説明

女性の尿失禁を軽減する器具

【課題】腹腔内圧が上昇している間の女性の尿失禁を軽減する用具を開示する。
【解決手段】この用具には、初期断面積、挿入端及び後部端を有する非吸収性尿失禁用用具を備える。また、尿失禁用用具は、膨張すると、尿失禁用用具の断面積を増大させることができる圧縮した弾性部材を含む。尿失禁用用具は、挿入端が最初に入るように女性の膣に挿入する。膣は、左右の側壁、前壁及び後壁で構成された内周を有する管である。尿失禁用用具は、壁の少なくとも2つに接触するように挿入される。尿失禁用用具は、膣管の長さの中央1/3に挿入端が女性の尿道括約筋に隣接して位置合わせされるように位置決めされる。尿失禁用用具は、女性の恥骨結合と協働して尿道管を間に挟む。弾性部材は、尿失禁用用具の少なくとも一部が断面積を増大し、膣管の4つ全ての内壁に接触し、尿道管に対する支持的バックドロップをもたらすように膣管内で膨張することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性の尿失禁を軽減する器具に関する。詳細には、本発明は、腹腔内圧が上昇している間の女性の尿失禁を軽減する器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の女性、特に1回又はそれ以上の出産を経験した女性及び年配の女性は、腹圧性尿失禁又は腹圧性及び切迫性の混合型の尿失禁による不随意の尿の漏れを経験することがある。くしゃみ又は咳により、ヒトの膀胱にかかる腹腔内の圧力が高まり、不随意の尿の漏れを引き起こすことがある。このような尿の漏れの頻度及び重症度は、尿道―膣筋筋膜域付近の筋肉及び組織が弱まるにつれて増悪する可能性がある。また、膀胱に隣接する尿道の上部端に位置する尿道括約筋は、その断面の形状が丸いか円形である場合には、膀胱から尿道に尿が通過しないようにうまく閉鎖することが知られている。しかしながら、この通路の断面が、変形されてむしろ楕円形又は卵型に見える場合には、括約筋が、うまく閉鎖することができず、不随意に尿が漏れがちになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
世界中の女性人口の年齢が増すにつれ、「腹圧性尿失禁」に伴うことが多い不随意の尿の漏れを減少させる非手術的方法の必要性は増える一方である。今日では、この目的のための多数の製品がある。本質的に全てのこのような製品は、処方された場合にのみ購入することができ、適切に機能するためには、医者又は臨床看護婦により身体に挿入及び/又は調節される必要がある。現在、腹圧性尿失禁による不随意の尿の漏れを防止するために、処方箋が無くても購入できる製品はない。
市販の処方箋を必要としない尿失禁用用具が無いことを考えると、処方箋が無くても購入することができる尿失禁用用具が必要とされていることが理解される。また、複雑でないために使い勝手がよく、医師に介入されずに消費者が取り扱うことができる尿失禁用用具が必要とされている。更に、婦人が、身体に挿入及び除去することが容易で、着用が快適であり、且つ、長時間にわたり適切に機能することができると心理的及び現実的に確信できる尿失禁用用具が必要とされている。
特に、腹腔内圧が上昇している間の女性の尿失禁を軽減するための方法を利用することにより、女性は、この問題をよりよく処理することができることになる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一般的な目的は、女性の尿失禁を軽減するための器具を提供することである。詳細には、本発明は、腹腔内圧が上昇している間の女性の尿失禁を軽減するための器具に関する。
本発明の更に詳細な目的は、非吸収性用具が、女性の膣内に配置されて女性の尿道を支持し、腹圧性尿失禁に伴うことが多い不随意の尿の漏れを防ぐ、腹腔内圧が上昇している間の女性の尿失禁を軽減するための器具を提供することである。
本発明の他の目的は、使用が簡単で、挿入及び除去が容易であり、且つ装用が快適である用具を用いて、女性の尿失禁を軽減する。
本発明の更に他の目的は、女性の尿失禁を軽減するための効果的且つ経済的な方法を提供することである。
本発明の更に他の目的は、消費者が処方箋無しで購入することができる器具を用いる、女性の尿失禁を軽減するための方法を提供することである。
更に、本発明の目的は、健康な膣環境に必要とされる正常な膣分泌物の利用度を妨げることなく、女性の尿失禁を軽減するための方法を提供することである。
【発明の効果】
【0005】
手短に言えば、本発明は、特に、腹腔内圧が上昇している間の女性の尿失禁を軽減するための方法に関する。この方法は、初期断面積、挿入端及び後部端を有する非吸収性尿失禁用用具を調達する段階を含む。また、尿失禁用用具は、膨張すると、尿失禁用用具の断面積を増大させることができる圧縮した弾性部材を含む。尿失禁用用具は、挿入端が最初に入るように女性の膣に挿入される。膣は、左右の側壁、前壁及び後壁で構成される内周を有する管である。尿失禁用用具は、それらの壁の少なくとも2つに接触するように挿入される。次の段階は、挿入端を女性の尿道括約筋に隣接して位置合わせして、尿失禁用用具を膣管の全長の中央1/3に位置決めする段階である。女性の尿道括約筋は、女性の尿道管の一部である。尿失禁用用具は、女性の恥骨結合と協働し、その間に尿道管を挟む。弾性部材は、膣管内で、尿失禁用用具の少なくとも一部の断面積を増大させ、膣管の4つの内壁全てに接触し、尿道管の支持的なバックドロップをもたらすように膨張することができる。次に、尿道管が、尿失禁用用具と恥骨結合との間でそれ自身を圧縮されることにより、不随意の尿の漏れを制限することができる。
本発明の他の目的及び利点は、以下の記載及び添付の図面を見れば、当業者には更に明らかになると考える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】膣管内に位置決めされ、恥骨結合と協働して尿道管を圧縮し、腹腔内圧が上昇している間の尿失禁を軽減する尿失禁用用具を示すヒト胴の中央矢状方向切断図である。
【図2】膣管及び尿道の弛緩した断面の形状を示す図1の線2−2に沿う断面図である。
【図3】ドーム形の部分を有するソフト巻の実施形態の1つの側面図である。
【図4】圧縮して尿失禁用用具にし、引出し紐をとりつけた図8に示すソフト巻の側面図である。
【図5】図4に示す尿失禁用用具の線5−5に沿う上面図である。
【図6】膨張した尿失禁用用具の側面図である。
【図7】アプリケータに収納した尿失禁用用具の側面図である。
【図8】女性の尿失禁を軽減するための方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1及び図2を参照すると、女性のヒト胴10が描かれており、膣12、子宮頚管14、子宮16、尿道18、膀胱20及び恥骨結合22が示されている。膣は、人体10の出口である膣開口部24を有し、膣開口部24から子宮頚管まで延びる膣管26を含む。膣管26の長さは、殆どの女性で、約4インチから約6インチ(約102ミリメートル(mm)から約153mm)までの間の範囲である。子宮頚管14は、子宮への入り口であり、膣管26の上面と子宮16との間に位置する。膣管26は、内周28を有する。内周28は、右の側壁30及び左の側壁32、前壁34及び後壁36で構成される。前壁34は、尿道18に最も近接しており、尿道は、恥骨結合22と膣12との間にある。膣管26は、3つのほぼ等しい区域に分けることができ、それぞれ全長の1/3に相当する。各区域の長さは、ほぼ2インチ(ほぼ51ミリメートル(mm))膣管26の中央1/3は、尿道に近接しているため女性の尿失禁を軽減するための最も重要な区域であり、尿失禁用用具を位置決めする必要がある部位である。また、膣管26は、恥骨結合22から水平方向にオフセットしており、恥骨結合は、ヒト胴10の恥骨前部38に隣接する突起である。膣12の中央1/3に位置決めした尿失禁用用具と恥骨結合22とが協働して、尿道18それ自身を圧縮することにより、膀胱20からの不随意の尿の漏れを軽減することができる。
【0008】
尿道18は、人体10からの出口である第1の開口部40から、膀胱20の下部表面に位置する第2の開口部42まで延びる中空の管19である。この尿道管19の長さは、殆どの女性で約1.5インチ(約38mm)である。尿道18は、膀胱20に一時的に貯留されている尿を人体から放出する働きをする。尿道18は、尿道管19の内周の長さに沿って配置された複数の尿道括約筋44を有する。括約筋44は、開口部42の下に位置しており、通常は、尿道18の収縮を維持して尿の通過を防ぐ輪状の筋肉である。通常の生理的機能により括約筋44が弛緩すると、尿が随意的に人体から排泄可能にされることになる。
再び図1を参照すると、ヒト胴10は、膣12と恥骨結合22との間に位置する尿道−膣筋筋膜域46に配置された筋組織及び身体組織を更に含む。膀胱20は、恥骨結合22の後部に位置し、膣12及び子宮16により直腸から分離されている。尿道管(図示せず)は、腎臓(図示せず)から膀胱20に尿を輸送する管であり、恥骨から膀胱20の後部面まで通っている。膀胱底48には、両尿道管が入っており、膣12の後壁34に隣接している。
【0009】
図3〜図6を参照すると、特に腹腔内圧が上昇している間の女性の尿失禁を軽減するための方法には、女性の膣12に挿入することができる非吸収性尿失禁用用具50を調達する段階が含まれる。尿失禁用用具50には、殆ど、好ましくは全く吸収特性を示さない材料で構成することができる非吸収体52が含まれる。非吸収性の尿失禁性用具46は、体液を吸収しないという点で月経用タンポンとは異なる。代わりに、非吸収性尿失禁用用具46は、膣12に跨って延び、尿道−膣筋筋膜域46にある筋組織及び身体組織を支持するように設計されている。こうすることにより、尿道は、十分に圧縮されて尿の漏れを遮断することができ、尿道括約筋を支持して適切に機能できるようにすることができる。
【0010】
本発明では、「非吸収性」とは、材料自身が大きな量の水分を吸収しない材料であると定義される。全ての材料は、事実上、特定の少量の水分を吸収することになることは理解されるであろう。完全乾燥した繊維が、21℃で相対湿度65%に24時間保持されると、重量が本質的に約6%より大きくない値で増加することになる場合には、本発明では、その繊維は、非吸収性であるとみなす。非吸収性材料には、ナイロン、レーヨン、スパンセルロース、LYCRA(登録商標)、KEVLAR(登録商標)、炭素繊維等が含まれるが、これに限定されない。「LYCRA」及び「KELVAR」は、デラウェア州ウィルミントン、マーケットストリート1007、19801に事務所を置くイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムア・アンド・カンパニー(E.I.DuPont de Nemours & Company)の商標である。このような非吸収体52の1つは、ニューヨーク州ニューヨークブロードウェイ1411、35階に事務所を置くチッソ・コーポレーション(Chisso Corporation)から販売されている2成分繊維で作られたウェブである。この繊維は、「Chisso ESC 2成分繊維」という名称で販売されており、ポリエチレンシースで取巻かれたポリプロピレンコアで構成されている。良好に働く繊維は、3デニールで長さが38ミリメートルである。ポリプロピレン、ポリエチレン等で製造された他の2成分繊維は、エクソン・アンド・ダウ・ケミカル(Exxon and Dow Chemical)のような業者のほか他の専門業者から販売されている。
或いは、非吸収体52は、化学的に界面活性剤処理して非吸収性とした綿/レーヨンブレンドのような吸収性材料とされることもできる。しかしながら、真に非吸収性繊維で構成された材料が、最も良好に働く。
【0011】
図3を参照すると、尿失禁用用具46が、点56で折り畳んだソフト巻54として示されている。ソフト巻54は、非吸収体52及び弾性部材58を有する。弾性部材58は、体液に対して非吸収性又は少なくとも部分的に吸収性とされることができる。しかしながら、尿失禁用用具50は、月経用タンポンと同様に機能しないため、弾性部材58を吸収性にする機能的な利点はない。実際、尿失禁用用具50は、吸収性月経用タンポンとは全く異なる機能を有する。
弾性材料58は、本来の形状及び/又は寸法に迅速に回復又は復帰することができる天然又は合成材料で作ることができる。弾性部材58のこのような変形は、笑い、くしゃみ、咳等による腹腔内圧の変化により生じることができる。弾性部材とは、屈曲、伸張又は圧縮された後に、本来の形状又は位置に復帰又は回復することができる材料である。また、弾性部材58は、伸張又は圧縮することができ、その後にも、ほぼ本来の形状に復帰することができるように、伸縮性及び柔軟性も示す必要がある。
【0012】
弾性部材58を形成することができる2つの天然材料としては、天然ゴム及び羊毛が挙げられる。弾性部材58を形成することができる合成材料の数ははるかに多い。用いることができる合成材料としては、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)の他、そのブレンドが挙げられる。また、弾性部材58は、ポリオレフィンベースの繊維、ポリエチレンオキシド繊維、疎水性レーヨン繊維等の繊維で構成された弾性繊維で形成することもでき、弾性繊維は弾性発泡体と同様の特性を有することになることが好ましい。更に、弾性部材12は、連続気泡又は独立気泡のいずれかで形成することができる。
また、弾性部材58は、湿潤可能発泡体で製造することもできる。良好に作用し、良好な弾性特性を有する連続気泡発泡体は、商品名ACQUELL(登録商標)で市販されている。「ACQUELL]は、マサチューセッツ州ヒアニス、エアポートロード70、02601に事務所を置くセンチネル・プロダクツ・コーポレーション(Sentinel Products Corporation)から販売されている。良好な柔軟性を有するポリエチレン独立気泡発泡体も良好に作用する。この発泡体は、商品名VOLARA(登録商標)で市販されている。「VOLARA」は、マサチューセッツ州ローレンス、シェファードストリート100、01843に事務所を置くボルテックス、セキスイ・アメリカ・コーポレーション(Voltex、Sekisui America Corporation)部門から入手可能である。
【0013】
また、弾性部材58は、「ドライアンドウェット」膨張性として知られる特性を有することができる必要がある。言い換えると、弾性部材58は、乾燥状態、湿潤状態又は半乾燥半湿潤状態で、膨張することができるか、本来の形状まで又は本来の形状に向かって収縮することができる材料で製造される必要がある。尿失禁用用具50に乾燥膨張性があると、弾性部材58が、膣内で膨張できるようになるまで、用具が体液で湿潤される必要がないため有利である。
【0014】
図3では、弾性部材12は、断面が長方形である材料の細いストリップとして描かれている。しかしながら、弾性部材58は、正方形、円形、卵型又は他の望ましい断面の形状を有することができる。弾性部材58は、均一な厚さ及び幅を有することが好ましい。必要ならば、弾性部材58の寸法は、均一である必要はない。弾性部材58の細いストリップの長さは、非吸収体52の長さより短い。弾性部材58の長さは、非吸収体52の長さの約75パーセント(%)未満とされることができる。好ましくは、弾性部材58の長さは、非吸収体52の長さの約50%未満とされ、最も好ましくは、弾性部材58の長さは、非吸収体52の長さの約40%未満とされる。しかしながら、望むならば、弾性部材58の長さは、非吸収体52の長さと等しくすることもできる。また、弾性部材58の幅は、約0.25インチ(約6.4ミリメートル)から約1.5インチ(約38.1mm)の間の範囲、好ましくは約0.5インチ(約12.7mm)と約1インチ(25.4mm)との間の範囲、更に好ましくは約1インチ(約25.4mm)とされることができる。また、弾性部材58の厚さは、約0.1インチ(約2.5mm)から約1インチ(約25.4mm)までの間、好ましくは約0.5インチ(約12.7mm)未満、最も好ましくは約0.4インチ(約10mm)未満の範囲とされることができる。
【0015】
弾性部材58の断面の形状が、丸又は円形である場合には、直径は、約0.25インチ(約6.4ミリメートル)から約1.5インチ(約38.1mm)までの間、好ましくは約0.25インチ(約6.4ミリメートル)から約1インチ(約25.4mm)までの間、最も好ましくは約0.5インチ(約12.7mm)未満の範囲とされることができる。卵型、二葉形、三葉形、長円等のような均等でない断面形の場合は、大きい方の寸法が約2インチ(約50mm)より大きくない値とされる必要がある。
引き続き図3を参照すると、ソフト巻54は、液体透過性又は液体非透過性カバー60を備えることができる。カバー60は、任意的な要素であり、尿失禁用用具50を形成するのに無くてもよい。しかしながら、カバー60は、女性の膣への挿入及び膣からの除去を容易にするために化学的に処理されることも処理されないこともある滑らかな外表面を設けることができる。カバー16が存在するときには、その長さは、非吸収体52の長さに等しいかそれより長くされる必要がある。カバー60の幅は、非吸収体52の幅より広くされる必要がある。幅の寸法を大きくする目的は、カバー60を折り畳み、熱、圧力、熱及び圧力の組み合わせ、又は当業者には周知の他の従来の手段によりカバー60自身に結合することができることにある。カバー60が、容易に自己結合しない材料で形成されている場合には、接着剤、グルー又は他の結合又は固定媒体を用いることができる。望むならば、カバー16は、単純にカバー16自身の上に折り畳むこともできる。
【0016】
カバー60は、液体透過性でも液体不透過性でもよい。カバー60が液体不透過性である場合には、体液が非吸収体52に接触するのを阻止する役割を果たす。非吸収体52は、体液を吸収するように設計されていないため、カバーが液体不透過性である必要はない。液体透過性材料には、多孔性基層を有する織及び不織材料が含まれる。織材料には、レーヨン、綿、又はポリオレフィンで製造することができる織布が含まれる。ポリオレフィンは、短繊維でも連続フィラメントでもよい。不織材料には、スパンボンド、ボンデッドカーデッドウェブ及びハイドロエンタングルドウェブが含まれる。スパンボンド及びボンデッドカーデッドウェブは、ウィスコンシン州ニーナー、Nレイクストリート401、54956に事務所を置く会社であるキンバリー・クラーク・コーポレーションから市販されている。カバー60として用いることができる他の不織材料は、結合剤で結合した100%ポリエステル繊維で形成される。この材料は、パウダーボンデッドカーデッドウェブ(PBCW)として知られている。PBCWは、サウスカロライナ州グリーンビル、アルカディアドライブ304、29609に事務所を置くHDK Industries,Inc.から販売されている。
【0017】
また、カバー60は、液体不透過材料で構成することができる。良好な液体不透過材料は、ミクロエンボス加工されたポリエチレン又はポリプロピレンのようなポリマーフィルムである。2成分フィルムを用いることもできる。好ましい液体不透過材料は、ポリエチレンフィルムである。カバー60の厚さは、約0.1mmから約0.5mmまでの間、好ましくは約0.5mm未満、最も好ましくは約0.2mm未満の範囲とされることができる。
図3は、ソフト巻54の実施形態の1つを表す。ソフト巻54は、2つ又はそれ以上の折り目を有することができ、望むならば2つ又はそれ以上の層で構成することができることに留意される必要がある。ソフト巻54は、折り畳んだ後には、長さが約1インチ(約25mm)から約3インチ(約76mm)までの間とされる必要がある。約1.5インチ(約33mm)から約2.5インチ(約63mm)までの間が好ましい。ソフト巻54は、挿入端62及び後部端64を有する。弾性部材58は、尿失禁用用具50が女性の膣12に位置決めされると、挿入端62が膨張することができるように、少なくとも部分的には挿入端62に配置される必要がある。弾性部材58の目的は、挿入端62を上向き及び/又は外向きに膨張させて押し付け、使用者の膣の断面積に跨って延び、膣管26の壁30、32、34及び36に接することができるようにすることである。この作用により、尿失禁用用具50が、膣12内に適切に位置合わせされて保持され、尿道−膣筋筋膜域46に配置された周囲の組織を支持するのに役立つことになる力(圧力)が生じることになる。また、この作用により、尿道18を横切って十分に圧力が伝達され、腹腔内圧が上昇したときの尿の不随意の漏れを遮断することができることになる。このため、弾性部材58は、ソフト巻54の全長に渡って膨張する必要はない。また、弾性部材58の強度により、挿入端62を適切に開くのに必要な大きさ及び形状が決定されることになる。弾性部材58を構成する材料によっては、挿入端62全体に延びる長さの弾性部材58を用いることが有利である。弾性部材58により、ソフト巻54が、女性の膣内に配置されると、十分に開くことが確実にされることになる。
【0018】
図4及び図5を参照すると、ソフト巻54は、次に圧縮されて尿失禁用用具50とされる。尿失禁用用具50は、望むどのような形状とすることもできるが、好ましくは、断面の形状が円形であるほぼ円柱形とされることになる。他の外形では、断面の形状が長方形とされることになる。尿失禁用用具50は、図5に示すように、長さがL、幅がW及び深さがDである細長い部材として描かれている。尿失禁用用具50の断面が丸い場合には、その直径は、幅寸法W及び深さ寸法Dに等しいことになる。尿失禁用用具50の長さLは、約0.4インチ(約10mm)から約4.7インチ(約120mm)まで、好ましくは約1.5インチ(約38mm)から約2.5インチ(約64mm)までの間の範囲とされることができ、最も好ましくは、長さLは、少なくとも約2インチ(約51mm)とされる。幅W及び深さDは、約0.2インチ(約5mm)から約2.5インチ(約64mm)まで、好ましくは約0.5インチ(約12.7mm)から約2.3インチ(約60mm)までの間の範囲とされることができる。最も好ましくは、尿失禁用用具50の幅W及び深さDは、約1.6インチ(約40mm)未満とされる。
【0019】
挿入端62は、女性の膣12に入る尿失禁用用具50の最初の部分として設計されている。使用中には、尿失禁用用具50が、全体的に女性の膣内に位置決めされることになることに留意する必要がある。挿入端62は、折り点56を備えるため、挿入端62は、通常、後部端64より多量の非吸収性材料を含む。挿入端62には、多量の非吸収体52が存在するが、挿入端62の外径は、後部端64の外径と等しくされる必要がある。挿入端62の非吸収性材料の量は、後部端64を構成する非吸収性材料より、密度を高くされる必要がある。挿入端62に多量の非吸収体52が存在することにより、尿失禁用用具50は、膨張性に優れ、尿道に隣接して配置された筋組織及び身体組織を支持して容易に尿道を圧縮することができる。これにより、尿道18を通る不随意な尿の漏れを消失させることになる。
【0020】
尿失禁用用具50が形成されると、弾性部材58、非吸収体52及び存在するならばカバー60は、全て圧縮される。尿失禁用用具50は、半径方向及び前後方向に圧縮することもでき、半径方向にのみ圧縮することもできる。弾性部材58は、少なくとも挿入端62には配置される必要がある。圧縮の段階は、弾性部材58の機能に不利な影響を及ぼさない必要がある。言い換えると、弾性部材58は、尿失禁用用具50が女性の膣12に挿入されると、その本来の形状まで、叉はそれに向かって外向きに膨張することができる必要がある。弾性部材58は、女性の膣12に適切に挿入されて位置決めされると、尿失禁用用具50の少なくとも一部を膨張させ、女性の尿道を支持することができる必要がある。
【0021】
引き続き図4を参照すると、圧縮された尿失禁用用具50には、後部端64近辺に穴を開け、部分的又は完全に延びる穿孔叉は開口部66を形成する。穿孔66は、縦方向中央軸線X−Xに垂直叉はそれに角度をつけて形成することができる。穿孔66は、実際の端部64からわずかに距離を置いて配置されることが好ましい。穿孔66は、端部64から、約0.1インチ(約2.5mm)から約0.5インチ(約12.7mm)までの間の距離を置いて配置することができる。最も好ましくは、穿孔66は、後部端64から約0.25インチ(約6.4mm)に配置される。穿孔66は、引出し紐68をそれに通して輪にし、尿失禁用用具50に固定することができるように設計されている。引出し紐68は、尿失禁用用具50を膣12から除去するのを助けることになる。穿孔66は、針、目打ち又は当業者に周知の他の種類の穴あけ装置で形成することができる。引出し紐68は、穿孔66に通して輪にし、尿失禁用用具50に確実に固定する。次に、引出し紐68の自由端に結び目70を作り、引出し紐68が、尿失禁用用具50から絶対に分離しないようにする。また、結び目70は、引出し紐68がほつれるのを防ぎ、女性が、膣12から尿失禁用用具50を除去しようとするときに、引出し紐68を掴むことができる部位又は点を設けるのに役立つ。
【0022】
引出し紐68は、尿失禁用用具50が膣12内に位置決めされている間に、後部端64が膨張することができる量を限定することになることに留意する必要がある。また、引出し紐68は、尿失禁用用具50の種々の部分に固定及び/又は取り付けることができ、1つ又はそれ以上の弾性部材58、非吸収体52、あればカバー60、又は望むならば3つ全ての部材を通ることができることに留意する必要がある。或いは、穿孔66は、圧縮する前にソフト巻54に形成することができ、引出し紐68は、ソフト巻54を圧縮する前、又はソフト巻54を圧縮して尿失禁用用具50にした後に取り付けることができる。
【0023】
引出し紐68は、種々の種類のスレッド又はリボンで構成することができる。100%綿の繊維で作ったスレッド又はリボンが良好に働く。引出し紐68の長さは、尿失禁用用具50の端部を約2インチ(約51mm)から約8インチ(約203mm)までの間、好ましくは約4インチ(約102mm)から約6インチ(約152mm)までの間、最も好ましくは約5インチ(約127mm)超えて延びる必要がある。引出し紐68は、尿失禁用用具50に固定する前に、染色及び/又はワックスのような浸透漏れ防止剤で処理することができる。浸透漏れ防止剤は、体液が引出し紐68に沿って浸透漏れし、女性の下着の内側表面に接触するのを減少、うまくいけば防止することになる。使用者は、特に尿失禁用用具50を膣12から除去しようとするときには、乾燥した清潔な引出し紐56を好む。
【0024】
今度は、図6を参照すると、女性の膣12内に挿入されて位置決めされるとそうなるように、挿入端62が膨張した尿失禁用用具50が描かれている。弾性部材58は、最初の状態に戻り、挿入端62をキノコ形にし、尿失禁用用具50が、膣管25の4つ全ての壁30、32、34及び36とぴったりと接触することになるように上向き及び/又は外向きに膨張する。こうすることにより、尿失禁用用具50が、尿失禁用用具50が配置された膣12の長さに沿う位置で、膣12の全断面空間の面積を占めることになる。このため、前部膣壁34が、膀胱20の膀胱底48を圧迫することになる。また、膣12内の尿失禁用用具50の位置及びその近辺は、尿道括約筋44を支持し、適切に機能させることになる。更に、膣12内の尿失禁用用具50の相対的位置及びその近辺は、支持的バックドロップとなり、恥骨結合22と協働して尿道18を圧迫することになる。上に定義した機能が働く間に、不活性の2成分材料で構成された尿失禁用用具50は、正常の身体分泌物を吸引又は保持せず、このため、正常の膣環境が容易に維持されることになることは記憶される必要がある。
【0025】
再び図1を参照すると、尿失禁用用具50が、膣管26の中央1/3に配置され、この部位の空隙容積を完全に埋めるように膣12に位置決めされて示されている。言い換えると、尿失禁用用具50は、膣管26のほぼ中央2インチ(約51mm)を塞ぎ、尿道−膣筋筋膜域46に配置された身体組織及び筋肉のための支持的バックドロップをもたらす。この位置では、尿失禁用用具50が、尿道18の上部に位置合わせされることになり、ほぼ1.5インチ(ほぼ38mm)の長さの尿道管19の少なくとも半分に対して支持的バックドロップをもたらすことになる。腹腔内圧が上昇している間に、恥骨結合22と尿失禁用用具50との間の尿道−膣筋筋膜域46に生じる圧迫により、括約筋44がより正常に近い形状を取ることができる。すると、括約筋44が正常に機能し、尿道管19が収縮することができる。この2つの機能が互いに助け合って、膀胱20から尿道管19を通り外尿道口40までの不随意の尿の漏れを軽減する。
【0026】
図7を参照すると、尿失禁用用具50が、アプリケータ72に収納されて示されている。アプリケータ72は、尿失禁用用具50を女性の膣12に挿入するのを容易にすることになる。アプリケータ72は、望むならば、タンポンのアプリケータと同一にすることができる。アプリケータ72は、中空の外側管74及び中空の内側管76を有する2つの部品の伸縮アプリケータとして描かれている。尿失禁用用具50は、径の小さい内側管76が、後部端64を押すことができるように外側管74内に位置決めされている。この動作により、尿失禁用用具50が外側管74から排出されることになる。アプリケータ72は、紙、厚紙又はプラスチックで構成することができる。アプリケータの例の1つは、1998年8月18日にAchterらに付与され、「弾性部材を有するタンポン」の名称の米国特許第5,795,346号に教示されている。尚、この特許は、引用文献として組み込まれ、本明細書の一部とする。
また、尿失禁用用具50は、望むならば、指挿入することができることも理解される必要がある。指挿入には、女性の指の1本を使用する。
【0027】
図8を参照すると、女性の尿失禁を軽減する方法には、非吸収性の尿失禁用用具50を用意し、女性の膣12の開口部24に位置合わせする段階が含まれる。弾性部材58は、この時点では圧縮された状態であることを記憶しておく必要がある。尿失禁用用具50を正常に機能させるためには、弾性部材58が、少なくとも部分的にはほぼ挿入端62に配置される必要がある。尿失禁用用具50は、次に、挿入端52が最初に入るように女性の膣12に挿入される。挿入されると、尿失禁用用具50は、膣管26の内周28を構成する4つの壁30、32、34及び36のうち少なくとも2つに直接接触することになる。膣管26は、通常、複数のしわでつぶれた状態に維持されているため、尿失禁用用具50が全空隙容積を埋めることはまずないと考えられる。次に、尿失禁用用具50は、挿入端62が、女性の尿道管に配置された尿道括約筋44の1つに隣接して位置合わせされるように、膣管26の長さの中央1/3に位置決めされる。この位置で、尿失禁用用具50は、恥骨結合22と協働してその間に尿道管を挟む。この方法は、尿失禁用用具50の少なくとも一部が、断面積を増大させ、膣管26の4つ全ての内壁30、32、34及び36に接触するように弾性部材58を膣管26内で膨張させ、これにより、尿道管19のための支持的バックドロップをもたらす段階を更に含む。最後に、尿道管が、尿失禁用用具50と恥骨結合22との間で収縮することにより、不随意の尿の漏れを制限する。この方法は、尿失禁用用具50を女性の膣12から除去する段階を更に含むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上に述べたように、尿失禁用用具50は、使用する前にアプリケータ72に収納することができる。アプリケータ72により、挿入が快適になる他、使用されるときまで、尿失禁用用具50を圧縮された状態に維持することに役立つことになる。尿失禁用用具50がアプリケータ72から除去され、女性の膣12に挿入されると、弾性部材58は、非圧縮状態まで膨張することができることになる。弾性部材58は、圧縮された状態から約25%まで、好ましくは圧縮状態から約50%まで、最も好ましくは圧縮された状態から約100%まで膨張することができる必要がある。
本発明をいくつかの特定の実施形態に関して説明したが、上の記載に照らして、当業者には、多数の変更、修正及び変形が明らかになることは理解されよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲に含まれるそのような全ての変更、修正及び変形を含むことを意図する。
【符号の説明】
【0029】
46 非吸収性失禁用用具
50 尿失禁用具
52 非吸収体
54 ソフト巻
58 弾性部材
60 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性の尿失禁を軽減する器具であって、
該器具は、初期断面積及び挿入端及び後部端を有し、膨張すると尿失禁用用具の前記断面積を増大させることができる圧縮された弾性部材を含む非吸収性尿失禁用用具を備えており、
前記失禁用用具は、前記挿入端が最初に入るようにして、左右の側壁、前壁及び後壁で構成された内周を有する膣管を有する女性の膣に、前記壁の少なくとも2つに接触して挿入されるようになっており、
前記失禁用用具は、前記挿入端が、女性の尿道管の一部である女性の尿道括約筋に隣接して位置合わせされるように、前記尿失禁用用具を前記膣管の長さの中央1/3に位置決めし、前記尿失禁用用具が女性の恥骨結合と協働して前記尿道管を間に挟むように構成されており、
前記弾性部材が、前記尿失禁用用具の少なくとも一部の断面積が増大し、前記膣管の4つ全ての内壁に接触して、前記尿道管に対する支持的バックドロップをもたらすように、使用時において前記膣管内で膨張するようになっており、
前記尿道管が前記尿失禁用用具と前記恥骨結合の間でそれ自身が圧縮されることにより、不随意な尿の漏れを制限することができるようになっている、
ことを特徴とする用具。
【請求項2】
前記尿失禁用用具を前記膣から除去する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記尿失禁用用具をアプリケータに収納し、女性の膣に挿入することを容易にすることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記弾性部材が、前記アプリケータから取出され、女性の膣に挿入されると、非圧縮状態にまで膨張することができることを特徴とする請求項3に記載の器具。
【請求項5】
前記弾性部材が、圧縮した状態から約25%まで膨張できることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の器具。
【請求項6】
前記弾性部材が、圧縮した状態から約50%まで膨張できることを特徴とする請求項5に記載の器具。
【請求項7】
前記弾性部材が、圧縮した状態から約100%まで膨張できることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記非吸収性尿失禁用用具は、通常の身体分泌物を吸引又は保持しない不活性な2成分材料で構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の器具。
【請求項9】
前記非吸収性尿失禁用用具が、少なくとも5.08センチメートル(2インチ)の長さである細長い部材からなることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の器具。
【請求項10】
前記非吸収性尿失禁用用具は、5.08センチメートル(2インチ)から10.16センチメートル(4インチ)の長さの細長い部材であることを特徴とする請求項9に記載の器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−160426(P2009−160426A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91029(P2009−91029)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【分割の表示】特願2000−589110(P2000−589110)の分割
【原出願日】平成11年12月21日(1999.12.21)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】