説明

子供用椅子及び二輪車

【課題】子供の成長や身長の異なる子供の体格に合わせて肩部や頭部を保護する子供用椅子及び二輪車を提供する。
【解決手段】二輪車2の荷台6には、子供用椅子10の椅子本体12が固定支持されている。椅子本体12の上部には、肩部を保護するショルダーガード部14と頭部を保護するヘッドカード部16とを一体に構成したガード本体18が設けられている。ガード本体18は、椅子本体12のレール部12Aに沿って摺動する摺動部14Aを備えており、ガード本体18が椅子本体12に対して上下方向にスライドする。レール部12には、ガード本体18を所定の位置で固定する高さ調整装置30が設けられており、調整ノブ36の回転操作によりガード本体18を固定又はスライドさせる。これにより、子供の成長や体格に合わせてショルダーガード部14やヘッドカード部16の高さを調整することができ、肩部や胴部が適切に保護される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車に取り付けられ、子供が着座可能な子供用椅子、及びこの子供用椅子を備えた二輪車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、サドルの前方又は後方に子供が着座可能な子供用椅子を備えた二輪車が提案されている。
【0003】
この子供用椅子では、背凭れ部の上部に、子供の頭部を保護するヘッドレストが設けられている。このヘッドレストは、子供の成長や異なる身長の子供の体格に合わせて上下方向に移動させ、クランプ部材を介してネジとナットで締結することで、ヘッドレストの高さが調整可能となっている(特許文献1を参照)。
【0004】
しかし、子供の頭部の位置に合わせてヘッドレストの高さを調整しても、肩部など他の身体の部位を保護することができない。特に、肩部は頭部より両側に突出しているため、転倒時にヘッドレストで頭部の後方を保護できても、頭部の側方や肩部を保護することができない。
【0005】
一方、子供の背中が当たるスライド背当をバケットに対して上方に引き上げて固定可能としたベビーバケットが提案されている(特許文献2を参照)。
【0006】
また、子供の背中が当たる上部支持枠を下部支持枠に対して上下動自在に取付け、子供の成長に合わせて上部支持枠を上方に動かし、上部支持枠を下部支持枠に締め付けボルトで固定した子供椅子が提案されている(特許文献3を参照)。
【0007】
このような特許文献2、3に記載の構成では、スライド背当又は上部支持枠を上方に動かして固定することで、子供の背面や腰部付近を保護することができるが、子供の肩部や頭部を保護することができない。特に、転倒時に子供の上半身が動いてしまうため、怪我の原因となり、十分な安全性を確保することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3058842号公報
【特許文献2】実開昭52−79661号公報
【特許文献3】特開平9−136682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、子供の成長や異なる身長の子供に合わせて肩部や頭部を保護することができ、安全性を確保できる子供用椅子及び二輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、二輪車に取り付けられる子供用椅子であって、着座可能な椅子本体と、前記椅子本体に設けられたレール部に沿って上下方向にスライド可能に設けられ、両サイドが前方に湾曲しながら突出する翼部で肩部を保護するショルダーガード部と、前記ショルダーガード部の上方で頭部を保護するヘッドガード部とを備えたガード本体と、前記ガード本体を上下方向にスライドさせて前記レール部の所定の位置で固定する高さ調整機構と、を有すると共に、前記高さ調整機構は、前記ガード本体が前記レール部に沿ってスライドする摺動部と、前記ガード本体に設けられ、前記摺動部の前記椅子本体と反対側に上下方向に複数形成された係合凹部と、前記ガード本体の前方側に設けられ、前記係合凹部に係合される係合凸部が形成された押し当て部材と、前記椅子本体の背面側に設けられ、前記押し当て部材と連結される回転軸を有する調整ノブと、を備え、前記調整ノブの回転操作により前記回転軸を固定方向に回転したとき、前記調整ノブと前記押し当て部材との距離が縮まり、前記係合凸部が前記係合凹部に係合されると共に、前記調整ノブと前記押し当て部材との間で前記椅子本体と前記ガード本体とが挟持され、また、前記回転軸を開放方向に回転したとき、前記調整ノブと前記押し当て部材との距離が広がり、前記係合凸部と前記係合凹部との係合が外れ、前記椅子本体に対して前記ガード本体をスライド可能とすることを特徴としている。
【0011】
請求項1に記載の発明では、二輪車に椅子本体が取り付けられており、両サイドが前方に湾曲しながら突出する翼部で肩部を保護するショルダーガード部とその上方で頭部を保護するヘッドガード部とを備えたガード本体が、椅子本体のレール部に沿って上下方向にスライド可能に構成されている。ガード本体を上下方向にスライドさせ、高さ調整機構によってガード本体をレール部の所定の位置で固定することで、子供の成長や身長に合わせて、ショルダーガード部とヘッドガード部を適切な高さに調整することが可能となる。これにより、子供の体格に合わせて肩部や頭部を保護することができ、走行時や転倒時に子供の上半身が動きにくく、安全性を確保することが可能となる。
【0012】
また、ガード本体に摺動部が設けられており、椅子本体のレール部に沿って摺動部がスライドすることにより、ガード本体が椅子本体に対して上下方向にスライドする。ガード本体には、摺動部の椅子本体と反対側に上下方向に複数の係合凹部が形成されており、ガード本体の前方側に設けられた押し当て部材の係合凸部が係合可能となっている。椅子本体の背面側には、調整ノブが設けられており、調整ノブは押し当て部材と連結される回転軸を備えている。そして、調整ノブの回転操作によって回転軸を固定方向に回転したときに、調整ノブと押し当て部材との間で椅子本体とガード本体とが挟持され、係合凸部が係合凹部に係合することで、ガード本体が固定される。これにより、任意の係合凹部に係合凸部を係合することで、ガード本体が任意の位置で椅子本体に固定され、ガード本体の高さを調整することが可能となる。また、調整ノブの回転操作によって回転軸を開放方向に回転したとき、調整ノブと押し当て部材との距離が広がり、係合凸部と係合凹部との係合が外れるので、簡単な操作によってガード本体の高さを調整することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明に係る二輪車は、請求項1に記載の子供用椅子がサドルの後方に取り付けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の子供用椅子がサドルの後方に取り付けられており、子供が椅子本体に着座したとき、頭部と肩部がヘッドカード部とショルダーガード部によって保護される。これにより、ライダーの後方で子供が見えない状態でも、走行時や転倒時に頭部と肩部の安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、子供の成長や異なる身長の子供の体格に合わせてガード本体を上下方向にスライドさせて固定することで、最適な位置で肩部や頭部を保護することができ、走行時や転倒時の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態である子供用椅子をサドルの後方に取り付けた二輪車の後方部を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態である子供用椅子の斜視図であって、高さ調整装置を分解した斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態である子供用椅子の正面図である。
【図4】図3に示す子供用椅子のH−H線における断面図である。
【図5】本発明の一実施形態である子供用椅子のガード本体を上下方向にスライドさせた状態を示す正面図である。
【図6】本発明の一実施形態である子供用椅子のガード本体を上下方向にスライドさせた状態を示す側面図である。
【図7】図2に示す高さ調整装置の押し当て部材を示す構成図であって、(A)は背面側の斜視図、(B)は側面図、(C)は断面図、及び(D)は前方側の斜視図である。
【図8】図5に示す子供用椅子のG−G線における断面図である。
【図9】図2に示す高さ調整装置の押し当て部材に係合回転体を取り付けた状態を示す斜視図であって、(A)は突起部をロック部に回動した状態、(B)は突起部をロック解除部に回動した状態を示す図である。
【図10】子供用椅子のショルダーガード部とヘッドガード部にクッションを装着した状態を示す斜視図である。
【図11】子供用椅子のショルダーガード部とヘッドガード部にクッションを装着した状態を示す断面図である。
【図12】調整ノブを固定方向に回転したとき、剛性凸部と弾性凸部が係合凹部に係合し、ガード本体が椅子本体に固定された状態を示す一部拡大断面図である。
【図13】調整ノブを開放方向に回転したとき、剛性凸部と係合凹部との係合が外れると共に弾性凸部が係合凹部を押圧し、ガード本体が椅子本体に対してスライド可能となった状態を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の子供用椅子及び二輪車における実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1には、本発明の一実施形態である子供用椅子10が取り付けられた二輪車2の後方部が示されている。二輪車2のサドル4の後方に荷台6が設けられ、この荷台6上に子供用椅子10の椅子本体12が図示しない取り付け金具によって固定支持されている。
【0019】
図2及び図3に示すように、子供用椅子10は、腰部及び尻部の後方部と両サイドを囲むように湾曲して形成された椅子本体12を備えており、子供が着座可能となっている。椅子本体12の前面側の上方部には、肩部を保護するショルダーガード部14と、このショルダーガード部14の上方で頭部を保護するヘッドガード部16とが一体に形成されたガード本体18が、椅子本体12と一部が重なり合うように配設されている。また、椅子本体12の前方には、子供の前方側をガードするように掛け渡されたハンドルバー20が設けられ、ハンドルバー20は一端部を支点として他端部が開閉可能となっている。また、椅子本体12の下側には、足を載置可能な2つのステップ部22が設けられている。
【0020】
図4に示すように、椅子本体12の中央部には凹状のレール部12Aが上下方向に形成されており、ショルダーガード部14の背面側には、レール部12Aに挿入される凸状の摺動部14Aが形成されている。そして、レール部12Aに沿って摺動部14Aが移動することで、ガード本体18が椅子本体12に対して上下方向にスライド可能となっている。
【0021】
ショルダーガード部14は、子供の背面に沿って両サイドが前方に湾曲しながら突出する翼部14Bを備えており、この翼部14Bの背面側を覆うように椅子本体12の両サイドが延設されて側面部13が設けられている。図2及び図6に示すように、翼部14Bと対向する椅子本体12の側面部13の両端部には、ガード本体18のスライド方向に長円形状のスライド孔12Bが形成されている(図2及び図6では手前側のみ図示)。このスライド孔12Bには、翼部14Bに突設されたガイドピン14Cが上下方向にスライド可能に係止されている。また、椅子本体12のレール部12Aの両側部には、ガード本体18のスライド方向に長円形状のスライド孔12Cが形成されている(図2及び図6では手前側のみ図示)。このスライド孔12Cには、摺動部14Aに設けられたガイドピン14Cが上下方向にスライド可能に係止されている。これにより、ガード本体18は、ガイドピン14Cによって中央部の2箇所と両サイドの2箇所の計4箇所でスライド孔12B、12Cに案内されながら、上下方向にスライドする。図5及び図6に示すように、ガード本体18は、ガイドピン14Cがスライド孔12B、12Cの上部に移動した最上部の位置と、ガイドピン14Cがスライド孔12B、12Cの下部に移動した最下部の位置との間をスライド可能となっている。
【0022】
また、図5及び図6に示すように、子供用椅子10には、ガード本体18を上下方向にスライドさせてレール部12Aの所定の位置で固定する高さ調整装置30が設けられている。図2に示すように、高さ調整装置30には、ガード本体18の摺動部14Aの椅子本体12と反対側に上下方向に複数形成された係合凹部32と、この係合凹部32と対向する位置(ガード本体18の前方側)に配設される押し当て部材34とが設けられている。また、椅子本体12の背面側には、回転軸36Aを備えた調整ノブ36が設けられている。回転軸36Aは椅子本体12の開孔12Dとガード本体18の長孔14Dと押し当て部材34の開孔34Aに挿通されており、回転軸36Aの先端には、径方向に突出した2つの突起部38Aを有する抜止め部材38がネジ止めされている(図9参照)。
【0023】
図7に示すように、押し当て部材34のガード本体18側には、回転軸36Aが挿通される開孔34Aの両側に、剛性凸部34Bが押し当て部材34に対し剛的に設けられている。また、剛性凸部34Bの両側には、U字状に形成された弾性変形可能な支持腕33の先端に弾性凸部34Cが設けられている。支持腕33はU字状に形成され、弾性凸部34Cとは逆側の端部で押し当て部材34と結合しているので、弾性凸部34Cは、U字状の支持腕33が弾性変形することでその位置を変えることができる。また、図7(C)に示すように、剛性凸部34Bは、弾性凸部34Cよりも突出量が小さく形成されている。図8に示すように、これらの剛性凸部34Bと弾性凸部34Cは、ガード本体18に形成された係合凹部32に係合可能となっている。
【0024】
図7(D)に示すように、押し当て部材34の前方側(ガード本体18と反対側)には、開孔34Aの円周方向に沿って2つの傾斜面35が形成され、2つの傾斜面35が突出部34Eで仕切られている。図9に示すように、傾斜面35に抜止め部材38の突起部38Aが当接しながら回動可能となっている。傾斜面35の一端側には、押し当て部材34の肉厚を大きくした厚肉部からなるロック部35Aが形成され、傾斜面35の他端側には、押し当て部材34の肉厚を小さくした薄肉部からなるロック解除部35Bが形成されている。そして、調整ノブ36の回転操作により、抜止め部材38の突起部38Aがロック部35Aとロック解除部35Bとの間を回動する。突出部34Eは、突起部38Aの移動を止めるストッパーとなっている。突出部34Eを設けることで、調整ノブ36の回転範囲における両端が、ロック部35Aとロック解除部35Bに限定されるので、調整ノブ36を確実に操作することができる。
【0025】
図8に示すように、係合凹部32は、略V字面とされ、上下方向の傾斜面32A、32Bが略V字面の谷部を結んだ面に対して異なる角度となっている。ここで、図8(B)に示すように、ガード本体18の略V字面の谷部を結んだ面に対して直交する方向の直線とV字面の上方側の傾斜面32Aとの角度をθ(A)、ガード本体18の略V字面の谷部を結んだ面に対して直交する方向の直線とV字面の下方側の傾斜面32Bとの角度をθ(B)とする。このとき、V字面の上方側の傾斜面32A、すなわちガード本体18を下降させる方向の傾斜面32Aと、V字面の下方側の傾斜面32B、すなわちガード本体18を上昇させる方向の傾斜面32Bは、傾斜面32Aの角度θ(A)が傾斜面32Bの角度θ(B)より小さくなるように形成される。
【0026】
図10に示すように、ショルダーガード部14の内側には、中央部に装着されるクッション44Aと、両サイドの翼部14Bに装着されるクッション44Bが設けられている。これらのクッション44A、44Bは、内部に発泡性ポリウレタンなどの弾性体が装填された衝撃吸収部材であり、ショルダーガード部14の内側面に図示しないマジックテープ(登録商標)によって着脱可能に装着される。また、ヘッドガード部16の内側には、中央部に装着されるクッション46Aと、両サイドに装着されるクッション46Bが設けられている。これらのクッション46A、46Bは、ヘッドガード部16の内側面に図示しないマジックテープ(登録商標)によって着脱可能に装着される。これによって、自転車2が転倒した際に、肩部や頭部の衝撃を吸収することができる。
【0027】
また、ヘッドガード部16の内側幅は、ショルダーガード部14の内側幅よりも小さく形成されており、子供の頭部と肩部の幅に合致しやすい形状となっている。これによって、ヘッドガード部16内で頭部が、ショルダーガード部14内で肩部が動きにくくなり、頭部や肩部を適切に保護することができる。
【0028】
その際、図1に示すように、子供が椅子本体12に着座したときに、頭部の頂部がヘッドガード部16にほぼ納まり、肩部の上部がショルダーガード部14の上端部よりも下方に納まるようにガード本体18の高さを調整することで、頭部や肩部を適切に保護することができる。
【0029】
図11に示すように、ヘッドガード部16の内側面はショルダーガード部14の内側面よりも後退しており、クッション44Aの表面がクッション46Aの表面よりも後退している。これによって、子供がヘルメットを着用した状態で子供用椅子10に着座しても、後頭部と肩部の背面の納まりがよく、後頭部がクッション46Aに押されて首が先方に傾くような不自然な姿勢になりにくい。このため、ヘッドガード部16とショルダーガード部14によって頭部と肩部を適切に保護することが可能となり、安全性を確保することができる。
【0030】
次に、上記のような構成の子供用椅子10の作用について説明する。
【0031】
図8に示すように、調整ノブ36の回転操作により回転軸36Aを固定方向に回転すると、図9(A)に示すように、抜止め部材38の突起部38Aが押し当て部材34の傾斜面35を摺動して厚肉部であるロック部35Aに移動する。この状態では、図12に示すように、調整ノブ36と押し当て部材34との距離が縮まり、剛性凸部34Bと弾性凸部34Cが係合凹部32に係合されると共に、調整ノブ36と押し当て部材34との間で椅子本体12とガード本体18とが挟持される。これにより、ガード本体18が椅子本体12に固定される。
【0032】
一方、ガード本体18の高さを調整する際には、調整ノブ36の回転操作により回転軸36Aを開放方向に回転する。すると、図9(B)に示すように、抜止め部材38の突起部38Aが押し当て部材34の傾斜面35を摺動して薄肉部であるロック解除部35Bに移動する。その際、厚肉部であるロック部35Aと薄肉部であるロック解除部35Bが傾斜面35でつながっているので、抜止め部材38の移動がスムーズになる。
【0033】
この状態では、図13に示すように、調整ノブ36と押し当て部材34との距離が広がり、剛性凸部34Bと係合凹部32との係合が完全に外れると共に、弾性凸部34Cが係合凹部32と係合している。すなわち、弾性凸部34Cと係合凹部32との係合が外れないので、ガード本体18が自重でずり落ちることを防止することができる。
【0034】
また、厚肉部であるロック部35Aと薄肉部であるロック解除部35Bとの間に突出部34Eを設けることで、調整ノブ36の回転範囲における両端が、ロック部35Aとロック解除部35Bに限定されるので、調整ノブ36を確実に操作することができる。
【0035】
ガード本体18を椅子本体12のレール部12Aに沿って上下方向にスライドさせると、弾性凸部34Cの弾性変形により係合凹部32との係合が外れて次の係合凹部32に係合され、これを繰り返しながらガード本体18が上下方向にスライドする。その際、係合凹部32は、ガード本体18を下降させる方向の傾斜面32Aの角度θ(A)が小さく形成されているため、ガード本体18を下降させるときは係合凹部32に係合された弾性凸部34Cが抜けにくい。このため、ガード本体18が自重でずり落ちることをより確実に防止することができる。また、係合凹部32は、ガード本体18を上昇させる方向の傾斜面32Bの角度θ(B)が大きく形成されているため、ガード本体18を上昇させるときは係合凹部32に係合された弾性凸部34Cが抜けやすい。このため、ガード本体18を軽い力で上昇させることができる。
【0036】
図5及び図6に示すように、ガード本体18を所望の位置にスライドさせ、調整ノブ36の回転操作により回転軸36Aを固定方向に回転すると、剛性凸部34Bと弾性凸部34Cが係合凹部32に係合されると共に、調整ノブ36と押し当て部材34との間で椅子本体12とガード本体18とが挟持され、ガード本体18が椅子本体12に固定される。これにより、簡単な操作によってガード本体18の高さを調整することができる。
【0037】
その際、図6に示すように、ガード本体18は、中央部付近の2箇所と両サイドの2箇所の計4箇所で、ガイドピン14Cがスライド孔12B、12Cに係止された状態でスライドする。このため、ガード本体18を椅子本体12に対してスムーズにスライドさせることが可能となり、ガード本体18のガタツキを抑制できる。さらに、椅子本体12に対してガード本体18の係止が不安定になったり、ガード本体18が傾いて係止されることを防止できる。
【0038】
このように、ガード本体18を椅子本体12に対して上下方向にスライドさせることにより、子供の成長や異なる身長の子供の体格に合わせてショルダーガード部14とヘッドガード部16を適切な高さに調整することができる。これにより、子供の体格に合わせて肩部や頭部が適切に保護され、子供の上半身が動きにくくなり、走行時や転倒時に安全性を確保することができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、ガード本体18は、中央部付近の2箇所と両サイドの2箇所の計4箇所で、ガイドピン14Cがスライド孔12B、12Cに係止された状態でスライドする構成であったが、この構成に限定するものではない。例えば、ガード本体18は、中央部付近の1箇所と両サイドの2箇所の計3箇所で、ガイドピンがスライド孔に係止された状態でスライドする構成でもガード本体18を椅子本体12に対してスムーズにスライドさせることが可能である。
【0040】
なお、上記実施形態では、ガード本体18に形成されたガイドピン14Cが、椅子本体12に形成されたスライド孔12B、12Cに係止されることで、ガード本体18がスライド方向に案内されたが、この構成に限定するものではない。例えば、ガード本体18にスライド孔を形成し、椅子本体12にガイドピンを設けてもよい。また、スライド孔とガイドピンに限定するものではなく、スライド溝と係合突起など、スライド方向に案内される構成であれば適宜に設定できる。
【0041】
なお、上記実施形態では、押し当て部材34に剛性凸部34Bと弾性凸部34Cが形成され、ショルダーガード部14に係合凹部32が形成されていたが、この構成に限定するものではない。例えば、押し当て部材34に係合凹部を形成し、ショルダーガード部14に剛性凸部と弾性凸部を形成する構成でもよい。
【0042】
なお、上記実施形態では、高さ調整装置30は、上記構成に限らず、ガード本体18を椅子本体12に対して上下方向にスライドさせて任意の位置で固定できる構造であれば、他の構成も適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
2 二輪車
4 サドル
6 荷台
10 子供用椅子
12 椅子本体
12A レール部
12B スライド孔
12C スライド孔
12D 開孔
13 側面部
14 ショルダーガード部
14A 摺動部
14C ガイドピン
14B 翼部
14D 長孔
16 ヘッドガード部
18 ガード本体
30 高さ調整装置(高さ調整機構)
32 係合凹部
32A 傾斜面
32B 傾斜面
34 押し当て部材
34A 開孔
34B 剛性凸部
34C 弾性凸部
34E 突出部
35 傾斜面
35A ロック部
35B ロック解除部
36 調整ノブ
36A 回転軸
38 抜止め部材
38A 突起部
44A クッション(衝撃吸収部材)
44B クッション(衝撃吸収部材)
46A クッション(衝撃吸収部材)
46B クッション(衝撃吸収部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車に取り付けられる子供用椅子であって、
着座可能な椅子本体と、
前記椅子本体に設けられたレール部に沿って上下方向にスライド可能に設けられ、両サイドが前方に湾曲しながら突出する翼部で肩部を保護するショルダーガード部と、前記ショルダーガード部の上方で頭部を保護するヘッドガード部とを備えたガード本体と、
前記ガード本体を上下方向にスライドさせて前記レール部の所定の位置で固定する高さ調整機構と、
を有すると共に、
前記高さ調整機構は、
前記ガード本体が前記レール部に沿ってスライドする摺動部と、
前記ガード本体に設けられ、前記摺動部の前記椅子本体と反対側に上下方向に複数形成された係合凹部と、
前記ガード本体の前方側に設けられ、前記係合凹部に係合される係合凸部が形成された押し当て部材と、
前記椅子本体の背面側に設けられ、前記押し当て部材と連結される回転軸を有する調整ノブと、を備え、
前記調整ノブの回転操作により前記回転軸を固定方向に回転したとき、前記調整ノブと前記押し当て部材との距離が縮まり、前記係合凸部が前記係合凹部に係合されると共に、前記調整ノブと前記押し当て部材との間で前記椅子本体と前記ガード本体とが挟持され、また、前記回転軸を開放方向に回転したとき、前記調整ノブと前記押し当て部材との距離が広がり、前記係合凸部と前記係合凹部との係合が外れ、前記椅子本体に対して前記ガード本体をスライド可能とすることを特徴とする子供用椅子。
【請求項2】
請求項1に記載の子供用椅子がサドルの後方に取り付けられていることを特徴とする二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−116372(P2011−116372A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66322(P2011−66322)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【分割の表示】特願2006−131632(P2006−131632)の分割
【原出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000112978)ブリヂストンサイクル株式会社 (78)