説明

多色画像形成装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、感光体及び中間転写体の表面に残留するトナーをクリーニング部材により除去して回収する廃トナー収納筐を備えたプリンタ,複写機等の多色画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の廃トナー収納筐を備えた画像形成装置としては、例えば実開昭63−109970号公報に示されるようなものが知られている。これは、感光体上のトナー像を中間転写体を介して転写紙に転写した後、上記感光体及び中間転写体の表面に残留するトナーをクリーニング部材により除去し、このクリーニング部材下方の装置前部に設けた1個の廃トナー収納筐内に共に回収するようにしたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の画像形成装置にあっては、交換時の作業性を考慮して廃トナー収納筐を装置の前部に設けている。このような構成を、例えば1枚のコピーで4色又は3色のトナーが用いられるフルカラー複写機に適用すると、単色の画像形成装置に比して廃トナー量が大幅に増加し、廃トナー収納筐の容積を倍増させることが必要となる。同時に、廃トナー収納筐を大きくすることにより、装置の定期点検期間のほぼ3倍程度の廃トナー収納量を確保できれば、廃トナー収納筐内の満杯検知センサを廃止することができてコスト低減も図ることができる。
【0004】ところが、装置前部に設けた廃トナー収納筐の容量を大きくすると、装置前部の大部分が塞がれる結果となるので、一旦ジャムが発生した場合にはその処理が著しく困難になり、その他の部分の保守性も低下する。特に、フロントローディング給紙形式の画像形成装置においては、クリーニングユニット直下に設けた廃トナー収納筐が給紙カセットの上方に位置するので、紙交換性が不良となるだけでなく、万一トナー落ちした場合にはカセット内の転写紙が汚染されるという不都合が生ずる。
【0005】この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ジャム処理性を低下させることなく廃トナー収納筐の大容量化が可能であり、且つ万一のトナー落ちに際しても転写紙のトナー汚れを防止し得る多色画像形成装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は上記の目的を達成するため、転写紙カセットを内蔵したフロントローディング給紙形式の給紙テーブルを有する装置本体の感光体上にトナー像を形成し、このトナー像を中間転写体を介して転写紙に転写した後、上記感光体及び中間転写体の表面に残留するトナーをそれぞれ第1,第2のクリーニング手段により除去して廃トナー収納筐に回収する多色画像形成装置において、上記第1,第2のクリーニング手段により除去したトナーを、上記第1,第2のクリーニング手段の長手方向の端部からその長手方向に直交してほぼ水平に上記装置本体内の側部に導く第1,第2の搬送手段と、これらの第1,第2の搬送手段により搬送されたトナーをほぼ垂直な中継ダクトを介して自重により落下させて回収する廃トナー収納筐とを設け、このトナー収納筐を上記装置本体底部の上記転写紙カセットの側部に位置させた多色画像形成装置を提供するものである。
【0007】そして、上記の多色画像形成装置において、中継ダクトには、それぞれ異なる位置で第1,第2の搬送手段が接続し、その接続部位を転写紙カセット上から偏倚させるようにするのが好ましい。
【0008】
【作用】この発明による多色画像形成装置は上記のように構成することにより、廃トナー収納筐を装置側部に設けることができるので、装置前部にはジャム処理用やその他の保守点検用の空間を確保することが可能になる。
【0009】また、廃トナー収納筐を装置本体底部の転写紙カセットの側部に位置させるようにすると、装置本体下部の空きスペースを有効に利用することができると共に、ジャム処理スペースを確保しながら廃トナー収納筐の大容量化が容易になる。
【0010】さらに、第1,第2の搬送手段と中継ダクトとの接続部位を転写紙カセット上から偏倚させるようにすると、万一この部位からトナー落ちした時にも、カセット内の転写紙の汚染を防止することができる。
【0011】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明するが、それに先立ちこの発明を実施した多色画像形成装置全体の構成並びに作用の概略を図2及び図3を参照して説明する。図2はカラー複写装置の全体を示す構成図、図3はその感光体と中間転写ベルト回りを拡大して示す部分構成図である。
【0012】図2において、カラー画像読み取り装置であるカラースキャナ1は、原稿3の画像を正面ランプ4,ミラー5a,5b,5c及びレンズ6を介してカラーセンサ7に結像させ、その画像情報を例えばブルーB,グリーンG,レッドRの色分解光毎に読み取って電気的な画像信号に変換する。ここで、カラーセンサ7はB,G,Rの色分解手段とCCDのような光電変換素子とで構成され、3色同時読み取りを行う。
【0013】このカラースキャナ1で得たB,G,Rの色分解画像信号強度レベルに基づいて、図示しない画像処理部で色変換処理を行い、ブラックBK,シアンC,マゼンタM,イエローYの各カラー画像データを得る。これをカラー画像記録装置であるカラープリンタの装置本体2によりBK,C,M,Yの顕像化を行って最終的なカラーコピーとする。
【0014】なお、BK,C,M,Yの画像データを得るためにカラースキャナ1は、装置本体2の作動とタイミングを合わせたスキャナスタート信号を受けて、照明及びミラー光学系を矢示方向へ移動させて原稿走査し、1回の走査毎に1色の画像データを得る。この作動を4回繰り返すことにより順次4色の画像データを得、その都度装置本体2で顕像化し、これらを重ね合わせて4色フルカラー画像を形成する。
【0015】次に、装置本体2の書き込み光学ユニット8において、カラースキャナ1からのカラー画像データを光信号に変換して原稿画像に対応した光書き込みを行い、感光体ドラム9の表面に静電潜像を形成する。この書き込みユニット8は、レーザ8aとその発光駆動制御部(図示しない),ポリゴンミラー8b,その回転駆動用モータ8c,f/θレンズ8d,反射ミラー8e等で構成されている。
【0016】感光体ドラム9の回りには、感光体クリーニングユニット10,除電ランプ11,帯電器12,電位センサ13,BK現像器14,C現像器15,M現像器16,Y現像器17,現像濃度パターン検知器18,中間転写ベルト19等がそれぞれ配設されている。
【0017】各現像器14〜17は、図3にその詳細を示すように、静電潜像を現像するため現像剤の穂を感光体9の表面に接触させて回転する現像スリーブ14a,15a,16a,17a、現像剤を汲み上げて撹拌するために回転する現像パドル14b,15b,16b,17b及び現像剤のトナー濃度検知センサ14c,15c,16c,17c等で構成されている。そして、これらの現像器は待機状態ではすべての現像スリーブ14a〜17a上の剤が除去されていて通常穂切りと称される現像不作動状態になっている。
【0018】以下、現像の順序がBK,C,M,Yの順で行われる場合について説明するが、その順序はこれに限定されるものではない。
【0019】コピーが開始されると、カラースキャナ1で所定のタイミングに合わせてBK画像データの読み取りが開始され、その画像データに基づいてレーザ光による光書き込み及びBK潜像の形成が始まる。このBK潜像の先端部がBK現像器14の現像位置に到達するまでに、現像スリーブ14aの回転を開始して穂立てと称される作業を行い、BK潜像をBKトナーで現像する。
【0020】BK潜像領域の現像が終り潜像後端部がBK現像位置を通過すると、速やかにBK現像スリーブ14a上の剤穂切りを行って次のC潜像先端部が到達する以前に現像不作動状態にする。この穂切りは現像スリーブ14aの回転方向を現像時と逆方向に切り換えることによって行う。
【0021】感光体ドラム9に形成したBKトナー像は、感光体ドラム9と等速駆動される中間転写ベルト19の表面にベルト転写される。このベルト転写は、感光体ドラム9と中間転写ベルト19とを接触状態として転写バイアスローラ20に所定のバイアス電圧を印加することによって行う。この中間転写ベルト19には、感光体ドラム9上に順次形成されるBK,C,M,Yの各トナー像を同一面に位置合わせして4色重ねのベルト転写画像を形成させた後、転写紙に一括転写を行う。
【0022】BK工程が終ると、所定のタイミングに合わせてC画像データ読み取り、レーザ光書き込み,C潜像形成を順次行う。C現像器15は、先のBK潜像後端部が通過してからC潜像先端部が到達するまでの間に、現像スリーブ15aの回転を開始して剤の穂立てを行い、C潜像をCトナーで現像する。そして、C潜像後端部が通過した時点でC現像スリーブ15a上の剤穂切りを行う。以後、同様にしてM工程及びY工程の画像データ読み取り、潜像形成,現像がそれぞれ行われる。
【0023】中間転写ベルト19は、駆動ローラ21,ベルト転写バイアスローラ20及び2個の従動ローラ間に張架されており、図示しない駆動モータにより駆動制御される。紙転写ユニット23は、紙転写バイアスローラ23a,ローラクリーニングブレード23b及び中間転写ベルト19からの接離機構23c等で構成されている。
【0024】紙転写バイアスローラ23aは常時は中間転写ベルト19から離間した状態にあるが、ベルト面に形成された4色の重ね画像を転写紙に一括転写する時にタイミングを合わせて接離機構23cにより圧接され、バイアスローラ23aに所定のバイアス電圧を印加して転写を行う。なお、転写紙24は、図2に示すように、給紙ローラ25,レジストローラ26によって中間転写ベルト19上の4色重ね画像の先端部が紙転写位置に到達するタイミングに合わせて給紙される。
【0025】中間転写ベルト面から一括転写された転写紙は紙搬送ユニット27により定着器28に搬送され、定着ローラ28aと加圧ローラ28bでトナー像を熱により溶融定着してカラーコピーとしてコピートレイ29上に搬送される。転写紙カセット30,31,32,33は各種サイズの転写紙が収納されており、各カセット31,32,33はそれぞれ装置本体2及びその下方に設けた給紙テーブル39内に装置前部から挿脱自在であり、図示しない操作パネル上で指定されたサイズの転写紙を給紙する。また、図2において符号34はOHP用紙や厚紙などの手差し給紙トレイである。
【0026】なお、ベルト転写後の感光体ドラム9は、図3に示すクリーニング前除電器10a,ブラシローラ10b,ゴムブレード10c,搬送スクリュ10d等からなる第1のクリーニング手段である感光体クリーニングユニット10によって表面の残留トナーを除去してそのトナーを一方に搬送し、クリーニングされた感光体ドラム9の表面は除電ランプ11により均等に除電される。
【0027】一方、ブラシローラ22a,ゴムブレード22b,接離機構22c,搬送スクリュ22d等からなる第2のクリーニング手段である中間転写ベルト19のベルトクリーニングユニット22は、1色目のBK画像をベルト転写した後の2,3,4色目をベルト転写している間は接離機構22cによってベルト面から離間させてあり、転写紙にトナー像を転写した後はベルト面に圧接して表面の残留トナーを除去して一方に搬送する。
【0028】これらの感光体クリーニングユニット10及びベルトクリーニングユニット22の一端には、図1に示すようにそれぞれ中間ボックス10e,22eが設けてあり、搬送スクリュ10d,22dが矢示方向に回転することにより、各クリーニングユニット10,22内に回収したトナーを中間ボックス10e,22e内に導いている。
【0029】この中間ボックス10e,22e内のトナーは、第1,第2の搬送手段である導管35,36により、各クリーニングユニット10,22の長手方向に直交してほぼ水平にそれぞれ導かれて装置本体2の側部に搬送され、上部回収口37a及び下部回収口37bから中継ダクト37内に投入され自重により落下して給紙テーブル39内に設けた廃トナー収納筐38に収納される。
【0030】このような構成によれば、図1及び図2から分るように、導管35,36と中継ダクト37がそれぞれ異なる位置で接続され、その接続部位が、装置本体2及び給紙テーブル39内に挿脱可能に設けた転写紙カセット31,32,33の上方から偏倚しているので、万一この部位からトナー落ちが発生してもカセット内の転写紙が汚染されるおそれはない。
【0031】また、廃トナー収納筐38を給紙テーブル39の側部に設けることにより、テーブル内の空きスペースを有効に利用することができて大容量化が可能となってトナーの満杯検知センサの廃止が可能になると共に、装置本体2及び給紙テーブル39に図1に示すようなジャム処理スペース2a及び39aを設けることができ、ジャム処理性が著しく向上する。
【0032】なお、上記実施例においては、第1,第2の搬送手段を構成する導管35,36をほぼ水平な直線状としているが、必要に応じて迂回させても同様の効果を得ることができる。
【0033】また、装置本体の下方に給紙テーブルを設けず、本体内にすべての転写紙カセットを収容するようにした場合には、廃トナー収納筐を装置本体内の側部に設ければよい。
【0034】
【発明の効果】以上述べたように、この発明による多色画像形成装置は、第1,第2のクリーニング手段により除去したトナーを第1,第2の搬送手段により装置本体内の側部に搬送し、中継ダクトを介して自重により落下させて廃トナー収納筐に回収するようにしたので、クリーニングユニットの直下で装置本体の前部に廃トナー収納筐を設けていたフロントローディング給紙方式の従来の多色画像形成装置のように、廃トナー収納筐が転写紙カセットの上方に位置して、紙交換やジャム処理時の障害となるおそれがなくなる。同時に廃トナー収納筐から万一トナー落ちが発生した場合にも転写紙カセット内の転写紙の汚染は防止される。
【0035】また、廃トナー収納筐を装置本体内の側部に設けるようにしたので、本体内部の空きスペースを有効に利用することができ、ジャム処理用やその他の保守点検用のスペースを確保しながら廃トナー収納筐の大容量化を図ることができる。
【0036】さらに、第1,第2の搬送手段と中継ダクトとの接続部位を転写紙カセット上から偏倚させるようにすると、万一この部位からトナー落ちが発生しても、転写紙カセット内の転写紙が汚染されるおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す斜視図である。
【図2】この発明を実施した多色画像形成装置の全体を示す構成図である。
【図3】同じくその感光体と中間転写ベルト回りを拡大して示す部分構成図である。
【符号の説明】
1 カラースキャナ 2 装置本体
3 原稿 9 感光体ドラム
10 感光体クリーニングユニット(第1のクリーニング手段)
19 中間転写ベルト
22 ベルトクリーニングユニット(第2のクリーニング手段)
23 紙転写ユニット 24 転写紙
35 導管(第1の搬送手段) 36 導管(第2の搬送手段)
37 中継ダクト 38 廃トナー収納筐
39 給紙テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 転写紙カセットを内蔵したフロントローディング給紙形式の給紙テーブルを有する装置本体の感光体上にトナー像を形成し、該トナー像を中間転写体を介して転写紙に転写した後、前記感光体及び前記中間転写体の表面に残留するトナーをそれぞれ第1,第2のクリーニング手段により除去して廃トナー収納筐に回収する多色画像形成装置において、前記第1,第2のクリーニング手段により除去したトナーを、前記第1,第2のクリーニング手段の長手方向の端部からその長手方向に直交してほぼ水平に前記装置本体内の側部に導く第1,第2の搬送手段と、該第1,第2の搬送手段により搬送されたトナーをほぼ垂直な中継ダクトを介して自重により落下させて回収する廃トナー収納筐とを設け、該トナー収納筐を前記装置本体底部の前記転写紙カセットの側部に位置させたことを特徴とする多色画像形成装置。
【請求項2】 中継ダクトには、それぞれ異なる位置で第1,第2の搬送手段が接続し、その接続部位を転写紙カセット上から偏倚させたことを特徴とする請求項1記載の多色画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3044101号(P3044101)
【登録日】平成12年3月10日(2000.3.10)
【発行日】平成12年5月22日(2000.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−224200
【出願日】平成3年9月4日(1991.9.4)
【公開番号】特開平5−61385
【公開日】平成5年3月12日(1993.3.12)
【審査請求日】平成10年8月25日(1998.8.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【参考文献】
【文献】実開 昭63−109970(JP,U)
【文献】実開 昭63−109971(JP,U)