説明

多機能装置

【課題】第1機能部品が通常動作における位置から移動した場合においても、筐体内に装着された第2機能部品を抜取ることができる多機能装置を提供する。
【解決手段】基台61は、プリンター11の動作時において本体ケース13内の定められた動作位置に固定手段によって固定されるとともに、固定が解除された場合、動作位置から変位した解除位置まで移動するように構成され、切屑容器15は、プリンターの本体ケース内に装着された状態から本体ケース外へ抜取り可能に構成され、基台の少なくとも一部が、解除位置において、抜取りに伴う切屑容器の移動経路内に進入する場合、切屑容器は、基台が解除位置に至る前に、基台の移動を規制する規制部材71を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる機能を受け持つ複数の機能部品を備えた多機能装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送される記録媒体(例えば用紙)に対して、記録液としての液体(例えばインク)を噴射して付着させることによって記録媒体に所定の画像(文字や図形などを含む)を形成して記録する記録部を有する記録装置が知られている。このような記録装置において、ロール状に巻かれた記録媒体が記録部に対して給送されることによって、記録部において連続して搬送される記録媒体に、複数の画像を連続して記録する場合がある。このような場合、記録装置は、例えば、複数の画像が記録された記録媒体を、各画像の記録領域に応じた長さで切断する機能や、切断された記録媒体における記録面と反対側の裏面に例えば整理番号などの識別文字を印字する機能など、多くの機能を備えた多機能装置の一種となる。
【0003】
このような多機能装置の一種である記録装置の一例として、特許文献1には、ペーパーを切断する機能を受け持つカッターユニットと、ペーパーの裏面に整理番号を印字する機能を受け持つ裏面印字ユニットという異なる機能を受け持つ機能部品を備えたプリンターが記載されている。そして、カッターユニットによって切断されたペーパーの切り屑を受けるカッター屑回収箱を、プリンターの筐体内に設定された回収位置からプリンターの筐体外に設定された廃棄位置まで、回転させながら移動させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−233888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたプリンターにおいて、カッター屑回収箱の移動に際して、移動経路内に異物(障害物)が入り込んだ場合は、カッター屑回収箱の移動が阻害され、廃棄位置に移動できなくなってしまう虞がある。例えば、裏面印字ユニットが何かの原因で通常の動作時において設定された位置から脱落して、カッター屑回収箱の移動経路内にその一部または全部が入り込むことも考えられる。このような場合は、プリンターの筐体を構成する外装部品を分解して、移動を阻害している裏面印字ユニットを取り除くなどの作業をする必要があり、専任の作業者(例えばサービスマン)などによって、これらの作業を行わなければならなくなってしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためなされたものである。その主な目的は、第1機能部品が通常動作における位置から移動した場合においても、筐体内に装着された第2機能部品を抜取ることができる多機能装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の多機能装置は、異なる機能を受け持つ第1機能部品と第2機能部品とを備えた多機能装置であって、前記第1機能部品は、前記多機能装置の動作時において前記多機能装置の筐体内の定められた動作位置に固定手段によって固定されるとともに、前記固定手段による固定が解除された場合、前記動作位置から変位した解除位置まで移動するように構成され、前記第2機能部品は、前記多機能装置の筐体内に装着された状態から前記筐体外へ抜取り可能に構成されるとともに、前記第2機能部品の装着状態において前記第1機能部品の少なくとも一部が当該第1機能部品の前記動作位置からの変位に伴い前記第2機能部品の移動経路内に進入することを規制する規制部材を備える。
【0008】
この構成によれば、第1機能部品の変位を、第2機能部品の抜取りが阻害されない範囲に規制する。従って、例えば第1機能部品の固定用ロックが外れて動作位置から解除位置に移動する場合、第2機能部品に備えられた規制部材によって第1機能部品の移動を規制してその変位量を抑制することによって、筐体内に装着された第2機能部品を抜取ることができる。
【0009】
本発明の多機能装置において、前記規制部材は、前記第1機能部品における前記動作位置から前記解除位置への移動において最も早く前記第2機能部品の移動経路内に進入しようとする特定部位と当接する規制面を有するとともに、前記規制面は、前記第2機能部品が抜取られる際の移動に際して、前記特定部位が常に当接して摺動するように、前記抜取り方向に滑らかに連続する連続面である。
【0010】
この構成によれば、第2機能部品を筐体から抜取る場合、第2機能部品に最も近い第1機能部品の特定部位が規制部材に形成された連続面上を当接しながら摺動するため、第2機能部品の移動に際して、第1機能部品が第2機能部品の抜取りを阻害しないようにすることができる。
【0011】
本発明の多機能装置において、前記第1機能部品は、前記動作位置から前記解除位置への移動において重力方向への変位を含み、前記第2機能部品は、前記筐体外への抜取り方向が重力方向と交差する方向であるとともに、反重力方向側に開口部が設けられ重力方向側に底面が設けられた箱型形状を有し、前記規制部材は前記開口部の一部を覆うように設けられている。
【0012】
この構成によれば、第2機能部品の箱型形状によって形成される内部空間領域に第1機能部品が進入しないように第1機能部品の重力方向への移動を抑制するので、第2機能部品を筐体から抜取ることができるようにすることができる。また、開口部の一部のみを覆うので、例えば第2機能部品が機能として有する内部空間領域を利用することが可能である。
【0013】
本発明の多機能装置において、前記多機能装置は、一面に複数の記録領域を有する記録媒体を前記記録領域毎に切断する機能と、前記切断された記録媒体における前記一面とは反対側の面に印字を施す機能と、を有し、前記第1機能部品は、前記切断された記録媒体における前記一面とは反対側の面に印字を施す印字ユニットであり、前記第2機能部品は、前記切断によって前記記録領域間に発生する前記記録媒体の切断片を溜める容器である。
【0014】
通常記録媒体の切断片を溜める容器は、筐体において切断片を確実に取り込んで溜めるために重力方向側に位置される。また、記録媒体の切断に続いて印字(裏面印字)が行われるため、印字ユニットは、切断片を溜める容器の近傍に配設される。従って、この構成によれば印字ユニットに対して鉛直方向の重力方向側に、切断片を溜める容器を配置させる構成において、切断片を溜める容器に印字ユニットの重力方向への移動を規制する規制部材を設けることによって、例えばロックが外れて変位する印字ユニットが、切断片を溜める容器の移動を阻害しないようにすることが可能である。
【0015】
本発明の多機能装置において、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、搬送される前記記録媒体の前記記録領域に対して、液体を噴射して前記記録領域に記録を施す記録部と、を備え、前記記録媒体への記録装置として機能する。
【0016】
この構成によれば、上記構成の多機能装置と同様の効果を奏する記録装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態のプリンターの概略構成を示す機能ブロック図。
【図2】実施形態のプリンターにおける印字ユニットの引き出し状態を示す斜視図。
【図3】印字ユニットが動作位置から解除位置に移動する場合において、基台が切屑容器の移動を阻害することを説明する説明図。
【図4】(a)は基台によって移動が阻害されないように構成された切屑容器の説明図、(b)(c)はそのように構成された切屑容器の斜視図。
【図5】(a)は変形例の切屑容器の断面図で、(b)は(a)の切屑容器の移動状態を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、ロール状に巻かれたロール紙RPから給送される長尺の記録媒体としての用紙Pに対して、記録液としてのインクを液体噴射ヘッドから噴射して画像を記録する多機能装置の一種である記録装置において具体化した実施形態を用いて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の記録装置の一例としてのプリンター11のブロック構成図である。なお、以降の説明を容易にするため、図1に示したように、重力方向を下方向、反重力方向を上方向とする。また、これと交差する方向であって、給送された用紙Pが画像の記録時において搬送される搬送方向を前方向、搬送方向と反対方向を後方向とし、さらに重力方向および搬送方向の双方と交差する方向を、前方向から見て、それぞれ右方向、左方向と呼ぶことにする。
【0020】
図1に示すように、プリンター11は、ロール紙RPが収容されたケース12と、ロール紙RPから給送される用紙Pに処理を施す記録部30、切断部40、裏面印字部50などの機能ブロックが設けられた筐体としての本体ケース13とを備えている。そして、本体ケース13の前側には、各機能ブロックによって処理が施された用紙Psが排出される排紙トレイ17が設けられている。
【0021】
プリンター11に設けられた機能ブロックについて、プリンター11に備えられた搬送手段として機能する複数のローラー対によって搬送される用紙Pの搬送順に従って説明する。まず、ロール紙RPから巻き解かれた用紙Pは、給送ローラー対21によって記録部30に給送されるようになっている。記録部30は、インクを噴射する液体噴射ヘッド31、用紙Pを支持する支持台32、用紙Pを搬送する搬送ローラー対22,23を有している。
【0022】
記録部30では、ロール紙RPから給送された用紙Pを搬送して、用紙Pの上面(表面)に画像を記録する。まず搬送ローラー対22によって液体噴射ヘッド31と支持台32との間に用紙Pを送り出す。送り出された用紙Pは、その上面(表面)が液体噴射ヘッド31に対して所定の距離を保つように搬送され、この搬送される用紙Pの上面に液体噴射ヘッド31からインクが噴射されて画像が記録される。その後、用紙Pは搬送ローラー対23によって次の機能ブロックである切断部40に搬送される。液体噴射ヘッド31は、搬送される用紙Pの幅方向に移動するキャリッジに搭載される所謂シリアル型式のヘッドや、用紙Pの幅方向に沿って固定配置されたヘッド本体にノズルが略用紙幅に渡って形成された所謂ラインヘッド型式のヘッドにより構成されている。
【0023】
切断部40は、例えば回転刃などによって構成されるカッター41などを機能部品として有し、用紙Pを、記録された画像に対応する記録領域毎に切断する。このとき、切断部40では、各々の記録領域について搬送方向の端部に存在する不要な記録領域を取り除くように切断がおこなわれるようになっている。このため、図1に示すように、用紙Pは、切断によって切断片Pkが発生し、発生した切断片Pkは重力方向に落下するようになっている。
【0024】
そこで、切断部40における処理によって生ずる切断片Pkを受けて溜めるために、機能部品(ここでは第2機能部品)として上方に開口部18を有し下方に底面を有する箱型形状の容器(以降、「切屑容器」と呼ぶ)15が、切断部40よりも下側に配設されている。この切屑容器15は、本体ケース13の右側面において表面から少し凹むように面が形成された凹部14内に配設されるとともに、本体ケース13から搬送方向と直交する右方向に引き抜くことができるようになっている。このため、その右方向の端面が凹部14において露出するとともに、その端面において切屑容器15を引く抜くための取手16が設けられている。
【0025】
切断後の用紙Psは、裏面に整理番号などの文字や記号を印刷する裏面印字部50に搬送される。裏面印字部50は、機能部品(ここでは第1機能部品)としての印字ユニット51、用紙Psを印字の際に上側から支持する支持台52、用紙Psを搬送する搬送ローラー対24,25を有している。裏面印字部50では、搬送される用紙Psを、まず搬送ローラー対24によって印字ユニット51と支持台52との間に送り出す。そして、送り出された用紙Psは、その下面(裏面)に印字ユニット51によってドットが記録されることによって所定の文字や記号が印字される。印字された用紙Psは、搬送ローラー対25によって搬送方向に送られる。
【0026】
その後、搬送方向に送られた用紙Psは、例えば機能ブロックとしての乾燥部(不図示)に搬送され、機能部品としてのヒーターユニット(不図示)などによる乾燥処理が施された後、最終的に搬送ローラー対26によって排紙トレイ17に排出されるようになっている。
【0027】
さて、本実施形態のプリンター11において、印字ユニット51は、インクリボンを用紙Psの下面(裏面)に押し付けてインクを用紙Psに転写し、インクドットを形成する所謂インパクトドット方式のプリンターユニットが用いられる。あるいは、インパクトドット方式のプリンター以外に、例えば熱転写型のプリンターを用いることもできる。周知のように、この種のプリンターにおいては、消耗品となるインクリボン(転写リボン)の交換作業が必要である。本実施形態のプリンター11では、インクリボンの交換作業を含めて印字ユニット51のメンテナンス作業ができるように、印字ユニット51を、本体ケース13の分解作業を行うことなく本体ケース13外に取り出せるようになっている。
【0028】
すなわち、図2に示すように、まず切屑容器15を、本体ケース13の凹部14において露出する取手16を把持して、本体ケース13から抜取る。なお、ここでは抜取方向は右方向となっている。この切屑容器15の抜き取りによって、本体ケース13内には、切屑容器15が占有していた占有空間領域15Sが、部材が何も存在しない空洞の空間として生まれる。この占有空間領域15Sは、切屑容器15が移動する移動経路でもある。そして、印字ユニット51は、この占有空間領域15Sを移動経路として利用することによって、図2に示したように、消耗品の交換などメンテナンス作業が行えるメンテナンス位置に移動できるようになっている。
【0029】
本実施形態では、印字ユニット51は2つの印字ヘッド54を有しており、各々のヘッドについてインクリボンの交換がおこなわれる。また、印字ユニット51は移動台58に載置され、移動台58の抜取方向(右側)に設けられた引出用取手58aを掴んで引き出すことによって、印字ユニット51を本体ケース13外に引き出すことができるようになっている。
【0030】
また、本実施形態では、印字ユニット51が用紙Psに印字を行う位置(以降、「動作位置」と呼ぶ)に固定された固定状態を解除するための固定解除取手59が設けられている。この固定解除取手59が引出用取手58a側にスライドすることによって、印字ユニット51は固定状態が解除され、プリンター11に備えられた移動手段によって、動作位置から変位した位置(以降、「解除位置」と呼ぶ)に移動するように構成されている。この移動手段による印字ユニット51の移動について、図3を用いて説明する。その後、印字ユニット51の固定が解除された状態において、切屑容器15の抜取りが可能となるように設けられた規制部材71あるいは規制部材72について、図4を参照して説明する。
【0031】
図3に示したように、印字ユニット51は、動作位置DPにおいて印字ヘッド54が用紙Psの裏面側に近接配置され、支持台52によって支持された用紙Psに対してインクリボンのインクを転写してドットを形成することができる状態になっている。印字ユニット51は、2つの印字ヘッド54を搭載したユニットベース53と、2つの印字ヘッド54間に設けられたヘッド間枠体55とを有している。このヘッド間枠体55には、前後方向(紙面に対して垂直方向)において2つの案内穴55hが設けられている。ユニットベース53は1つ又は複数のコイルばね57によって、移動台58に対して上下、左右、前後のいずれの方向においても移動できる浮動状態で移動台58に載置されている。移動台58は、基台61に対して左右方向にスライド移動できるように設けられている。
【0032】
プリンター11の本体ケース13側には、2つの印字ヘッド54間において本体ケース13側に固定された固定枠56が設けられている。この固定枠56には、印字ユニット51が動作位置DPへ移動する際の移動方向(ここでは上方向)と反対方向となる下方向に突出した形状を有する案内ピン56pが、前後方向において2つ設けられている。
【0033】
そして、印字ユニット51が下方向から上方向に移動して動作位置DPに位置する際に、案内ピン56pと、ヘッド間枠体55に形成された案内穴55hと、がそれぞれ係合するようになっている。この係合によって、印字ユニット51が、上下、左右、前後の全ての方向において位置決めされるように、ピン形状と穴形状とがそれぞれ設定されている。従って、案内ピン56pと案内穴55hとが位置決め部材として機能する。なお、本実施形態では、印字ユニット51は、このように位置決めされた状態、すなわち動作位置DPに位置する状態にて、図示しない固定手段としてのロック機構(例えば基台61あるいは移動台58を少なくとも下方向に移動させないようにロックする機構など)によって固定されるようになっている。
【0034】
移動台58の右側端部には、引出用取手58aが設けられている。その左側には、前述するように固定解除取手59が、引出用取手58aと隙間をあけて隣接配置されている。固定解除取手59は、例えばメンテナンス作業者が下側から手(片手)で引出用取手58aを握る際に、同時に握ることができるとともに、握る際の力によって引出用取手58a側にスライドさせることができるようになっている。前述するように、このスライドによって、ロック機構のロックが解除され、印字ユニット51は、動作位置DPに固定された状態が解除されて移動を開始し、二点鎖線で示した解除位置KPに移動するようになっている。
【0035】
印字ユニット51を動作位置DPから解除位置KPへ移動させる場合は、前述するように、作業者によってまず切屑容器15の抜取り作業が行われる。本実施形態では、図3に示すように、基台61において最も下方に位置する部位となる最下端部(不図示)と切屑容器15の開口部18の端に位置する上端面15tとの間において、隙間GAPを有するように切屑容器15が配設されている。従って、作業者は、取手16を掴んで切屑容器15を本体ケース13から引き出して抜取ることができるようになっている。
【0036】
切屑容器15が抜取られた後、固定解除取手59がスライドしてロックが解除されると、印字ユニット51は、図中二点鎖線で示した解除位置KPに移動するように構成されている。すなわち、基台61は、上方向から見て略矩形形状を有し、前後方向の両端部には、前後方向と直交する平坦な側面がそれぞれ形成されている。これらの側面には、それぞれ同じ長手方向の長さを有する2つの板状のリンク部材62,63が設けられている。リンク部材62は、その一端が回転軸62aによって基台61に対して回動自在に軸支されるとともに、その他端が回転軸62bによって、本体ケース13側に固定された固定板64に対して回動自在に軸支されている。また、リンク部材63は、その一端が回転軸63aによって基台61に対して回動自在に軸支されるとともに、その他端が回転軸63bによって同じく固定板64に対して回動自在に軸支されている。そして、リンク部材62,63は長手方向が略平行になるように配設されている。このように基台61の前後方向の両端部に設けられた2つのリンク部材62と2つのリンク部材63との合計4つのリンク部材によってリンク機構60が構成されている。基台61は、このように構成されたリンク機構60によって、傾くことなくほぼ水平状態を維持しながら、占有空間領域15S内を通過して解除位置KP(図中二点鎖線)に移動するようになっている。こうして、基台61に設けられた移動台58に載置された印字ユニット51は、基台61と共に解除位置KPに移動する。
【0037】
その後、移動台58がさらに右方向にスライド移動することによって、印字ユニット51は本体ケース13外に引き出され、図2に示した位置、すなわち実際に作業者によってメンテナンスが行われるメンテナンス位置に移動されるようになっている。
【0038】
なお、本実施形態では、回転軸62bにおいてリンク部材62と固定板64との間にダンパー(ロータリーダンパー)65が取り付けられている。ダンパー65は、回転軸62bを中心にして回転するリンク部材62の回転に対して緩衝力(ダンパー力ともいう)を発生させることによって、リンク部材62の回転速度を減少させる。こうすることで、印字ユニット51は、リンク機構60によって動作位置DPから解除位置KPへ移動する際にゆっくり移動できるようになっている。なお、ダンパー65が設けられる回転軸は、必ずしも回転軸62bに限定されるものでなく、回転軸63bなど他の回転軸に取り付けられていてもよい。またダンパー65が複数の回転軸に取り付けられていても勿論よい。
【0039】
このように構成されたプリンター11において、印字ユニット51は、例えば、プリンター11が振動するなど何らかの原因によって、動作位置DPにおけるロックが解除されると、動作位置DPから解除位置KPに向かって移動することになる。この移動において、基台61は開口部18から切屑容器15の箱型形状の内部空間領域15K内に進入して、図3中破線で示したように少なくとも基台61が内部空間領域15K内に位置する状態になる。この状態になると、切屑容器15は、その箱型形状の左側端の容器壁部15bが上下方向で係合するために、図3中二点鎖線で示したように右方向への移動(白抜き矢印)が阻害され、切屑容器15が本体ケース13から抜取れなくなってしまう。こうなってしまうと、印字ユニット51のメンテナンス作業が行えなくなってしまうことは勿論、切屑容器15に溜まった切断片Pkを処理して切屑容器15を空にすることもできなくなってしまう。
【0040】
なお、本実施形態では、印字ユニット51のロックが解除された場合、このように印字ユニット51を移動させる移動手段を構成する基台61における最下端部(不図示)が最も早く切屑容器15の内部空間領域15Kに進入しようとする特定部位になる。従って、占有空間領域15Sに最も早く進入する特定部位を有する基台61が第1機能部品に相当することになるため、本実施形態においては、少なくとも基台61を含む印字ユニット51が第1機能部品としての機能部品に相当する。
【0041】
本実施形態では、このように印字ユニット51のロックが解除されて、印字ユニット51が解除位置KPに移動することによって切屑容器15の抜取りができないようになる場合、基台61が切屑容器15の内部空間領域15Kに入らないようにしている。これについて、図4を参照して説明する。
【0042】
図4(a)に示すように、切屑容器15は、基台61の最下端部(特定部位)が解除位置KPに到る前であって切屑容器15の内部空間領域15Kに進入しない変位量の状態(図中二点鎖線で示した状態)において、基台61の移動を規制する。本実施形態では、切屑容器15の上方端部側において、図4(b)(c)に示したように、基台61が進入しようとする開口部分を覆うように規制部材71あるいは規制部材72を備えることによって、基台61を切屑容器15の内部空間領域15Kに進入させないようにする。言い換えれば、基台61を占有空間領域15S外に位置させるように、切屑容器15の規制部材71,72は基台61の移動を規制する。
【0043】
そこで次に、この規制部材71,72の詳細について説明する。
さて、規制部材71は、例えば基台61(印字ユニット51)が切屑容器15に対して前後方向(ここでは前方向)の端部寄りに位置するとともに、その最下端部が比較的広い領域を有する場合において備えることが有効である。また、規制部材72は、例えば基台61(印字ユニット51)が切屑容器15に対して中央部寄りに位置するとともに、その最下端部が比較的狭い領域を有する場合において備えることが有効である。
【0044】
まず、規制部材71は、図4(b)に示したように、切屑容器15の抜取方向である左右方向に延設された規制面71sを有するとともに、切屑容器15の上端に設けられた開口部18のうち前方端部側における開口部18の一部を覆うように備えられている。そして、この規制面71sは、動作位置DPから基台61が移動したとき、基台61の最下端部が当接するように前後方向に所定幅を有して形成されている。こうして規制面71sは、この規制面71sに基台61の最下端部を当接させることによって、基台61の移動を規制するようになっている。
【0045】
本実施形態では、規制面71sは切屑容器15の上端面15tと同一な面であるとともに、右方向の端面71aから左方向の端面71bまで段差を有することなく滑らかな面が連続して形成された連続面(ここでは平坦面)となっている。従って、切屑容器15の抜取において、基台61は規制面71s上を円滑に移動する。また、切屑容器15が本体ケース13から抜取られる直前の状態においても、基台61は規制面71sの左方向の端面71bを円滑に移動することから、切屑容器15は、その箱型形状の左側端の容器壁部15bが抜取りにおいて基台61と上下方向で係合しないので、円滑に抜取られるようになっている。
【0046】
なお、本実施形態では、規制部材71における左右方向の端面71a,71bおよび前方向の端面71cは、切屑容器15の占有空間領域15Sが大きくならないように、切屑容器15の箱型形状の外形面(側面)と同一な面になるように形成されている。
【0047】
次に、規制部材72は、図4(c)に示したように、図4(b)の規制部材71と異なり、その前方側に開口部72hが形成されるように前後方向に所定幅を有するとともに、切屑容器15の抜取方向である左右方向に延設された規制面72sを有している。もとより、この規制面72sは、動作位置DPから基台61が移動したとき、基台61の最下端部が当接するように前後方向に所定幅が設定されている。こうして規制面71sは、この規制面71sに基台61の最下端部を当接させることによって、基台61の移動を規制するようになっている。
【0048】
本実施形態では、規制面72sは、規制面71sと同様に、切屑容器15の上端面15tと同一な面であるとともに、右方向の端面72aから左方向の端面72bまで段差を有することなく滑らかな面が連続して形成された連続面(ここでは平坦面)となっている。従って、切屑容器15の抜取において、基台61が規制面72sを円滑に相対移動することができるようになっている。また、切屑容器15が本体ケース13から抜取られる直前の状態においても、基台61は規制面72sの左方向の端面72bを円滑に移動することから、切屑容器15は、その箱型形状の左側端の容器壁部15bが抜取りにおいて上下方向で係合せず円滑に抜取ることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、規制部材72における左右方向の端面72a,72bは、切屑容器15の占有空間領域15Sが大きくならないように、切屑容器15の箱型形状の外形面(左右方向の側面)と同一な面になるように形成されている。また、規制面72sの前後方向において開口部18および開口部72hが存在するように規制部材72を備えることによって、規制面72s上に切断片Pkが落下しても、規制面72sの幅方向(前後方向)の両側に存在する開口部のどちらかを介して、切断片Pkを容易に切屑容器15内に落下させることができるようになっている。
【0050】
上記説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)例えば印字ユニット51を動作位置DPに固定するロックが外れて、印字ユニット51が動作位置DPから解除位置KPに移動する場合、切屑容器15に備えられた規制部材71,72によって基台61(印字ユニット51)の移動を規制してその変位量を抑制する。この結果、本体ケース13内に装着された切屑容器15を抜取ることができる。
【0051】
(2)切屑容器15を本体ケース13から抜取るように移動させる場合、切屑容器15の移動経路つまり占有空間領域15Sに最も早く進入しようとする基台61の最下端部(特定部位)が、規制部材71,72に形成された連続面である規制面71s,72s上を当接しながら摺動する。従って、切屑容器15の移動に際して、基台61が切屑容器15の抜取りを阻害しないようにすることができる。
【0052】
(3)切屑容器15の箱型形状によって形成される内部空間領域15K内に基台61が進入しないように、基台61の移動を抑制するので、切屑容器15を本体ケース13から抜取ることができるようにすることができる。また、切屑容器15の開口部18の一部のみを覆うので、切屑容器15が有する内部空間領域15Kを、切断片Pkを溜めるための機能として利用することが可能である。
【0053】
(4)用紙Pの切断片Pkを溜める切屑容器15は、本体ケース13において切断片Pkを確実に取り込んで溜めるために重力方向側に位置する。また、用紙Pの切断に続いて印字(裏面印字)が行われるため、印字ユニット51は、所謂裏面印字ユニットとして機能するとともに、切断片Pkを溜める切屑容器15の近傍に配設することができる。従って、印字ユニット51に対して鉛直方向の重力方向側に、切断片Pkを溜める切屑容器15を配置させる構成が可能であるので、切屑容器15に規制部材71,72を設けることによって、例えばロックが外れて変位する印字ユニット51つまり基台61が、切屑容器15の移動を阻害しないようにすることが可能である。
【0054】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、規制部材の規制面を左右方向について必ずしも切屑容器15の上端面15tと同一な面としなくてもよい。例えば図5(a)に示すように、規制部材72を、その規制面73sが、左方向の端面73bにおいて切屑容器15の上端面15tと同一な面になっているとともに、右方向の端面73aに向かって下方向に下がった傾斜面になっている規制部材73としてもよい。このように規制面73sを傾斜面とすることによって、図示するように基台61の下方向への変位を規制するとともに、基台61が切屑容器15の右方向への移動を阻害することなく切屑容器15が円滑に抜取られるようになっている。
【0055】
すなわち、図5(b)に示したように、基台61は、切屑容器15の抜取りによる右方向への移動(図中、白抜き矢印)に伴って、規制面73sと当接する部位(ここでは左方向側端部)が規制面73sに当接しながら摺動する。この摺動に伴って、基台61は、二点鎖線で示した位置(図5(a)に示した位置)から、規制面73sの傾斜に沿って上方に移動して実線で示した位置、すなわち基台61の最下端部が上下方向において切屑容器15の上端面15tと同じ位置まで移動(上昇)する。この結果、切屑容器15の左側端の容器壁部15bは、基台61と上下方向で係合しないので、切屑容器15は円滑に抜取られることになる。
【0056】
このように規制面73sが傾斜面となっている規制部材73を切屑容器15に設けることによって、装着状態で本体ケース13から視認可能な状態にある右方向の容器側面において、規制部材73の端面73aが視認されないように構成することが容易であるので、外観的に好ましい。また、規制面73sが傾斜していることから、この規制面73s上に落下した切断片Pkは規制面73s上を滑って容器内に落下し易くなるので、切断片Pkを確実に切屑容器15内に溜めることができる。
【0057】
・上記実施形態において、印字ユニット51は必ずしもリンク機構60によって移動して変位するものでなくてもよい。例えば、印字ユニット51はスライド機構によるスライド移動によって動作位置DPから解除位置KPに移動して変位するものであってもよい。
【0058】
・上記実施形態において、印字ユニット51は、必ずしも下側つまり重力方向側に移動するようになっていなくてもよい。例えば、重力方向とは逆に上側すなわち反重力方向側に移動させるようになっていてもよい。あるいは、重力方向と交差する方向(例えば水平方向など)に移動して変位するようになっていてもよい。
【0059】
・上記実施形態において、切屑容器15および印字ユニット51が、用紙Pの搬送方向と同じ前後方向側において引き出されるように構成された形態としてもよい。プリンター11の構造によっては、このように移動方向を設定することで、印字ユニット51を動作位置DPから解除位置KPに移動させることがこのましい。
【0060】
・上記実施形態において、切屑容器15の抜取方向と、印字ユニット51の引き出し方向が異なる方向であってもよい。例えばプリンター11における機能部品の配置構造に応じて、このように抜取方向と引き出し方向とを異なる方向としてもよい。
【0061】
・上記実施形態において、第1機能部品としての機能部品は、必ずしも印字ユニット51に限るものでないことは勿論である。プリンター11の動作時において本体ケース13内にロック機構によってロックされ、ロックが解除されると変位して、切屑容器15の本体ケース13からの抜取を阻害する機能部品であれば、どのような機能部品であってもよい。
【0062】
・上記実施形態において、第2機能部品としての機能部品は、切屑容器15以外の機能部品であってもよい。例えば、プリンター11において使用されるインクの廃液を溜める廃インクタンク(不図示)を第2機能部品とし、この廃インクタンクの占有空間領域を用いて印字ユニット51を移動させるようにしてもよい。通常、廃インクタンクは上側に開口部を有する箱形状を有するとともに、プリンター11において本体ケース13の下側において着脱可能に配置されることが多い。そこで、廃インクタンクを印字ユニット51の下側に配設することによって、廃インクタンクの占有空間領域を、印字ユニット51を引き出す際の移動経路として用いるとともに、廃インクタンクに規制部材を設けることによって、印字ユニット51の変位を規制する。こうすれば、切屑容器15と同様に、廃液インクタンクを本体ケース13から抜取ることができる。
【0063】
・上記実施形態では、記録装置の一例としてインクを噴射するインクジェット式のプリンター11を採用したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の記録装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。また、記録装置の具体例としては、上記実施形態で説明したような用紙がロール状に巻かれたロール紙を収容体(ケース12)に備えた装置に限られない。例えば、可撓性を有する基板や金属板、あるいはプラスチックシートや布など、長尺状の記録媒体がロール状に巻かれているものを収容体に備えた装置であれば、いずれも記録装置として採用することができる。さらに、収容体に備えられた長尺状の記録媒体は、例えば葛折状になっているなどのように必ずしもロール状に巻かれていなくてもよい。さらには、枚葉状の記録媒体であっても差し支えない。
【0064】
・上記実施形態において、多機能装置の一種として記録装置以外を採用してもよい。メンテナンスが必要な機能部品と本体ケースに着脱される機能部品とを備えた装置であれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
11…多機能装置の一種である記録装置としてのプリンター、13…筐体としての本体ケース、15…第2機能部品としての切屑容器、18…開口部、30…記録部、51…第1機能部品としての印字ユニット、61…第1機能部品としての基台、71,72,73…規制部材、71s,72s,73s…規制面、72h…開口部、DP…動作位置、KP…解除位置、P…記録媒体としての用紙、Pk…切断片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる機能を受け持つ第1機能部品と第2機能部品とを備えた多機能装置であって、
前記第1機能部品は、前記多機能装置の動作時において前記多機能装置の筐体内の定められた動作位置に固定手段によって固定されるとともに、前記固定手段による固定が解除された場合、前記動作位置から変位した解除位置まで移動するように構成され、
前記第2機能部品は、前記多機能装置の筐体内に装着された状態から前記筐体外へ抜取り可能に構成されるとともに、前記第2機能部品の装着状態において前記第1機能部品の少なくとも一部が当該第1機能部品の前記動作位置からの変位に伴い前記第2機能部品の移動経路内に進入することを規制する規制部材を備えることを特徴とする多機能装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多機能装置において、
前記規制部材は、前記第1機能部品における前記動作位置から前記解除位置への移動において最も早く前記第2機能部品の移動経路内に進入しようとする特定部位と当接する規制面を有するとともに、前記規制面は、前記第2機能部品が抜取られる際の移動に際して、前記特定部位が常に当接して摺動するように、前記抜取り方向に滑らかに連続する連続面であることを特徴とする多機能装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多機能装置において、
前記第1機能部品は、前記動作位置から前記解除位置への移動において重力方向への変位を含み、
前記第2機能部品は、前記筐体外への抜取り方向が重力方向と交差する方向であるとともに、反重力方向側に開口部が設けられ重力方向側に底面が設けられた箱型形状を有し、
前記規制部材は前記開口部の一部を覆うように設けられていることを特徴とする多機能装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の多機能装置において、
前記多機能装置は、一面に複数の記録領域を有する記録媒体を前記記録領域毎に切断する機能と、前記切断された記録媒体における前記一面とは反対側の面に印字を施す機能と、を有し、
前記第1機能部品は、前記切断された記録媒体における前記一面とは反対側の面に印字を施す印字ユニットであり、
前記第2機能部品は、前記切断によって前記記録領域間に発生する前記記録媒体の切断片を溜める容器である
ことを特徴とする多機能装置。
【請求項5】
請求項4に記載の多機能装置において、
前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
搬送される前記記録媒体の前記記録領域に対して、液体を噴射して前記記録領域に記録を施す記録部と、を備え、
前記記録媒体への記録装置として機能することを特徴とする多機能装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−51122(P2012−51122A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193396(P2010−193396)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】