説明

多数本のヤーンが密接した一様な密度で平行に横糸入れをなす方法およびその方法による製造物

【発明の詳細な説明】
[技術分野]
本発明は高強度のヤーンが一様な層に形成され、ヤーンの方向が斜めにバイアスされ、平行に配列されているのを特徴とする層をなした構造用布地で、この層は一様な高い密度を有している布地層を製造する技術に関している。より詳細には、本発明は、次に述べる構造物を使用の対象とするヤーンの密度の高い布地からなる層を製造する方法を提供するものであり、ヤーンは横糸いれ工程により間隔が平行で、その方向が布地の長手方向軸線に対してバイアスし、かつ一様な密度の布地層に形成されている。
[背景技術]
航空宇宙産業のような高強度、高剛性且つ軽量が要求されるところでは、高強度で、硬化樹脂で含浸された、構造物を適用対象とするヤーン(以下構造物用ヤーンという)から製造された布地地からなる複合素材に対する要望が増大しており、このような構造物用布地を低コストで大量に供給でき、また航空宇宙産業においてみられるような極度に高い仕様に見合う製造技術が重要視されている。構造物用布地の一般的なタイプは、最終的な形態としては、ヤーンの配列体を縫合によって結合したものか、あるいはこの配列体をスポット接着して形成される布地で、構造物用ヤーンの複数の層から構成されている。応力及び歪みが動的であるため、並びに構造物用布地に作用する負荷のため、多くの用途において、ヤーンは各々の層で精密な平行配列となっているのが望ましい。更に、布地におけるヤーンの密度の管理、および布地における密度の均一性の管理は微妙である。また、布地に対して層の大部分をバイアスさせて、つまり傾けるのが望ましいことがしばしばある。
構造物用ヤーンからなる層を、最も生産性が高く、コストを低く製造する方法のうちの一つは、従来の織地の織成に用いられる横糸入れ法(weft-insertion process)と同じ原理を転用することである。本件発明における横糸入れ法においても、複数のヤーンが、シャトルによって、ピンすなわちヤーン保持部材を備える2つのコンベヤーからなる進行する2つの列の幅によって規定されるスペースを横切って往復し、これらのヤーンはそれぞれの横切る動作において、これらのヤーン保持部材によって保持されてヤーンの配列体を構成し、さらに別の構造物用ヤーンによって同様に形成された別のヤーン配列体を重ね合わせる。この重ね合わされたヤーン配列体はこれらのヤーン保持部材によって保持されながら、さらに後方に配置された縫合機(またはスポット接着機)に進められ、ここで構造物用のヤーン配列体を横断して縫合用のヤーン(またはスポット接着剤)が組合わされて、両配列体が結合される。
構造物用ヤーンの配列体の形成に話を戻すと、これらのヤーンの間は、ヤーンとヤーン移転部材とをピンその他の部材の間に通すため広く離間している。更に、このように離間させておくことは、前記ヤーン移転部材が隣接するヤーン同士の間で別のヤーンまたはヤーンの部分に絡まって布地に欠陥を生じさせることなく通り抜けられるようにするのに必要である。布地の密度を増すには普通、装置の先に位置する縫合機への横置きヤーンの送り量をヤーン配列体の送り出し量よりも大きくしてなされる。ヤーンは、このように縫合機において積層されようとして、密度が増加する。送り込み量と送り出し量の差を利用する方法は、バイアスされた、若しくは重ねられて多層に形成された配列体、又は送込みと送り出しとが等しくなければならないその他の場合には適用できない。
この様なシステムの主な問題点は、ヤーンの方向がバイアスされた布地、多層の布地又は送り込みにおける密度が送り出しにおける密度と等しくして製造される場合に、平行関係に最も近ずけようとすれば、それが「交絡した糸」と呼ばれるものとなって、構造物用ヤーンが広い範囲で実際の平行関係から外れてしまうことである。このように交絡してしまうのは、この方法に固有の特徴であり、ヤーンを方向ずける、つまりヤーンを移送するシャトルがその横断動作の終点に達して、戻るに際して、ヤーンがここで交絡する。これらのシステムは米国特許第3756893号に開示されており、この特許は特に多数の層を単一の形成動作で形成する方法を提供し、ヤーンはどの向きにも向けられる。
横糸いれ装置におけるこの固有の問題を解決する種々の試みが為されている。
米国特許第4325999号は、図11、コラム13と14において、2層の構造物用でない布地を製造することのできる方法を示しており、各層におけるヤーンのそれぞれは平行で、それぞれの層においてヤーンは互いに90°の角度をなして重ねられ、同時に各ヤーンが布地の長手方向軸線に対して45°の角度をなす様に配列されている。装置において、実際にこれらのヤーンがコンベア上でピンすなわち保持要部材間のスペースを通り抜けることが必要であり、そして、これらの保持部材の回りを回ってこれらの部材を横切って戻る。できた布地は従って、必然的に低密度のものとなり、上記された用途には適さない。カナダ特許第912296号には別の試みがなされており、ヤーンを往復させるシャトルはコンベア上の保持部材を通してヤーンを移送し、その基本的な横断運動、つまり「ラック」に対して90°で後退移動して、ヤーンを保持部材の回りに順方向に係合させる。このカナダ特許にはこのような特徴は記載されていないが、シャトルのラック動作が正しく制御されていれば、結果としてヤーンをその長手方向に沿って平行に配列できる。このような結果は、イギリス特許第1299638号に記載されている。この目標を達成するため、この装置でも、ヤーンがそれぞれの横断動作において保持部材間で移動することを必要としている。
ヤーンが保持部材間で移動するというこの要求は、カナダ特許のデザイナ布地のような特に密度の高くない布地の製造については問題がないが、航空宇宙産業のような多くの技術的な分野で使用するのに要求される高密度の構造物用布地を製造する場合、困難な問題が存在する。ヤーンの方向がバイアスした、あるいは多層の布地におけるヤーンの密度は、ヤーンの離間距離が約0.3インチ未満でなければならず、従って、ピンすなわち保持部材の離間距離もこの値未満でなければならないようなものである場合に、問題が生ずる。
特に平行関係を達成させるのに必要なシャトルでの引っ掛け機構についての幾分深刻な問題としては、ヤーンが意図していないヤーン保持部材間に行きやすいことである。ヤーンは、シャトルがその横断動作の他端までの途中にある間ではヤーンが本当にヤーン移転部材に引っ掛かっているわけではないため、ヤーンは数スペース相当まで滑り、ヤーン配列体、したがって結果として布地に多くの不良箇所が生じてしまう。更に、全体的には密度は一様となりにくい。
この問題を解決するものとして、種々のヤーン移転機構、が開発されており、ヤーンキャリア(シャトル)からヤーンを受けてヤーンが確かにこれに引っ掛かっているのが確認された場合にヤーン保持部材に移転する。これらの説明は米国特許第3756043号にある。しかしながら、これらのヤーン移転機構は平行状態で高密度を達成するという問題を処理してはいない。
特に、これらの移転部材の例は、移転部材の離間距離がシャトルのヤーン密度と同じであることが要求されることから、高い密度を達成するには用いることができない。高い密度では、必然的にいくつかのヤーンで、適切に引っ掛かっているというより移転部材内を貫通している。この場合は、移転部材が動くことで、ヤーンの破損及びこれから起きる不具合が発生しやすくなる。
結果的に、高密度で、一様な密度の構造物用布地のための配列体で、ヤーンが平行に配列されているものを提供するについての信頼できる唯一の方法は、単一ヤーンの横糸いれ方法の原理を転用することであり、その一つが、狭義のシャトルを用いて、単一のヤーン端部をヤーン保持部材を備えるコンベアの間を通すか、送り込みと送り出しの密度が等しくない機械を用いることである。前者は高度の信頼性を得ることができるが、極端に遅いものである。後者はヤーンの方向がバイアスされない布地に限定され、両ヤーンは布地の進行方向に対して90°の角度をなし配されている。結果として、このように、所望の布地を製造する方法として、商業的に成立つものはない。
商業的な要求からの別な問題としては、一様ではあるがそれぞれ異なった密度有する多くの種類の布地を一つの形成技術を通して提供することに対する要求があることである。航空宇宙のような単一の用途においてさえ、同じ外観と製造方法で広い範囲の密度の布地を提供することに対する要求が存在している。
従って、高密度の構造的物用の布地、あるいは横入れ工程によるこれに似た製造物で、繊維状のままの状態で樹脂を充満させるのに適したものを低コストで、布地構成ヤーンの方向がバイアスされ、ヤーンが全て平行に配列されているようにして製造する方法に対する差迫った要求が引き続き存在している。
[本発明の開示]
本発明の一つの目的は、平行に配されて高密度のヤーンからなり、このような平行状態からずれることなく高密度且つ一様な密度となっている構造的な布地の層を供給できる方法を提供することである。
本発明の他の目的は上述の構造物用布地を製造する方法であって、できるだけ低いコストで現在の設備および製造工程に適用できる方法を提供するにある。
更に他の目的は、一様な密度の布地を広い範囲にわたって製造できる単一の方法を提供するにある。
これらの目的及び以下に明らかにされる他の目的は、例えば、ヤーン案内孔を備えた(広義の)シャトルが、後置される縫合機に向けて進む、それぞれがヤーン保持部材を備える2つの送りコンベア間の幅により規定されたスペースの上方を、前記の幅を斜めに急速に反復して横断するような従来の横入れシャトルとコンベアからなる設備を必要とする方法によって達成される。シャトルは複数のヤーンを移送する。それぞれの往復動作の終点で、シャトルはコンベア上方を通過し、シャトルによって移送されたヤーンはコンベアの外側に位置しているヤーン移転部材の近傍で、ヤーン保持部材を備えるコンベアに平行な位置に置かれる。これらのヤーン移転部材は、このすぐ後にコンベアに平行に、コンベアの進む向きと反対に相対的に移動し、これによってヤーンを「引っ掛ける」。この引っ掛け動作はシャトルが戻る途中で、ヤーンを案内するヤーン移送部材(シャトル)に隣接したコンベア上方を通過して戻る前に行われる。
その後、ヤーン移送部材(シャトル)は、コンベアと同期して原位置に移動する。シャトルが第1のコンベアから離れて戻るに際に、ヤーン移転部材はヤーンを外し、ヤーンはコンベアに設けられたピン、フック、又は類似したヤーン保持及び維持部材に移転される。複数のニードルなどからなるヤーン移転部材は、0.3インチよりも間隔が狭くならないように配され、つまりヤーンを積極的に円滑に移転させるのを確実にするための最少の公差が必要とされる。シャトルはここで、別のヤーン移転部材が位置しているもう一方のコンベア側に移動し、同じ動作が繰り返される。
コンベアとヤーン移転部材の間でシャトルが急速に移動するにつれて、シャトルにより展開されたヤーンからなる帯域が、ヤーン移転部材が引っ掛けたヤーンをヤーン保持部材に移転することによって、その前に展開された帯域にある程度まで重ね合わされる。この移転動作は、コンベアの進む速度とともに予め決められ、シャトルにより移送されるヤーンの数、およびシャトルにおける各ヤーンの離間配置が与えられることで、所望のヤーン密度が得られる。従って、ヤーンの帯域の幅に等しい距離で移転動作をなす従来のシステムに比べて、ここでの移転動作は広い範囲の密度に亘って一様な密度となるのを確実にするように設定されている。
ピンあるいはフックのようなヤーン保持部材は、コンベア上で所望するように離間配置させることができる。現在運転されている方法は、インチあたり12又は14のヤーン保持部材を備えたコンベアを使用している。勿論、この方法による結果として、隣接するヤーン保持部材の対の間で1本を越えるヤーンが展開され、及び/又はヤーンはこの保持部材で保持されている。これに対して、微視的には、これにより「積み立て」がなされ、ヤーンが詰込まれていることにより知覚される程度のずれはなくなる。このことは、インチ当りのヤーンの保持部材のの数を増すことでより管理されやすくなる。インチ当りの保持部材の最大数は、2つのヤーン移転部材の間でヤーンがしっかり置かれる、あるいはヤーンを確実に保持するに必要な間隔によって決まってくる。
従って、1/2インチ毎、あるいは1/3インチ毎に1本のヤーンを設けることができるより遥かに大きな、一様な密度の方向がバイアスされた、又は多層の布地を供給する方法で、ヤーンが平行な配列を維持し、且つヤーン移転部材に引っ掛けてヤーンを破損する、あるいはこの引っ掛け動作を行っているシャトルが戻ることで、ヤーン保持部材の上方でヤーンを傷つけたりヤーンの配列が乱れたりする危険のない方法が提供される。
図面の簡単な説明 第1図ないし第3図、および第4図ないし第7図はヤーン移転部材によるヤーンの引っ掛けおよび取り外しについての択一的な方法を示している。
第8図は本発明により製造される布地用のヤーン配列体の1タイプを示しているとともに、これに用いられている構造物用ヤーンの重ね合わせパターンを原理的に示している。
第9図はこれに代わる布地用のヤーン配列体および重ね合わせパターンを原理的に示している。
第10図に対応する図はない。
第11図ないし第15図は、この方法をシャトルによってそれぞれの横断動作において残されるヤーンの数を限定することにより理解し易くして示している。
[本発明を実施するについての最良の態様]
上記したように、本発明は全く従前の機械、あるいは大きく改変することなくこれにあうように仕様を変えた機械を使用して実施することができる。横糸入れ装置の基本的な要素は全て本発明に転用が可能である。このことから、この発明を実施するための装置には、ピンを備えた2つの「エンドレス」コンベア等のヤーン保持部材が取付けられており、この装置は、ピンを装置の後方に置かれた縫合機に送る同期駆動装置を備え、この縫合機で複数のヤーン配列体が縫合によって結合されて、ピンから取外される。ヤーンのループ状部分、つまりヤーンが保持部材の回りにループ状をなしている部分は、この段階で頻繁に切除される。この装置はまた、コンベア上を斜め方向に横断往復する少なくとも1つの横糸入れ(weft-insertion)シャトルすなわちキャリッジを備えており、更に、シャトル、キャリッジなどの使用すべきヤーン移送部材によって移送されたヤーンを、往復移動のそれぞれの端で、シャトルにより送られたヤーンを押圧するような範囲内において押し下げる機能を有している。本発明は、配列装置(lay-down)と横糸移送用キャリッジ(シャトル)の特定の1つのタイプに限定されるものではないが、特に好適な機構は米国特許第4444025号に開示されており、その内容はここに参考として編入されている。その特定のキャリア機構は、シャトルを構成する棒状体が回転できるようにしてヤーンを比較的穏やかに保持部材に引っ掛けるためにヤーンを押し下げ、同時にシャトルの重量を減少させて効率を良くする傾斜したカムを設けているのを特徴としている。同等の機能を提供する他のキャリッジ、例えば米国特許第4556440号のようなもの知られている。このシステムの特有の効果を得るため、ヤーンがその方向をバイアスさせて配置されるのを可能にするように、横糸(weft)キャリアは正の角度をなしてコンベアを斜めに横断し、バイアスを生じさせることができるようになっている。この考え方は、例えば米国特許第4489459号に開示されている。
本発明による方法を実施するのに必要な機械のヤーン移送部材(シャトル、キャリアーなど)も、それ自体知られていないものではないが、これらが構造的、高密度、且つ一様な密度の布地には従来用いられていないと信ずる。米国特許第495888号では、複数の糸案内を備えたキャリッジ(シャトルに相当)が説明されており、このようなキャリッジは、構造物用ヤーン及び布地への使用に適するように改変することができる。この装置は、シャトルすなわちキャリッジにより移送された糸を引っ掛けて、エンドレスコンベアベルトに設けた保持部材にヤーンを移転する、ヤーン移転部材を備えている。
好ましい実施例としては、ヤーン移送部材は、前記のヤーン移転部材を備え、この移転部材はニードルからなり、ヤーンを引っ掛けるためのフックとなる傾斜したエッジを端部に備えている。シャトルによって移送されたヤーンによって前記フックが引っ掛けられ、ヤーン移転部材の「ラック」動作がなされる。シャトルがヤーン移転部材から離れるにつれて、シャトルとフックとの間の角度が減少するためヤーンはニードルのフックから外れて、コンベアに備わるヤーン保持部材に接する。ヤーン移送部材(キャリッジ)は、ここでその原位置に戻る。
ピン等を有するヤーン保持部材は、一般的な横入れ装置のコンベアに従来より用いられ、汎用のものである。
後置の縫製機に移されると同時に、平行をなすヤーン配列体は従来の方法で縫合され、樹脂を含浸させる構造となったものに適する一様な、構造物用の層となって縫製機から出てゆく。
本発明の方法の工程は、図を参照して更に説明する。全ての図において、同じの符号は同様の部分を示している。
図1に示すように、構造物用ヤーンが貫通する孔102(紙面を貫く方向に複数個の孔が並んでいる)を備えたシャトル100は、その横断往復動(traverse)の左端に達している。ここでは、ヤーンは押え棒(pressurebar)106により押さえられており、この押え棒106はシャトル100と連動するものとすることができる。この位置において、ヤーンはヤーン転移部材であるニードル108によって引っ掛けられている。図では、1本のヤーン移転用のニードル、1つのヤーン保持部材を備えるコンベア、及び1本のヤーンのみが示されている。勿論、実際にはこれらのそれぞれのものが複数あり、並列に配置されている。図1に示すように、コンベア112のヤーン保持部材110はまだ構造物用のヤーン104には完全には引っ掛かっていない。
図2では、ヤーン移転用のニードル108はヤーン保持部材110と同じ方向で、ヤーン保持部材110の進む向きと反対向きにヤーンを「引っ掛ける(racking)」ことによりこれと係合する。シャトル100はこの引っ掛け動作が完了する以前には、ヤーン保持部材110の上方を介して戻ってはいない。
図3に示すように、シャトル100がヤーン保持部材110からずっと遠くへ移動するにつれて、シャトル100とヤーン移転用のニードル108とのなす角度が減少して、ヤーンはニードル108か外れて、ヤーン保持部材110で保持される。それぞれのヤーン保持部材110は、ヤーンが一様に保持されるようにするため、図示するような複数のピンとすることができることに留意されたい。同様な動作が、シャトル100がその横断往復運動の反対側の端でも行われる。
この工程の変形例が図4ないし図7に示されている。図4では、シャトル100は、上記した図1と同じ位置にあるときが示されている。この例では、別にはぎ取り棒(strip-off bar)114があり、ヤーン移転部材108の支持体(図示しない)に支持されている。この例におけるシステムの始めの動作は上記のものと同様であり、シャトル100がその横断往復運動の端に達する際に、押し棒106がヤーン104で押さえ、ヤーンがヤーン移転部材108によって引掛けられる。シャトルが戻る際、ヤーン移転部材はコンベア112と平行にしてヤーン104を引掛けている。シャトル100の動作のみによってヤーン104がヤーン移転部材108から外れることになる位置で、シャトルの動きと同期してはぎとり棒114が降下する。ヤーンが外れる直前の場合が、図6に示されている。
はぎとり棒114がヤーン104と接する際、はぎとり棒114があることでコンベア112のヤーン保持部材とヤーンの引掛りをずっと積極的且つ確実なものとなる。従って、種々の構造物用ヤーンを選択でき、また種々の作動状態が選択されることから、ヤーンがヤーン移転部材から外れる際にヤーン保持部材に適切に、且つ確実に引掛かからない可能性がある場合に、この例を用いるものがよい。
上記のように、ヤーン移転部材の引掛け動作は、シャトルにより配列されたそれぞれのヤーン群の帯域が、配列体において極端に高密度で一様な密度が得られるように、その直前に置かれたヤーン群の帯域と重なるのを確実なものとするのに用いられる。その様な配列の仕方の結果が図8に示されている。図に示されているように、それぞれの動作行程の始めと終わりで、配列体は低密度となっており、この例におけるインチ当り16ライン、つまりヤーンの密度の配列体に対する仕様を満たさない。しかし、配列体の中心では、この密度は簡単に達成される。それぞれの動作行程の始めと終わりでは要求されている密度の仕様を満たさないことは、従来の工程における動作工程のこれらの部分は通常、切除されて廃棄されていることから、必然的に更なるムダや、別のコストを生じさせるものではないことに留意されたい。
本発明が用いられている方法を明瞭に説明するため、図8において、順に重ねられている全ての層が僅かずつずらされている。示されている配列体の中心では、示されている装置の分析のため密度が変わっており、これは形成された層における実際の変わりぐあいを反映しているものではない。従って、始めの行程では、シャトルは、この例では17本のヤーンを配置していく。これらは200で表わされている。その戻りは行程で、ヤーン保持部材のヤーン保持拘束動作により、平行である僅かにずらされた17本のラインからなる帯域が展開(laid-down)され、202で表わされている。これから戻る行程で、第3の組、204が続いて展開される。保持動作が繰返えされるにつれて、所望の密度となるまで重なりが増えてゆくことは言うまでもなく明らかである。
図8に示された例では、制御の対象となるパラメーターは所望の密度、つまりインチ当り16本、シャトルが移送できるヤーンの数、並びに臨界値として、シャトルにおけるヤーン同士の間隔及びヤーン移転部材におけるフックの間隔で、これは0.5インチである。この場合、図8に示す配列体を得るについての引掛け動作の間隔、つまり帯域のずれ量は1.0625インチである。(この配列体は、説明を簡単にするため、2次重ね用のヤーンの配列体がない状態で示されている。一端この縫製機は通ったものでも、布地はさらに別のヤーン配列体と重ねられてで更に縫合されるものもある。)
図9は図8と同様の線図であり、ラッキングの量を支配してるパラメータが変更されている。所望の密度はインチ当り16ヤーンであるが、この例ではシャトルは21本のヤーンを移送している。これらは第1回目の展開で、ヤーンの部分が206で示され、続いてシャトルの戻り行程で、バンド208が展開される。
より明確にするため、本発明による方法は、図11ないし図15を用いて更に説明される。これらの図は、1回の行程について3本のヤーンのみを用いて、この方法をヤーンの展開について説明している。これらの図は重ね合せの順次的な工程を示し、それぞれの工程は、バンド内のものよりも高い一様な密度の布地を得るため、シャトルによって帯域として展開される複数のヤーンからなる。
図11ないし図15に示されている例は、次のパラメータに基づいたものとなっている。
b=3 シャトルによって展開されるヤーンの数 c=1cm シャトルにおけるヤーンの間隔、及びヤーン移転部材におけるフックの間隔 d=4 ヤーン/cm コンベアに平行に測定した所望の密度 式a=b/dにより、ヤーン移転部材の必要な移動量は (シャトルの戻り箇所で)a=3/4=0.75cmである。
図11はコンベア1からコンベア2への途中で、シャトルにより展開される第1の帯域を構成するヤーン11を示している。
図12では、コンベア2からコンベア1へ途中で、シャトルは第2の帯域(ヤーン12)を展開しており、これによりヤーン移転部材はコンベア2に沿って0.75cmのオフセットをなす。従って、ヤーン12は各ヤーン11に対して0.75cmの距離だけ離間して展開されている。図13では、第3のバンド(ヤーン13)が展開されている。オフセット量aがa=0.75cmmであるため、ヤーン13は各ヤーン12に対してa=0.75cmの離間距離で展開されている。図14は、図11ないし図13による規則に従ってヤーン14によるこれに対応した次工程を示している。図15は図11ないし図14による工程を繰返すことにより、d=4ヤーン/インチの所望の密度となって製造された布地を示している。
所望の一様な密度についての計算により、適切な移動量が得られる。これらの一般的な関係を以下に示す。
シャトルの糸(strand)、ヤーン移転部材のラッキング動作、シャトルにおけるヤーンの離間距離並びに、ヤーン移転部材とヤーンの密度の関係は以下のようになっている。
d:布地におけるコンベアに平行に測定した場合の密度b:シャトルにおけるヤーンの数c:ヤーン移転部材のラッキング量c:シャトルにおけるヤーンの間隔、及びヤーン移転部材のフックの間隔e:ヤーンが通されたシャトルの幅n:整数式: 布地におけるヤーンの密度 d=(1/c)・(b−1)/n シャトルにおけるヤーンの間隔 c=(b−1)×(1:d)×(1:n)
ヤーン移転部材のラッキング距離 a=b:d=nc+1/d シャトルの糸の通し幅 e=c×(b−1)
0.5インチから15インチまでのそれぞれの糸通し幅での固定値c、およびシャトルでの2ないし31の範囲のこれに対応したヤーンの数にたいして、整数nを変えることで、インチ当り2本からインチ当り60本までの範囲の密度を得ることができる。この驚くほど広い範囲の密度のリストが、数表で示されている。
以下に示すリストの数値において一様な密度とするため、ヤーンの密度についての式に従って、cが変更される。整数値であるbやnとは異なり、cは約0.3を越えるいかなる値であってもよい。




当業者により迅速で経済的な多数本システムを用いて、高密度かつ一様な密度で、平行間隔に方向をバイアスされた構造物用ヤーンからなるヤーンの配列体(ply)が提供されるのを可能にするようなクレームされている方法は、機械又は制御装置に実質的な改変を必要としない。この方法は広い範囲に亙って種々の密度を提供することができる。単一のヤーンを配するキャリッジすなわちシャトルを用いて、一度に1つの層(ヤーンの配列体)を作る従来のシステムと共に用いられるに適しているのに加えて、このシステムは1つのプロセスで単一の布地に幾つかの層が重ねられる複数キャリッジシステムにも適用可能であることに留意されたい。このようなシステムは、米国特許第448459号及び第4550045号に開示されており、これらに関連した説明が参考としてここに編入されている。更に、これらの特許に開示されているような布地の軸線に対して90°をなした通常の横入れの織地と同様に、ヤーンの方向がバイアスされた布地を提供する方法が本発明によるシステムを用いて適用されるのは明白であることに留意されたい。
このシステムは、殆どのタイプのヤーンについての横入れ法に用いられる。しかし、このシステムは部材の離間距離が狭く高係数の構造物用のヤーンが用いられる場合に生ずる問題を解決するのに特に適したものとなっていることから、特に好ましいヤーンとしては約8000000ポンド/平方インチ(1bs./in2)以上のもので、ある種のガラス繊維ヤーン、グラファイト(graphite)などの炭素繊維ヤーン、ある種のポリアミド(polyamid)及び熱硬化性ポリマー等が含まれる。配列体の構造物用ヤーンを一体的に布地層に形成する2次ヤーンとして使用されるのを縫合用ヤーン繊維は、殆どの天然材料又は人工的な材料から選ぶことができる。比較的低い強度のヤーンの間では、ある種のポリエステルが非常によくあい、推奨される。極端に高い強度がかかるような例では、縫合用としても配列体のヤーンと同様に高強度のヤーンを用いる必要がある。特に好ましい例の一つは、配列体のヤーンと縫合ヤーンの両方がグラファイトなどの炭素系材料から構成されている場合である。
布地が一体に形成されてから後、人手による積層作業のような公知技術やそれを自動化したものを介して、硬化(cure)可能な樹脂により全体的に順次含浸され、あるいは始めに切断されて形状が整えられてから最終製品に組込まれるような多層の構造物に組入れられる。製造された個々の層は、適用される縫合作業によって、米国特許第4567758号のバイアス方法にも適し、また、この方法によるバイアスされた構造物用布地にも組込まれる。
従って、ヤーンが平行に配列された一様に高密度の構造物用布地を、従来の機械設備や使用可能なシステムを用いて製造する方法を提供するという長い間望まれていたことがこれにより達成される。シャトルの動き及びヤーン移転機構のラッキング動作は、全ての動きを同期させることと同様に、米国特許及び米国以外の国の特許に開示されている確立された技術から実施可能である。本発明によっては一般的でない改変あるいは調整は不要である。
上記の技術の観点において、本発明の多数の改変及び変形が可能であることは明らかである。従って、特許請求の範囲内で、本発明はここに具体的に記載されたもの以外に実施可能であることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】所望の密度に、平行に配された構造物用ヤーンからなる構造物用布地からなる層を形成する方法であって、所定の幅を有する1帯域を規定する複数本のヤーンを、互いに離間して平行に配置された連続的に進む2列の送りコンベアの上方で、それぞれのコンベアを越えた各端位置の間で往復運動しているシャトルによって、前記2列のコンベヤーの幅に亘って横断往復させる工程と、前記ヤーンを端位置にある前記シャトルと隣接したコンベアのヤーン保持部材を通過させて、前記コンベアに平行に隣接した反対側のコンベアと対向するシャトルに隣接した前記コンベアの側方に位置したヤーン移転部材に前記ヤーンを引っ掛け、さらに前記ヤーン移転部材に隣接するコンベアの上方で前記シャトルが戻る動作が完了する前に、前記ヤーン移転部材を所定距離離間させて前記コンベアに平行に前記コンベアの進む向きと反対向きに移動させることにより前記シャトルが1往復して、前記ヤーンが前記ヤーン移転部材から外れて、前記コンベアにより支持されている前記ヤーン保持部材により保持されることで、往復運動のそれぞれの終りの部分で前記ヤーンを前記コンベアに移す工程と、前記コンベアと、それに保持されているヤーンを、前記ヤーンを構造物用布地の層に縫合され、前記ヤーン転移部材の動きは計算されて構造物用ヤーンによる多層のヤーンの方向がバイアスされた平行配列体を一様な高い密度とするように縫合機に進める工程とを備えてなる構造物用布地からなる層を形成する方法。
【請求項2】前記ヤーン移転部材の前記動きの長さは、a=nc+1/dにより決り、ここでdは所望の配列体のヤーンの密度、cはシャトルにおけるヤーンの離間距離、nはb−1よりも大きくはない整数で、bはシャトルにおけるヤーンの数である請求の範囲1記載の方法。
【請求項3】前記ヤーンは、前記シャトルにおいて互いに離間しているとともに、前記ヤーン移転部材は0.3インチを越えて離間している請求の範囲1記載の方法。
【請求項4】前記密度は、インチ当り約8ヤーンよりも大きい請求の範囲1記載の方法。
【請求項5】前記ヤーンは8000000ポンド/平方インチ(1bs./in2)を越える強度を有する構造物用ヤーンである請求の範囲1記載の方法。
【請求項6】前記ヤーンは、前記シャトルの往復運動により前記ヤーン移転部材から外され、これにより前記シャトルと前記ヤーンとの間の角度は、前記ヤーン移転部材により、ヤーン移転部材に設けられた傾斜縁の働きによりヤーンが外されて、前記ヤーン保持部材により保持されるまで、積極的に減ぜられる請求の範囲1記載の方法。
【請求項7】前記ヤーン移転部材から前記ヤーン保持部材へ前記ヤーンが移転するのは、剥がし棒を押込んで、前記ヤーン保持部材に隣接する位置で前記ヤーン移転部材に保持された前記ヤーンと接することにより助成される請求の範囲1記載の方法。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第6図】
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【第7図】
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【第8図】
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【第9図】
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【第11図】
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【第12図】
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【第13図】
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【第14図】
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【第15図】
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【特許番号】第2849102号
【登録日】平成10年(1998)11月6日
【発行日】平成11年(1999)1月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−502681
【出願日】昭和63年(1988)3月9日
【公表番号】特表平1−502996
【公表日】平成1年(1989)10月12日
【国際出願番号】PCT/US88/00674
【国際公開番号】WO88/06969
【国際公開日】昭和63年(1988)9月22日
【審査請求日】平成7年(1995)2月13日
【出願人】(999999999)ヘクセル・コーポレイション
【参考文献】
【文献】特開 昭53−19439(JP,A)
【文献】特開 昭53−19440(JP,A)
【文献】米国特許4325999(US,A)
【文献】米国特許2804973(US,A)