説明

多軸慣性力印加装置

【課題】単軸加振機(単軸慣性力発生器)で三軸方向に振動及び回転の印加が可能な多軸慣性力印加装置を提供する。
【解決手段】下部支持板110と、下部支持板110から立ち上がるように固定された第1支持部材120と、第1支持部材120に立ち上がり方向に直交するように位置し、第1支持部材120に回転可能に結合された第2支持部材130と、第2支持部材130に積層され、積層方向に対応する回転軸を中心に回転できるように第2支持部材130に結合された第3支持部材140と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸慣性力印加装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、MEMS技術を利用した小型、軽量の慣性センサの製作が容易になるにつれて家電製品等に応用領域が拡大されている。また、これによるセンサの機能も発展し続け、一つのセンサで一つの軸に対する慣性力のみを検出できる単軸センサから、一つのセンサで二軸以上の多軸に対する慣性力を検出できる多軸センサへと、その機能が日々発展している。
【0003】
また、製造された慣性センサは、製品として発売する前に、性能試験を必須に行う。なお、慣性センサは、センサに印加された慣性力(角速度、加速度)を電気的な信号に変更する変換器(Transducer)であるため、慣性力を直接センサに印加し、電気的な出力を測定することにより、その性能を確認することができる。
【0004】
しかし、単軸から多軸にセンサの機能が拡大するにつれて、測定の際、センサに印加すべき慣性力の方向も単軸から多軸に増加しなければならず、これにより、慣性力を印加する装置の構造や機能が非常に複雑になるという問題点を有している。
【0005】
そのため、従来技術による三軸のレートテーブル(Rate Table)の場合、単軸のレートテーブル(Rate Table)に比べて体積も3倍以上大きいだけでなく、価格も非常に高い。特に、線形加速度を発生する用途に使用される加振機(Vibration Exciter)の場合、一つの装置で三軸を同時に加振することが不可能であるため、測定しようとするセンサを各軸ごとに装置を移動しながら測定しなければならないという問題点を有している。
【0006】
また、このような理由により、多軸慣性センサを試験するためにかかる時間は、単軸センサに比べて非常に長くなり、試験時間(Test Time)の増加は、結局製品のコスト増加に繋がる問題となり、製品の競争力を低下する要因となる。
【0007】
また、三軸方向の慣性力を検出できる三軸角速度センサの場合、互いに直交する三軸方向全てに対してその特性を評価しなければならないため、三軸角速度印加装置が必要である。しかし、従来技術による三軸角速度印加装置は、単軸角速度印加装置に比べて体積が非常に大きく、使用部品の数も3倍以上となる。このような装備は、高価であるだけでなく、非常に精密なモータが必要であり、回転量を検出できる角度エンコーダー(Angle Encoder)、電気信号をモータの回転軸を介して外部に連結するスリップリング(Slip Ring)などの非常に精密な部品が使用されており、軸が増加するとその倍ほどの部品が必要となる。また、スリップリング(Slip Ring)は、DUTから出力された信号を外部測定装備に連結するチャンネルの機能を行うが、モータの回転時に、スリップリング自体がノイズ源になるため、電気信号が通過するスリップリング(Slip Ring)の個数が増加するほどチャンネルのノイズ成分が増加するという問題点を有している。
【0008】
また、加振機(Vibration Exciter)あるいは線形加速度発生器の場合、一つの装置で多軸に加速度を発生することが非常に難しいため、単軸加振機を複数台角軸方向に固定して使用することが一般的である。このような場合、多軸測定のために、DUT(Device Under Test)を軸方向に沿って設定された複数台の加振機に移動して装着しなければならない煩わしさがあり、試験時間を大きく増加させ、軸の方向ごとに複数台の加速度印加装置が必要となり、測定システムを構成するコストも増加するという問題点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような問題点を解決することを目的とし、単軸加振機(単軸慣性力発生器)で三軸方向に振動及び回転の印加が可能な多軸慣性力印加装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記本発明の目的を果たすために、本発明による多軸慣性力印加装置は、下部支持板と、前記下部支持板から立ち上がるように固定された2個の第1支持部材と、前記2個の第1支持部材内側に立ち上がり方向に直交するように位置し、前記第1支持部材に回転可能に結合された第2支持部材と、前記第2支持部材に積層され、積層方向に対応する回転軸を中心に回転できるように第2支持部材に結合された第3支持部材と、を含む。
【0011】
また、前記第3支持部材には、積層方向にDUT装着部が形成される。
【0012】
また、本発明による多軸慣性力印加装置は、前記第2支持部材に回転軸方向に結合される方向転換レバーをさらに含み、前記方向転換レバーは、第1支持部材の外側部に回転可能に結合される。
【0013】
また、前記第2支持部材には、前記方向転換レバーが結合及び固定される結合孔が形成される。
【0014】
また、前記第1支持部材には、前記方向転換レバーが貫通されるための支持孔が形成される。
【0015】
また、本発明による多軸慣性力印加装置は、前記第3支持部材に結合される方向転換レバーをさらに含む。
【0016】
また、本発明による多軸慣性力印加装置は、前記第1支持部材及び第2支持部材に連結され、前記第2支持部材を支持する補助支持板をさらに含む。
【0017】
また、前記第2支持部材には、補助支持板に対応する挿入突起が形成され、前記補助支持板には、前記挿入突起に対応する固定溝が形成される。
【0018】
また、本発明による多軸慣性力印加装置は、前記第2支持部材及び第3支持部材をそれぞれ移動させる駆動装置をさらに含む。
【0019】
本発明の特徴及び利点は、添付図面に基づいた以下の詳細な説明によってさらに明らかになるであろう。
【0020】
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に解釈されてはならず、発明者が自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されるべきである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のよると、一つの方向のみに加振及び回転が可能な単軸慣性力発生器を用いて多軸方向の加振及び回転を可能な多軸慣性力印加装置を得ることができる。前記多軸慣性力印加装置は、簡単な構成を有しており、安価で具現することができる。また、前記多軸慣性力印加装置におけるスリップリングの数が従来技術による多軸慣性力印加装置に比べ減少され、ノイズ及び測定時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による多軸慣性力印加装置の第1実施例による概略的な使用状態図である。
【図2】本発明による多軸慣性力印加装置の第2実施例による概略的な使用状態図である。
【図3】本発明による多軸慣性力印加装置の第3実施例による概略的な使用状態図である。
【図4】本発明の他の実施例による多軸慣性力印加装置の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は、添付図面に係る以下の詳細な説明及び好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。また、本発明を説明するにあたり、係わる公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0024】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施例による多軸慣性力印加装置について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明による多軸慣性力印加装置の第1実施例による概略的な使用状態図である。
【0026】
図示したように、前記多軸慣性力印加装置100は、下部支持板110、第1支持部材120、第2支持部材130及び第3支持部材140を含む。
【0027】
より具体的に、前記下部支持板110は、駆動手段(不図示)に連結され、回転または垂直振動を伝達するためのものである。
【0028】
また、前記第1支持部材120は、前記下部支持板110から立ち上がるように固定される。
【0029】
また、第2支持部材130は、第1支持部材120に立ち上がり方向に直交するように位置し、前記第1支持部材120に回転可能に結合される。このため、多軸慣性力印加装置100は、前記第2支持部材130に回転軸方向に結合される方向転換レバー150をさらに含み、前記第2支持部材130には、結合孔(不図示)が形成され、前記第1支持部材120には、支持孔(不図示)が形成され、前記方向転換レバー150には、結合突起151が形成され、前記結合突起151は、前記支持孔を貫通及び支持するとともに前記結合孔に結合される。このように形成することにより、前記方向転換レバー150により、前記第2支持部材130は、前記第1支持部材に対して回転方向に移動することができる。
【0030】
また、前記第2支持部材130は、前記第1支持部材の内側に結合される側壁部131及び前記側壁部131に直交する支持部132を備え、前記結合孔は側壁部に形成される。
【0031】
また、第3支持部材140は、前記第2支持部材に積層され、積層方向に対応する回転軸を中心に回転できるように第2支持部材130に結合される。また、前記第3支持部材140には、積層方向にDUT装着部(不図示)が形成される。前記DUT装着部には、慣性センサ200などが装着される。
【0032】
また、前記多軸慣性力印加装置100は、前記第3支持部材140に結合される方向転換レバー170をさらに含む。また、前記方向転換レバー170の操作により、前記第3支持部材140は、第2支持部材130に対して回転する。
【0033】
また、本発明による多軸慣性力印加装置は、前記第1支持部材120及び第2支持部材130に連結され、前記第2支持部材130を支持する補助支持板160をさらに含む。
【0034】
また、前記第2支持部材130には、補助支持板に対応する挿入突起121が形成され、前記補助支持板160には、前記挿入突起に対応する固定溝161が形成される。
【0035】
また、本発明による多軸慣性力印加装置は、前記第2支持部材及び第3支持部材をそれぞれ移動させる駆動装置をさらに含むことができる。
【0036】
上記構成においてZ軸が回転軸方向にセットされた後、慣性力を印加される使用状態が図1に示されている。
【0037】
図2は、本発明による多軸慣性力印加装置の第2実施例による概略的な使用状態図である。
【0038】
図示したように、図1に図示した多軸慣性力印加装置において、方向転換レバー150を矢印方向である反時計方向に回転する場合、前記第2支持部材130は、第1支持部材120に対して−90°回転する。
【0039】
図1は、Z軸を回転軸方向にセットされた後、慣性力が印加される使用状態を図示しているが、図2は、X軸が回転軸方向にセットされた後、慣性力を印加する使用状態を示している。
【0040】
図3は、本発明による多軸慣性力印加装置の第3実施例による概略的な使用状態図である。
【0041】
図示したように、図2に図示した多軸慣性力印加装置において、方向転換レバー170を矢印方向である反時計方向に回転する場合、前記第3支持部材140は、第2支持部材130に対して−90°回転する。
【0042】
図2は、X軸が回転軸方向にセットされた後、慣性力が印加される使用状態を図示しているが、図3は、Y軸が回転軸方向にセットされた後、慣性力が印加される使用状態を示している。
【0043】
上記のように形成されることにより、本発明による多軸慣性力印加装置は、加振及び回転方向が常に一定であっても、第1、2及び3支持部材によって慣性センサ200が受ける慣性力の軸を変更することができる。即ち、一つの方向のみに加振及び回転が可能な単軸慣性力発生器を用いて、多軸方向の加振及び回転が可能となる。
【0044】
また、本発明による多軸慣性力印加装置は、従来技術により慣性力を印加するモータのように、非常に精密であり、モータの回転を認識する角度エンコーダー(Angle Encoder)及びDUTとの電気的な連結チャンネルを確保するためのスリップリングを含む必要がないため、非常に安価で簡単に具現することができる。
【0045】
図4は、本発明の他の実施例による多軸慣性力印加装置の概略的な斜視図である。
【0046】
図示したように、多軸慣性力印加装置は、図1に図示した方向転換レバー150の代わりにモータ(M)を用いて前記第2支持部材130を回転させる。
【0047】
また、本発明による多軸慣性力印加装置は、別のモータ(不図示)を備えて第3支持部材を移動させることもできる。
【0048】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは、本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明による多軸慣性力印加装置は、これに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0049】
本発明の単純な変形乃至変更は、いずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は、添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、単軸加振機(単軸慣性力発生器)で三軸方向に振動及び回転の印加が可能な多軸慣性力印加装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
100 多軸慣性力印加装置
110 下部支持板
120 第1支持部材
130 第2支持部材
140 第3支持部材
150、170 方向転換レバー
160 補助支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部支持板と、
前記下部支持板から立ち上がるように固定された第1支持部材と、
前記第1支持部材に立ち上がり方向に直交するように位置し、前記第1支持部材に回転可能に結合された第2支持部材と、
前記第2支持部材に積層され、積層方向に対応する回転軸を中心に回転できるように第2支持部材に結合された第3支持部材と、を含むことを特徴とする多軸慣性力印加装置。
【請求項2】
前記第1支持部材は2個が備えられ、前記第2支持部材は前記第1支持部材の内側に立ち上がり方向に直交するように位置することを特徴とする請求項1に記載の多軸慣性力印加装置。
【請求項3】
前記第3支持部材には積層方向にDUT装着部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の多軸慣性力印加装置。
【請求項4】
前記第2支持部材に回転軸方向に結合される方向転換レバーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の多軸慣性力印加装置。
【請求項5】
前記第2支持部材には前記方向転換レバーが結合及び固定される結合孔が形成されることを特徴とする請求項4に記載の多軸慣性力印加装置。
【請求項6】
前記方向転換レバーは第1支持部材の外側部に回転可能に結合されることを特徴とする請求項4に記載の多軸慣性力印加装置。
【請求項7】
前記第1支持部材には前記方向転換レバーが貫通されるための支持孔が形成されることを特徴とする請求項6に記載の多軸慣性力印加装置。
【請求項8】
前記第3支持部材に結合される方向転換レバーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の多軸慣性力印加装置。
【請求項9】
前記第1支持部材及び第2支持部材に連結され、前記第2支持部材を支持する補助支持板をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の多軸慣性力印加装置。
【請求項10】
前記第2支持部材には補助支持板に対応する挿入突起が形成され、前記補助支持板には前記挿入突起に対応する固定溝が形成されることを特徴とする請求項9に記載の多軸慣性力印加装置。
【請求項11】
前記第2支持部材及び第3支持部材をそれぞれ移動させる駆動装置をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の多軸慣性力印加装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−122995(P2012−122995A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253623(P2011−253623)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)