説明

多目的用の木屑シート

【課題】クッション性、加工性、断熱性、耐水性、耐久性等に優れた特徴を備え、新たな製品の製作材料として有効に使用することができる多目的用の木屑シートを提供する。
【解決手段】檜材と杉材の木屑3に対して天然ゴムのゴム成分2を加え、これを混練して木屑シート1に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クッション性、加工性、断熱性、耐水性、耐久性等に優れた特徴を備え、多目的の用途に活用することができる木屑シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムや合成樹脂を主成分とし、これに木粉を混合した組成物は従来から知られており、木粉の含有によりゴムや合成樹脂の性質を改質した点を生かした各種製品が提案されている。
【0003】
従来の組成物としては、樹脂主成分に木粉等を充填したポリオレフィン系樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)やポリカーボネート樹脂に木粉等を混合した樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)等があり、また、木粉を含有した材料で形成された製品としては、版画用ゴム版(特許文献3参照)、ゴルフボール(特許文献4参照)、伝動ベルト(特許文献5参照)等を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−306568号公報
【特許文献2】特開平11−193342号公報
【特許文献3】特開平8−34200号公報
【特許文献4】特開2002−302570号公報
【特許文献5】特開2003−269544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した各組成物や製品は、ゴムや合成樹脂の主成分に単一種類の木粉を少量配合しただけのものであるため、量的に少ない木粉では木が持っている本来の効果を十分に引き出して生かすことができず、具体的には、クッション性や断熱性、耐水性、耐久性、脱臭性、抗菌性等に劣り、このため、各組成物は新たな製品の開発材料として用途に乏しいものである。
【0006】
そこで、この発明の課題は、檜の木屑と杉の木屑に天然ゴムを加えてシートに成形することで、檜と杉が持つ機能を相乗的に活かすことで、弾性や強度等に優れた特徴を備え、新たな製品の製作材料として有効に使用することができる多目的用の木屑シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、檜の木屑と杉の木屑に天然ゴムを加えてシートに形成したものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、上記シートは、厚みのある成形シートに形成されたものから所定の厚みに剥き出すことによって形成され、表面に木屑が露出した状態になっているようにしたものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、檜の木屑と杉の木屑にアコヤ貝の焼成粉を配合したものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかにおいて、檜の木屑と杉の木屑にみかんの皮の皮屑を配合したものである。
【0011】
ここで、檜と杉は、木屑の状態とすることで二酸化窒素やホルムアルデヒドなどを吸収して空気を浄化する機能が保たれ、調湿性にも優れており、このような檜と杉の木屑にバインダーとしてゴム成分を加えて混練した状態でシートに成形すると、檜と杉の木屑を主体とするゴム状のシートが得られ、ゴムの臭いがなく、弾性や強度を生かしながら脱臭効果と耐候性、通気性を向上させることができ、木屑シートとすることで多目的用の材料となり、大きなシートにすることで掲示板などにも使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、檜材と杉材の木屑に天然ゴムを加えてシートに形成したので、檜材と杉材の木屑がそのままシートになり、木屑からの芳香が周囲空間の環境を改善し、しかも、檜材と杉材の木屑がゴム状のシートに保たれるので、弾性と強度を保ちながら耐候性と通気性と共に脱臭効果と調湿機能を備え、人体の肌に接触しても安全であり、ゴムの臭いがなく、多目的用のシート材として使用することができる。
【0013】
また、シートを、厚みのある成形シートに形成されたものから薄く剥き出すことによって形成することにより、剥き出したシートの表面に木屑が露出した状態になり、木屑の効果を有効に引き出すことができるだけでなく、表面が粗面となることで滑り止め機能が向上し、このような機能を生かした用途に広く用いることができる。
【0014】
また、大きなシートに成形することで、天然ゴムの持つ弾性と強度を生かし、押しピンなどの突き刺しも可能になるので、もろくて弱い既存のコルク製掲示板の代替掲示板として使用することができる。
【0015】
更に、檜材と杉材の木屑にアコヤ貝の焼成粉を加えてシートに形成したので、上記の機能に加えて抗菌性を有するシートになり、人体の肌に接触するゴム製品の材料として有用である。
【0016】
また、檜材と杉材の木屑にみかんの皮の皮屑を加えてシートに形成したので、上記の機能に加えてシートを用いた製品を設置した空間をリラックスできる環境にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明に係る木屑シートの拡大した断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図示のように、この発明に係る第1の実施の形態の木屑シート1は、檜材と杉材の木屑3に天然ゴムのゴム成分2を加え、これを混練して所定の厚みを有するシートに形成したものである。
【0020】
上記ゴム成分2は、天然の原料ゴム(モノマー)を素練して可塑化ゴムとし、それに加硫剤、加硫促進剤、充填剤等を配合混練して配合ゴムを作り、それを加硫成形してシート状のゴム製品とするものであり、このような天然ゴムは、タンパク質であり、他の合成ゴムに比べて弾性と強度において優れ、檜材と杉材の木屑3のバインダーとして用いる。
【0021】
上記檜材と杉材の木屑3は、国内産の檜材と杉材を使用し、檜材と杉材を鋸で切断したり鉋等で削ったときに発生する、例えば1mm〜25mm程度の比較的小さな屑であり、上記シート状のゴム製品を製造する工程において、檜材と杉材の木屑3にゴム成分2を加えて混練する場合、檜材と杉材の木屑3に対してゴム成分2を30〜50%(体積)程度とし、軟化させた状態で混練する。なお、ゴム成分2が多いと木屑3の効果が少なくなり、ゴム成分2が少ないと、バインダーとしての機能が得られないことになる。
【0022】
また、檜材と杉材の木屑3の両者の組合わせ量は、等量にしたり何れか一方を多くするように組み合わせは自由に選択することができる。また、前記木屑3には木粉も含まれ、木屑3にこれよりも細かい適量の木粉を積極的に加えるようにしてもよい。
【0023】
このように、檜材と杉材の木屑3をゴム成分2よりも多く配合することで、木屑シート1の色は木屑3の影響を受けて、木のイメージがある茶色や黄色に仕上がることになる。
【0024】
国内産の檜材と杉材は、水分や養分を吸い上げる仮道管の空隙が多く、これが空気中の二酸化窒素やホルムアルデヒドなどを吸収して空気を浄化する機能に優れ、また、檜材と杉材の細胞が水分を吸収又は放出することで調湿性にも優れており、このような特性は檜材と杉材の木屑3となった状態でも保持されている。
【0025】
上記のように、檜材と杉材の木屑3に天然ゴムをバインダーとして用い、木屑シート1に成形すると、木屑3はゴムの臭いを吸収し、ゴム成分2がもつ弾性や強度を生かしながら脱臭効果と耐候性、断熱性、耐水性、耐久性等に優れたものとなり、このような木屑シート1は、クッション性があって鋏で自由にカットできるので、例えば、加工して小物入れとしたり、各種敷物、滑り止めや傷防止用のマット、ビンの蓋を開けるときの滑り止めシート等に使用することができる。
【0026】
また、弾性や強度を生かし、木屑シート1を大きなシートにすることで、従来用いられていたコルク製掲示板の代替掲示板としても使用することができる。
【0027】
次に、この発明に係る第2の実施の形態の木屑シートは、図示省略したが、檜材と杉材の木屑3にゴム成分2とアコヤ貝の焼成粉を配合してシートに形成したものである。
【0028】
第2の実施の形態の木屑シート1において、檜材と杉材の木屑3に対するゴム成分配合条件は、上記した第1の実施の形態と同じであり、アコヤ貝の焼成粉は、アコヤ貝の貝殻を高温で焼成してこれを細かく粉状に粉砕したものを用い、上記シート状を製造する工程時に檜材と杉材の木屑3に対して配合し、ゴム成分2と共に混練するものであり、このアコヤ貝の焼成粉は、例えば、檜材と杉材の木屑3に対して10%(体積)程度を配合する。
【0029】
上記アコヤ貝の焼成粉は、抗菌性を有するものであり、これを木屑3に配合してゴム成分2と共に混練し、木屑シート1に成形することにより、この木屑シート1は抗菌性を備えることで用途も広範なものになる。
【0030】
この発明に係る第3の実施の形態の木屑シートは、図示省略したが、檜材と杉材の木屑3にゴム成分2とみかんの皮の皮屑を配合してシートに形成したものである。
【0031】
上記みかんの皮の皮屑は、みかんの皮を天日で乾燥させ、これを屑及び粉末状にしたものであり、例えば檜材と杉材の木屑3に対して10%(体積)程度を配合すればよく、みかんの皮の皮屑を加えることにより、木屑シートは黄色や橙色に仕上がる。
【0032】
みかんの皮を乾燥させた皮屑は、その香りによって人の精神状態を安定にする機能があり、木屑シートを用いた製品が室内にあると、室内空間をリラックスできる環境にすることができるという利点がある。
【0033】
なお、木屑シート1において、檜材と杉材の木屑3に対して加える配合物は、上記各実施の形態で述べた以外に、コーヒ豆の焙煎粉、活性炭、竹屑、お茶の葉やその出がらしの屑等を適宜選択し、各実施の形態に対してこれらを適量配合するようにしてもよく、木屑シート1の色彩は、コーヒ豆の配合によって茶色になり、活性炭の配合で黒色になり、竹屑の配合によって薄緑色になり、お茶の葉やその出がらしを配合することにより緑色に仕上がり、配合物の種類とその量を選ぶことによりカラフルな木屑シート1が得られることになる。
【0034】
また、各実施の形態で述べた木屑シート1は、檜材と杉材の木屑3に対してゴム成分2と上記した配合物を加え、ゴム成分2を加熱軟化させた状態でこれを練り上げることにより混ぜ合わせ、その後、混合物を加圧ロールで所定厚みを有する木屑シート1に成形するものである。
【0035】
上記のような木屑シート1の成形において、檜材と杉材の木屑3にゴム成分2と配合物を加えて練り上げた混合物を加圧ロールでシートに成形すると、ゴム成分2の中に配合物が閉じ込められ、シートの表面から埋まる傾向にあり、このため、上記した檜材と杉材の木屑3、アコヤ貝の焼成粉、みかんの皮の皮屑のほか、上記した各種配合物の機能を生かしきれないことがある。
【0036】
そこでこの発明では、檜材と杉材の木屑3にゴム成分2と配合物を加えてこれを練り上げることにより混ぜ合わせ、その後、混合物を加圧ロールでシートに成形するとき、必要とする木屑シート1の厚みよりも数倍厚い成形シートを成形する。
【0037】
例えば、上記成形シートを厚みが例えば12mmになるように成形し、次に、この成形シートから厚みが1mmや2mmの所定厚さを有する木屑シート1を刃物によって剥き出すようにする。従って、上記成形シートから12枚又は6枚の木屑シート1を剥き出すことができ、前記成形シートの表裏両面に位置していた木屑シート1はこれを製品としないでシート成形材料として再使用する。
【0038】
残る10又は4枚が製品としての木屑シート1となり、この木屑シート1は表裏両面が剥き出した面となり、厚い成形シートから刃物で薄く切断することによって、表裏両面に檜材と杉材の木屑3及び他の配合物が露出した状態になり、木屑3及び各配合物の効果を有効に引き出すことができるだけでなく、表面が粗面となることで滑り止め機能が向上し、このような機能を生かした用途に広く用いることができる。
【0039】
また、木屑シート1は、檜材と杉材の木屑3を大量に使用し、ゴム成分2をバインダーとすることにより、木屑3はシート状態に保持され、木屑シート1の色彩は木屑3の影響を受けて茶色や黄色に仕上がり、従来のゴムシートのイメージを一新することができ、しかも、木屑3によってゴムの持つ特有の臭いを消すことができ、これによって、木屑シート1の用途拡大を図ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 木屑シート
2 ゴム成分
3 檜材と杉材の木屑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
檜の木屑と杉の木屑に天然ゴムを加えてシートに形成した木屑シート。
【請求項2】
上記シートは、厚みのある成形シートに形成されたものから所定の厚みに剥き出すことによって形成され、表面に木屑が露出した状態になっている請求項1に記載の木屑シート。
【請求項3】
檜の木屑と杉の木屑にアコヤ貝の焼成粉を配合した請求項1又は2に記載の木屑シート。
【請求項4】
檜の木屑と杉の木屑にみかんの皮の皮屑を配合した請求項1乃至3の何れかに記載の木屑シート。

【図1】
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