説明

天井暖房装置

【課題】天井からの輻射熱により室内暖房をするに当って、天井の下方に暖かい空気が滞留した場合に効果的に該滞留を解消して室内の下部を暖めることができる。、しかも、室内の略中央部分において冷たい空気の上昇流が発生せず、天井からの輻射熱により快適な室内暖房ができる。
【解決手段】天井1から室内に輻射熱を出す加熱手段2と、天井1に沿わせて送風する送風手段3を有している。送風手段3が壁4の上部に設けてある。送風手段3からの風の噴出し方向が水平よりも上向きとなった斜め方向となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井から室内に輻射熱を出すようにした天井暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、天井から輻射熱を出して快適な室内暖房をするものとして、天井に室内に輻射熱を出す輻射パネルを設け、更に、天井に天井扇を設けたものが特許文献1により知られている。
【0003】
この特許文献1にあっては天井の中央部のやや下方位置に天井扇を吊り下げ、天井と壁にそれぞれ温度センサを設け、天井に設けた温度センサと壁に設けた温度センサにおける検出温度が所定値を越えると天井扇を逆回転して下側の冷たい空気を強制的に上に送って天井側に送り込み、天井の下方の領域に滞留している暖かい空気を下方に押下げるようになっている。
【0004】
ところが、この従来例にあっては、天井の中央部の天井扇を設けた部分に滞留した暖かい空気と天井扇の下方である室内の中央部の冷たい空気とが入れ替わるのみで、上記天井扇から離れた天井の下方に滞留した暖かい空気を効果的に下方に流すことができず、天井の端部の下方付近においては熱がこもりやすいという問題がある。
【0005】
しかも、天井扇の下方、つまり、室内の中央部においては室内の冷たい空気が天井扇側に向かって上昇する。ところが、室内の中央部は、室内において最も人が存在する確率が高いエリアであり、この室内において最も人が存在する確率が高いエリアで、暖房中に上記のように冷たい空気の上昇流が発生して、この冷たい上昇流により室内の中央部に居る人に寒いという感じを与えてしまうという問題がある。
【0006】
また、上記従来例にあっては、天井に天井扇を吊り下げるため、天井扇を吊り下げた天井部位には輻射暖房パネルを設けることができず、輻射パネルの配設位置に制約が生じるという問題があり、また、最も人が居る確率の高い室内の中央部に対応する天井の中央部に輻射パネルを設けることができないので、天井から出る輻射熱で室内を暖めるに当り、室内の中央部を効果的に暖めることができないという問題がある。
【0007】
また、他の従来例として特許文献2が知られている。この特許文献2は天井裏に輻射ダクトを配置し、この輻射ダクトの下面を構成する輻射パネルで天井を形成し、輻射ダクトの下流側端部を天井に形成した吹出口に接続したものである。そして、吸込口から吸込んだ室内空気を熱交換器で加熱した加熱空気を輻射ダクトを通して輻射ダクトの下面の輻射パネルから室内に輻射熱を出し、吹出口から温風を室内に噴出し、輻射、対流の併用により室内を暖房するようにしている。また、天井の下方に暖かい空気が滞留した場合は、熱交換器による加熱をせず、単に空気を輻射ダクトを通して吹出口から室内に噴出して対流のみを生じさせることで、天井の下方に滞留した暖かい空気を減少させようとしているが、この場合の滞留は室内→天井に設けた吸込口→輻射ダクト→吹出口→室内という循環経路で空気が循環して対流するものであり、このため天井の下面に沿って空気は流れにくくて天井の下方に滞留した暖かい空気を効果的に減少させて室内の下部に熱を移動させ難いという問題がある。
【特許文献1】特開平6−159774号公報
【特許文献2】特開平11−051447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、天井からの輻射熱により室内暖房をするに当って、天井の下方に暖かい空気が滞留した場合に効果的に該滞留を解消して室内の下部を暖めることができ、しかも、室内の略中央部分において冷たい空気の上昇流が発生せず、天井からの輻射熱により快適な室内暖房ができる天井暖房装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る天井暖房装置は、天井1から室内に輻射熱を出す加熱手段2と、天井1に沿わせて送風する送風手段3を有している。そして、本発明は、上記送風手段3が壁4の上部に設けてあり、該送風手段3からの風の噴出し方向が水平よりも上向きとなった斜め方向となっていることを特徴とする。
【0010】
加熱手段2で加熱して天井1から室内に輻射熱を放出して室内を暖房すると、不快な気流がなく、空気が乾燥しないので快適な暖房ができる。しかしながら、このように、天井1から輻射熱を放出して室内の暖房をするものにおいては、室内空間の上部、つまり天井1の下方付近に暖気が滞留するが、本発明においては、天井1に沿わせて送風する送風手段3を設けているので、送風手段3を運転して天井1に沿わせて送風することで、天井1の下方付近に滞留した暖気を室内の下方に移動させることができる。しかも、上記送風手段3が壁4の上部に設けてあり、該送風手段3からの風の噴出し方向が水平よりも上向きとなった斜め方向となっているので、天井1の一方の端部から他方の端部にかけて全巾にわたって送風を沿わせることができ、天井1の下方の全域に滞留した暖気を他方の対向する壁4に沿わせて上部から下部に下降させて室内の下部を暖めることができるとともに下部の冷たい空気は壁4に沿って送風手段3側に向けて上昇する。また、風が確実に天井1表面に接しながら流れるので、上記のように天井1の下方に滞留した暖気を壁4に沿って下降させることができるだけでなく、天井1の対流熱伝達率を増加させ、天井1からの放熱が促進され、天井1表面の温度を下げることができ、天井1の下方に滞留した熱を効率的に短時間で下げることができる。
【0011】
また、加熱手段2の運転をオンからオフに切り換えると同時に送風手段3をオンとするように制御する制御部5を設けることが好ましい。
【0012】
加熱手段2をオンにして天井1から輻射熱を室内に放出して室内を暖房する際、時間が経過すると天井1の下方付近に暖気が滞留する。このように、天井1の下方付近に暖気が滞留すると、加熱手段2の運転をオンからオフに切り換えると同時に送風手段3をオンにして天井1の下方付近に滞留する暖気を壁4に沿って下降させる。これにより、天井1の表面及び天井1の下方付近の温度が下がると共に、室内の下部に暖気が下がって室内の下部を効果的に暖房することができる。
【0013】
また、送風手段3がエアコンディショナ3aであることが好ましい。
【0014】
このような構成とすることで、天井1からの輻射熱の放出による室内の暖房と、エアコンディショナ3aによる暖房を併用したり、あるいは、いずれかを選択して使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、送風手段が壁の上部に設けられ、上記送風手段からの風の噴出し方向が水平よりも上向きとなった斜め方向となっているので、天井から放出される輻射熱により天井の下方付近に暖気が滞留しても、送風手段をオンにして天井に沿って送風することにより、天井表面の温度を下げ、火照り感を緩和すると共に、天井の下方付近に滞留している暖気を室内の下部に壁に沿って下降させ、室内の上部と下部との温度差を少なくして快適な室内温度環境を現出することができる。また、送風手段からの風の噴出し方向が水平よりも上向きとなった斜め方向となっているので、天井の下方付近に滞留している暖気を送風手段と対向する壁に沿って下降させ、室内の下部の冷たい空気を送風手段を設けた壁に沿って上昇させるという対流が形成され、天井の下方に滞留した熱を効率的に短時間で下げて天井輻射暖房による火照りを防止すると共に従来のように室内の略中央部分において冷たい空気の上昇流が発生せず、室内に居る人への影響を少なく出来て、天井からの輻射熱により快適な室内暖房ができる。
【0016】
また、加熱手段の運転をオンからオフに切り換えると同時に送風手段をオンとするように制御する制御部を設けことで、天井の表面及び天井の下方付近の温度を効果的に下げると共に、室内の下部を効果的に暖房することができ、室内の上部と下部との温度差を少なくして快適な室内温度環境を現出することができる。
【0017】
また、送風手段がエアコンディショナであると、天井からの輻射熱の放出による室内の暖房と、エアコンディショナによる暖房を併用したり、あるいは、いずれかを選択して使用することができ、簡単な構成で目的に応じた最適の暖房が選択できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0019】
天井1には室内に輻射熱を出して室内を暖房するための加熱手段2が設けてある。図1に示す実施形態においては、電気ヒータのような加熱手段2を内装した天井パネル1aにより天井1を構成することで、天井1から室内に輻射熱を放出して室内を暖房することができるようになっている。
【0020】
室内の任意の壁4の上部には送風手段3が設けてある。この壁4の上部に設けた送風手段3からの風の噴出し方向は上に行くほど該壁4から離れるように水平よりも上向きとなった斜め方向となっている。
【0021】
なお、壁4の上部に設けた送風手段3からの風の送風方向が水平又は斜め下方となっていると、上記のように天井1の表面のほぼ全巾にわたって風を沿って流すことができず、送風しても天井1の表面及び天井1と壁4のなすコーナ部分に空気が流れない滞留部が生じるので好ましくない。
【0022】
添付図面に示す実施形態においては、送風手段3を設けた壁4と対向する壁4の上部には、上記送風手段3と対向して赤外線送信部10が設けてある。また、該壁4には制御部5を備えたコントローラ8、リレーユニット9が設けてある。そして、コントローラ8に設けた操作部7を操作することで、リレーユニット9を介して加熱手段2を制御すると共に赤外線送信部10を介して送風手段3を制御するようになっている。
【0023】
本発明においては、加熱手段2をオンにすることで、天井1から輻射熱を室内に放出して室内の暖房ができる。
【0024】
ここで、天井1から輻射熱を放出して室内の暖房をするものにおいては、暖かい空気は軽いため室内空間の上部、つまり天井1の下方付近に滞留していくので、室内の上部と下部では温度差が次第に大きくなり、人の頭や顔のように天井1に近い部分が火照ってくる。そこで、本発明においては、天井1の下方付近に暖気が滞留すると、送風手段3をオンにして送風手段3から風を図1の矢印イのように天井1の表面の一端部付近に向けて斜めから噴き付け、続いて図1の矢印ロのように天井1の一端部側から他端部側に向けて天井1の表面(下面)に沿って送風し、更に、対向する壁4の上部から下方に向けて図1の矢印ハのように流すことで、天井1の下方付近の全域に滞留していた暖気を送風手段3と対向する方の壁4に沿って下降させて室内の下部を暖めることができる。
【0025】
この場合、送風手段3が壁4の上部に設けてあり、該送風手段3からの風の噴出し方向が水平よりも上向きとなった斜め方向となっているので、天井1の一方の端部から他方の端部にかけて全巾にわたって送風を沿わせることができ、天井1の下方の全域に滞留した暖気を他方の対向する壁4に沿わせて上部から下部に下降させて室内の下部を暖めることができる。
【0026】
一方、上記のように一方の壁4の上部に設けた送風手段3をオンにして送風手段3から風を図1の矢印イのように天井1の表面の一端部付近に向けて斜めから噴き付けると、室内の下部の冷たい空気が送風手段3を設けた壁4に沿って下部から上部の送風手段3側に向けて上昇する。室内の下部の冷たい空気は送風手段3を設けた壁4に沿って下部から上部に上昇し、室内の中央部に居る人は冷たい空気の上昇流に直接触れることがなく、不快感が生じない。
【0027】
このように室内の下部の冷たい空気が送風手段3を設けた壁4に沿って上昇すると共に天井1の下方に滞留した暖気は対向する壁4に沿って下降するので、送風手段3をオンにすることによる暖気の下降風、冷気の上昇風がいずれも壁4に沿って行われ、室内に居る人に直接暖気の下降風、冷気の上昇風が当り難いことになり、室内全体に効果的に対流を生じさせることができて、室内の上部と下部との温度差を少なくすることができて快適な室内温度環境を現出することができる。
【0028】
また、送風手段3からの風の噴出し方向が水平よりも上向きとなった斜め方向となっているので、上記のように天井1の一方の端部から他方の端部にかけて全巾にわたって送風を沿わせて滞留した暖気を室内の下部に送ることができるので、天井1と壁4とのなすコーナ部分などに暖気が滞留し続けることがなく、より確実に室内の下部と上部との温度差を少なくすることができる。
【0029】
ここで、加熱手段2の運転をオンからオフに切り換えると同時に送風手段3を自動的にオンとするように制御するようにしてもよい。
【0030】
すなわち、加熱手段2をオンにして天井1から輻射熱を室内に放出して室内を暖房する際、時間が経過すると天井1の下方付近に暖気が滞留するので、天井1の下方付近に暖気が滞留すると、加熱手段2の運転をオンからオフに切り換えると同時に送風手段3をオンにして天井1の下方付近に滞留する暖気を壁4に沿って下降させる。これにより、天井1の表面及び天井1の下方付近の温度が下がると共に、室内の下部に暖気が下がって室内の下部を効果的に暖房することができる。
【0031】
ここで、送風手段3をオンにした後、設定された時間(例えば数分)経過すると自動的にオフになるように制御すると共に、送風手段3がオンからオフに切り換わると、再び加熱手段2を自動的にオンになるように制御してもよい。
【0032】
このようにすると、加熱手段2のオンによる天井1からの輻射熱の室内への放熱→天井1の下方に暖気が滞留すると加熱手段2をオンからオフに切り換えると共に送風手段3をオンにして天井1下方に滞留している暖気を室内の下部に送り→一定時間が経過すると送風手段3をオンからオフに切り換えると共に加熱手段2をオフからオンに切り換えて天井1からの輻射熱の室内への放熱の再開という暖房運転を行うことができる。そして、上記制御において、送風手段3をオンにした後、設定された時間(例えば数分)経過すると自動的にオフになるように制御することで、室内の上方から壁4に沿って下降してくる空気流は天井1下方に滞留した暖気のみが下降するため、不快感がない。
【0033】
上記暖房運転において、天井1の下方に暖気が滞留すると加熱手段2をオンからオフに切り換えると共に送風手段3をオンにするに当って、室内に温度センサを設けて温度センサにより室内の上部の天井1の下方の空気の温度を検出して該天井1の下方の空気温度が所定値を超えた場合、あるいは、室内の下部と上部に設けた温度センサにより室内の上部の空気の温度と下部の空気の温度とを検出して両者の温度差が設定された所定値を超えた場合に、天井1の下方に暖気が滞留しているとみなして自動的に加熱手段2をオンからオフに切り換えると共に送風手段3をオンに制御するようにしてもよい。
【0034】
また、図2に示すようにコントローラ8に設ける操作部7として急冷釦7aを設けてもよい。このように急冷釦7aを設けた実施形態においては、加熱手段2をオンにして天井1から輻射熱を放出して暖房しているとき、室内に居る人が顔や頭に火照りを感じたような場合、天井1の下方に暖気が滞留しているとみなし、上記急冷釦7aを手動で操作することで加熱手段2をオンからオフに切り換えると共に送風手段3をオンとする急冷モードにしてもよい。この急冷釦7aを手動で操作することで設定する急冷モードによる送風手段3の運転は設定された時間(例えば数分)経過すると自動的に急冷モードが停止するようにするのが好ましい。また、再び、急冷モードが自動的に停止した後、再び、制御部により加熱手段2をオフからオンに自動的に切り換えて天井1からの輻射熱の室内への放熱の再開という暖房運転を行うようにしてもよい。
【0035】
なお、図2に示すコントローラ8においては、操作部7として上記急冷釦7aの他に、加熱手段2をオンにするためのオン釦7b、オフにするためのオフ釦7c、メニュー釦7d、温度上昇釦7e、温度下降釦7f等が設けてある。
【0036】
送風手段3としては、温度調整機能のない室内空気を送風するだけのものであってもよく、また、室内空気の温調機能を備えたエアコンディショナ3aであってもよい。
【0037】
送風手段3をエアコンディショナ3aで構成する場合は、上記加熱手段2による天井1からの輻射熱の放出による室内の暖房と、エアコンディショナ3aによる暖房を併用したり、あるいは、いずれかを選択して使用することが可能となる。また、加熱手段2により天井1からの輻射熱の放出による室内暖房をしている時、前述のように天井1の下方付近に暖気が滞留した場合、送風手段3であるエアコンディショナ3aをオンにして天井1の一端部から他端部に沿った空気の流れを生じさせて滞留した暖気を室内の下部に流すことができる。この時エアコンディショナ3aから天井1に向けて噴出す送風空気としては、室内空気を温度調整することなく送風する場合と、室内空気をエアコンディショナ3aで加温して送風する場合とが選択できるようしてもよく、このようにすることで、状況に応じたより多様な暖房形態を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の概略構成図である。
【図2】同上に用いるコントローラの一実施形態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 天井
2 加熱手段
3 送風手段
3a エアコンディショナ
4 壁
5 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井から室内に輻射熱を出す加熱手段と、天井に沿わせて送風する送風手段を有し、送風手段が壁の上部に設けられ、上記送風手段からの風の噴出し方向が水平よりも上向きとなった斜め方向となっていることを特徴とする天井暖房装置。
【請求項2】
加熱手段の運転をオンからオフに切り換えると同時に送風手段をオンとするように制御する制御部を設けて成ることを特徴とする請求項1記載の天井暖房装置。
【請求項3】
送風手段がエアコンディショナであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の天井暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−257700(P2009−257700A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109424(P2008−109424)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】