説明

媒体発行装置及び媒体発行方法

【課題】 駅係員が対応することなく、取忘れられた釣り札を本人に確実に返却できるようにする。
【解決手段】 払出部24によって払い出された釣り銭が所定時間経過しても取り去られないのに基づいて釣り銭を内部に回収する回収部25と、この回収部25によって回収される釣り銭の金額、及び、発行された媒体の発行情報を記憶する記憶部26と、発行口から放出された媒体が一旦取り去られたのち発行口に投入されることにより、その発行情報を読み取る読取部22と、この読取部22によって読み取られた発行情報と記憶部26によって記憶された発行情報とが一致するか否かを判別する判別部29と、この判別部29によって発行情報が一致すると判別されるのに基づいて回収した釣り銭を自動的に紙幣出入口に返却する返却部27とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、駅等で切符、カード、或いは定期券等を発行する券売機として適用される媒体発行装置及び媒体発行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の媒体発行装置には、接客部の紙幣投入口から紙幣を投入させ、或いは、硬貨投入口から硬貨を投入させて、その投入された金額に応じて購入可能な媒体の金額を操作表示ボタンに点灯表示させるものがある。
【0003】
利用者はこの点灯表示された操作ボタンのうち所望する金額を表示する操作ボタンを選択して押圧操作する。この押圧操作により発券処理部が動作されて所望する金額の切符やカードなどが発行され、或いは、ICカードヘの積み増し動作等が行なわれる。この発券動作時に、投入された貨幣の金額と購入される媒体の金額との間に差額がある場合には、その差額が釣り銭として放出される。
【0004】
ところで、例えば、放出された釣札が一定時間経過しても、取り去られない場合には、取り忘れとして内部に取り込んで回収するようになっている。釣り札の取り忘れに気付いた利用者は、係員窓口に行って取り忘れたことを申告することになる。この申告を受けた駅係員は、当該自動券売機まで出向き、取忘回収されている紙幣を確認し、自動券売機内から紙幣を取り出して利用者へ返却する(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−266193号公報
【特許文献2】特開平7−320109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来においては、釣り札の取り忘れ回収が発生すると、必ず係員対応となっていたため、係員の負担となり、特に、遠隔対応機等で無人のコーナまで出向く場合には、係員への負担が大きくなっていた。
【0006】
また、取り忘れ回収された釣り札が、取忘れを申出た利用者のものかどうかは確認できないため、不正に繋がる可能性もあった。
【0007】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、駅係員が対応することなく、取忘れられた釣り札を本人に確実に返却できるようにした媒体発行装置及び媒体発行方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1記載のものは、投入口から貨幣が投入されることにより媒体を発行し、この媒体を発行口から放出する発行手段と、前記投入された貨幣の額と前記発行される媒体の購入額との間に差額があるとき、その差額に応じた貨幣を釣り銭として前記投入口に払い出す払出手段と、この払出手段によって払い出された釣り銭が所定時間経過しても取り去られないのに基づいて前記釣り銭を内部に回収する回収手段と、この回収手段によって回収される釣り銭の金額、及び、前記発行される媒体の発行情報を記憶する記憶手段と、前記発行口から放出された媒体が一旦取り去られたのち前記発行口に投入されることにより、その発行情報を読み取る読取手段と、この読取手段によって読み取られた発行情報と前記記憶手段によって記憶された発行情報とが一致するか否かを判別する判別手段と、この判別手段によって発行情報が一致すると判別されるのに基づいて前記回収した釣り銭を自動的に前記投入口に返却する返却手段とを具備する。
【0009】
請求項7記載のものは、投入口から貨幣が投入されることにより媒体を発行してこの媒体を発行口から放出し、前記投入された貨幣の額と前記発行される媒体の購入額との間に差額があるとき、その差額に応じた貨幣を釣り銭として前記投入口に払い出し、前記払い出された釣り銭が所定時間経過しても取り去られないのに基づいて前記釣り銭を内部に回収し、この回収される釣り銭の金額、及び、前記発行される媒体の発行情報を記憶し、前記発行口から放出された媒体が取り去られたのち前記発行口に投入されることにより、その発行情報を読み取り、この読み取られた発行情報と前記記憶された発行情報とが一致するか否かを判別し、前記発行情報が一致すると判別されるのに基づいて前記回収した釣り銭を自動的に前記投入口に返却する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、釣り銭の取り忘れ回収が発生しても係員の対応によりことなく返却でき、係員の負担を軽減でき、しかも、取り忘れ回収された釣り銭が、取忘れを申出た利用者のものかどうかも確認でき、不正を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図面に示す実施の形態を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である媒体発行装置としての券売機を正面側から示す外観斜視図である。
【0012】
図中1は券売機本体で、この券売機本体1の正面上部側には接客部2が設けられている。接客部2の下方部には硬貨を投入させる硬貨投入口3、つり銭硬貨を放出させる硬貨放出口4、及び紙幣を出入させる投入口としての紙幣出入口5が設けられている。
【0013】
また、接客部2の下方部にはカードを放出するカード発行口7、及び券を放出する券発行口8が設けられている。
【0014】
図2は券売機の内部構成を背面側から示す斜視図である。
【0015】
券売機本体1内には、カード処理部11、発券処理部12、紙幣処理部13、硬貨処理部14、及び制御部15が設けられている。
【0016】
図3は券売機の駆動制御系を示すブロック図である。
【0017】
制御部15には、制御回路を介して上記した接客部2、カード処理部11、発券処理部12、紙幣処理部13、硬貨処理部14、さらに、係員操作部17が接続されている。
【0018】
上記した係員操作部17は券売機を扱う係員によって操作されるもので、例えば、締切業務や、エラー解除、さらには、保守員による保守点検時にも利用される。
【0019】
接客部2は券売機の利用客が切符の購入、カードの購入、定期券の購入、定期券の延期、ICカードヘの積み増し等の動作を行う際に利用される。接客部2には、操作ボタン(図示しない)が配設され、この操作ボタンを押圧操作することにより対応した動作が制御部15を介して行われるようになっている。
【0020】
発券処理部12は購入動作に応じて切符を発券するもので、この発券処理時には切符への印字、データの書き込みなどが行なわれる。
【0021】
紙幣処理部13及び硬貨処理部14は、制御部15からの金額の命令により各々紙幣、硬貨の取り込み、または放出を行う。
【0022】
カード処理部11は磁気カードの発行、定期券の発行、ICカードの発行、ICカードの積み増し、カードによる切符購入などに利用される。カード発行口7からカードが取り込まれると、ICカードの積み増しや切符購入動作を行ったり、装填してあるカードに印字、データ書き込み処理を行って発行したりする。
【0023】
図4は、上記した発券処理部12、紙幣処理部13、及び制御部15の構成を示すものである。
【0024】
発券処理部12は切符などを発券する発行手段としての発券部21、この発券部21によって発券されて券発行口8から放出された券が一旦持ち去られて再度、前記発券口8に投入されたとき、その発券情報を読み取る読取手段としての読取部22とを有している。
【0025】
紙幣処理部13は、紙幣出入口5から投入された紙幣の額と発券される券の購入額との間に差額があるとき、その差額に応じた紙幣を釣り銭として紙幣出入口5に払い出す払出手段としての払出部24、この払出部24によって払い出された釣り銭が所定時間経過しても取り出されないのに基づいて釣り銭を内部に回収する回収手段としての回収部25、この回収部25によって回収される釣り銭の金額、及び、発券された券の発券情報を記憶する記憶手段としての記憶部26、この記憶部26によって記憶された発券情報と上記した読取部22によって読み取られた発券情報とが一致すると判別されるのに基づいて回収した釣り銭を自動的に紙幣出入口5に返却する返却手段としての返却部27とを有して構成される。
【0026】
制御部15は、読取部22によって読み取られた発券情報と記憶部26によって記憶された発券情報とが一致するとか否かを判別する判別手段としての判別部29を有する。
【0027】
図5及び図6は、上記したように構成される券売機で切符又はカード等を購入する場合の業務フローを示すものである。
【0028】
まず、利用者は操作待ち状態から(ステップST1)、接客部2で購入する切符又はカード等の購入情報を選択し(ステップST2)、続いて入金する(ステップST3)。そして、入金金額が購入金額に到達したか否かが判別され(ステップST4)、入金金額が購入金額を上回れば入金を禁止して直ちに発券し、同時に釣り札を出金する(ステップST5)。釣り札が複数枚ある場合には、釣り札を重ね合わせて一括して出金する。そして、回収部25は出金紙幣束の後端を保持しつつ、紙幣の抜取りを監視する(ステップST6)。この釣り札放出後、一定時間が経過したか否かが判別され(ステップST7)、一定時間経過しても出金紙幣が抜き取られない場合には取り忘れと判断し、出金紙幣を機器内部に取り込み回収する(ステップST8)。ついで、この時の切符又はカードの券番号と釣銭金額を記憶部26に記憶する(ステップST9)。この取り込み回収された紙幣の返却を望む場合には、既に取り去られた切符またはカードの投入待ち状態から(ステップST10)、その切符またはカードが投入されると(ステップST11)、その発行情報(券番号、金額、日時等)が読取部22によって読み取られる。
【0029】
そして、上記した切符またはカードの投入が取忘紙幣の回収後、所定時間経過したか否かが判別され(ステップST12)、所定時間以内の場合には、上記した読み取られた発行情報と記憶部26に記憶されている発行情報とが一致することにより、投入された切符又はカードと共に回収紙幣が返却される(ステップST13)。
【0030】
また、切符またはカードが投入が、取忘紙幣の回収後、所定時間を経過したと判断された場合には、回収された紙幣の金額を入力する入力画面を出し、テンキーにて金額を入力させる(ステップST14)。ついで、この入力された金額と回収された紙幣の金額とが合致するか否かが判別され(ステップST15)、合致する場合には、投入された切符又はカードと共に回収紙幣が返却される(ステップST13)。合致しない場合には、即「発売中止」とし、警報を出して係員を呼び出す(ステップST16)。
【0031】
上記したように、この実施の形態によれば、切符、或いはカード等の発行時にその発行情報を記憶部26に記憶し、釣り銭が取り忘れられて回収された場合には、取り去られた切符、或いはカードを投入させてその発行情報を読み取り、この情報が前記記憶部に記憶された記憶情報と一致する場合には、回収した釣り銭を自動的に返却するため、駅係員がその都度、自動券売機に出向いて対応する必要がなく、負担を軽減できるとともに、返却すべき利用者に確実に回収釣り銭を返却できる利点がある。
【0032】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態である自動券売機を正面側から示す斜視図。
【図2】図1の自動券売機を背面側から示す内部構成図。
【図3】図1の自動券売機の構成を示すブロック図。
【図4】図3の発券処理部、紙幣処理部及び制御部の構成を示すブロック図。
【図5】図1の自動券売機の券売動作を示すフローチャート。
【図6】図1の自動券売機の券売動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0034】
5…紙幣出入口(投入口)、8…発行口、21…発券部(発行手段)、22…読取部(読取手段)、24…払出部(払出手段)、25…回収部(回収手段)、26…記憶部(記憶手段)、27…返却部(返却手段)、29…判別部(判別手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入口から貨幣が投入されることにより媒体を発行し、この媒体を発行口から放出する発行手段と、
前記投入された貨幣の額と前記発行される媒体の購入額との間に差額があるとき、その差額に応じた貨幣を釣り銭として前記投入口に払い出す払出手段と、
この払出手段によって払い出された釣り銭が所定時間経過しても取り去られないのに基づいて前記釣り銭を内部に回収する回収手段と、
この回収手段によって回収される釣り銭の金額、及び、前記発行される媒体の発行情報を記憶する記憶手段と、
前記発行口から放出された媒体が一旦取り去られたのち前記発行口に投入されることにより、その発行情報を読み取る読取手段と、
この読取手段によって読み取られた発行情報と前記記憶手段によって記憶された発行情報とが一致するか否かを判別する判別手段と、
この判別手段によって発行情報が一致すると判別されるのに基づいて前記回収した釣り銭を自動的に前記投入口に返却する返却手段と、
を具備することを特徴とする媒体発行装置。
【請求項2】
前記貨幣は、紙幣或いは硬貨であることを特徴とする請求項1記載の媒体発行装置。
【請求項3】
前記媒体は、切符やカードなどの券であることを特徴とする請求項1記載の媒体発行装置。
【請求項4】
前記返却手段は、前記取忘貨幣の回収後、所定時間内に発行口に媒体が投入された場合には、回収貨幣を自動的に返却することを特徴とする請求項1記載の媒体発行装置。
【請求項5】
前記返却手段は、前記取忘貨幣の回収後、所定時間を超えて発行口に媒体が投入された場合には、取忘貨幣の金額を入力させ、この入力された金額が前記記憶手段によって記憶された金額と一致する場合には、回収貨幣を自動的に返却し、記憶された金額と一致しない場合には、返却を中止することを特徴とする請求項1記載の媒体発行装置。
【請求項6】
前記入力された金額が前記記憶手段によって記憶された金額と一致しない場合には、接客画面で表示、または音声で警報することを特徴とする請求項5記載の媒体発行装置。
【請求項7】
投入口から貨幣が投入されることにより媒体を発行してこの媒体を発行口から放出し、
前記投入された貨幣の額と前記発行される媒体の購入額との間に差額があるとき、その差額に応じた貨幣を釣り銭として前記投入口に払い出し、
前記払い出された釣り銭が所定時間経過しても取り去られないのに基づいて前記釣り銭を内部に回収し、
この回収される釣り銭の金額、及び、前記発行される媒体の発行情報を記憶し、
前記発行口から放出された媒体が取り去られたのち前記発行口に投入されることにより、その発行情報を読み取り、
この読み取られた発行情報と前記記憶された発行情報とが一致するか否かを判別し、
前記発行情報が一致すると判別されるのに基づいて前記回収した釣り銭を自動的に前記投入口に返却することを特徴とする媒体発行方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−72888(P2007−72888A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260962(P2005−260962)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】