説明

多機能性を有する立体構造を有する繊維構造体

【課題】マイナスイオン放出及び同時に放射する遠赤外線の利用、並びに光触媒材料による抗菌、脱臭の増加を図った多機能性の立体構造を有する繊維構造体を提供する。
【解決手段】表裏の織編物地組織部と、連結構造部からなる立体構造を有する繊維構造体に、特定の高分子基材と希有元素類を含む鉱物、及びトルマリン若しくは遠赤外線セラミックの何れかを含む樹脂組成物を塗布加工し、マイナスイオン放出と同時放射する遠赤外線の利用、並びに光触媒材料を添加混合し、抗菌、脱臭機能を増加させた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多機能性を有する立体構造を有する繊維構造体に関し、通気貫通孔からなる空隙部を存在せしめた三次元立体構造を有し、かつマイナスイオンの放出の維持性持続並びに同時放射する遠赤外線の利用、並びにさらに光触媒機能材料により抗菌作用及び消臭作用の増加を図った多機能性を備えた立体繊維構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クッショク材として、寝具等に多く用いられるものとして、例えばウレタンスポンジ、ポリオレフィンスポンジ、ゴムスポンジ、フォームラバー、綿、不織布等が良く知られている。このうち、寝具類及び被服に要求される特性として重要なものとしては、通気性が良く、早く乾き、長期の使用でもヘタリがないことが要求されている。通気性が良いクッション材として、ウレタンスポンジ、綿、フォームラバーが良く知られており、寝具類等に多く使用されている。しかし、これらのクッション材は、長期の使用でヘタってしまい、また、洗濯できにくい欠点もあった。さらに、クッション材の使い方として、そのまま商品に剥き出しのまま使うことはほとんどなく、クッション材にカバーするもの、接着させた織布、不織布或いは皮革で構成されたものとなっている。また、近年の自動編織機の進歩が目ざましく発展し、あらゆる形状が容易に編み上がるものとなってきたと同時に、コンピューターのキャド・キャムシステムと連動し、あらゆる3次元の立体編物までに進歩してきた。
【0003】
一方、マイナスイオンの作用や、遠赤外線の作用を利用した抗菌効果及び消臭効果と、更に健康効果を図った樹脂組成物の先行技術や特許文献或いは市場に製品が販売されている。クッション材及び樹脂組成物並びに光触媒機能材料として、代表的な文献を挙げる。
【特許文献1】特許第2125634号公報 表裏2枚の地組織と、該地組織を連結する連結部からなる立体構造を有する繊維構造体であって、前記地組織の少なくとも一方が繊維占有率が10〜80%であるように複数の糸によって形成され、それによって前記繊維構造体に表裏いずれか一方又は両方に連通する複数の空隙が設けられていることを特徴とする立体構造を有する繊維構造体。
【特許文献2】特許第3035279号公報 静電気に帯電しにくい高分子化合物、並びに希有元素類を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線放射セラミックスのいずれか一方を含むマイナスイオンを放出すると同時に、遠赤外線を放射することを特徴とする樹脂組成物。
【非特許文献1】光触媒と言われる数〜数百nm粒径の二酸化チタンが、太陽光の紫外線が当たると、放電効果で電子が励起、電子と正孔が発生して、電子は空気中の酸素を還元してスーパーオキサイドイオンに、正孔は表面の水分を酸化して水酸化ラジカルに変える。このスーパーオキサイドイオンと水酸化ラジカルは強い酸化力を示し、この状態でチタニア表面に有機物が付着すると、スーパーオキサイドイオンが有機物の炭素を、水酸化ラジカルが水素を奪って分解、こうした自浄作用が抗菌作用及び消臭作用となるメカニズムとなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明において解決しようとする問題点は、抗菌作用及び消臭作用、並びに健康で快適性のあるクッション材、例えば老人介護施設の寝たきり老人用介護マット等、を主目的とすると、まず第一に、クッション材としての基本的な機能を見だす必要があった。その機能として、通気性が良いこと、汗等の水分をすばやく吸収して乾燥し易いこと、洗濯し易いこと、長期に使用してもヘタリがないことであった。従来の一般のクッション材として多く使用されているスポンジ類では、上記の基本的な機能には当てはまらない難点があった。第二の問題点として、そのクッション材に、抗菌作用及び消臭作用を備える必要があり、しかも長期に持続的に効果を発揮できるものを見だす必要があった。また光触媒だけを取り上げると、太陽光の当たらない処や夜間の暗い処では効果がなく、難点であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題点にかんがみて、(1)表裏の織編地組織部と、その地組織部と連結糸で連結する連結組織部からなる立体構造を有する繊維構造体。(2)静電気に帯電しにくい高分子化合物、並びに稀有元素類を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線放射セラミックのいずれか一方を含み、マイナスイオンを持続的に放出すると同時に、遠赤外線を放射する樹脂組成物。(3)静電気に帯電しにくい高分子化合物、並びに稀有元素類を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線セラミックを含むマイナスイオンを放出すると同時に、遠赤外線を放射する樹脂組成物に、光触媒機能材料を添加混合し、抗菌作用及び消臭作用を増加させた複合樹脂組成物に着目して、立体構造を有する繊維構造体、すなわち表裏の織編物地組織と幅方向に形成した連結部の構成として、通気貫通部を備え、前記樹脂組成物或いは複合樹脂組成物を塗布加工することにより、その機能の第一として、良好な通気性が得られ、汗等の水分をすばやく吸収して乾燥し易く、洗濯し易く、長期使用でもヘタリのないクッション性が得られる。また、マイナスイオン持続的放出と遠赤外線の放射の同時作用において、該通気貫通部の存在により、マイナスイオンの放出及び遠赤外線の放射での拡散現象の遮蔽や妨げとならず、マイナスイオンの持続的放出と遠赤外線の放射、並びに抗菌効果及び消臭効果を発揮でき、光触媒作用で抗菌効果及び消臭効果をさらに増加させて、太陽光が当たらない所や夜間でも効果が発揮できる多機能を併せ備えた立体構造を有する繊維構造体を見だすに至った。
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は、表裏の織編物地組織部と、その地組織部を連結糸で連結する連結組織部からなる立体構造を有する繊維構造体に、静電気に帯電しにくい高分子化合物、並びに稀有元素を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方を含む樹脂組成物を塗布加工した、マイナスイオンを放出すると同時に、遠赤外線を放射することを特徴とする多機能性の立体構造を有する繊維構造体、及び請求項2に係る発明は、表裏の織編物地組織部と、その地組織部を連結糸で連結する連結組織部からなる立体構造を有する繊維構造体に、静電気に帯電しにくい高分子化合物、並びに稀有元素類を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方を含むマイナスイオンを放出すると同時に、遠赤外線を放射する樹脂組成物に、光触媒機能材料を添加混合した複合樹脂組成物を塗布加工し、抗菌及び消臭作用を増加させたことを特徴とする多機能性の立体構造を有する繊維構造体からなる構成である。
【0007】
本発明において、立体構造を有する繊維構造体として、表裏の織編地組織部と、その織編地組織部と連結糸で連結した連結組織部からなる立体構造を有する繊維構造体を使用することができる。例えば、市販されている立体構造を有する繊維構造体を使用することができ、その例として、商品名フュージョン,旭化成工業製、及び商品名ブレスエアー,東洋紡績製等を使用することができる。
【0008】
本発明において、表織編地及び裏織編地の組織として、平織編み地、綾織編み地、クロス編み地、メッシュ編み地、円状編み地、楕円状編み地、レース模様編み地、網状編み地、六角蜂の巣状編み地等をいずれも使用することができる。
【0009】
表織編地及び裏織編地の繊維として、木綿、麻、レーヨン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース、ビニロン、蛋白、羊毛、ガラス、アクリル、塩化ビニール、ウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド、ポリアクリロニトリル等の繊維及びその混紡繊維をいずれも使用することができる。また、特殊な繊維として、合成繊維或いはレーヨン、ビニロンに、光触媒二酸化チタン、アパタイト被覆二酸化チタン、無機セラミック含包二酸化チタンを含有した繊維を使用することができる。
【0010】
表裏織編地組織部と連結糸で連結した連結組織部として、(1)表裏織編地組織と連結糸が直角に連結した連結組織。(2)表裏織編地組織と連結糸が、連結糸を交差させて連結した連結組織。(3)表裏織編地組織と連結糸が、直角に連結したものと、連結糸を交差させて連結した複合連結組織。(4)表裏織編地組織と連結糸が、コイル状に連結した連結組織。(5)表裏織編組織と連結糸が、連続線状ランダムループ構造に連結した連結組織のいずれも使用することができる。
【0011】
連結糸の繊維として、木綿、麻、レーヨン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース、ビニロン、蛋白、羊毛、ガラス、アクリル、塩化ビニール、ウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド、ポリアクリロニトリル等の繊維を使用することができる。
【0012】
また、特殊な繊維として、合成繊維或いはレーヨン、ビニロンに、光触媒二酸化チタン、アパタイト被覆二酸化チタン、無機セラミック含包二酸化チタンを含有した繊維を使用することができる。最も好ましくは、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、塩化ビニール、ポリオレフィン、アラミド、ウレタン、ポリアクリロニトリル等の合成繊維の方が、剛性が高く、クッション性がより高まるので有益である。連結組織部の幅として、1mm〜50mmの幅のものを、用途によって使用使い分けることができる。
【0013】
本発明において、静電気に帯電しにくい高分子化合物として、アクリル樹脂、酢酸ビニール樹脂、アクリル・酢酸ビニール共重合樹脂、アクリル・酢酸ビニール・塩化ビニール共重合樹脂、シリコン樹脂、シリコン・アクリル共重合樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエテスル樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、アクリル・ウレタン共重合樹脂、尿素樹脂、ワニス等の溶剤型及びエマルジョン、天然および合成ラテックス等を使用することができ、また、その2種以上の混合物を使用することができる。
【0014】
本発明において、稀有元素類を含む鉱物として、フェルグソン石、モナズ石、ゼノタイム、コルンブ石、ベタホ石、サマルスキー石、ユークセン石、タンタル石、閃ウラン鉱、方トリウム石、ゴム石、カルノー石、ガドリン石等がある。これらの鉱石のうち、極微弱な放射線を放射し、人体に悪影響を及ぼさないとされているもの、及びマイナスイオン放出を励起している鉱物として、最も好ましくは、モナズ石を使用することができる。
【0015】
上記天然鉱石の粒径として、0.1ミクロンから1mmに粉砕したものを使用することができる。最も好ましくは、平均粒径が10ミクロン以下に粉砕した粉末の方が、混合及び塗布仕上げが良く有益である。上記配合部数として、樹脂固形分100重量部数に対し、100重量部数以下を配合することできる。最も好ましくは、50重量部数の方が、基材の密着性が良く有益である。
【0016】
本発明において、トルマリンとしては、ショールトルマリン、リチウムトルマリン、ドラバイトトルマリン、ルベライトトルマリン、ピンクトルマリン、インデコライト、バライバトルマリン、ウォーターメロン等を使用することができる。
【0017】
上記トルマリンの粒径として、0.1ミクロンから1mmに粉砕したものを使用することができる。最も好ましくは、平均粒径10ミクロン以下が混合するうえで有益である。上記配合部数として、樹脂固形分100重量部数に対し、100重量部数以下を配合することができる。最も好ましくは、50重量部数以下の方が、マイナスイオンをより放出するうえで有益である。
【0018】
本発明において、遠赤外線放射セラミックとして、2〜50ミクロンの波長をもつ遠赤外線を放射率50%以上放射している遠赤外線セラミックを使用することができる。遠赤外線セラミックの成分として、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄等を2種以上含む混合物を使用することができる。前記の市販品として、商品名セラジット、オーケートレーディング社製があり、マイナスイオンを増幅し、遠赤外線を高放射するうえで有益である。上記配合部数として、樹脂固形分100重量部数に対し、100重量部数配合することができる。最も好ましくは、50重量部数以下が、マイナスイオンをより放出するうえで有益である。
【0019】
本発明において光触媒機能材料として、アナターゼ型二酸化チタン、ブルッカイト型二酸化チタン、アパタイト被覆二酸化チタン、無機セラミック含包二酸化チタン等がある。アナターゼ型二酸化チタン、及びブルッカイト型二酸化チタンの粒径として、5〜200nmに粉砕したものを使用することができる。最も好ましくは、6〜30nmの方が電子を励起するうえで有益である。
【0020】
アパタイト被覆二酸化チタンとして、上記二酸化チタンを、アパタイトすなわち、リン酸カルシウムで被覆したものを使用することができる。市販品として、例えば、商品名アパタイト被覆二酸化チタンNSP−001 ナノウェーブ製を使用することができる。無機セラミックの成分が、シリカ、アルミナ、酸化クロム、酸化ジルコニウム、ジルコニア、酸化イットリウム等の1種の合成セラミック、或いは2種以上含む合成セラミックであり、また、上記成分を含む天然鉱物である。
【0021】
上記の粒径として、平均粒径30ミクロン以下のものを使用することができる。市販品として、例えば商品名ライオナイト ライオン製を使用することができる。
【0022】
前記配合部数として、樹脂組成物100重量部に対し、2〜50重量部数配合することができる。最も好ましくは、30重量部以下がマイナスイオンの生成を減少させないうえで有益である。
【0023】
本発明において、前記樹脂組成物或いは複合樹脂組成物の塗布方法として、ロールコーティング、ディッピング、捺染プリント、スクリーン、パット、ドット、スプレー等の塗布方法をいずれも使用することができる。また、塗布模様として、樹脂組成物或いは複合樹脂組成物に顔料または染料を加えることにより、捺染プリントで多色の絵柄模様をプリントすることもできる。
【0024】
本発明に係る繊維構造体において、例えば表裏2枚の地組織と、その地組織を連結する連結部からなる三次元立体構造を有する繊維構造体では、例えば、該地組織の少なくとも一方が繊維占有率10〜80%であるように複数の糸によって形成することにより、表裏の一方または両方に連通する複数の空隙部が設けられ、該空隙部の存在による通気貫通部の存在は前記樹脂組成物或いは複合樹脂組成物による塗布層着によるマイナスイオンの放出及び同時に放射する遠赤外線の作用においての通気性及び拡散性は、クッション性、蒸れ難くするマット材としての効果と並んで、該マイナスイオンの放出と遠赤外線放射にも優れた相乗効果を奏するように働く。
【0025】
また、例えば前記連続線状ランダムループのスプリング構造からなる繊維構造体では、開孔率30〜70%、好ましくは40〜80%である。通気性素材としてのクッション性の条件からスプリング構造からなる繊維構造体で70%を超えると、構成素材が少なくなるため該構造体の保持・補強を維持できず、クッション材としても体圧分散効果を期待し難い。また、30%以下では繊維構造体として、通気貫通部の構成密度が少なく空隙部が逓減のため通気性及び拡散性、蒸散性に劣り、さらに該マイナスイオンの放出と遠赤外線放射作用が得られない。
【0026】
本発明において、該立体構造を有する繊維構造体の通気度として、200ml/cm2 /sec以上の通気度のものを使用することができる。最も好ましくは、200ml/ cm2 /sec以上の通気度の方が、汗等をすばやく吸放出するうえで有益である。
【0027】
図1は、本発明の多機能性立体繊維構造体の一実施例を示す一部切欠斜視模式図、図2は、本発明の多機能性立体繊維構造体の一部切欠全体平面図である。
【0028】
図1において、本発明の多機能性立体繊維構造体1は、織編物地組織部2と、該地組織部2を連結糸3で連結した連結組織部4とからなり、表編地5或いは裏編地6のいずれか一方又は両側に連通する複数の通気貫通部7が存在する三次元立体繊維構造体の構成となっている。
【0029】
上記のように、本発明に係る多機能性立体繊維構造体は、表裏2枚の織編物地組織部2と、該地組織部2を連結する連結組織部4とからなる三次元立体構造を有する繊維構造体からなり、表編地5或いは裏編地6のいずれか一方又は両側に連通する複数の通気貫通部7が存在する構成であって、該三次元立体構造を有する繊維構造体に、前記樹脂組成物を ロールコーティング、ディッピング、捺染プリント等の塗布方法を用いて塗布固着によって、マイナスイオンの放出と、遠赤外線放射の同時作用で、抗菌及び消臭効果を発揮し、さらに、光触媒二酸化チタンの添加混合により、前記抗菌及び消臭効果をさらに増加せしめることができる。
【0030】
本発明での三次元立体構造を有する繊維構造体の構成は、織編物地組織部2と連結組織部5とからなり、織編物地組織部2の表編地5と裏編地6を連結糸3で連結し、表裏織編地5,6が各々メッシュ状に形成されており、表裏2枚の織編地5,6の厚さ方に実質的に垂直に延びる線条体として形成された連結組織部5によって連結されているので、図1に示した繊維構造体では、厚さ方向に貫通形態の通気開孔部7が存在する構成であり、軽量で嵩高性及び反発性と共に、該通気開孔部7の空隙により通気性を向上した構成となっている。
【0031】
図2は、本発明の立体繊維構造体の一部切欠全体平面図であり、5は表面織編地、4は連結組織部、3は連結糸、8は樹脂組成物塗布部分である。
【0032】
図3は、本発明における立体繊維構造体の別実施例を示す断面模式図であり、連続線条ランダムループのスプリング構造のため通気貫通部が存在した大きな空隙があり、このような通気性素材11によって、通気性並びに熱拡散性が優れたクッション材として適した構成である。
【0033】
このように、本発明に係る繊維構造体は、軽量で嵩高性及び反発性、並びに該通気貫通う部7からなる空隙部10の存在により、良好な通気性が得られるため、速乾性に優れると共に、使用時のムレ感の防止、使用中の圧縮や回復によって内部に気流が生じ易く、それにより通気性、熱拡散性に優れた繊維構造体の構成となっている。
【0034】
さらに、本発明に係る繊維構造体の構造によれば、前記クッション材として、軽量で嵩 高性及び反撥性の優れた諸機能と併せて、通気貫通部7からなる空隙部10の存在による通気貫通形態とした構成の為、通気性に優れ、使用時のムレ感が抑制されると共に、使用による圧縮や反撥回復によって内部に気流が生じ易く、それによっても通気性及び熱拡散 性が促進されるが、さらに、前記樹脂組成物の塗布固着によるマイナスイオンの放出及び同時に放射する遠赤外線の作用での拡散ないし発散現象においても、遮蔽や滞留或いは拡散の妨げが少なく、水分の蒸散と共に、空隙部10での拡散によりマイナスイオン放出、及び遠赤外線の放射現象において相乗効果を発揮する。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、表裏織編地組織部と、その織編地組織部を連結糸で連結する連結組織部からなる立体構造を有する繊維構造体に、静電気に帯電しにくい高分子化合物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線放射セラミックのいずれか一方を含む樹脂組成物、或いはさらに光触媒機能材を添加混合した複合樹脂組成物を塗布加工することにより得られた立体構造を有する繊維構造体は、マイナスイオンを大量に放出し、同時に遠赤外線を放射する作用効果、さらに抗菌効果及び消臭効果の増加と、併せて同時にクッション材としての性能、即ち通気性がよく、長期使用でもヘタリがなく、汗をすばやく吸収しつつ直ぐに乾燥し、何度でも洗濯できる健康で衛生的な作用効果を奏する。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。
【0037】
試料の作成
表1に示す樹脂組成物の配合材では、シリコンエマルジョンとして、商品名SEC1980、東レダウコーニングシリコン社製を使用した。遠赤外線セラミックとして、商品名セラジットALF9、オーケイトレーディング社製を使用した。
【0038】
光触媒として、商品名PC−101 チタン工業製の平均粒径20nmのものを使用した。アパタイト被覆二酸化チタンとして、商品名ライオナイト ライオン製を使用した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

表1及び表2に示した樹脂組成物A、B、C、D、E、F、G、Hの所定量を配合した混合物を、3L真空攪拌機ダルトンにて、1時間攪拌して各々の樹脂組成物を得た。
【0041】
立体構造を有する繊維構造体として、表織編部組織として、ポリエステル・綿混紡繊維の平織編組織と、裏織編組織として、ポリエステル繊維の網目状織編組織の構成組織に、その構成組織にポリエステル糸で連結した表裏織編と直角に連結した連結部と、連結糸を交差させた連結部の連結組織をダブルラッセル織りで編んだ繊維構造体を使用した。その繊維構造体の表織編組織の表面に、前記樹脂組成物A、B、C、D、E、F、G、Hを、ロールコーターで、wet塗布量150g/m2 塗布して、乾燥炉で120℃、10分間乾燥して、実施例1、2、3、4、5、6、7、8を得た。
【0042】
イオン測定と遠赤外線測定
上記実施例1、2、3、4、5、6、7、8のイオン測定と遠赤外線測定を行なった。
【0043】
イオン測定方法は、小イオン測定として、イオンテスターKST−900 神戸電波製を使用し、室温25℃、湿度60%、試料20cm角で、マイナスイオンとプラスイオンを3分間の平均生成数/ccを測定した。
【0044】
総イオン測定は、空気イオンテスターITC−201A アンデス電気製を使用し、同じ雰囲気で、マイナスイオンとプラスイオンを3分間の平均生成数/ccを測定した。
【0045】
遠赤外線測定は、FTIR測定機、JIR−E500を使用し、試料温度35℃の遠赤外線放射率を測定した。その結果を表3に示した。
【0046】
【表3】

実施例1、2、3、4、5、6、7、8の試料の小イオン測定結果と総イオン測定結果から、実施例1、2、3、4、5、6、7、8共に、プラスイオンよりもマイナスイオンが大量に放出したものとなり、同時に遠赤外線放射が高放射するものとなった。
【0047】
実用化試験
実施例1、2、3、4、5、6、7、8で作成した試料を使用して、消臭試験、抗菌試験、試着試験をして、本発明をより明らかにしていく。
【0048】
消臭試験
消臭試験として、検知管法を用いた。試験方法として、5リットルのテドラーバッグに実施例の試料5cm角及びガスを注入して、30分後と1時間後のガス濃度を検知管を用いて測定し、脱臭率%を換算した。ガスの種類としてアンモニアを使用した。コントローは、試料を入れていないブランクである。
【0049】
アンモニアガス 初期濃度 100ppm.ガス量 600ml
脱臭率
=〔(コントロールガス量ー試料ガス濃度)/コントロールガス濃度〕×100
その結果を表4及び表5に示した。
(1)ディライト照射時
30分後のコントロールガス濃度 95ppm
1時間後のコントロールガス濃度 85ppm
【0050】
【表4】

(2)照明無し暗黒
30分後のコントロールガス濃度 190ppm
1時間後のコントロールガス濃度 180ppm
【0051】
【表5】

上記実施例1、2、3、4、5、6、7、8の消臭試験から明らかなように、ディライト照射時及び照明無しでも、高濃度のアンモニアガスを高能率で脱臭させていた。さらに光触媒作用で、ディライト照射で消臭作用を増加させていた。この現象は、大量のマイナスイオン放出及び光触媒作用による分解作用であることが明らかである。
【0052】
抗菌試験
抗菌試験として、財団法人日本紡績検査協会で試験を行なった。抗菌試験方法として、JIS−L1902定量試験法を準拠し、環境条件として、(1)ディライト照射時、
(2)照明無しの暗黒とした。試験菌株としてMRSA(黄色ぶどう球菌)を使用した。
【0053】
その結果を、表6及び表7に示した。
(1)ディライト照射時
【0054】
【表6】

(2)照明無しの暗黒
【0055】
【表7】

上記実施例の抗菌試験から明らかなように、実施例は高い抗菌性を維持していた。さらに光触媒作用で、ディライト照射時、抗菌作用を増加させていた。この現象は、大量のマイナスイオン放出と、遠赤外線の放射によるものと、光触媒作用によるものであることはらかである。
【0056】
試着試験
実施例1、2、3、4、5、6、7、8で作成した試料で、長さ2m、幅1mの周囲をテープ布で縫製した寝具マットを作成し、試着試験を実施した。試着者として、70歳以上の高齢者各10名に実施例の寝具マットを、8月初めから10月末までの3ケ月間使用してもらい、その間、洗濯を週1回してもらい、性能及び耐久性などをアンケートで、付き添いの家族に回答してもらった。
【0057】
その結果、実施例1、2、3、4、5、6、7、8のマット共に、アンケート全般に共通していた試着結果として、(1)夏場の使用感は、汗をかき難く涼しい。(2)日頃からの筋肉が硬かったのが、柔らかく楽になった。(3)高齢者独特の臭いがマットに付かなく無臭であった。(4)洗濯できて、いつも衛生的であった。(5)クッション性は、長期使用でもヘタリがなく、身体に負担のない快適なクッション性であった。(6)床ずれのできた赤い斑点が、薄い斑点になり、痛みが和らいでいた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
上記の如き多機能性を備えたクッション材として、マット、敷き布団、掛け布団、まくら、座布団等の他、特に効果の発揮できるものとして、例えば老人福祉施設の介護マット、病院のベッド、ペット用マット、被服及び芯地、靴、サポーター等で効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の多機能性立体繊維構造体の一実施例を示す一部切欠斜視模式図。
【図2】本発明の多機能性立体繊維構造体の一部切欠全体平面図。
【図3】多機能性立体繊維構造体の別実施例を示す断面模式図。
【符号の説明】
【0060】
1 立体繊維構造体
2 織編物地組織部
3 連結糸
4 連結組織部
5 表編地
6 裏編地
7 通気貫通部
8 樹脂組成物塗布部分
9 連続線条ランダムループ
10 空隙部
11 通気性素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏の織編物地組織部と、その地組織部を連結糸で連結する連結組織部からなる立体構造を有する繊維構造体に、静電気に帯電しにくい高分子化合物、並びに稀有元素を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方を含む樹脂組成物を塗布加工した、マイナスイオンを放出すると同時に、遠赤外線を放射することを特徴とする多機能性の立体構造を有する繊維構造体。
【請求項2】
表裏の織編物地組織部と、その地組織部を連結糸で連結する連結組織部からなる立体構造を有する繊維構造体に、静電気に帯電しにくい高分子化合物、並びに稀有元素類を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方を含むマイナスイオンを放出すると同時に、遠赤外線を放射する樹脂組成物に、光触媒機能材料を添加混合した複合樹脂組成物を塗布加工し、抗菌及び消臭作用を増加させたことを特徴とする多機能性の立体構造を有する繊維構造体。
【請求項3】
前記立体繊維構造体が、連通する通気貫通部を存在せしめてなり、かつ通気度が少なくとも200ml/cm2 /sec以上である請求項1及び2記載の機能性の立体構造を有する繊維構造体。
【請求項4】
前記立体繊維構造体が、通気性を有する表裏の織編物地組織部と、該地組織部を連結する連結組織部とからなり、該地組織部の少なくとも一方の地組織を複数の糸によって繊維占有率10〜80%であるように形成し、かつ連通する複数の空隙を存在せしめた前記立体繊維構造体での通気開孔率30〜80%である請求項1及び2記載の多機能性立体繊維構造体。
【請求項5】
前記光触媒材料が、光触媒酸化チタンである請求項2、3、4記載の複合樹脂組成物。
【請求項6】
前記光触媒材料が、アパタイト被覆二酸化チタンである請求項2、3、4記載の複合樹脂組成物。
【請求項7】
前記光触媒材料が、無機酸化物セラミックである請求項2、3、4記載の複合樹脂組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−161186(P2006−161186A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350591(P2004−350591)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000153410)株式会社日野樹脂 (26)
【出願人】(504447084)藤野イオン化学有限会社 (1)
【Fターム(参考)】