説明

妻側手摺枠及び妻側手摺枠を使用した枠組み足場の組立て方法

【課題】 従来、枠組み足場の組み立てにおいて、上段の作業始めに足場の妻側に手摺枠が無いため、その位置においては非常に危険性が高い問題点があった。
【解決手段】 外枠10の両側部杆12にそれぞれ枠正面外側方向に突出して同じ高さに設ける位置決め金具2と、それぞれの位置決め金具2の下方に外枠10の側部杆12に沿って高さ方向に移動可能な取付金具3、6、9をそれぞれ設けた妻側手摺枠1、4、7、及び妻側手摺枠1、4、7を使用した枠組み足場の組立て方法による。また、上記取付金具1が、開口部30と板状取付部材31を有し水平方向に回動可能である妻側手摺枠1、更に、取付金具6、9が、建て枠Tの水平方向に設けられる杆T3に係合可能な凹部を有する妻側手摺枠4、7による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築現場、造船現場などにおいて組立てられる枠組み足場に使用する妻側手摺枠、及びこの妻側手摺枠を使用した枠組み足場の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築現場、造船現場等の工事現場等において組立てられる枠組み足場は、組立て時において、上段の足場は、手摺枠が無いまま床付き布枠を設けて作業をすると危険性が高いため、下段の足場から据置き又は先行の方法で手摺枠を上段に設ける組立て方法が知られていた。しかし、このような枠組み足場の組立て方法においても、上段の足場の妻側端部は、下段の足場から妻側手摺枠が嵌め込めないため、上段の足場の妻側端部には手摺枠が無い状態で上段の足場に上がり、そこから妻側に手摺枠やブレースなどを設けて安全を確保する作業をおこなっていた。(従来技術1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来技術1では、上段の作業始めに足場の妻側に手摺枠が無いため、その位置においては非常に危険性が高く、作業者は安全ロープ等の安全装置を付けて作業を行う必要があった。
【0004】
そのため、妻側手摺枠を設ける作業の作業性が悪く、装着作業が行い難い課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、外枠の両側部杆にそれぞれ枠正面外側方向に突出して同じ高さに設ける位置決め金具と、それぞれの位置決め金具の下部に外枠の側部杆に沿って高さ方向に移動可能な取付金具をそれぞれ設けたことを特徴とする妻側手摺枠を提案する。
【0006】
また、取付金具が、開口部と開口部を閉ざす板状取付部材を有するとともに、水平方向に回動可能な取付金具である0005欄に記載の妻側手摺枠を提案する。
【0007】
更に、取付金具が、建て枠の水平方向に設けられる杆に係合可能な凹部を有する取付金具である0005欄に記載の妻側手摺枠を提案する。
【0008】
更にまた、外枠の両側部杆にそれぞれ枠正面外側方向に突出して同じ高さに設ける位置決め金具と、それぞれの位置決め金具の下部に外枠の側部杆に沿って高さ方向に移動可能な取付金具をそれぞれ設けた妻側手摺枠を下段の足場から先行方法又は据置き方法によって上段の足場の妻側手摺枠として立設することを特徴とする妻側手摺枠を使用した枠組み足場の組立て方法を提案する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、上段の足場の妻側にも妻側手摺枠を、下段の足場から1人の作業員で容易に設置することができる。したがって、上段の足場の床付き布枠を設けて作業者が上段の足場で作業をしようとするときには、既に上段足場の妻側端部にも妻側手摺枠が設置されているため、安全に作業を行うことができる。
【0010】
取付金具が、外枠の側部杆に沿って高さ方向に移動可能であるので、建て枠のサイズの違いや補剛材の高さ位置の違いに対応して設置することができるため、広い汎用性を有する。
【0011】
取付金具が、開口部と開口部を閉ざす板状取付部材を有するとともに、水平方向に回動可能であると建て枠のサイズや形状が異なったものであっても対応できる利点があり、汎用性が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次にこの発明の妻側手摺枠について、第1実施形態の妻側手摺枠を妻側建て枠に設けた状態の枠組足場の妻側端部外側から見た正面図である図1、同じく図1のAA線矢視図であり取付金具を取り付ける前を示す図2、同じく図1のAA線矢視図であり取付金具を取り付けた後を示す図3、同じく図1のB部拡大図であり位置決め金具の側面図である図4、第2実施形態の第1実施例の妻側手摺枠の正面図である図5、同じく側面図である図6、図5の取付金具の拡大側面を示す図7、第2実施形態の第2実施例を示す妻側手摺枠の正面図である図8、同じく側面図である図9、図8の取付金具の拡大側面を示す図10に基づいて説明する。
【0013】
この発明の第1実施形態を示す妻側手摺枠1は、下方が開口するコ字形状の杆であり上部杆11と両側の側部杆12、12とからなる外枠10と、外枠10の下部に水平に下杆13を設け、外枠10の上部杆11及び下杆13の中間に平行して中杆14を設け、上部枠11、中杆14、下杆13を連結しているU字状杆15からなる。
【0014】
外枠10の両側部枠12のそれぞれ下部に、枠正面外側方向に突出して同じ高さに設ける位置決め金具2と、それぞれの位置決め金具2の下方に、それぞれの側部杆12、12に沿って高さ方向に移動可能な取付金具3をそれぞれ設けている。それぞれの側部杆12は、下部に上下に間隔をおいて2つの取付金具停止ピン120を突出して設け、この2つの取付金具停止ピン120、120間に取付金具3を側部杆12に沿って高さ方向に移動可能である。
【0015】
位置決め金具2は、図4に示すように建て枠Tの横架材T1に上方から載置可能な係止凹部20を下方に向けて開口するつかみ金具からなる。
【0016】
取付金具3は、側部杆12に沿って上下に間隔をおいて突出して設けられた取付金具停止ピン120、120の間で高さ方向に移動可能であり、かつ側部枠12を回動中心軸として水平方向に回動可能に設けらていれる。取付金具3は、回動先端側に取付開口部30を形成しており、回動方向は側部枠12の外側を枠正面外側へ向かって水平方向で回動し、取付金具3が下杆13と平行な位置にあるとき取付開口部30の開口方向は位置決め金具2の突出方向と同じである。
【0017】
取付開口部30は、板状体を平面視コ字形に形成してなり、コ字形状の内部に建て枠Tの縦杆T2を収納可能である。くさび体31は、取付開口部30のコ字開口部分の対向する板状体に設けられるくさび穴に挿脱可能に設けられる。
【0018】
次に、この発明の第1実施形態の妻側手摺枠1を、下段の足場から先行方法又は据置き方法によって上段の足場の妻側手摺枠1として順次立設する枠組み足場の組立て方法について説明する。作業者は、下段の足場でかつ足場妻側端部の内側から妻側の建て枠Tの横架材T1に位置決め金具2の係止凹部20を係合させて位置決めする。このとき、妻側手摺枠1は、その枠正面が、妻側建て枠Tの枠正面と同じ方向であり、位置決め金具3より上方の妻側手摺枠1は、足場の妻側端部より外方へ出てやや傾いている。次に、作業者は、位置決め金具2より下部の側部枠12を足場の妻側端部外方へ押すことによって位置決め金具2を横架材T1を中心に回動させ、妻側手摺枠1を妻側建て枠Tの枠面と平行となるような姿勢にする。
【0019】
このとき、両側部枠12のそれぞれ取付金具3は、それぞれの側部枠12を回動中心として回動可能であり、かつ取付金具停止ピン120、120の間で高さ方向に移動可能であるため、妻側建て枠Tに設けられたブレースピンT4のような突出物があった場合も、回動によってそれらを避けながら適切な高さ位置に位置させることが可能である。このとき、くさび体31は、取付開口部30のくさび孔から落ちないように外されている。
【0020】
次に、順番に左右のどちらかの取付金具3を回動させ、取付開口部30を妻側建て枠Tの縦杆T2をコ字状内部に収納して係合させる。この状態で、取付開口部30のくさび孔にくさび体31を挿入して通することによって取付金具3を妻側建て枠Tの縦杆T2に係合して固定する。同様にして左右反対側の取付金具3も妻側建て枠Tの縦杆T2に係合して固定する。これによって、下段の足場から上段の足場の妻側手摺枠1を妻側建て枠Tに立設することができる。
【0021】
次に発明の第2実施形態の第1実施例の妻側手摺枠4について図5乃至図7に基づいて、第2実施形態の第2実施例の妻側手摺枠7について図8乃至図10に基づいて説明する。
【0022】
第2実施形態の第1実施例の妻側手摺枠4と第2実施例の妻側手摺枠7は、位置決め金具5、8及び取付金具6、9の形状が少し異なるだけであり、作用は同じなので共通な部分の説明は同じである。したがって、以下異なる部分以外の説明は、共通である。
【0023】
第2実施形態の第1実施例の妻側手摺枠4と第2実施例の妻側手摺枠7は、下方が開口するコ字形状の杆であり上部杆41、71と左右の側部杆42、72とからなる外枠40、70と、上部杆41、71に平行して両側部杆42、72の間に架設される2本の中杆43、73からなる。それぞれの側部杆42、72のそれぞれ下部にそれぞれ枠正面方向に突出して位置決め金具5、8を同じ高さで設ける。
【0024】
位置決め金具5は第1実施例であり図6に示すように建て枠Tの横架材T1に係止凹部50を係合して回動可能な係止凹部50を有するつかみ金具からなる。また、図9に示す位置決め金具8の第2実施例は、U字金具からなり、U字開口部80を下方に向けて側部枠72に固定されており、建て枠Tの横架材T1にU字開口部80を係合して回動可能である。それぞれの位置決め金具5、8の下部にそれぞれ取付金具6、9を設ける。
【0025】
図6及び図7に示す取付金具6は第1実施例であり、側部杆42に沿って上下に移動可能である。取付金具6は、建て枠Tの横架材T1より下方の水平方向に設けられた杆、一般的には補剛材T3に係合可能な係止凹部60を有するつかみ金具と、それぞれの側部杆42を内包する円筒部61と、ボルト止め部62とを有する。取付金具6は、ボルト止め部62を緩めることで円筒部61によって側部杆42に沿って上下に移動可能であり、適切な高さ位置で、ボルト止め部62を締めることで円筒部61は側部杆42に固定される。また、取付金具6は、側部杆42の下端部近傍に、取付金具止めピン420を設けてあり、ボルト止め部62を緩ませた状態でも円筒部61が側部杆42の下端から抜け落ちないような構成になっている。
【0026】
図9及び図10に示す取付金具9は第2実施例であり、側部杆72に沿って上下に移動可能である。取付金具9は、建て枠Tの横架材T1より下方の水平方向に設けられた杆、一般的には補剛材T3に係合可能なU字開口部90を下方に向けて有するU字金具と、それぞれの側部杆72を内包する円筒部91と、ボルト止め部92とを有する。取付金具9は、ボルト止め部92を緩めることで円筒部91によって側部杆72に沿って上下に移動可能であり、適切な高さ位置で、ボルト止め部92を締めることで円筒部91は側部杆72に固定される。また、取付金具9は、側部杆72の下端部近傍に、取付金具止めピン720を設けてあり、ボルト止め部92を緩ませた状態でも円筒部91が側部杆72の下端から抜け落ちないような構成になっている。
【0027】
次に、上段の足場の第2実施形態の妻側手摺枠4、7を、下段の足場から先行方法又は据置き方法によって上段の足場の妻側手摺枠4、7として順次立設する枠組み足場の組立て方法について説明する。作業者は、下段の足場でかつ足場妻側端部の内側から妻側の建て枠Tの横架材T1に位置決め金具5、8の係止凹部50、80を係合させて位置決めする。このとき、妻側手摺枠4、7は、その枠正面が、妻側建て枠Tの枠正面と同じ方向であり、位置決め金具5、8より上方の妻側手摺枠4、7は、足場の妻側端部より外方へ出てやや傾いている。次に、作業者は、位置決め金具5、8より下部の側部枠42、72を足場の妻側端部外方へ押すことによって位置決め金具5、8を横架材T1を中心に回動させ、妻側手摺枠4,7を妻側建て枠Tの枠面と平行となるような姿勢にする。
【0028】
取付金具6、9は、建て枠Tの水平方向に設けられた補剛材T3に係合させるため、ボルト止め部62、92を緩めて側部枠42、72に移動可能な状態にして高さ調節し、補剛材T3に上方から係止凹部60、90で係止させる。建て枠Tの補剛材T3の高さ位置は、様々な形式や大きさによって異なるため、取付金具6、9の高さ調節は必要となる。取付金具6、9を補剛材T3に係止凹部60、90で係止させた後、ボルト止め部62、92を締めることで円筒部61、91を側部杆42、72に固定させて取付金具6、9をを妻側建て枠Tに立設する。同様にして左右反対側の取付金具3も妻側建て枠Tの縦杆T2に係合して固定する。このように左右側部枠42、72の上部の位置決め金具5、8と下部の取付金具6、9によって妻側手摺枠4、7は、妻側建て枠Tに確実に立設される。そのため、先行方法でも据置き方法においても下段の足場から上段の足場の妻側手摺枠1を妻側建て枠Tに立設することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明は、建築現場、造船現場などにおいて組立てられる枠組み足場の妻側端部に利用される可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の妻側手摺枠の第1実施形態を妻側建て枠に設けた状態の枠組足場の妻側端部外側から見た正面図
【図2】同じく図1のAA線矢視図であり取付金具を取り付ける前を示す平面断面図
【図3】同じく図1のAA線矢視図であり取付金具を取り付けた後を示す平面断面図
【図4】同じく図1のB部拡大図であり位置決め金具の側面図
【図5】この発明の妻側手摺枠の第2実施形態の第1実施例をを示す正面図
【図6】同じく側面図
【図7】同じく図5の取付金具の拡大側面図
【図8】この発明の妻側手摺枠の第2実施形態の第2実施例をを示す正面図
【図9】同じく側面図
【図10】同じく図8の取付金具の拡大側面図
【符号の説明】
【0031】
1 妻側手摺枠(第1実施形態)
10 外枠
11 上部杆
12 側部杆
120 取付金具停止ピン
13 下杆
14 中杆
15 U字状杆
2 位置決め金具
20 係止凹部
3 取付金具
30 取付開口部
31 くさび体(板状取付体)
4 妻側手摺枠(第2実施形態の第1実施例)
40 外枠
41 上部杆
42 側部杆
420 取付金具止めピン
43 中杆
5 位置決め金具
50 係止凹部
6 取付金具
60 係止凹部
61 円筒部
62 ボルト止め部
7 妻側手摺枠(第2実施形態の第2実施例)
70 外枠
71 上部杆
72 側部杆
720 取付金具止めピン
73 中杆
8 位置決め金具
80 係止凹部
9 取付金具
90 係止凹部
91 円筒部
92 ボルト止め部
T 妻側建て枠
T1 横架材
T2 縦杆
T3 補剛材
T4 ブレースピン止め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠の両側部杆にそれぞれ枠正面外側方向に突出して同じ高さに設ける位置決め金具と、それぞれの位置決め金具の下部に外枠の側部杆に沿って高さ方向に移動可能な取付金具をそれぞれ設けたことを特徴とする妻側手摺枠。
【請求項2】
取付金具が、開口部と開口部を閉ざす板状取付部材を有するとともに、水平方向に回動可能な取付金具である請求項1記載の妻側手摺枠。
【請求項3】
取付金具が、建て枠の水平方向に設けられる杆に係合可能な凹部を有する取付金具である請求項1記載の妻側手摺枠。
【請求項4】
外枠の両側部杆にそれぞれ枠正面外側方向に突出して同じ高さに設ける位置決め金具と、それぞれの位置決め金具の下部に外枠の側部杆に沿って高さ方向に移動可能な取付金具をそれぞれ設けた妻側手摺枠を下段の足場から先行方法又は据置き方法によって上段の足場の妻側手摺枠として立設することを特徴とする妻側手摺枠を使用した枠組み足場の組立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−97324(P2006−97324A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284512(P2004−284512)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(301037512)伊藤組土建株式会社 (4)
【出願人】(000210883)中央ビルト工業株式会社 (9)