説明

多層抄き合わせ紙の製造方法及びその製造装置

【課題】
長網抄紙機の抄紙網上で多層紙を抄く、従来のヘッドボックスの単一スライス板による原料吐出量の問題を解決するために、中間層にシートを挿入され、かつ、抄紙方向の幅方向に対して均一な坪量プロファイルを有する多層抄き合わせ紙の製造を可能にすることを目的とする。
【解決手段】
長網抄紙機の抄紙網の上方に、下層繊維マット、シート、上層繊維マットと順次抄く下層ヘッドボックス、シート挿入装置、上層ヘッドボックスを順に配置して多層抄き合わせ紙を抄き込む製造装置において、両ヘッドボックス内は、それぞれ幅方向に分割した複数のスリット型原料槽と、それぞれに原料を供給する少なくとも一つの原料供給部と、複数のスリット型原料槽ごとに原料吐出口の開口度を調整する開口度調整機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長網抄紙機の抄紙網上で製造する多層抄き合わせ紙の製造方法及びその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多層抄き合わせ紙を製造する場合、あらかじめ上下の繊維マットを抄造して準備しておき、別工程で接着剤を用いて中間層となるポリマー基材と上下の繊維マットを張り合わせて多層紙を製造する技術が一般的である。
【0003】
本出願人は既に、円網抄紙機の円網槽内の紙料液面と円網との境界部や、紙料液面の上部、紙料液中の任意の場所に、着色繊維、蛍光繊維、サーモクロミック繊維、フォトクロミック繊維、ガラス繊維等から成る特殊繊維を含有する紙料を流し込むホースの付いたノズルを設置し、これらの特殊繊維を含有する紙料を流し込むことによって、これらの繊維を任意の部分に抄き込んだ偽造防止用紙を提案している(特許文献1参照)。
【0004】
また、本出願人は、単一の抄紙網上に複数のヘッドボックスとシート繰り出し装置を配置し、シートの中へ、有色顔料、磁性体、赤外吸収材料、赤外反射材料、蛍光発光材料、金属繊維、サーモクロミック等の機械読み取り可能な機能性物質を付与した任意の幅シートが挿入されて製造される多層抄き合わせ紙、その製造方法及び多層抄き合わせ装置の技術を提案している(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、本出願人は、抄き込むシートの中へあらかじめICチップを内包し、下部紙層と上部紙層に間にICチップを内包したシートを抄き合わせた150μm以下の薄い多層抄き合わせ紙を提案している(特許文献3参照)。
【0006】
本出願人の特許文献1で提案している方式である、使用される特殊繊維を流し込むホースの付いたノズルを円網抄紙機の抄紙網の槽内に設置し、特殊繊維を抄き込む方法によって製造される偽造防止用紙の断面を、図9に示す。特許文献1の装置で特殊繊維を紙層マットの一部へ抄き込んだ場合、紙層断面の上部に特殊繊維が抄き込まれるが、槽内のパルプ原料で薄まってしまい、特殊繊維部分の濃度や特殊繊維による機能性の品質が、抄紙流れに対して一定にならなかったり、長期間使用すると磨耗で表層の特殊繊維がはがれてしまい、機能性が低下するといった問題があった。
【0007】
本出願人の特許文献2で提案している方式である、長網抄紙機において中間層にシートを抄き込む多層抄き合わせ紙の製造装置は、図11(a)に示すように、シートを下層用原料層から挿入する方法であり、拡大図である図11(b)に示すように、厳密に上層繊維ウェブと下層繊維ウェブの間に挿入されるものではなく、紙層の断面方向から観察してシートの挿入位置が下方の下層繊維ウェブ側に偏る傾向がある。
【0008】
これは、下層用原料槽の下にあるサクションボックス14aで搾水された下層繊維マットよりも上層用原料槽の原料が低濃度の懸濁液であるため、上層用原料槽から下層用原料槽へ逆流したり、下層用原料と上層用原料が同等の低濃度懸濁液である場合でも、不織布を下層用原料槽で挿入しているため、下層用原料が不織布上に回り込み、上層繊維マットには下層原料が混入することになる。このため、例えば上層繊維マットに特殊原料を抄き込んだ場合、下層原料が回り込むため、特殊原料が薄まり品質が安定せず、用紙の表面又は裏面から機械読み取りで品質管理をするときに読み取り精度が不安定になるため、品質管理上好ましくなかった。
【0009】
本出願人が特許文献3で提案している方式で使用される長網抄紙機の上層用ヘッドボックスの正面図を図2(a)に示し、このときの原料吐出流速の平面図を図2(b)に示す。
【0010】
本出願人の特許文献3で提案している3層抄き合わせ紙の中間層にICチップ等の機械読み取り機能を付与した不織布を多層抄き合わせする技術は、ICチップの挿入位置を管理したり、紙厚を150μm以下に管理するために、低速の長網抄紙機を採用している。そのため、一般的な高速抄紙機に採用されている原料吐出口がディストリビュータ方式のヘッドボックスでは、原料噴射時の脈動を制御することが困難であるため、原料吐出口はスライス板を上下に開閉する方式のヘッドボックスを採用している。
【0011】
しかし、従来の一つの原料槽と一つの原料吐出口から構成されているヘッドボックスで原料吐出口のスライス板の開口度を調整した場合は、原料吐出口から吐出された原料のうち、抄紙流れに対して両端部分の原料が、原料の水分が搾水されて繊維マットを形成するまで抄紙網の幅方向両端から原料がこぼれないように堰き止めているデッケルフレームによる粘性抵抗を受けるために原料吐出流速が低下し、図2(b)の吐出流速を示す矢印のように、原料吐出口から吐出される原料の吐出流速が中央部に比べ両端部が低くなるため、用紙幅方向中央部の坪量に比べ、両端部の坪量が少なくなり、用紙幅方向に均一な坪量プロファイルの繊維マットを形成するのが困難であった。
【0012】
長網抄紙機は、繊維マットの地合を良化させるために、搾水前で繊維マットの流動性が保たれている抄紙網上流側のブレストロール近辺において、用紙幅方向に一定の振動数で振幅を加えるシェーキング装置が備えられており、用紙幅方向の坪量プロファイルの均一化にも役立っている。しかし、多層抄き合わせ紙の上層紙層を形成するための上層用ヘッドボックスは、抄紙網の下層用ヘッドボックスの下流側に配置されるため、下層繊維マットよりもシェーキング装置から離れた振幅の小さい下流側で上層繊維マットの紙層形成がされることになるため、上層繊維マットは、シェーキングによる用紙幅方向の坪量プロファイルの均一化の恩恵も少なく、用紙幅方向両端部だけではなく用紙幅方向全体に対して坪量プロファイルが不均一になりがちであったが、上層ヘッドボックスは一つの原料槽と一つの原料吐出口から構成されているため、多層抄き合わせ紙の上層紙の用紙幅方向の紙厚及び坪量の品質管理が困難であった。
【0013】
また、単一の抄紙網上で多層抄き合わせ紙を製造するための装置は、抄紙網上部に、下層ヘッドボックス、シート挿入装置及び上層ヘッドボックスを配置し、抄紙網上流から順番に、下層繊維マット、シートの挿入、上層繊維マットを形成するため、挿入するシートが抄紙網下流にある上層ヘッドボックスに引っかからないように、適当なスペースが必要であった。
【0014】
また、従来技術において、上層ヘッドボックスに中間層のシートが引っかからないように、上層ヘッドボックスと下層ヘッドボックスの間となるシートの挿入位置において、シートを下層繊維マットにペーパーロールやスプレッダーバーで押し付け、その上から上層繊維マットを抄く方法もあったが、シートを押し付けたときに下層繊維マットにしわや原料よれが発生しやすいといった品質上の問題があった。
【0015】
単一の抄紙網上で抄き合わせ紙を製造する方法は、一般的な二つ以上の抄紙網を用いて多層抄き合わせ紙を製造する方法に比べて装置は簡素で安価であるが、一層抄きの抄紙網より長い抄紙網が必要であり、抄紙機設備の大型化や抄紙網の購入コスト増といった問題があった。
【0016】
【特許文献1】特公平6−63200号公報
【特許文献2】特開2003−13395号公報
【特許文献3】特開2005−171396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本出願人が、特許文献1や特許文献2において提案している特殊繊維を抄き込んだ技術や、特許文献3で既に提案している3層抄き合わせ紙の中間層にICチップ等の機械読み取り機能を付与した不織布を多層抄き合わせする技術は、偽造防止を目的とした用紙作製技術であるが、近年多層抄き合わせ技術の向上は、目覚ましく、より偽造困難な高品質の多層抄き合わせ紙や、更には複雑な構成の多層紙が求められている。
【0018】
本発明は、以上のような従来の長網抄紙機による原料の吐出口がヘッドボックスのスライス板を全体で上下に開閉する方式では、デッケルフレームによる粘性抵抗の影響で、抄紙流れに対して幅方向の両端部分の吐出流速が低下することで両端部の坪量プロファイルが少なくなり、特に上層繊維マットは、用紙幅方向に均一な坪量プロファイルを形成するのが困難であった。
【0019】
この問題を解決するため、ヘッドボックスの内部を複数に分けたスリット型原料槽に分割し、スリット型原料槽の各槽ごとに対応するようにそれぞれ分割された原料吐出口で原料の吐出量を調整する機構を設けることにより、両端の原料吐出流速低下を考慮して、ヘッドボックス両端の原料吐出口の開度を他の原料吐出口より大きく調整することで、用紙幅方向に均一な坪量の上層繊維マットを形成できる多層抄き合わせ紙の製造方法、その製法による多層抄き合わせ紙及びその製造装置を提供することを目的とする。
【0020】
また、中間層にシートを挿入する多層抄き合わせ紙の製造設備は、原料を抄紙網上に供給するヘッドボックスの配置による大型化という問題があったが、上層ヘッドボックスの上流側壁面を湾曲させたヘッドボックスを配置し、装置の省スペース化を図ることを目的とする。
【0021】
また、従来の円網抄紙機による円網槽内の紙料液面でノズルによる機能性を付与する方法では、機能性材料の濃度や品質が一定に保てないという課題を解決するために、ヘッドボックス内を複数に分けたスリット型原料槽の各槽ごとに備えた原料供給部の切り替えを利用して、機能性材料をヘッドボックス内の指定した一つ以上のスリット型原料槽に投入し、抄紙方向に帯状に上層紙層の上部から下部まで安定した抄き込みが可能な多層抄き合わせ紙の製造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、長網抄紙機の抄紙網上において、多層抄き合わせ紙を製造するために、抄紙網の上方に配置した下層及び上層ヘッドボックス内を幅方向に複数に分けたスリット型原料槽に分割し、そのスリット型原料槽の各槽ごとに分けて吐出する分割型原料吐出口の開度調整を可能とし、両ヘッドボックスの中間にシート挿入装置を配置し、これらを抄紙網上で順次抄き合わせることで、均一な坪量プロファイルを有する多層抄き合わせ紙を製造する目的が達成することを見い出し、本発明をなすに至った。
【0023】
すなわち、本発明は、上記課題を解決するために、長網抄紙機の抄紙網の上方に、下層繊維マットを形成するための下層の原料を貯留する一つの下層ヘッドボックスと、下層ヘッドボックスの下流方向に下層繊維マット上に少なくとも一つの上層繊維マットを形成するための上層の原料を貯留する少なくとも一つの上層ヘッドボックスを配列し、下層ヘッドボックスと上層ヘッドボックスの間に抄紙網の抄紙幅以下のシートを繰り出すシート挿入装置を配置し、下層ヘッドボックスの原料を長網に吐出して下層繊維マットを形成し、下層繊維マット上へシートを走行させ、更にシート上に上層ヘッドボックスから原料を吐出し上層繊維マットを形成してなる多層抄き合わせ紙の製造方法において、
少なくとも一つの上層ヘッドボックス内は、幅方向に複数に分けたスリット型原料槽に分割し、スリット型原料槽の各槽ごとに有する少なくとも一つの原料供給部から原料を供給し、スリット型原料槽の各槽ごとに原料を分けて吐出する分割型原料吐出口の開口度を調整する開口度調整機構により原料の吐出量を調整し、
また、本発明の各ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽ごとのそれぞれの原料吐出量が、抄紙網の幅方向に対応した各位置で調整可能に多層紙を抄き込むことを特徴とする多層抄き合わせ紙の製造方法を提供する。
【0024】
また、本発明の上層ヘッドボックスが、その上層ヘッドボックスの両側面に原料の吐出角度を調整する支持フレーム及び支持フレーム調整ボルトから成る吐出角度調整機構を備え、ヘッドボックスから吐出する原料の流量を調整し、上層繊維マットの坪量を調整できる多層抄き合わせ紙の製造方法である。
【0025】
また、本発明のシート挿入装置が、シートを抄紙速度に同期させて繰り出すシート繰り出し部と、幅方向のシート挿入位置を調整する位置調整用繰り出し部を有する多層抄き合わせ紙の製造方法である。
【0026】
また、本発明において、シートが不織布又は天然繊維の布であり、不織布はレーヨン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVA(ポリビニールアルコール)又はその他のポリマー繊維から成り、天然繊維は木綿、わら、アバカ、シルク、又はその他の天然繊維から成る多層抄き合わせ紙の製造方法である。
【0027】
また、本発明において、シートには、機械読み取り可能な機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む多層抄き合わせ紙の製造方法である。
【0028】
また、本発明において、シートの換わりに中間層繊維マットを形成する中間層ヘッドボックスとし、中間層ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽ごとの少なくとも一つの原料供給部に、機械読み取り可能な機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む特殊原料を供給し、下層繊維マットと少なくとも一つの上層繊維マットとの間の中間層繊維マットに少なくとも一つの帯状の機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを抄き込む多層抄き合わせ紙の製造方法である。
【0029】
また、本発明において、上層ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽ごとの少なくとも一つの原料供給部に、機械読み取り可能な機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む特殊原料を供給し、上層繊維マットに少なくとも一つの帯状の機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを抄き込む多層抄き合わせ紙の製造方法である。
【0030】
また、本発明の上層繊維マットに少なくとも一つの帯状の機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを抄き込む多層抄き合わせ紙の製造方法において、上層ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽ごとの少なくとも一つの原料供給部に、機械読み取り可能な機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む特殊原料を供給し、上層繊維マットの幅方向の少なくとも一部における深さ方向上面から仮面までの全面に、抄き方向に並行な少なくとも一つの帯状の機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを抄き込む多層抄き合わせ紙の製造方法である。
【0031】
また、本発明において、機能性材料が、有色顔料、磁性材料、赤外吸収材料、赤外反射材料、蛍光発光材料又はサーモクロミック材料であり、機能性繊維が機能性材料の少なくとも一つを付与した繊維又は金属繊維である請求項6、9、10又は11記載の多層抄き合わせ紙の製造方法である。
【0032】
また、本発明において、長網抄紙機の抄紙網の上方に、下層繊維マットを形成するための下層の原料を貯留する一つの下層ヘッドボックスと、下層ヘッドボックスの下流方向に配置して下層繊維マット上に少なくとも一つの上層繊維マットを形成するための上層の原料を貯留する少なくとも一つの上層ヘッドボックスと、少なくとも二つのヘッドボックス間に配置して抄紙網の抄紙幅以下のシートを繰り出すシート挿入装置によって、下層繊維マットと少なくとも一つの上層繊維マットとの間にシートを挿入して多層紙を抄き込む多層抄き合わせ紙の製造装置において、
一つの下層ヘッドボックス及び少なくとも一つの上層ヘッドボックス内は、それぞれ幅方向に複数に分割したスリット型原料槽と、スリット型原料槽の各槽ごとに有する原料を供給する少なくとも一つの原料供給部と、スリット型原料槽の各槽ごとに原料を分けて吐出する分割型原料吐出口の開口度を調整する開口度調整機構とを備えて成り、各ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽ごとのそれぞれの原料吐出量が、抄紙網の幅方向に対応した各位置で調整可能に多層紙を抄き込むことを特徴とする多層抄き合わせ紙の製造装置である。
【0033】
また、本発明の開口度調整機構が、スリット型原料槽の各槽ごとの分割型原料吐出口の開口度を調整する分割型スライス板及びスライス板調整ボルトから成る多層抄き合わせ紙の製造装置である。
【0034】
また、本発明の上層ヘッドボックスが、その上層ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽全体の分割原料吐出口から吐出する原料の流量を調整し、上層繊維マットの坪量を調整できるように、上層ヘッドボックスの両側面に原料の吐出角度を調整する支持フレーム及び支持フレーム調整ボルトからなる吐出角度調整機構を備える多層抄き合わせ紙の製造装置である。
【0035】
また、本発明において、下層繊維マットと少なくとも一つの上層繊維マットとの間の中間層にシートを抄き込むシート挿入装置が、シートを抄紙速度に同期させて繰り出すシート繰り出し部と、幅方向のシート挿入位置を調整する位置調整用繰り出し部を有する請求項21、22又は23記載の多層抄き合わせ紙の製造装置である。
【0036】
また、本発明において、下層ヘッドボックスと、少なくとも一つの上層ヘッドボックスとの間に走行するシートが、上層ヘッドボックスに抵抗なく沿わせられるように上層ヘッドボックスの上流側の側面を湾曲させた多層抄き合わせ紙の製造装置である。
【0037】
また、本発明において、シート挿入装置に代わり中間層繊維マットを形成する中間層ヘッドボックスとし、中間層ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽ごとの少なくとも一つの原料供給部に、機械読取可能な機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む特殊原料を供給し、下層繊維マットと少なくとも一つの上層繊維マットとの間の中間層繊維マットに少なくとも一つの帯状の機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを抄き込む多層抄き合わせ製造装置である。
【0038】
また、本発明において、上層ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽ごとの少なくとも一つの原料供給部に、機械読み取り可能な機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む特殊原料を供給し、上層繊維マットに少なくとも一つの帯状の機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを抄き込む多層抄き合わせ紙の製造装置である。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、次のような効果が生じる。
ヘッドボックスを複数に分けたスリット型原料槽に分割して、そのスリット型原料槽の各槽ごとの原料吐出口に設けた開口調整機構の分割型スライス板を上下させて開口面積を調整することによって、多層すき合せ紙の幅方向の坪量調整が可能となった。これにより、用紙の坪量プロファイルに応じて用紙の幅方向に細かな調整が可能となり、多層すき合せ紙の坪量を従来技術よりもより均一化させることが可能となった。また、抄速や中間層のシート基材の影響により坪量プロファイルが変動するが、スリット型原料槽ごとにパルプ原料濃度を変化させることによって多層すき合せ紙の幅方向の坪量プロファイルを均一にすることが可能となった。このため、抄速や中間層のシート素材に応じて坪量調整の最適な手段の選択が可能となる。
【0040】
また、上層用ヘッドボックスの上流側壁面を湾曲させてヘッドボックスにすることで、中間層を形成する不織布等のシートの挿入を容易にし、また、無端抄紙機上に配置する下層用ヘッドボックス、シート挿入装置、上層用ヘッドボックスの配置間隔を狭めることができるようになるため、多層抄きの抄紙網の長さを一層抄き抄紙網と同程度の長さまで短くすることができ、抄紙網の購入費用削減と、多層抄き合わせ装置の省スペース化が図れる。
【0041】
また、上層用ヘッドボックスの複数に分けたスリット型原料槽に、機能性の異なる原料を供給し、抄き合わせをすることで、多層抄き合わせ紙の上層紙層の幅方向へ、機能性の異なる原料部分を上層紙層の断面上部から断面下部まで抄紙流れ方向に対して帯状に形成することができ、従来の用紙断面方向上部に機能性を付与する多層抄き合わせ用紙に比べ、特殊原料の抄き込み量が安定し、上層紙層の断面上部から断面下層まで特殊繊維が抄き込まれた、従来より複雑で、複製しにくく、偽造防止効果の高い多層抄き合わせ用紙を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明に係る多層抄き合わせ紙の製造方法及びその多層抄き合わせ紙の製造装置について、一実施の形態に基づき図面1〜4を参照して、以下に説明する。
【0043】
初めに、本発明の装置のヘッドボックスに製紙原料を送る前工程の原料準備調整から、本発明の多層抄き合わせ紙の抄造工程を経て、多層抄き合わせ紙を仕上げるまでの全体の概要を説明する。
【0044】
あらかじめ図示しないが、上層用マシンチェスト及び下層用マシンチェストにそれぞれ1%〜4%程度の濃度のパルプ原料をストックしておき、攪拌機でマシンチェスト内の原料濃度を均一にした上でミキシングボックスに流送し、白水又は真水で0.5%〜0.7%までに希釈し、上層ヘッドボックス及び下層ヘッドボックスへフレキシブルホース7aなどの配管で流送し、コック、バルブなどで最適な流量に調整し、原料供給ノズル7bで各スリット型原料槽に供給する。
【0045】
一方、シート(不織布)11は、横幅は抄紙網1の両側にあるデッケルフレーム間とほぼ同じか、若干小さい横幅の帯状シートであり、長網抄紙機周辺の最良な場所に取り設けたシート挿入装置13cのシート(不織布)繰り出し部13aから位置調整用繰り出し部13bに具備するサーボモータの駆動によってシート(不織布)11が繰出される。位置調整用繰り出し部13bは、抄紙網下流側にある上層ヘッドボックス6と抄紙網上流側にある下層ヘッドボックス5との間に設けられており、繰り出し速度と幅方向の位置を調整する機能を有し、抄紙網1上の下層繊維マット17上へシート11を供給している。
【0046】
位置調整用繰り出し部13bは、繰り出し速度と幅方向の位置を調整する機能を有し、長網抄紙機の抄紙速度データやシート幅方向位置読取センサ(図示しない。)のデータからシート11の繰り出し速度や幅方向の位置を自動制御し、一定のテンションが保たれ、流れ方向及び幅方向の所定の位置へシートが挿入されるように制御されながら、上層用ヘッドボックス6の湾曲させた背面を通過し、抄紙網1上にある下層繊維マット17上の上層紙層用の原料が吐出される直前の位置でシート(不織布)11を挿入する。
【0047】
例えば、一定間隔でICチップが含まれているシートを用いて、上層紙層上の図柄や抄き入れ模様などの位置を指定して同位置へICチップを挿入する場合、位置調整用繰り出し部13bで挿入位置を自動修正し、最適な位置へシートが挿入される。
【0048】
なお、中間層として挿入されるシート11としては、上部に積層される上層紙層用の原料の水分を通過し、更に上層及び下層との層間結合が強固であることが好ましいため、通水性に優れ、シートの孔を介して上下の紙層繊維と絡み合う不織布や天然繊維の布が好適である。不織布の材質としては、抄紙網上での通水性に優れ、抄紙機乾燥部で紙の品質に影響を及ぼすしわや波打ち現象を起こさない材質、例えばレーヨンやPET、PVAが好ましく、天然繊維の布の材質としては、木綿、わら、アバカ、シルクが好ましい。
【0049】
抄紙手順は、下層ヘッドボックス5から抄紙網1上へ吐出されたパルプ原料が、ブレストロール4近辺にある図示しないシェーキング装置で抄紙網の幅方向へ一定の振幅でシェーキングされることで地合形成され、サクションボックス14aにて強制的に搾水され、下層繊維マット17を形成する。その上にシート(不織布)11を挿入し、更にその上に上層ヘッドボックス6の上層用の原料吐出口10からパルプ原料を吐出して、下層繊維マット17、シート11及び上層繊維マット16と多層構造を形成した後、流動性を持った上層繊維マット16及び下層繊維マット17は、サクションボックス14b、14cにて強制的に搾水し、テーブルロール3aで搾水し、ダンデロール15で紙層上面を滑らかにし、更にサクションボックス14d及びサクションクーチロール4で搾水し、プレスを経て定法により乾燥し、多層紙とする。
【0050】
(実施の形態1)
(多層抄き合わせ紙の製造装置)
本発明に係る多層抄き合わせ紙の製造装置について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の多層抄き合わせ紙の製造装置の全体概略図である。
【0051】
本発明は、図1に示す抄紙網1の上方に、下層繊維マット17を抄く下層用原料パルプ18を貯留する下層ヘッドボックス5と、紙を抄く方向に順に配列した下層繊維マット17上に、上層繊維マット16を抄く上層用原料パルプ19を貯留する上層ヘッドボックス6と、下層繊維マット17と上層繊維マット16との間に、抄紙網1の抄紙幅以下のシート11を繰り出し、二つのヘッドボックス間に配置するシート挿入装置13cのシート繰り出し部13a、位置調整用繰り出し部13bとによって、下層繊維マットと上層繊維マットとの間にシートを挿入して多層抄き合わせ紙を製造する装置である。
【0052】
図3及び図4は、本発明のスリット型原料槽26aを有するヘッドボックスの概略図である。下層ヘッドボックス5及び上層ヘッドボックス6は、いずれもその内部が抄紙流れに対して幅方向に複数に分けたスリット型原料槽26aに分割し、スリット型原料槽の各槽ごとに原料を供給する原料供給部8と、原料を吐出する分割型原料吐出口22bとを備え、それぞれの分割型吐出口22bの開口度を調整する開口度調整機構21cを有する。なお、開口度調整機構21cは、分割型スライス板21bとスライス板調整ボルト23とからなり、スライス板調整ボルトで原料の吐出量を調整する。
【0053】
下層ヘッドボックス5は、抄紙網1上に下層繊維マット17を吐出する。シート(不織布)挿入装置13cは、下層繊維マット17上に挿入するウェブ状のシート11をセットし保持する。位置調整用繰出し部13bは、シート繰り出し部13aシートロール12から繰出されたシート11を、上層ヘッドボックス6の背面へ幅方向の挿入位置を調整しながら送り込む。フレキシブルホース7a、原料供給ノズル7bは、上層ヘッドボックス6の分割型ヘッドボックスに上層繊維マット16を形成するためのパルプ原料を供給する。下層用の原料吐出口9及び上層用の原料吐出口10は、下層ヘッドボックス5及び上層ヘッドボックス6のスリット型原料槽26aから吐出するパルプ原料の流量を複数に分けた分割型スライス板21bの上下によって幅方向に調整する。サクションボックス14aは、下層用の分割型原料吐出口9から抄紙網1上に吐出するパルプ原料から強制的に搾水し下層繊維マット17を形成するものである。
【0054】
同様にサクションボックス14b、14cは、上層用の分割型原料吐出口10から抄紙網1上に吐出するパルプ原料、シート11及び下層繊維マット17からなる多層構造の上層繊維マット16、シート11、下層繊維マット17から強制的に搾水する。同じくテーブルロール3aは、多層構造となった上層繊維マット16、シート11、下層繊維マット17から搾水する。ダンデロール15は、多層構造となった上層繊維マット16の表面を滑らかにし、また、サクションボックス14dは上層繊維マット16、シート11及び下層繊維マット17から成る多層構造の繊維マットから強制的に搾水する。さらに、サクションクーチロール4は、抄紙網1をモータで駆動するとともに上層繊維マット16、シート11及び下層繊維マット17から成る多層構造の繊維マットから強制的に搾水し多層紙とするものでプレス工程へと送り込むものである。
【0055】
(ヘッドボックス)
次に、本発明に係る多層抄き合わせ紙の製造装置に配置する上層ヘッドボックスの構造について、図1、図3及び図4を用いて詳細に説明する。図3aは、ヘッドボックスを幅方向に複数に分割したスリット型原料槽の正面図であり、図3b及び図4は、その平面図である。
【0056】
ヘッドボックス6は、抄紙流れ方向に対して側面から見た断面が1/4円形箱型で、スリット型原料槽26a、スリット型原料槽の各槽に少なくとも一つ以上有する原料供給部8、原料の吐出量を調整する分割型スライス板21bとスライス調整ボルト23から成る開口度調整機構21c、ヘッドボックスから吐出する原料の流量を調整し、上層繊維マットの坪量を調整できるように、上層ヘッドボックスの両側面に原料の吐出角度を調整する支持フレーム24aと支持フレーム調整ボルト24bから成る吐出角度調整機構24cを設けていることを特徴とする。なお、開口度調整機構及び吐出角度調整機構にサーボモータや制御装置を配置することで、遠隔操作や自動制御も可能である。
【0057】
また、本発明の1/4円形箱型のヘッドボックスは、その特徴である湾曲させた上流側壁面の背面に平滑性の向上を目的とするフッ素樹脂シート等を貼付してあるため、背面にシート(不織布)を沿わせてシート(不織布)を挿入することが可能であり、高さ調整を行うことによって安定的にシート(不織布)を挿入することができる。また、湾曲した壁面を沿わせることによってシート(不織布)のしわの発生を防ぐことができる。
【0058】
図11の従来の下層原料槽から中間層となるシートを抄き込む多層抄き合わせ装置では、抄き合わせの際に上層用原料の低濃度懸濁液が下層用原料の低濃度懸濁液に混入してしまうため、上層用原料か下層用原料に特殊原料を付与したときに、特殊原料の品質が不安定になる問題があったが、下層用原料と上層用原料が完全に遮断されるように上層ヘッドボックスを壁面を湾曲させたヘッドボックスとしてワイヤ上に取り設け、更にその上層ヘッドボックスの湾曲させた壁面の背面にフッ素樹脂シートを貼り付けて表面の摩擦抵抗を低減させて、シートが背面に沿う様に下層原料の上に滑り込ませ、ヘッドボックスとシートで完全に遮断された下層紙料とシートの2層構造の用紙の上面に上層紙料を吐出することによって多層構造の紙層を形成することができる。
【0059】
また、本発明のスリット型原料槽26aは、隣り合うスリット型原料槽の原料が混入しないように、ヘッドボックス内に仕切り板を取り設けた構造となっており、スリット型原料槽の各槽ごとに有する原料供給部8を調整することで各槽別にパルプ原料の濃度を調整可能で、図4に示すように、スリット型原料槽の一部又は全部に、機能性繊維、機能性材料を混入した特殊パルプ原料を用いることが可能である。
【0060】
原料供給部8は、フレキシブルホース7aにおいて希釈水を流入させるバルブを備え、原料供給部内の希釈水量を調整することでパルプ原料の濃度を調整し、また、原料供給ノズル7bのパルプ原料吐出量をバルブで調整することで、供給量を調整可能である。さらに、各原料供給部には、パルプ原料と特殊原料に切り替えるコックを有し、スリット型原料槽の各槽ごとに、供給する原料の種類が切替え可能である。
【0061】
また、本発明の分割型スライス板21bは、スリット型原料槽26aの前面(下流側壁)に設けるもので、上下に稼動させることによって分割型原料吐出口22bの開口度を調整し、原料の流量を調整するものである。
【0062】
また、開口度調整機構21cは、スリット型原料槽26aの上部に設けるもので、分割型スライス板21bを上下に稼動させるためのものであり、各スリット型原料槽26aから抄紙網へ吐出するパルプ原料の流量を無段階に調整するためのもので、多層すき合せ紙の幅方向の坪量プロファイルを均一に、又は意図的に変化させた多層すき合せ紙を作製することを可能とする。
【0063】
例えば、図2(a)のような従来のスライス板では、抄紙網上原料の両端部分の坪量プロファイルが、デッケルフレーム20による粘性抵抗の影響を受けて図2(b)のように吐出流速が低下するため、吐出流速低下を見越して、本発明である図3のヘッドボックス両端部分の分割型スライス板21bの開度を他の開度より大きく調整し、幅方向の吐出流速を均一にすることで幅方向の坪量プロファイルを均一にすることができる。
【0064】
また、本発明の吐出角度調整機構24cは、1/4円形箱型ヘッドボックス5、ヘッドボックス6の側面にある支持フレーム24aに設けるもので、1/4円形箱型ヘッドボックスの傾斜角度を調整するものであり、ヘッドボックス5、ヘッドボックス6のスリット型原料槽の各槽から吐出されるパルプ原料の流量を全体的に調整するもので、多層すき合せ紙の全体的な坪量を調整するためのものである。また、この角度調整によって、中間層となるシート(不織布)の素材に応じた挿入角度の調整を可能とする。
【0065】
(実施の形態2)
本発明の多層抄き合わせ紙の製造方法の実施の形態を、図1、図4及び図5に基づいて説明する。
【0066】
本発明は、図1に示す抄紙網1の上方に、下層繊維マット17を抄く下層用原料パルプ18を貯留する下層ヘッドボックス5と、下層繊維マット17上に少なくとも一つの上層繊維マット16を抄く上層用原料パルプ19を貯留する少なくとも一つの上層ヘッドボックス6とを下層ヘッドボックスの下流方向に順に配列し、下層繊維マット17と上層繊維マット16との間に、抄紙網1の抄紙幅以下のシート11を繰り出すシート挿入装置13cの位置調整用繰り出し部13bを少なくとも二つのヘッドボックス間に配置し、下層繊維マット17と少なくとも一つの上層繊維マット16との間にシート11を挿入して多層紙を抄き込む多層抄き合わせ紙の製造方法である。
【0067】
本発明においては、一つの下層ヘッドボックス5及び少なくとも一つの上層ヘッドボックス6内は、図4に示すようにそれぞれ幅方向に複数に分けたスリット型原料槽26aに分割し、スリット型原料槽26aの各槽ごとにパルプ原料を供給する少なくとも一つの原料供給部8と、パルプ原料を吐出する原料吐出口22bとを備え、それぞれの分割型原料吐出口22bの開口度を調整する開口度調整機構21cでパルプ原料の吐出量を調整し、各ヘッドボックスのスリット型原料槽26aごとのそれぞれの原料吐出量が、抄紙網の幅方向に対応した各位置で調整可能に多層紙を抄き込む多層抄き合わせ紙の製造方法である。
【実施例】
【0068】
次に、上層ヘッドボックス6の複数のスリット型原料槽26aの少なくとも一つの原料供給部8から、機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む特殊原料を供給し、上層の紙層断面の幅方向に対して、上層繊維マット16の深さ方向全面に、抄き方向に対して少なくとも一つの帯状に機能性材料及び機能性繊維を抄き込む多層抄き合わせ紙の製造方法及び多層抄き合わせ紙について、以下に実施例に基づき詳細に説明する。
【0069】
(実施例1)
(三層抄き合わせ用紙)
図1において、本発明の多層抄き合わせ装置は、下層ヘッドボックス5、シート(不織布)挿入装置13c、上層ヘッドボックス6を用いて抄紙網1上に下層繊維マット17、シート(不織布)11、上層繊維マット16の多層構造を形成すると同時に、スリット型原料槽26aに設けた分割型スライス板21bの上下によって開口度を調整して幅方向の坪量プロファイルを均一に、又は意図的に変化させた多層すき合せ紙を製造することが可能である。
【0070】
(実施例2)
(機能性を帯状に付与した多層抄き合わせ紙)
また、図4において、本発明は、上層用マシンチェストや下層用マシンチェストとは別に、機能性材料や機能性繊維の少なくとも一つを含む特殊原料を貯留したマシンチェストを用意し、原料供給部8への原料供給を切り替えてスリット型原料槽少なくとも一つの槽に特殊原料を用いることや、機能性材料を貯留した槽から少なくとも一つのスリット型原料槽内の原料の中へ直接機能性材料を混入させて、多層すき合せ紙の幅方向の任意の位置に対して種々の機能性を付与した多層抄き合わせ紙を製造することが可能である。
【0071】
上層繊維マット16へ帯状に付与する機能性材料として次のようなものがある。
機能性繊維は、着色繊維、蛍光繊維、ポリマー繊維、金属繊維、サーモ繊維等を水又はパルプ原料に混入し、抄き合せることができ、目視又は機械読み取り判別が可能である。また、機能性材料は、カーボン、酸化チタン、有色顔料、有色染料、雲母(パール顔料)、有色蛍光顔料、無色蛍光顔料、金属粉末、金属片、金属箔、蒸着薄膜等を水又はパルプ原料に混入しすき合せることができ、目視又は機械読み取り判別が可能である。
【0072】
各機能性繊維及び各機能性材料を抄き込んだ場合の効果は、次のようになる。着色繊維は、用紙の任意の位置に、多色のランダム模様を付与することが可能である。蛍光繊維は、用紙の任意の位置に、UVランプの照射によって発光効果を得ることが可能である。ポリマー繊維は、用紙の任意の位置に、観察角度により反射光が変化する効果や、高密度にした場合は透過性が増して白すかし効果が得られる。
【0073】
金属繊維は、用紙の任意の位置に、目視によって一般紙との差別化が可能であり、磁性検出による機械読み取り判別が可能である。サーモ繊維は、用紙の任意の位置に、温度変化によって部分的に色が変化する効果を得ることが可能である。
カーボンは、用紙の任意の位置に付与することによって、磁性検出による機械読み取り判別が可能である。酸化チタンは、用紙の任意の位置に付与することによって、UVランプを照射して紫外光領域での反射光量または透過光量の検出による機械読み取り判別が可能である。
【0074】
有色顔料は、用紙の任意の位置に付与することによって、印刷とは異なる独特の風合いを得ることが可能である。有色染料は、用紙の任意の位置に付与することによって、印刷とは異なる独特の風合いを得ることが可能である。
パール顔料は、用紙の任意の位置に、目視によって反射光の状態が異なる効果を得ることが可能である。
【0075】
有色蛍光顔料は、用紙の任意の位置に、UVランプの照射によって、有色の発光効果を得ることが可能である。無色蛍光顔料は、用紙の任意の位置に、UVランプの照射によって、無色から有色の発光効果を得ることが可能である。
【0076】
金属片や金属粉末は、用紙の任意の位置に付与することによって、可視状態の物質を磁性検出による機械読み取り判別が可能である。また、金属箔は、用紙の任意の位置に、反射光によってラメ状の偏光効果を得ることが可能であり、透過光で黒すかし効果を得ることが可能であり、磁性検出による機械読み取り判別が可能である。蒸着薄膜は、用紙の任意の位置に、金属箔よりも薄物で希少な材料を用紙に付与することが可能であり、反射光によって虹彩色の偏光効果を得ることが可能であり、透過光で黒すかし効果を得ることが可能であり、磁性検出による機械読み取り判別が可能である。
【0077】
なお、以上の機能性要素を用紙の幅方向にバーコード状に付与して機械読み取りすることによって、可視又は不可視の状態で、製造物のロット番号、製造履歴等の情報を用紙に付与することが可能である。また、各機能性要素の配合割合、添加率を用紙の流れ方向で経時的に変化させて機械読み取りすることによって、可視又は不可視の状態で、製造物のロット番号、製造履歴等を可変情報として用紙に付与することが可能である。
【0078】
図5は、実施例2で示した図4の抄紙網上の3層抄き合わせ紙34をA−B線で切断した断面模式図である。一実施例として上層ヘッドボックスのスリット型原料槽26aの一部へ特殊原料30として蛍光繊維を供給した場合の多層抄き合わせ紙について説明する。
【0079】
偽造防止手段として、用紙表面に紫外光を照射した時に励起し、可視光とは異なる色を発する蛍光発光材料を付与する方法は、図6の断面模式図に示すように、特許文献1にあるような蛍光繊維を上層繊維マットの上部にノズルで流し込む場合又は用紙表面に特殊原料30として蛍光インキで印刷する場合が一般的である。しかし、銀行券等の長期間流通する製品においては、自動販売機やATM等の機械を何度も通過することによる摩擦等の影響で、表層に付与した特殊原料の機能性が低下する事象が発生することが懸念される。
【0080】
次に、図7の断面模式図に示すように、中間層28の不織布等のシートに蛍光インキ33を印刷することで、用紙表面の摩擦による特殊原料の剥離を防止する方法がある。しかし、紫外光を照射して観察する場合は、上層紙層27を紫外光が通過する際に光量が減少し、また、中間層28に印刷された蛍光インキ33が励起した蛍光発光が上層紙層27を通過する際にも光量が減少するため、蛍光発光が見えにくい。
【0081】
そこで、本発明による製造方法で製作した上層紙層に特殊原料30を帯状に抄き込んだ多層抄き合わせ紙であるが、図5の断面模式図に示すように、上層紙層27上部から中間層28の上部まで均一に特殊原料30(この場合は、蛍光繊維)を抄き込むことができ、更に、紙層形成時に上層紙層27や特殊原料30の繊維が中間層28の不織布にまで入り込むため、上層紙層27の表面が長期間の流通で磨耗して削れたとしても、図8の断面模式図に示すように、上層紙層27の蛍光繊維である特殊原料30が中間層に残っているため、蛍光発光を明確に観察することができる。
【0082】
蛍光材料を例に、本発明による特殊原料を付与した多層抄き合わせ紙の特徴を説明したが、蛍光材料に限定されるものではなく、本発明に付与できる機能性繊維や機能性材料においても、同様の効果が得られる。
【0083】
(実施例3)
抄紙網の上方に上層ヘッドボックスを二つ以上配置し、そのうちの一つ以上を中間層ヘッドボックスとすることで、少なくとも2層以上の多層抄き合わせ紙の製作が可能である。
【0084】
例えば、抄紙網1上流より、下層ヘッドボックス5から原料を吐出しサクションボックス14aで搾水することで下層繊維マット17を形成した後、シート繰り出し位置調整部13bより下層繊維マット17上にシート11を送り出し、その上に中間層ヘッドボックスから原料を吐出しサクションボックス14cで搾水することで中間層繊維マットを形成し、新たに加えた上層ヘッドボックスを中間層ヘッドボックスとダンデロール15の間に配置し、下層繊維マット17、シート11、中間繊維マットとなった3層抄き合わせ紙の上部に原料を吐出し、上層ヘッドボックスの近傍の抄紙網1の下部に設けたサクションボックスで搾水することで上層繊維マット16を形成し、4層抄き合わせ用紙を作製することも可能である。
【0085】
さらに、シート挿入装置13cの換わりに中間層ヘッドボックス5を追加することで、シートの挿入されていない多層紙を形成可能であるが、各層を形成するためにサクションボックスで搾水するために、ある程度の通水性が必要である。層を重ねるにつれて搾水性は低下するため、4層以上の多層紙を製造する場合、各層の合計坪量が150g/m2を超えるとサクションボックスによる搾水が困難であるため、各層の合計坪量が150g/m2以下であることが好ましい。そのためには、1層当りの坪量が少なく、均一であることが望ましく、本発明である分割したスリット型原料槽と分割型スライスは、4層以上の多層紙を製作するのに好適である。
【0086】
(実施例4)
また、本発明の多層抄き合わせ装置を利用して、図9(a)の断面模式図に示すような中間層のシート上及び上層繊維マットに機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む特殊原料を付与することで、より偽造防止効果の高い多層抄き合わせ紙を製作することができる。
【0087】
例えば、抄紙網の上方にある下層ヘッドボックスで下層繊維マットを抄き、抄紙流れ方向の下流にある上層ヘッドボックスの複数に分割したスリット型原料槽の一部の槽に赤外吸収特性を有する特殊原料を供給することで帯状に赤外吸収特性を付与した上層繊維マットを抄き、上層ヘッドボックスと下層ヘッドボックスの間にあらかじめ赤外吸収特性を有する機能性材料を印刷したシート(不織布)を中間層として挿入した上層紙層と中間層紙層に帯状の赤外吸収特性を有する3層抄き合わせ紙を例に説明する。
【0088】
中間層として挿入するシート(不織布)に印刷する機能性材料は可視光で無色又は上層紙層か、中間層紙層と可視光で同色の赤外吸収インキとし、この赤外吸収インキによる印刷は、図9(b)のように抄紙流れに平行な万線とする。
【0089】
上層ヘッドボックスのスリット型原料槽の一部には、赤外吸収特性を有する特殊原料を供給し、上層繊維マットへ赤外吸収機能を有する帯状の赤外吸収層を形成するが、上層繊維マットの帯状赤外吸収層は、中間層の赤外吸収インキの万線に対し、略1/2ピッチずれるように、スリット型原料槽へ赤外吸収特性を有する特殊原料を供給する。
【0090】
この手順で製造された多層抄き合わせ紙を表面から観察すると、可視光においては模様のない紙であるが、赤外反射光で観察すると、一般的なパルプ繊維は赤外反射特性であるため、上層紙層に抄き込んだ赤外吸収層が図9(b)のような帯状の模様として観察できる。
【0091】
次に、この多層抄き合わせ紙の一方の面から赤外光を照射し、他方の面から赤外透過光を観察すると、上層紙層に抄き込んだ赤外吸収層と中間層のシート状に印刷した赤外吸収インキの万線の両方が観察できる図9(c)のような模様が観察できる。可視光、赤外反射光、赤外透過光でそれぞれ異なる模様を観察できるため、従来よりも高い偽造防止効果がある。
【0092】
中間層のシート(不織布)挿入装置の代わりに中間層ヘッドボックスとし、中間層ヘッドボックスの複数に分けたスリット原料槽のいくつかの槽へ赤外吸収機能を有する特殊原料を供給することでも、同様の効果を得られる。この場合は、上層ヘッドボックスのスリット型原料槽のうちの特殊原料を供給するスリット型原料槽位置と、中間層ヘッドボックスのスリット型原料槽のうちの特殊原料を供給するスリット型原料槽位置をずらすことで、赤外反射光では上層紙層の帯状模様の赤外吸収層のみが観察でき、裏面から赤外光を照射して表面から赤外透過光を観察した場合は、上層紙層の帯状模様と中間層の帯状模様の両方の赤外吸収層を観察することができる。
【0093】
上層紙層や中間層紙層に付与する機能性材料の組合せを変えることで、更に偽造防止効果を高めることができる。例えば、上層紙層へ帯状に抄き込む材料を無色蛍光繊維とし、中間層紙層に帯状に抄き込む材料を無色赤外吸収材料とした場合は、紫外光で表面を観察した場合と、赤外透過光で観察した場合で、帯状模様がスイッチして観察できる等、上層紙層と中間層紙層に付与する機能性材料の組合せにより、複雑で偽造防止効果の高い用紙を製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明による多層抄き合わせ装置の概略図である。
【図2】従来のヘッドボックスの正面図(a)と平面図(b)である。
【図3】本発明による多層抄き合わせ装置のヘッドボックスの正面図(a)と平面図(b)である。
【図4】本発明のヘッドボックスのスリット型原料槽の一部へ特殊原料を供給した場合の平面図である。
【図5】本発明の一実施例である多層抄き合わせ紙の断面模式図である。
【図6】従来の多層抄き合わせ紙の上層紙層に機能性材料を付与した場合の断面模式図である。
【図7】従来の多層抄き合わせ紙の中間層のシートに蛍光インキを印刷した場合の断面模式図である。
【図8】本発明の一実施例である多層抄き合わせ紙の上層紙層に特殊原料を付与して製造した後に、磨耗で表層が剥がれた場合の断面模式図である。
【図9】(a)は、本発明の一実施例である多層抄き合わせ紙の中間層のシートに赤外吸収インキ、上層紙層に赤外吸収層を付与した場合の多層抄き合わせ紙の断面図である。(b)は、一実施例の多層抄き合わせ紙を赤外反射光で上面から観察した場合の平面図である。(c)は、一実施例の多層抄き合わせ紙を裏面から赤外光を照射し、赤外透過光を表面から観察した場合の平面図である。
【図10】従来の多層抄き合わせ紙の断面模式図である。
【図11】(a)従来の多層抄き合わせ装置の概略図である。(b)は、シートが挿入された直後の紙層ウェブの断面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 抄紙網
2 ブレストロール
3a、3b、3c、3d、3e、3f ワイヤーロール
4 サクションクーチロール
5 下層ヘッドボックス
6 上層ヘッドボックス
7a フレキシブルホース
7b 原料供給ノズル
8 原料供給部
9 下層用の原料吐出口
10 上層用の原料吐出口
11 シート
12 シートロール
13a シート繰り出し部
13b 位置調整用繰り出し部
13c シート挿入装置
14a、14b、14c、14d サクションボックス
15 ダンデロール
16 上層繊維マット
17 下層繊維マット
18 下層用原料パルプ
19 上層用原料パルプ
20 デッケルフレーム
21a スライス板
21b 分割型スライス板
21c 開口度調整機構
22a 原料吐出口
22b 分割型原料吐出口
23 スライス板調整ボルト
24a 支持フレーム
24b 支持フレーム調整ボルト
24c 吐出角度調整機構
26a、26b スリット型原料槽
27 上層紙層
28 中間層
29 下層紙層
30 特殊原料層
31 赤外吸収層
32 赤外吸収インキ
33 蛍光インキ
34 3層抄き合わせ紙
35a 下層用原料槽の目止め板
35b 上層用原料槽の目止め板
36a、36b、36c ガイドロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長網抄紙機の抄紙網の上方に、下層繊維マットを形成するための下層の原料を貯留する一つの下層ヘッドボックスと、前記下層ヘッドボックスの下流方向に前記下層繊維マット上に少なくとも一つの上層繊維マットを形成するための上層の原料を貯留する少なくとも一つの上層ヘッドボックスを配列し、前記下層ヘッドボックスと前記上層ヘッドボックスの間に前記抄紙網の抄紙幅以下のシートを繰り出すシート挿入装置を配置し、前記下層ヘッドボックスの原料を前記長網に吐出して前記下層繊維マットを形成し、前記下層繊維マット上へシートを走行させ、更に前記シート上に前記上層ヘッドボックスから原料を吐出し、前記上層繊維マットを形成して成る多層抄き合わせ紙の製造方法において、
少なくとも一つの前記上層ヘッドボックス内は、幅方向に複数に分けたスリット型原料槽に分割し、前記スリット型原料槽の各槽ごとに有する少なくとも一つの原料供給部から原料を供給し、前記スリット型原料槽の各槽ごとに原料を分けて吐出する分割型原料吐出口の開口度を調整する開口度調整機構により原料の吐出量を調整し、
前記各ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽ごとのそれぞれの原料吐出量が、前記抄紙網の幅方向に対応した各位置で調整可能に多層紙を抄き込むことを特徴とする多層抄き合わせ紙の製造方法。
【請求項2】
前記上層ヘッドボックスが、その上層ヘッドボックスの両側面に原料の吐出角度を調整する支持フレーム及び支持フレーム調整ボルトから成る吐出角度調整機構を備え、前記ヘッドボックスから吐出する原料の流量を調整し、前記上層繊維マットの坪量を調整できる請求項1記載の多層抄き合わせ紙の製造方法。
【請求項3】
前記シート挿入装置が、前記シートを抄紙速度に同期させて繰り出すシート繰り出し部と、幅方向のシート挿入位置を調整する位置調整用繰り出し部を有する請求項1又は2記載の多層抄き合わせ紙の製造方法。
【請求項4】
前記シートが不織布又は天然繊維の布であり、前記不織布はレーヨン、PET、PVA、又はその他のポリマー繊維から成り、前記天然繊維は木綿、わら、アバカ、シルク、又はその他の天然繊維から成る請求項1、2又は3記載の多層抄き合わせ紙の製造方法。
【請求項5】
前記シートには、機械読み取り可能な機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む請求項1乃至4のいずれか記載の多層抄き合わせ紙の製造方法。
【請求項6】
前記シートの換わりに中間層繊維マットを形成する中間層ヘッドボックスとし、前記中間層ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽ごとの少なくとも一つの原料供給部に、機械読み取り可能な機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む特殊原料を供給し、前記下層繊維マットと少なくとも一つの上層繊維マットとの間の中間層繊維マットに少なくとも一つの帯状の機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを抄き込む請求項1、2記載の多層抄き合わせ紙の製造方法。
【請求項7】
前記上層ヘッドボックスの前記スリット型原料槽の各槽ごとの少なくとも一つの原料供給部に、機械読み取り可能な機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む特殊原料を供給し、前記上層繊維マットに少なくとも一つの帯状の機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを抄き込む請求項1乃至5のいずれか記載の多層抄き合わせ紙の製造方法。
【請求項8】
請求項6及び7記載において、前記上層及び/又は中間層ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽ごとの少なくとも一つの原料供給部に、機械読み取り可能な機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む特殊原料を供給し、
前記上層及び/又は中間層繊維マットの幅方向の少なくとも一部分における深さ方向上面から下面までの全面に、
抄き方向に並行な少なくとも一つの帯状の機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを抄き込む多層抄き合わせ紙の製造方法。
【請求項9】
前記機能性材料が、有色顔料、磁性材料、赤外吸収材料、赤外反射材料、蛍光発光材料又はサーモクロミック材料であり、前記機能性繊維が前記機能性材料の少なくとも一つを付与した繊維又は金属繊維である請求項5、6、7又は8記載の多層抄き合わせ紙の製造方法。
【請求項10】
長網抄紙機の抄紙網の上方に、下層繊維マットを形成するための下層の原料を貯留する一つの下層ヘッドボックスと、前記下層ヘッドボックスの下流方向に配置して前記下層繊維マット上に少なくとも一つの上層繊維マットを形成するための上層の原料を貯留する少なくとも一つの上層ヘッドボックスと、前記少なくとも二つのヘッドボックス間に配置して前記抄紙網の抄紙幅以下のシートを繰り出す前記シート挿入装置によって、前記下層繊維マットと少なくとも一つの上層繊維マットとの間に前記シートを挿入する多層抄き合わせ紙の製造装置において、
前記一つの下層ヘッドボックス及び少なくとも一つの上層ヘッドボックス内は、それぞれ幅方向に複数に分割したスリット型原料槽と、前記スリット型原料槽の各槽ごとに有する原料を供給する少なくとも一つの原料供給部と、前記スリット型原料槽の各槽ごとに原料を分けて吐出する分割型原料吐出口の開口度を調整する開口度調整機構とを備えてなり、
前記各ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽ごとのそれぞれの原料吐出量が、前記抄紙網の幅方向に対応した各位置で調整可能であることを特徴とする多層抄き合わせ紙の製造装置。
【請求項11】
前記開口度調整機構が、前記スリット型原料槽の各槽ごとの分割型原料吐出口の開口度を調整する分割型スライス板及びスライス板調整ボルトから成る請求項10記載の多層抄き合わせ紙の製造装置。
【請求項12】
前記上層ヘッドボックスが、その上層ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽全体の分割原料吐出口から吐出する原料の流量を調整し、前記上層繊維マットの坪量を調整できるように、前記上層ヘッドボックスの両側面に原料の吐出角度を調整する支持フレーム及び支持フレーム調整ボルトから成る吐出角度調整機構を備える請求項10又は11記載の多層抄き合わせ紙の製造装置。
【請求項13】
前記下層繊維マットと少なくとも一つの上層繊維マットとの間の中間層にシートを挿入するシート挿入装置が、前記シートを抄紙速度に同期させて繰り出すシート繰り出し部と、幅方向のシート挿入位置を調整する位置調整用繰り出し部を有する請求項10、11又は12記載の多層抄き合わせ紙の製造装置。
【請求項14】
前記下層ヘッドボックスと、少なくとも一つの上層ヘッドボックスとの間に走行する前記シートが、前記上層ヘッドボックスの上流側の壁面に抵抗なく沿わせられるように前記上層ヘッドボックスの上流側の壁面を湾曲させたヘッドボックスとする請求項10、11、12又は13記載の多層抄き合わせ紙の製造装置。
【請求項15】
前記シート挿入装置に代わり中間層繊維マットを形成する中間層ヘッドボックスとし、前記中間層ヘッドボックスを前記下層ヘッドボックスと、他の少なくとも一つの上層ヘッドボックスとの間に使用し、中間層ヘッドボックスのスリット型原料槽の各槽ごとの少なくとも一つの原料供給部に、機械読取可能な機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む特殊原料を供給し、前記下層繊維マットと少なくとも一つの上層繊維マットとの間の中間層繊維マットに少なくとも一つの帯状の機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを抄き込む多層抄き合わせ製造装置。
【請求項16】
前記上層及び/又は中間層ヘッドボックスの前記スリット型原料槽の各槽ごとの少なくとも一つの原料供給部に、機械読み取り可能な前記機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを含む特殊原料を供給し、前記上層繊維マットに少なくとも一つの帯状の機能性材料及び機能性繊維の少なくとも一つを抄き込む請求項10乃至15のいずれか記載の多層抄き合わせ紙の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−133546(P2008−133546A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318218(P2006−318218)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】