説明

多波長半導体レーザ装置

【課題】チップサイズが小さく、光学設計が容易で、且つ製造が容易な多波長半導体レーザ装置を提供する。
【解決手段】青紫レーザダイオード107を発光源として、波長変換素子109,111あるいは光励起レーザダイオードを通して3波長半導体レーザ装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、波長の異なる光を放射する複数のレーザダイオードを有する多波長半導体レーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CD、DVD、BD(Blu−ray Disc)などの光ディスクは、大容量の記録媒体として現在盛んに利用されている。これらの光ディスクの記録・再生に用いられるレーザダイオード(以下、LDという)の発振波長はそれぞれ異なり、CD用LDの発振波長は780nm帯(赤外)、DVD用LDの発振波長は650nm帯(赤色)、BD用LDの発振波長は405nm帯(青紫色)である。したがって、1つの光ディスク装置でCD、DVDおよびBDの情報を取り扱うためには、赤外、赤色、青紫色の3つの光源が必要となる。
【0003】
波長の異なるLDチップを横に並べて多波長半導体レーザ装置を構成する場合、特に赤色LDと赤外LDからなる2波長LDと青紫LDを横に並べて3波長半導体レーザ装置を構成する場合、2波長LDの2つのレーザの発光点間の距離に、機器上の制約があるためチップサイズが大きくなる。そのため、従来の多波長半導体レーザ装置として、ヒートシンク上に設置された青紫色LD上に赤色LDと赤外LDを接着して並置することにより、1つの光ディスク装置でCD、DVDおよびBDの情報を取り扱うことができるようにしたものがある(例えば、特許文献1 参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−59471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の多波長レーザ装置においては、赤外LDと赤色LDが青紫色LD上に接着して配置されているため、赤外LDおよび赤色LDが動作時に発する熱をヒートシンクに効率的に放熱することができないという問題があった。また、アセンブリプロセスが複雑になり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
この発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、チップサイズが小さく光学設計が容易で、且つ製造が容易な多波長半導体レーザ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る多波長半導体レーザ装置は、複数の導波路を有し、前記複数の導波路からそれぞれ第1の波長の光を出射する第1のレーザダイオードと、前記第1の波長の光のうちの少なくとも1つである第1の光の光軸上に配置され、前記第1の光を受光し、第2の波長の光を出射する第1の波長変換素子を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、チップサイズが小さく光学設計が容易で、且つ製造が容易な多波長半導体レーザ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施の形態に係る多波長半導体レーザ装置の構造を示す概略斜視図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係る多波長半導体レーザ装置の構造を示す概略上面図である。
【図3】この発明のもう一つの実施の形態に係る多波長半導体レーザ装置の構造を示す概略上面図である。
【図4】この発明のもう一つの実施の形態に係る多波長半導体レーザ装置の構造を示す概略上面図である。
【図5】この発明のもう一つの実施の形態に係る多波長半導体レーザ装置に搭載されるレーザダイオードの構造を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る多波長半導体レーザ装置の斜視図である。また、図2は本実施の形態1の多波長半導体レーザ装置の上面である。実施の形態における多波長半導体レーザ装置は、金属板材を円板状に成形したステム101と、ステム101の上面に載置されたブロック103と、ブロック103を構成する一平面に載置されたサブマウント105とを有する。サブマウント105上には、第1のLDとして青紫LD107と第1の波長変換素子109と第2の波長変換素子111が搭載される。青紫LD107は、窒化物系半導体のレーザアレイで、波長405nmの青紫レーザ光を複数本出射する。この波長405nmの青紫レーザ光の一部は第1の波長の光203として多波長半導体レーザ装置の外部へ出射される。第1の波変換素子109は青紫LD107から出射された波長405nmの青紫レーザ光の一つである第1の光205を受光し、第2の波長の光207として波長780nmのレーザ光を出射する。第2の波変換素子111は青紫LD107から出射された波長405nmの青紫レーザ光の一つである第2の光209を受光し、第3の波長の光211として波長650nmのレーザ光を出射する。絶縁体を介してステム101を貫通して設けられたリードピン113は、青紫LD107および第1の波長変換素子109および第2の波長変換素子111とボンディングワイヤ115を介して電気的に接続され、接地ピン201はステム101を貫通し、ステム101と電気的に接続されている。
【0011】
ブロック103は、銅合金等の熱伝導率の高い金属材料で形成されており、青紫LD107および第1の波長変換素子109および第2の波長変換素子111で発生した熱を効率よく放熱する。
【0012】
青紫LD107および第1の波長変換素子109および第2の波長変換素子111から放出されるレーザ光は、同一方向に放射されるように配置されている。なお、ブロック103、サブマウント105、青紫LD107および第1の波長変換素子109および第2の波長変換素子111の設置順は特に限定されない。
【0013】
リードピン111は、絶縁体を介してステム101を貫通しており、青紫LD107および第1の波長変換素子109および第2の波長変換素子111のp側電極(図示せず)とボンディングワイヤ115で電気的に接続される。
【0014】
接地ピン201はステム101と溶接で接合されており、青紫LD107および第1の波長変換素子109および第2の波長変換素子111の裏面に形成されたn側電極(図示せず)と、ステム101およびブロック103を介して接地ピン201とが電気的に接続されている。
【0015】
このように多波長半導体レーザ装置を構成することにより、サイズが小さい多波長半導体レーザ装置を得ることができる。
【0016】
さらに本実施の形態1では、ブロック上に青紫LD107と2つの波長変換素子を配置し、青紫LD107を光源とする波長変換によって多波長半導体レーザ装置を実現しているため、発光点間距離やモニタPDの配置などの自由度が大きく、光学設計を容易にすることができる。
【0017】
本実施の形態1によれば、多波長半導体レーザ装置を、ブロック上に青紫LD107と2つの波長変換素子を載置するように構成したので、レーザ動作時に発する熱をヒートシンクに効率的に放熱することができ、サイズが小さい多波長半導体レーザ装置を得ることができる。また、青紫LD107を光源とする波長変換で多波長半導体レーザ装置を実現しているので、光学設計を容易にすることができる。
【0018】
実施の形態2.
図3は本発明の他の実施の形態2の多波長半導体レーザ装置の上面である。本実施の形態2に係る多波長半導体レーザ装置は、ブロック上に第3の波長変換素子301が配置されている。第3の波長変換素子301は、第2の波長変換素子111から出射された第3の波長の光211を受光し、第4の波長の光を出射する。本実施の形態2では、第1のLD107として450nmの発振波長のレーザアレイを用いる。第1のLD107から出射された450nmの第2の光を第2の波長変換素子111で1080nmの波長へ変換し、第3の波長の光211としている。第3の波長変換素子301は、1080nmの第3の波長の光211を波長変換して緑色のレーザ光である540nmの第4の波長の光を出射する。本実施の形態2のその他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0019】
本実施の形態2によれば、第1のLD107から出射された450nmの第2の光を、第2の波長変換素子111と第3の波長変換素子301を用いて波長変換して緑色レーザ光を実現し、R/G/Bの3色の多波長半導体レーザ装置を容易に得ることができる。
【0020】
実施の形態3.
図4は本発明の他の実施の形態3の多波長半導体レーザ装置の上面である。本実施の形態3に係る多波長半導体レーザ装置は、第1のLDとして青紫LD107と第1の光励起LD401と第2の光励起LD403が搭載される。青紫LD107は、窒化物系半導体のレーザアレイで、波長405nmの青紫レーザ光を複数本出射する。第1の光励起LD401は青紫LD107から出射された波長405nmの青紫レーザ光の一つである第1の光205を受光し、第2の波長の光407として波長780nmのレーザ光を出射する。第2の光励起LD403は青紫LD107から出射された波長405nmの青紫レーザ光の一つである第2の光209を受光し、第3の波長の光409として波長650nmのレーザ光を出射する。
【0021】
また、本実施の形態3では、青紫LD107と第1の光励起LD401との間および青紫LD107と第2の光励起LD403との間にレンズ405が配置されている。このレンズによって、青紫LD107から第1の光励起LD401および第2の光励起LD403への光が集約され、光励起の効率を上げることができる。本実施の形態2のその他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0022】
図5は本実施の形態3の多波長半導体レーザ装置に搭載される光励起LDの構成を示す斜視図である。本実施の形態3の多波長半導体レーザ装置に搭載される光励起LDは、活性層501付近に光源である第1のLDからの光を吸収する吸収層503を有している。本実施の形態3で用いられた光励起LDはGaInP系の半導体レーザで、活性層501の上下に、波長405nmの青紫レーザ光を吸収するように組成が調整されたAlGaInPの吸収層503を有している。この吸収層503によって第1のLDからの光を吸収することによって、光励起LDから第2の波長の光407あるいは第3の波長の光409のみを取り出すことができる。
【0023】
このように多波長半導体レーザ装置を構成することにより、青紫LD107を光源として光励起LDを発振させて多波長半導体レーザ装置を得ることができる。
【0024】
本実施の形態3によれば、青紫LD107と光励起LDを搭載し、青紫LD107を光源として光励起LDを発振させて多波長半導体レーザ装置を実現したので、サイズの小さい多波長半導体レーザ装置を得ることができる。したがってこのような多波長半導体レーザ装置であっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0025】
本明細書の各実施の形態では、青紫LDや青色LDを光源として、波長変換素子や光励起LDを用いて、赤外レーザ光、赤色レーザ光、緑色レーザ光を発生させるように多波長半導体レーザ装置を構成したが、各レーザの波長はこれに限定されない。
【0026】
なお、図面および明細書では本発明の典型的な好ましい実施形態を開示しており、特定の用語を使用しているが、それらは一般的かつ記述的な意味合いでのみ使用しており、本明細書に記載の特許請求の範囲を限定することを目的とするものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0027】
107 青紫LD
109 第1の波長変換素子
111 第2の波長変換素子
203 第1の波長の光
205 第1の光
207、407 第2の波長の光
209 第2の光
211、409 第3の波長の光
301 第3の波長変換素子
303 第4の波長の光
401 第1の光励起LD
403 第2の光励起LD
405 レンズ
501 活性層
503 吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導波路を有し、前記複数の導波路からそれぞれ第1の波長の光を出射する第1のレーザダイオードと、
前記第1の波長の光のうちの少なくとも1つである第1の光の光軸上に配置され、前記第1の光を受光し、第2の波長の光を出射する第1の波長変換素子を有することを特徴とする多波長半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記第1の波長変換素子が出射する前記第2の波長の光の光軸上に配置され、前記第2の波長の光を受光し、第3の波長の光を出射する第2の波長変換素子を有することを特徴とする請求項1に記載の多波長半導体レーザ装置。
【請求項3】
複数の導波路を有し、前記複数の導波路からそれぞれ第1の波長の光を出射する第1のレーザダイオードと、
前記第1の波長の光のうちの少なくとも1つである第1の光の光軸上に配置され、前記第1の光を受光し、第2の波長の光を出射する第1の光励起レーザダイオードを有することを特徴とする多波長半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記第1の波長の光のうちの少なくとも1つである第2の光の光軸上に配置され、前記第2の光を受光し、第3の波長の光を出射する第2の光励起レーザダイオードを有することを特徴とする請求項3に記載の多波長半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記第1の光励起レーザダイオードあるいは前記第2の光励起レーザダイオードの活性層付近に、前記第1の波長の光を吸収する材料を用いることを特徴とする請求項3あるいは4に記載の多波長半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記第1の光励起レーザダイオードあるいは前記第2の光励起レーザダイオードと第1のレーザダイオードとの間の光軸上にレンズが配置されていることを特徴とする請求項3あるいは4あるいは5に記載の多波長半導体レーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−80781(P2013−80781A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219284(P2011−219284)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】