説明

多数回印字用熱転写シート

【目的】 多数回使用しても印字感度が高く、かつ均一であり、印字感度が良好な熱転写シートを提供することを目的とし、印字時においても、基材と熱溶融性インキ層の良好な接着性を維持し多数回印字可能な熱転写シートを提供することを目的とする。
【構成】 基材フィルムの一方の面に中間層を設け、その上に熱溶融性インキ層を設けた多数回印字用熱転写シートにおいて、該中間層がエチレンー酢酸ビニル共重合体とポリエステル系樹脂よりなり、エチレンー酢酸ビニル共重合体とポリエステル系樹脂との重量比が10:1〜3:1であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、文字情報を主に印字するプリンターに使用し、多数回使用が可能な熱溶融性インキ層を備えた熱転写シートに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、サーマルプリンター、ファクシミリ等に用いられる熱転写記録媒体として、基材フィルムの一方の面に熱溶融性インキ層を設けた熱転写シートが使用されている。従来の熱転写シートは、基材フィルムとして厚さ10〜20μm程度のコンデンサ紙やパラフィン紙のような紙、あるいは厚さ3〜20μm程度のポリエステルやセロファンのようなプラスチックフィルムを用い、この基材フィルム上にワックスに顔料や染料等の着色剤を混合した熱溶融性のインキを塗布して熱溶融性インキ層を設けたものである。そして、基材フィルムの裏側からサーマルヘッドにより所定箇所を加熱・加圧し、熱溶融性インキ層のうち、印字部に相当する箇所の熱溶融性インキ層を印字用紙に転写して印字が行われる。しかし、このような従来の熱転写シートでは、サーマルヘッドにより加熱・加圧された箇所の熱溶融性インキ層は、1回の使用で印字用紙に転写してしまうため、同一箇所で可能な印字は1回のみとなり、熱転写シートの消費量が多く、ランニングコストが高く経済的ではないという問題があった。このため、多数回使用可能な種々の熱転写シートが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとしている問題点】しかし、多数回用熱転写シートは従来の熱転写シートより熱溶融性インキ層を厚くしなければならず、その為、製造、加工、使用時等にインキ層の箔落ちが起こる等の問題があった。そこで、インキ層の箔落ちを防止するため、中間接着層の改良が行われてきた。接着層を構成する材料として、基材シートと熱溶融性インキ層に対して良好な接着性を有するエチレンー酢酸ビニル共重合樹脂が挙げられるが、エチレンー酢酸ビニル共重合樹脂は加熱時溶融する性質を有するため、熱間剥離の際は溶融状態にあり接着力が低下する。そこで、特開平4ー21492号公報には、エチレンー酢酸ビニル共重合樹脂とポリエステル樹脂との混合物からなる中間接着層が開示されている。しかし、該公報は、階調表現を有する画像の形成に適した熱転写シートに関するもので、このような中間接着層を有する熱転写シートを用いても、多数回印字に用いた際は、基材フィルムと熱溶融性インキ層の間で剥離が生じ、良好な多数回印字を行えるものではなかった。
【0004】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、多数回使用しても印字感度が高く、かつ均一であり、印字感度が良好な熱転写シートを提供することを目的とし、印字時においても、基材と熱溶融性インキ層の良好な接着性を維持し多数回印字可能な熱転写シートを提供する。
【0005】
【問題点を解決する為の手段】上記目的を達成するために、本発明の熱転写シートは、基材フィルムの一方の面に中間層を設けその上に熱溶融性インキ層を設けた多数回印字用熱転写シートにおいて、該中間層がエチレンー酢酸ビニル共重合体及びポリエステル系樹脂よりなり、エチレンー酢酸ビニル共重合体及びポリエステル系樹脂との重量比が10:1〜3:1であることを特徴とする。さらに、エチレンー酢酸ビニル共重合体が平均粒径0.1〜7μmであることを特徴とする。
【0006】
【作用】印字時の加熱でエチレンー酢酸ビニル共重合体が溶融し、その接着力が低下しても、ポリエステル系樹脂は加熱時においても溶融せず、基材フィルムとの接着性を維持する。そこで、多数回印字において複数回熱を加えても、エチレンー酢酸ビニル共重合体がポリエステル系樹脂で結着されているので、インキ層と混合して接着成分であるエチレンー酢酸ビニル共重合体が全転写されることなく、常に基材フィルムと熱溶融性インキ層の良好な接着性を維持することができる。さらに、平均粒径0.1〜7μmの粒子状のエチレンー酢酸ビニル共重合体をポリエステル系樹脂で結着して表面が粗面化した中間層を形成することにより、エチレンー酢酸ビニル共重合体とポリエステル系樹脂との接触面積が増大し、熱間剥離を行う際も剥離させる力を分散させるため、適度な接着性を保ち、インキ層が全転写されることなく、良好な多数回印字が可能となる。
【0007】
【好ましい実施態様】次に好ましい実施態様を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の熱転写シートを示す断面図である。本発明の熱転写シートは、第1図に示す通り基材フィルム1と、この基材フィルム1の一方の面に形成される中間層2、熱溶融性インキ層3より形成される。図2は、本発明の熱転写シートの一応用例を示す断面図で、粒子状のエチレンー酢酸ビニル共重合体を用いて中間層を形成することにより、基材フィルムと熱溶融性インキ層の接着面は凹凸化しているものである。また、熱溶融性インキ層3上に転写制御層4を設け、基材フィルム1の裏面にはスリップ層5を設けたものである。図3は、自社製箔持ち試験機に関し、各実施例において、基材に対する接着力を測定する際、一定幅(3cm)の熱転写シートの一端に一定の荷重(100g重)をかけて図のような試験機にセットする。図4は、自社製箔持ち試験機に関し、金属プレートの斜視図である。
【0008】本発明の熱転写シートで用いられる基材フィルムとしては、従来の熱転写シートに使用されているものと同じ基材フィルムをそのまま用いることが出来ると共に、その他のものも使用することが出来、特に制限されない。好ましい基材フィルムの具体例としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、セロハン、ポリカーボネイト、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、塩化ゴム、アイオノマー等のプラスチック、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類、不織布等があり、又、これらを複合した基材フィルムであってもよい。最も好ましくは、ポリエステルが用いられる。この基材フィルムの厚さは、その強度及び熱伝導性が適切になる様に材料に応じて適宜変更することが出来るが、その厚さは、好ましくは、例えば、2〜25μmである。又、該基材フィルムの背面には、サーマルヘッドの粘着を防止し、且つ、滑り性を良くするためにスリップ層を設けることも可能である。このスリップ層は樹脂の層に滑剤、界面活性剤、無機微粒子、有機微粒子、顔料等を添加したものが好適に使用できる。
【0009】本発明の熱転写シートにおいて上記基材フィルムの一方の面に設ける熱溶融性インキ層の厚さは多数回印字回数によっても異なるが、5〜30μmで、特に6〜15μmが好ましい。5μm以下だと充分な印字濃度が得られない場合があり、30μm以上だと印字エネルギーが多量に必要となり、印字感度が落ちることがある。熱溶融性インキ層は、バインダーとしてのワックスと着色剤を含有するものであり、更に必要に応じて種々の添加剤を加えたものである。バインダーとして用いられるワックス成分としては、例えば、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス等がある。更に、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、ポリエステルワックス、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等、種々のワックスが用いられる。このなかで、特に融点が50〜90℃であるものが好ましい。50℃以下であると、保存性に問題が生じ、又90℃以上だと感度不足である。又、溶融粘度は、100℃における溶融粘度が10〜1000mPasの範囲であるワックスが好ましい。10mPas以下であると印字ににじみ等が生じ、1000mPas以上では、転写不良となる。
【0010】さらに、ワックスの他にバインダーとして、比較的低融点の熱可塑性樹脂を混合して熱溶融性インキの基材に対する柔軟性、接着性を向上させることができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレンーアクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、石油樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラール、アセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレン、エチルセルロース、又はポリアセタール等が用いられ、特に従来感熱接着剤として使用されている比較的低融点、例えば、50〜80℃の軟化点を有するものが好ましい。
【0011】着色剤としては、公知の有機または無機の顔料、あるいは染料の中から適宜選択することができ、例えば、十分な着色濃度を有し、光、熱等により変色、退色しないものが好ましい。また、加熱により発色する物質や、被転写体の表面に塗布されている成分と接触することにより発色するような物質であってもよい。さらに、着色剤の色としては、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックに限定されるものではなく、種々の色の着色剤を使用することができる。
【0012】本発明の中間層は、エチレンー酢酸ビニル共重合体とポリエステル系樹脂よりなり、エチレンー酢酸ビニル共重合体とポリエステル系樹脂との重量比が10:1〜3:1であることを特徴とする。エチレンー酢酸ビニル共重合体の含有量が上記範囲より少ない場合、インキ層と中間層の接着力が弱く、印字時においては、インキ層が全転写する。また、非印字時においても、インキ層が箔落ちしやすい。エチレンー酢酸ビニル共重合体の含有量が上記範囲より多い場合、基材との接着力が弱く、印字時に中間層から転写され良好な多数回印字が行われない。ここで、エチレンー酢酸ビニル共重合体とは、具体的に、MIが50〜2500であり、VAが10〜95%のものが用いられ、好ましくは、VAが20〜40%で、平均粒子径0.1〜7μmの粒状のものが用いられる。このような粒状のエチレンー酢酸ビニル共重合体を用いることにより、基材フィルムと熱溶融性インキ層の接着面を凹凸化させて熱間剥離時の接着力を向上させることができる。尚、粒状でない場合でもMEK、トルエン等の一般溶剤に可溶なものは使用可能である。また、ポリエステル系樹脂とは、分子量10000〜20000、ガラス転移温度(Tg)ー10〜80℃、軟化点100〜200℃の線状飽和ポリエステルが好ましい。さらに、エチレンー酢酸ビニル共重合体とポリエステル系樹脂を主体とする中間層の接着力を阻害しない程度に、その他の微粒子を添加することも可能である。
【0013】中間層に微粒子を添加することにより、中間層と熱溶融性インキ層との界面を粗面化することができ、多数回印字において、最後の印字終了後も印字物をマット状の艶消し状態にすることができる。このような微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、酸化モリブデン、酸化錫、酸化チタン等の各種酸化物、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の各種炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の各種水酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の各種硫酸塩、タルク、マイカ、カオリン、ワラストナイト等の各種ケイ酸塩、チタン酸カリ、チタン酸バリウム等の各種チタン酸塩、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の各種窒化物、炭化ケイ素、炭化チタン等の各種炭化物、硫化モリブデン、硫化亜鉛等の各種硫化物、燐酸カルシウム、燐酸鉄等の各種燐酸塩、バリウムフェライト、カルシウムフェライト等の各種フェライト、カーボン、グラファイト等の各種炭素物、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の各種金属粉、また、ポリスチレン、ナイロン等の各種有機系粉体が挙げられる。これらのなかでも、分散性及び印字時の加熱により粒子が変形しない点で、シリカ、酸化チタン、炭酸カリウム、カーボンが好ましく用いられる。このなかでも特に粒子径が0.1〜10μmの範囲の微粒子が接着性を損なわずに良好な艶消印字が行われる。
【0014】このような微粒子を添加する際、添加量はエチレンー酢酸ビニル共重合体とポリエステル系樹脂よりなる樹脂成分100重量部に対し、50〜95重量部の範囲が好ましい。50重量部以下の場合、良好なマット状の印字面が得られない。95重量部以上の場合、接着性が低下する。
【0015】中間層の厚みとしては、0.5〜2μmが好ましい。0.5μm未満では十分な接着力が得られず、一回の印字で熱溶融性インキ層が全部転写されて多数回印字が不可能となり、2μm以上では印字エネルギーが多量に必要になり好ましくない。
【0016】基材上に、中間層、熱溶融性インキ層を順次形成する方法としては、ホットメルトコート、ホットラッカーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等その他多くの公知の方法が使用出来るとともに、水系、又は非水系エマルジョンを使用する方法も採用可能である。
【0017】熱溶融性インキ層上に多孔質構造を有する転写制御層を形成して、多数回印字性を向上させることが可能である。転写制御層を形成する樹脂としては、セルロースアセテートブチレート(CAB)、エチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンーアクリル酸エステル共重合体(EEA)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、石油樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラール、アセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレン、エチルセルロース又はポリアセタール、変性マレイミド等耐熱性の高い樹脂が用いられる。多孔質構造を形成する方法としては、蒸発速度の異なる溶剤に前記樹脂を溶解、塗工し形成する方法、及び、前記樹脂に熱溶融性インキ等のワックス又はワックスにカーボンブラック等の微粒子を分散させて塗工する等の公知の方法が適用できる。転写制御層の厚みは、多孔質度等より適宜調整するが、0.5〜3.0μm程度が良い。0.5μm未満の場合、十分に熱溶融性インキの転写量を制御することができない。3.0μm以上の場合、印字エネルギーが多量に必要になり印字濃度が低くなる。
【0018】また、前記熱溶融性インキ層(第1インキ層)上に、前記ワックスと非相溶な過冷却性樹脂と着色剤を含む第2の熱溶融性インキ層を形成することにより多数回印字性を向上させることも可能である。印字時の加熱で第1インキ層と第2インキ層が溶融し混ざり合い、続いて、加熱終了後、剥離時には第2のインキ層の過冷却性樹脂は凝固せずに溶融状態にあるので、第2インキ層中で凝集破壊が起こり、第2インキ層の上部分が紙側に転写し、下部分は基材フィルム側に残る。基材フィルム側に残った部分は、印字時の圧力で第1インキ層と第2インキ層の一部が混合状態になる。そして、剥離後、第2インキ層の過冷却性樹脂は第1インキ層のワックスと非相溶なので、両者は完全相溶することがなく、過冷却性樹脂の熱的特性を維持する層構成をとり、良好な多数回印字を可能とするものである。
【0019】なお、本発明の多数回印字用熱転写シートは、カラー印字として適用できることは言うまでもなく、また、熱転写プリンターとしてはライン或いはシリアルタイプのいずれにも適用することができる。
【0020】
【実施例】次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中、部又は%とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
実施例1厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、その一方の面に下記組成の中間層形成用塗液をグラビアコート法により1g/m2 (乾燥時)の割合で塗布し、中間層を形成した。次いで、その中間層の上に下記組成の熱溶融性インキ層形成用塗液、転写制御層形成用塗液をグラビアコート法により、それぞれ10g/m2 (乾燥時)、1g/m2 (乾燥時)の割合で塗布し、本発明の多数回印字用熱転写シートを得た。
中間層形成用塗液の組成 エチレン/酢酸ビニル共重合体 50部 (三井石油化学工業(株)製 ケミパールVー300)
平均粒径5μm、MI400、VA28%、固形分40% ポリエステル樹脂 10部 (日本合成化学工業(株)製 WRー901)
分子量16000、Tg67℃、軟化点110℃、固形分20% 水 80部熱溶融性インキ層形成用塗液の組成 カーボンブラック 20部 エチレン/酢酸ビニル共重合体 5部 (三井石油化学工業(株)製 ケミパールVー300)
平均粒径5μm、MI400、VA28%、固形分40% カルナバワックス 10部 パラフィンワックス(日本精蝋(株)製 HNPー3) 65部転写制御層形成用塗液の組成 ニトロセルロース 10部 パラフィンワックス(日本精蝋(株)製 HNPー11) 10部 酢酸エチル 40部 トルエン 40部
【0021】実施例2実施例1において、中間層形成用塗液を下記組成に代えた以外は実施例1と同様に本発明の多数回印字用熱転写シートを得た。
中間層形成用塗液の組成 エチレン/酢酸ビニル共重合体 20部 (三井石油化学工業(株)製 ケミパールVー300)
平均粒径5μm、MI400、VA28%、固形分40% ポリエステル樹脂 10部 (日本合成化学工業(株)製 WRー901)
分子量16000、Tg67℃、軟化点110℃、固形分20% 水 80部
【0022】実施例3実施例1において、中間層形成用塗液を下記組成に代えた以外は実施例1と同様に本発明の多数回印字用熱転写シートを得た。
中間層形成用塗液の組成 エチレン/酢酸ビニル共重合体 36部 (住友化学(株)製 スミカフレックスSー510)
平均粒径0.7μm、固形分55% ポリエステル樹脂 10部 (日本合成化学工業(株)製 WRー901)
分子量16000、Tg67℃、軟化点110℃、固形分20% 水 80部
【0023】実施例4実施例1において、中間層形成用塗液を下記組成に代えた以外は実施例1と同様に本発明の多数回印字用熱転写シートを得た。
中間層形成用塗液の組成 エチレン/酢酸ビニル共重合体 15部 (住友化学(株)製 スミカフレックスSー510)
平均粒径0.7μm、固形分55% ポリエステル樹脂 10部 (日本合成化学工業(株)製 WRー901)
分子量16000、Tg67℃、軟化点110℃、固形分20% 水 80部
【0024】実施例5厚さ4、5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、その一方の面に下記組成の中間層形成用塗液をグラビアコート法により1g/m2 (乾燥時)の割合で塗布し、中間層を形成した。
中間層形成用塗液の組成 エチレン/酢酸ビニル共重合体 20部 (三井石油化学工業(株)製 エバフレックス410)
MI400、VA90% ポリエステル樹脂 10部 (東洋紡績(株)製 バイロン200)
分子量15000〜20000、Tg67℃、軟化点163℃ MEK 75部次いで上記中間層上に、下記組成の第1の熱溶融性インキ層形成用塗液をホットメルトロールコート法により3g/m2 (乾燥時)の割合で塗布、乾燥して第1の熱溶融性インキ層を形成した後、第2の熱溶融性インキ層形成用塗液をグラビアコート法により2g/m2 (乾燥時)の割合で塗布、乾燥し、本発明の多数回印字用熱転写シートを得た。
第1の熱溶融性インキ層形成用塗液の組成 カーボンブラック 10部 エチレン/酢酸ビニル共重合体 10部 (デュポン(株)製 エバフレックス410)
カルナバワックス 9部 パラフィンワックス(日本精蝋(株)製 HNPー3) 70部第2の熱溶融性インキ層形成用塗液の組成 カーボンブラック 12部 エチレン/酢酸ビニル共重合体 6.6部 (デュポン(株)製 エバフレックス410)
過冷却成分;飽和線状ポリエステル 80.4部 MEK 276部
【0025】比較例1中間層形成用塗液を下記組成とした以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを形成した。
中間層形成用塗液の組成 エチレン/酢酸ビニル共重合体 55部 (三井石油化学工業(株)製 ケミパールVー300)
平均粒径5μm、MI400、VA28%、固形分40% ポリエステル樹脂 10部 (日本合成化学工業(株)製 WRー901)
分子量16000、Tg67℃、軟化点110℃、固形分20% 水 80部
【0026】比較例2中間層形成用塗液を下記組成とした以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを形成した。
中間層形成用塗液の組成 エチレン/酢酸ビニル共重合体 10部 (三井石油化学工業(株)製 ケミパールVー300)
平均粒径5μm、MI400、VA28%、固形分40% ポリエステル樹脂 10部 (日本合成化学工業(株)製 WRー901)
分子量16000、Tg67℃、軟化点110℃、固形分20% 水 80部
【0027】比較例3中間層形成用塗液を下記組成とした以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを形成した。
中間層形成用塗液の組成 エチレン/酢酸ビニル共重合体 40部 (住友化学(株)製 スミカフレックスSー510)
平均粒径0.7μm、固形分55% ポリエステル樹脂 10部 (日本合成化学工業(株)製 WRー901)
分子量16000、Tg67℃、軟化点110℃、固形分20% 水 80部
【0028】比較例4中間層形成用塗液を下記組成とした以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを形成した。
中間層形成用塗液の組成 エチレン/酢酸ビニル共重合体 7.3部 (住友化学(株)製 スミカフレックスSー510)
平均粒径0.7μm、固形分55% ポリエステル樹脂 10部 (日本合成化学工業(株)製 WRー901)
分子量16000、Tg67℃、軟化点110℃、固形分20% 水 80部
【0029】上記実施例及び比較例の多数回印字用熱転写シートを用いて、その同一箇所を下記条件で印字試験を実施し、下記の評価を行った。
印字速度;5inch/sec印圧 ;5kg/lineサーマルヘッド;厚膜部分グレーズ長さ4inchドット密度8dot/mm剥離距離;2mm印字エネルギー0.3〜0.5mJ/dot(履歴制御有り)
評価方法基材に対する接着力印字前の幅3cmの熱転写シートの端面に、重さ100g重の荷重をかけ、図3に示すとうり、自社製箔持ち試験機にセットして、荷重をかけていない方の端面を手でひっぱり、金属プレートとの摩擦によりインクの剥離する程度を目視した。
○:インク剥がれなし。 △:わずかにあり。 ×:あり。
熱間剥離時の接着力一回印字後、インク層が全転写した箇所を目視にて確認した。
○:なし。 △:わずかにあり。 ×:あり。
接着性の低下5回印字後、自社製箔持ち試験機で測定した。
○:インク剥がれなし。 △:わずかにあり。 ×:あり。
【0030】
【表1】


【表2】


尚、粒子形状を有さない エチレン/酢酸ビニル共重合体(三井石油化学工業(株)製 エバフレックス410)を用いた実施例5に関しては、基材に対する接着力 ○、熱間剥離時の接着力 △、接着性の低下 ○であった。
【0031】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、印字時の加熱でエチレンー酢酸ビニル共重合体が溶融し、その接着力が低下しても、ポリエステル系樹脂は加熱時においても溶融せず、基材フィルムとの接着性を維持ため、多数回印字において、常に基材フィルムと熱溶融性インキ層の良好な接着性を維持することができる。さらに、平均粒径0.1〜7μmの粒子状のエチレンー酢酸ビニル共重合体をポリエステル系樹脂で結着し、表面が粗面化した中間層を形成することにより、熱間剥離を行う際も、剥離させる力を分散させるため、適度な接着性を保ち、インキ層が全転写されることなく、良好な多数回印字が可能となる。
【0032】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱転写シートを示す断面図である。
【図2】本発明の熱転写シートの応用例を示す断面図である。
【図3】基材に対する接着力の評価方法を示す図である。
【図4】自社製箔持ち試験機に関し、金属プレートの斜視図である。
【符号の説明】
1.基材フィルム
2.中間層
3.熱溶融製インキ層
4.転写制御層
5.背面層
6.エチレンー酢酸ビニル共重合体粒子
7.金属プレート
8.台

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基材フィルムの一方の面に中間層を設けその上に熱溶融性インキ層を設けた多数回印字用熱転写シートにおいて、該中間層がエチレンー酢酸ビニル共重合体及びポリエステル系樹脂よりなり、エチレンー酢酸ビニル共重合体とポリエステル系樹脂との重量比が10:1〜3:1であることを特徴とする多数回印字用熱転写シート。
【請求項2】 エチレンー酢酸ビニル共重合体が平均粒径0.1〜7μmであることを特徴とする請求項1記載の多数回印字用熱転写シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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