説明

多焦点レンズの製造方法

【課題】少量であっても簡単に多焦点レンズを製造することができる方法の提供。
【解決手段】凹状または凸状の光学面を有する撮像レンズと、撮像レンズの光学面よりも小さい光学面を有する透明レンズとを用意し、撮像レンズおよび透明レンズの光軸が合うように、撮像レンズの光学面上に透明レンズを貼り付ける工程を備える、多焦点レンズの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多焦点レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焦点が2以上あるレンズ、すなわち多焦点レンズにはいくつかの種類がある。例えば、2つの曲率半径を光学面に同心円状に付与したものが挙げられる(特許文献1、請求項2)。また、例えば、いずれも半円型の第1および第2のレンズ部の直線部分が合うように成形されたレンズが挙げられる(特許文献1、請求項4)。
ここで後者の場合、従来、2つの焦点距離の円形レンズを製造するに際して用いる金型を軸に沿って切断し、2つの半円形の金型を合わせて一体化して新たな金型とし、この金型に材料を流し込んで鋳込んで製造していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3554703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来法は多量生産の場合は有利であるが、少量生産には不向きであった。
本発明は、少量であっても簡単に多焦点レンズを製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題を解決するために鋭意検討し本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)〜(4)である。
(1)凹状または凸状の光学面を有する撮像レンズ(A)と、撮像レンズ(A)の光学面よりも小さい光学面を有する透明レンズ(α)とを用意し、撮像レンズ(A)および透明レンズ(α)の光軸が合うように、撮像レンズ(A)の光学面上に透明レンズ(α)を貼り付ける工程を備える、多焦点レンズの製造方法。
(2)撮像レンズ(A)および透明レンズ(α)が、鋳型の注入孔部分によって鋳込まれた突起部を有するものであり、
撮像レンズ(A)の突起部と透明レンズ(α)の突起部とを重ね合わせることで撮像レンズ(A)および透明レンズ(α)の光軸を合わせ、撮像レンズ(A)の光学面上に透明レンズ(α)を貼り付ける工程を備える、上記(1)に記載の多焦点レンズの製造方法。
(3)平面状の光学面を有する撮像レンズ(B)と、撮像レンズ(B)の光学面よりも小さい平面状の光学面を有する透明レンズ(β)とを用意し、撮像レンズ(B)の光学面上に透明レンズ(β)を貼り付ける工程を備える、多焦点レンズの製造方法。
(4)凹状、凸状または平面状の光学面を有する撮像レンズ(C)の光学面上に、蒸着法によって透明レンズ(γ)を形成する工程を備える、多焦点レンズの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、少量であっても簡単に多焦点レンズを製造することができる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の製造方法(I)によって製造できる2焦点レンズの一態様を示す概略図である。
【図2】本発明の製造方法(I)によって製造できる2焦点レンズの別の一態様を示す概略図である。
【図3】本発明の製造方法(II)によって製造できる2焦点レンズの一態様を示す概略図である。
【図4】本発明の製造方法(III)によって製造できる2焦点レンズの一態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について、以下に詳細に説明する。
【0009】
<本発明の製造方法(I)>
本発明は、凹状または凸状の光学面を有する撮像レンズ(A)と、撮像レンズ(A)の光学面よりも小さい光学面を有する透明レンズ(α)とを用意し、撮像レンズ(A)および透明レンズ(α)の光軸が合うように、撮像レンズ(A)の光学面上に透明レンズ(α)を貼り付ける工程を備える、多焦点レンズの製造方法である。
このような多焦点レンズの製造方法を、以下では「本発明の製造方法(I)」ともいう。
【0010】
本発明の製造方法(I)について、図1を用いて具体的に説明する。
図1は、本発明の製造方法(I)によって製造した多焦点レンズの一態様を示しており、図1(a)は2つの異なる曲率半径を備える光学面を有する2焦点レンズの概略正面図、図1(b)は図1(a)におけるX−X線断面図である。
【0011】
図1において、撮像レンズ(A)21は凸状の光学面211を有している。また、透明レンズ(α)31は撮像レンズ(A)21の光学面211よりも小さい光学面311を有している。
また、透明レンズ(α)31は光学面311の裏面側に凹状の面312を有しており、撮像レンズ(A)21と透明レンズ(α)との光軸Lが合うように重ねると、撮像レンズ(A)21の光学面211と透明レンズ(α)の凹状の面312とは隙間なく密着するように、各々の面の曲率が調整されている。
【0012】
本発明の製造方法(I)は、このような凸状の光学面211を有する撮像レンズ(A)21と、光学面311を有する透明レンズ(α)31とを用意し、撮像レンズ(A)21および透明レンズ(α)31の光軸Lが合うように、撮像レンズ(A)21の光学面211の上に透明レンズ(α)31を貼り付ける工程を備えることを特徴とする。貼り付ける方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法を適用することができる。例えば接着剤(バルサム、紫外線硬化型、エポキシ系等)を用いて、撮像レンズ(A)と透明レンズ(α)とを貼り付けることができる。
撮像レンズ(A)の光学面の上に、複数枚の透明レンズ(α)を貼り付けてもよい。複数枚の透明レンズ(α)を撮像レンズ(A)の光学面の上に貼り付ける場合、透明レンズ(α)が重なっていてもよい。例えば、1枚目の透明レンズ(α)の表面上に、別の透明レンズ(α)が貼り付けられてもよい。
【0013】
撮像レンズ(A)および透明レンズ(α)の大きさ、形状、材質、製造方法等は特に限定されず、例えば従来公知の材料(例えばガラスやプラスチック)を用いて、従来公知の製造方法(例えばインジェクションやプレス)で製造することができる。また、図1において透明レンズ(α)は半円形のものであるが、形状はこれに限定されず、例えば中心部(光軸付近の部分)が空いているドーナツ型であってもよい。透明レンズ(α)の平均厚さは撮像レンズ(A)の有効径(有効径はJIS B 7095に定義されている)の1/100〜1/5であることが好ましい。また、図1では透明レンズ(α)は光学面311が凹状となっているが、光学面は凸状であってもよいし、平面であってもよい。
【0014】
撮像レンズ(A)と透明レンズ(α)とを貼り付けた後、図1に示す透明レンズ(α)の側面部分313に反射防止膜を形成する。
反射防止膜を形成する塗料は限定されず、例えば従来公知のものを用いることができる。例えば、クロム、酸化クロム、二酸化珪素、二酸化ジルコン、二酸化チタン、アルミナ、金等の金属、金属酸化物、金属フッ化物等を用いることができる。
また、反射防止膜を形成する方法も特に限定されず、例えば従来公知の方法(蒸着法等)を適用することができる。例えばプラズマによって、上記の金属、金属酸化物、金属フッ化物等を融解し、コーティングすることができる。また、例えば、プラズマ等を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)により、光学面211、側面部分313および光学面311に反射防止膜を形成した後、スパッタエッチングを行うことで、光学面211および光学面311に形成された反射防止膜を除去する方法が挙げられる。ここで、スパッタエッチングは方向性があるので、光学面211および光学面311の表面に略垂直方向からスパッタエッチングすると、光学面211および光学面311に形成された反射防止膜のみが除去され、側面部分313に形成された反射防止膜はエッチングされないので、残存することとなる。
また、光吸収型の反射防止膜の場合、反射防止膜の表面を梨地状にしたり、ヒダ加工を施したりすることが好ましい。反射防止能が高まるからである。
また、光吸収型の反射防止膜の場合、黒色(光を透過しないこと)が好ましく、干渉型の反射防止膜の場合、透明であることが好ましい。
【0015】
また、撮像レンズ(A)および透明レンズ(α)は、鋳型を用いて鋳込まれたものであって、材料の注入孔部分に通常形成される突起部を有するものであることが好ましい。鋳型を用いて鋳込むと、通常、撮像レンズ(A)および透明レンズ(α)は、鋳型の注入孔部分に図2に示すような突起部(215、315)を備えることになる。撮像レンズ(A)21´の突起部215と、透明レンズ(α)31´の突起部315との位置を合わせることで光軸を合わせることができるような鋳型を用いて各々のレンズを製造すると、本発明の製造方法(I)において光軸を合わせる作業が簡便になるので好ましい。
【0016】
このような本発明の製造方法(I)によって、2焦点レンズ11を製造することができる。
【0017】
<本発明の製造方法(II)>
また、本発明は、平面状の光学面を有する撮像レンズ(B)と、撮像レンズ(B)の光学面よりも小さい平面状の光学面を有する透明レンズ(β)とを用意し、撮像レンズ(B)の光学面上に透明レンズ(β)を貼り付ける工程を備える、多焦点レンズの製造方法である。
このような多焦点レンズの製造方法を、以下では「本発明の製造方法(II)」ともいう。
【0018】
本発明の製造方法(II)について、図3を用いて具体的に説明する。
図3は、本発明の製造方法(II)によって製造した多焦点レンズの一態様を示しており、図3(a)は2つの異なる曲率半径を備える光学面を有する2焦点レンズの概略正面図であり、図3(b)は図3(a)におけるY−Y線断面図である。
【0019】
図3において、撮像レンズ(B)23は平面状の光学面231を有している。また、透明レンズ(β)33は撮像レンズ(B)23の光学面231よりも小さい光学面331を有している。
また、透明レンズ(β)33は光学面331の裏面側に平面状の面332を有しており、撮像レンズ(B)23の光学面231と透明レンズ(β)の面332とを隙間なく密着させることができる。
【0020】
本発明の製造方法(II)は、このような平面状の光学面231を有する撮像レンズ(B)23と、光学面331を有する透明レンズ(β)33とを用意し、撮像レンズ(B)23の光学面231の上に透明レンズ(β)33を貼り付ける工程を備えることを特徴とする。貼り付ける方法や反射防止膜の形成方法は特に限定されず、前述の本発明の製造方法(I)と同様に、例えば従来公知の方法を適用することができる。
このような本発明の製造方法(II)は、前述の本発明の製造方法(I)とは異なり、撮像レンズ(B)および透明レンズ(β)の光軸を合わせる必要がないので、より簡単に多焦点レンズを製造することができ好ましい。
このような本発明の製造方法(II)によって、2焦点レンズ13を製造することができる。
【0021】
<本発明の製造方法(III)>
また、本発明は、凹状、凸状または平面状の光学面を有する撮像レンズ(C)の光学面上に、蒸着法によって透明レンズ(γ)を形成する工程を備える、多焦点レンズの製造方法である。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法(III)」ともいう。
【0022】
本発明の製造方法(III)について、図4を用いて具体的に説明する。
図4は、本発明の製造方法(III)によって製造した多焦点レンズの一態様を示しており、図4(a)は2つの異なる曲率半径を備える光学面を有する2焦点レンズの概略正面図であり、図4(b)は図1(a)におけるZ−Z線断面図である。
【0023】
図4において、撮像レンズ(C)25は凸状の光学面251を有している。また、透明レンズ(γ)35は撮像レンズ(C)25の光学面251の一部に付いている。
また、透明レンズ(γ)35は、その部分によって厚さが異なっている。すなわち、透明レンズ(γ)の厚さは、図4に示すように、撮像レンズ(C)の中心付近(光軸Lに近い付近)から外縁に向かって、徐々に厚さが増加するように形成されている。
【0024】
本発明の製造方法(III)は、このような光学面251を有する撮像レンズ(C)25の上に透明レンズ(γ)35を蒸着法によって形成する工程を備えることを特徴とする。
ここで蒸着法とは、公知のCVD、PVDを意味する。
例えば、撮像レンズ(C)25の外縁から中心(光軸L)を覆うマスクを用意し、スパッタリングを行いながら、このマスクを徐々に中心方向へ移動させ、外縁側が蒸着されるようにすると、図4に示すような透明レンズ(γ)を形成することができる。
透明レンズ(γ)の平均厚さは0.1mm以下であることが好ましい。
このような本発明の製造方法(III)によって、2焦点レンズ15を製造することができる。
【0025】
このような本発明(本発明の製造方法(I)、(II)、(III))によって製造することができる多焦点レンズは、1枚で用いることもできるが、複数枚を並べて用いるレンズユニットに1つとして用いることもできる。
また、上記では、2焦点レンズについて説明したが、本発明は3以上の焦点を備える多焦点レンズも、上記と同様の方法で製造することができる。
【0026】
このような本発明によれば、少量であっても簡単に多焦点レンズを製造することができる。
【符号の説明】
【0027】
11、13、15 多焦点レンズ
21、21´、23、25 撮像レンズ
211、231、251 光学面
215、315 突起部
31、31´、33、35 透明レンズ
311、331、351 光学面
312、332 面
313、333、353 側面
L 光軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状または凸状の光学面を有する撮像レンズ(A)と、撮像レンズ(A)の光学面よりも小さい光学面を有する透明レンズ(α)とを用意し、撮像レンズ(A)および透明レンズ(α)の光軸が合うように、撮像レンズ(A)の光学面上に透明レンズ(α)を貼り付ける工程を備える、多焦点レンズの製造方法。
【請求項2】
撮像レンズ(A)および透明レンズ(α)が、鋳型の注入孔部分によって鋳込まれた突起部を有するものであり、
撮像レンズ(A)の突起部と透明レンズ(α)の突起部とを重ね合わせることで撮像レンズ(A)および透明レンズ(α)の光軸を合わせ、撮像レンズ(A)の光学面上に透明レンズ(α)を貼り付ける工程を備える、請求項1に記載の多焦点レンズの製造方法。
【請求項3】
平面状の光学面を有する撮像レンズ(B)と、撮像レンズ(B)の光学面よりも小さい平面状の光学面を有する透明レンズ(β)とを用意し、撮像レンズ(B)の光学面上に透明レンズ(β)を貼り付ける工程を備える、多焦点レンズの製造方法。
【請求項4】
凹状、凸状または平面状の光学面を有する撮像レンズ(C)の光学面上に、蒸着法によって透明レンズ(γ)を形成する工程を備える、多焦点レンズの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−150255(P2012−150255A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8500(P2011−8500)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(503421128)リバーベル株式会社 (10)