説明

多段式コンパクト容器

【課題】中蓋を外蓋と一括して蝶番ピンで容器本体に回動自在に取り付けた場合に、外蓋と中蓋が一緒に共回りすることを防止可能で、外蓋を開いてからその後で中蓋を開くという開放順序を適切に確保でき、この共回りの防止作用により、フリーストップ機能を付与することが可能な多段式コンパクト容器を提供する。
【解決手段】容器本体2とこれを開閉する外蓋3との間に、容器本体から外蓋にわたって挿通される蝶番ピンにより当該外蓋と一括して、容器本体に対し回動自在に中蓋5を取り付けた多段式コンパクト容器1において、容器本体と中蓋との間に、中蓋が外蓋とともに共回りすることを規制するリブ19を設けるとともに、外蓋および中蓋を任意の回動位置で停止可能とするために、蝶番ピンの挿通嵌合度合いを、容器本体よりもこれら中蓋および外蓋に対して強く設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中蓋を外蓋と一括して蝶番ピンで容器本体に回動自在に取り付けた場合に、外蓋と中蓋が一緒に共回りしてしまうことを防止することが可能で、外蓋を開いてからその後で中蓋を開くという開放順序を適切に確保することができるとともに、この共回りの防止作用により、外蓋に適切にフリーストップ機能を付与でき、さらには中蓋にも、外蓋とは別個の独立したフリーストップ機能を付与することが可能な多段式コンパクト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体とこれを開閉する外蓋との間に、中蓋や中皿、中枠を備えた多段式のコンパクト容器が知られている(特許文献1〜3参照)。この種のコンパクト容器では、容器本体の左右一対のヒンジ部と外蓋のヒンジブロックとの間に、中蓋等の一対のヒンジ片を、ヒンジブロックを挟むように配置し、ヒンジ部の挿通孔からヒンジ片の貫通孔を介してヒンジブロックの装着孔にまでわたって一連に蝶番ピンを挿通することで、容器本体に対し中蓋等および外蓋を一括して回動自在に取り付けるようにしている。
【特許文献1】特開平10−37774号公報
【特許文献2】特開平10−72411号公報
【特許文献3】特開平10−72412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このような多段式コンパクト容器にあっては、容器本体を開放するために外蓋を回動させると、ヒンジブロックの装着孔による蝶番ピンの引きずり作用によって、ヒンジ部の挿通孔内で蝶番ピンが回転してしまう場合があり、この際さらに、蝶番ピンとヒンジ片の貫通孔との摺接作用により、当該蝶番ピンの回転で中蓋等も回動してしまうという課題があった。特に、外蓋を任意の回動位置で停止可能とするフリーストップ作用が得られるように、容器本体よりも外蓋に対して蝶番ピンの挿通嵌合度合いを強く設定すると、このような不都合が生じる場合が多かった。外蓋と中蓋等との間に、パフを収納したり、化粧料収納部を配置した場合などには、外蓋を開いてからその後で中蓋を開く必要があるが、外蓋と中蓋が一緒に共回りしてしまうと、中蓋を一旦戻す操作をしてからパフを取り出したり化粧操作をする必要があり、良好な使い勝手を確保することができなかった。
【0004】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、中蓋を外蓋と一括して蝶番ピンで容器本体に回動自在に取り付けた場合に、外蓋と中蓋が一緒に共回りしてしまうことを防止することが可能で、外蓋を開いてからその後で中蓋を開くという開放順序を適切に確保することができるとともに、この共回りの防止作用により、外蓋に適切にフリーストップ機能を付与でき、さらには中蓋にも、外蓋とは別個の独立したフリーストップ機能を付与することが可能な多段式コンパクト容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる多段式コンパクト容器は、容器本体とこれを開閉する外蓋との間に、該容器本体から該外蓋にわたって挿通される蝶番ピンにより当該外蓋と一括して、該容器本体に対し回動自在に中蓋を取り付けた多段式コンパクト容器において、上記容器本体と上記中蓋との間に、該中蓋が上記外蓋とともに共回りすることを規制する規制手段を設けるとともに、上記外蓋および上記中蓋を任意の回動位置で停止可能とするために、上記蝶番ピンの挿通嵌合度合いを、上記容器本体よりもこれら中蓋および外蓋に対して強く設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明にかかる多段式コンパクト容器にあっては、中蓋を外蓋と一括して蝶番ピンで容器本体に回動自在に取り付けた場合に、外蓋と中蓋が一緒に共回りしてしまうことを防止することができ、外蓋を開いてからその後で中蓋を開くという開放順序を適切に確保することができるとともに、この共回りの防止作用により、外蓋に適切にフリーストップ機能を付与でき、さらには中蓋にも、外蓋とは別個の独立したフリーストップ機能を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明にかかる多段式コンパクト容器の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態にかかる多段式コンパクト容器1は基本的には、図1〜図4に示すように、容器本体2とこれを開閉する外蓋3との間に、容器本体2から外蓋3にわたって挿通される蝶番ピン4により当該外蓋3と一括して、容器本体2に対し回動自在に中蓋5を取り付けた多段式コンパクト容器1において、容器本体2と中蓋5との間に、中蓋5が外蓋3とともに共回りすることを規制する規制手段6を設けるとともに、外蓋3および中蓋5を任意の回動位置で停止可能とするために、蝶番ピン4の挿通嵌合度合いを、容器本体2よりもこれら中蓋5および外蓋3に対して強く設定して構成される。
【0008】
容器本体2は合成樹脂により平面外形輪郭が矩形状に形成され、化粧料収納部7を有するとともに、前端の凹所8には係合突起9が形成され、後端にはその左右方向両端から後方へ突出させて一対のヒンジ部10が形成される。容器本体2を開閉する外蓋3は、合成樹脂製で容器本体2の平面外形輪郭に一致する平面外形輪郭で形成され、凹所8へ向かって垂下された前端のフック片11には、係合突起9と係脱自在に係合される係止突起12が形成され、後端にはその左右方向中央からヒンジ部10間に垂下させてヒンジブロック13が形成される。
【0009】
中蓋5も合成樹脂製で、容器本体2の平面外形輪郭に一致する平面外形輪郭で形成され、下面に鏡14が取り付けられるとともに、上面には外蓋3との間に収納されるパフ15を載置する受け皿面16が形成される。また中蓋5には、前端にフック片11が挿通される孔部17が形成されるとともに、後端には、その左右方向に間隔を隔ててかつヒンジ部10間に向かって垂下させて、左右一対のヒンジ片18が形成され、これらヒンジ片18はヒンジブロック13とその両側の各ヒンジ部10との間の隙間に挿入される。
【0010】
従って、容器本体2の後端には、ヒンジブロック13の左右に各ヒンジ片18が位置し、これらヒンジ片18の外側にそれぞれ各ヒンジ部10が位置されて、ヒンジ部10の側面とヒンジ片18の側面とが互いに向かい合うように配置される。そして、容器本体2の各ヒンジ部10それぞれから、中蓋5の各ヒンジ片18を貫通させて外蓋3のヒンジブロック13に向かって、左右一対の蝶番ピン4が挿通され、これら蝶番ピン4により、中蓋5は外蓋3と一括して、容器本体2に回動自在に取り付けられ、中蓋5は化粧料収納部7を開閉するようになっている。
【0011】
中蓋5が外蓋3とともに共回りすることを規制する規制手段6は、容器本体2のヒンジ部10と中蓋5のヒンジ片18との間に設けられる。本実施形態にあっては規制手段6は、左右のヒンジ部10にその側面から各ヒンジ片18の側面へ向かって一体的に突出形成され、これらヒンジ片18に摺接してその回動を制動する左右一対のブロック状のリブ19で構成されている。これらリブ19は、中蓋5の開き初めに各ヒンジ片18に摺接して当該中蓋5の回動を制動することができれば足り、従って、化粧料収納部7を閉じた状態のヒンジ片18に摺接されるように、その位置および寸法が設定される。図示例にあっては、各リブ19は、中蓋5の閉止状態から開き始めの回動期間に相当する位置に対応させて、容器本体2の後端上部位置から、ヒンジ片18の回動方向である後方へ向かって相当の長さでヒンジ部10に形成されている。本実施形態にあっては、リブ19を左右のヒンジ部10それぞれに設けて一対備えるようにしたが、いずれか一方のヒンジ部10に設ければよい。
【0012】
さらに、蝶番ピン4の挿通嵌合度合いは、外蓋3および中蓋5それぞれを個別に任意の回動位置で停止可能とするために、容器本体2のヒンジ部10よりもこれら中蓋5のヒンジ片18および外蓋3のヒンジブロック13に対して強く設定される。具体的には、これらヒンジ部10、ヒンジ片18およびヒンジブロック13に一連に形成される蝶番ピン挿通孔20の内径寸法を、ヒンジ部10よりもヒンジ片18およびヒンジブロック13で小さく形成すればよい。あるいは、蝶番ピン4の外径寸法を、ヒンジ部10よりもヒンジ片18およびヒンジブロック13に挿通される位置で大きく形成すればよい。
【0013】
これにより、蝶番ピン4は、外蓋3もしくは中蓋5が回動されると、ヒンジ部10では摺動回転する一方で、ヒンジ片18およびヒンジブロック13とは大きな摺動摩擦抵抗によって一緒に回転することが可能で、これによりフリーストップ作用を確保することができる。中蓋5と外蓋3との関係では、外蓋3の回動時には、蝶番ピン4はリブ19の制動作用で制止された中蓋5のヒンジ片18に対して摺動回転し、外蓋3のみがフリーストップ作用を受けつつ回動され、他方、中蓋5の回動時には、中蓋5および外蓋3はともにフリーストップ作用を受けつつ中蓋5の回動操作に従って回動され、外蓋3が容器本体2に対してほぼ180°で開き切るとその後は、蝶番ピン4は外蓋3のヒンジブロック13に対して摺動回転して、中蓋5のみがフリーストップ作用を受けつつ回動される。
【0014】
本実施形態にかかる多段式コンパクト容器1の作用について説明する。組み立てる際には、リブ19が形成された容器本体2のヒンジ部10間に中蓋5のヒンジ片18および外蓋5のヒンジブロック13を順次嵌め込み、容器本体2の左右から一対の蝶番ピン4を打ち込めばよい。容器本体2を開放するには、容器本体2の係合突起9から外蓋3の係止突起12を離脱させて、外蓋3を回動させていく。この外蓋3の回動操作に際しては、蝶番ピン4の挿通嵌合度合いを容器本体2よりも外蓋3に対して強く設定しているので、蝶番ピン4はヒンジ部10で摺動回転しつつ外蓋3のヒンジブロック13の回動と一緒に回転する。これにより、フリーストップ作用を効かせながら、外蓋3を開放することができる。またこの外蓋3の開放操作の際、中蓋5は、ヒンジ片18が容器本体2のリブ19による制動作用を受けてその回動が制止され、閉じた状態に維持される。
【0015】
次いで、外蓋3を開くことで露出された受け皿部16のパフ15を取り出した後、中蓋5を回動させて化粧料収納部7を開放する。中蓋5を回動操作していく際にも、蝶番ピン4の挿通嵌合度合いを容器本体2よりも中蓋5に対して強く設定しているので、蝶番ピン4はヒンジ部10で摺動回転しつつ中蓋5のヒンジ片18の回動と一緒に回転する。これにより、フリーストップ作用を効かせながら、中蓋5を開放することができる。中蓋5の回動操作中の外蓋3は、開き切るまで中蓋5とともに回動し、外蓋3がほぼ180°まで開き切った時点でその後中蓋5のみが回動されることになる。容器本体2を閉じるときには、中蓋5を閉じ、受け皿部16上にパフ15を載置した後、外蓋3を閉じることになる。この閉じ操作に際しては、180°で開き切った外蓋3はその重量により中蓋5とともに共回りすることが阻止されて、中蓋5のみを回動操作することができ、まず中蓋5を閉じ、その後外蓋3を閉じることができる。
【0016】
以上説明した本実施形態にかかる多段式コンパクト容器1にあっては、容器本体2のヒンジ部10と中蓋5のヒンジ片18との間に、中蓋5が外蓋3とともに共回りすることを規制するリブ19を設けたので、外蓋3を開いてからその後で中蓋5を開くという開放手順を適切に確保することができる。また、当該リブ19を設けるとともに、蝶番ピン4の挿通嵌合度合いを、容器本体2のヒンジ部10よりも中蓋5のヒンジ片18および外蓋3のヒンジブロック13に対して強く設定したので、外蓋3独自のフリーストップ作用を確保できるとともに、中蓋5にも独自のフリーストップ作用を確保することができ、これにより開放操作性を向上することができる。
【0017】
詳細に説明すると、中蓋の共回りは、外蓋を回動操作すると、蝶番ピンが外蓋と一緒に容器本体に対して回転してしまうことが原因であることから、これを阻止するには蝶番ピンを外蓋よりも容器本体に対し強い挿通嵌合度合いで挿通すればよいと考えられる。しかしながらこのようにすると、容器本体のヒンジ部に割れが生じやすくなってしまう。また、容器本体に対する挿通嵌合度合いを強く設定したくても、容器本体の平面外形輪郭が円形であるなどデザインの面から、蝶番ピンが挿通されるヒンジ部の寸法を長く設定することができず、このようにデザイン上強い挿通嵌合度合いを確保できない場合もある。
【0018】
このような事情から、外蓋の回動とともに回転する蝶番ピンによって中蓋も共に回動してしまう。そこで、中蓋の共回りを防ぐ観点から、中蓋のヒンジ片に対する蝶番ピンの挿通嵌合度合いを弱くすることも考えられるが、このようにすると中蓋のフリーストップ作用を確保できなくなってしまう。本実施形態にあっては、中蓋5の共回りを規制するリブ19を設けたので、蝶番ピン4による割れを防止しつつ、中蓋5に対する挿通嵌合度合いを強く設定することによる中蓋5のフリーストップ作用の確保と、中蓋5の共回り防止とを両立することができる。
【0019】
図5および図6には、上記実施形態の変形例が示されている。この変形例は、リブ19を、ヒンジ部10ではなく、当該ヒンジ部10の側面に面する中蓋5のヒンジ片18の側面に設けるようにしたこと以外は、上記実施形態と同様であり、このような変形例にあっても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、上記実施形態にあっては、リブ19をブロック状に形成したが、球面状に形成しても良い。さらに、上記実施形態にあっては、リブ19をヒンジ部10やヒンジ片18に一体的に形成する場合を例示して説明したが、別体の部品として取り付けるようにしても良く、この場合リブ19をゴムなどの弾性素材で形成するようにしても良い。また本実施形態にあっては、容器本体2等の平面外形輪郭が矩形状である場合を例示して説明したが、蝶番ピン4の容器本体2に対する挿通嵌合度合いを強く確保する必要がないので、円形状等、どのようなデザインであっても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかる多段式コンパクト容器の好適な一実施形態を示す外蓋および中蓋を開いた状態の要部斜視図である。
【図2】図1に示した多段式コンパクト容器の側断面図である。
【図3】図1の多段式コンパクト容器の外蓋のみを開いた状態を示す要部側断面図である。
【図4】図1の多段式コンパクト容器の中蓋を開いた状態を示す要部側断面図である。
【図5】本発明にかかる多段式コンパクト容器の変形例を示す外蓋のみを開いた状態の要部側断面図である。
【図6】図5の多段式コンパクト容器の中蓋を開いた状態を示す要部側断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 多段式コンパクト容器
2 容器本体
3 外蓋
4 蝶番ピン
5 中蓋
6 規制手段
19 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体とこれを開閉する外蓋との間に、該容器本体から該外蓋にわたって挿通される蝶番ピンにより当該外蓋と一括して、該容器本体に対し回動自在に中蓋を取り付けた多段式コンパクト容器において、
上記容器本体と上記中蓋との間に、該中蓋が上記外蓋とともに共回りすることを規制する規制手段を設けるとともに、上記外蓋および上記中蓋を任意の回動位置で停止可能とするために、上記蝶番ピンの挿通嵌合度合いを、上記容器本体よりもこれら中蓋および外蓋に対して強く設定したことを特徴とする多段式コンパクト容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−263187(P2006−263187A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86288(P2005−86288)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)