説明

子供用運搬車

【課題】収納する際には、簡単な操作で折りたたむことができ、操作が容易で使い勝手が良好になるようにする。
【解決手段】一対の主柱部材及び一対の後脚部材を幅広の展開状態から幅狭の折りたたみ状態にする上下Xリンク部材と、一対の前脚部材及び一対の後脚部材を幅広の展開状態から幅狭の折りたたみ状態にする前後Xリンク部材と、一対の主柱部材の上端に姿勢制御部を介して取り付けられ、初期状態姿勢から他の姿勢に姿勢変化可能な一対の手動操作部とを有し、姿勢制御部は、上下Xリンク部材及び前後Xリンク部材の一対の主柱部材、一対の前脚部材及び一対の後脚部材を折りたたみ状態にする動作と連動して、一対の手動操作部の姿勢を初期状態姿勢に復帰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子供用運搬車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乳母車、ベビーカー等の子供用運搬車、特に、ベビーバギー又は乳幼児バギーと称される小型軽量の子供用運搬車の多くは、折りたたみ構造を備え、不使用時には、車体を折りたたむことによって、狭い場所にも収納することができるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この場合、フレームの構成が、相互に回転軸で結合された複数のリンクから成るリンク機構となっており、車体の幅方向に折りたたむことができ、起立させた状態で壁等に立てかけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−312485
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の子供用運搬車においては、フレームを折りたたむ際に、利用者は両手を使って操作する必要があるので、使い勝手が悪かった。利用者が子供用運搬車を収納する際には、子供を片腕で抱きかかえた状態で、車体を折りたたむための操作をせざるを得ない場合が多いので、両手を使って操作することが困難である。もっとも、片手を使って操作することによりフレームを折りたたむことが可能な子供用運搬車も提案されている。しかし、この場合も、車体を折りたたむ際、及び、折りたたんだ車体を起立させる際に、利用者は前屈みの姿勢を取る必要があるので、使い勝手が悪かった。
【0006】
さらに、日常の買い物等で使用する際、利用者は、荷物を片手で持ったり、子供を片腕で抱きかかえた状態となりがちなので、空いている方の片手で子供用運搬車を押して歩く場合が多いが、特に、ベビーバギー又は乳幼児バギーと称される小型軽量の子供用運搬車の多くはハンドルアームが左右分離しているので、このような場合、片手のみで左右いずれかのハンドルアームを把持して子供用運搬車を押すこととなる。そのため、子供用運搬車を真っ直ぐに走行させることが困難である。
【0007】
本発明は、前記従来の子供用運搬車の問題点を解決して、折りたたみ状態にする動作と連動して、一対の手動操作部が初期状態姿勢に復帰するので、収納する際には、簡単な操作で折りたたむことができ、操作が容易で使い勝手の良好な子供用運搬車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明の子供用運搬車においては、折りたたみ可能な子供用運搬車であって、一対の主柱部材と、上端が前記一対の主柱部材に連結され、下端に前輪が取り付けられた一対の前脚部材と、上端が前記一対の主柱部材に連結され、下端に後輪が取り付けられた一対の後脚部材と、前記一対の主柱部材と前記一対の後脚部材とをX字状に連結し、前記一対の主柱部材及び前記一対の後脚部材を幅広の展開状態から幅狭の折りたたみ状態にする上下Xリンク部材と、前記一対の前脚部材と前記一対の後脚部材とをX字状に連結し、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材を幅広の展開状態から幅狭の折りたたみ状態にする前後Xリンク部材と、前記一対の主柱部材の上端に姿勢制御部を介して取り付けられ、初期状態姿勢から他の姿勢に姿勢変化可能な一対の手動操作部とを有し、前記姿勢制御部は、前記上下Xリンク部材及び前記前後Xリンク部材の前記一対の主柱部材、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材を折りたたみ状態にする動作と連動して、前記一対の手動操作部の姿勢を初期状態姿勢に復帰させる。
【0009】
本発明の他の子供用運搬車においては、さらに、前記一対の手動操作部は、初期状態姿勢では相互に分離しているとともに、前記一対の主柱部材、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材が展開状態であるときは、相互に擬似的に一体化する使用状態姿勢に姿勢変化可能である。
【0010】
本発明の更に他の子供用運搬車においては、さらに、前記手動操作部は、略L字状に湾曲した棒状のハンドルアームであり、前記姿勢制御部は、前記主柱部材の上端に対する前記ハンドルアームの下端の回転角度を変化させ、初期状態姿勢では前記ハンドルアームの先端部が前方を向き、使用状態姿勢では一対のハンドルアームの先端部が互いに対応するように、前記ハンドルアームの姿勢を変化させる。
【0011】
本発明の更に他の子供用運搬車においては、さらに、前記姿勢制御部は、前記一対の主柱部材、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材が折りたたみ状態であるときは、前記一対の手動操作部の姿勢をロックして初期状態姿勢から姿勢変化不能とする。
【0012】
本発明の更に他の子供用運搬車においては、さらに、前記姿勢制御部は、操作部材を備え、前記一対の主柱部材、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材が展開状態であるときは、前記操作部材が操作されていれば、前記一対の手動操作部を姿勢変化可能とし、前記操作部材が操作されていなければ、前記一対の手動操作部の姿勢をロックして姿勢変化不能とする。
【0013】
本発明の更に他の子供用運搬車においては、さらに、前記前後Xリンク部材に取り付けられ、後方に向けて延出する足踏み操作部を更に有し、前記手動操作部が保持された状態で前記足踏み操作部が踏み下げられると、前記一対の主柱部材、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材を折りたたみ状態にする動作が行われるとともに、前記主柱部材に対して前記前脚部材が屈曲し、前記前輪が上昇して前記手動操作部に接近する。
【0014】
本発明の更に他の子供用運搬車においては、さらに、前記一対の主柱部材、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材を折りたたみ状態にする動作が終了すると、前記後輪及び前記足踏み操作部が支持することによって、起立した姿勢を維持して自立する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、子供用運搬車においては、折りたたみ状態にする動作と連動して、一対の手動操作部が初期状態姿勢に復帰する。これにより、収納する際には、簡単な操作で折りたたむことができ、操作が容易で使い勝手が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態における子供用運搬車の展開された状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における子供用運搬車の折りたたまれた状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態における子供用運搬車を折りたたむ動作を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態における子供用運搬車のハンドルアームの姿勢を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態における子供用運搬車の作動ワイヤの動作を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態における子供用運搬車の回転機構部の構造を説明する第1の図である。
【図7】本発明の実施の形態における子供用運搬車の回転機構部の構造を説明する第2の図である。
【図8】本発明の実施の形態における回転機構部が回転ロック機能を発揮する場合の動作を説明する第1の図である。
【図9】本発明の実施の形態における回転機構部が回転ロック機能を発揮する場合の動作を説明する第2の図である。
【図10】本発明の実施の形態における回転機構部がリターン機能を発揮する場合の動作を説明する第1の図である。
【図11】本発明の実施の形態における回転機構部がリターン機能を発揮する場合の動作を説明する第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の形態における子供用運搬車の展開された状態を示す斜視図、図2は本発明の実施の形態における子供用運搬車の折りたたまれた状態を示す斜視図、図3は本発明の実施の形態における子供用運搬車を折りたたむ動作を説明する図である。なお、図1及び2において、(a)と(b)とは相違する視点からの斜視図であり、図3において、(a)は本発明の実施の形態における子供用運搬車を示し、(b)は従来の子供用運搬車を示している。
【0019】
図において、1は本実施の形態における子供用運搬車であり、乳幼児を乗せて運搬することを主たる目的とする車両であって、一般的には、乳母車、ベビーカー等と称される車両である。また、本実施の形態における子供用運搬車1は、折りたたみ可能な構造を備え、典型的には、ベビーバギー又は乳幼児バギーと称される範疇(ちゅう)に属する小型軽量の車両であるが、必ずしもかかる範疇に属するものである必要はなく、折りたたみ可能な構造を備えるものであれば、いかなる種類のものであってもよい。
【0020】
なお、本実施の形態において、子供用運搬車1の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、子供用運搬車1又はその部品が図に示される姿勢である場合に適切であるが、子供用運搬車1又はその部品の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0021】
前記子供用運搬車1は、折りたたみ構造を備えるフレーム20と、該フレーム20に取り付けられた座席11と、前記フレーム20の下端に回転可能に取り付けられた前輪12及び後輪13と、前記フレーム20の後端から後方に延出する足踏み操作部としてのキックバー15と、前記フレーム20の上端に取り付けられた手動操作部としてのハンドルアーム16とを有する。
【0022】
前記フレーム20は、折りたたみ可能なリンク機構を備え、該リンク機構の動作によって、使用時には、図1に示されるように、展開された状態となり、収納時には、図2に示されるように、折りたたまれた状態となる。また、前記座席11は、乳幼児が着座する部分であって、柔軟性を備えるシート状の部材から成り、前記フレーム20に合わせて、使用時には、図1に示されるように、展開された状態となり、収納時には、図2に示されるように、折りたたまれた状態となる。
【0023】
前記前輪12及び後輪13は、それぞれ、前記フレーム20の左右両側に取り付けられる。なお、図1に示される例において、前輪12及び後輪13は、それぞれ、左側にも2つの車輪が取り付けられ、右側にも2つの車輪が取り付けられているが、必ずしも2つの車輪である必要はなく、1つの車輪だけが取り付けられていてもよい。
【0024】
また、前記キックバー15は、図3(a)に示されるように、子供用運搬車1を折りたたむ際には、利用者が足で踏んで力を入力する部材であり、かつ、後輪13と協働して、折りたたまれた子供用運搬車1を起立した姿勢に維持する支持部材、すなわち、スタンドとして機能する部材である。
【0025】
さらに、前記ハンドルアーム16は、前記フレーム20の上端の左右両側に姿勢制御部としての回転機構部40を介して取り付けられる部材であり、略L字状(又はへ字状)に湾曲した棒状の部材である。典型的には、金属製のパイプ状部材の周囲に柔軟な樹脂等から成る被覆を形成することによって、利用者が手で把持しやすいように形成されている。そして、前記ハンドルアーム16は、初期状態においては、図1及び2に示されるように、先端部16aが斜め上前方を向いているが、子供用運搬車1の使用時には、前記回転機構部40の後述される動作によって、左右のハンドルアーム16の先端部16aが互いに対向するように、姿勢を変更することができる。これにより、左右のハンドルアーム16が擬似的に一体化されるので、利用者は、ハンドルアーム16を片手で操作しても、容易に子供用運搬車1を真っ直ぐに走行させることができる。
【0026】
前記フレーム20は、第1リンク部材としての主柱部材21と、第2リンク部材としての前脚部材22と、第3リンク部材としての後脚部材23と、第4リンク部材としての前後Xリンク部材24と、第5リンク部材としての前後接続部材25と、第6リンク部材としての上下Xリンク部材26と、第7リンク部材としての屈曲リンク部材27とを備える。前記第1〜7リンク部材は、それぞれ、一対の部材であり、前記フレーム20の左右両側に配設されている。なお、前記前後Xリンク部材24の各々は、互いに交差して、前記フレーム20の左右両側を接続する部材であって、交差する箇所において、枢軸24aによって回転可能に結合されている。同様に、前記上下Xリンク部材26の各々も、互いに交差して、前記フレーム20の左右両側を接続する部材であって、交差する箇所において、枢軸26aによって回転可能に結合されている。なお、前記上下Xリンク部材26に沿って、前記回転機構部40を作動させるための作動ワイヤ41が配設されている。
【0027】
そして、前記主柱部材21の下端には、前脚部材22の上端が、第1関節31を介して、回転可能に結合されている。また、前記主柱部材21における第1関節31の上側には、後脚部材23の上端が、第2関節32を介して、回転可能に結合されている。さらに、前記前脚部材22における前輪12の上側には、前後Xリンク部材24の前端が、第3関節33を介して、回転可能に結合されている。さらに、前記後脚部材23における後輪13の上側には、前後Xリンク部材24の後端、前後接続部材25の後端、及び、上下Xリンク部材26の下端が、第4関節34を介して、回転可能に結合されている。なお、前後Xリンク部材24の後端には、キックバー15の前端が固定されている。
【0028】
また、前記主柱部材21における回転機構部40の下側には、上下Xリンク部材26の上端が、第5関節35を介して、回転可能に結合されている。さらに、前記上下Xリンク部材26の下端には、屈曲リンク部材27の外側端が、第6関節36を介して、回転可能に結合されている。さらに、前記屈曲リンク部材27の内側端同士は、第7関節37を介して、回転可能に結合されている。
【0029】
なお、該第7関節37には、屈曲リンク部材27同士の回転を禁止するためのロック部材14が取り付けられている。該ロック部材14を作動させて、図1(b)に示されるように左右の屈曲リンク部材27がほぼ直線になっている状態、すなわち、第7関節37が伸長して左右の屈曲リンク部材27のなす角度が180度近くになっている状態でロックし、屈曲リンク部材27同士の回転を禁止することによって、フレーム20の展開された状態、すなわち、使用状態が維持され、フレーム20の屈曲が禁止される。また、ロック部材14を作動させてロックを解除すると、屈曲リンク部材27同士が回転可能となり、図2(a)に示されるように、第7関節37が屈曲して、左右の屈曲リンク部材27が第7関節37で折れ曲がった状態になり得る。
【0030】
ここで、本実施の形態における子供用運搬車1を、図1に示されるような展開された状態から、図2に示されるような折りたたまれた状態とする動作について説明する。
【0031】
まず、図3(b)に示されるような従来の子供用運搬車101を折りたたむ動作について説明する。なお、該子供用運搬車101は、フレーム120、前輪112、後輪113及びハンドルアーム116を有し、前記フレーム120が、本実施の形態と同様に、折りたたみ可能なリンク機構を備えるものであるとする。
【0032】
従来の子供用運搬車101を折りたたむ場合、図3(b)(1)に示されるように、利用者は、手によって、ハンドルアーム116に矢印で示されるような方向の力(図における反時計回り方向の力)を付与する。この際、前輪112及び後輪113が支点として機能する。すると、フレーム120が屈曲を開始し、従来の子供用運搬車101は、図3(b)(2)〜(4)に示されるように変化した後、図3(b)(5)に示されるような折りたたまれた状態、すなわち、収納状態となる。
【0033】
なお、図3(b)(2)〜(4)に示されるように子供用運搬車101の状態が変化する間、利用者は、手によるハンドルアーム116に矢印で示されるような方向の力の付与を継続する。そのため、利用者は、前屈みの姿勢を取る必要がある。また、図3(b)(5)に示されるような折りたたまれた状態の子供用運搬車101を起立させて壁等に立てかける場合には、利用者は、手によって、ハンドルアーム116を持ち上げて子供用運搬車101を起立させる必要があるので、同様に、前屈みの姿勢を取ることとなる。さらに、子供用運搬車101は、起立した姿勢を維持して自立することが不可能である。もっとも、折りたたみ式のスタンドのような出し入れ可能なスタンドを取り付けることも可能であるが、この場合、利用者は、手によって、スタンドの出し入れを行う必要がある。
【0034】
これに対し、本実施の形態における子供用運搬車1を折りたたむ場合、図3(a)(1)に示されるように、利用者は、手によってハンドルアーム16を保持しながら、片足でキックバー15を踏み下げることによって、該キックバー15に矢印で示されるような方向の力(図における下向きの力)を付与する。すると、キックバー15に近接した位置にある後輪13が支点として機能し、前輪12は、矢印で示されるような方向(図における時計回り方向)に変位を開始する。また、フレーム20が屈曲を開始し、前記子供用運搬車1は、図3(a)(2)〜(4)に示されるように変化した後、図3(a)(5)に示されるような折りたたまれた状態、すなわち、収納状態となる。
【0035】
なお、図3(a)(2)〜(4)に示されるように子供用運搬車1の状態が変化する間、利用者は、手によるハンドルアーム16の保持、及び、片足によるキックバー15の踏み下げを継続する。そのため、後輪13が支点として機能し、主柱部材21に対して前脚部材22が屈曲し、前輪12は上昇してハンドルアーム16に接近する。そして、図3(a)(5)に示されるような折りたたまれた状態になると、折りたたまれた子供用運搬車1は、キックバー15及び後輪13によって支持され、起立した姿勢を維持して自立することができる。この場合、前記キックバー15は、後輪13と協働して、スタンドとして機能する。
【0036】
このように、本実施の形態においては、折りたたみ可能なリンク機構を備えるフレーム20の前後方向に延在するリンク部材の1つである前後Xリンク部材24の一方の後端に後方に向けて延出するキックバー15が取り付けられている。そして、該キックバー15は、子供用運搬車1を折りたたむ際の足踏み操作部として機能するとともに、折りたたまれた子供用運搬車1を起立した姿勢で自立させるためのスタンドとして機能する。
【0037】
これにより、利用者は、片手でハンドルアーム16を保持し、片足でキックバー15を踏み下げるだけの簡単な動作で、展開された状態、すなわち、使用状態の子供用運搬車1を折りたたみ、かつ、折りたたまれた状態で起立した姿勢とすることができるとともに、折りたたまれた子供用運搬車1を起立した姿勢で自立させることができる。つまり、利用者は、前屈みの姿勢を取ることなく、片手片足のみを使用して、使用状態の子供用運搬車1を収納状態にし、起立した姿勢で自立させることができる。したがって、利用者は、例えば、子供を片腕で抱きかかえた状態のように片手が塞(ふさ)がっていても、容易に子供用運搬車1を起立した姿勢にして収納することができる。
【0038】
次に、前記回転機構部40について、詳細に説明する。まず、該回転機構部40によるハンドルアーム16の姿勢変化について、説明する。
【0039】
図4は本発明の実施の形態における子供用運搬車のハンドルアームの姿勢を説明する図、図5は本発明の実施の形態における子供用運搬車の作動ワイヤの動作を説明する図である。なお、図4において、(a)は左側方から観たハンドルアームの姿勢を示す図、(b)は後方から観たハンドルアームの姿勢を示す図であり、図5において、(a)は後方から観た子供用運搬車の使用状態における概略図、(b)は(a)の要部拡大図、(c)は折りたたむ途中の状態における要部拡大図である。
【0040】
本実施の形態における回転機構部40は、ハンドルアーム16を回転させるとともに所定の回転角度でロックする回転ロック機能と、ハンドルアーム16を回転させて初期状態姿勢に復帰させるリターン機能とを発揮する。
【0041】
回転機構部40の回転ロック機能によって、ハンドルアーム16は、主柱部材21に対し、該主柱部材21の軸を中心に回転して、その姿勢を段階的に変化させることができる。図4に示される例において、(1)は初期状態姿勢を示し、(2)は中間状態姿勢を示し、(3)は最終状態姿勢としての使用状態姿勢を示している。つまり、図4に示される例において、ハンドルアーム16は、初期状態姿勢を含めて、その姿勢を3段階に変化させることができる。なお、姿勢変化の段階は、必ずしも3段階にする必要はなく、例えば、中間状態を省略して、初期状態姿勢及び使用状態姿勢の2段階にしてもよいし、中間状態姿勢を2段階以上にして、合計で4段階以上にしてもよいが、ここでは、説明の都合上、3段階である場合についてのみ説明する。
【0042】
図4において、(1)が示す初期状態姿勢は、図1及び2に示される状態と同様の姿勢であり、子供用運搬車1が折りたたまれた状態、すなわち、収納状態にあるときは、ハンドルアーム16の姿勢は常に初期状態姿勢となる。該初期状態姿勢において、ハンドルアーム16は、先端部16aが斜め上前方を向いている。なお、初期状態姿勢におけるハンドルアーム16の主柱部材21に対する回転角度は、基準角度としてのゼロ度であるものとする。
【0043】
また、図4において、(2)が示す中間状態姿勢では、左右のハンドルアーム16は、先端部16aが初期状態姿勢よりも内側を向いた姿勢、つまり、左右のハンドルアーム16の先端部16a同士が、初期状態姿勢よりも近接した姿勢となっている。なお、中間状態姿勢におけるハンドルアーム16の主柱部材21に対する回転角度は、例えば、40度であるが、適宜の角度に設定することができる。
【0044】
さらに、図4において、(3)が示す使用状態姿勢では、左右のハンドルアーム16は、先端部16aが中間状態姿勢よりも更に内側を向いた姿勢となり、左右のハンドルアーム16の先端部16a同士が互いに対向した姿勢となっている。これにより、左右のハンドルアーム16が擬似的に一体化されるので、利用者は、ハンドルアーム16を片手で操作しても、容易に子供用運搬車1を真っ直ぐに走行させることができる。なお、使用状態姿勢におけるハンドルアーム16の主柱部材21に対する回転角度は、例えば、80度であるが、適宜の角度に設定することができる。
【0045】
また、図4(b)の(3)に示される例では、左右のハンドルアーム16の先端部16a同士が当接しているが、先端部16a同士は必ずしも当接する必要はなく、互いに離間した状態、すなわち、近接した状態であってもよい。この場合でも、先端部16a同士の距離は、利用者が片手によって、両方のハンドルアーム16の先端部16aを同時に把持することができる程度の距離に収まっていることが望ましい。
【0046】
本実施の形態における回転機構部40は、図5(a)に示されるように、主柱部材21の上端部分である円筒状のフレーム側外筒部としての下側外筒部42と、ハンドルアーム16の下端部分であって、前記下側外筒部42に対して回転可能に接続されたハンドル側外筒部としての上側外筒部43と、前記下側外筒部42と上側外筒部43とを分離不能かつ回転可能に連結する連結用筒部44と、利用者が操作して、ハンドルアーム16の姿勢変化を可能とする操作部材としての操作ピン45とを備える。
【0047】
そして、利用者は、子供用運搬車1が使用状態、すなわち、展開された状態にあるときは、前記操作ピン45を操作しつつハンドルアーム16を回転させることによって、該ハンドルアーム16の姿勢を、初期状態姿勢から中間状態姿勢又は使用状態姿勢に変更させることができる。また、利用者が、展開された状態の子供用運搬車1を折りたたむ動作を行うと、ハンドルアーム16の姿勢は、中間状態姿勢又は使用状態姿勢から、自動的に初期状態姿勢に復帰する。これは、子供用運搬車1を折りたたむ動作によって、作動ワイヤ41が回転機構部40を作動させるためである。
【0048】
図5(a)に示されるように、左右の作動ワイヤ41は、それぞれ、上下Xリンク部材26に沿って配設され、下端が屈曲リンク部材27の途中のワイヤ接続部27aに接続されている。また、作動ワイヤ41の上端及びその近傍は、円筒状の主柱部材21の内部を通過するように配設されている。そして、作動ワイヤ41の上端は、後述されるように、下側外筒部42内において、ワイヤ接続ピン46に接続されている。
【0049】
図5(b)に示されるように、子供用運搬車1が展開された状態にあるときは、第7関節37が伸長して、左右の屈曲リンク部材27がほぼ直線になり、ワイヤ接続部27aが低い位置にある。そのため、作動ワイヤ41の下端がワイヤ接続部27aによって下方に引っ張られた状態となり、作動ワイヤ41の上端が接続されたワイヤ接続ピン46には、作動ワイヤ41を介して、下方向への張力が付与されている。
【0050】
一方、子供用運搬車1を折りたたむ動作が行われると、図5(c)に示されるように、第7関節37が屈曲して、左右の屈曲リンク部材27が第7関節37で折れ曲がった状態になり、ワイヤ接続部27aの位置が上昇する。そのため、作動ワイヤ41の下端がワイヤ接続部27aによって下方に引っ張られた状態が解除され、作動ワイヤ41の上端が接続されたワイヤ接続ピン46に付与されていた下方向への張力も解除される。これにより、回転機構部40が作動して、中間状態姿勢又は使用状態姿勢であったハンドルアーム16の姿勢を初期状態姿勢に復帰させる。
【0051】
このように、本実施の形態における子供用運搬車1は、ハンドルアーム16の姿勢が使用状態姿勢であって左右のハンドルアーム16が擬似的に一体化されていても、利用者が、前述のように、片手でハンドルアーム16を保持し、片足でキックバー15を踏み下げるだけの簡単な動作で、展開された状態の子供用運搬車1を折りたたむと、ハンドルアーム16の姿勢が自動的に初期状態姿勢に復帰する。したがって、利用者は、更に容易に子供用運搬車1を起立した姿勢にして収納することができる。
【0052】
次に、前記回転機構部40の構造について詳細に説明する。
【0053】
図6は本発明の実施の形態における子供用運搬車の回転機構部の構造を説明する第1の図、図7は本発明の実施の形態における子供用運搬車の回転機構部の構造を説明する第2の図である。なお、図6において、(a)は回転機構部の縦断面図、(b)はフレーム側外筒部とハンドル側外筒部の連結構造を説明する図であり、図7において、(a)はリターン機能を発揮する部分の構造を説明する図、(b)は回転ロック機能を発揮する部分の構造を説明する図である。
【0054】
図6(a)に示されるように、上側外筒部43の下端から所定長の範囲は、下側外筒部42の上端から、該下側外筒部42の内部に回転可能に挿入されている。また、前記上側外筒部43の外周面における下側外筒部42の上端の上側の範囲43aには、連結用筒部44の肉厚部44bが回転不能に固定されている。そして、前記下側外筒部42の上端近傍部分は、上側外筒部43の外面と連結用筒部44の肉薄部44cとの間の間隙(げき)に挿入された状態となっている。なお、前記下側外筒部42の上端の外周面には、外方に向けて突出するフランジ部42aが形成されており、該フランジ部42aが連結用筒部44の肉薄部44c内周面に形成された嵌(かん)合溝44aに移動可能に嵌入されている。これにより、上側外筒部43及び連結用筒部44と、下側外筒部42とは、相互に回転可能、かつ、軸方向に移動不能に連結される。
【0055】
また、下側外筒部42の内側には、下側リターン作動筒51が挿入されている。該下側リターン作動筒51は、内径及び外径が上側外筒部43の内径及び外径とほぼ同一であり、前記下側外筒部42に対して回転不能、かつ、軸方向に移動可能に取り付けられている。そして、前記下側リターン作動筒51の上端には下側ジョークラッチ部63が形成され、該下側ジョークラッチ部63は、上側リターン作動筒として機能する上側外筒部43の下端に形成された上側ジョークラッチ部64と噛(か)み合い可能となっている。なお、前記下側ジョークラッチ部63及び上側ジョークラッチ部64は、ワンウェイクラッチの一種である、いわゆるスパイラル形のジョークラッチとして機能する部分であり、軸方向に対して傾斜した傾斜部63a及び64aと、軸方向に平行な垂直部63b及び64bとを備える。
【0056】
そして、下側リターン作動筒51の下側には、付勢部材としての下側コイルばね55が配設されている。なお、該下側コイルばね55の下端は、位置決め部材としてのばね押さえピン48によって下方への変位が禁止されている。該ばね押さえピン48は、下側外筒部42の壁面に形成されたばね押さえピン固定孔(こう)48aに挿通されて固定される。そして、前記下側コイルばね55は、前記下側リターン作動筒51を上方向に付勢する。
【0057】
また、該下側リターン作動筒51の内側には、下側回転ロック筒52が挿入されている。該下側回転ロック筒52は、前記下側外筒部42に対して回転不能、かつ、軸方向に移動不能に取り付けられている。一方、上側リターン作動筒として機能する上側外筒部43の内部には、上側回転ロック筒53が挿入されている。該上側回転ロック筒53は、内径及び外径が下側回転ロック筒52の内径及び外径とほぼ同一であり、前記上側外筒部43に回転不能、かつ、軸方向に移動可能に取り付けられている。そして、前記下側回転ロック筒52の上端には下側ドッグクラッチ部61が形成され、該下側ドッグクラッチ部61は、上側回転ロック筒53の下端に形成された上側ドッグクラッチ部62と噛み合い可能となっている。なお、前記下側ドッグクラッチ部61及び上側ドッグクラッチ部62は、各歯が均等でなく、軸方向に長く延出する一対の長歯61a及び62aと、各歯の間に形成された凹部61b及び62bとを備える。
【0058】
そして、上側回転ロック筒53の上側には、付勢部材としての上側コイルばね56が配設されている。なお、該上側コイルばね56の上端は、位置決め部材としてのばね押さえリング56aによって上方への変位が禁止されている。該ばね押さえリング56aは、上側外筒部43の内周面に固定されている。そして、前記上側コイルばね56は、前記上側回転ロック筒53を下方向に付勢する。
【0059】
さらに、前記下側回転ロック筒52及び上側回転ロック筒53の内側には、円筒状の内部スリーブ54が挿入されている。該内部スリーブ54は、前記下側リターン作動筒51に対して回転不能、かつ、軸方向に移動不能に取り付けられている。
【0060】
そして、前記操作ピン45は、上側外筒部43の壁面に軸方向に延在するように形成されたスリット状の長孔である操作ピンスライド孔45aを通過するとともに、上側回転ロック筒53の壁面に形成されたばね操作ピン固定孔45bに挿通されて固定される。これにより、上側回転ロック筒53は、上側外筒部43に対して回転不能、かつ、軸方向に移動可能となっている。なお、利用者が前記操作ピン45を軸方向に上方に向けて移動させることによって、上側回転ロック筒53は、上側コイルばね56の付勢力に抗して、上側外筒部43に対して軸方向に上方に向けて移動する。
【0061】
また、前記ワイヤ接続ピン46は、回転機構部40において、作動ワイヤ41から下方向への張力を受ける張力受部材として機能する。そして、前記ワイヤ接続ピン46は、下側外筒部42の壁面に軸方向に延在するように形成されたスリット状の長孔であるワイヤ接続ピンスライド第1孔46aを通過し、下側リターン作動筒51の壁面に形成されたばねワイヤ接続ピン固定第1孔46bに挿通されて固定され、下側回転ロック筒52の壁面に軸方向に延在するように形成されたスリット状の長孔であるワイヤ接続ピンスライド第2孔46cを通過し、内部スリーブ54の壁面に形成されたばねワイヤ接続ピン固定第2孔46dに挿通されて固定される。
【0062】
さらに、ガイドピン47は、下側外筒部42の壁面に形成されたガイドピン固定第1孔47aに挿通されて固定され、下側リターン作動筒51の壁面に軸方向に延在するように形成されたスリット状の長孔であるガイドピンスライド第1孔47bを通過し、下側回転ロック筒52の壁面に形成されたガイドピン固定第2孔47cに挿通されて固定され、内部スリーブ54の壁面に軸方向に延在するように形成されたスリット状の長孔であるガイドピンスライド第2孔47dを通過する。
【0063】
前記ワイヤ接続ピン46及びガイドピン47によって、下側リターン作動筒51及び内部スリーブ54は、下側外筒部42及び下側回転ロック筒52に対して回転不能、かつ、軸方向に移動可能となっている。なお、前記ワイヤ接続ピン46には作動ワイヤ41の上端が接続されているので、子供用運搬車1が展開された状態にあるときは、作動ワイヤ41を介して、下方向への張力が付与される。これにより、下側リターン作動筒51は、内部スリーブ54とともに、下側コイルばね55の付勢力に抗して、下側外筒部42及び下側回転ロック筒52に対して軸方向に下方に向けて移動する。
【0064】
次に、前記回転機構部40の動作について説明する。まず、回転機構部40の回転ロック機能によって、ハンドルアーム16が、主柱部材21に対して回転する場合の動作について説明する。
【0065】
図8は本発明の実施の形態における回転機構部が回転ロック機能を発揮する場合の動作を説明する第1の図、図9は本発明の実施の形態における回転機構部が回転ロック機能を発揮する場合の動作を説明する第2の図である。なお、図8において、(a)は初期状態姿勢でロックされた状態を示す図、(b)は初期状態姿勢でロックが解除された状態を示す図、(c)は中間状態姿勢にまでハンドルアームが回転された状態を示す図であり、図9において、(a)は中間状態姿勢でロックされた状態を示す図、(b)は中間状態姿勢でロックが解除された後に使用状態姿勢にまでハンドルアームが回転された状態を示す図、(c)は使用状態姿勢でロックされた状態を示す図である。
【0066】
ハンドルアーム16が初期状態姿勢にあるときは、図8(a)に示されるように、下側回転ロック筒52の上端における下側ドッグクラッチ部61の長歯61aは、上側回転ロック筒53の下端における上側ドッグクラッチ部62の長歯62aから2つ目の歯と3つ目の歯との間の凹部62bに嵌入している。同様に、上側ドッグクラッチ部62の長歯66aは、下側ドッグクラッチ部61の長歯61aから2つ目の歯と3つ目の歯との間の凹部61bに嵌入している。これにより、下側回転ロック筒52と上側回転ロック筒53とは回転不能にロックされ、その結果、下側外筒部42に対して上側外筒部43が回転不能にロックされ、ハンドルアーム16が初期状態姿勢でロックされる。
【0067】
続いて、利用者が、図8(b)に示されるように、操作ピン45を手で上に引くと、すなわち、上方に移動させると、上側回転ロック筒53は、上側コイルばね56の付勢力に抗して、上側外筒部43に対して軸方向に上方に向けて移動する。これにより、下側ドッグクラッチ部61の長歯61aが上側ドッグクラッチ部62の凹部62bから離間し、同様に、上側ドッグクラッチ部62の長歯62aが下側ドッグクラッチ部61の凹部61bから離間する。すなわち、下側ドッグクラッチ部61と上側ドッグクラッチ部62との噛み合いが解除される。その結果、下側回転ロック筒52と上側回転ロック筒53とは、ロックが解除されて回転可能となるので、下側外筒部42に対して上側外筒部43が回転可能となり、ハンドルアーム16のロックが解除される。
【0068】
続いて、利用者が、図8(c)に示されるように、操作ピン45を手で上に引いたままでハンドルアーム16を40度回転させると、上側外筒部43が上側回転ロック筒53とともに40度回転する。すると、下側回転ロック筒52の上端における下側ドッグクラッチ部61の長歯61aは、上側回転ロック筒53の下端における上側ドッグクラッチ部62の長歯62aから1つ目の歯と2つ目の歯との間の凹部62bに対向する。同様に、上側ドッグクラッチ部62の長歯62aは、下側ドッグクラッチ部61の長歯61aから1つ目の歯と2つ目の歯との間の凹部61bに対向する。なお、隣接する凹部61b及び62b同士の間隔、すなわち、凹部61b及び62bのピッチは、回転角度40度に対応するように形成されている。
【0069】
続いて、利用者が、図9(a)に示されるように、操作ピン45を手で上に引くのを止めると、すなわち、操作ピン45を解放すると、上側回転ロック筒53は、上側コイルばね56の付勢力によって、上側外筒部43に対して軸方向に下方に向けて移動する。これにより、下側ドッグクラッチ部61の長歯61aが上側ドッグクラッチ部62の凹部62bに嵌入し、同様に、上側ドッグクラッチ部62の長歯62aが下側ドッグクラッチ部61の凹部61bに嵌入するので、下側回転ロック筒52と上側回転ロック筒53とは回転不能にロックされる。その結果、下側外筒部42に対して上側外筒部43が回転不能にロックされ、ハンドルアーム16が中間状態姿勢でロックされる。
【0070】
続いて、利用者が、図9(b)に示されるように、操作ピン45を手で上に引きながらハンドルアーム16を40度回転させると、下側回転ロック筒52と上側回転ロック筒53とは、ロックが解除されて更に40度回転する。すると、下側回転ロック筒52の上端における下側ドッグクラッチ部61の長歯61aは、上側回転ロック筒53の下端における上側ドッグクラッチ部62の長歯62aと該長歯62aから1つ目の歯との間の凹部62bに対向する。同様に、上側ドッグクラッチ部62の長歯62aは、下側ドッグクラッチ部61の長歯61aと該長歯61aから1つ目の歯との間の凹部61bに対向する。なお、長歯61a及び62aの軸方向の寸法は、上側外筒部43に対して上側回転ロック筒53を軸方向に上方に向けて最大限に移動させても、図9(b)に示されるように、互いに当接する程度の大きさに設定されている。これにより、下側回転ロック筒52に対して上側回転ロック筒53が80度を超えて回転すること、すなわち、ハンドルアーム16が初期状態姿勢から80度を超えて回転することが防止される。
【0071】
続いて、利用者が、図9(c)に示されるように、操作ピン45を手で上に引くのを止めると、すなわち、操作ピン45を解放すると、上側回転ロック筒53は、上側コイルばね56の付勢力によって、上側外筒部43に対して軸方向に下方に向けて移動する。これにより、下側ドッグクラッチ部61の長歯61aが上側ドッグクラッチ部62の凹部62bに嵌入し、同様に、上側ドッグクラッチ部62の長歯62aが下側ドッグクラッチ部61の凹部61bに嵌入するので、下側回転ロック筒52と上側回転ロック筒53とは回転不能にロックされる。その結果、下側外筒部42に対して上側外筒部43が回転不能にロックされ、ハンドルアーム16が使用状態姿勢でロックされる。
【0072】
なお、ここでは、ハンドルアーム16を40度ずつ回転させて、初期状態姿勢、中間状態姿勢及び使用状態姿勢の順に、順次姿勢を変化させる例について説明したが、初期状態姿勢からハンドルアーム16を80度回転させて、中間状態姿勢を経ることなく、直接に使用状態姿勢にすることもできる。
【0073】
次に、回転機構部40のリターン機能によって、ハンドルアーム16が初期状態姿勢に復帰する場合の動作について説明する。
【0074】
図10は本発明の実施の形態における回転機構部がリターン機能を発揮する場合の動作を説明する第1の図、図11は本発明の実施の形態における回転機構部がリターン機能を発揮する場合の動作を説明する第2の図である。なお、図10において、(a)は子供用運搬車が折りたたまれた状態を示す図、(b)は子供用運搬車が展開された状態を示す図、(c)は子供用運搬車が展開された状態でハンドルアームが回転された状態を示す図であり、図11において、(a)は子供用運搬車が展開された状態でハンドルアームが中間状態姿勢又は使用状態姿勢でロックされた状態を示す図、(b)はハンドルアームが中間状態姿勢又は使用状態姿勢で子供用運搬車が折りたたまれた状態を示す図、(c)はハンドルアームが初期状態姿勢に復帰した状態を示す図である。
【0075】
子供用運搬車1が折りたたまれた状態にあるときは、図10(a)に示されるように、ワイヤ接続ピン46に作動ワイヤ41から下方向への張力が付与されていないので、下側リターン作動筒51は、下側コイルばね55の付勢力によって、下側外筒部42に対して軸方向に上方に向けて移動し、下側ジョークラッチ部63が上側ジョークラッチ部64と噛み合った状態となっている。これにより、下側リターン作動筒51と上側外筒部43とは回転不能にロックされ、その結果、下側外筒部42に対して上側外筒部43が回転不能にロックされ、ハンドルアーム16が初期状態姿勢でロックされる。
【0076】
なお、下側リターン作動筒51とともに内部スリーブ54も下側外筒部42に対して軸方向に上方に向けて移動するので、操作ピン45は、内部スリーブ54の上端によって押し上げられる。その結果、上側回転ロック筒53は、上側コイルばね56の付勢力に抗して、上側外筒部43に対して軸方向に上方に向けて移動するので、下側ドッグクラッチ部61と上側ドッグクラッチ部62との噛み合いが解除され、下側回転ロック筒52と上側回転ロック筒53とはロックが解除されている。
【0077】
続いて、利用者が子供用運搬車1を使用するために展開すると、図5(b)に示されるように、第7関節37が伸長して、左右の屈曲リンク部材27がほぼ直線になり、作動ワイヤ41の下端が下方に引っ張られるので、図10(b)に示されるように、ワイヤ接続ピン46に、作動ワイヤ41から下方向への張力が付与される。これにより、下側リターン作動筒51は、下側コイルばね55の付勢力に抗して、下側外筒部42に対して軸方向に下方に向けて移動し、下側ジョークラッチ部63と上側ジョークラッチ部64との噛み合いが解除される。
【0078】
また、下側リターン作動筒51とともに内部スリーブ54も下側外筒部42に対して軸方向に下方に向けて移動するので、操作ピン45は、下側外筒部42の上端によって押し上げられた状態から解放される。その結果、上側回転ロック筒53は、上側コイルばね56の付勢力によって、上側外筒部43に対して軸方向に下方に向けて移動する。これにより、下側ドッグクラッチ部61と上側ドッグクラッチ部62とが噛み合うので、下側回転ロック筒52と上側回転ロック筒53とがロックされる。したがって、下側外筒部42に対して上側外筒部43が回転不能にロックされた状態は継続し、ハンドルアーム16が初期状態姿勢でロックされた状態も継続している。
【0079】
続いて、利用者が、図10(c)に示されるように、操作ピン45を手で上に引きながらハンドルアーム16を回転させる。図10(c)に示される例では、初期状態姿勢から直接に使用状態姿勢にするために、ハンドルアーム16を80度回転させている。これにより、上側外筒部43は80度回転する。また、下側回転ロック筒52及び上側回転ロック筒53は、図8及び9に示されるような動作を行い、下側ドッグクラッチ部61及び上側ドッグクラッチ部62の噛み合い及び噛み合い解除が行われる。
【0080】
なお、下側ジョークラッチ部63及び上側ジョークラッチ部64の隣接する垂直部63b及び64b同士の間隔、すなわち、垂直部63b及び64bのピッチは、回転角度90度に対応するように形成されている。したがって、上側外筒部43が80度回転すると、下側ジョークラッチ部63の垂直部63bに対する上側ジョークラッチ部64の垂直部64bの位置が10度ずれるので、図10(c)に示されるように、下側ジョークラッチ部63の傾斜部63aにおける上端近傍部分と、上側ジョークラッチ部64の傾斜部64aにおける下端近傍部分とが互いに対向する。
【0081】
続いて、利用者が、図11(a)に示されるように、操作ピン45を手で上に引くのを止めると、すなわち、操作ピン45を解放すると、図9(c)に示されるように、上側回転ロック筒53は、上側コイルばね56の付勢力によって、上側外筒部43に対して軸方向に下方に向けて移動し、下側回転ロック筒52と上側回転ロック筒53とは回転不能にロックされる。その結果、下側外筒部42に対して上側外筒部43が回転不能にロックされ、ハンドルアーム16が使用状態姿勢でロックされる。なお、使用状態では、図11(a)に示されるように、下側ジョークラッチ部63と上側ジョークラッチ部64との噛み合いが解除された状態が継続する。
【0082】
続いて、利用者が子供用運搬車1を収納するために折りたたむ動作を行うと、図5(c)に示されるように、第7関節37が屈曲して、左右の屈曲リンク部材27が第7関節37で折れ曲がった状態になり、作動ワイヤ41の下端が下方に引っ張られた状態が解除されるので、図11(b)に示されるように、ワイヤ接続ピン46に、作動ワイヤ41から付与されていた下方向への張力が解除される。これにより、下側リターン作動筒51は、下側コイルばね55の付勢力によって、下側外筒部42に対して軸方向に上方に向けて移動する。そして、下側ジョークラッチ部63の傾斜部63aにおける上端近傍部分が、上側ジョークラッチ部64の傾斜部64aにおける下端近傍部分に当接する。
【0083】
なお、下側リターン作動筒51とともに内部スリーブ54も下側外筒部42に対して軸方向に上方に向けて移動するので、操作ピン45は、内部スリーブ54の上端によって押し上げられる。その結果、上側回転ロック筒53は、上側コイルばね56の付勢力に抗して、上側外筒部43に対して軸方向に上方に向けて移動するので、下側ドッグクラッチ部61と上側ドッグクラッチ部62との噛み合いが解除され、下側回転ロック筒52と上側回転ロック筒53とはロックが解除される。
【0084】
また、下側ジョークラッチ部63の傾斜部63aにおける上端近傍部分及び上側ジョークラッチ部64の傾斜部64aにおける下端近傍部分が互いに当接した状態で、下側ジョークラッチ部63から下方向への力が付与されると、下側ジョークラッチ部63の傾斜部63aに沿って上側ジョークラッチ部64の傾斜部64aが変位するので、上側ジョークラッチ部64を含む上側外筒部43を回転させるような回転モーメントが発生する。
【0085】
そして、下側リターン作動筒51及び内部スリーブ54の上方に向けての移動が終了すると、図11(c)に示されるように、上側外筒部43が回転してハンドルアーム16が初期状態姿勢に復帰し、下側ジョークラッチ部63が上側ジョークラッチ部64と噛み合った状態となり、図10(a)に示される例と同様に、下側外筒部42に対して上側外筒部43が回転不能にロックされ、ハンドルアーム16が初期状態姿勢でロックされる。
【0086】
なお、ここでは、利用者が操作して使用状態姿勢にしたハンドルアーム16が、子供用運搬車1を折りたたむ動作に伴って、自動的に初期状態姿勢に復帰してロックされる例について説明したが、利用者が操作して中間状態姿勢にしたハンドルアーム16も、同様に、子供用運搬車1を折りたたむ動作に伴って、自動的に初期状態姿勢に復帰してロックされる。
【0087】
このように、本実施の形態において、子供用運搬車1は、一対の主柱部材21と、上端が一対の主柱部材21に連結され、下端に前輪12が取り付けられた一対の前脚部材22と、上端が一対の主柱部材21に連結され、下端に後輪13が取り付けられた一対の後脚部材23と、一対の主柱部材21と一対の後脚部材23とをX字状に連結し、一対の主柱部材21及び一対の後脚部材23を幅広の展開状態から幅狭の折りたたみ状態にする上下Xリンク部材26と、一対の前脚部材22と一対の後脚部材23とをX字状に連結し、一対の前脚部材22及び一対の後脚部材23を幅広の展開状態から幅狭の折りたたみ状態にする前後Xリンク部材24と、一対の主柱部材21の上端に姿勢制御部としての回転機構部40を介して取り付けられ、初期状態姿勢から他の姿勢に姿勢変化可能な一対の手動操作部としてのハンドルアーム16とを有し、回転機構部40は、上下Xリンク部材26及び前後Xリンク部材24の一対の主柱部材21、一対の前脚部材22及び一対の後脚部材23を折りたたみ状態にする動作と連動して、一対のハンドルアーム16の姿勢を初期状態姿勢に復帰させる。
【0088】
これにより、子供用運搬車1を収納する際には、簡単な操作で折りたたむことができ、操作が容易で使い勝手が良好になる。
【0089】
また、一対のハンドルアーム16は、初期状態姿勢では相互に分離しているとともに、一対の主柱部材21、一対の前脚部材22及び一対の後脚部材23が展開状態であるときは、相互に擬似的に一体化する使用状態姿勢に姿勢変化可能である。これにより、利用者は、ハンドルアーム16を片手で操作しても、容易に子供用運搬車1を真っ直ぐに走行させることができる。
【0090】
さらに、回転機構部40は、一対の主柱部材21、一対の前脚部材22及び一対の後脚部材23が折りたたみ状態であるときは、一対のハンドルアーム16の姿勢をロックして初期状態姿勢から姿勢変化不能とする。これにより、子供用運搬車1を収納する際にハンドルアーム16の姿勢が変化してしまうことを確実に防止することができる。
【0091】
さらに、回転機構部40は、操作ピン45を備え、一対の主柱部材21、一対の前脚部材22及び一対の後脚部材23が展開状態であるときは、操作ピン45が操作されていれば、一対のハンドルアーム16を姿勢変化可能とし、操作ピン45が操作されていなければ、一対のハンドルアーム16の姿勢をロックして姿勢変化不能とする。これにより、子供用運搬車1を使用する際、利用者は、随時、操作ピン45を操作することによってハンドルアーム16の姿勢を変更することができるとともに、操作ピン45を操作しなければハンドルアーム16の姿勢がロックされているので、安定してハンドルアーム16を把持して子供用運搬車1を走行させることができる。
【0092】
さらに、子供用運搬車1は、前後Xリンク部材24に取り付けられ、後方に向けて延出するキックバー15を更に有し、ハンドルアーム16が保持された状態でキックバー15が踏み下げられると、一対の主柱部材21、一対の前脚部材22及び一対の後脚部材23を折りたたみ状態にする動作が行われるとともに、主柱部材21に対して前脚部材22が屈曲し、前輪12が上昇してハンドルアーム16に接近する。これにより、利用者は、片手でハンドルアーム16を保持し、片足でキックバー15を踏み下げるだけの簡単な動作で、前屈みの姿勢を取ることなく、使用状態の子供用運搬車1を折りたたみ、かつ、折りたたまれた状態で起立した姿勢とすることができる。
【0093】
さらに、子供用運搬車1は、一対の主柱部材21、一対の前脚部材22及び一対の後脚部材23を折りたたみ状態にする動作が終了すると、後輪13及びキックバー15が支持することによって、起立した姿勢を維持して自立する。これにより、利用者は、容易に子供用運搬車1を起立した姿勢にして収納することができる。
【0094】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、子供用運搬車に適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 子供用運搬車
12 前輪
13 後輪
15 キックバー
16 ハンドルアーム
16a 先端部
21 主柱部材
22 前脚部材
23 後脚部材
24 前後Xリンク部材
26 上下Xリンク部材
40 回転機構部
45 操作ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折りたたみ可能な子供用運搬車であって、
一対の主柱部材と、
上端が前記一対の主柱部材に連結され、下端に前輪が取り付けられた一対の前脚部材と、
上端が前記一対の主柱部材に連結され、下端に後輪が取り付けられた一対の後脚部材と、
前記一対の主柱部材と前記一対の後脚部材とをX字状に連結し、前記一対の主柱部材及び前記一対の後脚部材を幅広の展開状態から幅狭の折りたたみ状態にする上下Xリンク部材と、
前記一対の前脚部材と前記一対の後脚部材とをX字状に連結し、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材を幅広の展開状態から幅狭の折りたたみ状態にする前後Xリンク部材と、
前記一対の主柱部材の上端に姿勢制御部を介して取り付けられ、初期状態姿勢から他の姿勢に姿勢変化可能な一対の手動操作部とを有し、
前記姿勢制御部は、前記上下Xリンク部材及び前記前後Xリンク部材の前記一対の主柱部材、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材を折りたたみ状態にする動作と連動して、前記一対の手動操作部の姿勢を初期状態姿勢に復帰させることを特徴とする子供用運搬車。
【請求項2】
前記一対の手動操作部は、初期状態姿勢では相互に分離しているとともに、前記一対の主柱部材、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材が展開状態であるときは、相互に擬似的に一体化する使用状態姿勢に姿勢変化可能である請求項1に記載の子供用運搬車。
【請求項3】
前記手動操作部は、略L字状に湾曲した棒状のハンドルアームであり、
前記姿勢制御部は、前記主柱部材の上端に対する前記ハンドルアームの下端の回転角度を変化させ、初期状態姿勢では前記ハンドルアームの先端部が前方を向き、使用状態姿勢では一対のハンドルアームの先端部が互いに対応するように、前記ハンドルアームの姿勢を変化させる請求項2に記載の子供用運搬車。
【請求項4】
前記姿勢制御部は、前記一対の主柱部材、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材が折りたたみ状態であるときは、前記一対の手動操作部の姿勢をロックして初期状態姿勢から姿勢変化不能とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の子供用運搬車。
【請求項5】
前記姿勢制御部は、操作部材を備え、前記一対の主柱部材、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材が展開状態であるときは、前記操作部材が操作されていれば、前記一対の手動操作部を姿勢変化可能とし、前記操作部材が操作されていなければ、前記一対の手動操作部の姿勢をロックして姿勢変化不能とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の子供用運搬車。
【請求項6】
前記前後Xリンク部材に取り付けられ、後方に向けて延出する足踏み操作部を更に有し、
前記手動操作部が保持された状態で前記足踏み操作部が踏み下げられると、前記一対の主柱部材、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材を折りたたみ状態にする動作が行われるとともに、前記主柱部材に対して前記前脚部材が屈曲し、前記前輪が上昇して前記手動操作部に接近する請求項1〜5のいずれか1項に記載の子供用運搬車。
【請求項7】
前記一対の主柱部材、前記一対の前脚部材及び前記一対の後脚部材を折りたたみ状態にする動作が終了すると、前記後輪及び前記足踏み操作部が支持することによって、起立した姿勢を維持して自立する請求項6に記載の子供用運搬車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−116369(P2012−116369A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268655(P2010−268655)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】