熱されたアプリケータがある、請求項13に記載の多区画ワイパアプリケータパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−526865(P2011−526865A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516633(P2011−516633)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/048546
【国際公開番号】WO2010/002673
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)