説明

多段ケージシステムにおける餌供給装置

【課題】餌搬送装置の動作を利用して餌ダクトもしくはホッパー内部での餌の詰まりのない給餌装置を提供する。
【解決手段】多段ケージシステムの飼養鶏前に設けられる餌樋2に餌を供給するために、該餌樋2に対応させた、高さの異なる複数のホッパー4と、該複数のホッパー4に対して同時に餌を供給するように構成された縦方向に延びる餌ダクト5と、該ホッパー4の出口下方に設けられる餌樋2と、該餌樋2内に構成され、餌樋2に落ちてきた餌を餌樋2の長手方向に移送する餌搬送装置とからなる、多段式ケージシステムの給餌装置において上記餌搬送装置の移送する動作から得られた力によってホーパー4内に設けられた振動装置を加振させる装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多段ケージシステムにおける各段に取り付けられた餌の取り入れ口における餌供給装置。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示するように、豚等の力のある動物が餌を食べる場合において、餌をあさる際に必然的に餌用ホッパーに当たるような配置にしている。そして、上記ホッパーに当たる現象を利用して、餌用ホッパーが上記動作を原動力として振り子運動を行わせ、その振り子運動にともなって給餌を促進させる装置が提案されている。この考え方によって餌用のホッパーが揺動できるタイプのホッパーであれば、その餌が無くなる前に動物がホッパーを揺することで餌の供給が連続するものである。一方、ホッパーから粒体物を一定量排出する手法として、スクリューフィーダ等の粉体等の排出装置が存在するが、排出量だけを管理しても、その出口に至るまでのホッパーの入り口部付近もしくはそのホッパーに餌を供給するための餌ダクトの出口付近で餌が滞り、そのためにホッパーの出口付近まで餌が到来しなくなり、結果として餌の排出量が不足もしくはゼロとなるという問題が発生していた。
【特許文献1】特開平10−4814号公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、多段ケージシステムにおいて、縦長配置されて餌を連続的に供給する餌ダクトと、この餌ダクトから供給され、異なる高さで供給を受けるホッパーと該ホッパーの出口部には餌樋が設けられ、該餌樋内に設けられた餌搬送装置によって各ケージに餌を供給する餌供給システムにおいて、上記高さの異なる複数のホッパーから、餌樋に対して供給される餌は、供給された初期の時点では過不足無く供給可能であるものの、長期にわたる使用においては後述する問題に起因して、過不足無く餌を安定して供給することに困難な面があった。
【0004】
すなわち、流動状況の不安定な流体物である餌を1本の餌ダクトから、高さ違いのホッパーに対して、何れのホッパーに対しても同様の流量が得られるように餌を供給すること自体に困難な面があり、なおかつ、餌の自重によって供給させる通常の場合において、一時的に全ホッパーに対して安定供給がなされていても、餌自身が閉塞構造を餌ダクトもしくはホッパー内部において生成し、その結果として、餌がダクト内に十分に存在していてもホッパー出口からの流量は途絶える、あるいは予定の流量には達していない問題が生じていた。また、餌供給が途絶えることは、ケージ内で餌を待っている飼養鶏に対して、極めて深刻な状況に陥ることは当然であり、そのために、餌が途絶えていないか、餌の供給が激減していないかを監視するために管理者の見回りが欠かせず、管理者の負担は大きかった。
【0005】
なお上述の環境下において、仮に特許文献1のようなホッパーを単純に適応した場合、且つ揺動の動力を動物から人工的なものに変更したとしても、上記餌が途絶える現象もしくは、餌の流量が激減する現象は改善することができない。それは、ホッパー内で満たされる餌の集合体が以下のような状況によって詰まるためである。その詰まる現象とは、ホッパー内に満たされた餌の粒体同士の結合ならびに粘性とによって餌のみの固まりがアーチ状に自然と集まり、次第に見事な閉塞構造が生じる、この現象によってホッパー内の餌の通過が途絶えることになる。この問題の解決のため、従来においては餌の流量が減少した場合、その閉塞構造を人手によって強制的に壊して流すことが行われていた。さらに、上述のホッパーにおける閉塞構造の生成のみならず、餌ダクト内においても同様に閉塞構造が形成されるため、同様にその閉塞構造を人手で強制的に壊して流すことが行われていた。従って、既存の考えで上記の問題を解決するには至らないものであった。また、滞った餌は品質が低下する問題も同時に生じていた。本発明は、これら問題点を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明の多段ケージシステムにおける餌供給装置は、多段ケージシステムの飼養鶏前に設けられる餌樋に餌を供給するために、該餌樋に対応させた、高さの異なる複数のホッパーと、該複数のホッパーに対して同時に餌を供給するように構成された縦方向に延びる餌ダクトと、該ホッパーの出口下方に設けられる餌樋と、該餌樋内に構成され、餌樋に落ちてきた餌を餌樋の長手方向に移送する餌搬送装置とからなる、多段式ケージシステムの給餌装置において、上記餌搬送装置の移送する動作から得られた力によってホーパー内に設けられた振動装置を加振させることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、該ホッパー内に設けられた振動装置が上記餌ダクトに向かって延びる延長振動板を備えた、請求項1に記載の多段ケージシステムにおける餌供給装置。
【0008】
請求項3に記載の発明は、該ホッパー内に設けられた振動装置がホッパー出口付近に設けられ、且つ、該出口を塞ぐように設置したことにより、該振動装置が非振動時において、該ホッパーから自然落下する餌に対して落下の抑制作用を持たせたことを特徴とする、請求項1乃至2に記載の多段ケージシステムにおける餌供給装置。
【発明の効果】
【0009】
請求項1で定義された発明の効果は次のとおりである。
上記振動装置は餌搬送装置の移送動作が行われているときに専ら振動が発生する仕組みになっている。従って、餌搬送装置の移送動作が行われていないときに必要以上の給餌動作が行われることがない。
一方、従来の振動装置無しの状態で長期間にわたって餌の目詰まりなしに餌供給を行わせること及び、餌搬送装置が停止時において餌を自然下落させることを極力抑えたいという双方の条件を満たすことは困難であった。ただし、ホッパーと餌ダクトの何れも何らかの動力を用いて連続攪拌をしつづけるような通路を形成すれば、上記の詰まる現象は抑えられることが期待できるが、コスト高になるうえに、餌搬送装置の移送動作が行われていないときにも餌樋に餌が流れる問題が新たに発生する。また、この餌の流れの量が多すぎると、餌搬送装置を再度動作させるタイミングで餌樋から餌が周囲に落下する問題もさらに発生する。また、搬送装置が停止している場所餌樋内の餌の量が極端に多くなるという問題が発生する。請求項1の発明は、以上の相反する問題を同時に解決するものである。即ち、餌搬送装置が停止している状態において餌が自然に落下しない(若しくはわずかにしか落下しない)程度のホッパー形状をもたせたとしても、餌搬送装置が作動して、上記振動装置が振動を開始すると、その振動によって、ホッパーの出口から自然落下以上の流量をもたらすことが可能であり、その流量が本来必要としている餌供給量に相当する程度とすれば、理想的な餌供給をもたらすことが可能となる。
【0010】
請求項2で定義した発明の効果は次のとおりである。
ホッパー内における餌の流れは、上述の通り振動装置によって、その振動装置を備えない場合よりも改善される。しかしながら如何にホッパー内の餌の流が良くとも、そのホッパーの上部開口よりも通常狭い通路で形成された餌ダクトにおいて、餌の流が悪化している可能性がある。この発明は、上記餌ダクトに届くような長い延長振動板を、上記振動装置が備えるように構成したことで、ホッパーは通常に流れているにもかかわらず、餌ダクトで餌詰まりをおこして、その結果として餌が予定通り供給されない状態を回避することが可能となる。
【0011】
請求項3で定義した発明の効果は次のとおりである。 請求項1の効果でも説明した通り、餌搬送装置が停止している状態において餌が自然に落下しない(若しくはわずかにしか落下しない)程度のホッパー形状をもたせたとしても、餌搬送装置が作動して、上記振動装置が振動を開始すると、その振動によって、ホッパーの出口から自然落下以上の流量をもたらすことが可能であるが、上記振動装置自体が、ホッパーの出口周辺を部分的に塞ぐように構成することで、振動装置が停止している場合には、ホッパーから出力される餌が出難くすることによって、ホッパーの出口周辺や餌ダクトの内径を大きくすることが可能であり、振動装置が作動している際に出る餌の出力量と振動装置が作動停止している時の自然落下流量との差を大きく、且つ明確にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面参照して説明する。図1は多段ケージシステムにおいて、本発明の餌供給装置が設置されている様子を示す斜視図である。
同図において、1は多段ケージシステムであり飼養鶏は点線で示したケージ内に収容される。同システムにおいて、収容された飼養鶏は目前の餌樋2内を通過する餌を求めることができるように構成される。
餌樋2は各段のケージ毎に設けられる。図1の例では、4段の餌樋2が装備される。この餌樋2内には餌搬送装置の一部を構成するチェーン3aが設けられる。この餌搬送装置の一例としてチェーンフィーダ装置が挙げられる。そして上記餌樋2ならびにチェーン3aは、図1においては一部を表しているが、実際には、図2で示したように、は餌樋2ならびにチェーン3aはループ状を成し、該ループ内には2列の多段ケージシステムが取り囲むように設置される。また、各コーナには、プーリなどによって安定的に上記チェーン3aを直角方向に方向転換可能とするコーナ機構3bが設けられ、そうすることで、上記チェーン3aはループを形成可能としている。さらに、これらチェーン3aで運ばれる餌は、図2中における長手方向中央に運ばれ、その場所で飼養鶏は餌を食べることができる。その給餌場所は、スペースS1で示した。さらに、飼養鶏が顔を出さない箇所、すなわち、上記スペースS1よりも左右外側における端部スペースS2には駆動モータ3cが設置される。さらに、この駆動モータとは異なる対向側における端部スペースS3にはホッパー4とそのホッパーに餌を供給する餌ダクト5が固定設置されている。なお、図2において描いた各構成部品の大きさ(比率)ならびに段数(個数)は、実際の設置状況または要望に応じて異なるものである。
【0013】
上記ホッパー4および餌ダクト5の詳細について図3乃至図6を参照して説明する。図3は、図1に示した指示線k−k‘の部分拡大図斜視図、また、図4は餌樋2の方向に沿って断面とした部分断面説明図、さらに、図5は図3の部分拡大斜視図に対して、内部構造が見えるように、部分的に断面とした説明図、図6は図5の角度違いの説明図である。
これら図面において、ホッパー4ならびに餌ダクト5は、図示していない構造体によって固定されている。また、ホーパー4内の下方出口付近には、餌搬送装置の移送する動作から得られた力をホッパー内へ導く装置は本実施例においては、餌搬送用のチェーン3aと該チェーン3aの動きと連動する回転円盤6a、さらに該回転円盤6aの中心6bから外れた位置に設けられた突起物6cとから成る。同図において、該回転円盤6aは、餌搬送装置のチェーン3aの動きに応じて、時計回りに回転する。なお、この餌搬送装置の移送する動作から得られた力をホッパー内へ導く装置は、ホッパー4内の出口付近に滞る餌を落下させることにも同時に役立つものである。
【0014】
上記突起物6cは該回転円盤6aの回転にともなって時計回りに回転し、同図上における上方において、振動装置6の一部品である、板バネ部材6dの一方端部に当たる。この板バネ部材6dの他方端部は、ホッパー4に対してボルト6eによって螺旋留めされる。従って、一方端部に突起物6cが当たると、一時的にボルト6eを支点として、板バネ部材6dは上方へ偏倚される(図7を参照)突起物6cが通過するとともに、もとの位置へ戻る(図6を参照)。そうすることで、板バネ部材6dは図上において上下に振動をする。
板バネ部材6dの振動にともなって、その板バネ部材6d周辺の餌が積極的に振動を受け、その結果、板バネ部材6d周辺の餌は滞ることなく下落する。
さらに、同実施例においては、板バネ部材6dの一方端部側には取付け部6fが設けられ、ここには、板バネ部材6dを更に上方に延長させる、延長振動板6gがボルト締めされる。この延長振動板6gは、ホッパー4に餌が供給される餌ダクト5の受け渡し位置まで延びる。この受け渡し位置は、ホッパー4の上方開口部よりも細いために、餌が滞る傾向があるが、この延長振動板6gをその受け渡し位置まで延長させると、板バネ部材6dが振動すると、その振動は取付け部6fを介して、延長振動板6gも振動する。その結果として、ホッパー4のみならず餌ダクト5の上記受け渡し位置における餌の滞りを解消する。
上記全図面に加えて追加した図8を参照すると、板バネ部材6dは設置された状態において、餌が出口方向に抜ける際に面部分6hを備えている。この面部分6hは、板バネ部材が停止している時は餌の流れを停止する方向に働く。一方、この面部分6hは振動して、周囲の餌に対してその振動を伝達させる面でもある。その結果として、振動をしていない状態において、ホッパー4の餌を出口方向に通過することを阻止するように作用し、一方、振動を始めると、その面部分が存在することによって、出口付近の餌に対して大きな影響をもって振動させることができ、従って、多くの餌がホッパー4の出口から流出するように作用する。このような作用によって、餌搬送装置が停止すると、ホッパー4からの餌の落下は、この板バネ部材6dが無いときよりも、比較的少なくなる。従って、一定位置に餌が多く溜まることを防止できる。その一方、餌搬送装置が動作した場合、すなわち、チェーン3aが移動し始めると、該ホッパー4からの餌は積極的に落下し、且つ、連続使用した場合でも、板バネ部材6dならびに延長振動板6gの振動によって、ホッパー内ならびに餌ダクト内の餌が振動をして、滞りを解消することができるために、連続的に、安定した餌が餌樋に流すことができるようになる。
【0015】
以上で示した餌搬送装置は、チェーンを利用したものであるがそれに限定するものではない。例えばチェーンの代りに網状の可撓性物体を回転させるようにすることが可能である。一方、上記実施例では、餌搬送装置の移送する動作が、一旦から得られた力によってホーパー内に設けられた振動装置を加振させる回転円盤を介して、その回転円盤の一部に設けた突起が、回転円盤が1回転する毎に1回板バネ部材を加振させているが、必ずしもこの構造にする必要はなく、板バネ部材に延長部材が上方に向かって延長させているように、ホッパーの出口方向に向かって延長させて、チェーンの凹凸に当たるところまで延長させることによって、チェーンの凹凸がホッパー出口周辺を通過するたびに板バネ部材に対して加振をさせるように構成することも可能である。この場合には、板バネ部材の加振は連続的となる。また、回転円盤に設ける突起物の数を変化させることによっても、加振の頻度は調節が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は多段ケージシステムにおいて、本発明の餌供給装置が設置されている様子を示す斜視図である。
【図2】図2は餌樋ならびにチェーンがループ状を形成した様子を示す斜視図である。
【図3】図3は、図1に示した指示線k−k‘の部分拡大図斜視図。
【図4】図4は図3における餌樋2の方向に沿って断面とした部分断面説明図。
【図5】図5は図3の部分拡大斜視図に対して、内部構造が見えるように、部分的に断面とした説明図。
【図6】図6は、図4で示した説明図におけるホッパー4の手前側半分と、餌樋2の手前側の半分を削除して、内部構造をさらに見える状態に変形した説明用断面斜視図である。
【図7】図7は、図6における回転円盤6aを時計回りに回した状態を示す説明用断面斜視図である。
【図8】図8は、餌ダクトを取り去った状態において、ホッパーの中が良く見える上側から観察した状態を示し板バネ部材がホッパー出口周辺の一部を占有している状態が見られるようにした説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1:多段ケージシステム
2:餌樋
3a:チェーン
3b:コーナ機構
3c:駆動モータ
4:ホッパー
5:餌ダクト
6:振動装置
6a:回転円盤
6b:中心(回転軸)
6c:突起物
6d:板バネ部材
6g:延長振動板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段ケージシステムの飼養鶏前に設けられる餌樋に餌を供給するために、該餌樋に対応させた、高さの異なる複数のホッパーと、該複数のホッパーに対して同時に餌を供給するように構成された縦方向に延びる餌ダクトと、該ホッパーの出口下方に設けられる餌樋と、該餌樋内に構成され、餌樋に落ちてきた餌を餌樋の長手方向に移送する餌搬送装置とからなる、多段式ケージシステムの給餌装置において、上記餌搬送装置の移送する動作から得られた力によってホーパー内に設けられた振動装置を加振させることを特徴とする多段ケージシステムにおける餌供給装置。
【請求項2】
該ホッパー内に設けられた振動装置が上記餌ダクトに向かって延びる延長振動板を備えた、請求項1に記載の多段ケージシステムにおける餌供給装置。
【請求項3】
該ホッパー内に設けられた振動装置がホッパー出口付近に設けられ、且つ、該出口を塞ぐように設置したことにより、該振動装置が非振動時において、該ホッパーから自然落下する餌に対して落下の抑制作用を持たせたことを特徴とする、請求項1乃至2に記載の多段ケージシステムにおける餌供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−125419(P2008−125419A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313215(P2006−313215)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(390030661)株式会社ハイテム (22)
【Fターム(参考)】