説明

天井クレーンの据付け方法及び据付けシステム

【課題】建屋の限られた空間を利用して天井クレーンを新設、増設、及び更新することが可能な天井クレーンの据付け方法及び据付けシステムを提供する。
【解決手段】ガーダー部材13、14とトロリー15を備えた天井クレーン16の据付け方法におけるガーダー部材13、14の据付けは、建屋10の作業領域19内に配置した第1の昇降手段20で上部に旋回手段22を取付けた第1の水平支持架台21を支持する第1工程と、旋回手段22にガーダー部材13、14をレール支持台11、12の内側に位置するように平面視して斜めに載せる第2工程と、第1の昇降手段20でガーダー部材13、14を持上げレール11a、12aより高所に保持する第3工程と、旋回手段22でガーダー部材13、14を旋回させレール11a、12aに直交配置する第4工程と、第1の昇降手段20でガーダー部材13、14を下げてレール11a、12a上に載置する第5工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建屋に天井クレーンを新設、増設、及び更新する際の天井クレーンの据付け方法及び据付けシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
天井クレーンを建屋の完成後に据付ける場合、天井クレーンを据付け高さより高い位置に持ち上げる必要があるため、建屋全体の高さを高くしなければならない。このため、天井クレーンは、天井クレーンを据付ける建屋の鉄骨構造物が建て上がった際に上架し稼動可能な状態にしている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−228974号公報
【特許文献2】特開平1−252495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1、2に記載された発明は、天井クレーンの新設の場合のみを対象としたもので、天井クレーンを増設する場合や更新する場合は、例えば、建屋内に設置されている機器との干渉を避けるため、建屋の壁や屋根を切り破って建屋外から大型重機(トラッククレーン等)を用いて架設している。このため、大型重機を配置するだけのスペースを建屋の周辺に確保できないと天井クレーンの架設ができないという問題があり、更に、海沿いの建屋の場合、壁や屋根を切り破ることにより建屋内に潮風が流入し、建屋内の機器に悪影響を及ぼすという問題も生じる。一方、建屋内にトラッククレーンが進入できる場合でも、建屋の屋根高さや屋根形状によっては、トラッククレーンのブームと建屋の天井が干渉し、天井クレーンの吊上げ揚程を確保できず天井クレーンを据付けることができない問題も生じる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、建屋の限られた空間を利用して天井クレーンを新設、増設、及び更新することが可能な天井クレーンの据付け方法及び据付けシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る天井クレーンの据付け方法は、建屋の上部の同一高さ位置に平行に配設された対となるレール支持台にそれぞれ設けられたレール上に両側がそれぞれ載置され、該レールに沿って前後方向に走行し、対となるガーダー部材を備えたガーダーと、対となる前記ガーダー部材に載置され、該レールと直交する方向に移動するトロリーとを備えた天井クレーンの据付け方法であって、前記ガーダー部材の据付けにあっては、
前記建屋の床上であって、対となる前記レール支持台で挟まれる作業領域内に複数の第1の昇降手段を配置し、該第1の昇降手段の上に、上部に旋回手段を備えた横長の第1の水平支持架台を、該旋回手段の回転中心が対となる前記レールの中央に位置するようにして配置する第1工程と、
前記旋回手段の上に前記ガーダー部材を、対となる前記レール支持台の内側に位置するように平面視して斜めに載せる第2工程と、
前記各第1の昇降手段を駆動させて前記ガーダー部材を持ち上げ、対となる前記レール支持台の間を通過させて該ガーダー部材の両側に設けられた車輪の下端部を前記レールより高い位置に保持する第3工程と、
前記旋回手段を操作し前記ガーダー部材を旋回させて、前記レールに対して直交配置する第4工程と、
前記各第1の昇降手段を駆動させて前記ガーダー部材を下降させ、前記車輪をそれぞれ対となる前記レール上に載置する第5工程とを有する。
【0007】
第1の発明に係る天井クレーンの据付け方法において、前記第4工程で、前記第1の水平支持架台を介した前記ガーダー部材の支持を、前記第1の水平支持架台の両側を支持していた複数の前記第1の昇降手段から、前記第1の水平支持架台の中央部を下から支持する旋回用支持架台に切り替えた後、前記旋回手段を操作して前記ガーダー部材を旋回させ、次いで、該ガーダー部材を前記第1の昇降手段で再支持して前記旋回用支持架台による該ガーダー部材の支持を解除することが好ましい。
【0008】
第1の発明に係る天井クレーンの据付け方法において、前記旋回用支持架台は、前記第1の水平支持架台の下部に取付けられて該第1の水平支持架台と共に昇降し、複数の第1の単位構造物を組合わせて構成した懸垂台と、前記床上を移動可能で複数の第2の単位構造物を組合わせて構成した移動台とを有し、該移動台を該懸垂台の下方位置まで移動させて該懸垂台に接続することにより前記第1の水平支持架台を介して前記旋回手段に載置された前記ガーダー部材の支持を行ない、該移動台を該懸垂台から取外して退避させた後、前記第1の昇降手段を下げて、前記レール上に載った該ガーダー部材の支持を、前記第1の水平支持架台及び前記第1の昇降手段から解除することができる。
【0009】
第1の発明に係る天井クレーンの据付け方法において、前記対となるガーダー部材を前記レール上に載せた後、前記トロリーの据付けについては、
前記トロリーの走行方向と直交する前後方向に沿ったトロリー前後幅より長い第2の水平支持架台を前後方向に向けて前記作業領域内の前後方向に向かい合って配置した第2の昇降手段で該第2の水平支持架台の前後両側を支持し、更に、該第2の水平支持架台の中央上部に、前記トロリーの走行方向に沿ったトロリー左右幅より長い第3の水平支持架台を前記レール支持台に直交する方向に向けて載置する第6工程と、
前記第3の水平支持架台の中央上部に前記トロリーを該トロリーの走行方向を前記レール支持台に直交する方向に向けて位置合せして載置して、前記第2の昇降手段で前記第2の水平支持架台を前記レール支持台と前記床との中間高さ位置まで持ち上げる第7工程と、
前記第2の水平支持架台を介して持ち上げられた前記第3の水平支持架台の両側の下方に昇降機構をそれぞれ配置し、該昇降機構で該第3の水平支持架台の両側を支持して前記レール上に据付けられた前記ガーダー部材の上位置まで持ち上げて保持する第8工程と、
対となる前記ガーダー部材を前記レール上で移動させて持ち上げた前記トロリーに前後方向から接近させ、該トロリーの上下位置及び該ガーダー部材の前後位置をそれぞれ調整して該トロリーを該ガーダー部材の第2のレール上に載置する第9工程とを有することができる。
【0010】
第1の発明に係る天井クレーンの据付け方法において、前記昇降機構は、複数の第3の単位構造物を組合わせて構成した支持台とその上に水平移動可能に設けられている第3の昇降手段とを有し、前記第2の昇降手段で中間高さ位置まで持ち上げ、前記第8工程で、前記第3の昇降手段を移動させて前記第3の水平支持架台の両側下部に配置することが好ましい。
【0011】
前記目的に沿う第2の発明に係る天井クレーンの据付けシステムは、第1の発明に係る天井クレーンの据付け方法に使用する天井クレーンの据付けシステムであって、
前記第1、第2、第3の水平支持架台をそれぞれ構成できる桁部材と、
前記第1、第2、第3の昇降手段として使用できる大ストロークジャッキと、
前記旋回手段として使用できるターンテーブルと、
前記第1、第2、第3の単位構造物として使用できる複数の単位架構とを有する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜5記載の天井クレーンの据付け方法においては、作業領域内に配置する第1の昇降手段と、第1の昇降手段で支持される第1の水平支持架台の上部に取付けられてガーダー部材を載置する旋回手段とを順次組合わせて使用することで、建屋の屋根、天井、壁等を切り破らずに建屋内の限られた空間を利用して天井クレーンのガーダー部材を上架することができる。
【0013】
特に、請求項2記載の天井クレーンの据付け方法においては、ガーダー部材を旋回させる際に、第1の水平支持架台を介したガーダー部材の支持を第1の昇降手段から旋回用支持架台に切り替えてから行うので、ガーダー部材を安定して旋回させることができる。
【0014】
請求項3記載の天井クレーンの据付け方法においては、旋回用支持架台は第1の水平支持架台の下部に取付けられる懸垂台と、床上を移動して持ち上げられた懸垂台の下方位置に進入して懸垂台に接続される移動台とを有するので、ガーダー部材の支持を、第1の昇降手段から旋回用支持架台に切り替える操作、旋回用支持架台から第1の昇降手段に切り替える操作を迅速に行うことができる。
【0015】
請求項4記載の天井クレーンの据付け方法においては、第2、第3の昇降手段を順次組合わせて使用することで、建屋の屋根、天井、壁等を切り破らずに建屋内の限られた空間を利用して天井クレーンのトロリーを上架することができる。
【0016】
請求項5記載の天井クレーンの据付け方法においては、第3の昇降手段を支持台上に載せて使用することで、第3の昇降手段にストロークの大きなものを使用しなくても、トロリーをガーダー部材より高い位置に持ち上げることができる。
【0017】
請求項6記載の天井クレーンの据付けシステムにおいては、ガーダー部材及びトロリーの据付けを、建屋の屋根、天井、壁等を切り破らずに建屋内の限られた空間を利用して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る天井クレーンの据付けシステムによって据付けられる天井クレーンの説明図、図2は同天井クレーンの据付けシステムを用いたガーダー部材の据付けの説明図、図3は(A)は同天井クレーンの据付けシステムの正面図、(B)は側面図、図4は昇降手段で持ち上げた懸垂台と移動台を接続する際の説明図、図5は同天井クレーンの据付けシステムを用いたトロリーの据付けの説明図、図6は同トロリーの据付け状況を示す正面図、図7は同トロリーの据付け状況を示す側面図、図8は第3の昇降手段を移動させる際の説明図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る天井クレーンの据付けシステム17(図2、図3(A)、(B)、図5〜図8参照)によって据付けられる天井クレーン16は、建屋10の上部の同一高さ位置に平行に配設された対となるレール支持台11、12にそれぞれ設けられたレール11a、12a上に両側がそれぞれ載置され、レール11a、12aに沿って前後方向に走行し、対となるガーダー部材13、14を備えたガーダー14aと、ガーダー部材13、14に載置され、レール11a、12aと直交する方向に移動するトロリー15とを備えている。
【0020】
天井クレーンの据付けシステム17は、図3〜図8に示すように、ガーダー部材13、14を持ち上げる第1、第2の昇降手段及びトロリー15を持ち上げる第3の昇降手段として使用できる複数の大ストロークジャッキ20と、ガーダー部材13(ガーダー部材14も同様)を載置して旋回する旋回手段として使用できるターンテーブル22と、ターンテーブル22を載置する横長の第1の水平支持架台21及びトロリー15を支持する横長の第2の水平支持手段43をそれぞれ構成できる複数の桁部材31とを有している。更に、天井クレーンの据付けシステム17は、ターンテーブル22に載置したガーダー部材13、14を旋回させる際に第1の水平支持架台21を支持する旋回用支持架台23を構成するものであって、第1の水平支持架台21の下部中央に取り付けられる懸垂台36と、第1の水平支持架台21と共に持ち上げられた懸垂台36の下方位置まで移動させて懸垂台36の下部に接続される移動台37をそれぞれ構成する第1、第2の単位構造物、第3の昇降手段が載置される支持台50を構成する第3の単位構造物としてそれぞれ使用できる複数の単位架構27とを有している。
【0021】
大ストロークジャッキ20には、例えば、最大ストロークが5000〜5500mmの昇降部24を複数(本実施の形態では8本)備え、押圧荷重が125〜270トンの油圧ジャッキを使用する。そして、第1の昇降手段として使用される各大ストロークジャッキ20は、平面視してガーダー部材13(14)の両側が対となるレール支持台11、12に接触しないようにレール支持台11、12に対して斜めに載置されたガーダー部材13(14)の両側をそれぞれ支持できるように、第1の載置台25を介して作業領域19内に配置されている。なお、作業領域19は、建屋10の床18上であって、対となるレール支持台11、12で挟まれる領域である。
【0022】
また、第1の載置台25は、作業領域19上に置かれる第1の敷部材26と、第1の敷部材26上に固定される単位架構27と、単位架構27上に設けられ各大ストロークジャッキ20の下部が固定される第1の載置部材28とを有している。ここで、単位架構27は、軸材29、30同士の結合及び軸材29と軸材30との結合が全て剛節(変形し難い結合)からなる、例えば、立方体状の骨組体である。なお、各大ストロークジャッキ20は、転倒を防止するため更に索30aを用いて第1の載置部材28上に固定されている。第1の水平支持架台21は、その両側が作業領域19内に対向して配置された大ストロークジャッキ20の昇降部24の受台32に取付けられている。
【0023】
従って、ガーダー部材13(14)を据付ける場合は、大ストロークジャッキ20は作業領域19内に向かい合わせに配置され、第1の水平支持架台21は両側がそれぞれ大ストロークジャッキ20に支持されて作業領域19の上方に保持される。また、第1の単位構造物として単位架構27を組合わせて、作業領域19の上方に保持された第1の水平支持架台21の中央下部に取付けられる懸垂台36を形成し、第2の単位構造物として単位架構27を組合わせて、作業領域19上を移動する移動台37を形成し、ターンテーブル22は第1の水平支持架台21の上部に取付けることができる。
【0024】
これによって、ターンテーブル22に載置したガーダー部材13(14)を大ストロークジャッキ20を用いて対となるレール支持台11、12の間を通過させてレール11a、12aより高い位置に保持し、移動台37を懸垂台36の下部に移動して懸垂台36と一体化して旋回用支持架台23を形成することによりガーダー部材13(14)を支え、ターンテーブル22を用いてガーダー部材13(14)を旋回させてレール11a、12aに対して直交配置した後、移動台37を懸垂台36から分離し大ストロークジャッキ20を操作してガーダー部材13(14)を下降させてレール11a、12a上に載置することができる。
【0025】
そして、図4に示すように、移動台37の下部には、図示しない締結手段を用いてチルタンク38(複数のローラが自転しながら公転する機構を備えた移動手段の一例)が予め取付けられ、作業領域19上に配設された搬送路39上をチルタンク38を介して移動して懸垂台36の下方へ進入する。ここで、チルタンク38は移動台37の外周側に配置される柱部材の下部に取付けられ、移動台37の内側に配置される残りの柱部材の下部には手動スクリュージャッキ(図示せず)が取付けられている(例えば、移動台37が、平面視して4行4列に配置された柱部材を有する場合、外周側の12本の柱部材の下部にチルタンク38が取付けられ、中央部の4本の柱部材の下部には手動スクリュージャッキが取付けられている)。なお、旋回用支持架台23でガーダー部材13(14)を支持する際には、移動台37の内側に配置された柱部材に取付けられた手動スクリュージャッキが伸ばされて搬送路39に当接した状態とする。これによって、ガーダー部材13(14)の荷重を、移動台37の内側に配置された柱部材を介して支持することができる。
【0026】
また、トロリー15の走行方向と直交する前後方向に沿ったトロリー前後幅より長い桁部材31を用いて第2の水平支持架台43を構成し、第2の水平支持架台43の長手方向が前後方向に沿うように位置合せすることで、作業領域19内の前後方向に向かい合って配置した第2の昇降手段の一例である大ストロークジャッキ20で第2の水平支持架台43の前後両側を支持することができる。そして、トロリー15の走行方向に沿ったトロリー左右幅より長い桁部材31aを用いて第3の水平支持架台43aを構成し、第3の水平支持架台43aの長手方向がレール支持台11、12に直交する方向に沿うように位置合せして、第3の水平支持架台43aの中央部下部を第2の水平支持架台43の中央上部に載置することができる。更に、大ストロークジャッキ20で第2、第3の水平支持架台43、43aを持ち上げた際に、第3の水平支持架台43aの両側の下方に複数の第3の単位構造物の一例である単位架構27を組合わせて構成した支持台50とその上に水平移動可能に設けられている第3の昇降手段の一例である大ストロークジャッキ20とを有する昇降機構50aをそれぞれ配置することができる。
【0027】
従って、トロリー15を据付ける場合は、第3の水平支持架台43aの中央部上部にトロリー15をその走行方向をレール支持台11、12に直交する方向に向けて位置合せして載置し、大ストロークジャッキ20で第2、第3の水平支持架台43、43aを介して持ち上げることができ、持ち上げられたトロリー15下部の左右に突出する第3の水平支持架台43aの両側の下方に昇降機構50aをそれぞれ配置し、昇降機構50aに設けられた大ストロークジャッキ20を移動させて第3の水平支持架台43aの両側下部に配置し、第3の水平支持架台43aの両側を支持してレール11a、12a上に据付けられたガーダー部材13、14の上位置まで持ち上げてガーダー部材13、14に載置することができる。
【0028】
続いて、本発明の一実施の形態に係る天井クレーンの据付け方法について説明する。
本実施の形態に係る天井クレーンの据付け方法は、既設の天井クレーン(図示せず)が走行するレール支持台11、12にそれぞれ設けられたレール11a、12a上に、更に天井クレーン16を増設する際の天井クレーン16の対となるガーダー部材13、14をレール11a、12aに上架し、その後トロリー15をガーダー部材13、14に載置するものである。以下、各工程毎に説明する。
【0029】
図2に示すように、既存の天井クレーンを使用して、天井クレーンの据付けシステム17を構成する各構成部材、すなわち、大ストロークジャッキ20、ターンテーブル22、桁部材31、単位架構27、搬送路39、チルタンク38、第1、第2の載置台25、46、第1、第2、第3の敷部材26、44、48、第1、第2、第3の載置部材28、45、49を床18に形成された機器搬入口40から作業領域19内に搬入する。そして、第1の敷部材26、単位架構27、及び第1の載置部材28を接続して第1の載置台25を形成し、各大ストロークジャッキ20を、平面視してガーダー部材13(14)の両側が対となるレール支持台11、12に接触しないようにレール支持台11、12に対して斜めに載置されたガーダー部材13(14)の両側をそれぞれ支持できるように、第1の載置台25を介して作業領域19内に配置する。次いで、単位架構27を組合わせて懸垂台36を形成し、懸垂台36の上部中央に桁部材31から形成される第1の水平支持架台21の両側が懸垂台36から突出するよう固定する。また、第1の水平支持架台21の上面の中央部にターンテーブル22の底板部34を載置して固定する。
【0030】
続いて、ターンテーブル22が固定された第1の水平支持架台21を、ターンテーブル22の回転中心が対となるレール11a、12aの中央に位置するようにして、作業領域19内に配置された大ストロークジャッキ20の昇降部24の受台32間を連結するように第1の水平支持架台21を載置して受台32に固定する。これにより、第1の水平支持架台21の両側が大ストロークジャッキ20で支持される状態になる。また、単位架構27を組合わせて移動台37を形成し、移動台37の下部にチルタンク38を取付ける。更に、作業領域19上に、チルタンク38が走行する搬送路39の一側が第1の載置台25間の内側に、他側が第1の載置台25間から外側に延伸するように配設し、移動台37を搬送路39の他側に載置する(以上、第1工程)。
【0031】
既存の天井クレーンを使用して、増設する天井クレーン16のガーダー部材13を構成する各構成部材を機器搬入口40から作業領域19内に搬入して、図2に示すように、作業領域19内に設定された地組立場41でガーダー部材13を組立てる。そして、組立てたガーダー部材13を既設の天井クレーンを用いて、ターンテーブル22の上板部35の上に、対となるレール支持台11、12の内側に位置するように平面視して斜めに載置する(以上、第2工程)。
【0032】
大ストロークジャッキ20を駆動させて第1の水平支持架台21を上昇させることでターンテーブル22に載置されたガーダー部材13を持ち上げ、対となるレール支持台11、12の間を通過させて、ガーダー部材13の両側に設けられた車輪の下端部を、各レール支持台11、12にそれぞれ設けられたレール11a、12aより高い位置に保持する(以上、第3工程)。
【0033】
次いで、手動スクリュージャッキを縮めてチルタンク38を介して移動台37を搬送路39に沿って移動させて懸垂台36の下方位置まで到達させ、手動スクリュージャッキを伸ばして搬送路39に当接させる。そして、大ストロークジャッキ20を操作してガーダー部材13を降下させて、第1の水平支持架台21の下部に取付けられている懸垂台36の下部を移動台37の上部に当接させて、懸垂台36の下部を移動台37の上部と、例えば、締結部材を用いて接続して旋回用支持架台23を形成する。これにより、第1の水平支持架台21を介したガーダー部材13の支持を大ストロークジャッキ20から作業領域19に設置した旋回用支持架台23による支持に切り替えることができる。
【0034】
そして、レール11a、12a上にそれぞれ配置した牽引手段(例えば、チルホール)で、ガーダー部材13の両側に設けられた掛止部材(図示せず)に取付けた図示しないロープを介して、レール11a側のガーダー部材13の端側を後側に、レール12a側のガーダー部材13の端側を前側にそれぞれ牽引することで、ガーダー部材13をターンテーブル22上で旋回させて、図2に示すように、ガーダー部材13をレール11a、12aに対して直交配置する。続いて、大ストロークジャッキ20を操作してガーダー部材13を持ち上げることにより、ガーダー部材13の旋回用支持架台23による支持が解除されて、大ストロークジャッキ20によるガーダー部材13の支持が復活する。
【0035】
次いで、懸垂台36と移動台37の接続を解除して、移動台37を懸垂台36から退避させる(以上、第4工程)。
そして、大ストロークジャッキ20を駆動させてガーダー部材13を下降させガーダー部材13の両側の車輪を対となるレール11a、12a上にそれぞれ載置する(以上、第5工程)。
【0036】
ガーダー部材13のレール11a、12a上への上架が終了すると、天井クレーン16のガーダー部材14を構成する各構成部材を機器搬入口40から作業領域19内に搬入して、地組立場41でガーダー部材14を組立てる。なお、ガーダー部材14をレール11a、12aに据付ける場合は、レール11a、12aに据付けられたガーダー部材13を牽引手段又は既設の天井クレーンを用いてガーダー部材14の据付け作業に干渉しない位置まで退避させた後、ガーダー部材13の据付けと同一の方法で行うことができるので、説明は省略する。
【0037】
続いて、トロリー15の据付けについて説明する。
先ず、ガーダー部材13、14の据付けに使用した各機器を作業領域19内から撤去し作業領域19外側の床18上に退避させる。そして、図5〜図7に示すように、第2の敷部材44、単位架構27、及び第2の載置部材45を接続して第2の載置台46を2つ形成して作業領域19内の前後方向に向かい合って配置し、第2の載置部材45に大ストロークジャッキ20を取付け、更に転倒を防止するために索47を用いて固定する。また、第3の敷部材48、複数の単位架構27、及び第3の載置部材49を接続して支持台50を2つ形成し、前後方向に隙間を開けて配置された第2の載置台46の左右方向両側の外側に配置する。そして、大ストロークジャッキ20をローラ(図示せず)を備えた移動台51を介して支持台50の一側(後側)上部にそれぞれ載置して昇降機構50aを形成する。
【0038】
次いで、先にレール11a、12a上に上架したガーダー部材13、14を、ガーダー部材13、14間の隙間が拡大するように互いに反対方向に移動させ、トロリー15の据付け作業に干渉しない位置まで退避させる。そして、図5に示すように、トロリー15を構成する各構成部材を機器搬入口40から既設の天井クレーンを用いて作業領域19内に搬入して、地組立場42でトロリー15を組立てる。
【0039】
そして、トロリー15の走行方向と直交する前後方向に沿ったトロリー前後幅より長い桁部材31を用いて第2の水平支持架台43を構成し、第2の水平支持架台43の長手方向が前後方向に沿うように位置合せし、第2の水平支持架台43の前後両側を第2の載置部材45に取付けた大ストロークジャッキ20で支持する。そして、トロリー15の走行方向に沿ったトロリー左右幅より長い桁部材31aを用いて第3の水平支持架台43aを構成し、第3の水平支持架台43aの長手方向がレール支持台11、12に直交する方向に沿うように位置合せして、第3の水平支持架台43aの中央部下部を第2の水平支持架台43の中央上部に載置する(以上、第6工程)。
【0040】
続いて、既設の天井クレーンを用いてトロリー15を吊り上げ、第3の水平支持架台43aの中央上部にトロリー15の走行方向をレール支持台11、12に直交する方向に向けて位置合せして載置して、第2の載置部材45に取付けた大ストロークジャッキ20で第2の水平支持架台43を持ち上げることで、トロリー15をレール支持台11、12と床18(作業領域19)との中間高さ位置まで持ち上げる。これにより、トロリー15を載置している第3の水平支持架台43aが対となる支持台50を跨いで配置した状態になる(以上、第7工程)。
【0041】
トロリー15が中間高さ位置まで持ち上げられた後、図8に示すように、支持台50に載置した大ストロークジャッキ20を移動台51を介して移動させて、図6に示すように第3の水平支持架台43aの両側下部に配置し、第3の載置部材49に固定すると共に、転倒を防止するために索52を用いて更に固定する。次いで、支持台50に載置した大ストロークジャッキ20を操作して第3の水平支持架台43aの両側を支持してトロリー15持ち上げて、トロリー15をレール11a、12a上に載置されたガーダー部材13、14の上方の高さ位置まで持ち上げて保持する(以上、第8工程)。
【0042】
対となるガーダー部材13、14を11a、12a上で移動させて持ち上げたトロリー15に前後方向から接近させ、トロリー15の上下位置及びガーダー部材13、14の前後位置をそれぞれ調整してトロリー15をガーダー部材13、14の第2のレール(図示せず)上に載置する(以上、第9工程)。
【0043】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、ガーダー部材及びトロリーをそれぞれ専用の地組立場で組立てたが、ガーダー部材を旋回手段の上で、トロリーを昇降手段の受台の上でそれぞれ組立てるようにしてもよい。
【0044】
また、実施の形態では、天井クレーンを増設する場合について説明したが、本発明の天井クレーンの据付け方法及び据付けシステムは、天井クレーンの新設又は更新を行う際にも適用できる。すなわち、天井クレーンの新設に際してガーダー部材及びトロリーを据付ける場合は、天井クレーンを増設する際にガーダー部材及びトロリーを据付けた方法と同様の方法及びシステムを用いて行うことができる。一方、天井クレーンを更新する場合は、既設のガーダー部材及びトロリーを撤去し新たなガーダー部材及びトロリーを据付けることになるが、既設のガーダー部材及びトロリーの撤去は、増設の際にガーダー部材及びトロリーを据付ける工程を逆順に進めることにより行うことができ、新たなガーダー部材及びトロリーの据付けは増設の際にガーダー部材及びトロリーを据付けた方法と同様の方法で行うことができる。なお、本実施の形態では、第1、第2、第3の昇降手段として大ストロークジャッキ20を使用したが、第1、第2、第3の昇降手段をそれぞれ別々に用意してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態に係る天井クレーンの据付けシステムによって据付けられる天井クレーンの説明図である。
【図2】同天井クレーンの据付けシステムを用いたガーダーの据付けの説明図である。
【図3】(A)は同天井クレーンの据付けシステムの正面図、(B)は側面図である。
【図4】第1の昇降手段で持ち上げた懸垂台と移動台を接続する際の説明図である。
【図5】同天井クレーンの据付けシステムを用いたトロリーの据付けの説明図である。
【図6】同トロリーの据付け状況を示す正面図である。
【図7】同トロリーの据付け状況を示す側面図である。
【図8】第3の昇降手段を移動させる際の説明図である。
【符号の説明】
【0046】
10:建屋、11:レール支持台、11a:レール、12:レール支持台、12a:レール、13、14:ガーダー部材、14a:ガーダー、15:トロリー、16:天井クレーン、17:天井クレーンの据付けシステム、18:床、19:作業領域、20:大ストロークジャッキ、21:第1の水平支持架台、22:ターンテーブル、23:旋回用支持架台、24:昇降部、25:第1の載置台、26:第1の敷部材、27:単位架構、28:第1の載置部材、29、30:軸材、30a:索、31、31a:桁部材、32:受台、34:底板部、35:上板部、36:懸垂台、37:移動台、38:チルタンク、39:搬送路、40:機器搬入口、41、42:地組立場、43:第2の水平支持架台、43a:第3の水平支持架台、44:第2の敷部材、45:第2の載置部材、46:第2の載置台、47:索、48:第3の敷部材、49:第3の載置部材、50:支持台、50a:昇降機構、51:移動台、52:索

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の上部の同一高さ位置に平行に配設された対となるレール支持台にそれぞれ設けられたレール上に両側がそれぞれ載置され、該レールに沿って前後方向に走行し、対となるガーダー部材を備えたガーダーと、対となる前記ガーダー部材に載置され、該レールと直交する方向に移動するトロリーとを備えた天井クレーンの据付け方法であって、前記ガーダー部材の据付けにあっては、
前記建屋の床上であって、対となる前記レール支持台で挟まれる作業領域内に複数の第1の昇降手段を配置し、該第1の昇降手段の上に、上部に旋回手段を備えた横長の第1の水平支持架台を、該旋回手段の回転中心が対となる前記レールの中央に位置するようにして配置する第1工程と、
前記旋回手段の上に前記ガーダー部材を、対となる前記レール支持台の内側に位置するように平面視して斜めに載せる第2工程と、
前記各第1の昇降手段を駆動させて前記ガーダー部材を持ち上げ、対となる前記レール支持台の間を通過させて該ガーダー部材の両側に設けられた車輪の下端部を前記レールより高い位置に保持する第3工程と、
前記旋回手段を操作し前記ガーダー部材を旋回させて、前記レールに対して直交配置する第4工程と、
前記各第1の昇降手段を駆動させて前記ガーダー部材を下降させ、前記車輪をそれぞれ対となる前記レール上に載置する第5工程とを有することを特徴とする天井クレーンの据付け方法。
【請求項2】
請求項1記載の天井クレーンの据付け方法において、前記第4工程で、前記第1の水平支持架台を介した前記ガーダー部材の支持を、前記第1の水平支持架台の両側を支持していた複数の前記第1の昇降手段から、前記第1の水平支持架台の中央部を下から支持する旋回用支持架台に切り替えた後、前記旋回手段を操作して前記ガーダー部材を旋回させ、次いで、該ガーダー部材を前記第1の昇降手段で再支持して前記旋回用支持架台による該ガーダー部材の支持を解除することを特徴とする天井クレーンの据付け方法。
【請求項3】
請求項2記載の天井クレーンの据付け方法において、前記旋回用支持架台は、前記第1の水平支持架台の下部に取付けられて該第1の水平支持架台と共に昇降し、複数の第1の単位構造物を組合わせて構成した懸垂台と、前記床上を移動可能で複数の第2の単位構造物を組合わせて構成した移動台とを有し、該移動台を該懸垂台の下方位置まで移動させて該懸垂台に接続することにより前記第1の水平支持架台を介して前記旋回手段に載置された前記ガーダー部材の支持を行ない、該移動台を該懸垂台から取外して退避させた後、前記第1の昇降手段を下げて、前記レール上に載った該ガーダー部材の支持を、前記第1の水平支持架台及び前記第1の昇降手段から解除することを特徴とする天井クレーンの据付け方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の天井クレーンの据付け方法において、前記対となるガーダー部材を前記レール上に載せた後、前記トロリーの据付けについては、
前記トロリーの走行方向と直交する前後方向に沿ったトロリー前後幅より長い第2の水平支持架台を前後方向に向けて前記作業領域内の前後方向に向かい合って配置した第2の昇降手段で該第2の水平支持架台の前後両側を支持し、更に、該第2の水平支持架台の中央上部に、前記トロリーの走行方向に沿ったトロリー左右幅より長い第3の水平支持架台を前記レール支持台に直交する方向に向けて載置する第6工程と、
前記第3の水平支持架台の中央上部に前記トロリーを該トロリーの走行方向を前記レール支持台に直交する方向に向けて位置合せして載置して、前記第2の昇降手段で前記第2の水平支持架台を前記レール支持台と前記床との中間高さ位置まで持ち上げる第7工程と、
前記第2の水平支持架台を介して持ち上げられた前記第3の水平支持架台の両側の下方に昇降機構をそれぞれ配置し、該昇降機構で該第3の水平支持架台の両側を支持して前記レール上に据付けられた前記ガーダー部材の上位置まで持ち上げて保持する第8工程と、
対となる前記ガーダー部材を前記レール上で移動させて持ち上げた前記トロリーに前後方向から接近させ、該トロリーの上下位置及び該ガーダー部材の前後位置をそれぞれ調整して該トロリーを該ガーダー部材の第2のレール上に載置する第9工程とを有することを特徴とする天井クレーンの据付け方法。
【請求項5】
請求項4記載の天井クレーンの据付け方法において、前記昇降機構は、複数の第3の単位構造物を組合わせて構成した支持台とその上に水平移動可能に設けられている第3の昇降手段とを有し、前記第2の昇降手段で中間高さ位置まで持ち上げ、前記第8工程で、前記第3の昇降手段を移動させて前記第3の水平支持架台の両側下部に配置することを特徴とする天井クレーンの据付け方法。
【請求項6】
請求項5記載の天井クレーンの据付け方法に使用する天井クレーンの据付けシステムであって、
前記第1、第2、第3の水平支持架台をそれぞれ構成できる桁部材と、
前記第1、第2、第3の昇降手段として使用できる大ストロークジャッキと、
前記旋回手段として使用できるターンテーブルと、
前記第1、第2、第3の単位構造物として使用できる複数の単位架構とを有することを特徴とする天井クレーンの据付けシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−105808(P2010−105808A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282032(P2008−282032)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年6月25日 社団法人日本電気協会新聞部発行の「電氣新聞 2008年6月25日付紙面」に発表
【出願人】(000178011)山九株式会社 (48)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】