説明

媒体送り装置の制御方法、媒体送り装置および印刷システム

【課題】可動子が記録媒体の正送りによってのみ移動する検出部にあって、逆送りを行っても正常な検出が可能となる媒体送り装置の制御方法等を提供する。
【解決手段】送り経路13に沿って記録媒体4を正送りおよび逆送り可能に構成された媒体送り部14(21)と、送り経路13に臨む可動子81、および可動子81の移動によりON−OFFして記録媒体4の有無を検出する検出部本体82を有し、可動子81が記録媒体4の正送りによってのみ移動する検出部33と、を備えた媒体送り装置2の制御方法であって、媒体送り部14により逆送りを実施するときに、目標停止位置を越えて逆送りを実施した後、目標停止位置まで正送りを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送り経路に沿って記録媒体を正送りおよび逆送り可能な媒体送り装置の制御方法、媒体送り装置および印刷システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の媒体送り装置として、プリンター装置に搭載され、スプロケット穴付き印刷用紙(記録媒体)を送る用紙送り機構が知られている(特許文献1参照)。この用紙送り機構は、トラクター機構部と、印刷ヘッドに対峙するプラテンと、排紙ローラーとを有し、トラクター機構部にセットされた印刷用紙を、プラテンに送り、ここで印刷ヘッドを駆動(印刷)しながら更に排紙ローラーにより装置外部に送り出すようにしている。トラクター機構部の位置には、第1の用紙センサーが設けられ、また印刷ヘッドの位置には第2の用紙センサーが設けられており、電源が投入されると、印刷用紙の先端を所定の位置に合わせる頭出しを行うべく印刷用紙は第2の用紙センサーが先端検出する位置まで逆送りされ、その後、正送りされる。そして、正送りされた印刷用紙が第1の用紙センサーにより先端検出されたところで、印刷ヘッドが駆動し印刷が開始されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−244296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トラクター機構部に併設される用紙センサー等では、トラクター機構部に印刷用紙(記録媒体)の浮き上がりを防止するガイド板が設けられているため、ガイド板の用紙押圧力で押された印刷用紙により作動するよう機械的な可動子を有するセンサー(マイクロスイッチも含む)が用いられる。可動子は、正送りされる印刷用紙に摺接して、起立位置から横臥位置に回動してセンサー本体をONさせる。
上記従来の用紙送り機構における第2の用紙センサーに、この種の可動子を有するセンサーを用いると、印刷用紙の先端を機械的に精度良く検出することができる。しかし、頭出しを行うべく印刷用紙を逆送りすると、摺接の際の摩擦で可動子が横臥位置から起立位置に回動してしまい、印刷用紙の先端検出において誤検出になる虞があった。
【0005】
本発明は、可動子が記録媒体の正送りによってのみ移動する検出部にあって、逆送りを行っても正常な検出が可能となる媒体送り装置の制御方法、媒体送り装置および印刷システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の媒体送り装置の制御方法は、送り経路に沿って記録媒体を正送りおよび逆送り可能に構成された媒体送り部と、送り経路に進退可能に移動する可動子、および可動子の位置を検出する検出部本体を有し、送り経路に記録媒体が無い状態から記録媒体の正送りによって、可動子が移動するように構成された検出機構と、を備えた媒体送り装置の制御方法であって、媒体送り部により、目標停止位置を越えて逆送りを実施した後、目標停止位置まで正送りを実施する際、逆送りを実施するときに、検出部本体を検出マスク状態にすることを特徴とする。
この場合、目標停止位置を越えて逆送りを実施するときに、検出部本体を検出マスク状態にすることが、好ましい。
【0007】
この場合、目標停止位置が、検出部により記録媒体の先端検出される位置であることが好ましい。
【0008】
これらの構成によれば、媒体送り部により逆送りを実施するときに、目標停止位置を越えて逆送りを実施した後、目標停止位置まで正送りを実施するようにしているため、可動子が記録媒体の正送りによって移動するものであっても、目標停止位置において、可動子を確実に移動させることができる。すなわち、可動子が記録媒体の正送りによって移動する検出部にあって、逆送りを行っても正常な検出が可能となる。また、目標停止位置を、検出部により先端検出される位置とすることで、記録媒体の頭出しを精度良く行うことができる。
この構成によれば、逆送りにおける可動子の移動は、検出部本体にとってノイズとなるが、逆送りの際に検出部本体を検出マスク状態にするようにしているため、ノイズを除去することができる。したがって、記録媒体を確実に検出することができる。
なお、検出部本体は、光センサーやマイクロスイッチであることが好ましい。
【0009】
これらの場合、媒体送り部は、スプロケット孔付の記録媒体を送るトラクター機構を有し、検出部は、トラクター機構に組み込まれていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、トラクター機構への記録媒体のセット位置が区々であっても、記録媒体のセット、すなわち記録媒体の有無を確実に検出することができる。また、記録媒体の正送りおよび逆送りを精度良く行うことができる。
【0011】
この場合、目標停止位置を越えて逆送りを実施するときに、検出部本体を検出マスク状態にすることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、逆送りにおける可動子の移動は、検出部本体にとってノイズとなるが、逆送りの際に検出部本体を検出マスク状態にするようにしているため、ノイズを除去することができる。したがって、記録媒体を確実に検出することができる。
【0013】
また、可動子は、支軸を中心に一方は送り経路に突出する部材本体、他方は前記検出部本体の検出光を遮蔽する遮光片部から成ると共に、部材本体が送り経路に突出した起立位置から部材本体が送り経路から退避した横臥位置に傾動する傾動体と、傾動体を起立位置に向かって付勢するばねと、を有し、検出部本体は、光検出器であることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、誤検出を生ずることなく、記録媒体を簡単な構造で且つ確実に検出することができる。
【0015】
本発明の媒体送り装置は、送り経路に沿って記録媒体を正送りおよび逆送り可能に構成された媒体送り部と、送り経路に進退可能に移動する可動子、および可動子の位置を検出する検出部本体を有し、送り経路に記録媒体が無い状態から記録媒体の正送りによって、前記可動子が移動するように構成された検出機構と、媒体送り部を制御し、媒体送り部により逆送りを実施するときに、目標停止位置を越えて逆送りを実施した後、目標停止位置まで正送りを実施する制御部と、を備え、制御部は、逆送りを実施するときに、検出部本体を検出マスク状態にすることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、媒体送り部により逆送りを実施するときに、目標停止位置を越えて逆送りを実施した後、目標停止位置まで正送りを実施するようにしているため、可動子が記録媒体の正送りによってのみ移動するものであっても、目標停止位置において、可動子を確実に移動させることができる。すなわち、可動子が記録媒体の正送りによってのみ移動する検出部にあって、逆送りを行っても正常な検出が可能となる。
この構成によれば、逆送りにおける可動子の移動は、検出部本体にとってノイズとなるが、逆送りの際に検出部本体を検出マスク状態にするようにしているため、ノイズを除去することができる。したがって、記録媒体を確実に検出することができる。
【0017】
本発明の印刷システムは、上記した媒体送り機構と、媒体送り部の正送りに同期して、記録媒体に印刷を行う印刷部と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、記録媒体を確実に検出することができるため、印刷品質や装置の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷システムの説明図である。
【図2】実施形態に係る媒体検出センサー廻りの断面図である。
【図3】記録媒体の逆送り動作におけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係る印刷システムについて説明する。
図1は、印刷装置を主体とする印刷システムの説明図であり、同図に示すように、印刷システム1は、インクジェットプリンタで構成された印刷装置2と、インターフェースを介して印刷装置2に接続されたホストコンピューター3と、を備えている。印刷装置2は、スプロケット孔付き記録媒体(以下、「記録媒体」という。)4を印刷対象物とし、ホストコンピューター3から受信した印刷ジョブに基づいて印刷を実施すると共に、制御コマンドに基づいて所望の媒体送り動作(紙送り動作)を実施する。なお、実施形態の印刷装置2は、記録媒体4として、ミシン目付きの連続紙のみならず、単票紙(いずれもスプロケット孔付き)も導入可能に構成されている。
【0021】
図1に示すように、印刷装置2は、給紙口11から排紙口12に向かって略水平に延在する送り経路13を備えると共に、この送り経路13に沿って、給紙口11側から順に、媒体送り部14、印刷部15および排紙部16を備えている。また、印刷装置2は、これら媒体送り部14、印刷部15および排紙部16等を制御すると共にホストコンピューター3とリンク(接続)するコントローラー17を備え、コントローラー17は、CPU18の他、ROMおよびRAM等の記憶部19を有している。
【0022】
媒体送り部14は、スプロケット孔に係合して記録媒体4を送るトラクター機構21と、トラクター機構21と協働して記録媒体4を送るニップローラー機構22と、トラクター機構21およびニップローラー機構22を同時に駆動する単一のフィードモーター23と、フィードモーター23の動力をトラクター機構21およびニップローラー機構22に伝達するベルト伝動機構24と、を有している。また、ニップローラー機構22は、駆動ローラー27と従動ローラー28から成るニップローラー26を有すると共に、ニップローラー26による記録媒体4の送り量(送りステップ数)を検出するエンコーダー29を有している。
【0023】
トラクター機構21は、給紙口11の下流側近傍に配設され、ニップローラー機構22は、印刷部15の上流側近傍に配設されていて、トラクター機構21とニップローラー機構22とは、記録媒体4の送り方向に離間して配設されている。このため、記録媒体4は、トラクター機構21からニップローラー機構22に受け渡すようにして送られる。この場合、トラクター機構21の媒体送り速度に比して、ニップローラー機構22の媒体送り速度が僅かに速くなるように設計されており、記録媒体4を張った状態で送るようになっている。また、トラクター機構21とニップローラー機構22との間には、記録媒体4の送りを送り経路13に沿ってガイドする媒体ガイド31が配設され、更に媒体ガイド31の下流側に位置して、記録媒体4の先端或いは尾端を検出する媒体端検出センサー32が配設されている。さらに、トラクター機構21には、記録媒体4の有無(セット状態)を検出する媒体検出センサー33が組み込まれている。
【0024】
印刷部15は、キャリッジ41に下向きに搭載したインクジェットヘッド42と、キャリッジ41を介してインクジェットヘッド42を、記録媒体4の送り方向と直交する方向(記録媒体4の幅方向)に往復動させるキャリッジ移動機構43と、インクジェットヘッド42の直下に位置し、インクジェットヘッド42のノズル面42aに所定のギャップを存して平行に対峙する媒体支持板(プラテン)44と、を備えている。キャリッジ41には、インクジェットヘッド42の上側に位置してインクカートリッジ(図示省略)が搭載されており、インクカートリッジからインクジェットヘッド42にインクが供給される。インクジェットヘッド42のノズル面42aには、複数の吐出ノズル45aを媒体送り方向に列設したノズル列45(実際には、色別複数のノズル列)が設けられると共に、ノズル列45から上流側の外れた位置に、主として記録媒体4の幅を検出する幅検出センサー46が設けられている。
【0025】
キャリッジ移動機構43は、記録媒体4の幅方向に延在し、キャリッジ41をスライド自在に支持する2本のガイドロッド51,51と、一部をキャリッジ41に固定したタイミングベルト52と、タイミングベルト52を正逆両方向に走行させるキャリッジモーター53と、を有している。キャリッジモーター53が正逆回転すると、タイミングベルト52を介して、2本のガイドロッド51,5に案内されたキャリッジ41が記録媒体4の幅方向に往復動する。この往復動の往動および/または復動に同期して、インクジェットヘッド42を吐出駆動することにより、記録媒体4に印刷が行われる(いわゆる主走査)。
【0026】
排紙部16は、記録媒体4を挟持しスリップしながら回転送りする、駆動側の排紙駆動ローラー62および従動側のスターホイール63から成る排紙ローラー61と、排紙駆動ローラー62を回転させる排紙モーター64と、を備えている。下側に位置する排紙駆動ローラー62は、記録媒体4の裏面に転接し記録媒体4に送り力を付与する一方、上側に位置するスターホイール63は、排紙駆動ローラー62側に付勢された状態で、自由回転しながら記録媒体4の記録面(表面)に転接する。この場合、排紙駆動ローラー62の媒体送り速度に比して、ニップローラー機構22の媒体送り速度が僅かに遅くなるように設計されており、記録媒体4は、排紙駆動ローラー62のスリップ回転により、張りを与えられた状態で上記の媒体支持板44に添うようにして送られ、更に排紙口12から装置外部に送り出される(排紙)。
【0027】
ここで、ホストコンピューター3の印刷ジョブおよび制御コマンドに基づいて、コントローラー17により実施される印刷装置2の基本制御動作について説明する。
先ず、ユーザーがトラクター機構21に記録媒体4をセットした後、機構系の初期化が実施される。この初期化は、媒体送り部14等を覆っている印刷装置2の蓋体(図示省略)を閉塞すること、或いは蓋体を閉塞した後の釦操作で開始される。初期化が開始されると、媒体検出センサー33による記録媒体4の「有」検出を前提として、フィードモーター23を介してトラクター機構21およびニップローラー機構22が駆動を開始する。これにより、トラクター機構21にセットされた記録媒体4は、送り経路13に沿って、媒体ガイド31、ニップローラー機構22、更に印刷部15に送られる。より具体的には、トラクター機構21から送り出されてゆく記録媒体4は、その先端を媒体端検出センサー32により検出され、ステップモーターであるフィードモーター23によりこの先端検出から所定送りステップ数送ったところで停止する。これにより、記録媒体4はその先端が、インクジェットヘッド42のノズル列45における下流側最外端に位置する、いわゆる1番ノズル(1番目の吐出ノズル45a)の位置、すなわち初期化位置48に停止する。
【0028】
続いて、キャリッジ41が記録媒体4を横断するように1往復し、キャリッジ41に設けられた幅検出センサー46が、記録媒体4の幅を検出する。この検出結果は、ホストコンピューター3における記録媒体4の設定結果と照合される(合わないときには、設定変更或いは記録媒体4の交換が促される)。一方、キャリッジ41は、元の位置に戻ったところで図外のセンサーにより位置検出される。これにより、インクジェットヘッド(キャリッジ41)42のホーム位置が確定する。このようにして、機構系の初期化が行われる。
【0029】
続いて、印刷指令が発令(印刷ジョブ)されると、予め上余白が設定されている場合には、上余白部の記録媒体4の送りが実施された後、印刷動作に移行する。印刷動作では、停止状態の記録媒体4に対し、インクジェットヘッド(キャリッジ41)42が往動しながら、印刷データーに基づいてインク吐出(印刷:主走査)を実施する。この印刷幅は、インクジェットヘッド42のノズル列45の長さ分となっており、続くインクジェットヘッド42の復動に先立って、トラクター機構21およびニップローラー機構22に加え排紙ローラー61が駆動して、記録媒体4をノズル列45の長さ分(厳密には、ノズル列長+1ノズルピッチ)送る(改行送り:副走査)。このノズル列45分の改行送り(間欠送り)が完了したら、インクジェットヘッド42が復動に移行し、往動時と同様に印刷(インク吐出)を実施する。
【0030】
このようにして、インクジェットヘッド42の往復動に伴うインク吐出(主走査)と、記録媒体4の間欠送り(改行送り:副走査)とが繰り返されることにより、記録媒体4に印刷データーに基づく所望の印刷が行われる。一方、記録媒体4の印刷済み部分は、排紙ローラー61によりスリップ送りされながら、排紙口12から装置外部に送り出されてゆく。
ここで、記録媒体4が単票紙である場合には、記録媒体4の尾端が排紙ローラー61を越えたところで(例えば媒体端検出センサー32の尾端検出から所定の送りストップ数送る)、排紙ローラー61等の駆動を停止し、印刷動作を終了する。
【0031】
一方、記録媒体4が連続紙である場合には、最終の主走査が終了し(実印刷終了)、ミシン目単位で印刷済み部分が排紙口12の外に送り出されたところで、排紙ローラー61等の駆動を停止する。ここで、ユーザーは、ミシン目を利用して記録媒体4の印刷済み部分を切り離し、釦操作等により記録媒体4の逆送りを指令する。逆送りが指令されると、トラクター機構21、ニップローラー機構22および排紙ローラー61が逆転し、記録媒体4はその先端がトラクター機構21に位置、すなわち媒体検出センサー33により先端検出されるところまで引き戻される(頭出し)。そして、連続紙の場合には、ここで印刷動作が終了する。以降、ユーザーは、上記と同じ動作を指令し、或いは記録媒体4を交換(用紙交換)した後、上記と同じ動作を指令することになる。
【0032】
次に、図1および図2を参照して、トラクター機構21(媒体送り部)およびこれに設けた媒体検出センサー33(検出部)の構造について詳細に説明すると共に、図1および3を参照して、これら機構等による記録媒体4の上記引戻し動作(逆送り動作)の制御方法について説明する。
【0033】
図1および図2に示すように、トラクター機構21は、左右一対の機構部(一方のみ図示)71と、一対の機構部71間に渡した駆動軸72および従動軸73と、を備えている。各機構部71は、断面矩形の駆動軸72に嵌合した駆動プーリー75と、従動軸73に設けた従動プーリー76と、駆動プーリー75および従動プーリー76間に架け渡したスプロケットベルト77と、を有している。スプロケットベルト77の外周面には、記録媒体4のスプロケット孔に対応する(同じ配置ピッチ)複数の突起77aが設けられており、スプロケットベルト77は、その上側に位置する外周面が上記の送り経路13に合致するように配設されている。また、各機構部71には、スプロケットベルト77にセットした記録媒体4の送りをガイドすると共に、記録媒体4の浮き上がりを押える押えプレート78が起倒自在に設けられている。押えプレート78は、左右の外端部を中心に起倒自在に構成され、走行するスプロケットベルト77の複数の突起77aを逃げる開口部(図示省略)を有している。
【0034】
スプロケットベルト77の突起77aに、記録媒体4の先端部分に位置するスプロケット孔を嵌合し、この状態で押えプレート78を引き倒すことにより、記録媒体4がセットされる。記録媒体4がセットされると、媒体検出センサー33がONし(記録媒体4の「有」検出)、トラクター機構(フィードモーター23)21の駆動が可能となる。そして、フィードモーター23が駆動すると、スプロケットベルト77が走行し、その複数の突起77aにより記録媒体4が送られる。なお、記録媒体4の正逆送りは、主として媒体端検出センサー32、媒体検出センサー33およびニップローラー機構22に設けたエンコーダー29の検出結果に基づいて、制御されるようになっている。
【0035】
図2に示すように、媒体検出センサー33は、上記一対の機構部71間に配設されており、記録媒体4により機械的に作動する可動子81と、フォトインタラプタ(透過型光センサー)で構成されたセンサー本体82(検出部本体)と、を備えている。可動子81は、送り経路13に突出した突出部84aを有する部材本体84と、部材本体84から下方に延在しセンサー本体82の検出光を通過または遮断させてON−OFFする遮光片部85と、で一体に形成された傾動体83を有している。また、可動子81は、傾動体83を一方向に付勢するばね86、を有している。傾動体83は、傾動体83の突出部84aが送り経路13に突出する起立位置と送り経路13から退避する横臥位置との間で、上記のトラクター機構21の従動軸73に回動自在に支持されている。送り経路13に突出する傾動体83の突出部84aは、山形に形成されており、傾動体83は、突出部84aの頂部から給紙口11側にオフセットした位置で、従動軸73に回動自在に支持されている。また、ばね86は、傾動体83を起立位置に向かって付勢している。突出部84aの搬送方向の両側の斜面において、紙送りの正方向の斜面は逆送り方向に斜面に比べ、斜面の長さが長く、緩い角度となっている。正方向へ紙送り時に、記録媒体4がより滑らかに突き当たり、その後滑らかに摺動できるようになっている。
【0036】
トラクター機構21上に記録媒体4が存在しないと、ばね86により傾動体(可動子81)83は起立位置に回動しており、従動軸73の反対側の遮光片部85がセンサー本体82から下流側に外れた位置に回動している(図2(a)参照)。これにより、センサー本体82は遮光片部85により検出光が通過して検出されることにより、記録媒体4の「無」を判定することができる。一方、トラクター機構21上に記録媒体4が存在すると、ばね86に抗して傾動体(可動子81)83は横臥位置に回動(傾動)し、遮光片部85がセンサー本体82に臨むように回動(傾動)する(図2(b)参照)。これにより、センサー本体82は遮光片部85により検出光が遮蔽されて検出されないことにより、記録媒体4の「有」を判定することができる。
【0037】
記録媒体4がトラクター機構21にセットされると、傾動体83には記録媒体4に押されて、従動軸73から下流側に傾動体83がオフセットした方向に力が加わり、傾動体83は横臥位置に傾動する(図2(a)から図2(b)のように時計回りに回動する)。また、セットされた記録媒体4がトラクター機構21により送られてゆく状態(正送り)でも、傾動体83には、従動軸73から下流側にオフセットした方向に力が加わり、傾動体83は傾動する。一方、記録媒体4がトラクター機構21により逆送りされてゆくと、傾動体83には、従動軸73の方向に力が加わる。このため、記録媒体4と傾動体(突出部84a)83との間の摩擦力や突出部84aの斜面との引っ掛かりが小さいと、傾動体83は記録媒体4と滑らかに摺動するので横臥姿勢(横臥位置)を維持し、摩擦力や引っ掛かりが大きいと記録媒体4に逆送りに伴って起立姿勢(起立位置)に回動した後、さらに突出部84aが送り経路13から退避する位置に至るまで、逆方向に回動する。この場合、遮光片部85がセンサー本体82から外れた位置に回動するので、検出光が通過して検出され、記録媒体4が「無」と判定されてしまう。すなわち、トラクター機構21により記録媒体4を逆送りすると、媒体検出センサー33の作動が不安定となり、誤検出となる虞が生ずる。そこで、本実施形態では、記録媒体4の引戻し動作(逆送り動作)の際に、以下のような制御を行うようにしている。
【0038】
図3のフローチャートに示すように、記録媒体4の逆送りが指令される(S−1)と、先ず媒体検出センサー33により記録媒体4の有無が検出される(S−2およびS−3)。言い換えれば、記録媒体4が連続紙か否か(正確には、逆送りが可能か否か)が確認される。ここで、記録媒体4の「無」が検出されると、セットされた記録媒体4が単票紙である(逆送り不能)と判定し、この動作フローを終了する。一方、記録媒体4の「有」が検出されると、トラクター機構21、ニップローラー機構22および排紙ローラー61が逆転駆動し、記録媒体4の逆送りが開始される(S−4)。
【0039】
この逆送りでは、媒体検出センサー33による記録媒体4の先端検出位置を目標停止位置とし、先端がこの目標停止位置を上流側に数ステップ越える位置まで、記録媒体4を送るようにしている。例えば、記録媒体4の先端部がトラクター機構21から離脱せず且つ媒体検出センサー33を完全に越えた仮停止位置49まで逆送りする。具体的には、例えばこの仮停止位置49と媒体端検出センサー32との間の距離に相当する送りステップ数を予め取得しておき、逆送りを開始した記録媒体4の先端を、媒体端検出センサー32が先端検出した状態から、この送りステップ数逆送りして記録媒体4の逆送りを停止する。これにより、記録媒体4は、その先端が仮停止位置49となったところで停止する(S−5)。なお、上述のように、逆送りにおける媒体検出センサー33による検出は不安定であるため、逆送り中は、コントローラー17は、媒体検出センサー33を検出しようとしても検出できない検出マスク状態(検出禁止状態)としておくことが好ましい。
【0040】
記録媒体4が仮停止位置49に停止したら、今度はトラクター機構21およびニップローラー機構22が正転駆動し、記録媒体4の正送り(順送り)を開始する(S−6)。記録媒体4の正送りが開始されると、上記の検出マスク状態が解除され、媒体検出センサー33により記録媒体4の有無が検出される(S−7およびS−8)。ここで、記録媒体4の「無」が検出されると、記録媒体4の給紙エラーと判定し(S−9)、この動作フローを終了する。一方、記録媒体4の先端が媒体検出センサー33の可動子81を傾動させ、記録媒体4の「有」が検出されると、記録媒体4の正送りを停止し(S−10)、動作フローを終了する。これにより、記録媒体4の引戻し動作(頭出し)が終了する。
【0041】
以上のように、本実施形態では、記録媒体4の引戻し動作において、目標停止位置(媒体検出センサー33による先端検出位置)を越えて逆送りを実施した後、目標停止位置まで正送りを実施して、媒体検出センサー33による記録媒体4の先端検出を実施するようにしているため、可動子81が記録媒体4の正送りによってのみ安定に作動するものであっても、目標停止位置において、可動子81を確実に作動させることができる。したがって、記録媒体4のトラクター機構21への引戻し動作、すなわち記録媒体4の頭出し動作を確実に行うことができる。
【0042】
なお、媒体端検出センサー32が、可動子81を有する媒体検出センサー33と同様の構造となっている場合には、媒体端検出センサー32による記録媒体4の先端検出位置を目標停止位置とし、上記の引戻し動作を実施することも可能である。すなわち、本発明は、媒体送り部と検出部とが離間している場合や、検出部の位置と目標停止位置とが異なる場合にも、適用可能である。また、媒体送り部がローラー機構であっても、本発明は適用可能である。さらに、実施形態の印刷システム1を、一体の装置で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 印刷システム、2 印刷装置、3 ホストコンピューター、4 記録媒体、13 送り経路、14 媒体送り部、15 印刷部、17 コントローラー、21 トラクター機構、22 ニップローラー機構、29 エンコーダー、32 媒体端検出センサー、33 媒体検出センサー、48 初期化位置、49 仮停止位置、61 排紙ローラー、71 機構部、72 駆動軸、73 従動軸、77 スプロケットベルト、81 可動子、82 センサー本体、83 傾動体、84 部材本体、84a 突出部、85 遮光片部、86 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送り経路に沿って記録媒体を正送りおよび逆送り可能に構成された媒体送り部と、
前記送り経路に進退可能に移動する可動子、および前記可動子の位置を検出する検出部本体を有し、前記送り経路に前記記録媒体が無い状態から前記記録媒体の前記正送りによって、前記可動子が移動するように構成された検出機構と、を備えた媒体送り装置の制御方法であって、
前記媒体送り部により、目標停止位置を越えて前記逆送りを実施した後、前記目標停止位置まで前記正送りを実施する際、前記逆送りを実施するときに、前記検出部本体を検出マスク状態にすることを特徴とする媒体送り装置の制御方法。
【請求項2】
前記目標停止位置が、前記検出部で前記記録媒体の先端検出される位置であることを特徴とする請求項1に記載の媒体送り装置の制御方法。
【請求項3】
前記媒体送り部は、スプロケット孔付の前記記録媒体を送るトラクター機構を有し、
前記検出部は、前記トラクター機構に組み込まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の媒体送り装置の制御方法。
【請求項4】
前記可動子は、支軸を中心に一方は前記送り経路に突出する部材本体、他方は前記検出部本体の検出光を遮蔽する遮光片部から成ると共に、前記部材本体が前記送り経路に突出した起立位置から前記部材本体が前記送り経路から退避した横臥位置に傾動する傾動体と、前記傾動体を起立位置に向かって付勢するばねと、を有し、
前記検出部本体は、光検出器であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の媒体送り装置の制御方法。
【請求項5】
送り経路に沿って記録媒体を正送りおよび逆送り可能に構成された媒体送り部と、
前記送り経路に進退可能に移動する可動子、および前記可動子の位置を検出する検出部本体を有し、前記送り経路に前記記録媒体が無い状態から前記記録媒体の前記正送りによって、前記可動子が移動するように構成された検出機構と、
前記媒体送り部を制御し、前記媒体送り部により前記逆送りを実施するときに、目標停止位置を越えて前記逆送りを実施した後、前記目標停止位置まで前記正送りを実施する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記逆送りを実施するときに、前記検出部本体を検出マスク状態にすることを特徴とする媒体送り装置。
【請求項6】
請求項5に記載の媒体送り機構と、
前記媒体送り部の前記正送りに同期して、前記記録媒体に印刷を行う印刷部と、を備えたことを特徴とする印刷システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−39709(P2013−39709A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177418(P2011−177418)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】