説明

多段式の棚装置

【課題】キッチン吊戸棚の下部空間に小物部材を収める収納スペースと仮置きスペースを新たに確保することができ、使用しないときは小物部材を隠蔽状に収納することで、キッチンのイメージと衛生面を向上させることができる多段式の棚装置を提供する。
【解決手段】キッチン吊戸棚5の下部に固定する収納ケース7と、上段棚部材8及び下段棚部材9とからなり、前記収納ケース7に上段棚部材8を、上部平行リンク10で水平回動できるように取付け、前記上段棚部材8に下段棚部材9を水平回動できるように下部平行リンク11を用いて取付け、前記上段棚部材8と下段棚部材9が同調して水平回動するように上部平行リンク10と下部平行リンク11を歯車20で連動している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キッチン吊戸棚の下部空間を有効に利用し、流し台等の上部に調理や料理等に関与する小物部材の収納スペースと仮置スペースを同時に確保することができるようにした多段式の棚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、キッチン吊戸棚は、システムキッチンの上部壁面等に固定配置され、その内部に比較的大きな調理器具等を収納するものである。
【0003】
調理の準備や料理を盛り付ける場合、各種調理器具と共に調味料等が必要であり、また、出来上がった料理は皿等の器に盛り付けることになるため、システムキッチンの調理台の上や流し台の周辺にこれら調理器具や調味料、器等(以下小物部材という)を置くためのスペースを確保しなければならない。
【0004】
従来、小物部材を置くためのスペースの確保は、システムキッチンの調理台や流し台のワークトップの上面を単に利用する以外に、キッチン吊戸棚の下面に別の棚を吊り下げたり、下面から出し入れできる収納台を上下動可能に設けたキッチン吊戸棚を用いる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−103953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、システムキッチンに関しては狭くて片付かないという悩みがあり、特に、調理台、流し台の上や別に吊り下げた棚に小物部材を常時並べて載置した状態は、見た目に雑然となって不体裁でキッチンのイメージを低下させるだけでなく、小物部材が埃をかぶることになり、衛生的にも好ましくない。
【0006】
また、料理を盛り付ける小物部材をシステムキッチンの上に並べて仮置きすれば、システムキッチン上のスペースが取られ、その後の作業に支障をきたすことになる。
【0007】
更に、キッチン吊戸棚に下面から出し入れできる収納台を設けた構造では、単にキッチン吊戸棚の収納スペースを必要時に下に移動させるだけのことになり、新たな収納スペースの確保にならないという問題がある。
【0008】
そこで、この発明の課題は、キッチン吊戸棚の下部空間に着目し、この空間に小物部材を収める収納スペースと仮置きスペースを新たに確保することができると共に、使用しないときは小物部材を隠蔽状に収納することで、キッチンのイメージと衛生面を向上させることができ、しかも、調理台上の作業スペースを有効に使用することができる多段式の棚装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明は、下面が開放する収納ケースと、この収納ケースの内部に納まる大きさに形成された上段棚部材と、前記収納ケースの下面開口を閉鎖することができるように形成された下段棚部材とからなり、前記収納ケースに上段棚部材を、上部平行リンクでこの収納ケース内に収まる状態から収納ケースの下部に位置する間を水平回動できるように取付け、前記上段棚部材に下段棚部材を、上段棚部材の下部で水平回動できるように下部平行リンクを用いて取付け、前記上段棚部材と下段棚部材が同調して水平回動するように上部平行リンクと下部平行リンクを連動した構成を採用したものである。
【0010】
上記収納ケースと上部平行リンクの間に、上段棚部材と下段棚部材の水平回動時の押し上げ操作力を軽減する吊り合い部材を設けた構造とすることができる。
【0011】
ここで、上記収納ケースは、下面が開放する横長に形成され、キッチン吊り戸棚の下部に取付けられ、上記上段棚部材は、水平の底板と垂直の背板からなる断面L形で両端に側板を有し、収納ケース内に納まる長さと高さになっており、上記下段棚部材は、収納ケースの下面開口を閉鎖することのできる平面的な大きさに形成されている。
【0012】
上記上部平行リンクは、二本のリンクの一端を収納ケースの側面で後部上方の位置に枢止して前後方向に揺動自在となり、この上部平行リンクの他端に上段棚部材の側板を枢止し、上段棚部材は上部平行リンクの作用により、水平姿勢のままで上下に回動自在となる。
【0013】
上段棚部材は、上昇位置にあるとき、収納ケース内の前半部に収まり、この上段棚部材上に載置した小物部材を外部から見えないように隠蔽状に収納し、また、下降位置にあるときは、収納ケースの下部で後方に位置し、小物部材の出し入れが行えることになる。
【0014】
上記下部平行リンクは、二本のリンクの一端を上段棚部材の側板に枢止して前後方向に揺動自在となり、この下部平行リンクの他端に下段棚部材のブラケットを枢止し、下段棚部材は下部平行リンクの作用により、水平姿勢のままで上下に回動自在となる。
【0015】
下段棚部材は、上昇位置にあるとき、収納ケース内の下面開口を閉鎖し、また、下降位置にあるときは、上段棚部材の下部に位置し、小物部材の仮置きが行えることになる。
【0016】
上記上部平行リンクと下部平行リンクは、後方に位置するリンクにおいて、上段棚部材の側板に枢止した端部に、互いに噛み合う歯車を設け、後方に位置する上下のリンクを互いに屈伸動するよう連動している。
【0017】
このような上下のリンクの連動により、上昇位置にある下段棚部材を引き下げると、上下のリンクは伸長動し、収納ケースに対して上段棚部材が回動して下降し、上段棚部材に対して下段棚部材が回動しながら下降し、また、下降位置にある下段棚部材を押し上げると、上下のリンクは屈曲動し、収納ケースに対して上段棚部材が回動して上昇し、上段棚部材に対して下段棚部材が回動しながら上昇することになり、上段棚部材と下段棚部材は何れの場合も水平姿勢のままで昇降することになる。
【0018】
上記吊り合い部材は、ガススプリングを用い、収納ケース内の前部に一端を取付けたガススプリングの他端を、上部平行リンクの前部リンクの一端に設けた屈曲片に枢止連結し、下段棚部材の押し上げ時にガススプリングの伸長で上部平行リンクに上方への回動力を付与することで、下段棚部材の押し上げ力を軽くなるようにしている。
【発明の効果】
【0019】
この発明によると、収納ケースの下部に上段棚部材と下段棚部材を、平行リンクでこの収納ケース内に収まる状態から収納ケースの下部に位置する間を水平回動できるように取付けたので、調理台の上部壁面等に固定配置されたキッチン吊戸棚の下部空間を有効に利用して、小物部材を収める収納スペースと仮置きスペースを新たに確保することができ、使用しないときは上段棚部材で小物部材を隠蔽状に収納し、下段棚部材で収納ケースの下面開口を閉鎖することで、キッチンの狭い、片付かないというイメージを払拭でき、キッチンの美観向上を図ることができる。
【0020】
また、上段棚部材で小物部材を隠蔽状に収納することで、小物部材に対する衛生面を向上させることができ、かつ、下段棚部材によって調理の準備や料理の盛り付けのための仮置きスペースを確保することで、調理台等のワークトップ上を広く使えるようになり、作業効率を向上させることができる。
【0021】
更に、上段棚部材が水平状態で昇降することで、載置した小物部材から調味料等の液体や粉体がこぼれることがなく、また、キッチン吊戸棚の下部空間に位置する上段棚部材と下段棚部材は目線の高さになり、小物部材や仮置き物の出し入れ作業が円滑に行えることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態を図示例に基づいて説明する。
【0023】
図3と図4のように、システムキッチン1は、シンクを備えた流し台2と調理台3、コンロ台4等が並べて設けられ、このシステムキッチン1の後部壁面で上方位置にキッチン吊り戸棚5が配置され、この発明の多段式の棚装置6は、例えば、流し台2の上方に位置するキッチン吊り戸棚5の下部に取付けられる。
【0024】
多段式の棚装置6は、図1乃至図3のように、キッチン吊り戸棚5の下部に固定される下面が開放する収納ケース7と、この収納ケース7の内部に納まる大きさに形成された上段棚部材8と、前記収納ケース7の下面開口を閉鎖することができるように形成された下段棚部材9とを備えている。
【0025】
上記収納ケース7に対して上段棚部材8は、両側の端部に設けた上部平行リンク10で、この収納ケース7内に収まる状態から収納ケース7の下部に位置する間を水平回動できるように取付け、前記上段棚部材8に対して下段棚部材9は、上段棚部材8の下部で水平回動できるように、両側の端部に設けた下部平行リンク11を用いて取付け、前記上段棚部材8と下段棚部材9が同調して水平回動するように、上部平行リンク10と下部平行リンク11を連動し、上記収納ケース7と上部平行リンク10の間に、上段棚部材8と下段棚部材9の水平回動時の押し上げ操作力を軽減する吊り合い部材12が設けられている。
【0026】
上記収納ケース7は、下面が開放する横長の箱状に形成され、キッチン吊り戸棚5の下部に設けた周枠13の内部に上半部分を嵌め込んだ状態で固定され、この収納ケース7の前部は半透明のような照明灯の収納部14になっている。
【0027】
上記上段棚部材8は、水平の底板8aと垂直の背板8bからなる断面L形で両端に側板8cを有し、収納ケース7内に納まる長さと高さになっており、また、上記下段棚部材9は、収納ケース7の下面開口を閉鎖することのできるフラットな水平板9aの後部両端に上向きのブラケット9bを備え、水平板9aの前縁に昇降操作用の手掛かり把手15を設けて形成されている。
【0028】
上記上部平行リンク10は、間隔をおいて平行する略等しい長さを有する二本のリンク10a、10bの一端(上端)を、水平状態で互いに干渉しないように、上下に少し段差を設けて収納ケース7の側壁で後部上方の位置にピン16、16で枢止し、このピン16、16を支点に前後方向に揺動自在となっている。
【0029】
この上部平行リンク10の他端(下端)に上段棚部材8の側板8cをピン17、17で枢止し、上段棚部材8は上部平行リンク10の作用により、水平姿勢のままで上下に回動自在となり、上昇位置では収納ケース7内の前半部分に全体が納まり、下降位置では、収納ケース7の下部で後方に位置し、小物部材aの出し入れが行えることになる。
【0030】
上記下部平行リンク11は、間隔をおいて平行する略等しい長さを有する二本のリンク11aと11bの一端(上端)を、水平状態で互いに干渉しないように、上下に少し段差を設けて上段棚部材8の側板8cに、前後方向に揺動自在となるようピン18、18で枢止し、この下部平行リンク11の他端(下端)に下段棚部材9のブラケット9bをピン19、19で枢止し、下段棚部材9は下部平行リンク11の作用により、水平姿勢のままで上下に回動するようになっている。
【0031】
下段棚部材9は、上昇位置にあるとき、収納ケース7の下部に重なって収納ケース7内の下面開口を閉鎖し、また、下降位置にあるときは、上段棚部材8の下部に間隔をおいて、下部平行リンク11で吊り下げられて水平状態で位置し、小物部材aの仮置きが行えることになる。なお、収納ケース7の下面開口を閉鎖した下段棚部材9の上昇位置は、図示省略したが、マグネットキャッチ等を用いて保持するようにすればよい。
【0032】
上記上部平行リンク10と下部平行リンク11は、後方に位置するリンク10bと11bにおいて、上段棚部材8の側板8cにピン17、18で枢止した端部に、回転方向に対して互いに噛み合う歯車20、20を設け、後方に位置する上下のリンク10bと11bを互いに屈伸動するよう連動している。
【0033】
このような上下のリンク10bと11bの連動により、上段棚部材8と下段棚部材9の上下動は連動することになり、上昇位置にある下段棚部材9を引き下げると、上下のリンク10bと11bは伸長動し、収納ケース7に対して上段棚部材8が回動して下降し、上段棚部材8に対して下段棚部材9が回動しながら下降する。
【0034】
また、下降位置にある下段棚部材9を押し上げると、上下のリンク10bと11bは屈曲動し、収納ケース7に対して上段棚部材8が回動して上昇し、上段棚部材8に対して下段棚部材9が回動しながら上昇することになり、上段棚部材8と下段棚部材9は何れの場合も水平姿勢のままで昇降することになる。
【0035】
上記吊り合い部材12は、上段棚部材8と下段棚部材9の重量に見合う程度の圧力を有するガススプリングを用い、収納ケース7内の前部にピン21でシリンダの一端を取付け、ピストンロッドの先端を、上部平行リンク10の前部リンク10aの一端に設けた屈曲片22にピン23で枢止連結し、下段棚部材9の押し上げ時にガススプリングが伸長し、上部平行リンク10に上方への回動力を付与することで、下段棚部材9の押し上げ力を軽くなるようにしている。
【0036】
この発明の多段式の棚装置6は、上記のような構成であり、流し台2の上方に位置するキッチン吊り戸棚5の下部に収納ケース7を取付け、使用しない時は、図2のように、この収納ケース7の内部に上段棚部材8を収納して下段棚部材9で下面開口を閉鎖し、上部平行リンク10と下部平行リンク11、吊り合い部材12は略水平状態で、収納ケース7の内部両端に収まっている。ちなみに、多段式の棚装置6は、下段棚部材9で下面開口を閉鎖した状態で、収納ケース7の上面から下段棚部材9の下面までの上下寸法は、150mm前後の寸法に設定されている。
【0037】
このとき、上段棚部材8上に載置した小物部材aは、収納ケース7の内部に外部から隠蔽状に収納されることで、小物部材aに対する衛生面を向上させることができる。
【0038】
調理や料理の時に多段式の棚装置6を使用するときは、下段棚部材9の前縁に設けた把手15でこの下段棚部材9を引き下げると、上段棚部材8と下段棚部材9は上下の平行リンク10、11の作用で水平状態のまま同時に回動下降する。
【0039】
具体的には、下段棚部材9を引き下げると、下部平行リンク11が上段棚部材8への枢止点を支点に前方へ回動することで下段棚部材9は水平に下降し、下部平行リンク11のリンク11bと一対の歯車20、20で連動した上部平行リンク10のリンク10bが収納ケース7への枢止点を支点に後方下向きに回動することになり、これによって上段棚部材8は水平に下降する。
【0040】
従って、下段棚部材9を下降限位置にまで引き下げると、図1と図3のように、収納ケース7の下に上段棚部材8とこの上段棚部材8の下部に下段棚部材9が引き出され、図3(b)のごとく、上段棚部材8と下段棚部材9は調理者の略目線の高さ位置となり、上段棚部材8に対する小物部材aの出し入れが円滑に行える。
【0041】
また、下段棚部材9は、調理に使う小物部材aや器等を仮置きすることで、調理の準備や料理の盛り付けのためのスペースを確保することができ、調理台3のワークトップ上にこれらを置く必要がなくなり、図4の上半に示すように、調理台3のワークトップ上に小物部材aを載置した場合に比べ、図4の下半に示すように、上段棚部材8と下段棚部材9に小物部材aを収納すれば、調理台3のワークトップが広々と使えることで小間口のシステムキッチン1でも作業効率がアップする。
【0042】
上段棚部材8と下段棚部材9を収納ケース7に格納するときは、下段棚部材9から仮置きした載置物を取り除き、この下段棚部材9を押し上げるようにすればよく、上下の平行リンク10と11が引き下げ時と逆動作をすることで、上段棚部材8と下段棚部材9は水平姿勢の状態で接近しながら上昇し、上段棚部材8は収納ケース7内に収まり、下段棚部材9が収納ケース7の下面開口を閉鎖した状態に戻ることになる。
【0043】
上記のように、上段棚部材8は上部平行リンク10の作用で水平状態のまま昇降するので、こぼれる危惧のある液体調味料等の収納も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明に係る多段式の棚装置の上段棚部材と下段棚部材を引き下げた状態を示す縦断側面図
【図2】この発明に係る多段式の棚装置の上段棚部材と下段棚部材を格納した状態を示す縦断側面図
【図3】(a)はこの発明に係る多段式の棚装置の上段棚部材と下段棚部材を引き下げた状態を示す斜視図、(b)は同側面図
【図4】調理台のワークトップにおける作業面積の対比をするための図面であり、上半部はシステムキッチンの調理台上に小物部材を載置した状態の平面図、下半部はこの発明に係る多段式の棚装置を用いて小物部材を収納したシステムキッチンの平面図
【符号の説明】
【0045】
1 システムキッチン
2 流し台
3 調理台
4 コンロ台
5 キッチン吊り戸棚
6 多段式の棚装置
7 収納ケース
8 上段棚部材
9 下段棚部材
10 上部平行リンク
11 下部平行リンク
12 吊り合い部材
13 周枠
14 照明灯の収納部
15 把手
16 ピン
17 ピン
18 ピン
19 ピン
20 歯車
21 ピン
22 屈曲片
23 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面が開放する収納ケースと、この収納ケースの内部に納まる大きさに形成された上段棚部材と、前記収納ケースの下面開口を閉鎖することができるように形成された下段棚部材とからなり、前記収納ケースに上段棚部材を、上部平行リンクでこの収納ケース内に収まる状態から収納ケースの下部に位置する間を水平回動できるように取付け、前記上段棚部材に下段棚部材を、上段棚部材の下部で水平回動できるように下部平行リンクを用いて取付け、前記上段棚部材と下段棚部材が同調して水平回動するように上部平行リンクと下部平行リンクを連動した多段式の棚装置。
【請求項2】
上記収納ケースと上部平行リンクの間に、上段棚部材と下段棚部材の水平回動時の押し上げ操作力を軽減する吊り合い部材を設けた請求項1に記載の多段式の棚装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−110153(P2008−110153A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296133(P2006−296133)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(398012395)株式会社ミカド (5)
【Fターム(参考)】