説明

多量体樹脂酸組成物の製造方法

【課題】本発明はより簡便で低コストの多量体樹脂酸組成物の製造法に関する。
【解決手段】90〜99.9重量%の樹脂酸を0.01〜10重量%の有機スルフォン酸化合物を触媒にし100〜300℃で0.1〜24時間反応させてなる多量体樹脂酸組成物の製造方法。または、0.1〜1重量%の有機スルフォン酸化合物を触媒にし150〜195℃で1〜8時間、無溶媒または溶媒10重量%以下で反応させてなる上記多量体樹脂酸組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多量体樹脂酸組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷インキ用樹脂としてロジン類を含む樹脂酸が樹脂原料の一部として使用されている。さらに例えばアルキッド樹脂やポリエステル樹脂等の分子量を大きくする等の為、ロジン類を含む樹脂酸の多量体である重合ロジン等の二量体樹脂酸を含む樹脂酸が樹脂原料の一部として使用されることもある。
【0003】
その多量体樹脂酸の製造方法として樹脂酸を硫酸等を触媒にしトリクロロエタン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、酢酸等の極性溶媒を多量に用い常温から100℃前後で数時間反応させ、場合により水洗により触媒を除去し、さらに溶媒を減圧除去により製造する方法等が開示されている。(開示文献名) 1)Ind.Chem.Prod.Res.Develop.,Vol.12,No.3,1973 、2)Ind.Chem.Prod.Res.Develop.,Vol.9,No.1,60,1970 、3)Ind.Chem.Prod.Res.Develop.,Vol.11,No.2,156,1972 )しかし印刷インキ業界も成熟期にあり、印刷インキやその原料である樹脂の低コスト化が望まれている。
【0004】
しかし上記多量体樹脂酸の製造法では溶媒を多量に使用し、また反応時間も長くまた触媒を水洗除去する為例えば二量体樹脂酸を含む樹脂酸である重合ロジン等はコストについて単量体樹脂酸のひとつであるガムロジン等の2倍の市場価になっているのが実情であり、反応工程も煩雑であり、より反応工程を簡便にした低コスト樹脂原料の必要性が望まれていた。
【特許文献1】米国特許2108928号
【特許文献2】米国特許2124675号
【特許文献3】米国特許2136525号
【非特許文献1】Ind.Chem.Prod.Res.Develop.,Vol.12,No.3,1973
【非特許文献2】Ind.Chem.Prod.Res.Develop.,Vol.9,No.1,60,1970
【非特許文献3】Ind.Chem.Prod.Res.Develop.,Vol.11,No.2,156,1972
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はより簡便、低コストの多量体樹脂酸組成物の製造法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明は、90〜99.9重量%の樹脂酸を0.01〜10重量%の有機スルフォン酸化合物を触媒にし100〜300℃で0.1〜24時間で反応させてなる多量体樹脂酸組成物の製造方法に関する。
【0007】
くわえて本発明は、0.1〜1重量%の有機スルフォン酸化合物を触媒にし150〜195℃で1〜8時間、無溶媒または溶媒10重量%以下で反応させてなる上記多量体樹脂酸組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法により簡便、低コストの多量体樹脂酸組成物の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の樹脂酸とは天然由来の樹脂酸に含有される遊離またはエステルとして存在する有機酸であれば特に限定されるものではない。例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、d−ピマール酸、イソ−d−ピマール酸、ポドカルプ酸、アガテンジカルボン酸、ダンマロール酸、安息香酸、桂皮酸、p−オキシ桂皮酸が例示される。これらの樹脂酸を含有する天然樹脂の形態で使用することが取り扱い上好ましく、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、部分不均化ロジン、部分水素添加ロジン、部分重合ロジン、コパール、ダンマル等が例示される。
【0010】
本発明の有機スルフォン酸化合物とはメタンスルフォン酸、エタンスルフォン酸等の脂肪族スルフォン酸、ベンゼンスルフォン酸、(オルソまたはメタまたはパラ)トルエンスルフォン酸、キシレンスルフォン酸等の(アルキル)芳香族スルフォン酸等が例示される。
その使用量は90〜99.9重量%の樹脂酸に対し0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜1重量%が望ましい。0.01%より少ないと得られる多量体樹脂酸量が少なく、10重量%より多いと得られる樹脂酸量も多くなるが、特に湿し水を使用して印刷されるオフセット印刷用インキでは印刷中の汚れや印刷機の金属ロールの錆びが発生する可能性があり、好ましくない。これらの問題を減少させるには、0.1〜1重量%がより望ましい。
【0011】
反応温度は100〜300℃、さらには150〜195℃が望ましい。これより低いと得られる多量体樹脂酸量が少なく、多いと樹脂酸中のカルボン酸の分解量が多くなり、また得られる樹脂の軟化点が下がる。特に反応温度が200℃を超えると軟化点が常温(25℃)近くになり印刷インキに使用すると乾燥性が劣化してくる。
【0012】
反応時間は0.1〜24時間、好ましくは1〜8時間が望ましい。これより少ないと得られる多量体樹脂酸量が少なく、多いと得られる多量体樹脂酸がコスト高になる。
【0013】
溶媒はコスト高になる為使用しないか、または使用するにしても10%以下が望ましい。
多量体は2量体が主成分となるが、勿論多量体の生成量は多いほうが望ましい。しかし本発明の場合仕込み量に対し多量体が10〜70%生成すれば十分でありそれ以上を求めるとさらに反応時間を長くするとか触媒を多くするとかでコスト高になり必ずしも望ましいものではない。
【0014】
以下本発明について実施例、比較例について説明する。本発明は重量部で示す。
【0015】
実施例1
温度計、攪拌機付き四ッ口フラスコに樹脂酸として中国ガムロジンを99.5重量部、メタンスルフォン酸0.5部仕込み窒素気流下に加熱170℃で4時間反応させた。東ソー(株)製ゲルパーミエイションクロマトグラフィで測定したところロジンの2量体は26.5%生成されていた。(実施例1)尚、当初の中国ガムロジンの2量体量は1%であった。
以下同様に表1に実施例2〜15について示す。
【0016】
【表1】

【0017】
比較例:(文献名Ind.Chem.Prod.Res.Develop.,Vol.11,No.2,156,1972 に準じた方法で実験をした)
温度計、攪拌機付き四ッ口フラスコに中国ガムロジンを15重量部、クロロホルム200重量部を溶解させ、硫酸1.8部仕込み窒素気流下に加熱44℃で20時間反応させた。ロジンの2量体は75%生成されていた。(比較例1)
以下同様に表2に比較例2〜14について示す。
【表2】

【0018】
上記比較例では多量の溶媒を使用し、反応工程も煩雑でまた触媒量も多い為コスト高になるが、実施例では溶媒を使用せず、また反応工程も簡便でよりコストが安くなる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
90〜99.9重量%の樹脂酸を0.01〜10重量%の有機スルフォン酸化合物を触媒にし100〜300℃で0.1〜24時間反応させてなる多量体樹脂酸組成物の製造方法。
【請求項2】
0.1〜1重量%の有機スルフォン酸化合物を触媒にし150〜195℃で1〜8時間、無溶媒または溶媒10重量%以下で反応させてなる請求項1記載の多量体樹脂酸組成物の製造方法。










【公開番号】特開2006−37036(P2006−37036A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223039(P2004−223039)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】