説明

多孔質断熱部材およびこれを備えた内燃機関

【課題】破損の発生が抑制可能な多孔質断熱部材およびこれを備えた内燃機関を提供すること。
【解決手段】本発明は、外周部38の引っ張り強度が、中央部40の引っ張り強度よりも大きい多孔質断熱部材10であり、例えば、多孔質粒子42がバインダ44によって連結された構造を有し、外周部38におけるバインダ44の量が、中央部40におけるバインダ44の量に比べて多い多孔質断熱部材10である。本発明によれば、多孔質断熱部材10に破損が生じることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質断熱部材およびこれを備えた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼室の壁面に断熱部材を設けることで、低負荷時における冷却損失を低減させる技術が提案されている。その一方で、内燃機関の燃焼室の壁面に断熱部材を設けて燃焼室を断熱すると、高負荷時において燃焼室の壁温が高くなり、ノッキングや異常燃焼などが発生する場合がある。ノッキングなどの発生を抑制するために、例えば、特許文献1には、ピストンの頂面の一部分にのみ多孔質の断熱部材を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−193721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多孔質の断熱部材は、例えば低熱伝導率かつ低熱容量の断熱特性を有する。このような断熱特性を有する多孔質断熱部材を燃焼室の壁面に設けると、多孔質断熱部材は、燃焼室内に発生する燃焼ガスの温度に追従して温度変化する。この温度変化に起因して、多孔質断熱部材の外周部で破損が発生する場合がある。この破損は、時間経過と共に多孔質断熱部材全体に進行してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、破損の発生が抑制可能な多孔質断熱部材およびこれを備えた内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、外周部の引っ張り強度が中央部の引っ張り強度よりも大きいことを特徴とする多孔質断熱部材によって達成できる。これによれば、多孔質断熱部材の破損の発生を抑制できる。
【0007】
上記構成において、多孔質粒子がバインダによって連結された構造を有し、前記外周部における前記バインダの量が、前記中央部における前記バインダの量に比べて多い構成とすることができる。この構成によれば、多孔質断熱部材の熱伝導率および熱容量の増加を抑制しつつ、多孔質断熱部材の破損の発生を抑制できる。
【0008】
上記構成において、熱伝導率が0.05〜0.5W/mkである場合において、前記外周部であって表面からの深さが50μm〜200μmの間の領域における前記バインダの量が、前記中央部における前記バインダの量に比べて多い構成とすることができる。この構成によれば、多孔質断熱部材の破損を抑制しつつ、多孔質断熱部材の熱伝導率および熱容量の増加をより抑制できる。
【0009】
上記目的は、燃焼室の壁面に請求項1から3のいずれか一項記載の多孔質断熱部材を備えることを特徴とする内燃機関によって達成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多孔質断熱部材の破損の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、比較例に係る多孔質断熱部材の断面模式図の例である。
【図2】図2は、多孔質断熱部材の表面温度変化を示す模式図の例である。
【図3】図3(a)から図3(d)は、多孔質断熱部材の深さ方向の温度を示す模式図の例である。
【図4】図4は、実施例1に係る多孔質断熱部材を備えた内燃機関の構成を示す模式図の例である。
【図5】図5(a)は、図4におけるピストンの断面模式図の例であり、図5(b)は上面模式図の例である。
【図6】図6は、実施例1に係る多孔質断熱部材を示す模式図の例である。
【図7】図7は、実施例2に係る多孔質断熱部材を示す模式図の例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず初めに、本発明が解決しようとする課題について詳細に説明する。図1は、比較例の係る多孔質断熱部材を示す断面模式図の例である。図1のように、内燃機関の燃焼室の壁面60に低熱伝導率かつ低熱容量の多孔質断熱部材62が設けられている。多孔質断熱部材62は、例えば多孔質シリカである。内燃機関では、クランク角度に応じて、例えば吸気行程、圧縮行程、燃焼・膨張行程、排気行程の動作が行われる。吸気行程は、ピストンを下降させ、シリンダ内に混合ガスを流入する。圧縮行程は、ピストンを上昇させ、シリンダ内の混合ガスを圧縮する。燃焼・膨張行程は、混合ガスに着火し、燃焼ガスを発生させてピストンを押し下げる。排気行程は、ピストンを上昇させ、シリンダ内の燃焼ガスを排出する。このような4行程が行われることで、燃焼室内のガス温度は変化する。多孔質断熱部材62は低熱容量であることから、燃焼室内のガス温度の変化に追従して温度が変化する。
【0013】
図2は、多孔質断熱部材62の表面温度変化を示す模式図の例であり、横軸はクランク角[°CA]、縦軸は多孔質断熱部材62の表面温度[K]である。なお、多孔質断熱部材62の表面とは、燃焼室に露出している側の面のことをいう。図2のように、クランク角度に応じて吸気行程、圧縮行程、燃焼・膨張行程、排気行程の4行程が推移するため、クランク角度に応じて多孔質断熱部材62の表面温度は変化する。例えば、クランク角が0[°CA]から180[°CA]の間は吸気行程であり、シリンダ内に混合ガスが流入されるため、多孔質断熱部材62の表面温度は混合ガスの温度に追従して低下する。クランク角が180[°CA]から360[°CA]の間は圧縮行程である。この間も多孔質断熱部材62は混合ガスに曝されているため、表面温度は低下する。クランク角が360[°CA]から540[°CA]の間は燃焼・膨張行程である。シリンダ内の混合ガスに着火することで燃焼ガスが発生し、多孔質断熱部材62の表面温度は急激に上昇する。その後の膨張行程では、多孔質断熱部材62の表面温度は徐々に低下する。クランク角が540[°CA]から720[°CA]は排気行程である。排気行程の間も、多孔質断熱部材62の表面温度は徐々に低下する。
【0014】
図3(a)から図3(d)は、多孔質断熱部材62の深さ方向の温度を示す模式図の例であり、横軸は多孔質断熱部材62の深さ(μm)であり、縦軸は多孔質断熱部材62の温度(K)である。図3(a)は図2におけるクランク角200[°CA](図2の領域70)での、図3(b)はクランク角354[°CA](図2の領域72)での、図3(c)はクランク角405[°CA](図2の領域74)での、図3(d)はクランク角500[°CA](図2の領域76)での、多孔質断熱部材62の深さ方向の温度を示している。
【0015】
図3(a)から図3(d)のように、多孔質断熱部材62の内部の温度はあまり変化していないのに対し、多孔質断熱部材62の表面温度は大きく変化している。図1における多孔質断熱部材62の表面中央部64では、例えば多孔質断熱部材62を構成する多孔質粒子がその周りに位置する多孔質粒子に拘束されているため、温度変化が発生すると圧縮応力と引っ張り応力とが生じる。図3(b)および図3(c)に示されているように、圧縮応力の方が引っ張り応力よりも大きいが、多孔質断熱部材62が例えば多孔質シリカのような多孔質セラミック材からなる場合、多孔質セラミック材は引っ張り強度よりも圧縮強度の方が大きいため、上記の圧縮応力には十分耐え得る。
【0016】
一方、多孔質断熱部材62の表面の端部68(図1参照)では、例えば多孔質断熱部材62を構成する多孔質粒子は、その周りを多孔質粒子で完全には囲まれてなく、拘束がされていない状態である。このため、図3(c)のように、多孔質断熱部材62の表面温度が上昇すると、表面の端部68は熱膨張により伸長する。図1の矢印のように、多孔質断熱部材62の表面の端部68が伸長することで、この伸長に起因して、多孔質断熱部材62の表面から内部側であり且つ外周側である領域66に引っ張り応力が生じる。さらに、図3(c)のように、多孔質断熱部材62の温度変化の時間的遅れによって、多孔質断熱部材62の表面から100μm程度の内部では温度が一時的に低くなり、引っ張り応力が生じることになる。このため、多孔質断熱部材62の表面から内部側であり且つ外周側である領域66では、2重に引っ張り応力がかかることになり、破損が生じ易くなる。そこで、このような課題の解決を図り、破損の発生が抑制可能な多孔質断熱部材の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0017】
図4は、実施例1に係る多孔質断熱部材10を備えた内燃機関100の構成を示す模式図の例である。図4のように、シリンダブロック12にはシリンダ14が設けられている。シリンダ14内には往復動するピストン16が設けられている。シリンダ14の側壁には円筒形状のシリンダライナ18が設けられていて、ピストン16との摺動面を形成している。
【0018】
シリンダブロック12の上側にはシリンダヘッド20が配置されている。ピストン16の頂面22とシリンダヘッド20の下面24とで区画される領域が燃焼室26である。燃焼室26の壁面は、ピストン16の頂面22、シリンダヘッド20の下面24、吸気弁28および排気弁30の傘部であって燃焼室26に露出する下面32で構成されている。ピストン16の頂面22には多孔質断熱部材10が設けられている。
【0019】
シリンダヘッド20には、吸気ポート34および排気ポート36が設けられている。燃焼室26と吸気ポート34との連通は、吸気弁28の開閉によって制御される。また、燃焼室26と排気ポート36との連通は、排気弁30によって制御される。燃焼室26には、吸気ポート34を通って燃焼に必要な混合ガスが流入する。また、燃焼室26で発生した燃焼ガスは、排気ポート36を通って外部に排出される。
【0020】
図5(a)は、図4におけるピストン16を拡大した断面模式図の例であり、図5(b)は上面模式図の例である。図5(a)および図5(b)のように、燃焼室26の壁面であるピストン16の頂面22に多孔質断熱部材10が設けられている。多孔質断熱部材10の外周部38は中央部40に比べて引っ張り強度が大きくなっている。
【0021】
ここで、図6を用いて、多孔質断熱部材10について詳細に説明する。図6は、ピストン16の頂面22に設けられた多孔質断熱部材10を示す模式図の例である。図6のように、ピストン16の頂面22に設けられた多孔質断熱部材10は例えば多孔質シリカである。多孔質断熱部材10は、例えば球状メソポーラスシリカ粒子である多孔質粒子42が、例えば金属酸化物からなるバインダ44によって連結した構造を有する。球状メソポーラスシリカ粒子は、平均粒径が0.1〜3.0μm程度であり、粒径の揃った粒子である。また、球状メソポーラスシリカ粒子には、中心部から表面に向かって、平均孔径が例えば1〜10nm程度の無数の細孔が形成されている。このように、粒径が小さく、且つ、粒径の揃った複数の球状メソポーラスシリカ粒子がバインダによって接点で連結されているため、球状メソポーラスシリカ粒子同士は隙間なく積層されている。また、無数の細孔が球状メソポーラスシリカ粒子に形成されていることで、多孔質断熱部材10全体として70%以上の高い空孔率が実現されている。このため、多孔質断熱部材10は優れた断熱性を有する。
【0022】
多孔質断熱部材10の外周部38における多孔質粒子42を連結するバインダ44の量は、多孔質断熱部材10の中央部40における多孔質粒子42を連結するバインダ44の量に比べて多い。例えば、多孔質粒子42を100重量部とした場合に、多孔質断熱部材10の中央部40におけるバインダ44は20重量部以下であるのに対し、外周部38におけるバインダ44は20〜40重量部である。
【0023】
ここで、ピストン16の頂面22に多孔質断熱部材10を形成する製造方法について説明する。製造工程は、多孔質断熱部材10の前駆体を調整する第1工程と、前駆体からなる層をピストン16の頂面22に配置する第2工程と、前駆体とピストン16の頂面22とを一体的に焼成し、ピストン16の頂面22に多孔質断熱部材10の層を形成する第3工程と、を備える。
【0024】
第1工程は、例えば球状メソポーラスシリカ粒子の前駆体と、反応性結合材とを混合する工程である。第1工程を詳しく説明する。まず、シリカ原料と界面活性剤を含む原料を溶媒中で混合し、所定の温度条件以下で反応させることで、球状メソポーラスシリカ粒子の前駆体を製造する。球状メソポーラスシリカ粒子には中心部から表面に向かって無数の細孔が形成されており、この細孔内にマスキング物質が充填された状態で反応性結合材と混合する。マスキング物質として、例えば球状メソポーラスシリカ粒子の前駆体の調整に使用する界面活性剤を用いることができる。反応性結合材は、液体状態または溶液に溶解させた状態で球状メソポーラスシリカ粒子の前駆体と混合するため、反応性結合材が、表面張力によって、球状メソポーラスシリカ粒子の間に偏在し易くなり、球状メソポーラスシリカ粒子間を接点で連結し易くなる。
【0025】
第2工程は、第1工程を経て調整された多孔質断熱部材10の前駆体を、ピストン16の頂面22にシート状に配置する工程である。例えば、ピストン16の頂面22に多孔質断熱部材10の前駆体を配置した後、プレッサーにより上方から多孔質断熱部材10の前駆体を一定の面圧で加圧してシート状に成型する。その後、多孔質断熱部材10の外周部38におけるバインダ44の量が、中央部40におけるバインダ44の量に比べて多くなるよう、シート状に成型した多孔質断熱部材10の前駆体の外周部に反応性結合材を追加して滴下する。
【0026】
第3工程は、シート状に成型した多孔質断熱部材10の前駆体とピストン16の頂面22とを一体的に焼成して、ピストン16の頂面22に多孔質断熱部材10の層を形成する工程である。多孔質断熱部材10の前駆体とピストン16の頂面22とを一体的に焼成することで、反応性結合材が重合してバインダ44となり、球状メソポーラスシリカ粒子間を接点で連結させる反応と、球状メソポーラスシリカ粒子が直接またはバインダ44を介して間接的にピストン16の頂面22と結合する反応と、細孔内に充填されたマスキング物質が除去される反応とが同時に進行する。これにより、図6に示したような、ピストン16の頂面22に多孔質断熱部材10を形成することができる。なお、ピストン16の頂面22に多孔質断熱部材10を形成する製造方法は、上記製造方法に限られるわけではなく、例えば、球状メソポーラスシリカ粒子の前駆体を用いる代わりに、粒子状で焼成済みの球状メソポーラスシリカ粒子を用いて、ピストン16の頂面22に多孔質断熱部材10を形成してもよい。
【0027】
このように、多孔質断熱部材10は、図6に示すように、多孔質粒子42がバインダ44によって連結された構造を有し、多孔質断熱部材10の外周部38におけるバインダ44の量が、中央部40におけるバインダ44の量に比べて多い構造をしている。バインダ44の量が多くなると、多孔質粒子42間の結合力が大きくなるため、引っ張り強度が大きくなる。したがって、図5で示したように、多孔質断熱部材10の外周部38は中央部40に比べて引っ張り強度が大きくなる。
【0028】
比較例で説明したように、多孔質断熱部材10の表面から内部側でありかつ外周側である領域には、表面温度の上昇によって表面の端部46が伸長(図6の矢印)することに起因した引っ張り応力と、温度変化の時間的遅れに起因した引っ張り応力とがかかる。このため、実施例1のように、多孔質断熱部材10の外周部38の引っ張り強度を中央部40の引っ張り強度に比べて大きくすることで、多孔質断熱部材10の表面から内部側でありかつ外周側である領域に上述の引っ張り応力がかかった場合であっても破損することを抑制できる。
【0029】
また、実施例1のように、多孔質断熱部材10の外周部38におけるバインダ44の量を増加させ、中央部40におけるバインダ44の量の増加を抑制することで、多孔質断熱部材10の熱伝導率や熱容量が増加することを抑制できる。したがって、実施例1によれば、多孔質断熱部材10の熱伝導率および熱容量の増加を抑制しつつ、多孔質断熱部材10に破損が生じることを抑制できる。
【0030】
実施例1において、多孔質断熱部材10の外周部38におけるバインダ44の量を増やすことで、外周部38の引っ張り強度を中央部40の引っ張り強度よりも大きくする場合を例に示したがこれに限られるわけではない。その他の方法によって、多孔質断熱部材10の外周部38における引っ張り強度を中央部40における引っ張り強度よりも大きくする場合でもよい。
【0031】
実施例1において、多孔質粒子42は球状メソポーラスシリカ粒子であり、バインダ44は金属酸化物である場合を例に示したがこれに限られる訳ではない。バインダ44は、例えばSiなどの半金属の酸化物である場合でもよい。
【0032】
また、実施例1において、多孔質断熱部材10はピストン16の頂面22に備わる場合を例に示したが、例えばシリンダヘッド20の下面24や、吸気弁28および排気弁30の傘部の下面32など、燃焼室26の壁面に備わる場合が好ましい。また、多孔質断熱部材10は、内燃機関100の燃焼室26の壁面以外に備わる場合や、内燃機関100以外に装置に備わる場合でもよい。
【実施例2】
【0033】
図7は、実施例2に係る多孔質断熱部材50を示す模式図の例である。実施例2に係る多孔質断熱部材50も実施例1と同様に、内燃機関100の燃焼室26の壁面であるピストン16の頂面22に備わるが、この点については、図4および図5で説明しているため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0034】
図7のように、ピストン16の頂面22に設けられた多孔質断熱部材50は、多孔質断熱部材50の外周部52において、表面からの深さが50μm〜200μmの間の領域Yにおける多孔質粒子42を連結するバインダ44の量が、多孔質断熱部材50の中央部54における多孔質粒子42を連結するバインダ44の量に比べて多い構造をしている。なお、多孔質断熱部材50の表面とは、ピストン16の頂面22に接する面に対して反対側の面であり、燃焼室26に露出する面である。その他の構成については、実施例1と同じであり、図6で説明しているため、ここでは説明を省略する。また、ピストン16の頂面22に多孔質断熱部材50を形成する製造方法についても、実施例1で説明した製造方法と同様の方法を用いることができるため、ここでは説明を省略する。
【0035】
実施例2では、多孔質断熱部材50は、多孔質断熱部材50の外周部52であって表面からの深さが50μm〜200μmの間の領域Yにおけるバインダ44の量が、中央部54におけるバインダ44の量に比べて多い構造をしている。多孔質断熱部材50の熱伝導率が0.05〜0.5W/mkの場合に、多孔質断熱部材50の表面温度の上昇により表面の端部56が伸長(図7の矢印)することに起因した引っ張り応力は、多孔質断熱部材50の表面から50〜200μm程度の間の外周部52にかかり易くなる。このため、多孔質断熱部材50の外周部52であって表面から深さが50μm〜200μmの間の領域Yは破損が発生し易くなる。したがって、領域Yでの破損を抑制するために、多孔質断熱部材50の外周部52であって表面からの深さが50μm〜200μmの間の領域Yにおけるバインダ44の量を多くして引っ張り強度を高くすることが好ましい。
【0036】
また、実施例2では、バインダ44の量を増やした領域が実施例1に比べて小さいため、多孔質断熱部材50の熱伝導率および熱容量の増加をより抑制することができる。よって、実施例2によれば、多孔質断熱部材50の破損を抑制しつつ、多孔質断熱部材50の熱伝導率および熱容量の増加をより抑制できる。
【0037】
実施例2において、バインダ44の量を増やす領域Yは、多孔質断熱部材50の表面からの深さが50μm〜200μmの間の領域である場合を例に示した。このように、多孔質断熱部材50の表面温度の上昇により表面の端部56が伸長することに起因した引っ張り応力が発生する領域のバインダ44の量を増やす場合が好ましい。よって、例えば、多孔質断熱部材50の熱伝導率が0.05W/mk以下の場合には、表面温度の上昇により表面端部が伸長することに起因した引っ張り応力は、多孔質断熱部材の表面から0μm〜50μm程度の間の外周部にかかり易くなる。よって、多孔質断熱部材50の熱伝導率が0.05W/mk以下の場合には、多孔質断熱部材の外周部であって表面からの深さが0μm〜50μmの間の領域におけるバインダの量を多くすることが好ましい。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 多孔質断熱部材
12 シリンダブロック
14 シリンダ
16 ピストン
18 シリンダライナ
20 シリンダヘッド
22 ピストンの頂面
26 燃焼室
28 吸気弁
30 排気弁
34 吸気ポート
36 排気ポート
38 多孔質断熱部材の外周部
40 多孔質断熱部材の中央部
42 多孔質粒子
44 バインダ
50 多孔質断熱部材
52 多孔質断熱部材の外周部
54 多孔質断熱部材の中央部
100 内燃機関

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部の引っ張り強度が、中央部の引っ張り強度よりも大きいことを特徴とする多孔質断熱部材。
【請求項2】
多孔質粒子がバインダによって連結された構造を有し、前記外周部における前記バインダの量が、前記中央部における前記バインダの量に比べて多いことを特徴とする請求項1記載の多孔質断熱部材。
【請求項3】
熱伝導率が0.05〜0.5W/mkである場合において、前記外周部であって表面からの深さが50μm〜200μmの間の領域における前記バインダの量が、前記中央部における前記バインダの量に比べて多いことを特徴とする請求項2記載の多孔質断熱部材。
【請求項4】
燃焼室の壁面に請求項1から3のいずれか一項に記載の多孔質断熱部材を備えることを特徴とする内燃機関。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate