説明

多方向入力装置

【課題】筐体に支持される支持腕部を可動接点に形成した場合においても、支持腕部が形成される方向の入力を適切に行うこと。
【解決手段】底面部から円弧状に立設されたガイド壁22とこのガイド壁22の外周側の4方向に第1外部用固定接点26aが設けられた筐体2と、第1外部用固定接点26a間でガイド壁22の径方向外側に延び筐体2に支持される複数の第1支持腕部41を有し、第1外部用固定接点26aと接離可能に対向配置される環状可動接点板4と、環状可動接点板4を筐体2の底面部側に押圧する環状押圧部材7とを具備し、環状可動接点板4の第1支持腕部41の基端部近傍と接離可能に対向する第2外部用固定接点26bを筐体2に設けると共に、第2外部用固定接点26bをガイド壁22の周方向よりも径方向に長く形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向入力装置に関し、特に、携帯電話装置やゲーム機用コントローラなどにおける方位入力操作に好適な多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作方向での操作力のバラツキを低減して良好な操作感触が得られるようにした多方向入力装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この多方向入力装置においては、筐体に十字状に配設される固定接点と、固定接点の間で外側に向かって延びる支持腕部(被保持部)で筐体に支持され、押圧力に対して反力を生じる環状の可動接点とを対向配置させている。また、可動電極には、支持腕部の近傍に生じる反力を支持腕部の近傍以外の部分に生じる反力と同程度にするための反力調整部が形成されている。
【特許文献1】特開2006−318859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような従来の多方向入力装置においては、可動接点を隣接する固定接点の両方に接触させることにより、中間方向(支持腕部が形成される方向)の入力を行うことが可能である。しかしながら、従来の多方向入力装置においては、可動接点に径方向外側に延びる支持腕部による反力が加わることから、反力調整部を形成した場合においても、支持腕部が形成される方向の入力を適切に行うことができない場合がある。
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、筐体に支持される支持腕部を可動接点に形成した場合においても、支持腕部が形成される方向の入力を適切に行うことができる多方向入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の多方向入力装置は、底面部から円弧状に突出形成された突出部とこの突出部の外周側の4方向に第1固定接点が設けられた筐体と、前記第1固定接点間で前記突出部の径方向外側に延び前記筐体に支持される複数の支持腕部を有し、前記第1固定接点と接離可能に対向配置される環状可動接点板と、前記環状可動接点板を前記筐体の底面部側に押圧する環状押圧部材とを具備し、前記環状可動接点板の前記支持腕部の基端部近傍と接離可能に対向する第2固定接点を前記筐体に設けると共に、この第2固定接点を前記突出部の周方向よりも径方向に長く形成したことを特徴とする。
【0006】
上記多方向入力装置によれば、支持腕部の基端部近傍と接離可能に対向する第2固定接点を筐体に設けたので、筐体に支持される支持腕部を可動接点に形成した場合においても、支持腕部が形成される方向の入力を適切に行うことが可能となる。特に、第2固定接点を突出部の周方向よりも径方向に長く形成したので、例えば、経年劣化等の要因により環状可動接点板が支持腕部の延出方向に変形した場合にも、確実にその方向への入力を検出することが可能となる。
【0007】
上記多方向入力装置において、前記環状可動接点板に、前記支持腕部間で前記突出部の径方向内側に延びる第2支持腕部を複数設ける一方、前記第2支持腕部に対応する凹部を前記突出部に形成し、前記凹部を介して前記突出部の内周側に配置される前記第2支持腕部の先端部を単一の粘着シートで前記筐体に保持することが好ましい。この場合には、凹部を介して突出部の内周側に配置される第2支持腕部の先端部を単一の粘着シートで筐体に保持することから、環状可動接点板を筐体に仮保持できるので、組立作業性を向上することが可能となる。また、支持腕部間に位置する環状可動接点板が撓み難くなり、環状可動接点板の反力を均一に近づけることが可能となる。
【0008】
上記多方向入力装置において、前記筐体の前記突出部の中央部に中央固定接点を設ける一方、前記中央固定接点と接離可能に対向配置される中央可動接点板と、前記環状可動接点板の内周側に配置され、前記中央可動接点板を前記筐体の底面部側に押圧する中央押圧部材とを具備し、前記中央可動接点板を前記粘着シートで前記筐体に保持することが好ましい。この場合には、環状可動接点板だけでなく、中央可動接点板をも粘着シートで筐体に保持することから、2種類の可動接点板を共通の粘着シートで筐体に保持することができるので、部品点数を増加させることなく、装置の製造コストを低減することが可能となる。
【0009】
上記多方向入力装置において、前記環状押圧部材を初期位置に復帰させる弾性部材と、前記弾性部材を前記筐体とで挟持する取付部材とを具備し、前記筐体に前記弾性部材の圧縮量を規制する突出片を設けることが好ましい。この場合には、筐体に設けられた突出片により弾性部材の圧縮量が規制されることから、弾性部材が変形し過ぎることを防止でき、環状押圧部材の初期位置への復帰精度を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環状可動接点板の支持腕部の基端部近傍と接離可能に対向する第2固定接点を筐体に設けたので、筐体に支持される支持腕部を可動接点に形成した場合においても、支持腕部が形成される方向の入力を適切に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る多方向入力装置1の分解斜視図である。図2は、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する筐体の平面図である。図3は、本実施の形態に係る多方向入力装置1が有する環状可動接点板の平面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態に係る多方向入力装置1は、複数の固定接点が設けられた筐体2と、この筐体2に収容される中央可動接点板3及び環状可動接点板4と、中央可動接点板3及び環状可動接点板4を筐体2に固定する粘着シート5とを備えている。また、多方向入力装置1は、粘着シート5の上方に配置される中央押圧部材6と、中央押圧部材6に挿通される環状押圧部材7と、この環状押圧部材7の上方に被せられる蓋体8及び弾性部材9と、これらの構成部品を筐体2に取り付ける取付部材10と、取付部材10から上方側に突出する中央押圧部材6の部分に取り付けられる操作部材11とを備えている。
【0013】
筐体2は、絶縁性の合成樹脂を用いて略矩形状の薄い箱状に形成されている。筐体2の中央部には、図2に示すように、概して円形状を有する空洞部21が形成されている。空洞部21には、底面部から突出部としての円弧状のガイド壁22が立設されている。このガイド壁22には、図2に示す上下及び左右方向に凹部23が形成されている。また、空洞部21における筐体2の対角線位置には、放射状にそれぞれ凹溝形状を有し、環状可動接点板4を周方向に移動しないように保持する保持部24が一体的に形成されている。ガイド壁22の凹部23は、それぞれ隣接する保持部24の中間の位置に形成されている。凹部23及び保持部24には、ガイド壁22の外側の底面よりも上方位置において環状可動接点板4を支持する支持面23a及び24aが形成されている。
【0014】
ガイド壁22の内側の底面における中央位置は、概して円形状の中央用固定接点25aが設けられている。中央用固定接点25aの近傍には、一対の中央用共通電極25bが設けられている。これらの中央用固定接点25a及び中央用共通電極25bは、ガイド壁22の内側の底面よりも僅かに上方に突出するように筐体2にインサート成型されている。
【0015】
また、ガイド壁22の外側の底面における凹部23に対応する位置には、第1外部用固定接点26aが設けられている。これらの第1外部用固定接点26aは、空洞部21の底面において、図2に示す上下及び左右の4方向に一定の間隔をもって環状に設けられている。これらの第1外部用固定接点26aの間の位置であって、保持部24に対応する位置には、第2外部用固定接点26bが設けられている。
【0016】
これらの第1外部用固定接点26a及び第2外部用固定接点26bは、ガイド壁22の外側の底面よりも僅かに上方に突出するように筐体2にインサート成型されている。また、第1外部用固定接点26aは、環状可動接点板4との接触安定性を確保するために3つの突起部を有している。一方、第2外部用固定接点26bは、環状可動接点板4との接触安定性を確保するためにガイド壁22の周方向よりも径方向に長い形状を有している。さらに、いくつかの保持部24の支持面24aには、外部用共通電極26cが設けられている。外部用共通電極26cは、保持部24の支持面24aよりも僅かに上方に突出するように筐体2にインサート成型されている。
【0017】
さらに、筐体2の側壁部の角部には、後述する取付部材10の係合片101を収容する凹部27が形成されている。また、側壁部の上面であって、凹部27の近傍には、上方に突出する複数の突出片28が形成されている。突出片28は、保持部24を挟む位置に、それぞれの筐体2の角部に2つずつ形成されている。突出片28の上面には、取付部材10を支持する支持面28aが形成されている。なお、突出片28は、この支持面28aで取付部材10を支持した場合に弾性部材9の圧縮量を規制する高さに形成されている。
【0018】
中央用可動接点板3は、図1に示すように、上方に向かって突出するドーム状に形成された湾曲部31と、中央用共通電極25bと接触する台座部32とを有している。この中央用可動接点板3は、中央用固定接点25aに接離可能に対向配置されている。なお、中央用可動接点板3の台座部32の直径は、中央用共通電極25b間の距離と同等となっている。
【0019】
環状可動接点板4は、図3に示すように、大きな反力を発生させるばねリン青銅などの金属平板材を用いて平板状に形成されている。また、筐体2のガイド壁22の外側の底面に対応する環状形状であって、第1外部用固定接点26a及び第2外部用固定接点26bによって形成された環と同等の大きさとなるように所定の径方向の幅を有して形成されており、第1外部用固定接点26a及び第2外部用固定接点26bに接離可能に対向配置されている。
【0020】
環状可動接点板4には、その外周から外側に延びる第1支持腕部41が保持部24に対応して4方向に形成されている。また、その内周かつ各第1支持腕部41の周方向の中間位置から内側に延びる第2支持腕部42が凹部23に対応して4方向に形成されている。第1支持腕部41がその先端部近傍で保持部24の支持面24aに載置される一方、第2支持腕部42がその先端部近傍で凹部23の支持面23aに載置されることで、環状可動接点板4が筐体2に支持される。一対の第2支持腕部42は、他の一対の第2支持腕部42よりも長く形成され、その先端部が僅かに筐体2の底面側に折り曲げられた被接着部43を有している。
【0021】
ここで、これらの中央可動接点板3及び環状可動接点板4が配設された状態の筐体2について図4を用いて説明する。図4は、本実施の形態に係る多方向入力装置1における中央可動接点板3及び環状可動接点板4が配設された筐体2の平面図である。図4に示すように、中央可動接点板3は、中央用共通電極25bに台座部32を載置した状態でガイド壁22の内側に配設される。また、環状可動接点板4は、第1支持腕部41を保持部24に収容すると共に、第2支持腕部42を凹部23に収容した状態でガイド壁22の外側に配設される。この場合において、第1支持腕部41は、筐体2に設けられた第1外部用固定接点26aの間でガイド壁22の径方向の外側に延びている。また、第2支持腕部42の被接着部43は、凹部23を介してガイド壁22よりも内側方向に僅かに延びた状態となっている。なお、第1支持腕部41の下面は、保持部24の支持面24aに載置され、第2支持腕部42の下面は、凹部23の支持面23aに載置されている。また、第2外部用固定接点26bは、環状可動接点板4の第1支持腕部41の基端部近傍(第1支持腕部41の付け根部分の近傍)の下面に対応する位置に配置されている。
【0022】
このように中央可動接点板3及び環状可動接点板4が配設された状態の筐体2に対して、ガイド壁22の内側の底面に対応する部分に粘着シート5が貼付される。図5は、本実施の形態に係る多方向入力装置1における中央可動接点板3及び環状可動接点板4が固定された筐体2の平面図である。開口を有しない円形状をなした粘着シート5は、図5に示すように、中央可動接点板3と、環状可動接点板4の被接着部43とを覆うように貼付される。これにより、中央可動接点板3及び環状可動接点板4が筐体2に対して固定された状態となる。
【0023】
このように本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、2種類の可動接点板を共通の粘着シート5で筐体2に保持することで、部品点数を増加させることなく、装置の製造コストを低減している。また、組み立ての際、中央可動接点板3及び第2支持腕部42の被接着部43を粘着シート5で筐体2に仮保持することができるので、組立作業性を向上することが可能となる。さらに、環状可動接点板4における第1支持腕部41間に位置する部分を撓み難くすることができ、環状可動接点板4の反力を均一に近づけることが可能となる。
【0024】
図1に戻り、本多方向入力装置1の構成部品について説明する。環状押圧部材7は、環状可動接点板4の内径と同程度の直径を有して円形鍔状に形成されている。この環状押圧部材7は、その外周下方に環状可動接点板4を筐体2の底面部側に押圧する環状押圧部71を有している。また、環状押圧部材7は、その中心部分に中央孔72を有している。
【0025】
中央押圧部材6は、環状押圧部材7の中央孔72に遊嵌する直径を有して円柱状に形成された挿着部61と、挿着部61及び環状押圧部材7の中央孔72の直径よりも大きな直径を有して円形状に形成された抑止部62と、環状押圧部材7の中央孔72から上方側に突出する突出部63とを有している。また、突出部63には、操作部材11の下面に形成された円柱状の凸部(不図示)と嵌合する凹部64を有しており、抑止部62は、その下面に、中央可動接点板3を筐体2の底面部側に押圧する凸状の中央押圧部65を有している。そして、中央押圧部材6は、環状押圧部材7の中央孔72に挿着部61を挿通しつつ、操作部材11の凸部と中央押圧部材6の凹部64とを嵌合して筐体2内に配設されている。
【0026】
蓋体8は、金属板を用いて、筐体2の空洞部21よりも僅かに大きな径を有する略円形状に形成されている。蓋体8の中央付近には、環状押圧部材7の中央孔72の直径よりも大きな直径を有する円形の中央孔81が形成されている。蓋体8における筐体2の角部に対応する位置には、外側に延びる複数の係合片82が形成されている。係合片82は、それぞれ筐体2の角部に形成された一対の突出片28の間に配置される。これらの係合片82には、それぞれ挿通孔83が穿設されている。蓋体8は、環状押圧部材7の上方に配設されており、操作部材11が任意の周方向にスライド操作されると、環状押圧部材7の下面を筐体2のガイド壁22の上面で摺動させると共に、その上面を蓋体8の下面で摺動させながらスライド移動自在に狭持するように構成されている。
【0027】
弾性部材9は、蓋体8と概して同様の形状を有し、蓋体8の上方に配置される。この弾性部材9は、蓋体8の外形と同程度の大きさの外形を有して形成されると共に、操作部材11のスライド操作方向に対して中央押圧部材6及び環状押圧部材7の初期位置(中心位置)への復元力を生じさせるジグザグ断面を有する環状の弾性ダイヤフラム部91を有している。この弾性ダイヤフラム部91の中心部には中央押圧部材6の突出部63の外周を覆う大きさの中央孔92が形成されている。弾性部材9における蓋体8の係合片82に対応する位置には、外側に延びる複数の突出片93が形成されている。それぞれの突出片93の下面には蓋体8の挿通孔83に挿通しながら環状可動接点板4の第1支持腕部41を保持部24の支持面24a及び外部用共通電極26cに押圧して保持する複数の突出部94が形成されている。なお、弾性部材9は、中央孔92を除いて、外部から筐体2の内部に水分や塵などが侵入するおそれのある穴が形成されておらず、筐体2に形成された開口部を密閉して覆うような蓋状に形成されている。
【0028】
取付部材10は、弾性部材9の弾性ダイヤフラム部91の外側上面に被せられる環状板状に形成されており、筐体2の凹部27に収容される4個の係合片101が下向きに突設されている。また、取付部材10は、弾性ダイヤフラム部91の動きを妨害しないように内周部を筒状に立ち上げて中央孔102が形成されている。蓋体8及び弾性部材9を筐体2に拘束するように、これらの上方から各係合片101を凹部27に収容させ、筐体2の下面側で係合片101を内側に折り曲げることで筐体2に取り付けられる。
【0029】
ここで、このような構成を有する多方向入力装置1を組み立てた状態について説明する。図6は、本実施の形態に係る多方向入力装置1の外観を示す斜視図である。図7は、本実施の形態に係る多方向入力装置1の断面図である。図7においては、中央押圧部材6の中心を通る面における断面図を示している。なお、図6及び図7においては、説明の便宜上、中央押圧部材6の突出部63に取り付けられる操作部材11を省略している。
【0030】
図6に示すように、多方向入力装置1を組み立てると、中央可動接点板3、環状可動接点板4、中央押圧部材6、環状押圧部材7、蓋体8及び弾性部材9が組み込まれた状態の筐体2の上方側から取付部材10が取り付けられる。この場合において、取付部材10は、その下面を突出片28の支持面28aに支持された状態となっている。この場合において、突出片28は、弾性部材9の圧縮量を規制する高さを有していることから、操作者による押圧操作に応じて弾性部材9が変形し過ぎることを防止でき、環状押圧部材7の初期位置への復帰精度を高めることが可能となる。
【0031】
また、弾性部材9の弾性ダイヤフラム部91は、取付部材10の中央孔102から上方側に露出した状態となっている。そして、中央押圧部材6の突出部63は、弾性部材9の中央孔92から上方側に突出した状態となっている。ここでは省略しているが、この突出部63に形成される凹部64に操作部材11の凸部が嵌め込まれることで、操作部材11が本多方向入力装置1に取り付けられる。
【0032】
このように組み立てられた多方向入力装置1の内部においては、図7に示すように、筐体2の底面に設けられた中央用固定接点25aの上方に一定の空隙を持って中央可動接点板3が配置されている。また、環状可動接点板4が筐体2の凹部23の支持面23a及び保持部24の支持面24a(図7に不図示)に支持されており、中央可動接点板3及び環状可動接点板4の被接着部43に粘着シート5が貼付されている。この場合において、筐体2の底面部に設けられた第1外部用固定接点26a及び第2外部用固定接点26bの上方に一定の空隙を持って環状可動接点板4が配置されている。
【0033】
また、粘着シート5の上方に中央押圧部材6が配置されている。環状押圧部材7は、中央孔72が中央押圧部材6の挿着部61の外周面に対応する位置に配置され、弾性部材9は、中央孔92が中央押圧部材6の突出部63の外周面に対応する位置に配置されている。操作者による操作が行われていない状態において、中央押圧部材6は、弾性部材9の弾性ダイヤフラム部91の復元力、並びに、中央可動接点板3の押圧力によって図7に示す初期位置に配置されるように構成されている。
【0034】
以下、本実施の形態に係る多方向入力装置1の動作について図8を用いて説明する。図8は、本実施の形態に係る多方向入力装置1の動作について説明するための断面図である。図8においては、図7と同一の断面について示している。また、図8においては、図7と同様に、中央押圧部材6の突出部63に取り付けられる操作部材11を省略している。
【0035】
多方向入力装置1の操作部材11を任意の径方向外側へスライド移動させて入力操作すると、図8に示すように、環状押圧部材7が、筐体2のガイド壁22(図8に不図示)の上面と蓋体8の下面と摺動しながら当該スライド操作された方向に移動し、環状押圧部材7の環状押圧部71が環状可動接点板4と当接する。その操作部材11をさらにスライド移動させると、環状押圧部71が環状可動接点板4を変形させて、環状可動接点板4とその下方にある第1外部用固定接点26a又は第2外部用固定接点26bが接触して導通する(図8は、第1外部用固定接点26aと接触した状態)。これにより、多方向入力装置1は、操作部材11を任意の径方向外側へ入力操作したことを検出することが可能となる。
【0036】
また、操作部材11を押下して入力操作すると、中央押圧部材6の中央押圧部65が中央可動接点板3を押圧しながら変形させ、中央可動接点板3と中央用固定接点25aとが接触する。これにより、多方向入力装置1は、押下方向(図7に示す下方向)への入力操作を検出することが可能となっている。この場合において、環状押圧部材71は、ガイド壁22の上面によって押下方向への移動が制限されるが、中央押圧部材6の挿着部61は、環状押圧部材7の中央孔72に遊嵌していることから、当該中央孔72を摺動しながら押下方向へ移動することが可能となっている。これにより、ガイド壁22の上面と環状押圧部材7とが接触していても、操作部材11は押下方向への移動が可能となる。よって、径方向外側への入力操作のみならず押下方向への入力操作が可能となっている。
【0037】
そして、上述した径方向及び押下方向への入力操作を終了すると、次に入力操作を行ない易くするために、操作部材11を初期位置に戻す必要がある。このとき、多方向入力装置1は、操作部材11を初期位置に復元するための復元力を発生させる弾性部材9を備えることから、入力操作を行なう際に、自動的に初期位置から入力操作を行なうことが可能となる。また、弾性部材9が筐体2の内部を密閉する蓋状に形成されていることから、筐体2内に塵や水分などの誤動作要因の侵入を防止することが可能となっている。
【0038】
このように本実施の形態に係る多方向入力装置1においては、環状可動接点板4の第1支持腕部41の基端部近傍と接離可能に対向する第2外部用固定接点26bを筐体2に設けたので、筐体2に支持される第1支持腕部41を環状可動接点板7に形成した場合においても、第1支持腕部41が形成される方向の入力を適切に行うことが可能となる。特に、第2外部用固定接点26bをガイド壁22の周方向よりも径方向に長い形状に設けているので、例えば、経年劣化等の要因により環状可動接点板7が第1支持腕部41の延出方向に変形した場合にも、確実にその方向への入力を検出することが可能となる。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態に係る多方向入力装置の分解斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係る多方向入力装置が有する筐体の平面図である。
【図3】上記実施の形態に係る多方向入力装置が有する環状可動接点板の平面図である。
【図4】上記実施の形態に係る多方向入力装置における中央可動接点板及び環状可動接点板が配設された筐体の平面図である。
【図5】上記実施の形態に係る多方向入力装置における中央可動接点板及び環状可動接点板が固定された筐体の平面図である。
【図6】上記実施の形態に係る多方向入力装置の外観を示す斜視図である。
【図7】上記実施の形態に係る多方向入力装置の断面図である。
【図8】上記実施の形態に係る多方向入力装置の動作について説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 多方向入力装置
2 筐体
21 空洞部
22 ガイド壁
23 凹部
23a、24a 支持面
24 保持部
25a 中央用固定接点
25b 中央用共通電極
26a 第1外部用固定接点
26b 第2外部用固定接点
26c 外部用共通電極
27 凹部
28 突出片
28a 支持面
3 中央可動接点板
31 湾曲部
32 台座部
4 環状可動接点板
41 第1支持腕部
42 第2支持腕部
43 被接着部
5 粘着シート
6 中央押圧部材
61 挿着部
62 抑止部
63 突出部
64 凹部
65 中央押圧部
7 環状押圧部材
71 環状押圧部
72 中央孔
8 蓋体
81 中央孔
82 係合片
83 挿通孔
9 弾性部材
91 弾性ダイヤフラム部
92 中央孔
93 突出片
94 突出部
10 取付部材
101 係合片
102 中央孔
11 操作部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部から円弧状に突出形成された突出部とこの突出部の外周側の4方向に第1固定接点が設けられた筐体と、前記第1固定接点間で前記突出部の径方向外側に延び前記筐体に支持される複数の支持腕部を有し、前記第1固定接点と接離可能に対向配置される環状可動接点板と、前記環状可動接点板を前記筐体の底面部側に押圧する環状押圧部材とを具備し、前記環状可動接点板の前記支持腕部の基端部近傍と接離可能に対向する第2固定接点を前記筐体に設けると共に、この第2固定接点を前記突出部の周方向よりも径方向に長く形成したことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
前記環状可動接点板に、前記支持腕部間で前記突出部の径方向内側に延びる第2支持腕部を複数設ける一方、前記第2支持腕部に対応する凹部を前記突出部に形成し、前記凹部を介して前記突出部の内周側に配置される前記第2支持腕部の先端部を単一の粘着シートで前記筐体に保持することを特徴とする請求項1記載の多方向入力装置。
【請求項3】
前記筐体の前記突出部の中央部に中央固定接点を設ける一方、前記中央固定接点と接離可能に対向配置される中央可動接点板と、前記環状可動接点板の内周側に配置され、前記中央可動接点板を前記筐体の底面部側に押圧する中央押圧部材とを具備し、前記中央可動接点板を前記粘着シートで前記筐体に保持することを特徴とする請求項2記載の多方向入力装置。
【請求項4】
前記環状押圧部材を初期位置に復帰させる弾性部材と、前記弾性部材を前記筐体とで挟持する取付部材とを具備し、前記筐体に前記弾性部材の圧縮量を規制する突出片を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の多方向入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−54334(P2009−54334A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217866(P2007−217866)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】