説明

多色粉末化粧料の充填用中皿

【課題】極めて簡単な構造で、2色以上の粉末化粧料を、仕切板を設けることなく境界線を鮮明にして充填し得る、多色粉末化粧料の充填用中皿を提供すること。
【解決手段】有底の枠体内に、2色以上の粉末化粧料を充填するための区画を有し、該区画内底面の2色以上の粉末化粧料の境界に対応する位置に、底部の幅が1〜3mmで、高さが枠体の中皿底面からの高さの半分以下で、且つ中皿底面から0.2〜1.0mmのリブを設けてなる多色粉末化粧料の充填用中皿とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの区画に2色以上の粉末化粧料を仕切板なしに充填することのできる、多色粉末化粧料の充填用中皿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンデーション、アイシャドウのような粉末化粧料の充填方法としては、アルコール等の溶剤を加えて液状流動体とした粉末化粧料を中皿に充填した後、圧縮・乾燥等により溶剤を除去して固形状で中皿に収める方法(湿式充填法)が知られている。
中皿に充填する粉末化粧料が2色以上である場合には、中皿内に仕切板を設けて区画を形成し、その各々に粉末化粧料を充填するが、2色以上の粉末化粧料を混合させて使用する場合には、仕切板が存在すると、不便を生じる。
【0003】
中皿内に仕切板を設けることなく、2色以上の粉末化粧料を境界線を明確にして充填する方法としては、例えば特許文献1に記載された如く、中皿内に仕切り付きプレート板をセットして区画を形成した状態で液状流動体とした粉末化粧料を区画内に充填し、仕切り付きプレート板を取り外した後に、圧縮して仕切りを抜いた跡を消滅させ、更に乾燥させて固形状とする方法が提案されているが、この方法は作業性が悪く、部品費、加工費の増加は避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−143606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術を用いることなく、極めて簡単な構造で、2色以上の粉末化粧料を、仕切板を設けることなく、境界線を鮮明にして充填し得る、多色粉末化粧料の充填用中皿(以下、単に「中皿」と記すことがある。)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、中皿における、2色以上の粉末化粧料を充填するための区画の底面にリブを形成することにより、前記課題を解決した。
すなわち、本発明は、有底の枠体内に、2色以上の粉末化粧料を充填するための1以上の区画を枠体の側壁又は仕切板と枠体の側壁とで形成し、該区画内底面の2色以上の粉末化粧料の境界に対応する位置に、底部の幅が1〜3mmであり、高さが枠体の深さの半分以下で、且つ0.2〜1.0mmであるリブを設けてなる多色粉末化粧料の充填用中皿である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、極めて簡単な構造で、2色以上の粉末化粧料を、仕切板を設けることなく境界線を鮮明にして充填し得る中皿であって、2色以上の粉末化粧料を混合して使用するのに適した化粧料容器を構成し得る中皿を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の中皿の1例の平面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図1におけるB−B線断面図である。
【図4】本発明の中皿の他の例の平面図である。
【図5】図4におけるA−A線断面図である。
【図6】図4におけるB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の中皿は、混合して使用することが予定される2色以上の粉末化粧料を充填するための区画の区画内底面にリブを設けたものである。(以下、1色の粉末化粧料を充填するための区画を「単色区画」と記し、2色以上の粉末化粧料を充填するための区画を「多色区画」と記すことがある。)
尚、本発明の中皿には、必ずしも多色区画内底面の2色以上の粉末化粧料の境界に対応する位置の全体にリブを設けた態様だけではなく、後記する図1〜3に示した中皿のように、当該位置の一部にリブを設け、残りの部分に仕切板を設けた態様も含まれる。
【0010】
図1〜3に示した中皿では、枠体1内に、1つの円形の2色の粉末化粧料を充填するための多色区画2aのみを枠体1の側壁で形成している。多色区画2aの2色の粉末化粧料の境界に対応する位置には、一部にリブ3を設け、残りの部分に枠体の側壁と同じ高さの仕切板4を設けている。
図4〜6に示した中皿では、1つの四角形の2色の粉末化粧料を充填するための多色区画2aと3つの四角形の単色区画2bとを、枠体の側壁と仕切板4とで形成している。多色区画2aの2色の粉末化粧料の境界に対応する位置には、全体にリブ3を設けている。
【0011】
図1〜3に示した中皿は、2色の粉末化粧料を、混合して使用する場合と、各々単独で使用する場合を想定し、そのいずれの場合にも不便を感じることなく対応できるようにしたものであり、1つの多色区画2aの中に、リブ3を設けたことにより2色の粉末化粧料が仕切板を設けることなく境界線を鮮明にして充填され得る区域と、2色の粉末化粧料が枠体1と同じ高さの仕切板4で明確に仕切られて充填され得る区域とを有している。
多色区画2a内にリブ3と仕切板4とを設ける場合には、図1〜3のように、リブ3と仕切板4とを直線状に連続させるのが好ましいが、その位置は、2色の粉末化粧料の境界に対応する位置であり、2色の粉末化粧料の充填比率に応じて決定する。又、リブ3と仕切板4の長さの比率は、2色の粉末化粧料を混合して使用する量と各々単独で使用する量の比率に応じて決めれば良いが、1:3〜3:1とするのが適当である。
尚、図2の仕切り板4の部分における点線は、リブの高さを示すものであり、図3の点線は、底面を示すものである。
【0012】
図4〜6に示した中皿は、2色の粉末化粧料を混合して使用する色の組み合わせが1つであり、単独で使用する色が3色である場合を想定したものであり、1つの多色区画2aと3つの単色区画2bを、枠体1及び枠体1と同じ高さの仕切板4で形成している。そして、多色区画2aの中央にリブ3を設けている。
図4〜6に示した例において、多色区画2aを1つではなく、更に多くして、その各々にリブを設けても差し支えない。多色区画2aに充填した粉末化粧料の1つ以上と同じ色の粉末化粧料を単色区画2bにも充填して、単独で使用する形とすることも可能である。むろん、多色区画2aと単色区画2bを合計した区画の数を、4以上としても差し支えない。
各区画(多色区画2a及び単色区画2b)の大きさ及び多色区画2aにおけるリブの位置は、図1〜3に示した例と同様に、充填する粉末化粧料の比率に応じて決めれば良い。
【0013】
リブの形状は、リブの延伸方向に直交する断面の形状として、四角形、半円形、カマボコ形、台形等、種々選択することができるが、境界線をより鮮明にして湿式充填するためには、四角形又は台形であることが好ましい。台形としては下底の端点にある角の角度が互いに等しい等脚台形が好ましい。
【0014】
枠体1の深さ(側壁の区画内底面からの高さ)Xは、通常、2.0〜5.0mmであるが、リブの高さYは、枠体1の深さXの半分以下で、且つ0.2〜1.0mm、特に0.3〜0.8mmであることが好ましい。リブの高さYを0.2mm以上とすることにより、境界線をより鮮明にして湿式充填することができ、枠体の深さXの半分以下で、且つ1.0mm以下とすることにより、粉末化粧料が少なくなるまで、リブ3が使用の早い段階で表面に出ることなく、2色の混合使用を快適に行うことができる。
リブ3の底部の幅は、1〜3mmが好ましく、この範囲の幅とすることにより、境界線をより鮮明にして湿式充填することができる。
【0015】
中皿の各区画への粉末化粧料の充填は、必要に応じて各種油性成分や香料、防腐剤等を加えた粉末化粧料に、更に、溶剤を加えて液状流動体とし、その液状流動体を収納した充填機のノズルから、ノズルを平行移動させる等で均一化を図りながら、区画内に適量になるまで充填し、次いで圧縮・乾燥することにより行う。
溶剤としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等の低級アルコール、軽質流動イソパラフィン等の低沸点炭化水素、低重合度のジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性シリコーン、低沸点パーフルオロポリエーテル等を使用する。溶剤の使用量は、粉末化粧料に対する質量比として、0.2〜1.5の範囲とする。
多色区画2aへの充填の場合は、多色区画2aのリブで分けられた領域又はリブと仕切板で分けられた領域の各々に、液状流動体とした粉末化粧料を適量になるまで充填し、次いで圧縮・乾燥することにより行う。この場合、多色区画2aに充填する2色の粉末化粧料の量比率に関係なく、各色の粉末化粧料の厚みが同じになるように各々を充填する速度を調節することが好ましい。
【0016】
液状流動体とした粉末化粧料の流動性は、粉末化粧料や溶剤の種類や混合比等により異なる。多色区画2aに充填する2色以上の粉末化粧料の流動性は、必ずしも一致させる必要はないが、境界線をより鮮明にするためには、溶剤の種類や混合比等を調整して近接したものとするのが好ましい。
液状流動体とした粉末化粧料を充填した後は、プレスパッドを使用して通常0.1〜0.2MPa程度の圧力による圧縮と自然乾燥又は温風乾燥とを行うが、圧縮に先立って溶剤の大部分を除去する為の予備乾燥を実施しても良い。
【0017】
本発明の中皿は、熱可塑性樹脂を射出成形したものでも、金属板を成形加工したものでも良い。熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、PET等のポリエステル樹脂、メタクリル酸エステル重合体等のアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)等が使用でき、又、金属としては、アルミニウム、黄銅、鉄等が使用できる。
【0018】
本発明においては、中皿の多色区画2aにリブを設けることにより、液状流動体とした粉末化粧料を充填する最初の段階では、リブが存在するため、2色の化粧料は互いに混ざり合うことがないが、その後も当初充填した化粧料の上に積み重なって行き、充填量が多くなってリブの高さ以上の厚さになっても、その状態を維持しながら厚みが増していき、境界線を鮮明にして粉末化粧料を充填し得る。
【0019】
実施例1
図1〜3に示した如き形状のABS製の中皿の多色区画2aに、2色の粉末化粧料を湿式充填した。
中皿の多色区画2aは、深さ3.0mmの枠体の側壁で形成した直径35.0mmの円形であり、リブ3及び仕切板4は、円の中心から2.75mm偏った位置に、直線状に設けており、リブ3は断面が四角形で、幅3.0mm、高さ0.6mmであり、仕切板4は断面が四角形で、幅3.0mm、高さ3.0mmであり、リブ3と仕切板4とは、同じ長さであり、多色区画2aの中心を通る線上で連続している。
2色(A色とB色)の粉末化粧料において、A色は、下記の成分1〜12(%は、質量%)からなる粉末化粧料100質量部に対し30質量部の軽質流動イソパラフィンを加えて液状流動体としたものである。尚、粉末化粧料は、下記の成分1〜3を混合し、70℃に加熱して溶解させたのち、別途均一混合した成分4〜12を加えて均一分散させ、粉砕したものである。
A色
成分1:メチルフェニルポリシロキサン 5.0%
成分2:ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル) 4.0%
成分3:リンゴ酸ジイソステアリル 9.0%
成分4:マイカ 16.0%
成分5:タルク 10.0%
成分6:ステアロイルグルタミン酸アルミニウム被覆黒酸化鉄 2.0%
成分7:ステアロイルグルタミン酸アルミニウム被覆黄酸化鉄 0.5%
成分8:ステアロイルグルタミン酸アルミニウム被覆ベンガラ 0.5%
成分9:ラウロイルリシン被覆雲母チタン 5.0%
成分10:シリコーン処理雲母チタン 20.0%
成分11:雲母チタン 25.0%
成分12:ベンガラ被覆雲母チタン 3.0%
B色は、下記の成分1〜10(%は、質量%)からなる粉末化粧料100質量部に対し40質量部の軽質流動イソパラフィンを加えて液状流動体としたものである。尚、粉末化粧料は、下記の成分1〜3を混合し、70℃に加熱して溶解させたのち、別途均一混合した成分4〜10を加えて均一分散させ、粉砕したものである。
B色
成分1:メチルフェニルポリシロキサン 5.0%
成分2:ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル) 4.0%
成分3:リンゴ酸ジイソステアリル 9.0%
成分4:マイカ 7.0%
成分5:黒酸化鉄 10.0%
成分6:黄酸化鉄 2.0%
成分7:ベンガラ 3.0%
成分8:酸化鉄被覆マイカ 40.0%
成分9:ベンガラ被覆雲母チタン 15.0%
成分10:雲母チタン 5.0%
液状流動体としたA色とB色の2色の粉末化粧料を、充填機のノズルから、多色区画2aのリブで区分けされた2つの領域の各々に、ノズルを平行移動させて均一化を図りながら、枠体1と同じ高さとなるまで充填し、次いで圧縮・乾燥を行った。
圧縮は、予備打(打型圧0.1MPa、打型時間1.0秒)と、本打ち(打型圧0.2MPa、打型時間1.8秒)とを行い、乾燥は、温風循環型の乾燥機により行った。
得られた中皿におけるリブ2aの上方延長線上にある、2色の粉末化粧料の境界線の状態を目視し、合否を判定した。
境界線が、多色区画2aの長辺の中央の線から、左右に1.5mm以上ずれたもの、即ち、境界線がにじみやブレで乱れてしまったり、斜めになったりして、幅3.0mmの中に納まっていないものを「不合格」とし、全域に亙って幅3.0mmの中に納まっているものを「合格」と判定した。
その結果、試験品29個中、不合格となったものは4個であり、不合格率は13.8%であった。
【0020】
比較例1
多色区画2aにリブを設けない以外は、実施例1におけると全く同じ中皿の多色画に、2色の粉末化粧料を実施例1と同様にして湿式充填した。
得られた中皿における、仕切板4を設けていない領域における、2色の粉末化粧料の境界線の状態を目視し、実施例1と同様の基準で合否を判定した。
その結果、試験品26個中、不合格となったものは10個であり、不合格率は38.5%であった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の中皿は、極めて簡単な構造で、2色以上の粉末化粧料を、仕切板を設けることなく境界線を鮮明にして湿式充填し得るものであり、アイシャドウや頬紅(チーク)、ファンデーション、白粉等の粉末化粧料を混合して使用したいとのユーザーに要望に応え得る化粧料容器に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0022】
1:枠体
2a:多色区画
2b:単色区画
3:リブ
4:仕切板
X:枠体の深さ
Y:リブの高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底の枠体内に、2色以上の粉末化粧料を充填するための1以上の区画を枠体の側壁又は仕切板と枠体の側壁とで形成し、該区画内底面の2色以上の粉末化粧料の境界に対応する位置に、底部の幅が1〜3mmであり、高さが枠体の深さの半分以下で、且つ0.2〜1.0mmであるリブを設けてなる多色粉末化粧料の充填用中皿。
【請求項2】
請求項1に記載の多色粉末化粧料の充填用中皿の、2色以上の粉末化粧料を充填するための区画の、リブで分けられた領域の各々に、溶剤を加えて液状流動体とした2色以上の粉末化粧料を充填し、溶剤を除去することによって得られる、多色粉末化粧料が充填された中皿。
【請求項3】
請求項2に記載の多色粉末化粧料が充填された中皿を配置してなる化粧料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−218084(P2011−218084A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93168(P2010−93168)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)