説明

多層センサ

多層センサ(10)と、該多層センサ(10)の使用方法とを開示する。このセンサは多層形の実施形態を有している。このセンサ(10)には光導波管(18)が通されており、外力が加えられたときに、外力が光学的導波管に作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層センサ、および、該多層センサを自動車の圧力センサ、および/または、力センサとして使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行者を保護する新法の導入の範囲内で、要件を満たす種々の有効な基準が計画されている。この目的のため、これから数年以内に、自動車には力センサおよび/または圧力センサが益々取付けられ、衝撃を受けたときまたは衝突時に、これらのセンサは、どのような種類の物体に衝突したかを検出するようになるであろう。かくして、例えば、車両が衝突したのが樹木であるか、他の車両であるか、または、歩行者であるかを区別できる。歩行者に対する有効な保護を行うため、歩行者との衝突が検出されたときは適当な反応が生じ、すなわち、適当な手段例えばエアバッグが作動され、または、ボンネットが変形されるであろう。
【0003】
かくして、この目的に使用されるセンサは、信頼性ある識別ができるようにするため、信号を極めて迅速に供給できなくてはならない。
【0004】
刊行された下記特許文献1には、荷重(ロード)が光ファイバ構造体に作用する、ケーブルの形態をなす光ファイバロードセンサが開示されている。光ファイバ構造体は、プラスチックコアの回りで同方向に巻回された2本の光ファイバを有している。
【0005】
【特許文献1】ドイツ国特許DE 195 34 260 C2明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明による多層センサには光学的導波管が通され、この導波管は、外力が加えられた場合に、外力が光学的導波管に作用するように構成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
外力の付与により曲げられる光学的導波管または外力の付与により変形されて横断面が変化する光学的導波管が提供される。両導波管において、光学的導波管を通る光量の変化により、例えば、衝撃の結果としての力の付与を検出できる。
【0008】
本発明によるセンサの1つの特徴によれば、センサは前方層および後方層を備えた構造体を有し、該構造体内に光学的導波管が配置されている。この実施形態では、好ましくは、硬質ではあるが可撓性を有する材料で作られた層が、光学的導波管に直接作用し、外力が付与された場合に一般的な態様で光学的導波管を曲げる。層に適した材料として、熱可塑性ポリウレタンまたは熱可塑性ポリエステルエラストマーがある。これらの材料は、広範囲の温度で事実上一定の特性を呈する。
【0009】
構造体すなわち前方層および後方層には、光学的導波管を保持する機能を有する或るアタッチメントすなわち幾何学的部材例えばクリップ、および/または、リブを設けることができる。これらはまた、光学的導波管の曲げが、外力の付与の結果として正確に定められた態様で生じることを確保する。この実施形態では、力が加えられることによっても作動能力が損なわれることがなく可撓性を維持することが保証される。
【0010】
上記実施形態では、構造体は光学的導波管に直接接触しているので、構造体に作用するあらゆる外力が光学的導波管に直接伝達される。
【0011】
1つの特徴によれば、前方層と後方層との間に、両層を一体に保持する接着剤層が設けられ、光学的導波管が接着剤層による影響を受けないようにするには、この接着剤層は、両層の縁部の領域にのみ塗布するのが好ましい。しかしながら、層は全面に亘って形成することもできる。この層は、センサ特に光学的導波管を汚れおよび水分から保護する。
【0012】
接着剤層の材料特性がセンサの挙動に影響を与えることに留意すべきである。センサの挙動すなわち感度は、構造体、接着剤層および光学的導波管の材料を適宜選択することにより正確に調節できる。特定外力が加えられたときの両層間の相対移動度合いは、例えば硬度、接着剤層の幅、接着剤層の数等のパラメータにより調節できる。
【0013】
他の実施形態では、本発明によるセンサは、光学的導波管が通される第一層と、該第一層に当接する第二層とを有している。この場合、第一層は、第二層よりも高い圧縮性を有する。
【0014】
かくして、第一層よりも硬い第二層は、衝突により引起こされた衝撃または圧力を吸収し、かつこれを実質的に損失なくして第一層に伝達する。この軟らかい方の第一層は変形し、従って該第一層内に収容された光学的導波管を変形させる。従って、第一層は、第二層に使用される材料よりも高い圧縮性を第一層に伝達する材料で形成される。しかしながら、光学的導波管と少なくとも一方の外方硬質層とを直接接触させることにより、衝撃によって光学的導波管が確実に曲げられるようにすることができる。
【0015】
衝突時の光学的導波管の機械的変形の結果として、光学的導波管を通る光量が変化される。衝突の各種類(例えば、歩行者、屋外用ごみ箱、小動物等)によって、衝突に対する特定信号が発生される。次に、この信号は、任意であるが、次の作動手段をトリガ作動させる。衝突の結果として、光量および発生電圧が変化される。
【0016】
第三層は、第一層よりも低い圧縮性を有しかつ第二層との間に第一層が配置されるように配置されることが好ましい。
【0017】
層は、例えばポリウレタン(PUR)のようなプラスチック材料で作るのが好ましい。
【0018】
層が可撓性材料で作られるならば、センサは、これを曲げることにより種々の表面形状に適合させることができ、従って、作動クオリティを損なうことなくどこにでも取付けることができる。
【0019】
本発明によるセンサの1つの特徴によれば、光学的導波管は第一層に2回通される。また、光学的導波管は、波状すなわち小波状の形態で第一層に通されるのが有利である。
【0020】
第一層は、鋳造組成物(cast composition)で形成するのが好ましい。
【0021】
本発明による使用方法は、上記センサを、歩行者の保護を目的として、自動車の圧力センサ、および/または、力センサとして使用することを考えたものである。
本発明の他の特徴および長所は、本願明細書および添付図面から明らかになるであろう。
【0022】
上記特徴および以下に説明する特徴は、特定組合せに使用できるだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組合せにも使用できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
添付図面には、本発明の実施形態を例示することにより本発明が概略的に示されており、以下、添付図面を参照して本発明を説明する。
【0024】
図1は、本発明による多層センサ(その全体を参照番号10で示す)を示す側面図である。このセンサ10は、歩行者保護の目的で自動車に使用できるものである。
【0025】
図面には、第一層(この場合には鋳造組成物からなる)12と、前方破壊構造体とも呼ばれる第二層14と、後方破壊構造体と呼ばれる第三層16とが示されている。
【0026】
第一層12には、光学的導波管18が通されている。光学的導波管18は、第三層16上に形成されたドーム20により案内される。第二層14上にはリブ22が形成されている。
【0027】
第二層14および第三層16は、射出成形法により製造できる。重要なことは、これらの両層14、16が第一層12より低い圧縮性を有することである。衝撃が加えられた場合には、力は、第二層14すなわち前方破壊構造体を介して第一層12に伝達され、これにより、第一層12自体および該第一層12内に収容されている光学的導波管が形成される。
【0028】
図2は、第二層30および第三層32を上方から見たところを示す。ドーム34が、第三層30すなわち後方破壊構造体に設けられているところが示されている。これらのドーム34には、光学的導波管を通すことができるスロット36が設けられている。
【0029】
ドーム34は、常に、互いに並置された対をなして配置され、これらの対は、互いに横方向にオフセットさせることができることは明らかである。かくして、光学的導波管は、隣接する第一層に2回かつ波状形態をなして通される。ドーム34は第一層内に突出する。
【0030】
また、リブ38が、第二層32すなわち後方破壊構造体に設けられているところも示されている。
【0031】
図3には、光学的導波管42が取付けられた第三層40が、簡単化された形態で示されている。光学的導波管42は、波形すなわち小波状形態に案内されていることが明白である。第三層40の同じ端部には、入光端44および出光端46が設けられている。第三層40の他端部で、光学的導波管42はループ48を形成しており、これにより、光学的導波管42は、第三層40に2回通されて第一層内に入る。
【0032】
本発明によるセンサでは、信号の付勢は、センサの全幅に亘って衝撃位置および衝撃角度とは無関係である。また、センサの作動は、周囲温度による影響は受けない。光学的導波管は第一層内に埋入されるので、環境的要因から保護される。他の長所は、腐食性材料が全く使用されていないことである。大きな長所は、センサがあらゆる形式の車両に使用できることである。
【0033】
図4には、本発明の他の実施形態によるセンサ(その全体を参照番号50で示す)が示されている。前方層54および後方層56を備えた構造体52が示されている。矢印58は、衝撃により発生される圧力または力の可能性ある作用を示す。
【0034】
光学的導波管60は、構造体52すなわち前方層54と後方層56との間に通される。2つの層54、56は両方ともリブ62を有し、これらのリブ62は、衝撃が加えられて両層54、56の間に相対移動が生じると、光学的導波管60が曲げられるように、互いに調和されている。この曲げにより、光学的導波管60を通って単位時間当りに搬送される光量の変化が引起こされる。
【0035】
図5には、センサ50の作動モードが示されている。図5にはまた、接着剤層すなわち接着剤のビード70が示されている。接着剤のビード70は、両層54、56を一体に接合しかつ構造体52内で案内される光学的導波管60を環境的要因から保護する。
【0036】
図5の左側図面には、力(矢印72)の作用の結果として、接着剤のビード70がいかに変形され、これにより両層54、56間の相対移動が可能になるかが示されている。少なくとも一方の層が光学的導波管60に直接接触(任意であるが、衝撃が加えられる前から直接接触させておくことができる)しているときは、この導波管は曲げられている。従って、衝撃が加えられる前でも構造体52と光学的導波管60とを直接接触させることができ、或いはこの接触を、前述のように相対移動の結果として生じさせることもできる。いずれの場合でも、構造体の形状およびモールディング成形リブの形状の補助により、光学的導波管が曲げられる。
【0037】
図6には、本発明の他の実施形態によるセンサ(その全体を参照番号80で示す)が示されている。
【0038】
図6にはまた、前方層84および後方層86を含む構造体82が示されている。これらの両層84、86の間には、光学的導波管(図示せず)が延びている。両層84、86上でのリブ88の対応配置が明瞭に示されている。2つのリブ88間の距離(矢印90)は、約8.5mmであるのが好ましい。
【0039】
図7は、本発明によるセンサ100を上から見た図面である。図7には、対をなして配置されかつ光学的導波管を波状形態に配置できるクリップ102が示されている。これらのクリップ102は、光学的導波管をセンサ100内に確実に固定する。
【0040】
センサ100は構造体104を有し、図7には構造体104の前方層106のみが示されている。前方層106の縁部の領域には接着剤層108が塗布されており、該接着剤層108は、前方層106を、この下に横たわる後方層(図示せず)に取付ける。この接着剤層108は、センサ100または該センサ100内に収容された光学的導波管を外的要因から保護する。接着剤層の材料および層の幅は、両層の相対移動性、従ってセンサの感度に影響を与える。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による好ましい実施形態を示す側面図である。
【図2】第二層および第三層の実施形態を示す平面図である。
【図3】光学的導波管を備えた第三層を簡単化した形態で示す図面である。
【図4】本発明によるセンサの他の実施形態を示す側面図である。
【図5】図4のセンサの作動方法を示す図面である。
【図6】本発明によるセンサを高度に簡単化した態様で示す概略図である。
【図7】本発明によるセンサを示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 多層センサ
12 第一層
14 第二層(前方破壊構造体)
16 第三層(後方破壊構造体)
18 光学的導波管
20 ドーム
22 リブ
44 入光端
46 出光端
70 接着剤層(接着剤ビード)
102 クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層センサであって、該多層センサに光学的導波管(18、42、60)を通してあり、前記光学的導波管(18、42、60)は、外力が加えられたときに、力が前記光学的導波管(18、42、60)に作用するように構成されることを特徴とする多層センサ。
【請求項2】
前記光学的導波管(18、42、60)は、外力の付与により曲げられるように構成されることを特徴とする請求項1記載の多層センサ。
【請求項3】
前記光学的導波管(18、42、60)は、外力の付与により変形されるように構成されることを特徴とする請求項1記載の多層センサ。
【請求項4】
前記光学的導波管(18、42、60)を収容する構造体(52、82、104)を有し、該構造体(52、82、104)は、外力を光学的導波管(18、42、60)に直接伝達する前方層(54、84、106)および後方層(56、86)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層センサ。
【請求項5】
前記構造体は、光学的導波管(18、42、60)を案内する機能を有するクリップ(34、102)およびリブ(38、62、88)を有することを特徴とする請求項4記載の多層センサ。
【請求項6】
前記前方層(54、84、106)および前記後方層(56、86)は、接着剤層(70、108)により一体に接合されることを特徴とする請求項4または5記載の多層センサ。
【請求項7】
前記接着剤層(70、108)は、前記前方層(54、84、106)および前記後方層(56、86)の縁部の領域のみに塗布されることを特徴とする請求項6記載の多層センサ。
【請求項8】
前記光学的導波管(18、42、60)を通す第一層(12)と、該第一層(12)に当接する第二層(14、32)とを有し、前記第一層(12)は前記第二層(14、32)よりも高い圧縮性を有することを特徴とする請求項1記載の多層センサ。
【請求項9】
第三層(16、30、40)が設けられており、該第三層は前記第一層(12)よりも低い圧縮性を有し、前記第三層(16、30、40)は、該第三層(16、30、40)と前記第二層(14、32)との間に前記第一層(12)が配置されるように構成されることを特徴とする請求項8記載の多層センサ。
【請求項10】
前記光学的導波管(18、42、60)は、少なくとも2回、センサ(10、50、80、100)に通されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の多層センサ。
【請求項11】
前記光学的導波管(18、42、60)は、波状形態でセンサに通されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の多層センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−504939(P2006−504939A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547607(P2004−547607)
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012020
【国際公開番号】WO2004/040250
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(505156352)デコマ (ジャーマニー) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (6)