説明

多層化粧料容器

【課題】多層化粧料容器において、内部容器と外部容器とを密着させ、内部容器の所望の外観を効果的に表出させること。
【解決手段】開口部を形成する1つの首部と、該首部の径よりも太い胴部と、該胴部と前記首部とを繋ぐ肩部を有し、内部が中空である合成樹脂製の内部中空容器の、前記首部及び肩部、もしくは首部の、一部または全部を除いた前記内部中空容器の外側全体を、外部層として透明又は半透明の溶融樹脂を射出してオーバーモールドした多層化粧料容器において、外部層のない前記内部中空容器の外側の露出部分に最も近い、外部層でオーバーモールドされる首部または肩部の周上に、溝状の係合凹部、またはリブ状の係合凸部が連続もしくは間欠に形成され、前記係合凹部または係合凸部が、射出成形によって形成した前記外部層で覆われていることを特徴とする多層化粧料容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部中空容器を透明又は半透明の外部層で覆った多層化粧料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
不透明な内部中空容器の周りを、透明又は半透明の外部層で覆う(以下、オーバーモールドという)多層化粧料容器がある(例えば、特許文献1参照)。この種の容器は、外部層が内部中空容器を保護して容器全体の強度を向上させるのみならず、外部層を透して内部中空容器の本来の外観を見せることで独特の外観が表出し装飾性にも優れている。このため、耐久性と外観を重視する化粧料容器として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4377447
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、内部中空容器の一部、特に開口部を形成する首部が外部層に覆われず露出しているような構造の多層化粧料容器においては、落下などで首部に衝撃が加えられると、外部層がある部分とない部分の境界において、密着していた内部中空容器と外部層が剥がれることがあった。この剥がれによって内部中空容器と外部層の間に空気層が形成されると、該多層化粧料容器は壁面内部にシミが生じたような外観を呈し、さらに、該容器を使用中に中味などの液体が前記剥がれ部位に入り込むようになり、するとシミ様の間隙はますます目立つようになるため、外観を重視する容器としての価値を大きく損なうという問題があった。
【0005】
また、中空である内部中空容器を成形するために、圧力などの成形条件は厳密に管理されるが、外層部の材料充填量や、内部中空容器のバラツキにより、金型キャビティ内の充填率が相対的に増減することで悪影響が起きるという問題があった。
【0006】
例えば、内部中空容器が小さめの場合は、内部中空容器外面とオーバーモールド型内の充填部分が増大し充填不足が生じ、上記係合凹部または係合凸部が充分に形成されず、内部中空容器および外層部の密着保持力が不足することが起こりうる。
【0007】
反対に、内部中空容器が大きめの場合は、成形条件、充填量が一定であっても外層部充填量が減少することになり、相対的に過充填となって、外層部樹脂の圧力が中空である内部中空容器に加わり、結果的に変形や歪みを生じさせてしまうということが起こりうる。
【0008】
本発明の目的は、多層化粧料容器の、露出する内部中空容器とオーバーモールドした外部層との境界における剥離を防止し、内部中空容器と外部層との密着を保持することである。また、オーバーモールド時の内部中空容器の変形を防止して、生産性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の代表的な構成は、
開口部を形成する1つの首部と、該首部の径よりも太い胴部と、該胴部と前記首部とを繋ぐ肩部を有し、内部が中空である合成樹脂製の内部中空容器の、前記首部及び肩部、もしくは首部の、一部または全部を除いた前記内部中空容器の外側全体を、外部層として透明又は半透明の溶融樹脂を射出してオーバーモールドした多層化粧料容器において、外部層のない前記内部中空容器外側の露出部分に最も近い、外部層でオーバーモールドされる首部または肩部の周上に、溝状の係合凹部、またはリブ状の係合凸部が連続もしくは間欠に形成され、前記係合凹部または係合凸部が、射出成形によって形成した前記外部層で覆われていることを特徴とする。
【0010】
また、前記係合凹部または前記係合凸部が、内部中空容器の首部または肩部の周縁に、形成されていることを特徴としてもよい。
【0011】
また、内部中空容器の首部または肩部の周縁に設置された係合凹部または係合凸部を覆う外部層を形成する溶融樹脂が、射出成形工程において、前記係合凹部または係合凸部を覆った後に、さらに金型内に充填されるように、樹脂溜まりを設けたことを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記構成により、多層化粧料容器において、落下衝撃などによって、露出する内部中空容器とオーバーモールドした外部層との境界において、密着していた内部中空容器と外部層が剥がれ現象を防止することができ、容器の外観を美しく保つことができる。
【0013】
また、製造状の製品・条件のバラツキを吸収しつつ、容器の変形・歪みを防止して、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る多層化粧料容器の説明図。
【図2】本実施形態に係る多層化粧料容器の断面図。
【図3】本実施形態の変形例に係る多層化粧料容器の断面図。
【図4】本実施形態の他の変形例に係る多層化粧料容器の断面図。
【図5】比較例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は本実施形態に係る多層化粧料容器の斜視図であり、(a)が多層化粧料容器10、(b)が内部中空容器11、(c)が模式的な外部層12を示す。図2は本実施形態に係る多層化粧料容器の断面図であり、(a)が本実施形態の断面図、(b)及び(c)が本実施形態の変形例の断面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、多層化粧料容器10は、化粧料を収容する内部中空容器11と、内部中空容器11に密着して外部を覆う透明又は半透明の外部層12とから構成される。
【0017】
図1(a)及び図2(a)に示すように、多層化粧料容器10は、胴部A、底部B、肩部C、首部Dの各部を有する一体的なボトル形状である。肩部Cは丸みを帯びている。また、首部は外部層12には覆われておらず、内部中空容器11の首部Dが外部に露出している。次に多層化粧料容器10を構成する部材について説明する。
【0018】
図1(b)に示す内部中空容器11は、多層化粧料容器10の内部を構成するもので、化粧料を収容する。内部中空容器11もボトル形状であり、胴部A1、底部B1、肩部C1、首部Dから構成される。
【0019】
図1(c)は外部層12の模式図である。尚、実際の外部層12は、内部中空容器11に密着して覆うように成形されるものであるため、図1(c)のように単独で外部層12が存在することはない。外部層12は、内部中空容器11を不図示の金型に挿入した後、溶融樹脂を内部中空容器11の外側から射出してオーバーモールドすることで形成される。
【0020】
外部層12は、図2(a)に示すように、内部中空容器11の胴部A1、底部B1、肩部C1の外部を覆うものである。内部中空容器は11は具体的には合成樹脂で構成され、透明、半透明、不透明を問わない。外部層12は透明又は半透明の光を透過する素材であり、具体的には合成樹脂で構成される。
【0021】
図1(a)の多層化粧料容器10では、内部中空容器11の首部Dのみが、図2(a)に示すように肩部Cとの付け根部分を除いて外部層12に覆われず、露出した状態となる。肩部に段差が設けられ、外部層12がその段差までを覆い、すなわち首部Dの全部と、肩部Cの一部が外部層12に覆われず、露出した状態であってもよい。図面では内部中空容器に周状凸部があり、外層部がその凸部を覆うように形成されるが、嵌合部凹凸形状は、内部中空容器と外層部のいずれが凹凸であってもよい(図2(b)参照)。また、図2(c)のように、内部中空容器に段差がなく、内部中空容器の首部が露出した状態でもよい。図2(a)と同様に、嵌合部凹凸形状は、内部中空容器と外層部のいずれかが凹凸であってもよい。
【0022】
前記のように内部中空容器11の首部Dの一部または全部、あるいは首部Cの全部と肩部Cの一部だけが外部層12に覆われず露出した多層化粧料容器10においては、例えば首部Dを下にして床面に落下し、首部Dに容器全体の荷重がかかると、肩部Cがその負荷を受けて変形することになり、その結果、図5に示すように、外部層がある部分とない部分の境界において、密着していた内部中空容器111と外部層112が剥がれ、そこに空気層が形成される。尚、図5は比較例を示す断面図である。
【0023】
図5において前記空気層は、内部中空容器111と外部層112の間に生じたシミのように見える上、そこに開口部からつたった化粧料中味等の液体が染み込むようになるため、多層化粧料容器の外観を著しく損なう原因となる。
【0024】
(空気層の防止のための構造及び製造方法)
落下等の衝撃により、密着していた内部中空容器と外部層の間に剥離が起きた場合は、密着部と剥離部が界面となり、意図しない斑や水濡れのような見え方となり美観を著しく損ねることとなる。
【0025】
すなわち上述の外観を美しく保つためには、密着した内部中空容器11と外部層12との間の剥離を防止しなければならない。
【0026】
このため本実施形態においては、外部層12で覆われていない前記内部中空容器外側の露出部分に最も近い、外部層で覆われた内部中空容器の首部または肩部の周上に、溝状の係合凹部、またはリブ状の係合凸部が連続もしくは間欠に形成される。
【0027】
図2のように係合凸部11aが内部中空容器11の首部Dに形成されると、内部中空容器11を金型に入れて外部層12でオーバーモールドするとき、射出された溶融樹脂が係合凸部11aを覆うことで対応する係合凹部12aが形成される。このように凹凸を介して内部中空容器11と外部層12が密着すると、平坦な状態と比べ接着面積が増えるため、当該箇所の接着強度を向上することができる。
【0028】
また、係合凸部11a及び係合凹部12aは、肩部C上に凹凸が上下方向を向くように形成されても構わないが、凹凸を首部の径方向に向くように形成した方が、首部からの落下時に、内部中空容器11の肩部Cが容器の内部方向に向かって動くのを、該凹凸がその垂直方向から支えることになるため、より優れた剥離防止効果を得ることができる。また、径方向と上下方向を組み合わせ、屈曲部を設けた形状でもよい。
【0029】
図3は本実施形態の変形例に係る多層化粧料容器の断面図である。図3に示すように、内部中空容器11側を係合凹部11bとして、外部層12側を係合凸部12bとしてもよい。同様に、径方向と上下方向を組み合わせ、屈曲部を設けた形状でもよい。
【0030】
また、前述の実施形態においては、内部中空容器の凹部で、内部中空容器首部の外径17φの場合に、高さ方向1.3mm、水平方向0.5mm凹部(テーパーあり)が全周に渡って設けられているがこれに限るものではない。製品径や形状により、大きくしたり、間欠に設けたりしてもよく、凹凸の断面形状は、三角形や台形、半円形などであっても構わない。
【0031】
図4を用いて樹脂溜り部がある構成を説明する。図4は本実施形態の他の変形例に係る多層化粧料容器の断面図である。
【0032】
図4(a)に示す変形例では、首部の下方に、内部中空容器11の外壁に沿って高さ方向に外部層12の樹脂溜りを設けてある。底部にゲートが設けられ、充填材料は内容器の外周壁とオーバーモールド型の間の隙間に充填され、底部、側壁部、肩部、係合部を形成しながら、首部下方の樹脂溜り部12gに到達する。この例では、樹脂溜り部12gは内部中空容器11の首部の高さ方向に設けられている。
【0033】
内部中空容器の形状や大きさにより、図4(b)に示すように、樹脂溜りをネジ部まで到達させてもよいし、首部の高さ方向の一部の高さでもよい。さらに、図示はしないが、高さ方向に伸びてから部分的に首の径方向に伸びた形状でも、径方向に伸びる形状でもよく、形状は問わない。また、前述の図1から図3で実施形態においては、樹脂溜りのない構成だが、同様に樹脂溜りを適用することができる。さらに、外部層のゲートの位置についても、底に設けた例で詳述したが、底部に限定されるものではない。
【0034】
この樹脂溜まりが材料充填量のバラツキを吸収し、他の部分に悪影響を与えずに、外部層12と内部中空容器11とを強固に密着させ、生産性を向上させることができる。
【0035】
また、樹脂溜り部12gは、外部層12が透明または半透明の樹脂であることと、形成される位置が首部の下方であることで、目立ちにくく、外観上の違和感なく形成することができる。さらに、容器開口部を閉止するために嵌着されるネジキャップや定量吐出のスプレーノズルやディスペンサー(図示せず)などに隠れるようにすることもでき、必要機能を満たしつつ、製造上と外観上の要求を満たすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、不透明な内部中空容器を透明又は半透明の外部層で覆った多層化粧料容器に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
A、A1…胴部
B、B1…底部
C、C1…肩部
D…首部
10…多層化粧料容器
11…内部中空容器
11a…係合凸部
11b…係合凹部
12…外部層
12a…係合凹部
12b…係合凸部
12g …樹脂溜り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を形成する1つの首部と、該首部の径よりも太い胴部と、該胴部と前記首部とを繋ぐ肩部を有し、内部が中空である合成樹脂製の内部中空容器の、前記首部及び肩部、もしくは首部の、一部または全部を除いた前記内部中空容器の外側全体を、外部層として透明又は半透明の溶融樹脂を射出してオーバーモールドした多層化粧料容器において、外部層のない前記内部中空容器の外側の露出部分に最も近い、外部層でオーバーモールドされる首部または肩部の周上に、溝状の係合凹部、またはリブ状の係合凸部が連続もしくは間欠に形成され、前記係合凹部または係合凸部が、射出成形によって形成した前記外部層で覆われていることを特徴とする多層化粧料容器。
【請求項2】
請求項1記載の多層化粧料容器において、前記係合凹部または前記係合凸部が、内部中空容器の首部または肩部の周縁に、形成されていることを特徴とする多層化粧料容器。
【請求項3】
請求項2記載の多層化粧料容器において、内部中空容器の首部または肩部の周縁に設置された係合凹部または係合凸部を覆う外部層を形成する溶融樹脂が、
射出成形工程において、前記係合凹部または係合凸部を覆った後に、さらに金型内に充填されるように、樹脂溜まりを設けたことを特徴とする多層化粧料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−100737(P2012−100737A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249512(P2010−249512)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】